(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122542
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】高炉用原料の製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
C10B 53/08 20060101AFI20230825BHJP
C21B 5/00 20060101ALI20230825BHJP
C10B 47/20 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
C10B53/08
C21B5/00 302
C10B47/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001839
(22)【出願日】2023-01-10
(31)【優先権主張番号】P 2022025366
(32)【優先日】2022-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】横森 玲
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 成人
【テーマコード(参考)】
4H012
【Fターム(参考)】
4H012KA04
(57)【要約】
【課題】 竪型乾留炉を用いて高炉用原料である成型コークス、特に、フェロコークスを製造するに際し、竪型乾留炉内の装入物の分布を改善し、高品質の高炉用原料を、高い生産性で製造する。
【解決手段】 本発明に係る高炉用原料の製造方法は、竪型乾留炉本体1の内部に炭素含有物質を供給し、供給した前記炭素含有物質を前記竪型乾留炉本体の内部で乾留して成型コークスを製造する、高炉用原料の製造方法であって、前記竪型乾留炉本体に傾斜して接続される装入シュート3を介して、前記炭素含有物質を、1バッチ分毎に断続的に前記竪型乾留炉本体の内部に供給するに際し、前記炭素含有物質の前記竪型乾留炉本体への1バッチ分の供給毎に、前記竪型乾留炉本体の内部に堆積する前記炭素含有物質の高さ位置を変動させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
竪型乾留炉本体の内部に炭素含有物質を供給し、供給した前記炭素含有物質を前記竪型乾留炉本体の内部で乾留して成型コークスを製造する、高炉用原料の製造方法であって、
前記竪型乾留炉本体に傾斜して接続される装入シュートを介して、前記炭素含有物質を、1バッチ分毎に断続的に前記竪型乾留炉本体の内部に供給するに際し、
前記炭素含有物質の前記竪型乾留炉本体への1バッチ分の供給毎に、前記竪型乾留炉本体の内部に堆積する前記炭素含有物質の高さ位置を変動させる、高炉用原料の製造方法。
【請求項2】
前記竪型乾留炉本体の奥行方向内寸をWとし、前記装入シュートの前記竪型乾留炉本体との接続位置での下端から、前記竪型乾留炉本体の内部に堆積する前記炭素含有物質の表面までの距離をDとすると、
前記竪型乾留炉本体の内部に堆積する前記炭素含有物質の高さ位置を、1バッチ分の供給毎に、D/W≦0.9の範囲で変動させる、請求項1に記載の高炉用原料の製造方法。
【請求項3】
前記竪型乾留炉本体の内部に堆積する前記炭素含有物質の高さ位置を、1バッチ分の供給毎に、D/W≦0.6の範囲と、0.8≦D/W≦0.9の範囲とで、交互に変動させる、請求項2に記載の高炉用原料の製造方法。
【請求項4】
前記竪型乾留炉本体の内部に堆積する前記炭素含有物質の高さ位置を、D/W換算で0.3以上に変動させる、請求項2又は請求項3に記載の高炉用原料の製造方法。
【請求項5】
炭素含有物質を乾留して成型コークスを製造する竪型乾留炉本体と、
前記竪型乾留炉本体に傾斜して接続され、前記竪型乾留炉本体に前記炭素含有物質を供給する装入シュートと、
