(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122532
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】モータ制御装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H02P 6/182 20160101AFI20230825BHJP
H02P 27/08 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
H02P6/182
H02P27/08
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185890
(22)【出願日】2022-11-21
(31)【優先権主張番号】P 2022025645
(32)【優先日】2022-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 賢佑
(72)【発明者】
【氏名】河野 智行
【テーマコード(参考)】
5H505
5H560
【Fターム(参考)】
5H505DD03
5H505DD08
5H505EE49
5H505HA09
5H505HB01
5H505JJ08
5H505JJ16
5H505JJ23
5H505JJ25
5H505JJ26
5H505LL24
5H505LL25
5H505MM10
5H560BB04
5H560BB12
5H560DA13
5H560DC13
5H560EB01
5H560SS01
5H560TT07
5H560TT08
5H560TT15
5H560UA05
5H560XA12
(57)【要約】
【課題】モータの負荷に所望のトルクを与えることが可能なモータ制御装置、及びプログラムを提供することを目的とする。
【解決手段】本開示に係るモータ制御装置は、交流モータに印加する複数相の電圧信号の制御を行うモータ制御装置であって、交流モータに入力される複数相のそれぞれの電圧信号である各相電圧信号のピーク値同士を結ぶ仮想線における時間微分値を算出する微分値算出部と、時間微分値から交流モータに入力される各相電圧信号の波長を算出する波長算出部と、算出された波長に基づいて交流電圧を印加する交流モータの相を切り替える信号を生成する切替信号生成部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流モータに印加する複数相の電圧信号の制御を行うモータ制御装置であって、
交流モータに入力される前記複数相のそれぞれの電圧信号である各相電圧信号のピーク値同士を結ぶ仮想線における時間微分値を算出する微分値算出部と、
前記時間微分値から交流モータに入力される各相電圧信号の波長を算出する波長算出部と、
算出された波長に基づいて前記交流モータの相を切り替える信号を生成する切替信号生成部と、
を備えるモータ制御装置。
【請求項2】
前記各相電圧信号はPWM信号であり、
前記微分値算出部は、前記各相電圧信号の値が立ち上がる第1タイミングと、前記第1タイミングの後に前記各相電圧信号の値が立ち下がる第2タイミングとの間の、任意のタイミングにおける前記各相電圧信号の値を、前記各相電圧信号のピーク値として取得する、
請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記微分値算出部は、前記第1タイミングと前記第2タイミングとの中点となる中点タイミングにおける前記各相電圧信号の値を、前記各相電圧信号のピーク値として取得する、
請求項2に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
各相の前記時間微分値から、前記時間微分値が一定値に保たれる期間が所定の時間に満たない信号である不要信号を除去した補正信号を生成する不要信号除去部と、
各相の前記補正信号を併合した合計信号を算出するマージ部と、
前記合計信号の値を、ゼロ以外の他の値に変化するまで一定値に保つように補正したサンプルホールド信号を算出するサンプルホールド部と、
前記サンプルホールド信号の値の逆数に対して比例係数を乗じることで、前記各相電圧信号の波長を算出する第1波長算出部と、をさらに備える、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
【請求項5】
交流モータの各相電圧信号から、各相電圧信号が中間電圧値となるタイミングを検出する中間電圧値検出部と、
検出された中間電圧値となるタイミングに基づいて、交流モータに入力される各相電圧信号の波長を算出する第2波長算出部と、
前記第1波長算出部が算出した交流モータに入力される各相電圧信号の波長と、前記第2波長算出部が算出した交流モータに入力される各相電圧信号の波長との移動平均を算出する第3波長算出部と、をさらに備え、
前記切替信号生成部は、第3波長算出部が算出した前記移動平均に基づいて切替信号を生成する、
請求項4に記載のモータ制御装置。
【請求項6】
前記第3波長算出部は、
前記第1波長算出部が算出した各相電圧信号の波長と、前記第1波長算出部が算出した各相電圧信号の波長が加重平均に与える影響度合いを示す第1重み付け係数とを乗じた値と、
前記第2波長算出部が算出した各相電圧信号の波長と、前記第2波長算出部が算出した各相電圧信号の波長が加重平均に与える影響度合いを示す第2重み付け係数とを乗じた値と、
の加重移動平均を算出し、
前記切替信号生成部は、第3波長算出部が算出した前記加重移動平均に基づいて切替信号を生成する、
請求項5に記載のモータ制御装置。
【請求項7】
前記第3波長算出部は、前記交流モータの負荷に応じて、前記第1重み付け係数と前記第2重み付け係数との少なくとも一方を変化させて、波長の加重移動平均を算出する、
請求項6に記載のモータ制御装置。
【請求項8】
交流モータに印加する複数相の電圧信号の制御を行うプログラムであって、
交流モータに入力される前記複数相のそれぞれの電圧信号である各相電圧信号のピーク値同士を結ぶ仮想線における時間微分値を算出するステップと、
前記時間微分値から交流モータに入力される各相電圧信号の波長を算出するステップと、
算出された波長に基づいて前記交流モータの相を切り替える信号を生成するステップと、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータ制御装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
センサレス通電でモータが一定の回転数で駆動している際に、急にモータの負荷が変動すると、制御系のモータの回転周期の予測と実際のモータの回転周期との間にずれが生じることがある。制御系のモータの回転周期の予測と、実際のモータの回転周期との間のずれが大きくなると、トルクが得られなくなり脱調にいたることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は上記課題を鑑み、モータの負荷に所望のトルクを与えることが可能なモータ制御装置、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係るモータ制御装置は、交流モータに印加する複数相の電圧信号の制御を行うモータ制御装置であって、交流モータに入力される前記複数相のそれぞれの電圧信号である各相電圧信号のピーク値同士を結ぶ仮想線における時間微分値を算出する微分値算出部と、前記時間微分値から交流モータに入力される各相電圧信号の波長を算出する波長算出部と、算出された波長に基づいて前記交流モータの相を切り替える信号を生成する切替信号生成部と、を備える。
