(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122498
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】装置、熱交換ユニット、接続体、発熱ユニットおよび熱交換器
(51)【国際特許分類】
H05K 7/20 20060101AFI20230825BHJP
F28D 15/02 20060101ALI20230825BHJP
H01L 23/427 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
H05K7/20 Q
F28D15/02 101L
H01L23/46 B
H01L23/46 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026237
(22)【出願日】2022-02-22
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業「大学発新産業創出プログラム社会還元加速プログラム(SCORE)大学推進型 拠点都市環境整備型」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100128886
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 裕弘
(72)【発明者】
【氏名】長野 方星
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 紀志
(72)【発明者】
【氏名】冨田 樹
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322DB02
5E322DB06
5E322DB09
5E322EA10
5E322FA01
5E322FA04
5F136CC11
5F136CC26
5F136CC35
(57)【要約】 (修正有)
【課題】発熱体に対する熱交換器の取り付けを容易とする装置、熱交換ユニット、接続体、発熱ユニット及び熱交換器を提供する。
【解決手段】装置であるコンピュータ600において、ループ型ヒートパイプ1は、発熱体500と、発熱体500から熱を吸収して液相の作動流体を蒸発させる蒸発器101を有し、蒸発器101から流出した気相の作動流体を凝縮器105に凝縮させ蒸発器101に環流させる熱交換器650と、発熱体と蒸発器とを接続する蒸発器接続体200と、を備える熱交換器であって、蒸発器接続体200は、蒸発器101が挿入される挿入口を有し、挿入口に挿入された蒸発器を保持する。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体と、
前記発熱体から熱を吸収して液相の作動流体を蒸発させる蒸発器を有し、前記蒸発器から流出した気相の作動流体を凝縮させ前記蒸発器に環流させる熱交換器と、
前記発熱体と前記蒸発器とを接続する接続体と、
を備える装置であって、
前記接続体は、前記蒸発器が挿入される挿入口を有し、前記挿入口に挿入された前記蒸発器を保持する
装置。
【請求項2】
前記蒸発器は、平板状に形成され、第1板面と、前記第1板面と反対側の板面である第2板面とを有し、
前記接続体は、前記挿入口に挿入された前記蒸発器の前記第1板面を支持する面である第1支持面と、前記蒸発器の前記第2板面を支持する面である第2支持面とを有する
請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記接続体は、前記挿入口に挿入される前記蒸発器の先端が突き当てられる被突当面を有する
請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記蒸発器が前記挿入口に挿入されることにともない、前記蒸発器と前記接続体とが互いに掛かり合う掛かり部が設けられる
請求項1乃至3のいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
ユーザに押圧される被押圧部を有し、前記被押圧部が押圧されることにより前記掛かり部を移動させ、前記挿入口から前記蒸発器を取り出し可能とする移動部が設けられる
請求項4記載の装置。
【請求項6】
前記蒸発器は、
液相の作動流体が流入する流入口と、気相の作動流体が流出する流出口とが設けられ、
前記流入口と前記流出口とは、前記接続体の前記挿入口に挿入される前記蒸発器の端部とは反対側の端部に設けられる
請求項1乃至5のいずれか1項記載の装置。
【請求項7】
前記蒸発器は、平板状に形成され、
前記流入口および前記流出口は、前記蒸発器の厚み方向中央部に設けられる
請求項6記載の装置。
【請求項8】
前記蒸発器は、前記蒸発器における前記流入口から流入する気相の作動流体の流路と前記流出口から流出する気相の作動流体の流路との間に、気相の作動流体が液相の作動流体を加熱することを抑制する抑制構造が設けられる
請求項6または7記載の装置。
【請求項9】
前記蒸発器に接続され、内部を前記作動流体が流れる作動流体管が設けられ、
前記作動流体管は、前記流入口に流入する液相の作動流体が流れる液管と、前記流出口から流出する気相の作動流体が流れる気管と、前記液管および前記気管を内部に配置する外管と、前記外管の内部であって前記液管と前記気管との間に設けられる断熱材とを備える
請求項6乃至8のいずれか1項記載の装置。
【請求項10】
前記蒸発器は、
平板状に形成され、一方の板面が前記発熱体に向けて配置される筐体と、
平板状に形成され、前記筐体の内部に収容されるとともに、前記発熱体から熱を吸収して液相の作動流体を毛細管力により移動させながら気相へと蒸発させる蒸発体を有し、
前記蒸発体は、前記筐体の内部において前記筐体の厚み方向における中央よりも前記一方の板面側で、かつ前記筐体の内部において前記挿入口とは反対側に配置される
請求項1乃至9のいずれか1項記載の装置。
【請求項11】
前記接続体は、前記接続体の前記挿入口に挿入された前記蒸発器の板面を支持する支持面と、前記支持面に対し前記蒸発器を押し付ける押し付け機構とを有する
請求項1乃至10のいずれか1項記載の装置。
【請求項12】
前記熱交換器は、放熱体を介して熱を放熱して前記蒸発器から流出した気相の作動流体を凝縮させ前記蒸発器に環流させる凝縮器を有し、
前記装置は、前記放熱体と前記凝縮器とを接続する他の接続体を有し、
前記他の接続体は、前記凝縮器が挿入される他の挿入口を有し、前記他の挿入口に挿入された前記凝縮器を保持する
請求項1乃至11のいずれか1項記載の装置。
【請求項13】
発熱体と、
前記発熱体から熱を吸収して液相の作動流体を蒸発させる蒸発器と、
前記蒸発器から流出した気相の作動流体を凝縮させ前記蒸発器に環流させる凝縮器と、
前記凝縮器から熱を吸収して放熱する放熱体と、
前記放熱体と前記凝縮器とを接続する凝縮接続体と、
を備える装置であって、
前記凝縮接続体は、
前記凝縮器が挿入される凝縮挿入口を有し、
前記凝縮挿入口に挿入された前記凝縮器を保持する
装置。
【請求項14】
発熱体から熱を吸収して液相の作動流体を蒸発させる蒸発器を有し、前記蒸発器から流出した気相の作動流体を凝縮させ前記蒸発器に環流させる熱交換器と、
前記発熱体と前記蒸発器とを接続する接続体と、
を備える熱交換ユニットであって、
前記接続体は、
前記蒸発器が挿入される挿入口を有し、
前記挿入口に挿入された前記蒸発器を保持する
熱交換ユニット。
【請求項15】
発熱体から熱を吸収して液相の作動流体を蒸発させる蒸発器を有し、前記蒸発器から流出した気相の作動流体を凝縮させ前記蒸発器に環流させる熱交換器に設けられ前記発熱体と前記蒸発器とを接続するとともに、
前記蒸発器が挿入される挿入口を有し、
前記挿入口に挿入された前記蒸発器を保持する
接続体。
【請求項16】
発熱体と、
前記発熱体から熱を吸収して液相の作動流体を蒸発させる蒸発器を有し、前記蒸発器から流出した気相の作動流体を凝縮させ前記蒸発器に環流させる熱交換器に設けられ前記発熱体と前記蒸発器とを接続する接続体と、
を備える発熱ユニットであって、
前記接続体は、
前記蒸発器が挿入される挿入口を有し、
前記挿入口に挿入された前記蒸発器を保持する
発熱ユニット。
【請求項17】
発熱体から熱を吸収して液相の作動流体を蒸発させる蒸発器を有し、前記蒸発器から流出した気相の作動流体を凝縮させ前記蒸発器に環流させる熱交換器であって、
前記蒸発器は、