前記装入シュートの管路の途中に、前記炭素含有物質を一時的に当該装入シュートの内部に滞留させる開閉可能なゲートと、
前記竪型乾留炉本体の内部に堆積する前記炭素含有物質の高さ位置を連続的または断続的に測定する位置測定装置と、
前記ゲートの開閉を制御するゲート制御装置と、
を有する高炉用原料の製造装置であって、
前記ゲート制御装置は、前記位置測定装置による前記炭素含有物質の高さ位置の測定結果に基づき、前記炭素含有物質の前記竪型乾留炉本体への1バッチ分の供給毎に、前記竪型乾留炉本体の内部に堆積する前記炭素含有物質の高さ位置が変動するように、前記ゲートの開閉を制御する、高炉用原料の製造装置。
【請求項6】
前記竪型乾留炉本体の奥行方向内寸をWとし、前記装入シュートの前記竪型乾留炉本体との接続位置での下端から、前記竪型乾留炉本体の内部に堆積する前記炭素含有物質の表面までの距離をDとすると、
前記ゲート制御装置は、前記竪型乾留炉本体の内部に堆積する前記炭素含有物質の高さ位置がD/W≦0.9の範囲で変動するように、前記ゲートの開閉を制御する、請求項5に記載の高炉用原料の製造装置。
【請求項7】
前記ゲート制御装置は、前記炭素含有物質の高さ位置が、D/W≦0.6の範囲と0.8≦D/W≦0.9の範囲とで交互に変動するように、前記ゲートの開閉を制御する、請求項6に記載の高炉用原料の製造装置。
【請求項8】
前記ゲート制御装置は、前記炭素含有物質の前記竪型乾留炉本体への1バッチ分の供給毎に、前記竪型乾留炉本体の内部に堆積する前記炭素含有物質の高さ位置が、D/W換算で0.3以上に変動するように、前記ゲートの開閉を制御する、請求項6又は請求項7に記載の高炉用原料の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、竪型乾留炉を用いて高炉用原料である成型コークス、特に、フェロコークスを製造する、高炉用原料の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化防止の観点から、鉄鋼業界においてもCO2ガスの発生量低減が求められており、化石燃料使用量の削減が急務である。鉄鋼業においては、高炉内で鉄鉱石を炭素(石炭をコークス炉で乾留して製造したコークス)で還元することによって溶銑を製造しているが、コークス原単位低減のために、フェロコークスを高炉用原料として用いる技術開発が行われている。フェロコークスは、石炭に鉄鉱石を一定量混合して塊成化した後に乾留処理を施すことで、コークス中に微細な金属鉄粒子を分散させたものであり、金属鉄の触媒作用によってコークスの反応性を高めるものである。
【0003】
フェロコークスの乾留方法としては竪型乾留炉を用いる方法が提案されており、例えば、特許文献1には、上部に乾留ゾーン、下部に冷却ゾーンを有する竪型乾留炉を用いたフェロコークスの製造方法が開示されている。この方法は、炭素含有物質と鉄含有物質とからなる成型物を竪型乾留炉に装入する装入工程と、乾留ゾーンにおいて加熱ガスを吹き込むことで成型物を乾留してフェロコークスを製造する乾留工程と、冷却ガスの吹き込みによってフェロコークスを冷却する冷却工程と、竪型乾留炉の炉頂部の排出口から炉内ガスを排出する炉内ガス排出工程と、冷却ゾーン下部からフェロコークスを排出するフェロコークス排出工程と、を有する。
【0004】
成型物の装入工程では、竪型乾留炉の上部に傾斜して取り付けられる装入シュートを介して成型物を炉内に装入し、乾留工程では、乾留ゾーン中間部分の低温ガス吹き込み羽口から低温ガスを炉内に吹き込み、乾留ゾーン下部の高温ガス吹き込み羽口から高温ガスを炉内に吹き込むことで成型物を加熱している。また、フェロコークスの冷却工程では、冷却ゾーン下部の冷却ガス吹き込み羽口から冷却ガスを吹き込むことでフェロコークスの冷却を行っている。
【0005】
