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特開2023-122466熱伝導性シリコーン組成物および該組成物を用いた熱伝導性硬化物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122466
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】熱伝導性シリコーン組成物および該組成物を用いた熱伝導性硬化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20230825BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20230825BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230825BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
C08K3/013
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026196
(22)【出願日】2022-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】500004955
【氏名又は名称】旭化成ワッカーシリコーン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】酒井 和哉
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 百合菜
(72)【発明者】
【氏名】山田 俊介
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CP04X
4J002CP13W
4J002CP13Y
4J002DA026
4J002DA076
4J002DA086
4J002DA096
4J002DE076
4J002DE096
4J002DE106
4J002DE136
4J002DE146
4J002DF016
4J002DJ006
4J002DK006
4J002FD016
4J002FD206
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】絶縁性熱伝導性シリコーン組成物であって、熱伝導性とディスペンス性が良好でありながら、硬化後の復元性が良く、衝撃が加わったとしても密着性を確保できるも組成物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
(A)ケイ素原子に結合しているアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンと、
(B)ケイ素原子に結合している水素原子を有するジオルガノポリシロキサンと、
(C)熱伝導性フィラーと、
(D)数平均分子量が1,000以上である分子内にアルケニル基を少なくとも1つ有するシリコーンレジンと、
(E)付加触媒と、を含み、
前記(A)成分および前記(B)成分の合計量を100質量部としたときの、前記(C)成分の含有量は300質量部以上2,000質量部以下であり、前記(D)成分の含有量は1質量部以上である、 液体状態で基材に塗布されることを特徴とする熱伝導性シリコーン組成物。

【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)25℃における粘度が10mPa・s以上1,000,000mPa・s以下であり、ケイ素原子に結合しているアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンと、
(B)25℃における粘度が10mPa・s以上1,000,000mPa・s以下であり、ケイ素原子に結合している水素原子を有するジオルガノポリシロキサンと、
(C)熱伝導性フィラーと、
(D)数平均分子量が1,000以上である分子内にアルケニル基を少なくとも1つ有するシリコーンレジンと、
(E)付加触媒と、を含み、
前記(A)成分および前記(B)成分の合計量を100質量部としたときの、前記(C)成分の含有量は300質量部以上2,000質量部以下であり、
前記(A)成分および前記(B)成分の合計量を100質量部としたときの、前記(D)成分の含有量は1質量部以上である、
液体状態で基材に塗布されることを特徴とする熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項2】
前記(D)成分はケイ素原子に結合したアルケニル基を、1分子中に1個以上有し、R1 3SiO1/2単位(M単位)およびSiO4/2単位(Q単位)より構成されるMQ単位のシリコーンレジンを含むことを特徴とする、請求項1に記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項3】
前記(A)成分および前記(B)成分の合計量を100質量部としたときの、前記(D)成分の含有質量部数と、前記(D)成分の数平均分子量の積が3,000以上であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項4】
前記(C)成分は、金属、酸化物、水酸化物及び窒化物から選ばれる熱伝導性フィラーである、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項5】
1分子内にアルケニル基と、ケイ素原子に結合しているアルコキシ基をそれぞれ1つ以上有する有機ケイ素化合物を含まないことを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項6】
(A)25℃における粘度が10mPa・s以上1,000,000mPa・s以下であり、ケイ素原子に結合しているアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンと、
(B)25℃における粘度が10mPa・s以上1,000,000mPa・s以下であり、ケイ素原子に結合している水素原子を有するジオルガノポリシロキサンと、
(C)熱伝導性フィラーと、
(E)付加触媒と、を含み、
液体状態で基材に塗布されることを特徴とする熱伝導性シリコーン組成物に、
(D)数平均分子量が1,000以上であるシリコーンレジンを配合することにより、熱伝導性シリコーン組成物の復元性を向上させる方法。
【請求項7】
(A)25℃における粘度が10mPa・s以上1,000,000mPa・s以下であり、ケイ素原子に結合しているアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンと、
(B)25℃における粘度が10mPa・s以上1,000,000mPa・s以下であり、ケイ素原子に結合している水素原子を有するジオルガノポリシロキサンと、
(C)熱伝導性フィラーと、
(D)数平均分子量が1,000以上であるシリコーンレジンと、
(E)付加触媒と、を含み、
前記(A)成分および前記(B)成分の合計量を100質量部としたときの、前記(C)成分の含有量は300質量部以上2,000質量部以下であり、
前記(A)成分および前記(B)成分の合計量を100質量部としたときの、前記(D)成分の含有量は1質量部以上10質量部以下である熱伝導性シリコーン組成物を基材に塗布して硬化させる工程を含む、ギャップフィラーの製造方法。
【請求項8】
(A)25℃における粘度が10mPa・s以上1,000,000mPa・s以下であり、ケイ素原子に結合しているアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンと、
(B)25℃における粘度が10mPa・s以上1,000,000mPa・s以下であり、ケイ素原子に結合している水素原子を有するジオルガノポリシロキサンと、
(C)熱伝導性フィラーと、
(D)数平均分子量が1,000以上であるシリコーンレジンと、
(E)付加触媒と、
を含む熱伝導性シリコーン組成物を硬化してなるギャップフィラーであって、
前記(D)成分の添加により前記ギャップフィラーの復元性を向上させるものであり、
前記熱伝導性シリコーン組成物における、前記(A)成分および前記(B)成分の合計量を100質量部としたときの、前記(C)成分の含有量は300質量部以上2,000質量部以下であり、前記(D)成分の含有量は1質量部以上10質量部以下である
ことを特徴とするギャップフィラー。
【請求項9】
請求項7に記載のギャップフィラーを有する電子機器。




【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導充填材を含有する放熱性・絶縁性の硬化性シリコーン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の小型化、高性能化、高出力化に伴い、放出される熱エネルギーが増大し、電子部品の温度は上昇する傾向にある。また、近年は電気自動車の普及に伴い、高性能バッテリーの開発が進められている。このような背景から、電子部品やバッテリー等の発熱体が発する熱をヒートシンクなどの放熱部材に伝えるための放熱性シリコーン製品が多く開発されている。
【0003】
放熱性シリコーン製品は、放熱シート等のシート状で提供されるものと、ギャップフィラー、放熱オイルコンパウンド、放熱グリース等の液状またはペースト状で提供されるものとに大別できる。
放熱シートは、熱伝導性シリコーン組成物をシート状に硬化させた、柔軟で高熱伝導性のシリコーンゴムシートである。そのため、簡便に設置することが可能で、部品表面に密着して放熱性を高める特徴がある。しかし、複雑な形状の部品あるいは表面粗さの大きな素材に放熱シートが追随できず、界面に微小な空隙が生じるおそれがある。
一方でギャップフィラーは、液状またはペースト状の熱伝導性シリコーン組成物を発熱体または放熱体に直接塗布し、塗布後に硬化させることにより得られる。このため、複雑な凹凸形状に適用された場合にもその空隙を埋め、高い放熱効果を発揮する利点がある。
【0004】
ギャップフィラーがより高い放熱効果を発揮するためには、ギャップフィラーの熱伝導性を向上させ、かつ、発熱体や放熱体とギャップフィラーとの接触界面の密着性を向上させることが必要である。ギャップフィラーはディスペンサーにより定位置に定量塗布される。そのためギャップフィラーはディスペンサーで吐出可能な適度な流動性が必要とされる。
