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特開2023-122573プロピレン系重合体組成物及び成形品
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  • 特開-プロピレン系重合体組成物及び成形品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122573
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】プロピレン系重合体組成物及び成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 53/00 20060101AFI20230825BHJP
   C08L 23/04 20060101ALI20230825BHJP
   C08L 23/14 20060101ALI20230825BHJP
   C08F 297/08 20060101ALI20230825BHJP
   C08F 210/06 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
C08L53/00
C08L23/04
C08L23/14
C08F297/08
C08F210/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025823
(22)【出願日】2023-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2022025678
(32)【優先日】2022-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】596133485
【氏名又は名称】日本ポリプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 昌和
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 剛
【テーマコード(参考)】
4J002
4J026
4J100
【Fターム(参考)】
4J002BB14X
4J002BP02W
4J002BP03W
4J002DJ046
4J002EF096
4J002FD040
4J002FD050
4J002FD070
4J002FD090
4J002FD170
4J002FD206
4J002GB00
4J002GC00
4J002GG00
4J002GK00
4J002GN00
4J026HA03
4J026HA04
4J026HA27
4J026HA35
4J026HA39
4J026HA43
4J026HA48
4J026HA49
4J026HB03
4J026HB04
4J026HB27
4J026HB35
4J026HB39
4J026HB42
4J026HB43
4J026HB46
4J026HB48
4J026HE01
4J100AA02Q
4J100AA03P
4J100AA04Q
4J100AA05Q
4J100AA16Q
4J100CA03
4J100CA04
4J100CA11
4J100DA01
4J100DA47
4J100DA49
4J100DA52
4J100EA05
4J100FA09
4J100FA10
4J100FA22
4J100FA28
4J100FA29
4J100FA34
4J100FA43
4J100GC25
4J100JA11
4J100JA28
4J100JA43
4J100JA50
4J100JA57
4J100JA58
(57)【要約】
【課題】バイオマスポリエチレンを含有しても剛性及び耐衝撃性に優れ、割れない成形品を与える、バイオマス度が8.4~49%であるプロピレン系重合体組成物及びその成形品を提供する。
【解決手段】プロピレンと、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンから選択される少なくとも1種とのブロック共重合体(a)51~95重量部、並びにバイオマスポリエチレン(b)5~49重量部を含有する、合計100重量部のプロピレン系重合体組成物であって、前記ブロック共重合体(a)が下記条件(A-i)及び(A-ii)を満たし、プロピレン系重合体組成物のバイオマス度が8.4~49%である、プロピレン系重合体組成物。
(A-i)エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンの含有量が5重量%超30重量%以下の範囲である。
(A-ii)JIS K7210に準拠し、230℃及び2.16kg荷重で測定したメルトフローレートが0.5~100g/10分の範囲である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレンと、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンから選択される少なくとも1種とのブロック共重合体(a)51~95重量部、並びにバイオマスポリエチレン(b)5~49重量部を含有する、合計100重量部のプロピレン系重合体組成物であって、
前記ブロック共重合体(a)が下記条件(A-i)及び(A-ii)を満たし、
プロピレン系重合体組成物のバイオマス度が8.4~49%である、プロピレン系重合体組成物。
(A-i)エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンの含有量が5重量%超30重量%以下の範囲である。