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係るプログラムは、交流モータに印加する複数相の電圧信号の制御を行うプログラムであって、交流モータに入力される前記複数相のそれぞれの電圧信号である各相電圧信号のピーク値同士を結ぶ仮想線における時間微分値を算出するステップと、前記時間微分値から交流モータに入力される各相電圧信号の波長を算出するステップと、算出された波長に基づいて前記交流モータの相を切り替える信号を生成するステップと、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、急激な負荷変動があった場合でも脱調を防止できるため、モータの負荷に所望のトルクを与えることが可能なモータ制御装置、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示に係るモータシステムの構成例を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る制御装置の構成例を模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、各相電圧信号の時間変化を示す図である。
【
図4】
図4は、各相電圧信号のピーク値同士を結んだ仮想線の例を示す図である。
【
図5】
図5は、各相電圧信号のピーク値の例を示す図である。
【
図6】
図6は、各相電圧信号の時間微分値の時間変化を示す図である。
【
図8】
図8は、各相の補正信号の絶対値算出後の信号を示す図である。
【
図9】
図9は、各相の絶対値算出後の信号を全て併合した合計信号を示す図である。
【
図10】
図10は、合計信号をサンプルホールドしたサンプルホールド信号を示す図である。
【
図11】
図11は、本開示に係る制御方法を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、第2実施形態に係る制御装置の信号処理の結果を示す図である。
【
図13】
図13は、第3実施形態に係る制御装置の信号処理の結果を示す図である。
【
図14】
図14は、第4実施形態に係る制御装置のアナログデジタル変換部が取得した各相電圧信号を示す図である。
【
図15】
図15は、第4実施形態における各相電圧信号のピーク値同士を結んだ仮想線の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本開示が限定されるものではない。
【0010】
(第1実施形態)
(モータシステムの構成)
図1は、本開示に係るモータシステムの構成例を模式的に示す図である。
図1に示すように本開示に係るモータシステム100は、交流モータ10と、インバータ20と、正電源30と、制御装置40と、駆動回路50と、を備える。
【0011】
交流モータ10は、電気エネルギーを機械的仕事に変換する。交流モータ10は、例えばステータとロータを備える。ステータは、固定子すなわち、モータの固定部分である。ステータは、120°の位相ごとに配置された3つのコイルを備える。3つのコイルは、それぞれU相コイル、V相コイル、W相コイル、と呼ばれる。なお、コイルの結線方法は、δ結線、Y結線のどちらでもよい。ロータは、回転子すなわち、モータの回転部分である。交流モータ10は、ステータが備えるコイルに交流電圧を印加することで磁界を発生させて、ロータが備える永久磁石の磁力との相互作用により、ロータを回転させる。三相交流を用いることにより、回転磁界を容易に得ることができる。交流モータ10のロータの出力軸には所定の負荷が接続されており、交流モータ10のロータが回転することにより負荷に対して機械的仕事を行う。このようにして、交流モータ10は電気エネルギーを機械的仕事に変換してよい。
【0012】
インバータ20は、正電源30から供給される直流電圧を交流電圧に変換して、交流モータ10に供給する。インバータ20は、交流モータ10の各相のコイルに交流電圧を印加するインバータ回路を備える。インバータ回路は、交流モータ10の各相のコイルに接続される半導体スイッチング素子を備える。すなわち、インバータ20のインバータ回路は、正電源30と交流モータ10のU相コイルとを接続して半導体スイッチング素子が設けられる配線と、正電源30と交流モータ10のV相コイルとを接続して半導体スイッチング素子が設けられる配線と、正電源30と交流モータ10のW相コイルとを接続して半導体スイッチング素子が設けられる配線とが、正電源30に対して並列に接続されている。
【0013】
半導体スイッチング素子は、例えば、バイポーラトランジスタ(Bipolar Transitor)であってよい。その他に、半導体スイッチング素子は、ゲートターンオフサイリスタ(GTO:Gate Turn-Off thyristor)、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET:Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transitor)、炭化ケイ素金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(SiC-MOSFET)、窒化ガリウム電界効果トランジスタ(GaN-FET)、酸化ガリウム(Ga2O3)を用いたパワー半導体などであってもよい。
【0014】
インバータ20は、半導体スイッチング素子のゲートに後述して説明する駆動回路50から駆動信号が与えられることにより、半導体スイッチング素子を周期的にON/OFF動作、すなわちスイッチングさせることにより、交流モータ10の各相コイルに交流電圧を供給する。
【0015】
正電源30は、インバータ20に直流電圧を供給する電源である。正電源30は、電池や直流電源であって良い。また、正電源30は、交流電源から直流電圧を生成する場合は、整流回路や変圧器、平滑コンデンサ等を含んでよい。
【0016】
(制御装置(モータ制御装置)の構成)
制御装置(モータ制御装置)40は、交流モータ10を制御する制御信号を生成する。まず、制御装置40は、
図1に示すように、制御部41と、記憶部42と、を備える。
【0017】
制御部41は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等によって、記憶部42に記憶されている各種プログラムがRAM(Random Access Memory)を作業領域として実行されることにより実現される。また、制御部41は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路、オペアンプを用いたアナログ回路等により実現されてもよい。
【0018】
次に、
図2を用いて、制御部41の構成について説明する。
図2は、本開示に係る制御部の構成例を模式的に示す図である。
図2に示すように、制御部41は、アナログデジタル変換部411と、信号処理部412と、不要信号除去部413と、絶対値算出部414と、マージ部415と、サンプルホールド部416と、波長算出部417と、切替信号生成部418と、を備える。
【0019】
アナログデジタル変換部411は、交流モータ10の各相電圧信号(U相線電圧、V相線電圧、W相線電圧)を取得し、取得した各相電圧信号をアナログデジタル変換する。各相電圧信号とは、交流モータ10に入力されるそれぞれの相(本例ではU相、V相、及びW相)の電圧信号である。本実施形態では、各相電圧信号は、PWM(Pulse Width Modulation)信号であり、言い換えれば、所定の電圧値を基準として電圧値が立ち上がりと立下りを繰り返す波形の信号である。アナログデジタル変換部411は、アナログデジタル変換した各相電圧信号(ADU、ADV、ADW)を出力するともいえる。アナログデジタル変換部411は、交流モータ10の各相電圧信号を、グランドを基準にして取得してよい。
【0020】
図3は、各相電圧信号の時間変化を示す図である。