【0005】
ギャップフィラーは発熱体と放熱体の決められた間隙に圧縮され使用されるが、使用途中に基材から意図しない衝撃が加わった際に、ギャップフィラーが押しつぶされ、基材とギャップフィラー間に空気層ができてしまうことがある。
従来はギャップフィラーの接着性を高めることにより、外部からの衝撃が加わったとしても基材とギャップフィラーが剥がれないように対策が取られてきた。しかし、この対策ではギャップフィラーと基材の接着力が高いと衝撃が加わった時に、基材を破壊する可能性があった。接着性を伴わない、復元する材料であれば、衝撃発生時の基材の破壊を抑制しつつ、一旦ギャップフィラーと基材が剥がれても、ギャップフィラーの復元性により密着性を確保でき、熱抵抗の悪化を抑制できる。空気層が発生すると熱抵抗が大きくなり、バッテリーや電子基板等の放熱性が妨げられ処理速度の低下の要因となりうる。
【0006】
熱伝導性組成物の復元性を向上する対策として、従来はシートの放熱材で復元性を有する物が存在する。しかしシートは取り扱い性をよくするため、ある程度の剛性が必要となり、そのため硬さが大きく、押し潰すことが困難であった。
【0007】
例えば特許文献1に係る発明は熱伝導シート硬化物の復元性を向上させるために、硬化後のアスカーCの硬さが10~90である常温硬化又は加熱硬化型液状シリコーンゴムを含むことを特徴としている。
【0008】
特許文献2に係る発明は熱伝導シート硬化物の復元性および接着性を向上させるために、メチル水素ポリシロキサンと、エポキシ基含有アルキルトリアルコキシシランと、環状ポリシロキサンオリゴマーを含むことを特徴としている。
しかしいずれの文献の放熱シートは実装時にはすでに硬化物であるため、押しつぶしして基板上の凹凸構造に密着させることは困難である。塗布時に未硬化である反発弾性を有するギャップフィラー組成物は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2021-021047号公報
【特許文献2】特開2021-0095569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上の背景から、絶縁性熱伝導性シリコーン組成物であって、熱伝導性とディスペンス性が良好でありながら、硬化後の復元性が良く、衝撃が加わったとしても密着性を確保できるも組成物の開発が求められている。本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、従来の熱伝導性シリコーン組成物に比べて良好な熱伝導性とディスペンス性を示し、かつ、硬化後に高い復元性を有するギャップフィラーを与える熱伝導性シリコーン組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、オルガノポリシロキサンを含むシリコーン組成物において、熱伝導性フィラーと、シリコーンレジンを配合することにより、本発明の課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明に係る熱伝導性シリコーン組成物は、液体状態で基材に塗布され、塗布後に硬化させてギャップフィラーとするための組成物である。ギャップフィラーは硬化後にハンドリングを必要としないため、硬化後の硬さを低くしつつ復元性を有することができる。
ギャップフィラーが高い復元性を有していれば、空気層を抑えることができ、低い熱抵抗を維持することが可能となる。
復元性を持たせる方法として分子量の大きいポリマーの導入もあるが、この方法では粘度が高くなるという問題点がある。本発明によれば分子量の大きいポリマーを導入しなくても、復元性を持たせることが可能となる。
【0013】
すなわち、本発明は、
(A)25℃における粘度が10mPa・s以上1,000,000mPa・s以下であり、ケイ素原子に結合しているアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンと、
(B)25℃における粘度が10mPa・s以上1,000,000mPa・s以下であり、ケイ素原子に結合している水素原子を有するジオルガノポリシロキサンと、
(C)熱伝導性フィラーと、
(D)数平均分子量が1,000以上である分子内にアルケニル基を少なくとも1つ有するシリコーンレジンと、
(E)付加触媒と、を含み、
前記(A)成分および前記(B)成分の合計量を100質量部としたときの、前記(C)成分の含有量は300質量部以上2,000質量部以下であり、
前記(A)成分および前記(B)成分の合計量を100質量部としたときの、前記(D)成分の含有量は1質量部以上である、
液体状態で基材に塗布されることを特徴とする熱伝導性シリコーン組成物である。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る熱伝導性シリコーン組成物は、良好なディスペンス性を有し、かつ、硬化後の硬さが低く、復元性が良好であるという特性を示すことから、ディスペンサー等を用いて液体状態で基材に塗布されるギャップフィラーを得るための熱伝導性シリコーン組成物として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明に係る、熱伝導性シリコーン組成物および該熱伝導性シリコーン組成物を使用するギャップフィラーの製造方法の詳細を説明する。なお、本明細書において熱伝導性フィラーを単にフィラーまたは充填材ともいう。
【0016】
本発明に係る熱伝導性シリコーン組成物は、
(A)25℃における粘度が10mPa・s以上1,000,000mPa・s以下であり、ケイ素原子に結合しているアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンと、
(B)25℃における粘度が10mPa・s以上1,000,000mPa・s以下であり、ケイ素原子に結合している水素原子を有するジオルガノポリシロキサンと、
(C)熱伝導性フィラーと、
(D)数平均分子量が1,000以上である分子内にアルケニル基を少なくとも1つ有するシリコーンレジンと、
(E)付加触媒と、を含み、
前記(A)成分および前記(B)成分の合計量を100質量部としたときの、前記(C)成分の含有量は300質量部以上2,000質量部以下であり、
前記(A)成分および前記(B)成分の合計量を100質量部としたときの、前記(D)成分の含有量は1質量部以上である、
液体状態で基材に塗布されることを特徴とする熱伝導性シリコーン組成物である。
【0017】
上記(A)、(B)、(C)および(E)成分を含む組成物に(D)所定のシリコーンレジンを配合することにより、熱伝導性シリコーン組成物の硬化前の粘度を低く維持しながら、硬化後に得られるギャップフィラーの復元性を高めることが可能となる。
【0018】
(成分(A))
成分(A)は、熱伝導性シリコーン組成物の主剤であり、25℃における粘度が10mPa・s以上1,000,000mPa・s以下である、ケイ素原子に結合しているアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンである。
ジオルガノポリシロキサンは、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。これは、熱伝導性シリコーン組成物(以下、単にシリコーン組成物と記載する場合がある。)の主剤であり、ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に平均して、少なくとも1個、好ましくは2~50個、より好ましくは2~20個有するものである。
【0019】
(A)成分の分子構造は特に限定されず、例えば、直鎖状構造、一部分岐を有する直鎖状構造、分岐鎖状構造、環状構造、分岐を有する環状構造であってもよい。(A)成分は、このうち、実質的に直鎖状のオルガノポリシロキサンであることが好ましく、具体的には、分子鎖が主にジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された直鎖状のジオルガノポリシロキサンであることが好ましい。分子鎖末端の一部または全部、または側鎖の一部がSi-OH基であってもよい。
【0020】
また、(A)成分は、単一のシロキサン単位からなる重合体であっても、2種以上のシロキサン単位からなる共重合体であってもよい。さらに、(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基の位置は特に制限されず、該アルケニル基は分子鎖末端のケイ素原子及び分子鎖非末端(分子鎖途中)のケイ素原子のどちらか一方にのみ結合していてもよいし、これら両者に結合していてもよい。
【0021】
(A)成分の25℃における粘度は、10mPa・s以上1,000,000mPa・s以下であり、20mPa・s以上500,000mPa・s以下が好ましく、50mPa・s以上10,000mPa・s以下がさらに好ましい。上記粘度範囲であれば、(A)成分の粘度が低すぎることに起因して、得られる熱伝導性シリコーン組成物において、後述の(C)成分、(D)成分の充填材が沈降しやすくなる現象を抑制可能である。従って長期の保存性に優れた熱伝導性シリコーン組成物が得られる。また、上記粘度範囲であれば、得られるシリコーン組成物の適度な流動性が得られるため、吐出性が高く、生産性を高めることが可能になる。
最終的な生成物である熱伝導性シリコーン組成物の硬化前の粘度(混合粘度)調整のため、粘度の異なる2種類以上のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンを用いることもできる。
長期の保存安定性と、適度な流動性の両立のためには、25℃における粘度100,000mPa・s以上のジオルガノポリシロキサンを含まないことがより好ましく、粘度 10,000mPa・s以上のジオルガノポリシロキサンを含まないことがさらにより好ましい。
また、(A)成分の粘度が低い方が、より多くの(D)シリコーンレジンを配合可能となり、これによりさらに復元性を高めることが可能になる。例えば、(A)成分の25℃における粘度が10,000mPa・sであれば、(A)成分および前記(B)成分の合計量を100質量部としたときに、(D)シリコーンレジンを4質量部以上配合可能であり、(A)成分の粘度が120mPa・sであれば、(D)シリコーンレジンを10質量部以上配合可能である。
【0022】
具体的には、成分(A)は、平均組成式が下記一般式(1)で表される。
R1 aSiO(4-a)/2 (1)