(A-ii)JIS K7210に準拠し、230℃及び2.16kg荷重で測定したメルトフローレートが0.5~100g/10分の範囲である。
【請求項2】
前記ブロック共重合体(a)が、
プロピレンと、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンから選択される少なくとも1種とのランダム共重合体であって、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンの含有量が5重量%以下であるランダム共重合体、又はプロピレン単独重合体(ac-1)、並びに、
プロピレンと、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンから選択される少なくとも1種とのランダム共重合体であって、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンの含有量が15~85重量%の範囲であるランダム共重合体(ac-2)
からなる多段重合体であり、かつ、下記条件(AC-i)~(AC-iii)を満たす、請求項1に記載のプロピレン系重合体組成物。
(AC-i)(ac-1)と(ac-2)との割合は、(ac-1)が40~95重量部、及び(ac-2)が5~60重量部の合計100重量部である。
(AC-ii)JIS K7210に準拠し、230℃及び2.16kg荷重で測定した(ac-1)のメルトフローレートが、0.5~350g/10分の範囲である。
(AC-iii)JIS K7210に準拠し、230℃及び2.16kg荷重で測定した(ac-2)のメルトフローレートが、0.001~0.5g/10分の範囲である。
【請求項3】
エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンから選択される少なくとも1種が、エチレンである、請求項1に記載のプロピレン系重合体組成物。
【請求項4】
バイオマスポリエチレン(b)が直鎖状低密度ポリエチレンである、請求項1に記載のプロピレン系重合体組成物。
【請求項5】
請求項1に記載のプロピレン系重合体組成物100重量部に対して、造核剤を0.01~0.6重量部含有する、プロピレン系重合体組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のプロピレン系重合体組成物を含む成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス度が8.4~49%であるプロピレン系重合体組成物及びその成形品に関し、詳しくは、バイオマスポリエチレンを含有しても剛性及び耐衝撃性に優れ、割れない成形品を与えるプロピレン系重合体組成物に関する。本発明において、「割れる」とは、力が加えられた場合、いくつかの部分に分かれることを意味する。また、「割れない」とは、力が加えられた場合、次のいずれかを意味する。
(1)割れ目(裂け目、クラック)ができずに、いくつかの部分に分かれない。
(2)割れ目(裂け目、クラック)ができるが、いくつかの部分に分かれない。
【背景技術】
【0002】
プロピレン系樹脂は、剛性、耐衝撃性、耐熱性、成形性、透明性及び耐薬品性に優れるという特徴により、各種工業材料、自動車関連部品、医療向けや化粧品向け等の各種容器、日用品、フィルム及び繊維等、様々な用途に幅広く使用されている。
一方、近年、プラスチックの環境汚染が問題となっており、その対応は課題となっている。その対応の1つとして、カーボンニュートラルとなる植物由来のプラスチック(バイオマスプラスチック)を使用することが挙げられる。植物由来のポリプロピレンも検討されているが、現在、上市されておらず、ポリプロピレンにバイオマスポリエチレンを添加する検討が実施されている(例えば、特許文献1及び2を参照。)。
【0003】
しかし、ポリプロピレンとバイオマスポリエチレンとを混合し、溶融混練してなる混合物は混和性に劣るので、その混合物から得られる成形品は割れることが課題となっている。このため、バイオマスポリエチレンを含有しても混和性に優れたポリプロピレン組成物が要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-34519号公報
【特許文献2】特開2016-27171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、かかる従来技術の状況において、バイオマスポリエチレンを含有しても剛性及び耐衝撃性に優れ、割れない成形品を与える、バイオマス度が8.4~49%であるプロピレン系重合体組成物及びその成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討を行い、特定のプロピレン系重合体組成物を用いることで、バイオマスポリエチレンを含有しても剛性及び耐衝撃性に優れ、割れない成形品を与える、バイオマス度が8.4~49%であるプロピレン系重合体組成物及びその成形品を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のバイオマス度が8.4~49%であるプロピレン系重合体組成物及びその成形品を提供するものである。
【0007】
[1]プロピレンと、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンから選択される少なくとも1種とのブロック共重合体(a)51~95重量部、並びにバイオマスポリエチレン(b)5~49重量部を含有する、合計100重量部のプロピレン系重合体組成物であって、