前記蒸発器が挿入される挿入口が設けられた接続体によって前記発熱体と接続され、
前記挿入口に挿入されることにともない、前記接続体と掛かり合う掛かり部が設けられる
熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置、熱交換ユニット、接続体、発熱ユニットおよび熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、設置角度の如何に関わらず効率的に発熱部品を冷却するべく、蒸発部、凝縮部、及び液戻り管の内部にそれぞれ設けられるとともに、毛細管力を生じさせるウィックを有するループ型ヒートパイプが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば電子機器などを組み立てる工程などにおいて、装置が備える発熱体に対して、熱交換器を取り付ける工程を簡略化したいという要望がある。
そこで、本発明は、発熱体に対する熱交換器の取り付けを容易とする装置などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、上記課題を解決する手段として、以下に記載の発明が挙げられる。すなわち、請求項1に記載の発明は、発熱体と、前記発熱体から熱を吸収して液相の作動流体を蒸発させる蒸発器を有し、前記蒸発器から流出した気相の作動流体を凝縮させ前記蒸発器に環流させる熱交換器と、前記発熱体と前記蒸発器とを接続する接続体と、を備える装置であって、前記接続体は、前記蒸発器が挿入される挿入口を有し、前記挿入口に挿入された前記蒸発器を保持する装置である。
請求項2に記載の発明は、前記蒸発器は、平板状に形成され、第1板面と、前記第1板面と反対側の板面である第2板面とを有し、前記接続体は、前記挿入口に挿入された前記蒸発器の前記第1板面を支持する面である第1支持面と、前記蒸発器の前記第2板面を支持する面である第2支持面とを有する請求項1記載の装置である。
請求項3に記載の発明は、前記接続体は、前記挿入口に挿入される前記蒸発器の先端が突き当てられる被突当面を有する請求項2記載の装置である。
請求項4に記載の発明は、前記蒸発器が前記挿入口に挿入されることにともない、前記蒸発器と前記接続体とが互いに掛かり合う掛かり部が設けられる請求項1乃至3のいずれか1項記載の装置である。
請求項5に記載の発明は、ユーザに押圧される被押圧部を有し、前記被押圧部が押圧されることにより前記掛かり部を移動させ、前記挿入口から前記蒸発器を取り出し可能とする移動部が設けられる請求項4記載の装置である。
請求項6に記載の発明は、前記蒸発器は、液相の作動流体が流入する流入口と、気相の作動流体が流出する流出口とが設けられ、前記流入口と前記流出口とは、前記接続体の前記挿入口に挿入される前記蒸発器の端部とは反対側の端部に設けられる請求項1乃至5のいずれか1項記載の装置である。
請求項7に記載の発明は、前記蒸発器は、平板状に形成され、前記流入口および前記流出口は、前記蒸発器の厚み方向中央部に設けられる請求項6記載の装置である。
請求項8に記載の発明は、前記蒸発器は、前記蒸発器における前記流入口から流入する気相の作動流体の流路と前記流出口から流出する気相の作動流体の流路との間に、気相の作動流体が液相の作動流体を加熱することを抑制する抑制構造が設けられる請求項6または7記載の装置である。
請求項9に記載の発明は、前記蒸発器に接続され、内部を前記作動流体が流れる作動流体管が設けられ、前記作動流体管は、前記流入口に流入する液相の作動流体が流れる液管と、前記流出口から流出する気相の作動流体が流れる気管と、前記液管および前記気管を内部に配置する外管と、前記外管の内部であって前記液管と前記気管との間に設けられる断熱材とを備える請求項6乃至8のいずれか1項記載の装置である。
請求項10に記載の発明は、前記蒸発器は、平板状に形成され、一方の板面が前記発熱体に向けて配置される筐体と、平板状に形成され、前記筐体の内部に収容されるとともに、前記発熱体から熱を吸収して液相の作動流体を毛細管力により移動させながら気相へと蒸発させる蒸発体を有し、前記蒸発体は、前記筐体の内部において前記筐体の厚み方向における中央よりも前記一方の板面側で、かつ前記筐体の内部において前記挿入口とは反対側に配置される請求項1乃至9のいずれか1項記載の装置である。
請求項11に記載の発明は、前記接続体は、前記接続体の前記挿入口に挿入された前記蒸発器の板面を支持する支持面と、前記支持面に対し前記蒸発器を押し付ける押し付け機構とを有する請求項1乃至10のいずれか1項記載の装置である。
請求項12に記載の発明は、前記熱交換器は、放熱体を介して熱を放熱して前記蒸発器から流出した気相の作動流体を凝縮させ前記蒸発器に環流させる凝縮器を有し、前記装置は、前記放熱体と前記凝縮器とを接続する他の接続体を有し、前記他の接続体は、前記凝縮器が挿入される他の挿入口を有し、前記他の挿入口に挿入された前記凝縮器を保持する請求項1乃至11のいずれか1項記載の装置である。
請求項13に記載の発明は、発熱体と、前記発熱体から熱を吸収して液相の作動流体を蒸発させる蒸発器と、前記蒸発器から流出した気相の作動流体を凝縮させ前記蒸発器に環流させる凝縮器と、前記凝縮器から熱を吸収して放熱する放熱体と、前記放熱体と前記凝縮器とを接続する凝縮接続体と、を備える装置であって、前記凝縮接続体は、前記凝縮器が挿入される凝縮挿入口を有し、前記凝縮挿入口に挿入された前記凝縮器を保持する装置である。
請求項14に記載の発明は、発熱体から熱を吸収して液相の作動流体を蒸発させる蒸発器を有し、前記蒸発器から流出した気相の作動流体を凝縮させ前記蒸発器に環流させる熱交換器と、前記発熱体と前記蒸発器とを接続する接続体と、を備える熱交換ユニットであって、前記接続体は、前記蒸発器が挿入される挿入口を有し、前記挿入口に挿入された前記蒸発器を保持する熱交換ユニットである。
請求項15に記載の発明は、発熱体から熱を吸収して液相の作動流体を蒸発させる蒸発器を有し、前記蒸発器から流出した気相の作動流体を凝縮させ前記蒸発器に環流させる熱交換器に設けられ前記発熱体と前記蒸発器とを接続するとともに、前記蒸発器が挿入される挿入口を有し、前記挿入口に挿入された前記蒸発器を保持する接続体である。
請求項16に記載の発明は、発熱体と、前記発熱体から熱を吸収して液相の作動流体を蒸発させる蒸発器を有し、前記蒸発器から流出した気相の作動流体を凝縮させ前記蒸発器に環流させる熱交換器に設けられ前記発熱体と前記蒸発器とを接続する接続体と、を備える発熱ユニットであって、前記接続体は、前記蒸発器が挿入される挿入口を有し、前記挿入口に挿入された前記蒸発器を保持する発熱ユニットである。
請求項17に記載の発明は、発熱体から熱を吸収して液相の作動流体を蒸発させる蒸発器を有し、前記蒸発器から流出した気相の作動流体を凝縮させ前記蒸発器に環流させる熱交換器であって、前記蒸発器は、前記蒸発器が挿入される挿入口が設けられた接続体によって前記発熱体と接続され、前記挿入口に挿入されることにともない、前記接続体と掛かり合う掛かり部が設けられる熱交換器である。
【発明の効果】
【0006】
本明細書に開示される技術によれば、発熱体に対する熱交換器の取り付けを容易とする装置などを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施の形態に係るループ型ヒートパイプを示す概略構成図である。
【
図2】本実施の形態に係る蒸発器の分解斜視図である。
【
図4】(A)および(B)は、蒸発器本体の詳細構成を説明する図である。
【
図5】(A)および(B)は、蒸発器本体の内部空間を説明する図である。
【
図6】本実施の形態に係る凝縮器の分解斜視図である。
【
図8】(A)および(B)は、蒸発器接続体および凝縮器接続体の概略構成を説明する図である。
【
図9】(A)および(B)は、蒸発器接続体の詳細構成を説明する図である。
【
図10-1】(A)および(B)は、蒸発器を蒸発器接続体に装着する動作を示す図である。
【
図10-2】(C)は、蒸発器を蒸発器接続体に装着する動作を示す図である。
【
図11】(A)および(B)は、ループ型ヒートパイプを備える装置を説明する図である。
【
図12】(A)および(B)は、ループ型ヒートパイプの変形例を説明する図である。
【
図13】(A)および(B)は、ループ型ヒートパイプの他の変形例を説明する図である。
【
