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特開2023-122538X線撮影装置および撮影位置補正方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122538
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】X線撮影装置および撮影位置補正方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20230825BHJP
【FI】
A61B6/00 320M
A61B6/00 350D
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203317
(22)【出願日】2022-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2022026152
(32)【優先日】2022-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【弁理士】
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】奥村 皓史
(72)【発明者】
【氏名】山本 淳也
(72)【発明者】
【氏名】武田 遼
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA01
4C093CA16
4C093CA34
4C093EB10
4C093EC03
4C093EC14
4C093EC23
4C093EC34
4C093ED07
4C093FA53
4C093FA54
4C093FA55
4C093FB01
4C093FF16
4C093FF22
(57)【要約】
【課題】被曝量および撮影時間の増加を抑制しつつ、診断を正確に行うことが可能なX線画像を取得することが可能なX線撮影装置を提供する。
【解決手段】このX線撮影装置(100)は、X線照射部(1)と、X線検出部(2)と、X線画像中の被検体(201)の1つの撮影対象物における複数の所定部分の各々の外縁を特定して、特定した複数の所定部分の外縁同士の位置関係に基づいて、被検体(201)の撮影対象物に対するX線照射部(1)の相対的な位置を補正するための位置補正情報を取得する補正情報取得部(処理部81)とを備える。位置補正情報は、被検体(201)の撮影対象物に対するX線照射部(1)の相対的な位置を、複数の所定部分の外縁同士の位置関係が所定の位置関係で写るX線画像を撮影可能な位置に補正するための相対的な移動方向および移動量を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に対してX線を照射するX線照射部と、
前記X線照射部から照射され、前記被検体を透過したX線を検出するX線検出部と、
前記X線検出部の検出信号に基づいて撮影されるX線画像中の前記被検体の1つの撮影対象物における複数の所定部分の各々の外縁を特定して、特定した前記複数の所定部分の外縁同士の位置関係に基づいて、前記被検体の前記撮影対象物に対する前記X線照射部の相対的な位置を補正するための位置補正情報を取得する補正情報取得部と、を備え、
前記位置補正情報は、前記被検体の前記撮影対象物に対する前記X線照射部の相対的な位置を、前記複数の所定部分の外縁同士の位置関係が所定の位置関係で写る前記X線画像を撮影可能な位置に補正するための相対的な移動方向および移動量を含む、X線撮影装置。
【請求項2】
前記補正情報取得部により取得された前記位置補正情報の報知、および、前記位置補正情報に基づく、前記被検体の前記撮影対象物に対する前記X線照射部の相対的な位置を変更するための制御のうち、少なくとも一方を行うように構成されている、請求項1に記載のX線撮影装置。
【請求項3】
前記被検体に対する前記X線照射部の相対的な位置を変更させる移動機構と、
前記移動機構による前記被検体に対する前記X線照射部の相対的な位置の変更の制御を行う移動制御部とをさらに備え、
前記移動制御部は、前記補正情報取得部により取得された前記位置補正情報に基づいて、前記移動機構による前記被検体の前記撮影対象物に対する前記X線照射部の相対的な位置の変更の制御を行うように構成されている、請求項2に記載のX線撮影装置。
【請求項4】
前記被検体が載置される天板をさらに備え、
前記移動制御部は、前記補正情報取得部により取得された前記位置補正情報に基づいて、前記被検体の前記撮影対象物に対する前記X線照射部の相対的な位置が、前記複数の所定部分の外縁同士の位置関係が前記所定の位置関係で写る前記X線画像を撮影可能な位置になるように、前記X線照射部および前記天板のうちの少なくとも一方の位置を自動的に移動させる制御を行う、請求項3に記載のX線撮影装置。
【請求項5】
前記被検体が載置される天板をさらに備え、
前記移動制御部は、ユーザの操作に基づく前記X線照射部または前記天板の一方の移動の際に、前記補正情報取得部により取得された前記位置補正情報に基づいて、前記X線照射部または前記天板の一方の移動を制限する制御を行う、請求項3に記載のX線撮影装置。
【請求項6】
前記補正情報取得部により取得された前記位置補正情報の報知として、前記複数の所定部分の外縁同士の位置関係が前記所定の位置関係で写る前記X線画像を撮影可能な位置に補正するための前記被検体の前記撮影対象物に対する前記X線照射部の相対的な移動方向および移動量のうち、少なくとも前記X線照射部の相対的な移動方向を表示する表示部をさらに備える、請求項2~5のいずれか1項に記載のX線撮影装置。
【請求項7】
前記補正情報取得部は、前記X線画像中の前記被検体の1つの前記撮影対象物における複数の所定部分の外縁同士の位置関係に基づいて、前記X線画像中の前記複数の所定部分の外縁の同士の相対的な位置ずれを取得して、取得した前記複数の所定部分の外縁同士の相対的な位置ずれに基づいて、前記位置補正情報を取得するように構成されている、請求項2~5のいずれか1項に記載のX線撮影装置。
【請求項8】
前記補正情報取得部は、前記X線画像中の前記被検体の1つの前記撮影対象物としての骨または人工関節における前記複数の所定部分の各々の外縁を特定して、特定した骨または人工関節における前記複数の所定部分の外縁同士の位置関係に基づいて、前記被検体の骨または人工関節に対する前記X線照射部の相対的な位置を補正するための前記位置補正情報を取得するように構成されている、請求項2~5のいずれか1項に記載のX線撮影装置。
【請求項9】
前記補正情報取得部は、前記X線画像中の前記被検体の骨または人工関節の各々における前記複数の所定部分の外縁同士の重なり具合に基づいて、前記複数の所定部分の外縁同士の相対的な位置ずれを取得するとともに、前記複数の所定部分の外縁同士が重なって写る前記X線画像を撮影可能な位置に、前記被検体の骨または人工関節に対する前記X線照射部の相対的な位置を補正するための前記位置補正情報を算出するように構成されている、請求項8に記載のX線撮影装置。
【請求項10】
前記補正情報取得部は、前記被検体の大腿骨の膝側および肩甲骨のうち、少なくとも一方の撮影の際に、前記複数の所定部分の外縁同士が重なって写る前記X線画像を撮影可能な位置に、前記被検体の骨または人工関節に対する前記X線照射部の相対的な位置を補正するための前記位置補正情報を算出するように構成されている、請求項9に記載のX線撮影装置。
【請求項11】
前記補正情報取得部は、前記X線画像中の前記被検体の骨または人工関節の各々における前記複数の所定部分の外縁同士の位置関係に基づいて、前記複数の所定部分の外縁同士の相対的な位置ずれを取得するとともに、前記複数の所定部分の外縁が同心円状に写る前記X線画像を撮影可能な位置に、前記被検体の骨または人工関節に対する前記X線照射部の相対的な位置を補正するための前記位置補正情報を算出するように構成されている、請求項8に記載のX線撮影装置。
【請求項12】
前記補正情報取得部は、前記被検体の上腕骨の肘側の撮影の際に、前記複数の所定部分の外縁が、同心円状に写る前記X線画像を撮影可能な位置に、前記被検体の骨または人工関節に対する前記X線照射部の相対的な位置を補正するための前記位置補正情報を算出するように構成されている、請求項11に記載のX線撮影装置。
【請求項13】
前記補正情報取得部は、前記被検体の前記撮影対象物に対する前記X線照射部の相対的な位置を補正した後に撮影される前記X線画像である位置補正後画像の撮影時よりも少ない放射線量のX線の照射に基づいて生成された前記X線画像である位置補正前画像中の前記被検体の前記撮影対象物における前記複数の所定部分の外縁同士の位置関係に基づいて、前記位置補正情報を取得するように構成されている、請求項1~5のいずれか1項に記載のX線撮影装置。
【請求項14】
前記補正情報取得部は、前記撮影対象物を撮影した前記X線画像を入力データとして機械学習された学習済みモデルに対して、前記X線画像を入力することにより、入力された前記X線画像に基づいて前記複数の所定部分の外縁を取得して、取得した前記複数の所定部分の外縁に基づいて前記位置補正情報を算出するように構成されている、請求項1~5のいずれか1項に記載のX線撮影装置。
【請求項15】
前記補正情報取得部は、前記被検体の前記撮影対象物における前記複数の所定部分同士の実際の距離に対応するパラメータ情報に基づいて、前記位置補正情報を算出するように構成されている、請求項1~5のいずれか1項に記載のX線撮影装置。
【請求項16】
前記補正情報取得部は、前記パラメータ情報として、前記被検体の前記X線画像における前記被検体の検出対象部分の大きさを検出する、請求項15に記載のX線撮影装置。
【請求項17】
前記補正情報取得部は、前記パラメータ情報として、前記位置補正情報を取得するために撮影された前記X線画像のうちから、前記被検体の前記検出対象部分の大きさを検出する、請求項16に記載のX線撮影装置。
【請求項18】
前記補正情報取得部は、前記パラメータ情報として、前記位置補正情報を取得するための前記X線画像とは異なる撮影角度により予め撮影された前記X線画像のうちから、前記被検体の前記検出対象部分の大きさを検出する、請求項16に記載のX線撮影装置。
【請求項19】
前記被検体の外観を撮像する撮像部をさらに備え、
前記補正情報取得部は、前記撮像部による撮像によって取得された前記被検体の外観画像から算出された前記被検体の体格の大きさを示す体格情報である前記パラメータ情報に基づいて、前記位置補正情報を算出するように構成されている、請求項15に記載のX線撮影装置。
【請求項20】
被検体に対してX線照射部からX線を照射する照射ステップと、
前記被検体を透過したX線を検出する検出ステップと、
前記検出ステップにおけるX線の検出に基づいて撮影されるX線画像中の前記被検体の1つの撮影対象物における複数の所定部分の各々の外縁を特定して、特定した前記複数の所定部分の外縁同士の位置関係に基づいて、前記被検体の前記撮影対象物に対する前記X線照射部の相対的な位置を補正するための位置補正情報を取得する補正情報取得ステップと、を備え、
前記位置補正情報は、前記被検体の前記撮影対象物に対する前記X線照射部の相対的な位置を、前記複数の所定部分の外縁同士の位置関係が所定の位置関係で写る前記X線画像を撮影可能な位置に補正するための相対的な移動方向および移動量を含む、撮影位置補正方法。
【請求項21】
前記補正情報取得ステップにおいて取得した前記位置補正情報の報知、および、前記位置補正情報に基づく、前記被検体の前記撮影対象物に対する前記X線照射部の相対的な位置の変更の制御のうちの少なくとも一方を行う位置補正ステップをさらに備える、請求項20に記載の撮影位置補正方法。
【請求項22】
前記補正情報取得ステップは、前記被検体の前記撮影対象物における前記複数の所定部分同士の実際の距離に対応するパラメータ情報に基づいて、前記位置補正情報を算出する前記補正情報取得ステップを含む、請求項20または21に記載の撮影位置補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線撮影装置および撮影位置補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線撮影装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、X線を照射するX線源と、X線を検出するX線検出器と、光学動画像およびガイド画像を合成した合成動画像を表示する表示装置とを備えるX線撮影装置が開示されている。このX線撮影装置では、操作者は、制御室側の表示装置に表示される合成動画像を見ながら、患者に対して撮影位置の変更を指示する。また、患者は、撮影室側の表示装置に表示される合成動画像を見ながら、自身の撮影位置を変更する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-117368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、整形外科の分野におけるX線画像の撮影は、経験豊富な放射線技師でも難易度が高いものとなっている。たとえば、離断性骨軟骨炎症および変形性膝関節症などの膝関節周辺の疾患の診断のために膝関節側面のX線画像を撮影する場合には、疾患の診断を正確に行うために、撮影位置を調整して、大腿骨の内側顆(大腿骨膝側の正中線側の部分)の外縁と、外側顆(大腿骨膝側の正中線側とは反対側の部分)の外縁とが重なったX線画像の撮影を行う必要がある。しかしながら、骨の形状および足の肉のつき方には個人差があるため、被検体の外見から撮影位置を調整して、大腿骨の内側顆の外縁と外側顆の外縁とが重なるようにX線画像の撮影を行うことは、経験豊富な放射線技師でも非常に困難である。そのため、大腿骨の内側顆の外縁と外側顆の外縁とが重なるような、診断を正確に行うことが可能なX線画像を撮影するためには、X線画像を撮影して、撮影したX線画像に基づいて、撮影位置の補正を行う必要がある。そして、診断を正確に行うことが可能なX線画像を撮影するためには、X線画像の撮影と、撮影位置の補正とを繰り返す必要がある。したがって、被検体の被曝量および撮影時間が増加してしまう。そのため、被曝量および撮影時間の増加を抑制しつつ、診断を正確に行うことが可能なX線画像を取得することが望まれている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、被曝量および撮影時間の増加を抑制しつつ、診断を正確に行うことが可能なX線画像を取得することが可能なX線撮影装置および撮影位置補正方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の第1の局面におけるX線撮影装置は、被検体に対してX線を照射するX線照射部と、X線照射部から照射され、被検体を透過したX線を検出するX線検出部と、X線検出部の検出信号に基づいて撮影されるX線画像中の被検体の1つの撮影対象物における複数の所定部分の各々の外縁を特定して、特定した複数の所定部分の外縁同士の位置関係に基づいて、被検体の撮影対象物に対するX線照射部の相対的な位置を補正するための位置補正情報を取得する補正情報取得部と、を備え、位置補正情報は、被検体の撮影対象物に対するX線照射部の相対的な位置を、複数の所定部分の外縁同士の位置関係が所定の位置関係で写るX線画像を撮影可能な位置に補正するための相対的な移動方向および移動量を含む。