ここで、フェロコークス生産量を増加させるためには竪型乾留炉の容積を大きくする必要があるが、加熱ガス及び冷却ガスは竪型乾留炉の奥行方向(成型物装入方向の水平成分に平行)に噴射されるので、ガスを炉内中央部まで浸透させるには奥行方向の内寸を一定値以下にする必要がある。したがって、竪型乾留炉は奥行方向に比べて炉幅方向(竪型乾留炉の横断面において奥行方向と直交する方向)が長い形状となる。
【0006】
上記のように、炉の奥行方向に対して炉幅方向が長い構造を有する竪型乾留炉では、炉幅方向に成型物装入口(装入シュート)を複数列設置した場合でも、成型物の均一な装入分布を得ることは困難である。特に、成型物と装入シュート壁面とが衝突する、または、成型物同士が衝突することで生成される粉体は、偏析しやすく、竪型乾留炉の装入口側に密集する傾向にある。これは、装入シュート内を移動する間に装入物中の粉体の大部分が成型物の間をすり抜けて沈降することで、竪型乾留炉への到達までに装入物が成型物層(上層)と粉体層(下層)との2層に分離するためである。
【0007】
仮に、1000kgの成型物を炉内に装入した場合、竪型乾留炉内に装入される際の装入物厚みは最大で150mm程度になり、成型物粒子は、その下側に存在する粉体層の上の高い位置から炉内に装入されるので、装入口から離れた位置まで飛来しやすい。一方、下層の粉体は装入口近傍に落下する。成型物は、その安息角に応じた山を形成するので比較的均一な分布となるが、粉体は成型物間に潜り込むことで位置が固定されるため、粉体が一点に集中して落下した場合には著しい粉体の偏析が発生する。このような粉体に偏析が生じると、炉内のガス流れが不均一となって成型物の乾留が不均一になり、成型物に乾留不良が生じる。
【0008】
材料の均一装入方法として、特許文献2には、搬送路の幅方向中心部から出口側へ向かって放射状に下る傾斜面を有する分散誘導部を設けることで材料を放射状に分散させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2011-57970号公報
【特許文献2】特開2011-162271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献2に開示された方法は、炉幅方向の分散改善に着目したものであり、分散誘導部の有無は粉体の飛距離に影響せず、分散誘導部の設置によって装入口側の粉体偏析を改善することができない。本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、竪型乾留炉を用いて高炉用原料である成型コークス、特に、フェロコークスを製造するに際し、装入シュートから供給される竪型乾留炉内の装入物の分布を改善できる高炉原料の製造方法及び製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]竪型乾留炉本体の内部に炭素含有物質を供給し、供給した前記炭素含有物質を前記竪型乾留炉本体の内部で乾留して成型コークスを製造する、高炉用原料の製造方法であって、前記竪型乾留炉本体に傾斜して接続される装入シュートを介して、前記炭素含有物質を、1バッチ分毎に断続的に前記竪型乾留炉本体の内部に供給するに際し、前記炭素含有物質の前記竪型乾留炉本体への1バッチ分の供給毎に、前記竪型乾留炉本体の内部に堆積する前記炭素含有物質の高さ位置を変動させる、高炉用原料の製造方法。
[2]前記竪型乾留炉本体の奥行方向内寸をWとし、前記装入シュートの前記竪型乾留炉本体との接続位置での下端から、前記竪型乾留炉本体の内部に堆積する前記炭素含有物質の表面までの距離をDとすると、前記竪型乾留炉本体の内部に堆積する前記炭素含有物質の高さ位置を、1バッチ分の供給毎に、D/W≦0.9の範囲で変動させる、[1]に記載の高炉用原料の製造方法。
[3]前記竪型乾留炉本体の内部に堆積する前記炭素含有物質の高さ位置を、1バッチ分の供給毎に、D/W≦0.6の範囲と、0.8≦D/W≦0.9の範囲とで、交互に変動させる、[2]に記載の高炉用原料の製造方法。