図14】ループ型ヒートパイプのさらに他の変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本実施の形態について詳細に説明する。
<ループ型ヒートパイプ1の構成>
図1は、本実施の形態に係るループ型ヒートパイプ1を示す概略構成図である。
まず、
図1を参照して、本実施の形態が適用されるループ型ヒートパイプ1の構成を説明する。本実施の形態が適用されるループ型ヒートパイプ1は、冷却素子の一例であり、例えば電子機器等の筺体の内部に備えられる中央演算処理装置(CPU)などの発熱体500を、外部から動力を供給することなく冷却するため、作動流体を循環させるよう構成されている。
【0009】
詳細に説明すると、ループ型ヒートパイプ1は、作動流体が気化する際の潜熱を利用して発熱体500を冷却するため作動流体を蒸発させる蒸発器(Evaporator)101と、この蒸発器101で気化された作動流体を放熱して液化する凝縮器(Condenser)105とを有する。
【0010】
また、ループ型ヒートパイプ1は、蒸発器101で気化された作動流体を凝縮器105まで送る蒸気管(Vapor Line)107と、凝縮器105で液化された作動流体を蒸発器101まで送る液管(Liquid Line)109とを備えている。なお、図示の蒸気管107および液管109は、曲げ変形可能である。そして、ループ型ヒートパイプ1内には液相および気相の間で相変化する作動流体が充填されている。なお、作動流体は、例えば、水、アルコール、アンモニア等が用いられる。
【0011】
<ループ型ヒートパイプ1の動作>
次に、
図1を参照して、ループ型ヒートパイプ1の動作を説明する。
発熱体500において発生する熱は、蒸発器101に伝達される(矢印C1参照)。蒸発器101において熱を吸収した作動流体は気化し、蒸気管107を通って(矢印A1参照)凝縮器105へ送られる(矢印A2参照)。凝縮器105へ送られた作動流体は、放熱体400を介して熱を放出して(矢印C2参照)液化する。そして、液化した作動流体は、液管109を通って(矢印A3参照)再び蒸発器101へと送られる(矢印A4参照)。
【0012】
ここで、蒸発器101は、発熱体500に設けられた蒸発器接続体200に対して着脱可能に固定されている。さらに説明をすると、蒸発器101は、蒸発器接続体200の内部に挿入することにともない、蒸発器接続体200に対して固定される。また、凝縮器105は、放熱を行う放熱体400に設けられた凝縮器接続体300に対して着脱可能に固定されている。さらに説明をすると、凝縮器105は、凝縮器接続体300の内部に挿入することにともない、凝縮器接続体300に対して固定される。
【0013】
本実施の形態に係る蒸発器101および凝縮器105は、平板状である。言い替えると、本実施の形態に係る蒸発器101および凝縮器105は、小型薄型化された、所謂カード型の形状である。また、本実施の形態においては、熱源である発熱体500と、放熱先である放熱体400との接続に、コネクタ構造機構である蒸発器接続体200および凝縮器接続体300が用いられる。
【0014】
ここで、蒸気管107および液管109は、ステンレスや樹脂などにより曲げ変形可能に構成される。すなわち、輸送管である蒸気管107および液管109は、フレキシブル化したケーブルとして構成される。そして、ループ型ヒートパイプ1が、フレキシブルなケーブルである蒸気管107および液管109と、着脱可能なコネクタである蒸発器101および凝縮器105とを備えることで、所謂電気ソケット等を用いた電気の送電のように、ユーザによる熱輸送の取り扱いが容易となる。
【0015】
付言すると、図示の例における蒸発器101は、蒸気管107および液管109各々の端部に設けられる。さらに説明をすると、蒸発器101においては、作動流体の流出と作動流体の流入とが、共通する面(後述する
図3における蒸発第3面118参照)で行われる。すなわち、蒸発器101においては、作動流体が流入する向きと同一の方向に対して作動流体が流出する。同様に、図示の例における凝縮器105は、蒸気管107および液管109各々の端部に設けられる。さらに説明をすると、凝縮器105においては、作動流体の流出と作動流体の流入とが、共通する面(後述する
図7における凝縮第1面165参照)で行われる。すなわち凝縮器105においては、作動流体が流入する向きと同一の方向に対して作動流体が流出する。
【0016】
なお、以下の説明においては、
図1における蒸気管107および液管109の長手方向に沿う方向を、単に長手方向ということがある。また、
図1における蒸発器101および凝縮器105の厚み方向、すなわち
図1における上下方向を、単に厚み方向ということがある。また、
図1における長手方向および厚み方向に交差する方向を、単に幅方向ということがある。なお、ここでの上下方向など向きの名称は、便宜上のものであり、ループ型ヒートパイプ1を設置する向きを限定するものではない。
【0017】
<蒸発器101>
(蒸発器101の概略構成)
図2は、本実施の形態に係る蒸発器101の分解斜視図である。
次に、
図2を参照して、本実施の形態が適用される蒸発器101の概略構成を説明する。
【0018】
図2に示すように、蒸発器101は、蒸発器本体110と、蒸発器本体110の内部に設けられるウィック130と、蒸発器本体110およびウィック130を覆う蒸発器第1蓋体140と、蒸発器第1蓋体140とは反対側から蒸発器本体110を覆う蒸発器第2蓋体149とを有する。
【0019】
本実施の形態に係る蒸発器本体110は、概形が平板状である。また、蒸発器本体110、蒸発器第1蓋体140および蒸発器第2蓋体149は、内部にウィック130を収容する筐体として機能する。蒸発器本体110、蒸発器第1蓋体140および蒸発器第2蓋体149は、例えば銅やアルミなどの金属や樹脂などにより形成される。蒸発器本体110は、蒸気管107および液管109が接続される。そして、蒸発器本体110の内部には作動流体が充填されている。
【0020】
本実施の形態に係るウィック130は、概形が平板状である。また、ウィック130は、多孔質金属(ポーラスメタル)などの多孔質体により形成される。このウィック130は、作動流体に毛細管力を発生させ、結果として作動流体を移動させる。ウィック130の実効空孔径は、0.1~20μmである。また、ウィック130の空孔率は、25~70%である。なお、実効空孔径および空孔率の測定法は特に限定されない。例えば、水中含侵法による見かけ密度測定、水銀圧入法による気孔径分布測定、あるいはX線CTによる気孔観察などにより測定してもよい。
【0021】
また、ウィック130は、上述の金属製の多孔質体に限定されるものではなく、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの樹脂製の多孔質体、セラミック多孔質体、ガラス多孔質体、多孔質繊維など、その内部に多数の孔、すなわち空隙が形成された材料であればよい。また、ウィック130として、熱伝導率が低い材質を用いると、蒸発器101における熱リークを低減することができる。なお、熱リークをより低減したい場合、一般的に熱伝導率が金属よりも低い非金属製の材料を用いることが好ましい。
【0022】
ここで、ウィック130の位置は、例えば蒸発器本体110の内部に配置されたウィック130における板面の外周をレーザで蒸発器本体110に溶接することにより固定される。また、蒸発器第1蓋体140および蒸発器第2蓋体149は、例えば蒸発器本体110を覆う位置に配置された蒸発器第1蓋体140および蒸発器第2蓋体149における板面の外周を、レーザで溶接することや所謂ろう付けすることにより固定される。
【0023】
(蒸発器本体110の詳細構成)
図3は、蒸発器本体110の詳細構成を説明する図である。
図4(A)および(B)は、蒸発器本体110の詳細構成を説明する図である。より具体的には、
図4(A)は、蒸発器本体110の蒸発第2面117側からみた斜視図である。
図4(B)は、
図3の面IVB-IVBにおける断面図である。
【0024】
次に、
図3および
図4を参照しながら、蒸発器本体110の詳細構成を説明する。
図3に示すように、蒸発器本体110は、略平板状の蒸発器基部111を有する。蒸発器基部111は、幅方向および長手方向に延びる板面である蒸発第1面116および蒸発第2面117(
図4(A)参照)を備える。また、蒸発器基部111は、幅方向および厚み方向に延びる側面である蒸発第3面118および蒸発第4面119を備える。