図3に示すように交流モータ10の各相コイルに交流電圧が印加された瞬間から所定時間の間は、各相電圧信号のピーク値が所定の傾きを持って徐々に増加していく。その後、正電源30が印加する電圧値をピーク値とする各相電圧信号が所定時間の間、繰り返される。ロジック出力がオフにされると、各相電圧信号はピーク値が所定の傾きを持って徐々に減少していく。アナログデジタル変換部411は、このようなアナログの各相電圧信号を取得し、アナログの各相電圧信号を、デジタルの各相電圧信号に変換する。なお、電圧信号値が立ち上がってから立ち下がるまでの期間における電圧信号を、1サイクルの電圧信号と定義すると、電圧信号のピーク値とは、1サイクルの電圧信号における、電圧値の最大値を指す。
【0021】
アナログデジタル変換部411には、入力電圧を基準電圧と比較して、基準より高いか低いかを出力する回路を用いて、アナログ信号をデジタル信号に変換するフラッシュ型や逐次比較などを用いることができる。
【0022】
信号処理部412は、アナログデジタル変換された交流モータ10の各相電圧信号を処理する。信号処理部412は、中間電圧値検出部4121と、微分値算出部4122と、を有する。
【0023】
中間電圧値検出部4121は、交流モータ10の各相電圧信号から、各相電圧信号の中間電圧値を検出する。より詳しくは、中間電圧値検出部4121は、各相電圧信号から、各相電圧信号の信号値が中間電圧値となるタイミングを検出する。ここで、中間電圧値とは、各相電圧信号の電圧値のとり得る下限値と上限値との間の電圧値を指す。中間電圧値は、電圧値のとり得る下限値と上限値との間の任意の値であってよいが、下限値と上限値との間の中央値であることが好ましい。すなわち例えば、下限値が0V、上限値が12Vである場合、中間電圧値は、6Vであることが好ましく、波長利用の起点とする。例えば、6Vを超えた箇所を起点として、電気角で30°進んだ箇所を切り替えタイミングとすることができる。なお、角度は30°に限らず、交流モータ10の回転数に応じて適宜変更可能である。
【0024】
微分値算出部4122は、後述する交流モータ10の各相電圧信号のピーク値P同士を結ぶ仮想線Lの時間微分値を算出する。微分値算出部4122は、交流モータ10の各相電圧信号のピーク値P同士を結ぶ仮想線Lの時間微分値(N
01U,N
01W,N
01V)を出力するともいえる。
図3に示すように、交流モータ10の各相電圧信号は、ロジック出力がオンになった瞬間から所定時間の間、所定の傾きを持ってピーク値が増加し、ロジック出力がオフになった瞬間から所定時間の間、所定の傾きを持ってピーク値が減少していく。
【0025】
図4は、各相電圧信号のピーク値同士を結んだ仮想線の例を示す図である。微分値算出部4122は、交流モータ10の各相電圧信号から、交流モータ10の各相電圧信号の時間毎のピーク値Pを検出する。そして、微分値算出部4122は、各相電圧信号の時間毎のピーク値Pに基づいて、時間毎のピーク値P同士を結んだ仮想線Lの時間微分値を算出する。すなわち例えば、微分値算出部4122は、U相電圧信号から、U相電圧信号の時間毎のピーク値Pを検出して、U相電圧信号の時間毎のピーク値Pに基づいて、時間毎のピーク値P同士を結んだ仮想線Lを時間で微分して、U相電圧信号のピーク値P同士を結んだ仮想線Lの時間微分値を算出する。
【0026】
本実施形態では、電圧信号のピーク値Pとは、時間毎の電圧信号値のうちで、後述する所定の閾値THの範囲外となるものとし、言い換えれば、1サイクルの電圧信号のそれぞれにおける、電圧信号値が閾値THの範囲外となる電圧信号値とする。本実施形態の例では、
図4に示すように、各相電圧信号の波形は、所定期間の間、電圧信号値が、所定の閾値THの範囲内の基準値(本例では0V)に維持され、その後、電圧信号値が所定の閾値THの範囲外(本例では所定の閾値THよりも高い電圧値)に変化し、所定期間の間、電圧信号値が所定の閾値THの範囲外に維持され、その後、電圧信号値が所定の閾値THの範囲内の基準値に戻る、というサイクルが繰り返されるものとなっている。言い換えれば、各相電圧信号の波形は、電圧信号値が所定の閾値THの範囲内に維持される時間帯と、電圧信号値が所定の範囲外に維持される時間帯とが交互に繰り返されるサイクル波形となっている。そのため、
図4に示すように、電圧信号のピーク値Pとは、電圧信号値が所定の閾値THの範囲外に維持されている時間帯における、電圧信号値を指す。また、電圧信号値が所定の閾値THの範囲外に維持されている時間帯は、電圧信号値が所定の閾値THの範囲内に維持される時間帯を介して繰り返されるので、ピーク値P同士を結んだ仮想線Lとは、
図4に示すように、電圧信号値が所定の閾値THの範囲外に維持されているそれぞれの時間帯における、電圧値(ピーク値P)を結んだ線といえる。なお、ここでの所定の閾値THは、任意に設定されてよい。例えば本実施形態では、電圧信号値がグランド~正電源電圧Vcc(本例では0V~12V)で変化するため、電圧信号値が0Vより高い場合に、所定の閾値THの範囲外と判断してよい。
【0027】
図5は、各相電圧信号のピーク値の例を示す図である。上述のように、電圧信号のピーク値Pとは、電圧信号値が所定の閾値THの範囲外に維持されている時間帯における電圧信号値を指す。ここで、
図5に示すように、電圧信号値が、所定の閾値THの範囲内から、所定の閾値THの範囲外(本例では所定の閾値THよりも高い電圧値)に変化したタイミングを、第1タイミングt1とし、その第1タイミングt1の後に、電圧信号値が所定の閾値THの範囲外から範囲内に戻ったタイミングを、第2タイミングt2とする。第1タイミングt1は、直前に検出された電圧信号値が所定の範囲内であり、かつ、その第1タイミングt1で検出された電圧信号値が所定の範囲外となるタイミングともいえる。同様に、第2タイミングt2は、その第2タイミングt2で検出された電圧信号値が所定の範囲外であり、かつ、その直後に検出される電圧信号値が所定の範囲内となるタイミングともいえる。また本例では、電圧信号は、0Vを基準として電圧値が立ち上がりと立ち下りを繰り返すPWM波形なので、0Vから電圧値が立ち上がるタイミングが第1タイミングt1であり、電圧値が0Vに立ち下がるタイミングが第2タイミングt2ともいえる。
図5に示すように、第1タイミングt1から第2タイミングt2までの時間帯において、電圧信号値は、所定の閾値THの範囲外に維持されている。この場合、微分値算出部4122は、電圧信号値が所定の閾値THの範囲外に維持されている1つの時間帯におけるピーク値Pとして、第1タイミングt1から第2タイミングt2までの任意のタイミングにおける電圧信号値を、ピーク値Pとして扱ってよい。
【0028】
微分値算出部4122は、各相電圧信号に基づいた任意の方法で、各相電圧信号のピーク値Pを取得してよい。例えば、微分値算出部4122は、電圧信号を逐次取得して、取得した電圧信号値が所定の閾値THの範囲内であるかを判断し、閾値THの範囲外となっている電圧信号値を、ピーク値Pとして取得してもよい。ただし、電圧信号値が閾値THの範囲外であるかの判断は必須ではない。例えば、制御部41がPWM信号の出力タイミングを把握しているため、微分値算出部4122は、PWM信号の出力タイミングに基づいて認識される、電圧信号値がピーク値Pとなるタイミングを取得して、そのタイミングにおける電圧信号値を、ピーク値Pとして取得してもよい。なお、閾値THに基づいてピーク値Pを取得する処理を行うと、閾値THを任意に設定できるので、例えば、ノイズを考慮して閾値THを基準電圧(本例では0V)より高めに設定することで、ノイズによるピーク値Pの誤検知を抑制できる。
【0029】