[4]前記竪型乾留炉本体の内部に堆積する前記炭素含有物質の高さ位置を、D/W換算で0.3以上に変動させる、[2]又は[3]に記載の高炉用原料の製造方法。
[5]炭素含有物質を乾留して成型コークスを製造する竪型乾留炉本体と、前記竪型乾留炉本体に傾斜して接続され、前記竪型乾留炉本体に前記炭素含有物質を供給する装入シュートと、前記装入シュートの管路の途中に、前記炭素含有物質を一時的に当該装入シュートの内部に滞留させる開閉可能なゲートと、前記竪型乾留炉本体の内部に堆積する前記炭素含有物質の高さ位置を連続的または断続的に測定する位置測定装置と、前記ゲートの開閉を制御するゲート制御装置と、を有する高炉用原料の製造装置であって、前記ゲート制御装置は、前記位置測定装置による前記炭素含有物質の高さ位置の測定結果に基づき、前記炭素含有物質の前記竪型乾留炉本体への1バッチ分の供給毎に、前記竪型乾留炉本体の内部に堆積する前記炭素含有物質の高さ位置が変動するように、前記ゲートの開閉を制御する、高炉用原料の製造装置。
[6]前記竪型乾留炉本体の奥行方向内寸をWとし、前記装入シュートの前記竪型乾留炉本体との接続位置での下端から、前記竪型乾留炉本体の内部に堆積する前記炭素含有物質の表面までの距離をDとすると、前記ゲート制御装置は、前記竪型乾留炉本体の内部に堆積する前記炭素含有物質の高さ位置がD/W≦0.9の範囲で変動するように、前記ゲートの開閉を制御する、[5]に記載の高炉用原料の製造装置。
[7]前記ゲート制御装置は、前記炭素含有物質の高さ位置が、D/W≦0.6の範囲と0.8≦D/W≦0.9の範囲とで交互に変動するように、前記ゲートの開閉を制御する、[6]に記載の高炉用原料の製造装置。
[8]前記ゲート制御装置は、前記炭素含有物質の前記竪型乾留炉本体への1バッチ分の供給毎に、前記竪型乾留炉本体の内部に堆積する前記炭素含有物質の高さ位置が、D/W換算で0.3以上に変動するように、前記ゲートの開閉を制御する、[6]又は[7]に記載の高炉用原料の製造装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、竪型乾留炉本体の内部に堆積する成型物堆積層における粉体偏析箇所を分散させ、竪型乾留炉内の装入物の分布を改善できる。竪型乾留炉内の装入物の分布を改善することで炉内ガス流れを蛇行させることができ、これにより、炭素含有物質の乾留が促進されて、高炉装入用成型コークスの品質を改善できるとともに竪型乾留炉本体の生産性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る高炉原料の製造装置の一例である竪型乾留炉設備を示す模式図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す竪型乾留炉本体の上部において、炉内への成型物の供給方法を示す断面模式図である。
【
図3】
図3は、フェロコークス原料の竪型乾留炉本体への供給時点のストックラインを一定とした場合(
図3(A))と、ストックラインを変動した場合(
図3(B))とで、粉体偏析箇所の分布を比較して示す断面模式図である。
【
図4】
図4は、D/Wと塗料付着成型物重量との関係を示すグラフである。
【
図5】
図5は、ストックライン上昇時のD/Wの変化量とドラム強度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態の一例を、成型コークスの一種であるフェロコークスの製造工程を例として説明する。なお、添付する各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下に記す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための方法や装置を例示するものであり、構成を下記の記載に限定するものでない。即ち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0015】