【0008】
この発明の第2の局面における撮影位置補正方法は、被検体に対してX線照射部からX線を照射する照射ステップと、被検体を透過したX線を検出する検出ステップと、検出ステップにおけるX線の検出に基づいて撮影されるX線画像中の被検体の1つの撮影対象物における複数の所定部分の各々の外縁を特定して、特定した複数の所定部分の外縁同士の位置関係に基づいて、被検体の撮影対象物に対するX線照射部の相対的な位置を補正するための位置補正情報を取得する補正情報取得ステップと、を備え、位置補正情報は、被検体の撮影対象物に対するX線照射部の相対的な位置を、複数の所定部分の外縁同士の位置関係が所定の位置関係で写るX線画像を撮影可能な位置に補正するための相対的な移動方向および移動量を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1の局面におけるX線撮影装置および第2の局面における撮影位置補正方法では、X線画像中の被検体の1つの撮影対象物における複数の所定部分の各々の外縁を特定して、特定した複数の所定部分の外縁同士の位置関係に基づいて、被検体の撮影対象物に対するX線照射部の相対的な位置を補正するための位置補正情報が取得される。そして、位置補正情報は、被検体の撮影対象物に対するX線照射部の相対的な位置を、複数の所定部分の外縁同士の位置関係が所定の位置関係で写るX線画像を撮影可能な位置に補正するための相対的な移動方向および移動量を含む。これにより、骨または人工関節などの被検体の撮影対象物に対するX線照射部の相対的な位置を、複数の所定部分の外縁同士の位置関係が所定の位置関係で写るX線画像を撮影可能な位置に補正するための相対的な移動方向および移動量を含む位置補正情報が取得されるので、取得した位置補正情報を用いて、補正に必要な相対的な移動方向および移動量を報知することによって、放射線技師などのユーザは、報知結果に基づいて精度よく撮影位置の補正を行うことができる。その結果、X線画像の撮影と撮影位置の補正とを繰り返す回数を低減することができる。これにより、被曝量および撮影時間の増加を抑制しつつ、診断を正確に行うことが可能なX線画像を取得することが可能なX線撮影装置および撮影位置補正方法を提供することができる。また、取得した位置補正情報を用いて、X線照射部の相対的な位置を変更する制御を行うことによって、骨または人工関節などの被検体の撮影対象物に対するX線照射部の相対的な位置を、複数の所定部分の外縁同士の位置関係が診断に適した所定の位置関係で写るX線画像を撮影可能な位置に、精度よく補正することができる。その結果、X線画像の撮影と撮影位置の補正とを繰り返す回数を低減することができる。これにより、被曝量および撮影時間の増加を抑制しつつ、診断を正確に行うことが可能なX線画像を取得することが可能なX線撮影装置および撮影位置補正方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態によるX線撮影装置の全体構成を示した模式図である。
図2】本発明の第1実施形態によるX線撮影装置の構成を示したブロック図である。
図3】膝関節側面を撮影する際の被検体の寝姿勢の一例を示した図である。
図4】後ろ側から見た右膝の関節周辺の骨の構造を示した図である。
図5】膝関節側面を撮影した本ショット画像の一例である。
図6】膝関節側面を撮影したプレショット画像の一例である。
図7】処理部による学習済みモデルを用いたずれ量の算出の一例を示した図である。
図8】X線管球位置xの関数f(x)のグラフである。
図9】膝関節周辺の骨を示した図である。
図10】操作端末の表示部による表示の一例を示した図である。
図11】本発明の第1実施形態のX線撮影装置による撮影位置の補正を説明するための第1図である。
図12】本発明の第1実施形態のX線撮影装置による撮影位置の補正を説明するための第2図である。
図13】上腕骨撮影時における位置補正情報の取得方法の一例を示した図である。
図14】位置補正前および位置補正後の肘関節周辺のX線画像を示した図である。
図15】第1実施形態によるX線撮影装置の自動補正モードにおける撮影位置の補正の処理フローを示した図である。
図16】第1実施形態によるX線撮影装置の手動補正モードにおける撮影位置の補正の処理フローを示した図である。
図17】肩甲骨の撮影方向を説明するための図である。
図18】本発明によるX線撮影装置の他の一例を示した図である。
図19図18に示したX線撮影装置の操作端末の表示部による表示の一例を示した図である。
図20】第2実施形態によるX線撮影装置の構成を示したブロック図である。
図21】プレショット画像からのパラメータ情報の取得を説明するための図である。
図22】第2実施形態によるX線撮影装置の撮影位置補正方法の処理フローを示した図である。
図23】第3実施形態によるX線撮影装置の構成を示したブロック図である。
図24】外観画像からのパラメータ情報の取得を説明するための図である。
図25】第4実施形態によるX線撮影装置の構成を示したブロック図である。
図26】プレショット画像とは異なるX線画像からのパラメータ情報の取得を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
[第1実施形態]
図1図14を参照して、第1実施形態によるX線撮影装置100の構成について説明する。
【0013】
図1に示すように、X線撮影装置100は、X線照射部1と、検出部2とを備える。また、X線撮影装置100は、被検体201が載置される天板3と、照射部移動機構4と、天板移動機構5と、検出部移動機構6と、装置制御部7とを備える。X線撮影装置100は、天井から吊り下げられたX線照射部1から照射されるX線によって、撮影を行うように構成されている。なお、照射部移動機構4および天板移動機構5は、特許請求の範囲の「移動機構」の一例である。また、装置制御部7は、特許請求の範囲の「移動制御部」の一例である。
【0014】
X線照射部1は、被検体201に対してX線を照射するように構成されている。また、X線照射部1は被検体201にX線を照射するX線源(X線管球)と、X線の照射範囲を調整するコリメータとを含む。また、X線照射部1は、ユーザ202が手動によりX線照射部1を移動させる際に、ユーザ202が把持するために設けられた把持部1aを備えている。また、X線照射部1は、表示部1bを備え、ユーザ202が把持部1aを把持してX線照射部1を移動させる際のパワーアシスト量、および、撮影条件などを表示部1bによって表示可能に構成されている。また、表示部1bは、後述する位置補正情報も表示可能に構成されている。表示部1bは、たとえば、液晶ディスプレイ、または、有機ELディスプレイなどにより構成されている。
【0015】
検出部2は、X線照射部1から照射され、被検体201を透過したX線を検出するように構成されている。図1に示すように、検出部2は、被検体201を天板3に横たわらせた状態(臥位または側位)で撮影を行うために用いるX線検出部21と、被検体201を起立させた姿勢(立位)で撮影を行うために用いるX線検出部22とを含む。X線検出部21および22は、たとえば、FPD(Flat Panel Detector)であり、被検体201を透過したX線を検出する。
【0016】
照射部移動機構4は、X線照射部1を移動させることによって、被検体201に対するX線照射部1の相対的な位置を変更するように構成されている。X線撮影装置100では、X線照射部1は、照射部移動機構4によって、天井から吊り下げられるように支持されている。そして、X線照射部1は、照射部移動機構4によって撮影室内で移動可能に支持されている。照射部移動機構4は、X方向、Y方向およびZ方向の各々に対応して、図示しないモータおよび電磁ブレーキを備えている。そして、X線照射部1は、照射部移動機構4によって、X方向、Y方向、および、Z方向の各々に移動可能に構成されている。また、照射部移動機構4は、X方向、Y方向、および、Z方向の各々に対応して、X線照射部1の移動の制御に用いられる図示しないエンコーダを備えている。また、照射部移動機構4は、X方向、Y方向、および、Z方向の各々に対応して、図示しないポテンショメータを備え、X方向、Y方向、および、Z方向の各々の方向におけるX線照射部1の位置を検出可能に構成されている。
【0017】
また、X線照射部1は、Z軸線回りに回動可能に構成されている。そして、X線照射部1は、X軸線およびY軸線などのZ軸線に垂直な軸線の各々の軸線回りに回動に構成されている。図1のような状態においては、X線照射部1は、Y軸線回りに回動可能である。X線照射部1は、Z軸線に垂直な軸線回りに回動にすることによって、X線の照射方向および角度を変更可能に構成されている。また、照射部移動機構4は、X線照射部1の回動可能な2つの軸線の各々に対応して、図示しないモータおよび電磁ブレーキを備えている。また、照射部移動機構4は、X線照射部1の回動可能な2つの軸線の各々に対応して、図示しないエンコーダと、図示しないポテンショメータとを備えている。また、照射部移動機構4は、X線照射部1の移動により、出し引きされたワイヤーの長さを電気的に出力することにより、X線照射部1の上下方向(Z方向)における絶対位置を検出することが可能である。
【0018】
天板移動機構5は、天板3を移動させ、X線照射部1に対する被検体201の位置を変更することによって、被検体201に対するX線照射部1の相対的な位置を変更するように構成されている。天板移動機構5は、X方向、Y方向およびZ方向の各々に対応して、図示しないモータおよび電磁ブレーキを備えている。そして、天板3は、天板移動機構5によって、X方向、Y方向、および、Z方向の各々に移動可能に構成されている。
【0019】
検出部移動機構6は、臥位移動機構61および立位移動機構62を含む。臥位移動機構61および立位移動機構62には、それぞれX線検出部21および22が被検体201の撮影部位に応じて移動可能に保持されている。臥位移動機構61は、X線検出部21を移動させる機構であって、被検体201に対するX線検出部21の位置を変更可能に構成されている。また、立位移動機構62は、X線検出部22を移動させる機構であって、被検体201に対するX線検出部22の位置を変更可能に構成されている。
【0020】
装置制御部7は、X線撮影装置100全体を制御するように構成されている。具体的には、装置制御部7は、X線の照射の開始および停止などのX線照射部1によるX線照射の制御、X線照射部1によるX線照射範囲の変更の制御、検出部2(X線検出部21および22)による検出の制御、照射部移動機構4によるX線照射部1の移動の制御、および、天板移動機構5による天板3の移動の制御などを行うように構成されている。また、装置制御部7は、臥位移動機構61によるX線検出部21の移動の制御、立位移動機構62によるX線検出部22の移動の制御を行うように構成されている。
【0021】
装置制御部7は、CPU(Central Processing Unit)またはFPGA(field-programmable gate array)などのプロセッサを含む。また、装置制御部7は、照射部移動機構4が備えるエンコーダおよびポテンショメータの検出信号を受信可能に構成されている。また、装置制御部7は、照射部移動機構4が備えるモータおよび電磁ブレーキの制御を行うように構成されている。
【0022】
また、X線撮影装置100は、図2に示すように、処理部81と、記憶部82とを含む処理装置8を備える。処理装置8は、たとえば、放射線技師などのユーザ202によって操作されるPC(Personal Computer:パーソナルコンピュータ)である。また、処理装置8には、キーボードおよびマウスなどの図示しない入力機器と、液晶ディスプレイ、または、有機ELディスプレイなどの図示しない表示機器とが接続されている。処理装置8は、装置制御部7に通信可能に接続されている。また、処理装置8は、装置制御部7と一体的に構成されてもよい。
【0023】
処理部81は、検出部2(X線検出部21および22)の検出信号に基づいて撮影されるX線画像中の被検体201の1つの骨における複数の所定部分の各々の外縁を特定して、特定した複数の所定部分の外縁同士の位置関係に基づいて、被検体201の骨に対するX線照射部1の相対的な位置を補正するための位置補正情報を取得するように構成されている。処理部81は、CPU、GPU(Graphics Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、および、RAM(Random Access Memory)などを含む。なお、処理部81は、特許請求の範囲の「補正情報取得部」の一例である。また、骨は、特許請求の範囲の「撮影対象物」の一例である。
【0024】
そして、位置補正情報は、被検体201の骨に対するX線照射部1の相対的な位置を、複数の所定部分の外縁同士の位置関係が所定の位置関係で写るX線画像を撮影可能な位置に補正するための相対的な移動方向および移動量を含む。
【0025】