上述のように、微分値算出部4122は、第1タイミングt1と第2タイミングt2との間の任意のタイミングにおける電圧信号値を、ピーク値Pとして扱ってよい。例えば、微分値算出部4122は、第1タイミングt1における電圧信号値P1をピーク値Pとして扱ってよいし、第2タイミングt2における電圧信号値P2をピーク値Pとして扱ってよいし、中点タイミングt3における電圧信号値P3をピーク値Pとして扱ってよい。すなわち、微分値算出部4122は、電圧信号値が所定の閾値THの範囲外に維持されている1つの時間帯における、第1タイミングt1の電圧信号値P1、第2タイミングt2の電圧信号値P2、又は中点タイミングt3の電圧信号値P3を、その時間帯におけるピーク値Pとしてよい。なお、中点タイミングt3とは、第1タイミングt1と第2タイミングt2との中点となるタイミングである。すなわち、中点タイミングt3とは、第1タイミングt1と第2タイミングt2との間のタイミングであって、第1タイミングt1から中点タイミングt3までの時間と、中点タイミングt3から第2タイミングt2までの時間が等しくなるタイミングを指す。
【0030】
電圧信号値が所定の閾値THの範囲外に維持されている第1タイミングt1から第2タイミングt2までの時間帯における、電圧信号値の時間波形は、任意であってよい。例えば、
図5の(A)に示すように、電圧信号値が、第1タイミングt1から第2タイミングt2まで一定となる場合もある。また例えば、
図5の(B)に示すように、電圧信号値が、第1タイミングt1から第2タイミングt2に向けて徐々に高くなる場合もあるし、
図5の(C)に示すように、電圧信号値が、第1タイミングt1から第2タイミングt2に向けて徐々に低くなる場合もあるし、
図5の(D)に示すように、電圧信号値が、第1タイミングt1から中点タイミングt3に向けて徐々に高くなり、中点タイミングt3から第2タイミングt2に向けて徐々に低くなる場合もある。なお、
図5の(B)、(D)のような波形でも、1サイクルで最初に電圧信号値が閾値THの範囲外となる(閾値THより大きくなる)タイミングは、第1タイミングt1なので、電圧信号値が立ち上がるタイミングは、第1タイミングt1である。いずれの波形の場合でも、微分値算出部4122は、第1タイミングt1から第2タイミングt2までの任意のタイミングにおける電圧信号値を、ピーク値Pとして扱ってよい。ただし、微分値算出部4122は、中点タイミングt3における電圧信号値P3を、ピーク値Pとして扱うことが好ましい。例えば
図5の(B)、(C)に示すように立ち上がりや立ち下りにエッジが生じる波形となる場合には、立ち上がりの第1タイミングt1の電圧信号値P1をピーク値Pとすると、ピーク値Pとした電圧信号値P1と立ち下りの第2タイミングt2における電圧信号値P2の差が大きくなってしまい、エッジの影響を受けて、実際のピーク値Pを高精度に検出できなくなる恐れがある。同様に、
図5の(B)、(C)に示す波形となる場合に、立ち下がりの第2タイミングt2の電圧信号値P2をピーク値Pとすると、ピーク値Pとした電圧信号値P2と立ち上がりの第1タイミングt1における電圧信号値P1の差が大きくなってしまい、エッジの影響を受けて、実際のピーク値Pを高精度に検出できなくなる恐れがある。それに対して、中点タイミングt3の電圧信号値P3をピーク値Pとすることで、エッジの影響を受け難くなり、実際のピーク値Pを高精度に検出可能となる。また、
図5の(D)に示すような波形となる場合にも、中点タイミングt3の電圧信号値P3をピーク値Pとすることで、実際のピーク値Pを高精度に検出可能となる。
【0031】
微分値算出部4122は、電圧信号の時間毎のピーク値Pを用いた任意の方法で、その相における時間毎のピーク値P同士を結んだ仮想線Lの時間微分値を算出してよい。例えば、微分値算出部4122は、算出対象となるタイミングにおけるピーク値Pと、そのタイミングの直前のタイミングにおけるピーク値Pとに基づいて、それらのピーク値P同士を結ぶ仮想線Lの時間微分値を算出してよい。この場合例えば、微分値算出部4122は、算出対象となるタイミングにおけるピーク値Pから、直前のタイミングにおけるピーク値Pを差し引いた値を、それらのタイミング間の時間で除した値を、算出対象となるタイミングにおける時間微分値として算出してもよい。すなわちこの場合、算出対象となるタイミングにおけるピーク値Pから、直前のタイミングにおけるピーク値Pを差し引いた値を、それらのタイミング間で除した値は、算出対象となるタイミングにおけるピーク値Pと直前のタイミングにおけるピーク値Pとを結んだ仮想線Lの傾きに相当するため、仮想線Lの時間微分値であるといえる。なお、電圧信号値が所定の閾値THの範囲外とならないことが続く期間(例えば
図4に示す期間T)においては、
図4に示すように、所定の閾値THの範囲内の基準値(本例では0V)を、その期間におけるピーク値Pとして扱って、仮想線Lの時間微分値を算出してもよい。
【0032】
図6は、各相電圧信号の時間微分値の時間変化を示す図である。微分値算出部4122は、各相電圧信号のピーク値P同士を結ぶ仮想線Lの時間微分値を、時刻毎に(タイミング毎に)算出する。時刻毎の各相電圧信号のピーク値P同士を結ぶ仮想線Lの時間微分値を、時間軸でプロットすると、時間微分値の時間波形は、例えば
図6に示すものとなる。
図6に示すように、各相電圧信号の時間微分値は、各相電圧信号が所定時間の間、所定の傾きを持ってピーク値が増加していく間は、一定値に保たれる。また、各相電圧信号の時間微分値は、各相電圧信号が所定時間の間、所定の傾きを持ってピーク値が減少していく間も、一定値に保たれる。
【0033】
また、本実施形態においては、上述のように、アナログデジタル変換部411によりデジタル変換された電圧信号を用いて、ピーク値Pの検出や時間微分値の算出を行っていた。ただし、デジタル変換された電圧信号を用いることは必須ではない。例えば、交流モータ10の各相の電圧信号のアナログ値を検出して、検出した電圧信号のアナログ値から、電圧信号のピーク値Pを検出してもよい。この場合例えば、変動する電圧信号のアナログ値を、所定のタイミングで、サンプルホールドにより、一定の値に保持する。微分値算出部4122は、保持された電圧信号のアナログ値を、ピーク値Pとして検出する。そして、微分値算出部4122は、アナログ値を保持することで検出した時間毎の電圧信号のピーク値Pに基づき、上述と同様の方法で、ピーク値P同士を結ぶ仮想線Lの時間微分値を算出する。すなわち例えば、微分値算出部4122は、算出対象となるタイミングにおけるピーク値Pから、直前のタイミングにおけるピーク値Pを差し引いた値を、それらのタイミング間の時間で除した値を、算出対象となるタイミングにおける時間微分値として算出してもよい。この場合、算出対象となるタイミングにおけるピーク値Pから、直前のタイミングにおけるピーク値Pを差し引いた値を、それらのタイミング間で除した値は、算出対象となるタイミングにおけるピーク値Pと直前のタイミングにおけるピーク値Pとを結んだ仮想線Lの傾きに相当するため、仮想線Lの時間微分値であるといえる。
【0034】
不要信号除去部413は、時刻毎の各相電圧信号のピーク値P同士を結ぶ仮想線Lの時間微分値における不要信号を除去した補正信号(N
02U,N
02W,N
02V)を出力する。ここで、不要信号とは、交流モータ10の各相電圧信号のピーク値P同士を結ぶ仮想線Lの時間微分値が、一定値に保たれる期間が所定の時間に満たない信号を意味する。すなわち、補正信号とは、時刻毎の各相電圧信号のピーク値P同士を結ぶ仮想線Lの時間微分値を示す信号から不要信号を除去した後の信号である。言い換えれば、仮想線Lの時間微分値の時間波形のうちから、時間微分値が一定値に保たれる期間が所定の時間に満たない時間帯における時間微分値(すなわち補正信号)の時間波形を除去した(ゼロにした)時間波形の信号を、補正信号とする。
図6に示すように、各相電圧信号のピーク値P同士を結ぶ仮想線Lの時間微分値において、その値が一定値に保たれる期間が、所定の時間に満たない信号(
図6の破線円で囲んだ領域)である不要信号は、複数存在する場合がある。不要信号除去部413は、そのような不要信号を、フィルタリング、ないし通電から一定時間マスキング処理して、除去する。
【0035】
図7は、補正信号を示す図である。
図7に示すように、時刻毎の各相電圧信号のピーク値P同士を結ぶ仮想線Lの時間微分値から不要信号を除去した後には、交流モータ10の各相電圧信号のピーク値P同士を結ぶ仮想線Lの時間微分値が、所定時間の間に亘って一定値に保たれる信号が残り、不要信号除去部413はその信号を補正信号とする。