【0025】
また、蒸発器基部111の幅方向両側には、蒸発第3面118側から長手方向に沿って伸びる蒸発器第1溝部112および蒸発器第1溝部114が形成される。この蒸発器第1溝部112および蒸発器第1溝部114が形成されることにより、蒸発器基部111の幅方向両側には、蒸発器第1爪部113および蒸発器第2爪部115が設けられる。蒸発器第1爪部113および蒸発器第2爪部115は、所謂スリットバネとして機能する。
【0026】
ここで、蒸発器第1爪部113および蒸発器第2爪部115は、幅方向に沿って蒸発器基部111から離間する向きに突出する蒸発器第1ピン121および蒸発器第2ピン123を備える。図示の例における蒸発器第1ピン121および蒸発器第2ピン123は、蒸発器第1爪部113および蒸発器第2爪部115の長手方向中央部に設けられる。また、蒸発器第1爪部113および蒸発器第2爪部115は、幅方向に沿って蒸発器基部111から離間する向きに突出する第1幅広部126および第2幅広部128を備える。図示の例における第1幅広部126および第2幅広部128は、蒸発器第1爪部113および蒸発器第2爪部115の長手方向蒸発第3面118側の端部に設けられる。
【0027】
ここで、蒸発器第1ピン121および蒸発器第2ピン123は、蒸発器本体110を蒸発器接続体200に留めるためのピンとして機能する。すなわち、蒸発器第1ピン121および蒸発器第2ピン123を設けることにより、蒸発器101の位置がずれることが抑制される。また、第1幅広部126および第2幅広部128は、ユーザが指で押圧する(矢印D12およびD13参照)つまみ部として機能する。詳細は後述するが、ユーザが第1幅広部126および第2幅広部128を押圧することで、蒸発器第1ピン121および蒸発器第2ピン123の固定が外れ、蒸発器本体110が蒸発器接続体200から取り外し可能となる。
【0028】
また、蒸発器基部111の蒸発第1面116には、液溜め凹部131および蒸発凹部133が設けられる。液溜め凹部131および蒸発凹部133の各々は、蒸発第1面116において略長方形状の開口を形成する。ここで、液溜め凹部131および蒸発凹部133は、長手方向において並べて形成される。また、液溜め凹部131は、蒸発凹部133よりも幅方向の寸法が小さい。また、液溜め凹部131は、蒸発凹部133よりも深さが浅い(厚み方向寸法が小さい)。
【0029】
液溜め凹部131は、液相の作動流体を収容する。なお、作動流体は、ループ型ヒートパイプ1の製造段階において、チャージポート139(
図4(A)参照)を介して液溜め凹部131内に導入される。また、チャージポート139は、作動流体を導入した後に塞がれる。
【0030】
蒸発凹部133は、ウィック130を収容する。蒸発凹部133の内部は、ウィック130によって、液相の作動流体が収容される空間(後述する液相領域R1)と、気相の作動流体が収容される空間(後述する気相領域R3)とに区画される。さらに説明をすると、蒸発凹部133においては、液相の作動流体が気化し気相の作動流体となる。
【0031】
また、液溜め凹部131の底部には、厚み方向に突出する略円柱である液溜め支柱132が形成される。この液溜め支柱132は、液溜め凹部131の内部において蒸発器第1蓋体140を支持する。すなわち、液溜め支柱132は、液相の作動流体が収容される空間を確保する。
【0032】
蒸発凹部133の底部には、幅方向に延びる突起である蒸気案内突部135が形成される。この蒸気案内突部135は、所定の間隔で長手方向に複数並べて設けられている。この蒸気案内突部135同士の間の空間は、気相の作動流体が流れる蒸気流路137である。付言すると、気相の作動流体は、蒸気流路137に沿って幅方向に案内される。
【0033】
蒸発器基部111は、蒸発第3面118に形成され、長手方向に沿って延びる貫通孔である蒸発器流入口136および蒸発器流出口138を有する。蒸発器流入口136は、蒸発器基部111の外部と液溜め凹部131内の空間とを連続させる。同様に、蒸発器流出口138は、蒸発器基部111の外部と蒸発凹部133内の空間とを連続させる。
【0034】
ここで、液溜め凹部131は、蒸発凹部133よりも長手方向において蒸発第3面118側に設けられている。そして、液溜め凹部131は、幅方向において蒸発器流出口138と並ぶ配置である。そこで、図示の例においては、液溜め凹部131と蒸発器流出口138とに挟まれる領域に、開口である蒸発器スリット141が形成されている。この蒸発器スリット141が設けられていることにより、蒸発器流出口138を通過する気相の作動流体が、液溜め凹部131の内部に溜められる液相の作動流体を加熱することが抑制される。すなわち、蒸発器スリット141は、蒸発器流出口138の熱が液溜め凹部131に伝わりにくくし、蒸発効率を向上させる(熱リークを低減させる)。付言すると、図示の蒸発器基部111における蒸発器スリット141の蒸発第3面118側は、幅方向において連続する連続部142が形成されている。この連続部142が形成されていることにより、蒸発器基部111における幅方向の強度が確保される。
【0035】
さて、
図4(A)に示すように、蒸発器基部111は、蒸発第2面117に形成された、蒸発器凹部143および加工孔145を備える。ここで、蒸発器凹部143は、液溜め凹部131の裏面に形成される凹部である。この蒸発器凹部143が設けられていることにより、蒸発第2面117における液溜め凹部131の裏面となる領域が、蒸発器接続体200から離間する配置となる。このことにより、液溜め凹部131に溜められる液相の作動流体が、蒸発器接続体200によって加熱されることが抑制される。すなわち、蒸発器凹部143は、蒸発器接続体200から熱が液溜め凹部131に伝わりにくくし、蒸発効率を向上させる。
【0036】
また、
図4(B)に示すように、加工孔145は、ループ型ヒートパイプ1の製造段階において、第1蒸気路146および第2蒸気路147を形成するための開口である。この加工孔145は、蒸発器第2蓋体149によって覆われる。ここで、第1蒸気路146は、長手方向に沿う平板状の空間である。また、第2蒸気路147は、厚み方向に沿う略円柱状の空間である。そして、第1蒸気路146および第2蒸気路147は、互いに交差して設けられる。この第1蒸気路146および第2蒸気路147は、蒸発器流出口138と蒸発凹部133とを連続させる空間である。
【0037】
(蒸発器本体110の内部空間)
図5(A)および(B)は、蒸発器本体110の内部空間を説明する図である。より具体的には、
図5(A)は、蒸発器本体110の内部空間を示す概念図であり、
図5(B)は、蒸発第3面118側からみた液相案内領域R13と気相案内領域R33との配置を示す概念図である。
【0038】
次に、
図5(A)を参照しながら、蒸発器本体110の内部空間を説明する。
蒸発器101の内部には、上記のようにウィック130が配置される。このウィック130は、蒸発器本体110の内部を、液相領域R1と気相領域R3とに区画する。蒸発器101の内部空間において、ウィック130を挟んで発熱体500とは反対側(図中上側)に位置する空間は、液相の作動流体が液相の作動流体が通過する液相領域R1である。また、蒸発器101の内部空間において、ウィック130よりも発熱体500側(図中下側)に位置する空間は、気相の作動流体が通過する気相領域R3である。
【0039】
ここで、液相領域R1は、ウィック130と対向する領域である液相ウィック対向領域R11と、液相ウィック対向領域R11と連続する領域であり液相ウィック対向領域R11よりも液管109側に位置する液相案内領域R13とを有する。なお、液相ウィック対向領域R11は、蒸発凹部133(
図3参照)の内部空間の一部である。また、液相案内領域R13は、液溜め凹部131(
図3参照)の内部空間である。
【0040】
また、気相領域R3は、ウィック130と対向する領域である気相ウィック対向領域R31と、気相ウィック対向領域R31と連続する領域であり気相ウィック対向領域R31よりも蒸気管107側に位置する気相案内領域R33とを有する。なお、気相ウィック対向領域R31は、蒸発凹部133(
図3参照)の一部である。また、気相案内領域R33は、第1蒸気路146、第2蒸気路147および蒸発器流出口138(
図4(B)参照)の内部空間である。
【0041】
(蒸発器101の動作)
次に、
図1、
図3および
図5(A)を参照しながら、蒸発器本体110の動作を説明する。