図1は、本実施形態に係る高炉原料の製造装置の一例である竪型乾留炉設備を示す模式図である。
図1では、竪型乾留炉本体の奥行き方向(竪型乾留炉本体の横断面において、炉幅方向と直交する方向)を正面とする竪型乾留炉設備50の模式図である。
【0016】
まず、
図1を用いて竪型乾留炉設備50の構成を説明する。フェロコークスを製造する竪型乾留炉設備50は、竪型乾留炉本体1を備える。竪型乾留炉本体1の上部の乾留ゾーンで成型物の乾留を行い、竪型乾留炉本体1の下部の冷却ゾーンでフェロコークスの冷却を行なう。竪型乾留炉本体1には、竪型乾留炉本体1の側方であって、乾留ゾーンの中間部に相当する位置に低温ガス吹き込み羽口8が設けられ、竪型乾留炉本体1の側方であって乾留ゾーンの下部に相当する位置には高温ガス吹き込み羽口9が設けられる。また、竪型乾留炉本体1の側方であって、冷却ゾーンの下部に相当する位置には冷却ガス吹き込み羽口12が設けられ、竪型乾留炉本体1の炉頂部には成型物を装入する装入シュート3と炉内ガス排出口14とが設けられ、竪型乾留炉本体1の下部にはフェロコークス排出口13が設けられる。竪型乾留炉本体1は、外殻(表面)が鉄皮で構成され、鉄皮の内側には耐火物(図示せず)が施工されている。
【0017】
炭素含有物質(石炭など)と鉄含有物質(鉄鉱石など)とからなる成型物は、成型物装入ホッパー2に収容される。フェロコークスを製造する際には、成型物装入ホッパー2に収容された成型物を、鋼製の装入シュート3を介して竪型乾留炉本体1の炉頂部に装入し、乾留ゾーンで乾留した後に冷却ゾーンで冷却し、製造されたフェロコークスを下部のフェロコークス排出口13から排出する。その際に、低温ガス吹き込み羽口8及び高温ガス吹き込み羽口9から成型物を乾留するための加熱ガスが吹き込まれる。高温ガス吹き込み羽口9からは低温ガス吹き込み羽口8から吹き込まれるガスより温度の高いガスが吹き込まれる。また、製造されたフェロコークスを冷却するための冷却ガスは、冷却ガス吹き込み羽口12から吹き込まれる。吹き込まれたガスは、炉頂部の炉内ガス排出口14から排出される。装入シュート3は、竪型乾留炉本体1に傾斜して接続されている。装入シュート3の水平方向との傾斜角度θは、炉内に装入される成型物の安息角以上の角度(例えば、35~80°)である。炭素含有物質と鉄含有物質とからなる成型物は、装入シュート3の内面を滑り落ちて竪型乾留炉本体1の内部に供給される。なお、竪型乾留炉本体1で成型コークスを製造する場合には、炭素含有物質のみが竪型乾留炉本体1の内部に供給される。
【0018】
炉頂部の炉内ガス排出口14から排出された炉内ガスは、第1の循環ガス冷却装置6及び第2の循環ガス冷却装置7によって冷却される。その後、炉内ガスの一部は、低温ガス加熱装置10で加熱されて低温ガス吹き込み羽口8から炉内に吹き込まれ、一部は、高温ガス加熱装置11で加熱されて高温ガス吹き込み羽口9から炉内に吹き込まれ、残部は、冷却ガス吹き込み羽口12から炉内に吹き込まれる。
【0019】
このように高さの異なる位置に設置された3段羽口を有し、炉頂部以外にガスの排出口を有していない竪型乾留炉本体1を用いて、炭素含有物質と鉄含有物質との成型物は連続的に乾留されてフェロコークスが製造される。低温ガス吹き込み羽口8から吹き込まれる低温ガスは、竪型乾留炉本体1の内部の原料の昇温速度調整のために吹き込まれる。低温ガスの温度は400~700℃程度であることが好ましい。高温ガス吹き込み羽口9から吹き込まれる高温ガスは、竪型乾留炉本体1の内部の原料の最高温度への昇温のために吹き込まれる。高温ガスの温度は800~1000℃程度であることが好ましい。また、冷却ガス吹き込み羽口12から吹き込まれる冷却ガスは、炉内での乾留により製造されたフェロコークスを冷却するために吹き込まれる。冷却ガスの温度は25~80℃程度であることが好ましい。
【0020】
図2は、