【0036】
絶対値算出部414は、各相の補正信号の絶対値を、相毎に算出する。すなわち、絶対値算出部414は、不要信号を除去した後の各相の補正信号にマイナスの信号が残っていた場合に、そのマイナスの信号をプラスの信号に変換する処理を実行する。絶対値算出部414は、各相の補正信号の絶対値の相毎の信号(N03U,N03W,N03V)を出力するともいえる。
【0037】
図8は、各相の補正信号の絶対値算出後の信号を示す図である。
図8に示すように、絶対値算出処理を実行した後は、各相の補正信号にマイナスの信号が無くなり、プラスの信号、もしくは値がゼロの信号だけが残る。
【0038】
マージ部415は、各相の補正信号に含まれる信号を併合した合計信号(N04all)を算出する。マージ部415は、各相の補正信号に含まれる信号を併合した合計信号(N04all)を出力するともいえる。また、マージ部415は、各相の補正信号の絶対値を併合した合計信号を算出する。すなわち、マージ部415は、絶対値算出処理を実行した後のU相、V相、及びW相の信号を全て併合する処理を実行する。言い換えれば、マージ部415は、絶対値算出処理を実行した後の各相の補正信号を時刻毎に足し合わせることで、各相の時刻毎の補正信号の絶対値が同一時間軸で重ね合わされた合計信号を算出する。
【0039】
図9は、各相の絶対値算出後の信号を全て合計した合計信号を示す図である。
図9に示すように、各相の絶対値算出後の信号を全て合計する処理を実行した後は、U相、V相、及びW相の信号が、全て合計された信号が生成される。
【0040】
サンプルホールド部416は、合計信号のゼロ以外の値を保持したサンプルホールド信号(N05all)を算出する。サンプルホールド部416は、合計信号のゼロ以外の値を保持したサンプルホールド信号(N05all)を出力するともいえる。すなわち、サンプルホールド部416は、マージ部415が各相信号の絶対値を全て合計した後の合計信号に対して、ゼロ以外の値を保持して、各相信号の絶対値がゼロ以外の他の値に変化するまで、一定値に保つ処理を実行する。言い換えれば、サンプルホールド信号は、合計信号の値がゼロとなる時間帯における合計信号の値が、その直前における合計信号の値となるように、合計信号を補正した信号といえる。
【0041】
図10は、合計信号をサンプルホールドしたサンプルホールド信号を示す図である。
図10に示すように、サンプルホールド処理の実行後は、信号の値がゼロに保たれる期間が無くなる。
【0042】
波長算出部417は、交流モータ10の各相電圧信号のピーク値P同士を結ぶ仮想線Lの時間微分値に基づいて、交流モータ10に入力される各相電圧信号の波長を算出する。波長算出部417は、第1波長算出部4171と、第2波長算出部4172と、第3波長算出部4173と、を備える。
【0043】
第1波長算出部4171は、時間微分値から交流モータ10に入力される各相電圧信号の波長を算出する。具体的には、第1波長算出部4171は、サンプルホールド信号から交流モータ10に入力される各相電圧信号の波長を算出する。すなわち、第1波長算出部4171は、サンプルホールド信号の値の逆数を取り、逆数を取った後の値に対して比例係数を掛けることで、交流モータ10に入力される各相電圧信号の波長を得る。なお、比例係数は交流モータ10の固有定数により求めることができる。また、第1波長算出部4171は、算出した波長の移動平均を算出してもよい。例えばこの場合、第1波長算出部4171は、今回算出した波長と、これまでに算出した波長との移動平均値(例えば単純移動平均値)を算出して、算出した移動平均値を、今回算出した波長として用いてよい。これにより、変動が大きい場合であっても第1波長算出部4171が出力する波長の変動を抑制することができる。
【0044】
第2波長算出部4172は、中間電圧値検出部4121によって検出された、各相電圧信号が中間電圧値となるタイミングに基づいて、交流モータ10に入力される各相電圧信号の波長を算出する。第2波長算出部4172は、中間電圧値が検出されたタイミング(時刻)と、1つ前に中間電圧値が検出されたタイミング(時刻)との差を求めることで、交流モータ10の一回転の周期を求めることができる。第2波長算出部4172は、中間電圧値の時刻から得られた周期の逆数を取ることで、交流モータ10に入力される各相電圧信号の波長を得ることができる。また、第2波長算出部4172は、算出した波長の移動平均を算出してもよい。例えばこの場合、第2波長算出部4172は、今回算出した波長と、これまでに算出した波長との移動平均値(例えば単純移動平均値)を算出して、算出した移動平均値を、今回算出した波長として用いてよい。これにより、変動が大きい場合であっても第2波長算出部4172が出力する波長の変動を抑制することができる。
【0045】
第3波長算出部4173は、第1波長算出部4171が算出した波長と、第2波長算出部4172が算出した波長とに基づき、交流モータ10に入力される各相電圧信号の波長を算出する。本実施形態の例では、第3波長算出部4173は、第1波長算出部4171が算出した波長と、第2波長算出部4172が算出した波長の移動平均を算出して、その移動平均を交流モータ10に入力される各相電圧信号の波長とする。例えば、第3波長算出部4173は、第1波長算出部4171が算出した直近のn個の波長と、第2波長算出部4172が算出した直近のn個の波長とに対して、重み付けのない単純な平均値を算出してよい。
【0046】
第3波長算出部4173は、第1波長算出部4171が算出した交流モータ10に入力される各相電圧信号の波長と、第2波長算出部4172が算出した交流モータ10に入力される各相電圧信号の波長との、加重移動平均値を算出して、その加重移動平均値を交流モータ10に入力される各相電圧信号の波長としてもよい。加重移動平均値とは、個々のデータに重みをつけた平均値を指す。すなわち本実施形態では、第3波長算出部4173は、第1波長算出部4171が算出した各相電圧信号の波長に所定の第1重み係数を乗じた値と、第2波長算出部4172が算出した各相電圧信号の波長に所定の第2重み係数を乗じた値とを、平均して、その平均した値である加重移動平均値を、各相電圧信号の波長として扱ってよい。また例えば、第3波長算出部4173は、第1波長算出部4171が算出した直近のn個の波長のそれぞれに第1重み係数を乗じた値のそれぞれと、第2波長算出部4172が算出した直近のn個の波長のそれぞれに第2重み係数を乗じた値のそれぞれとの、平均値を算出して、その平均値である加重移動平均値を、各相電圧信号の波長として扱ってよい。なお、第1重み係数とは、第1波長算出部4171が算出した各相電圧信号の波長が、加重移動平均値に与える影響度合いを示す係数であり、第2重み係数とは、第2波長算出部4172が算出した各相電圧信号の波長が、加重移動平均値に与える影響度合いを示す係数である。このように第1重み係数及び第2重み係数を用いて算出した加重移動平均値を、各相電圧信号の波長として扱うことで、各相電圧信号の実際の波長を高精度に反映した波長を算出することが可能となり、脱調をより好適に抑制できる。
【0047】
第1重み係数及び第2重み係数は、任意に設定してよいが、第3波長算出部4173は、交流モータ10の負荷に応じて、第1重み付け係数及び第2重み係数の少なくとも一方を変化させて、波長の加重移動平均を算出してもよい。例えば、第1波長算出部4171が算出した波長の変動が大きく、交流モータ10の回転数のブレが大きいと考えられる場合、第3波長算出部4173は、第1重み付け係数を大きくして、各相電圧信号の波長の加重移動平均を算出してよい。より詳しくは、例えば、第3波長算出部4173は、交流モータ10の負荷変動が所定の閾値以上となる場合に、その負荷変動が閾値未満である場合よりも、第2重み係数に対する第1重み付け係数の比率が大きくなるように、第1重み付け係数及び第2重み係数の少なくとも一方を変化させてもよい。また例えば、第3波長算出部4173は、交流モータ10の負荷変動が大きくなるほど、第2重み係数に対する第1重み付け係数の比率が大きくなるように、第1重み付け係数及び第2重み係数の少なくとも一方を変化させてもよい。なお、交流モータ10の負荷変動は、任意に検出されてよいが、例えば、第1波長算出部4171によって前回算出された電圧信号の波長と、第1波長算出部4171によって前回算出された電圧信号の波長との差分を、負荷変動として算出してよい。