記憶部82は、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)等の不揮発性の記憶媒体を含む。記憶部82には、骨を撮影したX線画像を入力データとして機械学習された学習済みモデル(学習済みモデル82a、82b、82c、82dおよび82e)が記憶されている。学習済みモデル82a、82b、82c、82dおよび82eは、たとえば、U-Netを用いたモデルである。なお、X線画像を入力データとする機械学習は、教師あり学習、教師なし学習、および、強化学習のいずれであってもよい。第1実施形態では、記憶部82に記憶される学習済みモデルは、撮影部位の複数の所定部分ごとに存在している。記憶部82に記憶される学習済みモデルは、撮影部位の複数の所定部分の各々における特徴点を学習している。学習済みモデル82aおよび82bは、被検体201の膝関節を撮影する際に用いられる学習済みモデルである。そして、学習済みモデル82c、82dおよび82eは、被検体201の肘関節を撮影する際に用いられる学習済みモデルである。なお、学習済みモデル(学習済みモデル82a、82b、82c、82dおよび82e)は、X線撮影装置100にネットワークを介して接続されるサーバに記憶(格納)されていてもよい。また、記憶部82には、撮影部位ごとに作成された学習済みモデルが記憶されてもよい。
【0026】
また、第1実施形態では、被検体201の膝関節の撮影の際に、処理部81は、学習済みモデル82aおよび82bに対して、X線画像を入力することにより、入力されたX線画像に基づいて複数の所定部分の外縁を取得して、取得した複数の所定部分の外縁に基づいて位置補正情報を算出するように構成されている。また、第1実施形態では、被検体201の肘関節の撮影の際に、処理部81は、学習済みモデル82c、82dおよび82eに対して、X線画像を入力することにより、入力されたX線画像に基づいて複数の所定部分の外縁を取得して、取得した複数の所定部分の外縁に基づいて位置補正情報を算出するように構成されている。
【0027】
また、X線撮影装置100は、操作端末9を備える。操作端末9は、ユーザ202がX線撮影装置100の操作を行うための端末である。操作端末9は、装置制御部7および処理装置8に通信可能に接続されている。ユーザ202は、操作端末9を用いて、X線照射部1の位置の変更およびX線画像撮影のための操作を行うことができる。操作端末9は、表示部91および操作部92を備える。表示部91は、たとえば、液晶ディスプレイ、または、有機ELディスプレイなどにより構成されている。また、操作部92は、X線撮影装置100の操作を行うためのユーザインターフェースである。操作部92は、たとえば、スイッチ、または、リモコンなどを含む。また、操作部92は、表示部91に設けられたタッチパネルを含んでもよい。
【0028】
X線撮影装置100は、処理部81により取得された位置補正情報の報知を行うように構成されている。第1実施形態では、X線撮影装置100は、操作端末9の表示部91による表示によって、位置補正情報の報知を行うように構成されている。また、第1実施形態では、X線撮影装置100は、X線照射部1の表示部1bによる表示によって、位置補正情報の報知を行うことも可能である。なお、表示部91による表示の詳細については、後述する。
【0029】
(膝関節の撮影時における補正)
図3に示すように、膝の撮影を行う際には、被検体201が天板3の上方に載置された状態で、クッション203および204などによって、観察対象部位である膝の位置、大腿および下腿の旋回具合、下腿の挙上具合(膝の曲げ角度)などが適切になるように、被検体201の寝姿勢が調整される。そして、調整された寝姿勢の状態で、被検体201の観察対象部位に対するX線画像の撮影が行われる。
【0030】
そして、X線撮影装置100は、図4に示すような、大腿骨31の複数の所定部分をX線画像から特定(推定)して、X線照射部1の被検体201の骨に対する相対的な位置を補正するための位置補正情報を取得するように構成されている。
【0031】
また、X線撮影装置100は、被検体201の骨に対するX線照射部1の相対的な位置を補正した後に撮影されるX線画像である本ショット画像23(図5参照)の撮影時よりも少ない放射線量のX線の照射に基づいて生成されたX線画像であるプレショット画像24(図6参照)を撮影可能に構成されている。たとえば、プレショット画像24の撮影時における放射線量は、本ショット画像23の撮影時の1/50~1/100程度である。第1実施形態では、本ショット画像23は、疾患の診断に用いられる画像である。なお、本ショット画像23は、特許請求の範囲の「位置補正後画像」の一例であり、プレショット画像24は、特許請求の範囲の「位置補正前画像」の一例である。
【0032】
また、第1実施形態では、X線撮影装置100の処理部81は、プレショット画像24中の被検体201の骨における複数の所定部分の外縁同士の位置関係に基づいて、位置補正情報を取得するように構成されている。
【0033】
第1実施形態では、X線撮影装置100は、図5に示すような、大腿骨31の内側顆31a(図6参照)の外縁、および、外側顆31b(図6参照)の外縁同士が重なるようなX線画像を撮影するために、処理部81により位置補正情報を取得して、被検体201の骨に対するX線照射部1の相対的な位置を補正するように構成されている。なお、内側顆31aおよび外側顆31bは、特許請求の範囲の「複数の所定部分」の一例である。
【0034】
処理部81は、X線画像中の被検体201の1つの骨における複数の所定部分の外縁同士の位置関係に基づいて、X線画像中の複数の所定部分の外縁の同士の相対的な位置ずれを取得している。そして、処理部81は、取得した複数の所定部分の外縁同士の相対的な位置ずれに基づいて、位置補正情報を取得するように構成されている。第1実施形態では、膝関節側面の撮影時において、X線撮影装置100の処理部81は、大腿骨31の内側顆31a(大腿骨31膝側の正中線側の部分)の外縁、および、外側顆31b(大腿骨31膝側の正中線側とは反対側の部分)の外縁の同士の位置ずれに基づいて、位置補正情報を取得するように構成されている。
【0035】
また、処理部81は、X線画像中の被検体201の骨における複数の所定部分の外縁同士の重なり具合に基づいて、複数の所定部分の外縁同士の相対的な位置ずれを取得するように構成されている。第1実施形態では、処理部81は、図7に示すように、学習済みモデル82aおよび82bを用いて、被検体201の大腿骨31の膝側の複数の所定部分の外縁同士の相対的な位置ずれを取得している。具体的には、処理部81は、学習済みモデル82aによるセグメンテーション処理によって、プレショット画像24から、内側顆31aの外縁を特定(推定)している。また、処理部81は、学習済みモデル82bによるセグメンテーション処理によって、プレショット画像24から、外側顆31bの外縁を特定(推定)している。そして、処理部81は、プレショット画像24から特定(推定)した内側顆31aの外縁および外側顆31bの外縁に基づいて、大腿骨31の内側顆31aの外縁と外側顆31bの外縁との間のずれ(ずれ量およびずれ方向)を算出するように構成されている。処理部81によるずれ量およびずれ方向の解析においては、仮想的に内側顆31aおよび外側顆31bのいずれか一方を移動させて、内側顆31aの外縁および外側顆31bの外縁の後縁が一致するように、移動後の内側顆31aと外側顆31bとの間のずれによって生じる面積が最小となるような位置を探索することによって、ずれ量およびずれ方向が特定される。また、処理部81によるずれ量およびずれ方向の解析においては、内側顆31aおよび外側顆31bの各々の外縁を抽出した画像において、最大のずれ幅が存在する部分が特定されてもよい。
【0036】
そして、処理部81は、算出した大腿骨31の内側顆31aの外縁と外側顆31bの外縁との間のずれに基づいて、被検体201の大腿骨31の膝側の撮影の際に、複数の所定部分の外縁同士が重なって写るX線画像を撮影可能な位置に、被検体201の骨に対するX線照射部1の相対的な位置を補正するための位置補正情報を算出するように構成されている。具体的には、処理部81は、算出した大腿骨31の内側顆31aの外縁と外側顆31bの外縁との間のずれ(移動ベクトル)に基づいて、X線照射部1の移動方向および移動量(移動距離)を位置補正情報として算出している。位置補正情報は、図8に示すように、大腿骨31の内側顆31aの外縁と外側顆31bの外縁との間のずれ量fが、X線管球位置x(X線照射点)に対して線形に変化することを利用して算出される。第1実施形態では、複数の所定部分(内側顆31aおよび外側顆31b)の外縁同士が重なって写るX線画像を撮影可能な位置(ずれ量fが0になる位置)として推定される推定位置x’は、X線管球位置xにおいて撮影したプレショット画像24から算出した内側顆31aの外縁と外側顆31bの外縁との間のずれ量fと、X線管球位置xの関数f(x)の傾きαとに基づいて算出される。傾きαは、SID(Source to image receptor distance)などの装置のパラメータと、撮影時において被検体201(患者)に対応して設定されるパラメータとを含む各種パラメータにより変化する。
【0037】
また、内側顆31aおよび外側顆31bの各々の外縁の特定の前に、プレショット画像24に対する前処理が行われてもよい。たとえば、ハイパスフィルタによって、ノイズなどの不要な信号を除去する処理が前処理として行われてもよい。また、前処理として、撮影した膝のX線画像を左右反転する(左膝を右膝化する、または、右膝を左膝化する)処理が行われてもよい。この場合、処理部81は、右膝および左膝のうちの一方に対応する学習済みモデルのみが記憶部82に記憶されている場合でも、右膝および左膝の両方の内側顆31aの外縁と外側顆31bの外縁との間のずれ量の算出および位置補正情報の取得を行うことができる。
【0038】
また、処理部81は、内側顆31aおよび外側顆31bの各々の外縁の特定、および、内側顆31aおよび外側顆31bの重なり具合(位置関係)の算出を、内側顆31aおよび外側顆31bの特徴に加えて、図9に示す脛骨32、腓骨33、膝蓋骨34および種子骨35などの大腿骨31以外の被検体201の骨に基づいて、算出してもよい。
【0039】
たとえば、膝が外旋気味(外股気味)の場合には、腓骨33がより後方(膝蓋骨34から離間する方向)へ移動して、近位脛腓関節がより明瞭になる。そして、種子骨35は、大腿骨31の顆部(内側顆31aおよび外側顆31b)から離間する。また、膝が内旋気味(内股気味)の場合には、腓骨33がより前方(膝蓋骨34に近づく方向)へ移動して、脛骨32との重なりが大きくなる。そして、種子骨35は、大腿骨31の顆部(内側顆31aおよび外側顆31b)に近づく。したがって、腓骨33の位置または種子骨35の位置に基づいて、膝が外旋気味(外股気味)であるか、膝が内旋気味(内股気味)であるかを判別することが可能である。
【0040】
また、大腿骨31が延びる上下方向において、大腿骨31の内側顆31aと、大腿骨31の外側顆31bとの間に位置ずれが発生している場合には、脛骨32の内側プラトー32aと、脛骨32の外側プラトー32bとの間に位置ずれが発生する。したがって、脛骨32の内側プラトー32aと、脛骨32の外側プラトー32bとの位置関係に基づいて、大腿骨31の内側顆31aと、大腿骨31の外側顆31bの間に上下方向の位置ずれが有るか否かを判定することが可能である。
【0041】
また、操作端末9の表示部91は、位置補正情報の報知として、複数の所定部分の外縁同士の位置関係が所定の位置関係で写るX線画像を撮影可能な位置に補正するための被検体201の骨に対するX線照射部1の相対的な移動方向および移動量を表示する。たとえば、図10に示すように、操作端末9の表示部91には、被検体201の骨に対するX線照射部1の相対的な移動量および移動方向を示したチャート図が示される。これにより、ユーザ202は、被検体201の骨に対して、X線照射部1の位置を、どの方向にどの程度補正を行えばよいのかを、表示部91の表示によって把握することができる。なお、表示部91による表示は、「移動方向:10時方向、移動量:3cm」などのように文字のみによる表示であってもよいし、画像、図、および、文字などを組み合わせた表示であってもよい。
【0042】
また、X線照射部1の表示部1b(図1参照)は、表示部91と表示が連動するように構成されている。これにより、ユーザ202は、X線照射部1の把持部1a(図1参照)を把持した状態で、撮影位置の補正を行うために必要な被検体201の骨に対するX線照射部1の相対的な移動方向および移動量を表示部1bによって確認することができる。
【0043】
(X線照射部の移動の制御)
X線撮影装置100は、位置補正情報に基づく、被検体201の骨に対するX線照射部1の相対的な位置を変更するための制御を行うように構成されている。また、第1実施形態において、X線撮影装置100は、装置制御部7の制御によって撮影位置の補正を自動的に行う自動補正モードと、ユーザ202の手動操作によって撮影位置の補正を行う手動補正モードとを撮影位置の補正を行うモードとして備えている。そして、X線撮影装置100は、ユーザ202による切り替え操作に基づいて、撮影位置の補正を行うモードを、自動補正モードと手動補正モードとの間で切り替え可能に構成されている。
【0044】
第1実施形態では、X線撮影装置100の自動補正モードにおいて、装置制御部7が、位置補正情報に基づいて、X線照射部1の位置を移動させ、被検体201の骨に対するX線照射部1の相対的な位置を自動的に変更する自動的補正を行えるように構成されている。また、X線撮影装置100は、ユーザ202の操作に基づくX線照射部1の移動により補正を行う手動補正(手動補正モード)の際に、X線照射部1の移動の制限を行うように構成されている。
【0045】
具体的には、装置制御部7は、自動補正モードにおいて、処理部81により取得された位置補正情報に基づいて、被検体201の骨に対するX線照射部1の相対的な位置が、複数の所定部分の外縁同士の位置関係が所定の位置関係で写るX線画像を撮影可能な位置になるように、X線照射部1を自動的に移動させる制御を行う。すなわち、位置補正情報に基づく装置制御部7の制御によって、照射部移動機構4が、X線照射部1を、複数の所定部分の外縁同士の位置関係が所定の位置関係で写るX線画像を撮影可能な位置に移動させる。
【0046】