(ただし、式(1)中、R1は、互いに同一または異種の炭素数1~18の非置換のまたは置換された一価炭化水素基である。aは1.7~2.1である。また、aは好ましくは1.8~2.5、より好ましくは1.95~2.05である。)
【0023】
一つの実施形態において、上記R1で示される一価炭化水素基のうち、少なくとも2個以上はビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基などのアルケニル基から選ばれ、それ以外の基は、炭素数1~18の置換または非置換の一価炭化水素基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基などのアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などのシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基などのアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、メチルベンジル基などのアラルキル基や、これらの炭化水素基中の水素原子の一部または全部がハロゲン原子、シアノ基などによって置換されたクロロメチル基、2-ブロモエチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、3-クロロプロピル基、シアノエチル基などのハロゲン置換アルキル基やシアノ置換アルキル基などから選ばれる。
【0024】
R1の選択にあたって、2個以上必要なアルケニル基としてはビニル基が好ましく、その他の基としてはメチル基、フェニル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基が好ましい。また、全R1中の70モル%以上がメチル基であることが、硬化物の物性および経済性などの点で好ましく、通常はメチル基が80モル%以上のものが用いられる。
【0025】
成分(A)の分子構造としては、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサンコポリマー、式:(CH32ViSiO1/2で示されるシロキサン単位、式:(CH33SiO1/2で示されるシロキサン単位、式:SiO4/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン(式中のViは、ビニル基を表す)、これらのオルガノポリシロキサンのメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基などのアルキル基;フェニル基、トリル基などのアリール基;3,3,3-トリフルオロプロピル基などのハロゲン化アルキル基で置換したオルガノポリシロキサン、およびこれらのオルガノポリシロキサンの2種類以上の混合物が例示されるが、分子鎖長の増長によって硬化物の切断時の伸びを高める観点から、直鎖状のジオルガノポリシロキサンで分子鎖両末端にビニル基を有するものが好ましい。
【0026】
これらのジオルガノポリシロキサンは市販のものを使用してもよく、また当業者に公知の方法で製造されたものを使用してもよい。
【0027】
本発明のシリコーン組成物中、(A)成分および前記(B)成分の合計量を100質量部としたときの、(A)成分のオルガノポリシロキサンの含有量は、2質量部以上90質量部以下であることが好ましく、30質量部以上80質量部以下であることがより好ましい。上記範囲内であれば、シリコーン組成物全体の粘度が適切な範囲となり、より長期の保存安定性に優れ、基材へ塗布した後に流出する現象を抑制可能であり、適度な流動性を有することにより熱伝導性を高く維持することが可能となる。
【0028】
(成分(B))
成分(B)は、25℃における粘度が10mPa・s以上1,000,000mPa・s以下であり、ケイ素原子に結合している水素原子を有するジオルガノポリシロキサンである。
成分(B)は1分子中にケイ素原子に結合している水素原子を1個以上含有するジオルガノポリシロキサンであり、本発明のシリコーン組成物を硬化させるための架橋剤の役割を果たす成分である。
ケイ素原子に結合している水素原子の数は1個以上であれば特に限定されず、2個以上4個以下であってもよい。直鎖状の成分(B)の両末端に各1個のケイ素原子に結合している水素原子を有し、分子中のケイ素原子に結合している水素原子数が2個であってもよい。
【0029】
成分(B)は、1分子中にケイ素原子と結合している水素原子(SiH基)を1個以上含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであればいかなるものでもよく、例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサンコポリマー、メチルフェニルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサンコポリマー、環状メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルハイドロジェンシロキシ単位とSiO4/2単位からなるコポリマーが用いられる。成分(B)は、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
成分(B)の分子構造は特に限定されず、例えば、直鎖状、分岐状、環状、又は三次元網状構造のいずれのものであってもよいが、具体的には、下記平均組成式(2)で示されるものを用いることができる。
R3 pHqSiO(4-p-q)/2 (2)
(式中、R3は脂肪族不飽和炭化水素基を除く、非置換又は置換の一価炭化水素基である。またpは0~3.0、好ましくは0.7~2.1、qは0.0001~3.0、好ましくは0.001~1.0で、かつp+qは0.5~3.0、好ましくは0.8~3.0を満足する正数である。)
【0031】
式(2)中のR3としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、シクロヘキシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等の、脂肪族不飽和結合を除く、通常、炭素数1~10、好ましくは1~8程度の非置換又はハロゲン置換の1価炭化水素基等が例示され、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基であり、特に好ましくはメチル基である。
【0032】
(B)成分としては、具体的には、例えば1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、H(CH32SiO1/2単位とSiO2単位との共重合体、H(CH32SiO1/2単位と(CH33SiO1/2単位とSiO2単位との共重合体や、これらのオルガノハイドロジェンシロキサンの2種以上の混合物等が例示できる。
【0033】
上記シリコーン組成物中、(B)成分の含有量は、(A)成分中のアルケニル基に対する(B)成分中のSiH基の個数の比が1/5~7となる範囲であることが好ましく、1/2~2となる範囲であることがより好ましく、3/4~5/4の範囲であることがさらにより好ましい。上記範囲内であればシリコーン組成物が十分に硬化し、シリコーン組成物全体の硬さがより好適な範囲となり、ギャップフィラーとして使用する場合に割れが生じにくくなるほか、縦型に基材を配置した場合にもシリコーン組成物が垂直保持性を維持できるという利点がある。
【0034】
(B)成分中のSiH基は、分子鎖末端にあってもよく、側鎖にあってもよく、分子鎖末端と側鎖の両方にあってもよい。分子鎖末端にのみSiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、分子鎖側鎖にのみSiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを混合して使用してもよい。
分子鎖末端にのみSiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、立体障害が少ないことから反応性が高いという利点があり、側鎖にSiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンは架橋反応によりネットワーク構築に寄与するため強度を向上させるという利点がある。硬化後の柔軟性を付与するためには、分子鎖末端にのみSiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを使用するのが好ましい。
【0035】
成分(B)は、接着性および耐熱性向上の観点からは、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基を有するもので、分子中に芳香族の基を分子中に少なくとも1個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含むこともできる。経済的な理由により芳香族の基としてはフェニル基であることがより好ましい。
【0036】
成分(B)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの25℃における粘度は、10mPa・s以上1,000,000mPa・s以下であり、20mPa・s以上500,000mPa・s以下が好ましく、50mPa・s以上10,000mPa・s以下がさらに好ましい。
最終的な生成物であるシリコーン組成物の粘度 調整のため、粘度の異なる2種類以上の、水素原子を有するジオルガノポリシロキサンを用いることもできる
【0037】
本発明のシリコーン組成物中、(A)成分および前記(B)成分の合計量を100質量部としたときの(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの含有量は、10質量部以上98質量部以下であることが好ましく、20質量部以上90質量部以下であることがより好ましい。上記範囲内であれば、シリコーン組成物の硬化後の硬さが適切な範囲となり、硬化後の柔軟性及び頑強性を有することができる。
【0038】
(成分(C))
(C)成分の熱伝導性フィラーは、シリコーン組成物の熱伝導率を向上させ、形状保持性を向上させるための充填材成分である。(C)成分として、金属、酸化物、水酸化物及び窒化物からなる群より選択される少なくとも1種以上を含む熱伝導性フィラーを使用することができる。