【0048】
切替信号生成部418は、算出された波長に基づいて交流電圧を印加する交流モータ10の相を切り替える信号を生成する。すなわち、切替信号生成部418は、波長算出部417が算出した波長に基づいて、交流モータ10のロータの位置を予測して、交流モータ10が電気角で一回転(360°回転)する間に、電圧方向の切り替えを6回(60°毎に切り替え)行うように、交流電圧を印加する交流モータ10の相を切替える信号を生成する。切替信号生成部418は、駆動回路50に交流電圧を印加する相の指令を示すロジック信号、すなわちPWM(Pulse Width Modulation)信号を出力するともいえる。
【0049】
駆動回路50は、切替信号生成部418が出力したPWM信号に従って、インバータ回路が備える6つの半導体スイッチング素子(U+,V+,W+,U-,V-,W-)の各ゲートに、駆動信号を出力する。駆動回路50は、電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)、IGBT等の半導体スイッチング素子によって実現されてよい。すなわち、駆動回路50は、半導体スイッチング素子を駆動するために、PWM信号を必要に応じて増幅した信号を駆動信号として出力してよい。
【0050】
(制御方法、及びプログラムについて)
次に、本開示に係る制御方法について
図11を用いて説明する。
図11は、本開示に係る制御方法を示すフローチャートである。
図11を用いて、交流モータ10の制御方法をステップごとに説明する。まず、本開示に係る制御方法においては、交流モータ10の各相電圧信号を取得する(ステップS110)。次に、取得した各相電圧信号をアナログデジタル変換する(ステップS120)。そして、アナログデジタル変換された各相電圧信号のピーク値P同士を結ぶ仮想線Lの時間微分値を算出する(ステップS130)。そして、各相電圧信号のピーク値P同士を結ぶ仮想線Lの時間微分値から不要信号を除去する(ステップS140)。そして、不要信号を除去された各相電圧信号の時間微分値に対して絶対値を算出する処理を実行する(ステップS150)。そして、絶対値を保持してサンプルホールドする処理を実行する(ステップS160)。そして、サンプルホールドされた値を用いて波長を算出する処理を実行する(ステップS170)。そして、波長に基づいて交流モータ10を駆動するPWM信号を出力する(ステップS180)。
【0051】
なお、上述した制御方法は、制御装置40を用いて実行されてもよいし、その他の任意の手段によって実行されてもよい。また、上述した制御方法を、制御装置40が備えるコンピュータに実行させるプログラムによって実行させることもできる。
【0052】
この構成の制御方法、及びプログラムによれば、各相電圧信号の時間微分値から交流モータ10に入力される各相電圧信号の波長を計算することができるため、交流モータ10の負荷の変動による影響を抑制して、交流モータ10を制御することができる。
【0053】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る制御装置40について説明する。第2実施形態に係る制御装置40は、第1実施形態に係る制御装置40に対して、絶対値算出部414を有さず、不要信号除去部413の処理が異なる以外は、同じ構成を有する。したがって、第2実施形態に係る制御装置40の構成のうち第1実施形態に係る制御装置40の構成と異なる部分について説明する。
【0054】
不要信号除去部413は、交流モータ10の各相電圧信号のピーク値P同士を結ぶ仮想線Lの時間微分値において、所定の時間に満たない期間だけ一定値となる不要信号に加えて、マイナスの値の信号を除去した信号を、補正信号(第2補正信号)として出力する。すなわち、不要信号除去部413は、仮想線Lの時間微分値の時間波形のうちから、時間微分値が一定値に保たれる期間が所定の時間に満たない時間帯と、時間微分値がマイナスとなる時間帯とにおける、時間微分値の時間波形を除去した(ゼロにした)時間波形の信号を、第2補正信号とする。
【0055】
図12は、第2実施形態に係る制御装置の信号処理の結果を示す図である。
図12に示すように、第2実施形態に係る制御装置40の信号処理では、不要信号除去部413が各相電圧信号の時間微分値において、所定の時間に満たない期間だけ一定値となる信号に加えて、マイナスの値の信号を除去することから、不要信号除去処理後の信号を示す第2補正信号は、プラスの値だけが残った信号となる。
【0056】
この構成によれば、制御装置40に絶対値算出部414を有さないため、制御部41の計算負荷が軽減されることから、制御部41の計算資源を他の演算に当てることが可能となる。
【0057】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る制御装置40について説明する。第3実施形態に係る制御装置40は、第1実施形態に係る制御装置40に対して、絶対値算出部414を有さず、不要信号除去部413とマージ部415の処理が異なる以外は、同じ構成を有する。したがって、第3実施形態に係る制御装置40の構成のうち第1実施形態に係る制御装置40の構成と異なる部分について説明する。
【0058】
不要信号除去部413は、交流モータ10の各相電圧信号の時間微分値において、所定の時間に満たない期間だけ一定値となる信号に加えて、プラスの値の信号を除去した信号を、補正信号(第3補正信号)として出力する。すなわち、不要信号除去部413は、仮想線Lの時間微分値の時間波形のうちから、時間微分値が一定値に保たれる期間が所定の時間に満たない時間帯と、時間微分値がプラスとなる時間帯とにおける、時間微分値の時間波形を除去した(ゼロにした)時間波形の信号を、第3補正信号とする。
【0059】
マージ部415は、第3補正信号の符号を反転させて、各相の第3補正信号を併合した合計信号を算出する。第3実施形態に係る制御装置40の不要信号除去部413は、上述した通り、交流モータ10の各相電圧信号のプラスの値を不要信号と見做して除去する。そのため、不要信号除去部413が出力する第3補正信号はマイナスの値の信号だけが残る。マージ部415は、第3補正信号のマイナスの値をプラスの値に変換して、各相の第3補正信号を併合した合計信号を算出する。
【0060】
図13は、第3実施形態に係る制御装置の信号処理の結果を示す図である。
図13に示すように、第3実施形態に係る制御装置40の信号処理では、不要信号除去部413が各相電圧信号の時間微分値において、所定の時間に満たない期間だけ一定値となる信号に加えて、プラスの値の信号を除去することから、不要信号除去処理後の信号を示す第3補正信号は、マイナスの値だけが残った信号となる。そして、マージ部415は、第3補正信号のマイナスの値をプラスの値に変換して、各相の第3補正信号を併合した合計信号を算出するため、第3実施形態に係る制御装置40の合計信号は、プラスの値の信号となる。
【0061】
この構成によれば、制御装置40に絶対値算出部414を有さないため、制御部41の計算負荷が軽減されることから、制御部41の計算資源を他の演算に当てることが可能となる。
【0062】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態に係る制御装置40について説明する。第4実施形態に係る制御装置40は、第1実施形態に係る制御装置40に対して、アナログデジタル変換部411の処理が異なる以外は、同じ構成を有する。したがって、第4実施形態に係る制御装置40の構成のうち第1実施形態に係る制御装置40の構成と異なる部分について説明する。