図5(A)に示すように、液管109から蒸発器本体110内部に流入した液相の作動流体(矢印A11参照)は、液相案内領域R13を経て、液相ウィック対向領域R11に流入する(矢印A21参照)。そして、液相ウィック対向領域R11内の液相の作動流体は、ウィック130に浸透する。そして、液相の作動流体は、ウィック130の毛細管力によりウィック130内を移動しながら(矢印A22参照)、発熱体500の熱により加熱され気化する。この気化した作動流体は、気相ウィック対向領域R31において蒸気流路137(
図3参照)に沿って流れる(矢印A23参照)。そして、気相の作動流体は、向きを変えながら気相案内領域R33を通過し(矢印A24、A25参照)、蒸気管107から流出し(矢印A13参照)、凝縮器105(
図1参照)へと送られる。
【0042】
一方、凝縮器105(
図1参照)で液化した作動流体は、液管109を介して蒸発器本体110内へと流入する(矢印A11参照)。蒸発器本体110内へ流入した作動流体は、液相案内領域R13および液相ウィック対向領域R11を経てウィック130に浸透する。このように、ウィック130において作動流体の流れが途切れることなく、上記のサイクルが繰り返される。そして、発熱体500において発生した熱が、蒸発器101から凝縮器105(
図1参照)へと輸送される。
【0043】
(蒸発器101の厚み)
次に、
図5(A)および(B)を参照しながら、蒸発器101の厚みについて説明をする。
【0044】
まず、本実施の形態においては、蒸発器本体110の厚み方向の寸法を抑制するため、ウィック130と液相領域R1とを互いにずらして配置している。具体的には、
図5(A)に示すように、長手方向において、液相ウィック対向領域R11と異なる位置に液相案内領域R13が形成されている。このウィック130とは対向しない位置に配置された液相案内領域R13において液相の作動流体を収容可能とすることにより、液相ウィック対向領域R11の厚み方向の寸法が抑制され得る。
【0045】
ここで、
図5(B)に示すように、液相の作動流体を収容する空間を確保するため、厚み方向におけるウィック130の位置は、蒸発器本体110の中央L1よりも蒸気案内突部135寄りに配置されている。このウィック130の配置にともない、気相ウィック対向領域R31は、蒸発器本体110の中央L1よりもオフセットされた位置となる。一方で、例えば蒸発器本体110の強度を確保するため、蒸発器流出口138の位置は、厚み方向において蒸発器本体110の中央L1に配置される。そこで、図示の例においては、第1蒸気路146および第2蒸気路147が形成される。第1蒸気路146および第2蒸気路147を形成することにより、厚み方向において気相ウィック対向領域R31と蒸発器流出口138とがオフセットされた位置関係にあっても、ウィック130で気化された作動流体が蒸発器流出口138から流出することを可能とする。
【0046】
<凝縮器105の構成>
(凝縮器105の概略構成)
図6は、本実施の形態に係る凝縮器105の分解斜視図である。
次に、
図6を参照して、本実施の形態が適用される凝縮器105の概略構成を説明する。
図6に示すように、凝縮器接続体300は、凝縮器本体150と、凝縮器本体150を覆う凝縮器蓋体190とを有する。
【0047】
本実施の形態に係る凝縮器本体150は、概形が平板状である。また、凝縮器本体150と、凝縮器蓋体190とは、筐体として機能する。また、凝縮器本体150と、凝縮器蓋体190とは、例えば銅やアルミなどの金属や樹脂などにより形成される。ここで、凝縮器本体150は、蒸気管107および液管109が接続される。そして、蒸発器本体110の内部には作動流体が充填されている。なお、凝縮器蓋体190は、例えば凝縮器本体150に配置された凝縮器蓋体190における板面外周をレーザで溶接することや所謂ろう付けすることにより固定される。
【0048】
(凝縮器本体150の詳細構成)
図7は、凝縮器本体150の詳細構成を説明する図である。
次に、
図7を参照しながら、凝縮器本体150の詳細構成を説明する。
【0049】
図7に示すように、凝縮器本体150は、略平板状の凝縮器基部151を有する。凝縮器基部151は、幅方向および厚み方向に延びる面である凝縮第1面165および凝縮第2面167を備える。
【0050】
また、凝縮器基部151の幅方向両側には、凝縮第1面165側から長手方向に沿って伸びる凝縮器第1溝部152および凝縮器第2溝部154が形成される。この凝縮器第1溝部152および凝縮器第2溝部154が形成されることにより、凝縮器基部151の幅方向両側には、凝縮器第1爪部153および凝縮器第2爪部155が設けられる。凝縮器第1爪部153および凝縮器第2爪部155は、スリットバネとして機能する。
【0051】
ここで、凝縮器第1爪部153および凝縮器第2爪部155は、幅方向に沿って凝縮器基部151から離間する向きに突出する凝縮器第1ピン161および凝縮器第2ピン163を備える。図示の例における凝縮器第1ピン161および凝縮器第2ピン163は、凝縮器第1爪部153および凝縮器第2爪部155の長手方向中央部に設けられる。また、凝縮器第1爪部153および凝縮器第2爪部155は、幅方向に沿って蒸発器基部111から離間する向きに突出する第1幅広部166および第2幅広部168を備える。図示の例における第1幅広部166および第2幅広部168は、凝縮器第1爪部153および凝縮器第2爪部155の長手方向凝縮第1面165側の端部に設けられる。
【0052】
ここで、凝縮器第1ピン161および凝縮器第2ピン163は、凝縮器本体150を凝縮器接続体300に留めるためのピンとして機能する。すなわち、凝縮器第1ピン161および凝縮器第2ピン163を設けることにより、凝縮器105の位置がずれることが抑制される。また、第1幅広部166および第2幅広部168は、ユーザが指で押圧する(矢印D52およびD53参照)つまみ部として機能する。ユーザが第1幅広部166および第2幅広部168を押圧することで、凝縮器第1ピン161および凝縮器第2ピン163の固定が外れ、凝縮器本体150が凝縮器接続体300から取り外し可能となる。
【0053】
また、凝縮器本体150には、凝縮凹部171が設けられる。凝縮凹部171は、蒸発平面視略長方形状の開口を形成する。凝縮凹部171の底部には、長手方向に延びる突起である凝縮案内突部173を備える。この凝縮案内突部173は、所定の間隔で幅方向に複数並べて設けられている。また、凝縮器基部151は、凝縮第1面165に形成され、長手方向に沿って延びる貫通孔である凝縮器流入口186および凝縮器流出口188を有する。この凝縮器流入口186および凝縮器流出口188は、凝縮器本体150の外部と凝縮凹部171の内部とを連続させる。
【0054】
ここで、凝縮案内突部173同士の間の空間は、作動流体が流れる凝縮流路175である。また、凝縮案内突部173は、長手方向において互いに異なる端部が切り欠かれている。さらに説明をすると、幅方向で隣り合う凝縮案内突部173は、互いに長手方向における反対の端部が切り欠かれている。このことにより、作動流体は、各凝縮流路175の長手方向端部において向きを変え往復しながら、凝縮流路175の内部を流れる(矢印A61、矢印A63、矢印A65参照)。長手方向において往復する流路を形成することにより、凝縮器105の板面が小さい場合であっても、気相の作動流体が確実に凝縮することが可能となる。
【0055】
<蒸発器接続体200および凝縮器接続体300>
(蒸発器接続体200および凝縮器接続体300の概略構成)
図8(A)および(B)は、蒸発器接続体200および凝縮器接続体300の概略構成を説明する図である。より具体的には、
図8(A)は、蒸発器接続体200の分解斜視図である。
図8(B)は、凝縮器接続体300の分解斜視図である。
【0056】
次に、
図8(A)および(B)を参照して、本実施の形態が適用される蒸発器接続体200および凝縮器接続体300の概略構成を説明する。
まず、
図8(A)を参照しながら、蒸発器接続体200について説明をする。
図8(A)に示すように、蒸発器接続体200は、蒸発器側基体210と、蒸発器側カバー250とを有する。蒸発器側基体210および蒸発器側カバー250は、各々略板状の部材である。蒸発器側基体210および蒸発器側カバー250は、例えば銅やアルミなどの金属や樹脂などにより形成される。
【0057】