また、X線撮影装置100では、図11および図12に示すように、X線照射部1から照射されるX線のファンビーム特性によって、水平方向(XY方向)における位置を変更することによって、X線照射部1のX線照射角度を変えることなく補正を行うことができる。たとえば、図11の左図の位置から、図12の左図の位置にX線の照射点(X線照射部1)を移動させることによって、大腿骨31の内側顆31aの外縁と、大腿骨31の外側顆31bの外縁とを通るX線を照射することができる。これにより、X線照射部1のX線照射角度を変えなくても、大腿骨31の内側顆31aの外縁と、大腿骨31の外側顆31bの外縁とが重なって写る状態(図12の右図参照)のX線画像を撮影することができる。なお、撮影位置の補正の際には、水平方向(XY方向)における位置に加えて、X線照射部1のX線照射角度およびX線照射部1の上下方向(Z方向)における位置を変更してもよい。また、撮影位置の補正の際には、照射部移動機構4によるX線照射部1の移動に加えて、天板移動機構5によって、被検体201が載置される天板3の移動を行ってもよい。
【0047】
また、装置制御部7は、ユーザ202の操作に基づくX線照射部1の移動の際に、処理部81により取得された位置補正情報に基づいて、X線照射部1の移動を制限する制御を行う。具体的には、装置制御部7は、手動補正モードにおいて、位置補正情報に基づいて、照射部移動機構4の電磁ブレーキによるロックを制御することによって、X線照射部1の移動を制限するように構成されている。
【0048】
このように、第1実施形態では、装置制御部7は、処理部81により取得された位置補正情報に基づいて、照射部移動機構4による被検体201の骨に対するX線照射部1の相対的な位置の変更の制御を行うように構成されている。
【0049】
(肘関節の撮影時における補正)
また、第1実施形態では、処理部81は、被検体201の上腕骨36の肘側(肘関節)の撮影の際においても、X線画像中の被検体201の骨における複数の所定部分の外縁同士の位置関係に基づいて、複数の所定部分の外縁同士の相対的な位置ずれを取得するように構成されている。第1実施形態では、処理部81は、学習済みモデル82c、82dおよび82eを用いて、被検体201の上腕骨36の肘側の複数の所定部分の外縁同士の相対的な位置ずれを取得している。なお、被検体201の肘関節(上腕骨36の肘側)を撮影する際には、X線検出部21および22(図1参照)のいずれを用いてもよい。
【0050】
第1実施形態では、処理部81は、被検体201の上腕骨36の肘側(肘関節)の撮影の際に、複数の所定部分の外縁が同心円状に写るX線画像を撮影可能な位置に、被検体201の骨に対するX線照射部1の相対的な位置を補正するための位置補正情報を算出するように構成されている。具体的には、処理部81は、学習済みモデル82c、82dおよび82eを用いて、上腕骨36の部分A、BおよびCのそれぞれを特定(推定)している。そして、処理部81は、特定した上腕骨36の部分A、BおよびC同士の相対的な位置ずれを取得する。さらに、処理部81は、所得した上腕骨36の部分A、BおよびC同士の相対的な位置ずれに基づいて、複数の所定部分(部分A、BおよびC)の外縁が同心円状に写るX線画像を撮影可能な位置に、被検体201の骨に対するX線照射部1の相対的な位置を補正するための位置補正情報を算出している。第1実施形態では、処理部81は、肘関節の撮影の際において、X線管球位置x(X線照射点)を、部分Aおよび部分Cの外縁が重なるとともに、複数の所定部分(部分A、BおよびC)の外縁が同心円状に写るX線画像を撮影可能な位置に補正するためのX線照射部1の移動方向および移動量(移動距離)を位置補正情報として算出している。なお、位置補正情報の算出方法は、前述した膝関節の撮影の際の算出方法と同様の方法を用いる。
【0051】
具体的には、図13の上図に示すように、上腕骨36の外側から上腕骨小頭36aに向けてX線を照射して、X線画像の撮影を行う場合において、上腕骨36の肘側の部分Aおよび部分Cの外縁が重なるとともに、上腕骨36の肘側の複数の所定部分(部分A、BおよびC)の外縁が同心円状に写る(図13の下図参照)ように、被検体201の骨に対するX線照射部1の相対的な位置を補正するための位置補正情報を算出している。部分Aは、上腕骨小頭36aの凸部である。また、部分Bは、上腕骨36の滑車36bの凹部であり、部分Cは、上腕骨36の滑車36bの凸部である。なお、部分A、BおよびCは、特許請求の範囲の「複数の所定部分」の一例である。なお、肘関節の撮影時における位置補正情報の算出は、橈骨37および尺骨38の各々の外縁の位置関係のうちの少なくとも一方と、上腕骨36の肘側の複数の所定部分(部分A、BおよびC)の位置関係とに基づいて行われてもよい。図13は、上腕骨36の部分C(滑車36bの凸部)が上方にずれて写る位置(図13の中央図参照)から、部分A(上腕骨小頭36aの凸部)および部分C(滑車36bの凸部)の各々の外縁が同心円状に重なるとともに、部分Aおよび部分Cの外縁の内側に、部分B(滑車36bの凹部)の外縁が同心円状に写る位置(図13の下図参照)に補正を行う例を示している。被検体201の骨に対するX線照射部1の相対的な位置は、位置補正情報に基づいて、上腕を挙上させる、上腕が載置される図示しないテーブルを上昇させる、または、X線照射部1の位置を変更することによって、上腕骨36の部分C(滑車36b)が上方にずれて写る位置(図13の中央図参照)から補正される。
【0052】
また、プレショット画像24の撮影および撮影位置の補正は、複数回行われてもよい。たとえば、図14に示すように、被検体201の肘関節のプレショット画像24aに基づいて、撮影位置の補正を行った後、再度プレショット画像24bの撮影を行ってもよい。そして、二回目のプレショット画像24(プレショット画像24b)に基づいて、再度、撮影位置の補正を行い、本ショット画像23の撮影を行ってもよい。図14に示す例では、2回のプレショット画像24の撮影と、2回の位置補正を行うことによって、上腕骨36と、尺骨38との間に関節間隙が観察可能なX線画像(本ショット画像23)が撮影されている。
【0053】
(位置補正処理)
次に、第1実施形態によるX線撮影装置100の自動補正モードを用いた位置補正の処理フローについて、図15を参照して説明する。
【0054】
まず、ステップ301において、被検体201に対してX線照射部1からX線を照射される。ステップ301では、前述したように、本ショット画像23の撮影時よりも少ない放射線量のX線の照射が行われる。なお、ステップ301は、特許請求の範囲の「照射ステップ」の一例である。そして、ステップ301の完了後、処理ステップは、ステップ302に移行する。
【0055】
ステップ302において、被検体201を透過したX線が検出される。ステップ302においては、前述したように、検出部2(X線検出部21または22)によって、被検体201を透過したX線が検出される。これにより、ステップ302において、プレショット画像24が撮影される。なお、ステップ302は、特許請求の範囲の「検出ステップ」の一例である。そして、ステップ302の完了後、処理ステップは、ステップ303に移行する。
【0056】
ステップ303において、位置補正情報が取得される。ステップ303においては、前述したように、X線の検出に基づいて撮影されるX線画像(プレショット画像24)中の被検体201の骨における複数の所定部分の各々の外縁を特定して、特定した複数の所定部分の外縁同士の位置関係に基づいて、被検体201の骨に対するX線照射部1の相対的な位置を補正するための位置補正情報が取得される。なお、ステップ303は、特許請求の範囲の「補正情報取得ステップ」の一例である。そして、ステップ303の完了後、処理ステップは、ステップ304に移行する。なお、ステップ304への移行は、自動的に行われてもよいし、操作端末9の操作部92に対する操作など、ユーザ202による操作に基づいて行われてもよい。また、ステップ303の完了後、表示部91または表示部1bには、位置補正情報を表示してもよい。
【0057】
そして、ステップ304において、自動位置補正が行われる。ステップ304では、位置補正情報に基づく、被検体201の骨に対するX線照射部1の相対的な位置を変更する制御が行われる。具体的には、装置制御部7が、前述したように、位置補正情報に基づいて、照射部移動機構4を制御して、X線照射部1を移動させる。これにより、被検体201(被検体201の骨)に対するX線照射部1の相対的な位置が補正される。そして、X線撮影装置100を用いた位置補正の処理が完了する。なお、ステップ304は、特許請求の範囲の「位置補正ステップ」の一例である。
【0058】
そして、ステップ304の完了後においては、ユーザ202が、X線画像の撮影の操作を行うことによって、撮影位置が補正された状態でのX線画像の撮影が行われる。また、ステップ304の完了後において、自動的にX線画像の撮影が行われてもよい。
【0059】
次に、第1実施形態によるX線撮影装置100の手動補正モードを用いた位置補正の処理フローについて、図16を参照して説明する。
【0060】
まず、ステップ401、402および403において、それぞれ自動補正モードにおけるステップ301、302および303と同様の処理が行われる。そして、ステップ403の完了後、処理ステップは、ステップ404に移行する。なお、ステップ401は、特許請求の範囲の「照射ステップ」の一例であり、ステップ402は、特許請求の範囲の「検出ステップ」の一例である。また、ステップ403は、特許請求の範囲の「補正情報取得ステップ」の一例である。
【0061】
ステップ404において、位置補正情報の表示が行われる。ステップ404では、前述したように、ステップ403において取得した位置補正情報の表示が、表示部91および表示部1bによって行われる。そして、表示部91および表示部1bによる位置補正情報の表示後(ステップ404の完了後)、処理ステップは、ステップ405に移行する。なお、ステップ404は、特許請求の範囲の「位置補正ステップ」の一例である。
【0062】
ステップ405において、手動位置補正が行われる。ステップ405では、ユーザ202が、表示部91または表示部1bの表示を確認しながら、X線照射部1を移動させることによって、撮影位置の補正が行われる。ステップ405における撮影位置の補正では、X線照射部1は、X線照射部1の把持部1aを把持したユーザ202の手によって移動させられてもよいし、操作端末9の操作部92に対するユーザ202の操作に基づいて、照射部移動機構4によって移動させられてもよい。
【0063】
そして、ステップ405の完了後においては、ユーザ202が、X線画像の撮影の操作を行うことによって、撮影位置が補正された状態でのX線画像の撮影が行われる。
【0064】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0065】
第1実施形態では、X線画像中の被検体201の骨における複数の所定部分の外縁同士の位置関係に基づいて、被検体201の骨(撮影対象物)に対するX線照射部1の相対的な位置を補正するための位置補正情報が取得される。そして、位置補正情報は、被検体201の骨に対するX線照射部1の相対的な位置を、複数の所定部分の外縁同士の位置関係が所定の位置関係で写るX線画像を撮影可能な位置に補正するための相対的な移動方向および移動量を含む。これにより、被検体201の骨に対するX線照射部1の相対的な位置を、複数の所定部分の外縁同士の位置関係が所定の位置関係で写るX線画像を撮影可能な位置に補正するための相対的な移動方向および移動量を含む位置補正情報が取得されるので、取得した位置補正情報を用いて、補正に必要な相対的な移動方向および移動量を表示(報知)することによって、放射線技師などのユーザ202は、表示(報知)結果に基づいて精度よく撮影位置の補正を行うことができる。その結果、X線画像の撮影と撮影位置の補正とを繰り返す回数を低減することができる。これにより、被曝量および撮影時間の増加を抑制しつつ、診断を正確に行うことが可能なX線画像を取得することが可能なX線撮影装置100および撮影位置補正方法を提供することができる。また、取得した位置補正情報を用いて、X線照射部1の相対的な位置を変更する制御を行うことによって、被検体201の骨に対するX線照射部1の相対的な位置を、複数の所定部分の外縁同士の位置関係が、診断に適した所定の位置関係で写るX線画像を撮影可能な位置に精度よく補正することができる。その結果、X線画像の撮影と撮影位置の補正とを繰り返す回数を低減することができる。これにより、被曝量および撮影時間の増加を抑制しつつ、診断を正確に行うことが可能なX線画像を取得することが可能なX線撮影装置100および撮影位置補正方法を提供することができる。
【0066】
また、上記第1実施形態によるX線撮影装置100では、以下のように構成したことによって、下記のような更なる効果が得られる。
【0067】
第1実施形態では、X線撮影装置100は、処理部81(補正情報取得部)により取得された位置補正情報の表示(報知)を行うように構成されている。これにより、処理部81により取得された位置補正情報の表示(報知)により、ユーザ202は、被検体201の骨(撮影対象物)に対するX線照射部1の相対的な位置を、複数の所定部分の外縁同士の位置関係が所定の位置関係で写るX線画像を撮影可能な位置に補正するための相対的な移動方向および移動量を把握することができる。その結果、ユーザ202は、被検体201の骨に対するX線照射部1の相対的な位置を、複数の所定部分の外縁同士の位置関係が所定の位置関係で写るX線画像を撮影可能な位置に容易に補正することができる。また、X線撮影装置100は、位置補正情報に基づく、被検体201の骨に対するX線照射部1の相対的な位置を変更するための制御を行うように構成されている。これにより、位置補正情報に基づいて、被検体201の骨に対するX線照射部1の相対的な位置を変更するための制御が、X線撮影装置100によって行われるので、被検体201の骨に対するX線照射部1の相対的な位置を、複数の所定部分の外縁同士の位置関係が所定の位置関係で写るX線画像を撮影可能な位置に容易に補正することができる。
【0068】
また、第1実施形態では、装置制御部7(移動制御部)は、処理部81(補正情報取得部)により取得された位置補正情報に基づいて、照射部移動機構4(移動機構)による被検体201の骨(撮影対象物)に対するX線照射部1の相対的な位置の変更の制御を行うように構成されている。これにより、位置補正情報に基づく、照射部移動機構4による被検体201の骨に対するX線照射部1の相対的な位置の変更の制御が、装置制御部7によって行われるので、位置補正情報に基づいて、手動操作による補正をユーザ202が行う場合に比べて、撮影位置の補正をより容易に行うことができる。