【0063】
第1実施形態では、交流モータ10の各相電圧信号を、グランド(0V)を基準として取得していたが、第4実施形態では、アナログデジタル変換部411は、交流モータ10の各相電圧信号を、正電源電圧Vccを基準にして取得する。すなわち、アナログデジタル変換部411は、交流モータ10の各相電圧信号と正電源30の出力電圧の電圧値との差を、交流モータ10の各相電圧信号として取得する。
【0064】
図14は、第4実施形態に係る制御装置のアナログデジタル変換部が取得した各相電圧信号を示す図である。
図14に示すように、第4実施形態に係る制御装置40のアナログデジタル変換部411が取得した各相電圧信号は、正電源30の出力電圧の電圧値との差であることから、正電源30の出力電圧の電圧値を上限として、その値が変動する信号となる。
【0065】
この構成においても、第1実施形態に係る制御装置40と同様に、例えば交流モータ10の波長よりも短い急激な負荷変動があった場合においても、交流モータ10の負荷に所望のトルクを与えることが可能な制御装置40を提供することができる。
【0066】
図15は、第4実施形態における各相電圧信号のピーク値同士を結んだ仮想線の例を示す図である。第1実施形態では、各相電圧信号は、
図4などに示すように、電圧値が0V以上、正電源電圧Vcc以下に維持されつつ、変化していた(例えば0V~12Vの間で変化していた)。ただし、第4実施形態では、各相電圧信号は、例えば
図15に示すように、電圧値が-Vcc以上、0V以下に維持されつつ、変化する(例えば、-12V~0Vの間で変化する)。この場合、微分値算出部4122は、各相電圧信号のピーク値Pから、そのピーク値Pの絶対値を算出して、各相電圧信号の時間毎のピーク値Pの絶対値に基づいて、時間毎のピーク値P同士を結んだ仮想線Lの時間微分値を算出してもよい。すなわち、
図15の仮想線LAは、ピーク値P同士を結んだ線となるが、ピーク値Pの絶対値同士を結んだ仮想線Lは、正負が反転して、第1実施形態と同形状の仮想線Lとなり、第1実施形態と同様に時間微分値を算出できる。絶対値を取る以外の時間微分値の算出方法は、第1実施形態と同様であるため、詳細な説明を省略する。ただしこの場合、微分値算出部4122は、例えば、電圧信号値が所定の閾値TH未満(例えば0V未満)の場合に、所定の閾値THの範囲外と判断して、ピーク値Pを検出してよい。
【0067】
(構成と効果)
本開示に係る制御装置40は、交流モータ10に印加する複数相の電圧信号の制御を行う制御装置40であって、交流モータ10に入力される前記複数相のそれぞれの電圧信号である各相電圧信号のピーク値P同士を結ぶ仮想線Lにおける時間微分値を算出する微分値算出部4122と、時間微分値から交流モータ10に入力される各相電圧信号の波長を算出する波長算出部417と、算出された波長に基づいて交流モータ10の相を切り替える信号を生成する切替信号生成部418と、を備える。
【0068】
この構成によれば、例えば交流モータ10の波長よりも短い急激な負荷変動があった場合においても、算出された波長に基づき交流モータ10を制御できるため、脱調を防止でき、交流モータ10の負荷に所望のトルクを与えることができる。
【0069】
本開示においては、各相電圧信号はPWM信号であり、微分値算出部4122は、各相電圧信号の値が立ち上がる第1タイミングt1と、第1タイミングt1の後に前記各相電圧信号の値が立ち下がる第2タイミングt2との間の、任意のタイミングにおける各相電圧信号の値を、各相電圧信号のピーク値Pとして取得する。このようにピーク値Pを取得することで、ピーク値P同士を結ぶ仮想線Lの時間微分値を高精度に算出できる。さらに言えば、ピーク値Pの読み取りはマイコンにより異なる場合があるが、本開示によると、電圧信号値が立ち上がる第1タイミングt1と、電圧信号値が立ち下がる第2タイミングt2との間の電圧信号値をピーク値とすればよいので、読み取りタイミングの調整が複雑とならず、処理が複雑となることを抑制できる。
【0070】
本開示に係る微分値算出部4122は、第1タイミングt1と第2タイミングt2との中点となる中点タイミングt3における各相電圧信号の値を、各相電圧信号のピーク値Pとして取得する。このようにピーク値Pを取得することで、各相電圧信号のPWM信号におけるエッジの影響を受け難くすることができ、ピーク値P同士を結ぶ仮想線Lの時間微分値を高精度に算出できる。
【0071】
本開示に係る制御装置40は、各相の時間微分値から、時間微分値が一定値に保たれる期間が所定の時間に満たない信号である不要信号を除去した補正信号を出力する不要信号除去部413と、各相の補正信号を併合した合計信号を算出するマージ部415と、合計信号の値を、ゼロ以外の他の値に変化するまで一定値に保つように補正したサンプルホールド信号を算出するサンプルホールド部416と、サンプルホールド信号の値の逆数に対して比例係数を乗じることで、各相電圧信号の波長を算出する第1波長算出部4171と、をさらに有する。
【0072】
この構成によれば、例えば交流モータ10の波長よりも短い急激な負荷変動が発生した場合においても、交流モータ10の負荷に所望のトルクを与えることができる。
【0073】
本開示に係る制御装置40は、交流モータ10の各相電圧信号から、各相電圧信号が中間電圧値となるタイミングを検出する中間電圧値検出部4121と、検出された中間電圧値となるタイミングに基づいて、交流モータ10に印加される各相電圧信号の波長を算出する第2波長算出部4172と、第1波長算出部4171が算出した交流モータ10に印加される各相電圧信号の波長と、第2波長算出部4172が算出した交流モータ10に印加される各相電圧信号の波長との移動平均を算出する第3波長算出部4173と、をさらに備え、切替信号生成部418は、第3波長算出部4173が算出した移動平均に基づいて切替信号を生成する。
【0074】
この構成によれば、第1波長算出部4171が算出した波長と第2波長算出部4172が算出した波長の移動平均に基づいて、交流モータ10の波長の計算を実行するため、波長の計算精度を上げることができる。
【0075】
本開示に係る制御装置40の第3波長算出部4173は、第1波長算出部4171が算出した各相電圧信号の波長と第1波長算出部4171が算出した各相電圧信号の波長が加重平均に与える影響度合いを示す第1重み付け係数とを乗じた値と、第2波長算出部4172が算出した各相電圧信号の波長と第2波長算出部4172が算出した各相電圧信号の波長が加重平均に与える影響度合いを示す第2重み付け係数とを乗じた値との、加重移動平均を算出する。切替信号生成部418は、第3波長算出部4173が算出した加重移動平均に基づいて切替信号を生成する。
【0076】
この構成によれば、第1波長算出部4171が算出した波長と、第2波長算出部4172が算出した波長の重み付け係数をそれぞれ設定して加重移動平均を算出できるため、交流モータ10の負荷変動に対する追従性と、交流モータ10に印加される各相電圧信号の波長の計算精度の維持を両立させることができる。
【0077】
本開示に係る制御装置40の第3波長算出部4173は、交流モータ10の負荷に応じて、第1重み付け係数と第2重み付け係数との少なくとも一方を変化させて、波長の加重移動平均を算出する。
【0078】
この構成によれば、交流モータ10の負荷変動が大きい場合に、第1波長算出部4171が時間微分値に基づいて算出した波長の第1重み付け係数を大きくするなど、負荷変動に応じて、第1重み係数や第2重み係数を設定することができるため、負荷変動に応じた波長の加重移動平均値を算出することが可能となり、各相電圧信号の実際の波長を高精度に反映して、脱調をより好適に抑制できる。
【0079】