電子基板等に適用するための絶縁性の高いギャップフィラーを得るためには、(C)成分の熱伝導性フィラーは熱伝導性のみならず絶縁性にも優れた無機材料を使用することが好ましい。
【0039】
(C)成分の形状は特に限定されず、球状、不定形、または繊維状であってもよい。
熱伝導性フィラーとしては、例えば、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化ベリリウム等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物;窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素等の窒化物;炭化ホウ素、炭化チタン、炭化ケイ素等の炭化物;グラファイト、黒鉛等の石墨;アルミニウム、銅、ニッケル、銀等の金属、およびこれらの混合物からなるのもが挙げられる。
特に、シリコーン組成物に電気絶縁性が必要な場合は、金属酸化物、金属水酸化物、窒化物、またはこれらの混合物であることが好ましく、両性水酸化物または両性酸化物であってもよく、具体的には、水酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムおよび水酸化マグネシウムからなる群より選択される1種又は2種以上を用いることが好ましい。
なお、酸化アルミニウムは絶縁材料であり、成分(A)および(B)との相溶性が比較的良好であり、工業的に広範囲な粒径の品種が選択可能であり、資源的に入手が容易であり、比較的安価で入手可能であることから、熱伝導性無機充填材として好適である。
【0040】
(C)成分として酸化アルミニウムを用いる場合には球状又は不定形のものを用いることが好ましい。球状酸化アルミニウムは、主として高温溶射法あるいはアルミナ水和物の水熱処理により得られるα-アルミナである。ここでいう球状とは、真球状のみならず、丸み状であってもよい。
【0041】
(C)成分の平均粒径は特に限定されず、例えば0.1μm以上500μm以下の範囲であってもよく、0.5μm以上200μm以下がより好ましく、1.0μm以上100μm以下がさらにより好ましい。平均粒径が小さすぎると、シリコーン組成物の流動性が低下し、平均粒径が大きすぎるとディスペンス性が低下する上、塗布装置の摺動部分に挟まり、装置の削れなどの問題発生のおそれがある。なお、本発明において、(C)成分の平均粒径は、レーザー回折式粒度測定装置で測定された体積基準累積粒度分布における50%粒子径であるD50(又はメジアン径)である。
【0042】
成分(C)として、球状のフィラーのみまたは不定形のフィラーのみを使用することもできるが、これらを併用することもできる。形状が異なる少なくとも2種以上のフィラーを併用すると、最密充填に近い状態で充填でき、熱伝導性がより高くなる効果が得られる。球状と不定形のフィラーを併用する場合、成分(C)全体を100質量%とした場合の、球状熱伝導性フィラーの割合は30質量%以上とすると、より熱伝導性を高めることが可能となる。
(C)成分のBET比表面積は特に限定されず、例えば球状のフィラーでは、1 m2/g以下が好ましく、0.5 m2/g以下がより好ましい。不定形フィラーでは、5 m2/g以下が好ましく、3 m2/g以下がより好ましい。
BET比表面積が5m2/gを超える不定形フィラーだけ配合すると熱伝導性組成物の粘度が高くなり、また硬化後の熱伝導性組成物と基材との密着性が悪くなり、その結果放熱性が悪くなる。またかさ高いフィラーの高充填は組成物内のシリコーンゴム分子の運動が妨げられるために復元性が悪くなる。なお、本発明において、(C)成分のBET比表面積は、粒子を低温状態にした時に粒子表面に物理吸着したガス量を測定し比表面積を計算した値である。
【0043】
分散性を向上させ、フィラーの充填性を増加させるために、熱伝導性フィラー表面の少なくとも一部は表面処理又はコーティングされてもよい。任意の既知の表面処理及びコーティングが好適であり得る。
【0044】
本発明のシリコーン組成物中、(C)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計を100質量部とした場合、200質量部以上3,000質量部以下が好ましく、300質量部以上2,000質量部以下がより好ましく、400質量部以上1500質量部以下がさらにより好ましく、1,000質量部以下としてもよい。上記範囲内であれば、シリコーン組成物全体として十分な熱伝導率を有し、配合時に混合しやすく、硬化後にも柔軟性が維持され、さらに比重も大きくなりすぎないことから、熱伝導性と軽量化が求められるギャップフィラー用組成物としてより好適である。(C)成分の含有量が少なすぎると、得られるシリコーン組成物の硬化物の熱伝導率を十分に高めることが困難となり、一方、(C)成分の含有量が多すぎるとシリコーン組成物は高粘度になり、シリコーン組成物を均一に塗布することが困難となるおそれがあり、硬化後の組成物の熱抵抗上昇、柔軟性の低下といった問題が生じる場合がある。
【0045】
(成分(D))
本発明に用いられる(D)数平均分子量が1,000以上である分子内にアルケニル基を少なくとも1つ有するシリコーンレジンは、本発明の熱伝導性シリコーンが硬化させて得られるギャップフィラーに復元性を与えるために添加される。本発明の熱伝導性シリコーンにおいて、(C)熱伝導性フィラー表面と(D)成分が反応し、(C)成分の表面に(D)成分が結合される。さらに(D)成分中のアルケニル基は(A)成分、(B)成分と架橋反応する。これにより、硬化後に得られるギャップフィラーの三次元架橋構造を強固なものとして、復元性を発揮させるものと考えられる。
更に詳述すれば次の通りと考えられる。(C)成分表面のOH基と、(D)成分に含まれるOH基、SiH基等は反応可能であるため、(C)成分の表面に(D)成分が結合される。さらに(D)成分中のアルケニル基は(B)成分のSiH基とも反応可能であるから、(B)成分は(A)成分だけでなく(C)成分と結合した(D)成分とも架橋反応する。このように、本発明の熱伝導性シリコーン組成物では(A)、(B)、(C)、(D)の各成分が相互に作用して架橋構造を形成し、復元性を発揮する。
本発明では、復元性を発揮させるために高粘度のポリマーを配合する必要はないことから、本発明の熱伝導性シリコーン組成物の硬化前における粘度を低く維持しながら、硬化後に得られるギャップフィラーに復元性を付与させることが可能となる。熱伝導性シリコーン組成物の粘度が低いことにより、基材に熱伝導性シリコーン組成物を塗布する際のディスペンス性が良好となり、また微細な空隙にも充填可能となるため密着性を高めることが可能となる。また、ギャップフィラーが復元性を有することにより、基材とギャップフィラーとの間の空気層形成を抑制可能となることから、低い熱抵抗を維持することが可能となる。
【0046】
(D)成分の数平均分子量は1,000以上であれば特に限定されず、1,000以上10,000以下が好ましく、2,000以上8,000以下がさらにより好ましい。上記範囲の分子量であれば硬化したのちのギャップフィラーにおいてより良好な復元性が得られる。
【0047】
本発明の(D)成分はケイ素原子に結合したアルケニル基を、1分子中に1個以上有し、R2 3SiO1/2単位(M単位)、R2 2SiO2/2単位(D単位)、R2SiO3/2単位(T単位)、SiO4/2単位(Q単位)からなる群より選択される1以上の単位を80 mol%以上含有するものであり、MQ、MDQ、MT、MDT、MTDQ、DQと表されるシリコーンレジンであってもよい。
【0048】
本発明の(D)成分は、D単位およびT単位を80 mol%以上、好ましくは95 mol%以上、より好ましくは97 mol%以上含んでなるDTシリコーンレジンであってもよい。(D単位)/(T単位)で表されるモル比は、0.01以上5.0以下が好ましく、0.2以上3.5以下がより好ましく、0.2以上0.5以下であることがさらにより好ましい。
【0049】
本発明の(D)成分は、M単位およびQ位を80 mol%以上、好ましくは95 mol%以上、より好ましくは97 mol%以上含んでなるMQシリコーンレジンであってもよい。
特にM単位およびQ単位より構成されるMQ単位のシリコーンレジンを含む場合には、3次元架橋密度が高くなるため、より高い復元性が得られる。(M単位)/(Q単位)で表されるモル比が0.1以上3.0以下のシリコーンレジンが好ましく、0.3以上2.5以下がより好ましく、0.4以上2.2以下がさらにより好ましい。
【0050】
本発明の(D)成分はまた、アルケニル基を有することによりシリコーン骨格を有するポリマー成分((A)成分および(B)成分)へのなじみが良好で、組成物の均一性がより高められる。
【0051】
上記R2で示される一価炭化水素基のうち、少なくとも1個以上はビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基などのアルケニル基から選ばれ、それ以外の基は、炭素数1~18の置換または非置換の一価炭化水素基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基などのアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などのシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基などのアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、メチルベンジル基などのアラルキル基や、これらの炭化水素基中の水素原子の一部または全部がハロゲン原子、シアノ基などによって置換されたクロロメチル基、2-ブロモエチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、3-クロロプロピル基、シアノエチル基などのハロゲン置換アルキル基やシアノ置換アルキル基などから選ばれることができる。
【0052】
R2の選択にあたって、1 個以上必要なアルケニル基としてはビニル基が好ましく、その他の基としてはメチル基、フェニル基、3,3,3- トリフルオロプロピル基が好ましい。
【0053】
R2に含まれるアルケニル基は、1分子中1個以上20個以下が好ましく、1個以上15個以下がさらに好ましい。
【0054】
シリコーンレジン中OH基の量は特に限定されず、例えば0.01%以上3.0%以下であってもよく、0.05%以上2.0%以下であればより好ましく、0.1%以上1.0%以下であればさらにより好ましい。