【0069】
また、第1実施形態では、装置制御部7(移動制御部)は、処理部81(補正情報取得部)により取得された位置補正情報に基づいて、被検体201の骨(撮影対象物)に対するX線照射部1の相対的な位置が、複数の所定部分の外縁同士の位置関係が所定の位置関係で写るX線画像を撮影可能な位置になるように、X線照射部1の位置を自動的に移動させる制御を行う。これにより、装置制御部7によって、X線照射部1の位置の補正が自動的に行われるので、ユーザ202の手動操作によって、X線照射部1の位置の補正を行う場合に比べて、X線照射部1の位置の補正をより容易に行うことができる。
【0070】
また、第1実施形態では、装置制御部7(移動制御部)は、ユーザ202の操作に基づくX線照射部1の移動の際に、処理部81(補正情報取得部)により取得された位置補正情報に基づいて、X線照射部1の移動を制限する制御を行う。これにより、X線照射部1の移動をユーザ202が手動操作することによって、撮影位置の補正を行う場合でも、位置補正情報に基づいて、X線照射部1の移動が装置制御部7によって制限される。その結果、X線照射部1の移動をユーザ202が手動操作することによって、撮影位置の補正を行う場合において、ユーザ202の手動操作によって、補正に必要な移動量を超えてX線照射部1が移動すること、および、補正が必要な移動方向以外にX線照射部1が移動することを防止することができる。
【0071】
また、第1実施形態では、表示部91は、処理部81(補正情報取得部)により取得された位置補正情報の報知として、複数の所定部分の外縁同士の位置関係が所定の位置関係で写るX線画像を撮影可能な位置に補正するための被検体201の骨(撮影対象物)に対するX線照射部1の相対的な移動方向および移動量を表示する。これにより、ユーザ202は、表示部91に表示される被検体201の骨に対するX線照射部1の相対的な移動方向および移動量を視認することによって、撮影位置の補正をいずれの方向にどの程度補正を行う必要があるかを容易に把握して、手動による撮影位置の補正を行うことができる。
【0072】
また、第1実施形態では、処理部81(補正情報取得部)は、X線画像中の被検体201の1つの骨(撮影対象物)における複数の所定部分の外縁同士の位置関係に基づいて、X線画像中の複数の所定部分の外縁の同士の相対的な位置ずれを取得して、取得した複数の所定部分の外縁同士の相対的な位置ずれに基づいて、位置補正情報を取得するように構成されている。これにより、X線画像から複数の所定部分の外縁同士の相対的な位置ずれが取得されるので、X線画像中の複数の所定部分の外縁同士の相対的な位置ずれと、複数の所定部分の外縁同士の位置関係が所定の位置関係となる状態における複数の所定部分の外縁同士の相対的な位置ずれとの対比に基づいて、位置補正情報を取得することができる。
【0073】
また、第1実施形態では、処理部81(補正情報取得部)は、X線画像中の被検体201の骨における複数の所定部分の外縁同士の重なり具合に基づいて、複数の所定部分の外縁同士の相対的な位置ずれを取得する。そして、処理部81は、被検体201の大腿骨31の膝側の撮影の際に、内側顆31aの外縁および外側顆31bの外縁(複数の所定部分の外縁同士)が重なって写るX線画像を撮影可能な位置に、被検体201に対するX線照射部1の相対的な位置を補正するための位置補正情報を算出する。これにより、被検体201の大腿骨31の膝側(膝関節周辺)の撮影の際には、位置補正情報によって、内側顆31aの外縁および外側顆31bの外縁(複数の所定部分の外縁同士)が重なって写るX線画像を撮影可能な位置に、被検体201の骨に対するX線照射部1の相対的な位置が補正される。その結果、離断性骨軟骨炎症および変形性膝関節症などといった膝関節周辺において発症する疾患の特定を正確に行うことが可能なX線画像を撮影することができる。
【0074】
また、第1実施形態では、処理部81(補正情報取得部)は、X線画像中の被検体201の骨における複数の所定部分の外縁同士の位置関係に基づいて、複数の所定部分の外縁同士の相対的な位置ずれを取得する。そして、処理部81は、被検体201の上腕骨36の肘側の撮影の際に、上腕骨36の複数の所定部分(部分A、BおよびC)の外縁が同心円状に写るX線画像を撮影可能な位置に、被検体201の骨に対するX線照射部1の相対的な位置を補正するための位置補正情報を算出する。これにより、被検体201の上腕骨36の肘側(肘関節周辺)の撮影の際に、位置補正情報によって、上腕骨36の複数の所定部分(部分A、BおよびC)が同心円状に写るX線画像を撮影可能な位置に、被検体201の骨に対するX線照射部1の相対的な位置が補正される。その結果、離断性骨軟骨炎および変形性肘関節症などといった肘関節周辺において発症する疾患の特定を正確に行うことが可能なX線画像を撮影することができる。
【0075】
また、第1実施形態では、処理部81(補正情報取得部)は、被検体201の骨(撮影対象物)に対するX線照射部1の相対的な位置を補正した後に撮影されるX線画像である本ショット画像23(位置補正後画像)の撮影時よりも少ない放射線量のX線の照射に基づいて生成されたX線画像であるプレショット画像24(位置補正前画像)中の被検体201の骨における複数の所定部分の外縁同士の位置関係に基づいて、位置補正情報を取得するように構成されている。これにより、撮影位置補正前の撮影における被検体201の被曝量を低減することができるので、診断を正確に行うことが可能なX線画像を取得するまでの被検体201の被曝量の増加をより抑制することができる。
【0076】
また、第1実施形態では、処理部81(補正情報取得部)は、学習済みモデル82aおよび82b(学習済みモデル82c、82dおよび82e)に対して、X線画像を入力することにより、入力されたX線画像に基づいて複数の所定部分の外縁を取得して、取得した複数の所定部分の外縁に基づいて位置補正情報を算出するように構成されている。これにより、学習済みモデル82aおよび82b(学習済みモデル82c、82dおよび82e)によって、複数の所定部分の外縁を取得して、取得した複数の所定部分の外縁に基づいて位置補正情報が算出されるので、観察対象の部位の特徴点を学習させた学習済みモデルを用いることによって、複数の所定部分の外縁を精度よく取得することができる。その結果、位置補正情報を精度よく算出することができる。
【0077】
[第2実施形態]
図20および図21を参照して、第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、処理部681により、プレショット画像24から取得されたパラメータ情報に基づいてX線管球位置xの関数f(x)の傾きαが設定されるとともに位置補正情報が算出される。なお、図中において、上記第1実施形態と同様の構成の部分には、同一の符号を付している。
【0078】
(第2実施形態によるX線撮影装置の構成)
図20に示すように、X線撮影装置600は、処理装置608を備える。処理装置608は、処理部681を含む。処理装置608は、第1実施形態の処理装置8と同様に、たとえば、放射線技師などのユーザ202によって操作されるPCである。処理部681は、第1実施形態の処理部81と同様に、CPU、GPU、および、RAMなどを含む。処理部681は、特許請求の範囲における「補正情報取得部」の一例である。第2実施形態では、たとえば、X線撮影装置600によって、被検体201の膝のX線撮影が行われる。
【0079】
処理部681は、第1実施形態の処理部81と同様に、被検体201の大腿骨31の膝側の撮影の際に、プレショット画像24から大腿骨31の内側顆31aの外縁と外側顆31bの外縁との間のずれ(ずれ量およびずれ方向)を算出する。そして、処理部681は、算出した大腿骨31の内側顆31aの外縁と外側顆31bの外縁との間のずれに基づいて、内側顆31aおよび外側顆31bの外縁同士が重なり合う撮影位置において撮影が行われるように、X線照射部1の移動方向および移動量(移動距離)を位置補正情報として算出する。この時、第1実施形態と同様に、処理部681は、内側顆31aおよび外側顆31bの外縁同士が重なって写るX線画像を撮影可能な位置(ずれ量fが0になる位置)として推定される推定位置x’を、プレショット画像24から算出した内側顆31aの外縁と外側顆31bの外縁との間のずれ量fと、X線管球位置xの関数f(x)の傾きαとに基づいて次の式(1)(図8参照)によって算出する。
【数1】
【0080】
ここで、傾きαは、SID(Source to image receptor distance)などの装置パラメータと、撮影時において被検体201(患者)に対応して設定される被検体固有パラメータとを含む各種パラメータにより変化する。具体的には、傾きαは、次の式(2)によって算出される。
【数2】
ここで、SIDは、装置パラメータであるX線管球の縦軸位置であって、検出部2(X線検出部21およびX線検出部22)の検出面からX線照射部1までの距離である。SIDは、撮影の対象となる体の部位などに応じて推奨される値が自動的に設定されてもよいし、装置制御部7から実際の値を取得してもよい。また、bは、検出面から外側顆31bまでの高さを示している。Dは、被検体201における内側顆31aと外側顆31bとの実際の距離を示している。θは、検出面からの垂線に対する内側顆31aと外側顆31bとを結んだ直線の傾きを示している。高さb、距離D、および、角度θは、被検体固有パラメータである。高さbおよび距離Dは、被検体201の体格(骨の大きさ)に応じて変化する体格由来のパラメータである。角度θは、被検体201の姿勢に応じて変化する姿勢由来のパラメータである。第2実施形態の処理部681は、プレショット画像24から体格由来のパラメータを自動的に算出する。すなわち、傾きαの値が、プレショット画像24に基づいて自動的に算出される。
【0081】
第2実施形態では、処理部681は、傾きαを算出するために、被検体201の骨(撮影対象物)における内側顆31aおよび外側顆31b(複数の所定部分)同士の実際の距離に対応するパラメータ情報に基づいて、位置補正情報を算出する。処理部681は、パラメータ情報として、被検体201のX線画像における被検体201の検出対象部分の大きさを検出する。具体的には、処理部681は、パラメータ情報として、位置補正情報を取得するために撮影されたX線画像であるプレショット画像24のうちから、被検体201の検出対象部分の大きさを検出する。そして、処理部681は、検出されたパラメータ情報に基づいて、高さbおよび距離Dを算出することによって、位置補正情報を算出する。
【0082】
図21に示すように、被検体201の検出対象部分は、たとえば、被検体201の大腿骨31の部分31c、部分31d、および、脛骨32の部分32cである。第2実施形態では、パラメータ情報として大きさが検出される被検体201の検出対象部分(部分31c、部分31d、および、部分32c)は、所定の位置関係で撮影される対象である被検体201の撮影対象物における複数の所定部分(内側顆31aおよび外側顆31b)とは異なる部分である。検出対象部分は所定部分と大きさまたは形状に相関がある部分である。
【0083】
処理部681は、たとえば、予め記憶されている学習済みモデルなどのアルゴリズムによるセグメンテーション処理を行うことによって、プレショット画像24から、被検体201の大腿骨31の部分31c、部分31d、および、脛骨32の部分32cの各々の大きさ(幅)をパラメータ情報として検出する。たとえば、処理部681は、学習済みモデルを用いて、プレショット画像24における大腿骨31および脛骨32の各々の輪郭線を検出する。そして、処理部681は、検出された輪郭線から、部分31c、部分31d、および、部分32cの幅の大きさ(画素数)を検出することによって、被検体201の検出対象部分の大きさを検出する。部分31c、部分31d、および、部分32cのプレショット画像24における位置は、輪郭線の形状または位置座標などから抽出されるようにしてもよいし、ユーザ202による入力操作に基づいて取得されてもよい。
【0084】
そして、処理部681は、たとえば、予め設定されているデータテーブルを参照することによって、パラメータ情報として検出された部分31c、部分31d、および、部分32cの大きさから、位置補正情報を算出するための高さbおよび距離Dの値を算出する。予め設定されているデータテーブルでは、被検体201の大腿骨31の部分31c、部分31d、および、脛骨32の部分32cの各々の大きさと、検出面から外側顆31bまでの高さb、および、内側顆31aと外側顆31bとの実際の距離Dとが、対応付けられて記憶されている。すなわち、処理部681は、パラメータ情報として検出された検出対象部分である被検体201の大腿骨31の部分31c、部分31d、および、脛骨32の部分32cの大きさを取得することによって、被検体201に固有の体格由来のパラメータである高さbおよび距離Dを算出する。
【0085】
このようにして取得された高さbおよび距離Dを用いることによって、処理部681は、上記の式(2)により傾きαの値を算出する。なお、姿勢由来のパラメータである角度θは、撮影の対象となる体の部位などに応じて推奨される値が自動的に設定されてもよいし、光学カメラなどを用いて被検体201の姿勢を検出することによって値を検出するようにしてもよい。そして、処理部681は、体格由来のパラメータが反映された傾きαを用いて上記式(1)により推定位置x’を算出することによって、被検体201ごとに異なる骨の大きさおよび形状に応じた位置補正情報を算出する。
【0086】
なお、第2実施形態によるX線撮影装置600のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。すなわち、プレショット画像24の取得、プレショット画像24からのずれ量fの取得、および、算出された位置補正情報に基づく位置補正の処理は、第1実施形態と同様である。
【0087】
(第2実施形態による撮影位置補正方法)
次に、図22を参照して、第2実施形態によるX線撮影装置600の撮影位置補正方法の処理フローについて説明する。図22では、自動補正モードを用いた位置補正の処理フローについて説明する。