図1に示す竪型乾留炉本体の上部において、炉内への成型物の供給方法を示す断面模式図である。
図2中の符号1は竪型乾留炉本体、3は装入シュート、4はゲート、5は装入物拡散部、15は、竪型乾留炉本体1の内部に堆積する成型物堆積層(成型物(及び粉体))の高さ位置を連続的または断続的に測定する位置測定装置、16は、ゲート4の開閉を制御するゲート制御装置である。ゲート制御装置16は、例えば、ワークステーションやパソコン等の汎用コンピュータである。
【0021】
装入シュート3の上部には、成型物装入ホッパー2(
図1参照)が接続されている。ゲート4は、竪型乾留炉本体1と繋がる装入シュート3の管路の途中に設けられており、開閉可能に構成され、フェロコークスの原料である成型物の1バッチ分を、装入シュート3の内部に一時的に滞留させる。また、装入物拡散部5は、装入シュート3を介して装入される成型物(及び粉体)を水平方向に分散させる。
【0022】
竪型乾留炉本体1にフェロコークスの原料である成型物を装入するにあたり、まず、装入シュート3に、フェロコークスの原料となる炭素含有物質(石炭など)と鉄含有物質(鉄鉱石など)とを含む成型物の1バッチ分(800~1200kg;但し、炉容量によって異なる)を、成型物装入ホッパー2から供給する。成型物装入ホッパー2から装入シュート3への成型物の供給時、装入シュート3の管路の途中に設けられたゲート4は閉じられた状態であり、したがって、ゲート4の上流側に1バッチ分の成型物が堆積する。
【0023】
次いで、ゲート制御装置16からの信号によってゲート4を開とし、装入シュート3を介して竪型乾留炉本体1の内部に成型物が供給される。ゲート制御装置16には、位置測定装置15による竪型乾留炉本体1の内部に堆積する成型物堆積層19の高さ位置の測定結果が入力されており、ゲート制御装置16は、荷下りして成型物堆積層19の高さ位置が所定の高さ位置になった時点で、ゲート4を開とする信号を発信するように構成されている。成型物は、炉幅方向の分散を促進するための装入物拡散部5を通過して竪型乾留炉本体1の内部に落下する。
【0024】
装入シュート3に一時的に堆積していた成型物が竪型乾留炉本体1に供給された後、ゲート制御装置16はゲート4を閉とする信号を発信してゲート4を閉とする。ゲート4が閉となったなら、成型物装入ホッパー2の底部に設けられた原料切り出し装置(図示せず)の作動により、成型物装入ホッパー2から装入シュート3への1バッチ分の成型物の供給が自動的に行われる。
【0025】
装入シュート3を介して竪型乾留炉本体1の内部に成型物を供給する時、成型物(及び粉体)の成型物堆積層19における着地点は、成型物装入時点における竪型乾留炉本体1の内部の成型物堆積層19の高さ位置(以下、「ストックライン」と記載する。)に応じて変化する。
【0026】
このストックラインが高い程、つまり、ストックラインと装入シュート3の竪型乾留炉本体1との接続位置での下端との距離が短い程、着地点は、竪型乾留炉本体1における装入シュート3の竪型乾留炉本体1への出口(竪型乾留炉本体1の原料装入口)に近くなる。このため、成型物に含まれる粉体は、竪型乾留炉本体1における装入シュート3の出口(竪型乾留炉本体1の原料装入口)の近傍に偏析する。これは、装入シュート3の内部を移動する間に成型物中の粉体の大部分が成型物の間をすり抜けて沈降することで、竪型乾留炉本体1への到達までに装入物が、上層の成型物層17と下層の粉体層18との2層に分離するためである。一方、成型物装入時点におけるストックラインを低くすれば、着地点は竪型乾留炉本体1の原料装入口から遠ざかり、成型物に含まれる粉体は竪型乾留炉本体1の原料装入口から離れた場所に偏析する。
【0027】
図3は、フェロコークス原料の竪型乾留炉本体への供給時点のストックラインを一定とした場合(
図3(A))と、ストックラインを変動した場合(