【0055】
(D)成分の配合量は、(A)成分および(B)成分の合計量を100質量部に対して、1質量部以上であれば特に限定されず、(D)成分の特性や、(A)成分および(B)成分の粘度等に応じて配合量を調整することができ、好ましくは2質量部以上12質量部以下であり、さらに好ましくは2質量部以上10質量部以下である。(D)成分の配合量が、上記範囲であれば粘度及び硬さの過度な上昇を抑えることが可能であり、十分な復元性を有する。硬化後のアスカーCの硬さが40~70にできる。この範囲だと硬化後の基材の振動や変位への追従性が良好であり、硬さが高すぎると柔軟性が損なわれ追従性が悪化するおそれがある。また低すぎると、ポンプアウトの発生のおそれがある。(D)成分そのものは室温で固体又は粘稠な液体であるが、溶剤に溶解した状態で使用することも可能である。その場合、組成物への添加量は、溶剤分を除いた量で決定される。
(D)成分を溶解するための溶剤としては、トルエン、キシレン等の有機溶剤や、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等のシリコーン系溶剤を使用することができる。特にトルエン、キシレン等の有機溶剤は揮発性を有するため使用環境の制限等により、またアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンはポリマー成分として機能するため好適である。
【0056】
(A)成分および(B)成分の合計量を100質量部としたときの、(D)成分の含有質量部数と、(D)成分の数平均分子量の積は、3,000以上とすることができる。(D)成分の含有質量部数と、(D)成分の数平均分子量の積は3,000以上30,000以下であることが好ましく、4,000以上20,000以下であることがより好ましく、5,000以上15,000以下であることがさらにより好ましい。
上記範囲内であれば、比較的数平均分子量が大きいシリコーンレジンを使用する場合には、比較的少ない配合量でギャップフィラーの復元性を発揮することが可能となる。配合量を少なくすることにより、硬化前の熱伝導性シリコーン組成物の粘度の過度な上昇を抑制することも可能となる。
一方、比較的数平均分子量が小さいシリコーンレジンを使用する場合には、比較的配合量を多くしたほうが、より復元性を高める効果が得られる。
【0057】
(成分(E))
成分(E)の付加触媒は、上述した成分(A)におけるケイ素原子に結合しているアルケニル基と、上述した成分(B)におけるケイ素原子に結合している水素原子との付加硬化反応を促進する触媒であって、当業者には公知の触媒である。成分(E)としては白金、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、ルテニウムなどの白金族金属、または、これらを微粒子状の担体材料(例えば、活性炭、酸化アルミニウム、酸化ケイ素)に固定したものが挙げられる。
さらに、成分(E)としては、白金ハロゲン化物、白金-オレフィン錯体、白金-アルコール錯体、白金-アルコラート錯体、白金-ビニルシロキサン錯体、ジシクロペンタジエン-白金ジクロライド、シクロオクタジエン-白金ジクロライド、シクロペンタジエン-白金ジクロライド等の白金化合物が挙げられる。
【0058】
また、経済的な観点から、上述したような白金族金属以外の金属化合物触媒を用いてもよい。例えば、ヒドロシリル化鉄触媒としては、鉄-カルボニル錯体触媒、シクロペンタジエニル基を配位子として有する鉄触媒、ターピリジン系配位子や、ターピリジン系配位子とビストリメチルシリルメチル基を有する鉄触媒、ビスイミノピリジン配位子を有する鉄触媒、ビスイミノキノリン配位子を有する鉄触媒、アリール基を配位子として有する鉄触媒、不飽和基を有する環状または非環状のオレフィン基を有する鉄触媒、不飽和基を有する環状または非環状のオレフィニル基を有する鉄触媒である。その他、ヒドロシリル化のコバルト触媒、バナジウム触媒、ルテニウム触媒、イリジウム触媒、サマリウム触媒、ニッケル触媒、マンガン触媒などが例示される。
【0059】
成分(E)の配合量は用途により所望される硬化温度や硬化時間に応じた有効量が用いられるが、通常、熱伝導性シリコーン組成物の合計質量に対して、触媒金属元素の濃度として好ましくは0.5~1,000ppm、より好ましくは1~500ppm、より一層好ましくは1~100ppmの範囲である。配合量が0.5ppm未満の場合は、付加反応が著しく遅くなり、一方、配合量が1,000ppmを超えるとコストが上昇するため経済的に好ましくない。
【0060】
上記(A)成分~(E)成分を含む最終的な生成物である熱伝導性シリコーン組成物の粘度(混合粘度ともいう)は、特に限定されず、例えば50Pa・s以上2,000Pa・s以下の範囲であり、より好ましくは60Pa・s以上1,000Pa・s以下の範囲である。
硬化前の粘度としては、例えば50Pa・s以上550Pa・s以下の範囲であることが塗布作業性(ディスペンス性)および熱伝導性フィラーの充填性の点からより適している。また、ギャップフィラーの復元性は、例えば10%以上であることが好ましい。
ここで復元性とは、次の方法で測定した値を言う。直径30mm×高さ6mmの円柱状のプレス金型に熱伝導性シリコーン組成物を流し込み、100℃で60分間硬化させ、円柱状の硬化物を作製した。この円柱状の試験片を圧縮治具を用いて3mmに圧縮し、2時間放置後に取り外し、圧縮治具から取り出した直後及び30分後に試験片の厚みを測定し、下記式により復元率を算出した。
(初期厚み-圧縮治具から取り出し30分後の厚み)/(初期厚み-圧縮治具から取り出し直後の厚み)×100 (%)
【0061】
本発明の熱伝導充填剤含有の硬化性シリコーン組成物には、本発明の目的を損なわない範囲において、さらに、上記成分(A)~(E)以外のさらなる任意成分として、シリコーンゴム、ゲルへの添加物として従来公知のものを使用することができる。このような添加物としては、加水分解によりシラノールを生成する有機機ケイ素化合物またはオルガノシロキサン(シランカップリング剤ともいう)、架橋剤、縮合触媒、接着付与剤、顔料、染料、硬化抑制剤、耐熱付与剤、難燃剤、帯電防止剤、導電性付与剤、気密性向上剤、放射線遮蔽剤、電磁波遮蔽剤、防腐剤、安定剤、有機溶剤、可塑剤、防かび剤、あるいは、1分子中に1個のケイ素原子結合水素原子またはアルケニル基を含有し、他の官能性基を含有しないオルガノポリシロキサンや、ケイ素原子結合水素原子およびアルケニル基を含有しない無官能性のオルガノポリシロキサンが例示され、これらのさらなる任意成分は、1種を単独で使用してもよく、または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0062】
シランカップリング剤としては、1分子中にエポキシ基、アルキル基、アリール基等の有機基とケイ素原子結合アルコキシ基とを有する有機ケイ素化合物またはオルガノシロキサンが挙げられる。シランカップリング剤の一例としてオクチルトリメトキシシラン,オクチルトリエトキシシラン,デシルトリメトキシシラン,デシルトリエトキシシラン,ドデシルトリメトキシシラン,ドデシルトリエトキシシラン等のシラン化合物がある。前記シラン化合物は、SiH基を有しない化合物であってもよく、一種又は二種以上混合して使用することができる。前記シランカップリング剤で熱伝導性フィラーの表面を処理することにより、シリコーンポリマーとの親和性が良くなり、組成物の粘度を下げることができ、フィラーの充填性が向上することが可能となる。したがってより多くのフィラーを配合することで、熱伝導率を向上することが可能である。
加水分解により生成したシラノールは金属基材または有機樹脂基材の表面に存在する縮合性基(例えば、水酸基、アルコキシ基、酸基等)と反応・結合し得るものであり、後述する縮合触媒の触媒効果によりシラノールと縮合性基とが反応・結合することにより、硬化性シリコーン組成物の各種基材への接着を進行させる。
シランカップリング剤のフィラーに対する配合量は用途により所望される硬化温度や硬化時間に応じた有効量が用いられるが、通常、熱伝導性フィラーに対して0.5~2wt%が一般的な最適量であるが、必要量の目安として次の式により計算され、1~3倍量配合してもよい。シランカップリング剤の必要量(g)=フィラー重量(g)×フィラーの比表面積(m/g)÷シランカップリング剤の固有の最小被覆面積(m/g)
【0063】
架橋剤としては、オルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、アルケニル基と付加反応することにより硬化物を形成するものであり、分子中に少なくとも3個以上SiH基を有するものであってもよい。本発明の架橋剤としては、SiH基を5個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンがより好ましく、10個以上15個以下有するものであってもよい。架橋剤であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、その側鎖に少なくとも1個のSiH基を有するものである。分子鎖末端のSiH基の数は0個以上2個以下であることができるが、2個であることが経済的には好ましい。オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網状構造のいずれであってもよい。水素原子が結合するケイ素原子の位置は特に制約はなく、分子鎖の末端でも非末端、側鎖でもよい。その他の条件、水素基以外の有機基、結合位置、重合度、構造等については特に限定されず、また2種以上のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを使用してもよい。
【0064】
必要に応じて、上記シランカップリング剤と共に縮合触媒を使用してもよい。縮合触媒としては、マグネシウム、アルミニウム、チタン、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、タングステン、ビスマスから選ばれる金属の化合物等が使用できる。アルミニウム三価、鉄三価、コバルト三価、亜鉛二価、ジルコニウム四価、ビスマス三価の有機酸塩、アルコキシド、キレート化合物等の金属化合物が好ましく挙げられる。例えば、オクチル酸、ラウリン酸、ステアリン酸等の有機酸、プロポキシド、ブトキシド等のアルコキシド、カテコール、クラウンエーテル、多価カルボン酸、ヒドロキシ酸、ジケトン、ケト酸等の多座配位子キレート化合物が挙げられ、一つの金属に複数種類の配位子が結合していてもよい。特に、配合や使用条件が多少異なっても安定した硬化性が得られ易いジルコニウム、アルミニウム、鉄の化合物が好ましく、更に望ましい構造は、ジルコニウムのブトキサイド、または、マロン酸エステル、アセト酢酸エステル、アセチルアセトン、それらの置換誘導体等を多座配位子としたアルミニウム又は鉄の三価キレート化合物である。アルミニウム三価、鉄三価の金属化合物では更にオクチル酸等の炭素数5~20の有機酸も好ましく使用でき、上述の多座配位子と有機酸とが一つの金属に結合している構造でもよい。