蒸発器側基体210は、幅方向および長手方向に延びる面である第1面211および第2面213を有する。第1面211においては、段差215が形成され蒸発器支持面217が設けられる。また、第2面213においては、厚み方向に突出する支持脚232が設けられる。また、蒸発器側基体210は、ボルト等の固定具が挿入される固定孔231が設けられる。
【0058】
蒸発器側カバー250は、幅方向および長手方向に延びる面である第1面251および第2面253を有する。蒸発器側カバー250は、第2面253に形成された凹部である蒸発器受け部255を有する。この蒸発器受け部255は、蒸発器側基体210との間で開口256(後述する
図10-1(B)参照)を形成する。
【0059】
また、蒸発器側カバー250は、ボルト等の固定具が挿入される固定孔271が設けられる。また、蒸発器側カバー250は、蒸発器受け部255の内部から幅方向に貫通する蒸発器第1受け孔273および蒸発器第2受け孔275が設けられる。
【0060】
次に、
図8(B)を参照しながら、凝縮器接続体300について説明をする。
図8(B)に示すように、凝縮器接続体300は、凝縮器側基体310と、凝縮器側カバー350とを有する。凝縮器側基体310および凝縮器側カバー350は、各々略板状の部材である。凝縮器側基体310および凝縮器側カバー350は、例えば銅やアルミなどの金属や樹脂などにより形成される。
【0061】
凝縮器側基体310は、幅方向および長手方向に延びる面である第1面311および第2面313を有する。また、凝縮器側基体310は、ボルト等の固定具が挿入される固定孔331が設けられる。
【0062】
凝縮器側カバー350は、幅方向および長手方向に延びる面である第1面351および第2面353を有する。凝縮器側カバー350は、第2面353に形成された凹部である凝縮器受け部355を有する。凝縮器受け部355は、凝縮器側基体310との間で開口を形成する。図示の例の凝縮器側カバー350は、凝縮器受け部355に凝縮器105(
図1参照)が挿入されることを案内する案内部357を有する。
【0063】
また、凝縮器側カバー350は、ボルト等の固定具が挿入される固定孔371が設けられる。また、凝縮器側カバー350は、凝縮器受け部355の内部から幅方向に貫通する凝縮器第1受け孔373および凝縮器第2受け孔375が設けられる。
【0064】
図示の例においては、蒸発器101を蒸発器接続体200に固定する機構と、凝縮器105を凝縮器接続体300に固定する機構は共通の構成である。以下では、蒸発器101を蒸発器接続体200に固定する機構について詳細に説明をする。
【0065】
(蒸発器接続体200の詳細構成)
図9(A)および(B)は、蒸発器接続体200の詳細構成を説明する図である。
次に、
図9(A)および(B)を参照しながら、蒸発器接続体200の詳細構成を説明する。
【0066】
図9(A)に示すように、蒸発器接続体200は、発熱体500に対して熱的に接続された状態で固定される。図示の例における蒸発器接続体200は、発熱体500を覆う位置で、発熱体500に押し付けて設けられる。さらに説明をすると、蒸発器接続体200は、支持脚232で発熱体500を跨ぐよう配置される。
【0067】
蒸発器接続体200の蒸発器受け部255には、蒸発器101が挿入される。蒸発器受け部255に挿入された蒸発器101は、厚み方向において、厚み方向抑え面261と、蒸発器支持面217(
図8(B)参照)とによって挟み込まれる。また、蒸発器101は、幅方向において、幅方向第1抑え面263と、幅方向第2抑え面265とによって挟み込まれる。
【0068】
また、蒸発器接続体200の蒸発器受け部255に、蒸発器101が挿入されることにともない、蒸発器第1受け孔273および蒸発器第2受け孔275に、蒸発器101の蒸発器第1ピン121および蒸発器第2ピン123がかかる。このことにより蒸発器101の長手方向および厚み方向における位置が固定される。
【0069】
<着脱動作>
(蒸発器101および蒸発器接続体200の装着動作)
図10(A)乃至(C)は、蒸発器101を蒸発器接続体200に装着する動作を示す図である。
次に、
図10(A)乃至(C)を参照しながら、蒸発器101を蒸発器接続体200に着脱する動作を説明する。
【0070】
まず、蒸発器101を蒸発器接続体200に装着する動作を説明する。ここでは、
図10-1(A-1)および(B-1)に示すように、発熱体500を覆う位置に設けられた蒸発器接続体200に、蒸発器101が挿入されることを説明する。
【0071】
そして、
図10-1(A-2)および(B-2)に示すように、蒸発器101が蒸発器接続体200の第1面211上に配置され、開口256に向けてスライド移動させる(矢印D51参照)。ここで、スライド移動とは、蒸発器101および蒸発器接続体200各々の面を互いに接触させた状態において、一方の面を他方の面に対して滑らせることをいう。
【0072】
そして、
図10-1(A-3)および(B-3)に示すように、蒸発器接続体200の開口256内に、蒸発器101が挿入された状態となる。このとき、
図10-2(C-2)に示すように、蒸発器第1ピン121が、蒸発器第1受け孔273に入り込む。また、蒸発器第2ピン123が、発器第2受け孔275に入り込む。このことにより、蒸発器101の長手方向および厚み方向における位置が固定される。
【0073】
上記のように蒸発器接続体200に形成された開口256に蒸発器101が挿入されることにより、蒸発器101が蒸発器接続体200に装着される。
【0074】
ここで、
図10-2(C-1)に示すように、蒸発器101が蒸発器接続体200に装着された状態においては、蒸発器101の幅方向の両面が挟み込まれている。さらに説明をすると、幅方向第1抑え面263と、幅方向第1抑え面263と離間した位置で幅方向第1抑え面263と対向する幅方向第2抑え面265とによって、蒸発器101が支持された状態で配置される。蒸発器101を幅方向の両側から挟むことで、幅方向における位置ずれが抑制される。また、蒸発器101を幅方向の両側から挟むことで、蒸発器101と蒸発器接続体200との熱伝達が促進される。また、蒸発器101が蒸発器接続体200に装着された状態においては、蒸発器101の端部が開口256の外部に突出した状態である。このように蒸発器101の一部が開口256の外部に突出していることにより、蒸発器101を取り外す操作が容易となる。
【0075】
また、
図10-2(C-4)に示すように、蒸発器101が蒸発器接続体200に装着された状態においては、蒸発器101の厚み方向の両面が挟み込まれている。さらに説明をすると、蒸発器支持面217と、蒸発器支持面217と離間した位置で蒸発器支持面217と対向する厚み方向抑え面261とによって、蒸発器101が支持された状態で配置される。板上に形成された蒸発器101の板面を両側から挟むことで、蒸発器101と蒸発器接続体200との熱伝達が促進される。
【0076】
また、蒸発器101が蒸発器接続体200に装着される際に、蒸発器101の挿入方向における先端である蒸発第4面119は、蒸発器接続体200の内側面267に突き当てられる。さらに説明をすると、蒸発器101の蒸発第4面119は、蒸発器接続体200の内側面267に支持された状態で配置される。蒸発器101を蒸発器接続体200の内側面267に突き当てることで、長手方向における位置ずれが抑制される。また、蒸発第4面119を蒸発器接続体200の内側面267に突き当てることで、蒸発器101と蒸発器接続体200との熱伝達が促進される。
【0077】
図示の例においては、上記のように、蒸発器101が蒸発器接続体200に覆われた状態で配置される。さらに説明をすると、蒸発器101の開口256側以外の面が、蒸発器接続体200によって覆われる。言い替えると、挿入される蒸発器101の端部が蒸発器接続体200によって覆われた状態となる。このように蒸発器101が蒸発器接続体200に覆われた状態となることにより、蒸発器101と蒸発器接続体200との熱伝達が促進される。
【0078】
(蒸発器101および蒸発器接続体200の取り外し動作)
次に、蒸発器接続体200から蒸発器101を取り外す動作を説明する。
まず、
図10-1(A-3)および(B-3)に示すように、蒸発器接続体200に挿入された蒸発器101の第1幅広部126および第2幅広部128を、ユーザが指で押圧する(矢印D12およびD13参照)。このことにより、蒸発器第1ピン121および蒸発器第2ピン123の固定が外れる。