前記ブロック共重合体(a)が下記条件(A-i)及び(A-ii)を満たし、プロピレン系重合体組成物のバイオマス度が8.4~49%である、プロピレン系重合体組成物。
(A-i)エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンの含有量が5重量%超30重量%以下の範囲である。
(A-ii)JIS K7210に準拠し、230℃及び2.16kg荷重で測定したメルトフローレートが0.5~100g/10分の範囲である。
[2]前記ブロック共重合体(a)が、プロピレンと、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンから選択される少なくとも1種とのランダム共重合体であって、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンの含有量が5重量%以下であるランダム共重合体、又はプロピレン単独重合体(ac-1);並びに、プロピレンと、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンから選択される少なくとも1種とのランダム共重合体であって、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンの含有量が15~85重量%の範囲であるランダム共重合体(ac-2);からなる多段重合体であり、かつ、下記条件(AC-i)~(AC-iii)を満たす、[1]に記載のプロピレン系重合体組成物。
(AC-i)(ac-1)と(ac-2)との割合は、(ac-1)が40~95重量部、及び(ac-2)が5~60重量部の合計100重量部である。
(AC-ii)JIS K7210に準拠し、230℃及び2.16kg荷重で測定した(ac-1)のメルトフローレートが、0.5~350g/10分の範囲である。
(AC-iii)JIS K7210に準拠し、230℃及び2.16kg荷重で測定した(ac-2)のメルトフローレートが、0.001~0.5g/10分の範囲である。
[3]エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンから選択される少なくとも1種が、エチレンである、[1]又は[2]に記載のプロピレン系重合体組成物。
[4]バイオマスポリエチレン(b)が直鎖状低密度ポリエチレンである、[1]~[3]のいずれか1つに記載のプロピレン系重合体組成物。
[5][1]~[4]のいずれか1つに記載のプロピレン系重合体組成物100重量部に対して、造核剤を0.01~0.6重量部含有する、プロピレン系重合体組成物。
[6][1]~[5]のいずれか1つに記載のプロピレン系重合体組成物を含む成形品。
【発明の効果】
【0008】
本発明のバイオマス度が8.4~49%であるプロピレン系重合体組成物を用いて製造した成形品は、環境負荷低減に寄与し、バイオマスポリエチレンを含有しても剛性及び耐衝撃性に優れ、割れない成形品を与えるため有用である。特に前記組成物の射出成形品は、その特性を生かして各種の工業製品に適用することができるので、非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、120mm×120mm×2mmの射出試験片に切り込みを入れて実施するMD及びTD方向の割れ試験の図である。
図2図2は、プロピレン-エチレンランダムブロック共重合体の温度昇温溶離分別(TREF)測定における溶出量及び溶出量積算の結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のプロピレン系重合体組成物は、プロピレンと、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンから選択される少なくとも1種とのブロック共重合体(a)51~95重量部、並びにバイオマスポリエチレン(b)5~49重量部を含有する、合計100重量部であって、
前記ブロック共重合体(a)が下記条件(A-i)及び(A-ii)を満たし、プロピレン系重合体組成物のバイオマス度が8.4~49%である。
(A-i)エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンの含有量が5重量%超30重量%以下の範囲である。
(A-ii)JIS K7210に準拠し、230℃及び2.16kg荷重で測定したメルトフローレートが0.5~100g/10分の範囲である。
プロピレン系重合体組成物は、環境負荷低減に寄与し、剛性及び耐衝撃性に優れ、割れない成形品を与えることができる。以下、プロピレン系重合体組成物及び成形品について、詳細に説明する。
【0011】
<プロピレンと、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンから選択される少なくとも1種とのブロック共重合体(a)>(以下、ブロック共重合体(a)ともいう。)
ブロック共重合体(a)は、プロピレンと、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンから選択される少なくとも1種との共重合体であり、プロピレンの重合部分がブロックを構成する。プロピレン系重合体組成物がブロック共重合体(a)を含むことにより、バイオマスポリエチレンを含有しても剛性及び耐衝撃性に優れ、割れない成形品を与えることができる。