【0088】
まず、ステップ701およびステップ702において、それぞれ第1実施形態におけるステップ301および302と同様の処理が行われる。そして、ステップ702の完了後、処理ステップは、ステップ703に移行する。なお、ステップ701は、特許請求の範囲の「照射ステップ」の一例である。また、ステップ702は、特許請求の範囲の「検出ステップ」の一例である。
【0089】
ステップ703では、被検体201の骨(撮影対象物)における内側顆31aおよび外側顆31b(複数の所定部分)同士の実際の距離に対応するパラメータ情報が取得される。具体的には、パラメータ情報として、ステップ702において撮影されたプレショット画像24から大腿骨31の部分31c、部分31d、および、脛骨32の部分32cの各々(検出対象部分)の大きさが検出される。
【0090】
そして、ステップ704において、パラメータ情報に基づいて位置補正情報が算出される。具体的には、パラメータ情報として取得された大腿骨31の部分31c、部分31d、および、脛骨32の部分32cの大きさに基づいて、高さbおよび距離Dが取得される。そして、取得された高さbおよび距離Dに基づいて傾きαが算出されることにより、プレショット画像24から取得されたずれ(複数の所定部分の外縁同士の位置関係)に基づいて位置補正情報が取得される。なお、ステップ704は、特許請求の範囲の「補正情報取得ステップ」の一例である。
【0091】
そして、ステップ705において、第1実施形態のステップ304と同様に、自動位置補正が行われる。なお、ステップ704は、特許請求の範囲の「位置補正ステップ」の一例である。
【0092】
なお、手動補正モードを用いた位置補正の処理を実行する場合には、第1実施形態と同様に、自動補正モードにおけるステップ701、702、703、および、704と同様の処理が行われることによって位置補正情報が取得された後に、第1実施形態のステップ404と同様に位置補正情報の表示が行われ、ステップ405と同様に手動位置補正が行われる。
【0093】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0094】
処理部681(補正情報取得部)は、被検体201の骨(撮影対象物)における複数の所定部分(内側顆31aおよび外側顆31b)同士の実際の距離に対応するパラメータ情報に基づいて、位置補正情報を算出するように構成されている。このように構成すれば、被検体201ごとに骨の大きさおよび形状が異なることに起因して被検体201の骨における所定部分同士の実際の距離が異なる場合にも、所定部分同士の実際の距離に対応するパラメータ情報に基づいて位置補正情報を算出することによって、位置補正情報をより正確に算出することができる。そのため、取得した位置補正情報を用いて撮影位置をより精度よく補正することができるので、X線画像の撮影と撮影位置の補正とを繰り返す回数をより低減することができる。その結果、X線撮影における被曝量および撮影時間の増加をより抑制することができる。
【0095】
処理部681(補正情報取得部)は、パラメータ情報として、被検体201のX線画像における被検体201の検出対象部分(大腿骨31の部分31c、部分31d、および、脛骨32の部分32c)の大きさを検出する。このように構成すれば、被検体201のX線画像から検出対象部分の大きさをパラメータ情報として検出することによって、被検体201の体内の構造である大腿骨31および脛骨32の大きさおよび形状の差異がより正確に反映されるようにパラメータ情報を取得することができる。そのため、被検体201のX線画像から検出されたパラメータ情報を用いて位置補正情報を取得することによって、撮影位置の補正に必要な相対的な移動方向および移動量をより正確に取得することができる。その結果、撮影位置の補正をより正確に行うことができる。
【0096】
処理部681(補正情報取得部)は、パラメータ情報として、位置補正情報を取得するために撮影されたX線画像であるプレショット画像24のうちから、被検体201の検出対象部分(大腿骨31の部分31c、部分31d、および、脛骨32の部分32c)の大きさを検出する。このように構成すれば、位置補正情報を取得するために撮影されたプレショット画像24を用いてパラメータ情報を取得することができるので、パラメータ情報を取得するために、プレショット画像24の撮影とは別個にX線撮影を行う場合と異なり、被検体201に対して照射されるX線の線量が増加することを抑制することができる。そのため、プレショット画像24からパラメータ情報を取得することによって、撮影位置の補正をより正確に行うことができるとともに、X線撮影における被曝量および撮影時間の増加をより抑制することができる。
【0097】
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0098】
[第3実施形態]
図23および図24を参照して、第3実施形態について説明する。この第3実施形態では、処理部681により、傾きαを設定するためのパラメータ情報としてプレショット画像24から被検体201の検出対象部分(大腿骨31の部分31c、部分31d、および、脛骨32の部分32c)の大きさが検出されるように構成されていた第2実施形態と異なり、外観画像25に基づいて傾きαを設定するためのパラメータ情報が取得される。なお、図中において、上記第1および第2実施形態と同様の構成の部分には、同一の符号を付している。
【0099】
(第3実施形態によるX線撮影装置の構成)
図23に示すように、X線撮影装置800は、処理装置808を備えている。処理装置808は、処理部881を含む。処理装置808は、第2実施形態の処理装置608と同様に、たとえば、放射線技師などのユーザ202によって操作されるPCである。処理部881は、第2実施形態の処理部681と同様に、CPU、GPU、および、RAMなどを含む。処理部881は、特許請求の範囲における「補正情報取得部」の一例である。処理部881は、第2実施形態の処理部681と同様に、上記式(2)により傾きαを自動的に算出する。第3実施形態では、たとえば、X線撮影装置800によって、被検体201の膝のX線撮影が行われる。
【0100】
第3実施形態では、X線撮影装置800は、撮像部811および画像処理部812を備えている。撮像部811は、被検体201の外観を撮像する。撮像部811は、たとえば、X線照射部1に配置されている。撮像部811は、X線照射部1から照射されるX線の照射方向に沿って、天板3に横たわる被検体201を撮像する。また、撮像部811は、たとえば、CCD(Charge Coupled Device)または、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などのイメージセンサ(撮像素子)を含む。画像処理部812は、たとえば、CPUまたはFPGAなどのプロセッサを含む。また、画像処理部812は、各種のパラメータおよびプログラムを記憶するHDDまたはSSD等の不揮発性の記憶媒体を含んでいる。画像処理部812は、撮像部811からの信号を取得することによって、被検体201の外観を撮像した外観画像25(図24参照)を取得する。画像処理部812は、処理部881とは別個に設けられたモジュールである。画像処理部812は、たとえば、撮像部811と共にX線照射部1に配置されている。そして、画像処理部812は、処理部881と通信可能に構成されている。
【0101】
そして、図24に示すように、第3実施形態では、画像処理部812は、上記式(2)における傾きαを算出するためのパラメータ情報として、撮像部811による撮像によって取得された被検体201の外観画像25から、被検体201の体格の大きさを示す体格情報を算出する。具体的には、画像処理部812は、被検体201の脚部の長さを体格情報として算出する。画像処理部812は、撮像部811からの信号に基づいて取得された外観画像25のうちから、被検体201の脚部における部分201aおよび部分201bの長さを検出する。部分201aは、被検体201の脚部の付け根から膝までの部分である。部分201bは、被検体201の脚部の膝からつま先までの部分である。画像処理部812は、たとえば、記憶媒体に予め記憶されている学習済みモデルを用いて、外観画像25のうちから、被検体201の脚部の部分201aおよび部分201bを抽出することによって、部分201aおよび部分201bの長さを検出する。これにより、画像処理部812は、外観画像25から、被検体201の脚部の長さを示す体格情報をパラメータ情報として検出する。
【0102】
そして、第2実施形態の処理部681と同様に、画像処理部812は、たとえば、記憶媒体に予め設定されているデータテーブルを参照することによって、パラメータ情報として検出された被検体201の脚部の長さを示す体格情報から、位置補正情報を算出するための高さbおよび距離Dの値を算出する。予め設定されているデータテーブルでは、体格情報と、検出面から外側顆31bまでの高さb、および、内側顆31aと外側顆31bとの実際の距離Dとが、対応付けられて記憶されている。すなわち、第3実施形態では、画像処理部812は、パラメータ情報としての体格情報を取得することによって、被検体201に固有の体格由来のパラメータである高さbおよび距離Dを算出する。そして、第2実施形態では、画像処理部812により算出された高さbおよび距離Dが、処理装置808の処理部881に対して出力される。
【0103】
このようにして取得された高さbおよび距離Dを用いることによって、処理部881は、第1実施形態の処理部681と同様に、上記の式(2)により傾きαの値を算出し、上記式(1)により推定位置x’を算出することによって、被検体201ごとに異なる骨の大きさおよび形状に応じた位置補正情報を算出する。すなわち、第3実施形態では、処理部881は、画像処理部812によって外観画像25から算出された体格情報であるパラメータ情報に基づいて、位置補正情報を算出するように構成されている。
【0104】
なお、第3実施形態によるX線撮影装置800のその他の構成は、上記第1および第2実施形態と同様である。
【0105】
(第3実施形態の効果)
第3実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0106】
第3実施形態では、被検体201の外観を撮像する撮像部811を備える。そして、処理部881(補正情報取得部)は、撮像部811による撮像によって取得された被検体201の外観画像25から算出された被検体201の体格の大きさを示す体格情報であるパラメータ情報に基づいて、位置補正情報を算出する。このように構成すれば、外観画像25に基づいて被検体201の体格の大きさを示す体格情報であるパラメータ情報を取得することができるので、被検体201の体格の大きさに対応する位置補正情報を取得することができる。そのため、被検体201の体格の大きさに対応するように、撮影位置の補正に必要な相対的な移動方向および移動量をより正確に取得することができるので、撮影位置の補正をより正確に行うことができる。
【0107】
なお、第3実施形態のその他の効果は、上記第1および第2実施形態と同様である。
【0108】
[第4実施形態]
図25および図26を参照して、第4実施形態について説明する。この第4実施形態では、処理部681により、プレショット画像24からパラメータ情報が取得されるように構成されていた第2実施形態と異なり、処理部981によりプレショット画像24とは別個に予め取得されたX線画像である正面画像26に基づいて傾きαを設定するためのパラメータ情報が取得される。なお、図中において、上記第1~第3実施形態と同様の構成の部分には、同一の符号を付している。
【0109】
(第4実施形態によるX線撮影装置の構成)
図25に示すように、X線撮影装置900は、処理装置908を備えている。処理装置908は、処理部981を含む。処理装置908は、第2実施形態の処理装置608と同様に、たとえば、放射線技師などのユーザ202によって操作されるPCである。処理部981は、第2実施形態の処理部681と同様に、CPU、GPU、および、RAMなどを含む。処理部981は、第2実施形態の処理部681と同様に、上記式(2)により傾きαを自動的に算出する。なお、処理部981は、特許請求の範囲における「補正情報取得部」の一例である。第4実施形態では、たとえば、X線撮影装置900によって、被検体201の膝のX線撮影が行われる。
【0110】
図26に示すように、第4実施形態では、処理部981は、位置補正情報を取得するためのX線画像であるプレショット画像24とは異なる撮影角度により予め撮影されたX線画像である正面画像26を取得する。そして、処理部981は、傾きαを算出するためのパラメータ情報として、正面画像26のうちから被検体201の検出対象部分の大きさを検出する。具体的には、正面画像26は、被検体201の膝を側面側から撮影したプレショット画像24とは別個に、予め被検体201の膝を正面側から撮影したX線画像である。正面画像26は、プレショット画像24よりも前のタイミングに撮影され、記憶部82に予め記憶される。そして、正面画像26のうちから検出される被検体201の検出対象部分は、被検体201の大腿骨31の内側顆31aから外側顆31bまでの部分31eと、外側顆31bから、被検体201の正中線側とは反対側の皮膚までの部分31fとである。したがって、第4実施形態では、パラメータ情報として大きさが検出される被検体201の検出対象部分は、所定の位置関係で撮影される対象である被検体201の撮影対象物における複数の所定部分である。
【0111】
処理部981は、プレショット画像24の撮影が行われる前に、予め撮影された正面画像26のうちから、内側顆31aおよび外側顆31bの位置を検出する。たとえば、処理部981は、予め記憶されている学習済みモデルによるセグメンテーション処理によって、大腿骨31の輪郭を抽出するとともに、抽出された大腿骨31の輪郭線のうち、内側顆31aにおいて最も脛骨32側の部分と、外側顆31bにおいて最も脛骨32側の部分とを、それぞれ、内側顆31aの位置および外側顆31bの位置として検出する。そして、処理部981は、内側顆31aの位置から外側顆31bの位置までの大きさ(距離)を、被検体201の検出対象部分である部分31eの大きさとして検出する。また、同様に、処理部981は、正面画像26における被検体201の皮膚の位置を検出することによって、外側顆31bの位置から皮膚の位置までの大きさ(距離)を、被検体201の検出対象部分である部分31fの大きさとして検出する。ここで、部分31eの大きさは、内側顆31aと外側顆31bとの実際の距離Dに相当する。また、部分31fの大きさは、検出面から外側顆31bまでの高さbに相当する。すなわち、第4実施形態では、処理部981は、プレショット画像24とは異なる撮影角度において別個に撮影された正面画像26から、パラメータ情報として、高さbおよび距離Dの値を直接的に検出する。