本開示に係るプログラムは、交流モータ10に印加する複数相の電圧信号の制御を行うプログラムであって、交流モータ10に入力される複数相のそれぞれの電圧信号である各相電圧信号のピーク値P同士を結ぶ仮想線Lにおける時間微分値を算出するステップと、時間微分値から交流モータ10に入力される各相電圧信号の波長を算出するステップと、算出された波長に基づいて交流モータ10の相を切り替える信号を生成するステップと、をコンピュータに実行させる。
【0080】
この構成によれば、例えば交流モータ10の波長よりも短い急激な負荷変動が発生した場合においても、算出された波長に基づき交流モータ10を制御できるため、脱調を防止でき、モータの負荷に所望のトルクを与えることができる。
【0081】
以上、本開示の実施形態を説明したが、この実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0082】
100 モータシステム
10 交流モータ
20 インバータ
30 正電源
40 制御装置(モータ制御装置)
41 制御部
411 アナログデジタル変換部
412 信号処理部
4121 中間電圧値検出部
4122 微分値算出部
413 不要信号除去部
414 絶対値算出部
415 マージ部
416 サンプルホールド部
417 波長算出部
4171 第1波長算出部
4172 第2波長算出部
4173 第3波長算出部
418 切替信号生成部
42 記憶部
50 駆動回路
【手続補正書】
【提出日】2023-08-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータから交流モータに入力される複数相のそれぞれにおける基準値から所定の傾きを持って徐々に増加または減少し、その後、所定の傾きを持って徐々に減少または増加する波形の交流電圧を取得してアナログデジタル変換することで、所定期間、電圧値が、所定の閾値の範囲内の前記基準値に維持され、その後、電圧値が前記閾値の範囲外に変化し、所定期間、電圧値が前記閾値の範囲外となり、その後、電圧値が前記基準値に戻る、というサイクルが繰り返される波形の各相電圧信号を生成するアナログデジタル変換部と、
前記各相電圧信号の電圧値が立ち上がるまたは立ち下がる第1タイミングと、前記第1タイミングの後に前記各相電圧信号の電圧値が立ち下がるまたは立ち上がる第2タイミングとの間の、任意のタイミングにおける前記各相電圧信号の電圧値を、前記各相電圧信号のピーク値として取得し、前記各相電圧信号のピーク値同士を結ぶ仮想線における時間微分値を算出する微分値算出部と、
前記時間微分値から交流モータに入力される交流電圧の波長を算出する波長算出部と、
算出された波長に基づいて前記交流モータの相を切り替える信号を生成する切替信号生成部と、
を備えるモータ制御装置。
【請求項2】
前記微分値算出部は、前記第1タイミングと前記第2タイミングとの中点となる中点タイミングにおける前記各相電圧信号の電圧値を、前記各相電圧信号のピーク値として取得する、
請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
各相の前記時間微分値から、前記時間微分値が一定値に保たれる期間が所定の時間に満たない信号である不要信号を除去した補正信号を生成する不要信号除去部と、
各相の前記補正信号を併合した合計信号を算出するマージ部と、
前記合計信号の値を、ゼロ以外の他の値に変化するまで一定値に保つように補正したサンプルホールド信号を算出するサンプルホールド部と、
前記サンプルホールド信号の値の逆数に対して比例係数を乗じることで、前記交流電圧の波長を算出する第1波長算出部と、をさらに備える、
請求項1又は請求項2に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
前記各相電圧信号から、各相電圧信号が中間電圧値となるタイミングを検出する中間電圧値検出部と、
検出された中間電圧値となるタイミングに基づいて、交流モータに入力される交流電圧の波長を算出する第2波長算出部と、
前記第1波長算出部が算出した交流モータに入力される交流電圧の波長と、前記第2波長算出部が算出した交流モータに入力される交流電圧の波長との移動平均を算出する第3波長算出部と、をさらに備え、
前記切替信号生成部は、第3波長算出部が算出した前記移動平均に基づいて切替信号を生成する、
請求項3に記載のモータ制御装置。
【請求項5】
前記第3波長算出部は、
前記第1波長算出部が算出した交流電圧の波長と、前記第1波長算出部が算出した各相電圧信号の波長が加重平均に与える影響度合いを示す第1重み付け係数とを乗じた値と、
前記第2波長算出部が算出した交流電圧の波長と、前記第2波長算出部が算出した交流電圧の波長が加重平均に与える影響度合いを示す第2重み付け係数とを乗じた値と、
の加重移動平均を算出し、
前記切替信号生成部は、第3波長算出部が算出した前記加重移動平均に基づいて切替信号を生成する、
請求項4に記載のモータ制御装置。
【請求項6】
前記第3波長算出部は、前記交流モータの負荷に応じて、前記第1重み付け係数と前記第2重み付け係数との少なくとも一方を変化させて、波長の加重移動平均を算出する、
請求項5に記載のモータ制御装置。
【請求項7】
インバータから交流モータに入力される複数相のそれぞれにおける基準値から所定の傾きを持って徐々に増加または減少し、その後、所定の傾きを持って徐々に減少または増加する波形の交流電圧である各相電圧信号のアナログ値を、所定のタイミング毎にサンプルホールドするサンプルホールド部と、
サンプルホールドされた前記各相電圧信号のアナログ値を、前記各相電圧信号のピーク値として検出して、前記ピーク値同士を結ぶ仮想線における時間微分値を算出する微分値算出部と、
前記時間微分値から交流モータに入力される交流電圧の波長を算出する波長算出部と、
算出された波長に基づいて前記交流モータの相を切り替える信号を生成する切替信号生成部と、
を備える、
モータ制御装置。
【請求項8】
インバータから交流モータに入力される複数相のそれぞれにおける基準値から所定の傾きを持って徐々に増加または減少し、その後、所定の傾きを持って徐々に減少または増加する波形の交流電圧を取得してアナログデジタル変換することで、所定期間、電圧値が、所定の閾値の範囲内の基準値に維持され、その後、電圧値が前記閾値の範囲外に変化し、所定期間、電圧値が前記閾値の範囲外となり、その後、電圧値が前記基準値に戻る、というサイクルが繰り返される波形を有する、各相電圧信号を生成するステップと、
前記各相電圧信号の電圧値が立ち上がるまたは立ち下がる第1タイミングと、前記第1タイミングの後に前記各相電圧信号の電圧値が立ち下がるまたは立ち上がる第2タイミングとの間の、任意のタイミングにおける前記各相電圧信号の電圧値を、前記各相電圧信号のピーク値として取得し、前記各相電圧信号のピーク値同士を結ぶ仮想線における時間微分値を算出するステップと、
前記時間微分値から交流モータに入力される交流電圧の波長を算出するステップと、
算出された波長に基づいて前記交流モータの相を切り替える信号を生成するステップと、
をコンピュータに実行させる、
プログラム。
【請求項9】
インバータから交流モータに入力される複数相のそれぞれにおける基準値から所定の傾きを持って徐々に増加または減少し、その後、所定の傾きを持って徐々に減少または増加する波形の交流電圧である各相電圧信号のアナログ値を、所定のタイミング毎にサンプルホールドするステップと、
サンプルホールドされた前記各相電圧信号のアナログ値を、前記各相電圧信号のピーク値として検出して、前記ピーク値同士を結ぶ仮想線における時間微分値を算出するステップと、
前記時間微分値から交流モータに入力される交流電圧の波長を算出するステップと、
算出された波長に基づいて前記交流モータの相を切り替える信号を生成するステップと、
をコンピュータに実行させる、
プログラム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】