炭素数4以上のα-オレフィンとしては、炭素数4~20のα-オレフィンが挙げられ、例えば1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン等を例示できる。プロピレンと共重合されるエチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンから選択される少なくとも1種は、一種類でも二種類以上であってもよい。このうち、エチレン及び1-ブテンが好ましく、エチレンがより好ましい。ブロック共重合体(a)は、一種単独でも二種以上併用してもよい。
【0012】
ブロック共重合体(a)の具体的な例としては、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-1-オクテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-1-ブテン-1-オクテン共重合体等のような、プロピレンに共単量体を任意に組み合わせた二元又は三元共重合体が例示できる。なかでも、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体及びプロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体が好ましく、剛性及び耐衝撃性に優れ、割れない成形品を得るという観点からはプロピレン-エチレン共重合体が、各種物性の調整が容易であるため、より好ましい。
【0013】
ブロック共重合体(a)は、下記条件(A-i)を満たす。
(A-i)エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンの含有量が5重量%超30重量%以下の範囲である。
エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンの含有量を30重量%以下とすることにより、得られる成形品の剛性を向上させることが可能となり、5重量%超とすることにより、成形品の耐衝撃性を向上させることが可能となる。エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンの含有量は、5.5重量%超20重量%以下であることが好ましく、6.0重量%超15重量%以下であることがより好ましく、6.5重量%超10重量%以下であることが特に好ましい。また、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンの含有量は、5重量%超20重量%以下、5.0重量%超15重量%以下、又は5.0重量%超10重量%以下であることができる。
【0014】
ブロック共重合体(a)は、下記条件(A-ii)を満たす。
(A-ii)JIS K7210に準拠し、230℃及び2.16kg荷重で測定したメルトフローレートが0.5~100g/10分の範囲である。
ブロック共重合体(a)のメルトフローレートが0.5g/10分以上であると、成形加工性が向上し、成形品として満足できる性能を達成でき、100g/10分以下であると、成形品の機械的強度を向上させることができる。ブロック共重合体(a)のメルトフローレートは、5~60g/10分であることが好ましく、10~40g/10分であることがより好ましい。
【0015】
得られる成形品の剛性及び耐衝撃性のバランスの観点から、ブロック共重合体(a)は、プロピレンと、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンから選択される少なくとも1種とのランダム共重合体であって、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンの含有量が5重量%以下であるランダム共重合体、又はプロピレン単独重合体(ac-1)、並びに、プロピレンと、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンから選択される少なくとも1種とのランダム共重合体であって、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンの含有量が15~85重量%の範囲であるランダム共重合体(ac-2)からなる多段重合体であると好ましい。
炭素数4以上のα-オレフィンとしては、炭素数4~20のα-オレフィンが挙げられ、例えば1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン等を例示できる。エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンから選択される少なくとも1種は、一種類でも二種類以上であってもよい。このうち、エチレン及び1-ブテンが好ましく、エチレンがより好ましい。(ac-1)及び(ac-2)は、それぞれ、一種単独でも二種以上併用してもよい。
【0016】
成形品の剛性の観点から、(ac-1)は、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンの含有量が5重量%以下のランダム共重合体、又はプロピレン単独重合体であることが好ましく、エチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンの含有量が1重量%以下のランダム共重合体、又はプロピレン単独重合体であることがより好ましく、プロピレン単独重合体であることが特に好ましい。
【0017】
(ac-1)がプロピレン単独重合体の場合は、立体規則性の指標であるアイソタクチックペンタッド分率は0.90以上が好ましく、より好ましくは0.94~0.98である。アイソタクチックペンタッド分率が0.90以上であると、成形品の剛性が向上する。ここで、アイソタクチックペンタッド分率は、13C-NMRを用いたプロトンデカップリング法で測定する値である。