【0112】
そして、第2実施形態の処理部681と同様に、処理部981は、パラメータ情報として検出された検出面から外側顆31bまでの高さb(部分31fの大きさ)、および、内側顆31aと外側顆31bとの実際の距離D(部分31eの大きさ)を用いることによって、上記の式(2)により傾きαの値を算出し、上記式(1)により推定位置x’を算出して、被検体201ごとに異なる骨の大きさおよび形状に応じた位置補正情報を算出する。
【0113】
なお、第4実施形態によるX線撮影装置900のその他の構成は、上記第1~第3実施形態と同様である。
【0114】
(第4実施形態の効果)
第4実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0115】
処理部981(補正情報取得部)は、パラメータ情報として、位置補正情報を取得するためのX線画像であるプレショット画像24とは異なる撮影角度により予め撮影されたX線画像である正面画像26のうちから、被検体201の検出対象部分(部分31eおよび部分31f)の大きさを検出する。このように構成すれば、位置を補正するためのX線画像(プレショット画像24)とは異なる撮影角度により撮影されたX線画像(正面画像26)から検出対象部分の大きさを検出することによって、プレショット画像24とは異なる撮影角度からの複数の所定部分(内側顆31aおよび外側顆31b)同士の位置関係を検出することができる。そのため、プレショット画像24とは異なる撮影角度からの複数の所定部分同士の位置関係に基づいて、より正確な位置補正情報を取得することができる。
【0116】
なお、第4実施形態のその他の効果は、上記第1~第3実施形態と同様である。
【0117】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0118】
たとえば、上記第1~第4実施形態では、処理部81、681、881、981(補正情報取得部)は、X線画像中の被検体201の骨における複数の所定部分の外縁同士の位置関係に基づいて、被検体201の骨に対するX線照射部1の相対的な位置を補正するための位置補正情報を取得するように構成される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、補正情報取得部は、X線画像中の被検体の1つの人工関節における複数の所定部分の外縁同士の位置関係に基づいて、被検体の人工関節に対するX線照射部の相対的な位置を補正するための位置補正情報を取得するように構成してもよい。また、X線撮影装置の補正情報取得部は、骨の撮影時および人工関節の撮影時のいずれにおいても、位置補正情報を取得するように構成してもよい。なお、人工関節は、特許請求の範囲の「撮影対象物」の一例である。
【0119】
また、上記第1~第4実施形態では、処理部81、681、881、981(補正情報取得部)により取得された位置補正情報の表示、および、位置補正情報に基づく、被検体201の骨に対するX線照射部1の相対的な位置を変更するための制御を行う例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、X線撮影装置は、補正情報取得部により取得された位置補正情報の報知のみを行ってもよい。この場合、報知された位置補正情報に基づいて、放射線技師などのユーザが手動により撮影位置の補正を行う。また、被検体の骨または人工関節(撮影対象物)に対するX線照射部の相対的な位置の補正は、ユーザが被検体を動かすこと、または、被検体が動くことによって行われてもよい。また、X線撮影装置は、補正情報取得部により取得された位置補正情報の報知を行わずに、自動的に撮影位置の補正を行うように構成してもよい。
【0120】
また、上記第1~第4実施形態では、装置制御部7(移動制御部)は、処理部81、681、881、981(補正情報取得部)により取得された位置補正情報に基づいて、被検体201の骨に対するX線照射部1の相対的な位置が、複数の所定部分の外縁同士の位置関係が所定の位置関係で写るX線画像を撮影可能な位置になるように、X線照射部1の位置を自動的に移動させる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、被検体の骨または人工関節(撮影対象物)に対するX線照射部の相対的な位置の補正を行う際に、X線照射部および被検体が載置される天板の両方を自動的に移動させて、撮影位置の補正を行ってもよい。また、被検体の骨または人工関節(撮影対象物)に対するX線照射部の相対的な位置の補正を行う際に、被検体が載置される天板のみを自動的に移動させて、撮影位置の補正を行ってもよい。
【0121】
また、上記第1~第4実施形態では、装置制御部7(移動制御部)は、ユーザ202の操作に基づくX線照射部1の移動の際に、処理部81、681、881、981(補正情報取得部)により取得された位置補正情報に基づいて、X線照射部1の移動を制限する制御を行う例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、X線撮影装置は、ユーザによる操作が行われている際に、X線照射部の移動の制限を行わないように構成してもよい。また、X線撮影装置は、ユーザの操作に基づいて、X線照射部の移動の制限および移動の制限の解除を行うように構成されてもよい。また、本発明では、移動制御部は、ユーザの操作に基づく、被検体が載置される天板の移動の際に、補正情報取得部により取得された位置補正情報に基づいて、被検体が載置される天板の移動を制限する制御を行ってもよい。たとえば、移動制御部は、天板の移動に対して、ブレーキによるロックをかける制御を行うことによって、移動機構による天板の移動を制限してもよい。これにより、被検体が載置される天板の移動をユーザが手動操作することによって、撮影位置の補正を行う場合でも、位置補正情報に基づいて、被検体が載置される天板の移動が移動制御部によって制限される。その結果、被検体が載置される天板の移動をユーザが手動操作することによって、撮影位置の補正を行う場合において、ユーザの手動操作によって、補正に必要な移動量を超えて、被検体が載置される天板が移動すること、および、補正が必要な移動方向以外に被検体が載置される天板が移動することを防止することができる。
【0122】
また、上記第1~第4実施形態では、表示部91は、処理部81、681、881、981(補正情報取得部)により取得された位置補正情報の報知として、処理部81(681、881、981)により取得された複数の所定部分の外縁同士の相対的な位置ずれに基づく、被検体201の骨に対するX線照射部1の相対的な移動方向および移動量を表示する構成する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、表示部は、被検体の骨に対するX線照射部の相対的な移動方向および移動量のうち、X線照射部の相対的な移動方向のみを表示してもよい。この場合、X線撮影装置は、ユーザの手動操作によって移動させられるX線照射部が、位置補正情報に基づいて取得される適切な撮影位置に達した際に、X線照射部の移動を制限する(ロックをかける)ことによって、撮影位置の補正を完了させる。
【0123】
また、上記第1~第4実施形態では、膝関節(大腿骨31の膝側)の撮影において、位置補正情報によって、複数の所定部分の外縁同士が重なって写るX線画像を撮影可能な位置に、被検体201の骨または人工関節(撮影対象物)に対するX線照射部1の相対的な位置を補正する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図17に示すように、肩甲骨39がY字状に撮影されるスカプラY(スカプラワイ)と呼ばれる撮影を行う際に、肩甲骨39の複数の所定部分の外縁同士が重なって、肩甲骨39がY字状に写るX線画像を撮影可能な位置に、撮影位置を補正するための位置補正情報を取得してもよい。そして、取得した位置補正情報に基づいて、被検体に対するX線照射部の相対的な位置を補正してもよい。これにより、前方脱臼、肩峰下での骨棘および石灰化などの肩甲骨39周辺の疾患の特定を精度よく行うことが可能なX線画像を撮影することができる。
【0124】
また、上記第1~第4実施形態では、X線撮影装置100(600、800、900)が、膝関節(大腿骨31の膝側)の撮影および肘関節(上腕骨36の膝側)の撮影の際に、位置補正情報の算出、および、位置補正情報に基づく撮影位置の補正を行う例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、X線撮影装置は、股関節、指関節、手首関節および足首関節などのその他の関節、および、その他の部位の撮影の際に位置補正情報の算出、および、位置補正情報に基づく撮影位置の補正を行うように構成されてもよい。
【0125】
また、上記第1~第4実施形態では、X線撮影装置100(600、800、900)は、膝関節(大腿骨31の膝側)、および、肘関節(上腕骨36の肘側)の撮影時において、位置補正情報を取得して、取得した位置補正情報の表示(報知)、および、取得した位置補正情報に基づくX線照射部1の相対的な位置の変更の制御を行う例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、X線撮影装置は、膝関節(大腿骨の膝側)の撮影時、および、肘関節(上腕骨の肘側)の撮影時のうち、いずれか一方においてのみ、位置補正情報を取得して、取得した位置補正情報の報知、または、取得した位置補正情報に基づくX線照射部の相対的な位置の変更の制御を行うように構成されてもよい。すなわち、X線撮影装置は、特定の撮影部位のみにおいて、位置補正情報を取得して、取得した位置補正情報の報知、または、取得した位置補正情報に基づくX線照射部の相対的な位置の変更の制御を行ってもよい。
【0126】
また、上記第1~第4実施形態では、処理部81、681、881、981(補正情報取得部)は、被検体201の骨に対するX線照射部1の相対的な位置を補正した後に撮影される本ショット画像23(位置補正後画像)の撮影時よりも少ない放射線量のX線の照射に基づいて生成されたプレショット画像24(位置補正前画像)中の被検体201の骨における複数の所定部分の外縁同士の位置関係に基づいて、位置補正情報を取得するように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、補正情報取得部が位置補正情報を取得するために用いる画像は、X線照射部の相対的な位置を補正した後に撮影される位置補正後画像の撮影時以上の放射線量のX線の照射に基づいて生成されたX線画像であってもよい。また、補正情報取得部が位置補正情報を取得するために用いる画像は、X線照射部の相対的な位置を補正した後に撮影される位置補正後画像の撮影時以上の放射線量のX線の照射に基づいて生成されたX線画像に対して、上記第1~第4実施形態に示したような前処理を行った後の画像であってもよい。
【0127】
また、上記第1~第4実施形態では、処理部81、681、881、981(補正情報取得部)は、学習済みモデル82aおよび82bに対して、X線画像を入力することにより、入力されたX線画像に基づいて複数の所定部分の外縁を取得して、取得した複数の所定部分の外縁に基づいて位置補正情報を算出するように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、大腿骨の内側顆および外側顆など、ずれ量の算出に用いる複数の所定部分の外縁の取得(特定)は、複数の所定部分の外縁の特徴点を抽出するような画像処理アルゴリズムによって取得(特定)されてもよい。また、被検体に固有の体格由来のパラメータを取得するためのパラメータ情報を取得する場合にも、学習済みモデルではなく、特徴点を抽出するような画像処理アルゴリズムを用いるようにしてもよい。
【0128】
また、上記第1~第4実施形態では、処理部81、681、881、981(補正情報取得部)は、入力されたX線画像に基づいて複数の所定部分の外縁を取得して、取得した複数の所定部分の外縁に基づいて位置補正情報を算出するように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、補正情報取得部は、X線画像に加えて、可視光を検出する光学カメラによって撮影された被検体の可視光画像を、被検体の骨または人工関節(撮影対象物)の複数の所定部分の外縁の取得、および、位置補正情報の算出に用いてもよい。
【0129】
また、上記第1~第4実施形態では、X線撮影装置100(600、800、900)は、撮影位置の補正を行うモードを、ユーザ202の切り替え操作に基づいて、自動補正モードと手動補正モードとに切り替え可能に構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、X線撮影装置を用いた撮影位置の補正は、自動補正または手動補正のいずれか一方のみが行われてもよい。
【0130】
また、上記第1~第4実施形態では、X線撮影装置100(600、800、900)は、天井から吊り下げられたX線照射部1から照射されるX線によって、X線画像の撮影を行うように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明は、図18に示すように、床面と交差する方向(Z方向)に沿って延びる照射部支持機構504と、照射部支持機構504に支持されるX線照射部501とを備えるX線撮影装置500に適用してもよい。すなわち、X線撮影装置は、床面と交差する方向(Z方向)に沿って延びる照射部支持機構504に取り付けられたX線照射部501から照射されるX線によって、X線画像の撮影を行うように構成されてもよい。また、X線撮影装置500を用いた撮影位置の補正では、図19に示すように、操作端末509の表示部591に位置補正情報が表示され、ユーザ202の手動操作によって撮影位置の補正が行われる。なお、操作端末509の表示部591には、ユーザ202の入力操作を受け付けるためのタッチパネルが設けられている。