【0079】
そして、
図10-1(A-2)および(B-2)に示すように、蒸発器101をスライド移動させる(矢印D52参照)。このことにより、蒸発器接続体200から蒸発器101が外れた状態となる(
図10-1(A-1)および(B-1)参照)。
【0080】
<その他>
(CPU水冷クーラー等との比較)
さて、中央演算処理装置(CPU)の冷却装置としては、例えばCPU水冷クーラーが知られている。このCPUクーラーとの比較において、本実施の形態に係るループ型ヒートパイプ1の特徴を例示する。まず、CPUクーラーにおいては、ポンプが設けられるが、ループ型ヒートパイプ1においてポンプは設けられない。したがって、ループ型ヒートパイプ1においてはポンプの動作音は発生せず、故障リスクも低減され得る。また、ループ型ヒートパイプ1においては、外部から電力を供給することが不要であり、電気配線も不要である。ループ型ヒートパイプ1は、省エネに貢献し得る。
【0081】
また、ループ型ヒートパイプ1においては、ポンプがなく、かつ相変化による熱交換を行っているため、作動流体の保有量が少なくてすむ。その結果、蒸発器101を小さく構成することが可能となり、CPU上部の空間におけるレイアウトの自由度が高まり得る。
【0082】
また、CPUクーラーにおいては、取り外しの度に、例えば熱伝導グリスをCPUとCPUクーラーとの間に塗布し、ボルト等により固定する必要がある。一方で、ループ型ヒートパイプ1においては、蒸発器接続体200および凝縮器接続体300を例えば熱伝導グリスとボルトで取り付けた状態とすれば、蒸発器101などの一部をユーザが指でつまむことで簡単に脱着できる。また、ループ型ヒートパイプ1においては、輸送管である蒸気管107および液管109がフレキシブルであるため、対象のシステム内における輸送管の配置の自由度が高くなり得る。また、薄型のカード形状で構成された蒸発器101および凝縮器105を用いることで、対象のシステム内における蒸発器101および凝縮器105のレイアウトの自由度が高くなり、システムを小型化し得る。
【0083】
また、複数の発熱体が設けられるシステムにおいて、ループ型ヒートパイプ1を用いることで、放熱を一つのヒートシンクなどに集約するなど、熱輸送のアレンジが容易となる。また、着脱可能なコネクタである蒸発器101および凝縮器105を用いることで、事業者だけでなく、例えば家庭においても省エネや廃熱利用の取り組みが促進されることが期待され、結果としてCO2の排出量削減に貢献し得る。
【0084】
(ループ型ヒートパイプ1を備える装置)
図11(A)および(B)は、ループ型ヒートパイプ1を備える装置を説明する図である。
次に、
図11(A)および(B)を参照しながら、ループ型ヒートパイプ1を備える装置を説明する。ループ型ヒートパイプ1が備える装置は、発熱体500を備えるものであれば特に限定されない。
【0085】
例えば、
図11(A)に示すように、ループ型ヒートパイプ1は、コンピュータ600に設けられてもよい。コンピュータ600は、CPU発熱体により構成される発熱体500が基板610に複数設けられている。また、コンピュータ600は、コールドプレート630と、熱交換器650と、コールドプレート630および熱交換器650の間で熱輸送を行う熱輸送路670とを有する。そして、各発熱体500とコールドプレート630とが、ループ型ヒートパイプ1によって接続される。
【0086】
このコンピュータ600においては、発熱体500で発生した熱が、ループ型ヒートパイプ1、コールドプレート630および熱輸送路670を介して、熱交換器650へと伝送される。さらに説明をすると、ループ型ヒートパイプ1の蒸発器101および凝縮器105がカード型形状に形成されることで、狭隘部に設置された熱源である発熱体500にもループ型ヒートパイプ1を設けることが可能となる。
【0087】
また、
図11(B)に示すように、ループ型ヒートパイプ1は、ロボット700に設けられてもよい。ロボット700は、ロボットアーム710と、ロボットアーム710の先端に設けられた発熱体730とを有する。そして、発熱体730と不図示の凝縮器とが、ループ型ヒートパイプ1によって接続される。
【0088】
このロボット700においては、ロボットアーム710が所謂可動部として機能する。ループ型ヒートパイプ1においては、輸送管である蒸気管107および液管109がフレキシブルであるため、ロボットアームのような可動部においても、蒸発器101や凝縮器105を設置することができる。
【0089】
なお、ここではループ型ヒートパイプ1を備える装置の一例として、コンピュータ600およびロボット700を説明したが、これに限定されない。例えば、パーソナルコンピュータ、タブレット型端末、スマホフォン、プロジェクタなどにおける発熱体の冷却にループ型ヒートパイプ1を設けてもよい。また、工場の廃熱利用、データセンターのサーバー冷却、洋上風力ナセル内のパワエレ冷却、デシカント空調や吸収冷凍機の熱源輸送利用、自動車、航空機、鉄道のパワエレ等の冷却、産業用溶接ロボットのトランス等冷却、eVTOLなどのパワエレ冷却、住宅の太陽熱輸送利用などにおいて、ループ型ヒートパイプ1を用いてもよい。
【0090】
<変形例>
以下では、ループ型ヒートパイプ1の変形例を説明する。なお、以下の説明においては、上記の実施の形態の構成と同一の部分には同一の符号をつけ、その詳細な説明は省略することがある。
(変形例1)
図12(A)および(B)は、ループ型ヒートパイプ1の変形例を説明する図である。
次に、
図12(A)および(B)を参照しながら、ループ型ヒートパイプ1の変形例を説明する。
【0091】
上記の説明においては、コネクタである蒸発器接続体200を発熱体500に設けることを説明した。そして、発熱体500がCPUである場合、CPUのヒートスプレッダ上に蒸発器接続体200を設ける構成が採用され得る。一方、上記の例とは異なり、CPUのヒートスプレッダとコネクタを一体として構成してもよい。
【0092】
具体的には、
図12(A-1)に示すように、CPU2020を構成してもよい。このCPU2020は、基板2011と、基板2011に設けられた半導体(ダイ)2012と、TIM(Thermal Interface Material)やはんだで構成される熱伝導体2013と、基板2011の半導体2012とは反対の面に設けられたBGA(Ball Grid Array)で構成される電極2015と、コネクタ一体型のヒートスプレッダ2017とを有する。そして、
図12(A-1)乃至(A-3)に示すように、ヒートスプレッダ2017に対して蒸発器1010が挿入される(矢印D53参照)。
【0093】
CPU2020を形成することにより、ユーザは,熱伝導グリスやボルトなどを使用することなく、ループ型ヒートパイプ1000を装着することが可能となる。また、上記のように発熱体500上に蒸発器接続体200を設ける構成と比較して、接触熱抵抗が低下し、CPU2020(半導体2012)はより効率的に冷却され得る。
【0094】
また、
図12(B-1)および(B-2)に示すように、カード型パワー半導体5100にループ型ヒートパイプ1100を適用してもよい。このカード型パワー半導体5100は、基板5101と、基板5101に接続された電極5013と、放熱面5015とを備える。また、図示の例においては、カード型パワー半導体5100が複数並べて設けられている。さらに説明をすると、基板5101が積層して設けられている。そして、積層された基板5101の層間に蒸発器接続体2100を設ける。すなわち、蒸発器接続体2100を基板5101の間に挟み込んで配置する。そして、蒸発器接続体2100の各々に、蒸発器1010が挿入される(矢印D55参照)。
【0095】
ここで、積層された基板5101の層間に蒸発器接続体2100を複数設けることで、基板5101で発生した熱を複数個所に分散して放熱することが可能となる。また、カード型パワー半導体5100を含むシステムもよりコンパクトにすることができる。
【0096】
(変形例2)
図13(A)および(B)は、ループ型ヒートパイプ1の他の変形例を説明する図である。
次に、
図13(A)および(B)を参照しながら、ループ型ヒートパイプ1の他の変形例を説明する。
【0097】
上記の説明においては、蒸発器接続体200の内部に蒸発器101を挿入することを説明した。ここで、蒸発器接続体200の内部に、蒸発器101を配置することが可能であれば、蒸発器101の設置方法は特に限定されない。例えば、