図3(B))とで、粉体偏析箇所の分布を比較して示す断面模式図である。成型物堆積層19における粉体の偏析位置が変化すると、竪型乾留炉本体1の内部の低温ガス、高温ガス及び冷却ガスの流れ方が変化する。低温ガス、高温ガス及び冷却ガス(以下、まとめて「炉内ガス」と記載する。)は、粉体が偏析した空隙率が低い箇所を避けるようにして流れる。したがって、フェロコークス原料の竪型乾留炉本体1への装入時点におけるストックラインを一定として操業した場合は、
図3(A)に示すように、粉体偏析箇所20が鉛直(高さ)方向に連続的に連なり、炉内ガス流れ21が直線的になる。このため、粉体偏析箇所20に炉内ガスが流れず、当該位置に堆積したフェロコークス原料が加熱及び冷却され難くなり、十分に乾留がなされないことがわかった。
【0028】
一方、フェロコークス原料の竪型乾留炉本体1への供給毎に、ストックラインを鉛直方向に変動させた場合には、
図3(B)に示すように、粉体偏析箇所20が鉛直(高さ)方向で不連続となる。これにより、炉内ガス流れ21は、蛇行するような軌道を描くので、粉体偏析箇所20にも炉内ガスが供給され、フェロコークス原料の乾留が促進されることがわかった。
【0029】
更に検討した結果、竪型乾留炉本体1の奥行方向内寸をWとし、装入シュート3の竪型乾留炉本体1との接続位置(竪型乾留炉本体1の原料装入口)の下端から竪型乾留炉本体1の内部に堆積した成型物堆積層19の表面までの距離をDとすると(
図2参照)、フェロコークス原料の竪型乾留炉本体1への供給毎に、ストックラインをD/W≦0.9の範囲で変動させることが、フェロコークス原料の乾留を促進させるうえで好ましいことがわかった。ストックラインをD/W≦0.9の範囲で変動させる理由は、フェロコークス原料の竪型乾留炉本体1への供給時にD/Wが0.9を超えると、竪型乾留炉本体1に供給された成型物が竪型乾留炉本体1の原料装入口の対面側炉壁に衝突して粉化するおそれがあるからである。
【0030】
更に、フェロコークス原料の竪型乾留炉本体1への供給毎に、ストックラインをD/W≦0.6の範囲と、0.8≦D/W≦0.9の範囲とで交互に変動させることが、フェロコークス原料の乾留を促進させるうえで好ましいことがわかった。
【0031】
また、更に、フェロコークス原料の竪型乾留炉本体1への供給毎のストックライン変動幅は、D/W換算で0.3以上であることが、フェロコークス原料の乾留を促進させるうえでより好ましいことがわかった。ストックライン変動幅がD/W換算で0.3を下回った場合には、炉内ガス流れ21の蛇行の程度が小さくなり、フェロコークス原料の乾留促進効果が少なくなる。
【0032】
本実施形態に係る高炉用原料の製造方法及び製造装置は、上記知見に基づいてなされたものである。本実施形態に係る高炉用原料の製造方法は、竪型乾留炉本体1の内部に炭素含有物質を供給し、供給した炭素含有物質を竪型乾留炉本体1の内部で乾留して成型コークスを製造する、高炉用原料の製造方法であって、竪型乾留炉本体1に傾斜して接続される装入シュート3を介して、炭素含有物質を、1バッチ分毎に断続的に竪型乾留炉本体1の内部に供給するに際し、炭素含有物質の竪型乾留炉本体1への1バッチ分の供給毎に、ストックラインの位置を変動させる。
【0033】
また、竪型乾留炉本体1の奥行方向内寸をWとし、装入シュート3の竪型乾留炉本体1との接続位置の下端から竪型乾留炉本体1の内部に堆積した成型物堆積層19の表面までの距離をDとすると、D/W≦0.9の範囲でストックラインを変動させることが好ましい。さらに、ストックラインをD/W≦0.6の範囲と、0.8≦D/W≦0.9の範囲とで交互に変動させることがより好ましく、変動幅がD/W換算で0.3以上になるようにストックラインを変動させることがさらに好ましい。
【0034】
また、本実施形態に係る高炉用原料の製造装置は、竪型乾留炉本体1と、装入シュート3と、ゲート4と、位置測定装置15と、ゲート制御装置16と、を有する高炉用原料の製造装置であって、ゲート制御装置16は、位置測定装置15による炭素含有物質の高さ位置の測定結果に基づき、炭素含有物質の竪型乾留炉本体1への1バッチ分の供給毎に、炭素含有物質の高さ位置が変動するように、ゲート4の開閉を制御する。