【0065】
上記置換誘導体としては、上記化合物中に含まれる水素原子をメチル基、エチル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基等のアリール基、塩素原子、フッ素原子等のハロゲン原子、水酸基、フルオロアルキル基、エステル基含有基、エーテル含有基、ケトン含有基、アミノ基含有基、アミド基含有基、カルボン酸含有基、ニトリル基含有基、エポキシ基含有基等で置換したものであって、例えば、2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオーネ、ヘキサフルオロペンタンジオーネを挙げることができる。
【0066】
顔料としては、酸化チタン、アルミナケイ酸、酸化鉄、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、カーボンブラック、希土類酸化物、酸化クロム、コバルト顔料、群青、セリウムシラノレート、アルミニウムオキシド、アルミニウムヒドロキシド、チタンイエロー、カーボンブラック、硫酸バリウム、沈降性硫酸バリウム等、および、これらの混合物が例示される。
顔料の配合量は用途により所望される硬化温度や硬化時間に応じた有効量が用いられるが、通常、熱伝導性シリコーン組成物の合計質量に対して、顔料成分の配合量は0.001%から5%の範囲が望ましい。好ましくは0.01%~2%、より好ましくは0.05%~1%、の範囲である。配合量が0.001%未満の場合は、着色が不十分であり、第1液と第2液を視覚的に区別することが困難となる。一方、配合量が5%を超えるとコストが上昇するため経済的に好ましくない。
【0067】
硬化抑制剤としては、付加反応の硬化速度を調整する能力を有するものであり、アセチレン系化合物、ヒドラジン類、トリアゾール類、フォスフィン類、メルカプタン類が例示され、硬化抑制効果を持つ化合物として当該技術分野で従来公知の硬化抑制剤はすべて使用することができる。かかる化合物としては、トリフェニルホスフィン等のリン含有化合物、トリブチルアミンやテトラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾール等の窒素含有化合物、硫黄含有化合物、アセチレン系化合物、アルケニル基を2個以上含有する化合物、ハイドロパーオキシ化合物、マレイン酸誘導体などが例示される。また、アミノ基を有する、シランおよびシリコーン化合物を使用してもよい。
硬化抑制剤の配合量は用途により所望される硬化温度や硬化時間に応じた有効量が用いられるが、通常、(A)成分および(B)成分の合計量を100質量部としたとき、0.1質量部から15質量部の範囲が望ましい。好ましくは0.2質量部から10質量部の範囲、より好ましくは0.5質量部から5質量部の範囲である。0.1質量部未満であると付加反応が著しく速くなり、塗布作業性中に硬化反応が進行し、作業性を悪化させるおそれがある。一方10質量部を超えると、付加反応が遅くなり、ポンプアウトの発生のおそれがある。
【0068】
具体的には、3-メチル-3-ペンテンー1-イン、および3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-インのような各種の「エン-イン」システム;3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、および2-フェニル-3-ブチン-2-オールのようなアセチレン性アルコール;周知のジアルキル、ジアルケニル、およびジアルコキシアルキルフマラートおよびマレアートのようなマレアートおよびフマラート;およびシクロビニルシロキサンを含有するものが例示される。
【0069】
耐熱付与剤としては、水酸化セリウム、酸化セリウム、酸化鉄、ヒューム二酸化チタン等、および、これらの混合物が例示される。
【0070】
気密性向上剤としては、硬化物の通気性を低下させる効果を有するものであればいかなるものでもよく、有機物、無機物を問わず、具体的にはウレタン、ポリビニルアルコール、ポリイソブチレン、イソブチレン-イソプレン共重合体や、板状形状を有するタルク、マイカ、ガラスフレーク、ベーマイト、各種金属箔や金属酸化物の粉体、および、これらの混合物が例示される。
【0071】
本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、1分子内にアルケニル基と、ケイ素原子に結合しているアルコキシ基をそれぞれ1つ以上有する有機ケイ素化合物を含まないものであってもよい。同一分子内にアルケニル基と、ケイ素原子に結合しているアルコキシ基を有する化合物が含まれると、当該化合物は基材とギャップフィラーとを接着させる成分として働く。このような成分を含まない本発明の組成物であれば、基材に意図しない衝撃が加わったときに、基材にゆがみや割れを生じさせたり、バッテリー表面を被覆する樹脂フィルム(PETフィルム等)を基材とする場合に、基材がバッテリーから剥離したりする現象を抑制させることが可能となる。これは、ギャップフィラーが基材に密着された状態であるものの、接着はしていないという本願の組成物の特性に起因するものである。
【0072】
本発明に係る組成物は液体状態で基材に塗布される熱伝導性シリコーン組成物である。すなわち、当該組成物は25℃における初期粘度が80Pa・s以上500Pa・s以下の範囲の液状であり、基材へ塗布された後120分以内に非流動性の反応物(ギャップフィラー)を形成する。
粘度が上記範囲にある液状の上記シリコーン組成物は、カートリッジ、リボン、又はディスペンサー、シリンジ及びチューブ等の容器から押し出され、基材に塗布することができる。L字ノズル/ニードル等を備えたディスペンサーを用いて基材に塗布することが好ましい。
ここで基材とは放熱部や発熱部をいう。シリコーン組成物は、放熱部に塗布された後にシリコーン組成物を挟むように発熱部を配置してもよく、発熱部に塗布したのちにシリコーン組成物を挟むように放熱部を配置してもよく、発熱部と放熱部の間の空隙に注入してもよい。
【0073】
上記組成物は(E)付加触媒の存在下で、(A)成分と(B)成分とが架橋反応し、硬化物(ギャップフィラー)を与える。該組成物は、熱伝導率が1以上であればよく、2以上であればより好ましい。また、組成物の比重は1.5以上10以下であればよい。熱伝導性シリコーン組成物が塗布される基材を含む部材(例えば電子機器、バッテリー等である)は軽量化が重視される傾向にあることから、組成物の比重は5.0以下であることが好ましく、3.0以下であることがさらに好ましい。
さらに上記組成物は絶縁性であることが好ましく、具体的には体積抵抗率が10^10(Ω・cm)以上であることが好ましい。
【0074】
本発明に係る熱伝導性シリコーン組成物は、付加硬化型組成物であり、1液型組成物としてもよいが、2液型組成物としてもよい。1液型の場合には、加熱硬化により硬化させる組成にする、湿気硬化型組成物にする等の工夫により2液型とすることにより、貯蔵性を向上させることができる。
2液型組成物の場合には、これらの工夫なしに貯蔵安定性をさらに向上させることが可能になり、室温(例えば25℃)で硬化する組成物とすることが容易である。その場合、本発明に係るシリコーン組成物を例えば次のように第1液と第2液とに分配することができる。第1液は(B)成分を含まず、(E)成分を含むことを特徴とし、第2液は(B)成分を含み、(E)成分を含まないことを特徴とする。
第1液:
(A)25℃における粘度が10mPa・s以上1,000,000mPa・s以下であり、ケイ素原子に結合しているアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンと、
(C)熱伝導性フィラーと、
(D)数平均分子量が1,000以上である分子内にアルケニル基を少なくとも1つ有するシリコーンレジン
(E)付加触媒と、を含み、
(B)25℃における粘度が10mPa・s以上1,000,000mPa・s以下であり、ケイ素原子に結合している水素原子を有するジオルガノポリシロキサンを含まない。
第2液:
(A)25℃における粘度が10mPa・s以上1,000,000mPa・s以下であり、ケイ素原子に結合しているアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンと、
(B)25℃における粘度が10mPa・s以上1,000,000mPa・s以下であり、ケイ素原子に結合している水素原子を有するジオルガノポリシロキサンと、
(C)熱伝導性フィラーと、
(D)数平均分子量が1,000以上である分子内にアルケニル基を少なくとも1つ有するシリコーンレジン
(E)付加触媒を含まない。
【0075】
上記の第1液および第2液は必要に応じて架橋剤、カップリング剤、硬化抑制剤、顔料などを含んでもよい。カップリング剤および硬化抑制剤は第1液または第2液のいずれか一方に配合されても良いが、両方に配合されてもよい。カップリング剤の配合手順は特に限定されないが、(C)成分のフィラーを投入する前か同時が好ましい。架橋剤は白金触媒を含まない第2液に配合するのが好ましい。架橋剤の配合手順は特に限定されないが、ジオルガノポリシロキサンと同時が好ましい。顔料は第1液及び第2液を視覚的に識別するため、一方に配合するのが好ましい。顔料の配合手順は特に限定されないが、(C)成分のフィラーと同時かその後段階が好ましい。
【0076】
上記の組成物を、第1液と第2液とに分配して保存するためには、これらの各成分を、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン、あるいはホワイトスピリット、あるいはこれらの混合物などの有機溶剤中に保存したり、あるいはこれらの異なる成分を、乳化剤を用いて乳化して水系エマルジョン状態として保存してもよい。特に、有機溶剤の揮発による火災の危険性、作業環境の悪化および大気汚染などの問題を防ぐために、特に無溶剤系や、乳化剤を用いて乳化したエマルジョンであることが好ましい。