図13(A)に示すように蒸発器接続体2000を構成してもよい。
【0098】
蒸発器接続体2000は、蒸発器側基体2010と蒸発器側カバー2050とを有する。この蒸発器側カバー2050は、凹部である蒸発器受け部2550を備える。ここで、蒸発器側カバー2050の長手方向一端側の端部2052には、幅方向に延びる回転軸2070が設けられている。このことにより、蒸発器側カバー2050は、回転軸2070を中心に回転可能である(矢印D58参照)。
【0099】
また、蒸発器側カバー2050は、幅方向の両側から蒸発器側基体2010側に突出して設けられる第1爪体2093および第2爪体2095を有する。第1爪体2093および第2爪体2095は弾性変形可能である。また、第1爪体2093および第2爪体2095は、蒸発器側基体2010と掛かり合う突起である第1爪先2097と第2爪先2098とを有する。さらに説明をすると、第1爪先2097と第2爪先2098が蒸発器側基体2010と掛かり合うことにより、蒸発器側カバー2500が蒸発器側基体2010に対して固定された状態となる。
【0100】
図13(B)に示すように、蒸発器接続体2000に対して蒸発器101が装着される。具体的に説明をすると、まず、
図13(B-1)に示すように、蒸発器側基体2110と蒸発器側カバー2500とは開いた状態である。このとき、第1爪先2097は、蒸発器側基体2110よりも蒸発器受け部2550側に位置する。
【0101】
次に、
図13(B-2)に示すように、蒸発器受け部2550に蒸発器101が挿入される(矢印D59参照)。この状態において、
図13(B-3)に示すように、蒸発器側カバー2500が押圧され、回転軸7010を中心に回転する(矢印D60参照)。このことにより、第1爪先2097は、蒸発器側基体2110に対して蒸発器受け部2550とは反対側に位置する。そして、蒸発器側カバー2050と蒸発器側基体2010との間に蒸発器101が挟み込まれた状態となる。
【0102】
蒸発器接続体2000のように、第1爪体2093および第2爪体2095を設けることにより、蒸発器接続体2000および蒸発器101の面圧が高まる。このことにより、蒸発器接続体2000および蒸発器101との熱伝達が促進される。
【0103】
(変形例3)
図14は、ループ型ヒートパイプ1のさらに他の変形例を説明する図である。
次に、
図14を参照しながら、ループ型ヒートパイプ1のさらに他の変形例を説明する。
上記の説明においては、ループ型ヒートパイプ1に設けられる輸送管が、蒸気管107および液管109の2本であることを説明したが、これに限定されるものではない。
【0104】
図14に示すように、収容管1303と、収容管1303の内部に配置された蒸気管1307および液管1309とを備える構成であってもよい。この収容管1303の内部は、グラスウールなどの断熱材(不図示)が設けられており、蒸気管1307および液管1309の間における熱伝達が抑制される。収容管1303によって、いわば蒸気管1307および液管1309を束ね1本の作動流体管とすることにより、ループ型ヒートパイプ1を設置する際の作業性が向上し得る。
【0105】
(他の変形例)
蒸気の説明においては、ウィック130の固定および封止をレーザで行うことを説明したが、これに限定されない。例えば所謂Oリングなどのシール材でウィック130を固定および封止する構成であってもよい。
【0106】
また、蒸気管107および液管109は、樹脂などによって構成されてもよい。ここで、蒸気管107および液管109は、透明の部材により構成されてもよい。所謂ゲーミング用PCのように装飾のために照明が搭載される装置において、蒸気管107および液管109を透明の部材で構成すると、装置の装飾性が向上し得る。
【0107】
また、蒸発器側基体210(蒸発器側カバー250)と蒸発器本体110との面圧を高めるため、蒸発器側基体210(蒸発器側カバー250)にスロープやテーパなどの傾斜面を設けてもよい。この傾斜面は、蒸発器本体110が挿入されるに従い、蒸発器本体110を蒸発器側カバー250(蒸発器側基体210)に押し付ける向きに傾斜する。この傾斜面を形成することにより、蒸発器101および蒸発器接続体200の熱伝達が促進される。
【0108】
また、上記の説明においては、蒸発器第1ピン121および蒸発器第2ピン123が蒸発器101に設けられることを説明したが、これに限定されない。蒸発器101および蒸発器接続体200が互いに掛かり合う構成であれば、例えば蒸発器101にピンや爪などが設けられることに替えて(または加えて)蒸発器接続体200にピンや爪などが設けられる構成であってもよい。
【0109】
また、上記の説明においては、蒸発器本体110が蒸発器凹部143を備えることを説明したが、液溜め凹部131と蒸発器接続体200との間における熱伝達を制限する構成であればこれに限定されない。これに限定されない。例えば、蒸発器本体110における液溜め凹部131の裏面となる位置に、断熱材を配置する構成であってもよい。また、蒸発器本体110において液溜め凹部131を形成する領域を、蒸発凹部133よりも熱伝導率が低い材質で構成してもよい。
【0110】
また、上記の説明においては、蒸発器本体110が蒸発器スリット141を備えることを説明したが、蒸発器流出口138と液溜め凹部131との間における熱伝達を制限する構成であればこれに限定されない。例えば、蒸発器流出口138と液溜め凹部131との間に、断熱材を配置する構成であってもよい。また、蒸発器本体110において液溜め凹部131を形成する領域を、蒸発凹部133よりも熱伝導率が低い材質で構成してもよい。
【0111】
また、上記の説明においては、蒸発器101および凝縮器105の両者が、小型薄型化された、所謂カード型の形状であることを説明したが、蒸発器101および凝縮器105のいずれか一方がカード型の形状であってもよい。さらに説明をすると、蒸発器101および凝縮器105のいずれか一方と、その一方と接続されるコネクタ構造機構である蒸発器接続体200または凝縮器接続体300を設ける構成であってもよい。
【0112】
また、蒸発器101および凝縮器105の形状は、ユーザが蒸発器接続体200および凝縮器接続体300の内部に配置することが可能であれば、カード型の形状に限定されない。例えば、蒸発器101および凝縮器105の形状は、円柱状、直方体状、円錐状、角錐状、長球状および球状など他の形状であってもよい。付言すると、蒸発器101および凝縮器105は、一方向に沿って長い形状であってもよい。蒸発器101および凝縮器105が一方向に沿って長い形状とすると、その先端を蒸発器接続体200または凝縮器接続体300に挿入することが容易となり得る。
【0113】
さて、上記では種々の実施形態および変形例を説明したが、これらの実施形態や変形例同士を組み合わせて構成してももちろんよい。
また、本開示は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。
【0114】
ループ型ヒートパイプ1は、熱交換器の一例である。コンピュータ600は、装置の一例である。蒸発器接続体200は、接続体の一例である。開口256は、挿入口の一例である。蒸発第1面116は、第1板面の一例である。蒸発第2面117は、第2板面の一例である。厚み方向抑え面261は、第1支持面の一例である。蒸発器支持面217は、第2支持面および支持面の一例である。内側面267は、被突当面の一例である。蒸発器第1ピン121および蒸発器第1受け孔273は、掛かり部の一例である。蒸発器第1爪部113は、移動部の一例である。蒸発器流入口136は、流入口の一例である。蒸発器流出口138は、流出口の一例である。蒸発器スリット141は、抑制構造の一例である。収容管1303は、外管の一例である。蒸発器本体110は、筐体の一例である。ウィック130は、蒸発体の一例である。第1爪体2093は、押し付け機構の一例である。凝縮器接続体300は、他の接続体および凝縮接続体の一例である。凝縮器受け部355は、他の挿入口および凝縮挿入口の一例である。ループ型ヒートパイプ1および蒸発器接続体200は、熱交換ユニットの一例である。蒸発器接続体200および発熱体500は、発熱ユニットの一例である。
【符号の説明】
【0115】
100…ループ型ヒートパイプ、101…蒸発器、105…凝縮器、110…蒸発器本体、200…蒸発器接続体、256…開口、500…発熱体