【0131】
また、上記第2~第4実施形態では、自動的に取得されたパラメータ情報に基づいて、位置補正情報を算出するための係数である傾きαが算出される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、パラメータ情報が、ユーザによる入力操作に基づいて取得されるようにしてもよい。また、位置補正情報を算出する処理部681、881、981(補正情報取得部)とは異なる処理装置によってX線画像または外観画像などからパラメータ情報が算出されるようにしてもよい。また、サーバなどの外部の装置から、予め設定(記憶)されているパラメータ情報が取得されてもよい。また、パラメータ情報は、位置補正情報を算出するための被検体固有パラメータの値(高さbおよび距離Dなど)を含んでいてもよい。
【0132】
また、上記第2実施形態では、パラメータ情報として、被検体201の大腿骨31の部分31c、部分31d、および、脛骨32の部分32cの大きさを、被検体201の検出対象部分の大きさとして検出する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、大腿骨31の部分31c、部分31d、および、脛骨32の部分32cの3つのうちの少なくとも1つの大きさをパラメータ情報として取得するようにしてもよい。また、膝のX線撮影を行う場合に、部分31c、部分31d、および、部分32c以外の部分の大きさを、被検体の検出対象部分の大きさとして検出するようにしてもよい。
【0133】
また、上記第3実施形態では、被検体201の脚部の長さを示す体格情報を、パラメータ情報として取得する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、被検体の体全体の身長を検出するとともに、検出された被検体の身長を示す体格情報をパラメータ情報として取得するようにしてもよい。また、肘関節のX線撮影を行う場合には、腕の長さを示す体格情報をパラメータ情報として取得するようにしてもよい。また、肩幅、体厚などを示す体格情報をパラメータ情報として取得するようにしてもよい。また、上記第3実施形態では、位置補正情報の算出を行う処理部881(補正情報取得部)とは異なるモジュールである画像処理部812によって外観画像25からパラメータ情報が取得される処理が行われる例を示したが、撮像部による外観画像を、補正情報取得部に出力することによって、補正情報取得部が外観画像から体格情報を検出してパラメータ情報を取得するようにしてもよい。
【0134】
また、上記第3実施形態では、天板3に横たわる被検体201を、X線照射部1に配置した撮像部811により撮像する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、撮像部は、X線照射部ではなく、検査室の天井部分などに配置されていてもよい。また、天板に横たわる被検体ではなく、立った状態の被検体を撮像することによりパラメータ情報が取得されるようしてもよい。
【0135】
また、上記第1~第4実施形態では、説明の便宜上、本発明のX線撮影装置を用いた撮影位置の補正(自動補正および手動補正)の処理を処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローチャートを用いて説明したが、本発明はこれに限られない。本発明では、X線撮影装置を用いた撮影位置の補正の処理を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。
【0136】
[態様]
上記した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0137】
(項目1)
被検体に対してX線を照射するX線照射部と、
前記X線照射部から照射され、前記被検体を透過したX線を検出するX線検出部と、
前記X線検出部の検出信号に基づいて撮影されるX線画像中の前記被検体の1つの撮影対象物における複数の所定部分の各々の外縁を特定して、特定した前記複数の所定部分の外縁同士の位置関係に基づいて、前記被検体の前記撮影対象物に対する前記X線照射部の相対的な位置を補正するための位置補正情報を取得する補正情報取得部と、を備え、
前記位置補正情報は、前記被検体の前記撮影対象物に対する前記X線照射部の相対的な位置を、前記複数の所定部分の外縁同士の位置関係が所定の位置関係で写る前記X線画像を撮影可能な位置に補正するための相対的な移動方向および移動量を含む、X線撮影装置。
【0138】
(項目2)
前記補正情報取得部により取得された前記位置補正情報の報知、および、前記位置補正情報に基づく、前記被検体の前記撮影対象物に対する前記X線照射部の相対的な位置を変更するための制御のうち、少なくとも一方を行うように構成されている、項目1に記載のX線撮影装置。
【0139】
(項目3)
前記被検体に対する前記X線照射部の相対的な位置を変更させる移動機構と、
前記移動機構による前記被検体に対する前記X線照射部の相対的な位置の変更の制御を行う移動制御部とをさらに備え、
前記移動制御部は、前記補正情報取得部により取得された前記位置補正情報に基づいて、前記移動機構による前記被検体の前記撮影対象物に対する前記X線照射部の相対的な位置の変更の制御を行うように構成されている、項目2に記載のX線撮影装置。
【0140】
(項目4)
前記被検体が載置される天板をさらに備え、
前記移動制御部は、前記補正情報取得部により取得された前記位置補正情報に基づいて、前記被検体の前記撮影対象物に対する前記X線照射部の相対的な位置が、前記複数の所定部分の外縁同士の位置関係が前記所定の位置関係で写る前記X線画像を撮影可能な位置になるように、前記X線照射部および前記天板のうちの少なくとも一方の位置を自動的に移動させる制御を行う、項目3に記載のX線撮影装置。
【0141】
(項目5)
前記被検体が載置される天板をさらに備え、
前記移動制御部は、ユーザの操作に基づく前記X線照射部または前記天板の一方の移動の際に、前記補正情報取得部により取得された前記位置補正情報に基づいて、前記X線照射部または前記天板の一方の移動を制限する制御を行う、項目3に記載のX線撮影装置。
【0142】
(項目6)
前記補正情報取得部により取得された前記位置補正情報の報知として、前記複数の所定部分の外縁同士の位置関係が前記所定の位置関係で写る前記X線画像を撮影可能な位置に補正するための前記被検体の前記撮影対象物に対する前記X線照射部の相対的な移動方向および移動量のうち、少なくとも前記X線照射部の相対的な移動方向を表示する表示部をさらに備える、項目2~5のいずれか1項に記載のX線撮影装置。
【0143】
(項目7)
前記補正情報取得部は、前記X線画像中の前記被検体の1つの前記撮影対象物における複数の所定部分の外縁同士の位置関係に基づいて、前記X線画像中の前記複数の所定部分の外縁の同士の相対的な位置ずれを取得して、取得した前記複数の所定部分の外縁同士の相対的な位置ずれに基づいて、前記位置補正情報を取得するように構成されている、項目2~6のいずれか1項に記載のX線撮影装置。
【0144】
(項目8)
前記補正情報取得部は、前記X線画像中の前記被検体の1つの前記撮影対象物としての骨または人工関節における前記複数の所定部分の各々の外縁を特定して、特定した骨または人工関節における前記複数の所定部分の外縁同士の位置関係に基づいて、前記被検体の骨または人工関節に対する前記X線照射部の相対的な位置を補正するための前記位置補正情報を取得するように構成されている、項目2~7のいずれか1項に記載のX線撮影装置。
【0145】
(項目9)
前記補正情報取得部は、前記X線画像中の前記被検体の骨または人工関節の各々における前記複数の所定部分の外縁同士の重なり具合に基づいて、前記複数の所定部分の外縁同士の相対的な位置ずれを取得するとともに、前記複数の所定部分の外縁同士が重なって写る前記X線画像を撮影可能な位置に、前記被検体の骨または人工関節に対する前記X線照射部の相対的な位置を補正するための前記位置補正情報を算出するように構成されている、項目8に記載のX線撮影装置。
【0146】
(項目10)
前記補正情報取得部は、前記被検体の大腿骨の膝側および肩甲骨のうち、少なくとも一方の撮影の際に、前記複数の所定部分の外縁同士が重なって写る前記X線画像を撮影可能な位置に、前記被検体の骨または人工関節に対する前記X線照射部の相対的な位置を補正するための前記位置補正情報を算出するように構成されている、項目9に記載のX線撮影装置。
【0147】
(項目11)
前記補正情報取得部は、前記X線画像中の前記被検体の骨または人工関節の各々における前記複数の所定部分の外縁同士の位置関係に基づいて、前記複数の所定部分の外縁同士の相対的な位置ずれを取得するとともに、前記複数の所定部分の外縁が同心円状に写る前記X線画像を撮影可能な位置に、前記被検体の骨または人工関節に対する前記X線照射部の相対的な位置を補正するための前記位置補正情報を算出するように構成されている、項目8~10のいずれか1項に記載のX線撮影装置。
【0148】
(項目12)
前記補正情報取得部は、前記被検体の上腕骨の肘側の撮影の際に、前記複数の所定部分の外縁が、同心円状に写る前記X線画像を撮影可能な位置に、前記被検体の骨または人工関節に対する前記X線照射部の相対的な位置を補正するための前記位置補正情報を算出するように構成されている、項目11に記載のX線撮影装置。
【0149】
(項目13)
前記補正情報取得部は、前記被検体の前記撮影対象物に対する前記X線照射部の相対的な位置を補正した後に撮影される前記X線画像である位置補正後画像の撮影時よりも少ない放射線量のX線の照射に基づいて生成された前記X線画像である位置補正前画像中の前記被検体の前記撮影対象物における前記複数の所定部分の外縁同士の位置関係に基づいて、前記位置補正情報を取得するように構成されている、項目1~12のいずれか1項に記載のX線撮影装置。
【0150】
(項目14)
前記補正情報取得部は、前記撮影対象物を撮影した前記X線画像を入力データとして機械学習された学習済みモデルに対して、前記X線画像を入力することにより、入力された前記X線画像に基づいて前記複数の所定部分の外縁を取得して、取得した前記複数の所定部分の外縁に基づいて前記位置補正情報を算出するように構成されている、項目1~13のいずれか1項に記載のX線撮影装置。
【0151】
(項目15)
前記補正情報取得部は、前記被検体の前記撮影対象物における前記複数の所定部分同士の実際の距離に対応するパラメータ情報に基づいて、前記位置補正情報を算出するように構成されている、項目1~14のいずれか1項に記載のX線撮影装置。
【0152】
(項目16)
前記補正情報取得部は、前記パラメータ情報として、前記被検体の前記X線画像における前記被検体の検出対象部分の大きさを検出する、項目15に記載のX線撮影装置。
【0153】
(項目17)
前記補正情報取得部は、前記パラメータ情報として、前記位置補正情報を取得するために撮影された前記X線画像のうちから、前記被検体の前記検出対象部分の大きさを検出する、項目16に記載のX線撮影装置。
【0154】
(項目18)
前記補正情報取得部は、前記パラメータ情報として、前記位置補正情報を取得するための前記X線画像とは異なる撮影角度により予め撮影された前記X線画像のうちから、前記被検体の前記検出対象部分の大きさを検出する、項目16に記載のX線撮影装置。
【0155】
(項目19)
前記被検体の外観を撮像する撮像部をさらに備え、
前記補正情報取得部は、前記撮像部による撮像によって取得された前記被検体の外観画像から算出された前記被検体の体格の大きさを示す体格情報である前記パラメータ情報に基づいて、前記位置補正情報を算出するように構成されている、項目15に記載のX線撮影装置。
【0156】
(項目20)
被検体に対してX線照射部からX線を照射する照射ステップと、
前記被検体を透過したX線を検出する検出ステップと、
前記検出ステップにおけるX線の検出に基づいて撮影されるX線画像中の前記被検体の1つの撮影対象物における複数の所定部分の各々の外縁を特定して、特定した前記複数の所定部分の外縁同士の位置関係に基づいて、前記被検体の前記撮影対象物に対する前記X線照射部の相対的な位置を補正するための位置補正情報を取得する補正情報取得ステップと、を備え、
前記位置補正情報は、前記被検体の前記撮影対象物に対する前記X線照射部の相対的な位置を、前記複数の所定部分の外縁同士の位置関係が所定の位置関係で写る前記X線画像を撮影可能な位置に補正するための相対的な移動方向および移動量を含む、撮影位置補正方法。
【0157】
(項目21)
前記補正情報取得ステップにおいて取得した前記位置補正情報の報知、および、前記位置補正情報に基づく、前記被検体の前記撮影対象物に対する前記X線照射部の相対的な位置の変更の制御のうちの少なくとも一方を行う位置補正ステップをさらに備える、項目20に記載の撮影位置補正方法。
【0158】
(項目22)
前記補正情報取得ステップは、前記被検体の前記撮影対象物における前記複数の所定部分同士の実際の距離に対応するパラメータ情報に基づいて、前記位置補正情報を算出する前記補正情報取得ステップを含む、項目20または21に記載の撮影位置補正方法。
【符号の説明】
【0159】
1、501 X線照射部
1b 表示部
3 天板
4 照射部移動機構(移動機構)
5 天板移動機構(移動機構)
7 装置制御部(移動制御部)
21 X線検出部
22 X線検出部
23 本ショット画像(位置補正後画像)
24、24a、24b プレショット画像(位置補正前画像)
25 外観画像
31 大腿骨
31a 内側顆
31b 外側顆
36 上腕骨
39 肩甲骨
81、681、881、981 処理部(補正情報取得部)
82a、82b 学習済みモデル
91、591 表示部
100、500、600、800、900 X線撮影装置
201 被検体
202 ユーザ
811 撮像部
A、B、C 部分
図1
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