【0035】
本実施形態に係る高炉原料の製造方法及び製造装置によれば、竪型乾留炉本体1の内部に堆積する成型物堆積層19における粉体偏析箇所20を分散させることができる。粉体偏析箇所20を分散させることで炉内ガス流れを蛇行させることができ、これにより、炭素含有物質の乾留が促進されて、高炉装入用成型コークスの品質を改善できるとともに竪型乾留炉本体1の生産性も向上できる。
【0036】
なお、1バッチ分の炭素含有物質を竪型乾留炉本体1に供給する場合において、1バッチ分の炭素含有物質を複数に分割し、複数回に分けて竪型乾留炉本体1に装入してもよい。このように、1バッチ分の炭素含有物質を複数回に分割して供給する場合には、これら複数回の供給毎にストックラインを変動させればよい。さらに、ストックラインは、炭素含有物質の竪型乾留炉本体1への供給開始時点において変動されることが好ましい。これにより、確実に成型物堆積層19における粉体偏析箇所20を分散させることができる。
【実施例0037】
図1に示したフェロコークス製造用の竪型乾留炉本体を模擬した小型の試験用乾留炉を用い、成型物を装入する際の竪型乾留炉本体の入口対面側炉壁への成型物衝突量に対するストックラインの影響を確認した。試験用乾留炉について、縮小されているのは炉幅方向と高さ方向であり、炉奥行方向寸法は実機乾留炉と同じである。また、実機乾留炉では4種類の羽口から加熱ガス・冷却ガスを吹き込んでいるが、試験用乾留炉では1種類の羽口から一定時間加熱ガスを吹込んだ後、冷却ガスに切り替えることで実機乾留炉での乾留を再現した。
【0038】
入口対面側炉壁に塗料を塗り、成型物を4バッチ分(各バッチ50kg×4バッチ:合計200kg)装入後、4バッチ目に装入された成型物についてのみ塗料が付着したものを選別し、その重量を測定した。なお、バッチ装入によりストックラインが上昇した分だけ成型物を降下させ、次バッチを装入後、再度成型物を降下させる操作を4バッチ分繰り返すことで、各バッチにおけるストックラインを一定にした。また、試験用乾留炉は、底面が平面になっているが、実機乾留炉内の堆積物表面は装入物の安息角に従った山形状になっている。底面が平面である乾留炉に原料を装入した場合、堆積物表面形状はバッチごとに少しずつ変化し、3バッチ目以降に大きな変化がみられなくなった。実機乾留炉と同様の山状堆積物表面に成型物を落下させた場合の挙動をみるため、今回は4バッチ目の挙動のみを評価した。
【0039】
図4は、D/Wと塗料付着成型物重量との関係を示すグラフである。
図4において、横軸はD/W(-)であり、縦軸は塗料付着成型物重量(kg)である。なお、(-)は無次元であることを示す。
図4に示すように、ストックラインがD/W≦0.9の範囲の条件では、成型物への塗料付着がほぼ見られず、炉壁衝突による成型物粉化のおそれがないことが確認された。
実施例1と同様に、フェロコークス製造用の竪型乾留炉本体を模擬した試験用乾留炉を用い、コークス強度に対するストックライン変動幅の影響を確認した。成型物を供給するにあたり、供給毎にストックラインを2通りの高さで交互に変動させた。実施例1の結果に基づき、ストックラインを下降させた時の高さはD/W=0.9で一定とし、ストックラインを上昇させた時のD/Wを種々変化させた。
炉内の成型物に対しては加熱ガス及び冷却ガスを一定流量で吹き込み、試験用小型装置の下部に設置されたフィーダーを用いて乾留されたフェロコークスを排出させた。排出後のフェロコークスのドラム強度を測定し、ストックライン上昇時のD/Wの変化幅とドラム強度との関係を確認した。なお、ドラム強度は、フェロコークス10kgについて、鋼鉄製ドラム内で150回転(15rpm)させた後の15mm以上のフェロコークスの割合を百分率で示したものである。