【0077】
本発明はまた、(A)25℃における粘度が10mPa・s以上1,000,000mPa・s以下であり、ケイ素原子に結合しているアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンと、(B)25℃における粘度が10mPa・s以上1,000,000mPa・s以下であり、ケイ素原子に結合している水素原子を有するジオルガノポリシロキサンと、(C)熱伝導性フィラーと、(E)付加触媒と、を含み、 液体状態で基材に塗布されることを特徴とする熱伝導性シリコーン組成物に、(D)数平均分子量が1,000以上であるシリコーンレジンを配合することにより、熱伝導性シリコーン組成物の復元性を向上させる方法である。
【0078】
本発明に係る熱伝導性シリコーン組成物の製造方法には、当業者に公知な方法を用いることができ、その方法は限定されないが、(A)、(B)、及び(D)成分を混合した後に(C)成分を添加し、さらに混合する工程を有するものとしてもよい。
例えば、予め成分(A)、(B)および(D)を攪拌機で混合したり、あるいは2本ロール、ニーダーミキサー、加圧ニーダーミキサーや、ロスミキサーなどの高せん断型の混合機や押出し機、連続式の押出し機などで均一に混練してシリコーンゴムベースを調整した後、これに成分(C)を添加配合して製造するという方法が用いられる。
成分(E)およびその他の任意成分は最終的にシリコーン組成物中に配合されていればよく、成分(A)、(B)、および(D)と共に混合されてもよいが、成分(C)と共に混合されてもよく、(C)を混合したあとで混合されてもよい。
(D)成分については、必要に応じて、事前に加温したり、溶剤に溶かす等の工程を追加してもよい。
【0079】
本発明はまた、上記熱伝導性シリコーン組成物が充填された容器から、熱伝導性シリコーン組成物を吐出し、発熱部または放熱部の少なくとも一方である基材に前記熱伝導性シリコーン組成物を塗布する工程を含むギャップフィラーの製造方法である。基材に塗布後に硬化させる際の温度は特に限定されず、例えば15℃以上60℃以下の温度であってもよい。基材への熱ダメージを軽減させるため、15℃以上40℃以下の温度としてもよい。加熱硬化性組成物である場合、基材に組成物を塗布したのちに加熱してもよく、放熱部材の放熱を利用して硬化させてもよい。加熱硬化させる場合の温度は、例えば40℃以上200℃以下であってもよい。
【0080】
ギャップフィラーが適応される基材は特に限定されず、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ(1,4-ブチレンテレフタレート)(PBT)ポリカーボネート等の樹脂、セラミックス、ガラス、及びアルミニウム等の金属が挙げられる。
【0081】
本発明はまた、上記熱伝導性シリコーン組成物を硬化してなるギャップフィラーであって、(D)成分の添加によりギャップフィラーの復元性を向上させるものであり、熱伝導性シリコーン組成物における、(A)成分および(B)成分の合計量を100質量部としたときの、(C)成分の含有量は300質量部以上2,000質量部以下であり、(D)成分の含有量は1質量部以上10質量部以下であることを特徴とするギャップフィラーである。
【0082】
本発明のギャップフィラーはバッテリー等の発熱部を含む電子機器に適用されることができ、発熱部の少なくとも一部に塗布されることにより良好な放熱特性を発揮する。
【実施例0083】
本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。実施例および比較例の各成分の配合比と、評価結果を表1、表2に示す。表1、表2中に示す配合比の数値は質量部を示す。
【0084】
<硬化性シリコーン組成物の硬化物の作製方法>
実施例と比較例にそれぞれ示した第1液と第2液を、1:1の割合で計量し、撹拌機で十分に混合し、さらに真空ポンプで脱気を行い、各硬化性シリコーン組成物を作製した。これを、各評価項目に応じた試験片となるように、23℃、24時間で硬化させ、各硬化物を作製した。
【0085】
<硬さの測定方法>
実施例と比較例にそれぞれ示した第1液と第2液を、1:1の割合で計量し、撹拌機で十分に混合し、さらに真空ポンプで脱気を行い、これを、直径30mm×高さ6mmの円柱状のプレス金型に流し込み、100℃60分で硬化させ、円柱状の硬化物を作製した。
アスカーC硬さの測定は、日本ゴム協会規格(SRIS 0101)のアスカーC法に準拠し、硬さ計(高分子計器社製、製品名「ASKER CL-150LJ」)を使用して、温度23℃の環境下で行った。
具体的には、得られた円柱状硬化物と指針の距離が15mmとなるようダンパー高さを調整し、また試験体表面に指針が到達する時間を5秒になるようダンパー落下速度を調整した。指針が試験体に衝突したときの最大値をアスカーC硬さの測定値とし、上記硬さ計を用いて3回測定し、測定結果の平均値を採用した。一般に、アスカーC硬さが小さいほど柔軟性が高いことを示す。
硬化物のアスカーC硬さは30以上70以下の範囲であることが好ましい。
【0086】
<比重の測定方法>
実施例と比較例にそれぞれ示した第1液と第2液を、1:1の割合で計量し、撹拌機で十分に混合し、さらに真空ポンプで脱気を行い、これを、縦約10cm×横約10cm×厚み2mmのシート状のプレス金型に流し込み、100℃60分で硬化させ、硬化物を作製した。 JIS K 6249に準拠し、実施例、比較例で得られた硬化物の比重(密度)(g/cm3)を測定した。
軽量化が重視される用途の場合、比重は3.0以下であることが好ましい。
【0087】
<熱伝導率の測定方法>
実施例と比較例にそれぞれ示した第1液と第2液を、1:1の割合で計量し、撹拌機で十分に混合し、さらに真空ポンプで脱気を行い、これを、直径30mm×高さ6mmの円柱状のプレス金型に流し込み、100℃60分で硬化させ、円柱状の硬化物を作製した。硬化物の熱伝導率はISO 22007-2に準拠したホットディスク法により測定する機械[TPS-500、京都電子工業(株)製]を用いて測定した。上記で作成した2個の円柱状の硬化物にセンサーを挟み、上記装置で熱伝導率を測定した。
熱伝導率は2.0W/m・k以上であることが好ましい。
【0088】
<混合粘度の測定方法>
実施例と比較例にそれぞれ示した第1液と第2液を、1:1の割合で計量し、撹拌機で十分に混合し、JIS K 7117―2に従い、25℃における粘度を測定した。具体的には直径25mmのパラレルプレート間に上記未硬化の熱伝導組成物を乗せ、せん断速度10(1/s)、ギャップ0.5mmで粘度をAnton Paar社製 Physica MR 301で測定した。
粘度500Pa・s以下であれば塗布作業性が良好であるといえる。
【0089】
<復元率の測定方法>
実施例と比較例にそれぞれ示した第1液と第2液を、1:1の割合で計量し、撹拌機で十分に混合し、さらに真空ポンプで脱気を行い、これを、直径30mm×高さ6mmの円柱状のプレス金型に流し込み、100℃60分で硬化させ、円柱状の硬化物を作製した。この円柱状の試験片を圧縮治具を用いて3mmに圧縮し、2時間放置後に取り外し、圧縮治具から取り出した直後及び30分後に試験片の厚みを測定し、下記式により復元率を算出した。
復元率=(初期厚み-圧縮治具から取り出し30分後の厚み)/(初期厚み-圧縮治具から取り出し直後の厚み)×100 (%)
【0090】
<硬化性シリコーン組成物の硬化物の作製方法>
(実施例1)
実施例と比較例にそれぞれ示した第1液と第2液とを、表に示す組成に従い、それぞれ以下の手順により作成した。表に示す各成分の配合比の単位は質量部である。
【0091】
[実施例1、7の第1液]
成分(A)として、アルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン、成分(D)として、シリコーンレジン(オルガノポリシロキサン樹脂)、成分(E)として、白金-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、任意の成分のシランカップリング剤としてn―オクチルトリエトキシシラン、モメンティブ社製A-137、硬化抑制剤として3-メチル-3-ペンテンー1-イン、顔料としてPolyone社製Stan-Tone 50SP01グリーンをそれぞれ計量し加え、プラネタリミキサーを用いて室温で30分間混練りした。
成分(A)は両末端にのみアルケニル基を有し、粘度が120mPa・sである直鎖のジメチルポリシロキサンである。
成分(D)はR3SiO1/2(M)単位およびSiO4/2(Q)単位から成るオルガノポリシロキサン樹脂であり、MQレジンとして公知であり、重量平均分子量が約5,000であるMQレジン(Wacker Chemie社製 MQ樹脂804)である。
その後、任意成分のシランカップリング剤の半量、成分(C)として熱伝導性フィラーである平均粒径90μmの球状アルミナおよび平均粒径4μmの不定形アルミナの半量を加えプラネタリミキサーを用いて室温で15分間混練りした。
球状アルミナとしてはデンカ社製球状アルミナDAM―90(平均粒径90μm)を使用した。
不定形アルミナとしては日本軽金属株式会社製の微粒アルミナ SA34 (平均粒径4μm)を使用した。
その後、シランカップリング剤の半量、成分(C)として球状である熱伝導性フィラーおよび不定形である熱伝導性フィラーの半量を加えプラネタリミキサーを用いて室温で15分間混練りし、第1液を作製した。
【0092】
[実施例1、7の第2液]
成分(A)として、第1液と同じアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン、成分(B)として、両末端に水素原子2個を有する粘度が100mPa・sである直鎖状ジオルガノポリシロキサン、成分(D)として、第1液と同じMQレジン、任意の成分として架橋剤、シランカップリング剤をそれぞれ計量し加え、プラネタリミキサーを用いて室温で30分間混練りした。
任意成分の架橋剤は、側鎖にのみケイ素原子に結合する水素原子を有する、粘度200mPa・sのジメチルポリシロキサンである。
その後、任意成分のシランカップリング剤の半量、第1液と同じ成分(C)として熱伝導性フィラーである平均粒径90μmの球状アルミナおよび平均粒径4μmの不定形アルミナの半量を加えプラネタリミキサーを用いて室温で15分間混練りした。
その後、シランカップリング剤の半量、第1液と同じ成分(C)として球状である熱伝導性フィラーおよび不定形である熱伝導性フィラーの半量を加えプラネタリミキサーを用いて室温で15分間混練りし、第2液を作製した。
【0093】
(実施例2,3,4)
シリコーンレジン(オルガノポリシロキサン樹脂)の種類を変化させた以外は実施例1と同様にして第1液と第2液を作製した。
実施例2に記載のD成分のオルガノポリシロキサン樹脂はR3SiO1/2(M)単位およびSiO4/2(Q)単位から成るオルガノポリシロキサン樹脂であり、MQレジンとして公知であり、重量平均分子量が約3,000であるMQレジンである。アルケニル基を1%~20%含むオルガノポリシロキサン樹脂である。
実施例3に記載のD成分のオルガノポリシロキサン樹脂はR3SiO1/2(M)単位およびSiO4/2(Q)単位から成るオルガノポリシロキサン樹脂であり、MQレジンとして公知であり、重量平均分子量が約2,000であるMQレジンである。アルケニル基を1%~20%含むオルガノポリシロキサン樹脂である。
実施例4に記載のD成分のオルガノポリシロキサン樹脂はR2SiO2/2(D)単位およびRSiO3/2(T)単位から成るオルガノポリシロキサン樹脂であり、DTレジンとして公知であり、重量平均分子量が約6,000であるDTレジンである。アルケニル基を有しないオルガノポリシロキサン樹脂である。
【0094】
(実施例5、6)
大粒径の球状である熱伝導性フィラーの配合量及びMQレジンの配合量を変更した以外は実施例1と同様にして第1液と第2液を作製した。
【0095】
(実施例8)
球状である熱伝導性フィラーとして平均粒径40μmの球状アルミナを使用した以外は実施例1と同様にして第1液と第2液を作製した。
球状アルミナとしてはデンカ社製球状アルミナDAM―40(平均粒径40μm)を使用した。
【0096】
(実施例9)
不定形の熱伝導性アルミナの替りに球状である平均粒径5μmの熱伝導性アルミナを使用した以外は実施例1と同様にして第1液と第2液を作製した。
球状アルミナとしてはデンカ社製球状アルミナDAM―5(平均粒径5μm)を使用した。
【0097】
(実施例10、11、12)
実施例2、3、4の成分(A)として、アルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンを粘度1,000mPa・sを使用した以外は実施例1と同様にして第1液と第2液を作製した。
成分(A)は側鎖にのみアルケニル基を有し、粘度が1,000mPa・sである直鎖のジメチルポリシロキサンである。
【0098】
(実施例13)
実施例12のMQレジンの配合量を成分(A)及び(B)の合計量を100質量部とした場合、MQレジンの配合量を2質量部に変更した以外は、実施例12と同様にして第1液と第2液を作製した。
【0099】
(実施例14)
実施例3のMQレジンの配合量を成分(A)及び(B)の合計量を100質量部とした場合、MQレジンの配合量を10質量部に変更した以外は、実施例3と同様にして第1液と第2液を作製した。
【0100】
(実施例15)
実施例12のMQレジンの配合量を成分(A)及び(B)の合計量を100質量部とした場合、MQレジンの配合量を10質量部に変更した以外は、実施例12と同様にして第1液と第2液を作製した。
(実施例16)
実施例3のMQレジンの配合量を成分(A)及び(B)の合計量を100質量部とした場合、MQレジンの配合量を12質量部に変更した以外は、実施例3と同様にして第1液と第2液を作製した。
(実施例17)
実施例3のMQレジンの配合量を成分(A)及び(B)の合計量を100質量部とした場合、MQレジンの配合量を1.5質量部に変更した以外は、実施例3と同様にして第1液と第2液を作製した。
【0101】
(比較例1)
(D)成分のシリコーンレジンを含まない点以外は、実施例1と同様にして第1液と第2液を作製した。
【0102】
(比較例2)
(D)成分のシリコーンレジンの配合量を変更した以外は、実施例1と同様にして第1液と第2液を作製した。
【0103】
(比較例3)
架橋剤の配合量を変更した以外は、比較例1と同様にして第1液と第2液を作製した。
(比較例4)
(D)成分のシリコーンレジンの配合量を変更した以外は、実施例1と同様にして第1液と第2液を作製した。
(比較例5)
(D)成分のシリコーンレジンをアルケニル基を有しないシリコーンレジンに変更した以外は、実施例1と同様にして第1液と第2液を作製した。比較例5で使用した(D)成分のオルガノポリシロキサン樹脂はR3SiO1/2(M)単位およびSiO4/2(Q)単位から成るオルガノポリシロキサン樹脂であり、MQレジンとして公知であり、重量平均分子量が約7900であるMQレジンである。
【0104】
評価結果は表1、表2に示す通りであった。
実施例1から4はでは、(D)成分のシリコーンレジンとしてMQレジンまたはDTレジンを4質量部配合したが、いずれも復元性は10%以上であり良好で、粘度が200Pa・s以下であり十分に低いことからディスペンス性も良好であった。
実施例5ではで、フィラーの配合量を実施例1より合計250質量部減量し、及びMQレジンの配合量を1質量部に減量した。熱伝導率はやや低下したが、また復元性は10%を確保しており、粘度は500Pa・s以下であり良好であった。
実施例6では実施例5にMQレジンを増量したところ、復元率は30%となり顕著な効果が見られた。フィラーの割合を減量し
実施例7では、実施例6に対し、フィラーの配合量を350質量部増量した。復元率は10%に低下するが、熱伝導率は3.3W/m・Kと高い熱伝導性を有する結果となった。
実施例8では、実施例1の球状の熱伝導フィラーの粒径を40μmに変更したが、粘度、硬さがやや上昇したが、復元率は15%と良好であった。
実施例9では、不定形アルミナを球状アルミナに置き換えたが、粘度、硬さがやや低下し、復元率は15%と良好であった。
実施例10から13では、成分(A)の粘度を120mPa・sから1,000mPa・sに置き換えたところ、粘度は上昇したが、復元率は19%以上となった。
実施例14では、粘度を120mPa・sの粘度の成分(A)を用いMQレジンを10質量部配合した。粘度、硬さが上昇したが、復元率は20%で良好な結果となった。
実施例15では、粘度を1,000mPa・sの粘度の成分(A)を用いMQレジンを10質量部配合した。粘度、硬さはさらに上昇したが、復元率は25%でより良好な結果となった。
実施例16では、粘度を120mPa・sの粘度の成分(A)を用いMQレジンを12質量部配合した。粘度、硬さはさらに上昇したが、復元率は25%でより良好な結果となった。
実施例17では、粘度を120mPa・sの粘度の成分(A)を用いMQレジンを1.5質量部配合した。(D)成分の含有質量部数と、(D)成分の数平均分子量の積3,000以下であるが、復元率は11%であった。
【0105】
比較例1では、オルガノポリシロキサン樹脂を配合していないが、復元率は0%であった。つまり一旦押しつぶされたギャップフィラーが基材から剥がれた場合、密着性が悪くなり、放熱特性が悪化する懸念がある。
比較例2はオルガノポリシロキサン樹脂の配合量を極限まで減らし、粘度上昇を抑える試みた例であるが、復元性は5%と低く、十分な復元性を有するとは言えない。
比較例3では、オルガノポリシロキサン樹脂を配合しないで架橋密度を上げることにより復元性の向上を試みた例である硬さが90となり、ギャップフィラーの柔軟性が損なわれており、振動による追従性や応力緩和の点で好ましくない。
比較例4はオルガノポリシロキサン樹脂の配合量が少なく、レジンの分子量×配合量の積が3,000以下となる配合であるが、復元性は5%と低く、十分な復元性を有するとは言えない。
比較例5はアルケニル基を有しないオルガノポリシロキサン樹を配合したが、復元性は5%と低く、十分な復元性を有するとは言えない。
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】
【手続補正書】
【提出日】2023-01-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0104
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0104】
評価結果は表1、表2に示す通りであった。
実施例1から4はでは、(D)成分のシリコーンレジンとしてMQレジンまたはDTレジンを4質量部配合したが、いずれも復元性は10%以上であり良好で、粘度が200Pa・s以下であり十分に低いことからディスペンス性も良好であった。
実施例5ではで、フィラーの配合量を実施例1より合計250質量部減量し、及びMQレジンの配合量を1質量部に減量した。熱伝導率はやや低下したが、また復元性は10%を確保しており、粘度は500Pa・s以下であり良好であった。
実施例6では実施例5にMQレジンを増量したところ、復元率は30%となり顕著な効果が見られた。
実施例7では、実施例6に対し、フィラーの配合量を350質量部増量した。復元率は10%に低下するが、熱伝導率は3.3W/m・Kと高い熱伝導性を有する結果となった。
実施例8では、実施例1の球状の熱伝導フィラーの粒径を40μmに変更したが、粘度、硬さがやや上昇したが、復元率は15%と良好であった。
実施例9では、不定形アルミナを球状アルミナに置き換えたが、粘度、硬さがやや低下し、復元率は15%と良好であった。
実施例10から13では、成分(A)の粘度を120mPa・sから1,000mPa・sに置き換えたところ、粘度は上昇したが、復元率は19%以上となった。
実施例14では、粘度を120mPa・sの粘度の成分(A)を用いMQレジンを10質量部配合した。粘度、硬さが上昇したが、復元率は20%で良好な結果となった。
実施例15では、粘度を1,000mPa・sの粘度の成分(A)を用いMQレジンを10質量部配合した。粘度、硬さはさらに上昇したが、復元率は25%でより良好な結果となった。
実施例16では、粘度を120mPa・sの粘度の成分(A)を用いMQレジンを12質量部配合した。粘度、硬さはさらに上昇したが、復元率は25%でより良好な結果となった。
実施例17では、粘度を120mPa・sの粘度の成分(A)を用いMQレジンを1.5質量部配合した。(D)成分の含有質量部数と、(D)成分の数平均分子量の積3,000以下であるが、復元率は11%であった。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項9
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項9】
請求項8に記載のギャップフィラーを有する電子機器。