【0018】
成形品の耐衝撃性を向上させ、割れを抑制する観点から、(ac-2)のエチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンの含有量は、15~85重量%であることがより好ましく、20~75重量%であることがさらに好ましく、35~70重量%であることが特に好ましい。
【0019】
(ac-1)及び(ac-2)におけるランダム共重合体の具体的な例としては、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-1-オクテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-1-ブテン-1-オクテン共重合体等のような、プロピレンに共単量体を任意に組み合わせた二元又は三元共重合体が例示できる。なかでも、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体及びプロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体が好ましく、プロピレン-エチレン共重合体がより好ましい。
【0020】
ブロック共重合体(a)が、(ac-1)及び(ac-2)からなる多段重合体である場合、ブロック共重合体(a)は、下記条件(AC-i)~(AC-iii)を満たすことが好ましい。
(AC-i)(ac-1)と(ac-2)との割合は、(ac-1)が40~95重量部、及び(ac-2)が5~60重量部の合計100重量部である。
(AC-ii)JIS K7210に準拠し、230℃及び2.16kg荷重で測定した(ac-1)のメルトフローレートが、0.5~350g/10分の範囲である。
(AC-iii)JIS K7210に準拠し、230℃及び2.16kg荷重で測定した(ac-2)のメルトフローレートが、0.001~0.5g/10分の範囲である。
【0021】
(ac-1)と(ac-2)との割合は、(ac-1)が40~95重量部、及び(ac-2)が5~60重量部の合計100重量部であると好ましく;(ac-1)が65~95重量部、及び(ac-2)が5~35重量部であるとより好ましく;(ac-1)が87~93重量部、及び(ac-2)が7~13重量部であるとさらに好ましく、(ac-1)が90~93重量部、及び(ac-2)が7~10重量部であると特に好ましい。(ac-2)が5重量部以上であると、成形品の耐衝撃性が向上しやすく、(ac-2)が60重量部以下であると、成形品の剛性が向上しやすい。
【0022】
(ac-1)のメルトフローレート(MFR)は、0.5~350g/10分であることが好ましく、5~150g/10分であるとより好ましく、10~100g/10分であるとさらに好ましい。(ac-1)のメルトフローレートが0.5g/10分以上であると、成形加工性が向上し、成形品として満足できる性能を達成しやすく、350g/10分以下であると、成形品の機械的強度を向上させやすい。
【0023】
(ac-2)のメルトフローレート(MFR)は、0.001~0.5g/10分であることが好ましく、0.01~0.4g/10分であるとより好ましく、0.01~0.3g/10分であるとさらに好ましく、0.02~0.3g/10分であると特に好ましい。(ac-2)のメルトフローレートが0.001g/10分以上であると、成形加工性が向上し、成形品として満足できる性能を達成しやすく、0.5g/10分以下であると、成形品の機械的強度を向上させやすい。
【0024】
なお、(ac-2)のメルトフローレート(MFR)は、ブロック共重合体(a)及び(ac-1)のメルトフローレート(MFR)、並びにブロック共重合体(a)中の(ac-1)及び(ac-2)の含有割合から、以下に示す式を用いて算出することができる。
Log[ブロック共重合体(a)のMFR]=[(ac-1)の含有割合]×Log[(ac-1)のMFR]+[(ac-2)の含有割合]×Log[(ac-2)のMFR]
本明細書において、(ac-2)のメルトフローレート(MFR)は、上記式から算出されるものであるが、算出に用いるブロック共重合体(a)及び(ac-1)のメルトフローレートは、JIS K7210に準拠し、230℃及び2.16kg荷重で測定したものであるため、(ac-2)のメルトフローレート(MFR)も、同規格に準拠して測定したものと定義する。
【0025】
ブロック共重合体(a)、(ac-1)及び(ac-2)のメルトフローレート(MFR)は、重合条件である温度及び圧力を調節したり、水素等の連鎖移動剤を重合時に添加する方法における水素添加量の制御により、容易に調整を行なうことができる。
【0026】
ブロック共重合体(a)及び(ac-1)において、プロピレン並びにエチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンの各含有量は、例えば下記の条件の13C-NMR法によって計測することができる。
装置:日本電子(株)製 JEOL-GSX270
濃度:300mg/2mL
溶媒:オルソジクロロベンゼン
また、プロピレン-エチレン共重合体の場合、プロピレン及びエチレンの含有量は、実施例に記載のとおり、13C-NMR法により組成を検定した基準物質を用いて、赤外分光法により作成した検量線に基づき、赤外分光法によって計測することができる。
【0027】
ランダム共重合体(ac-2)のエチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンの含有量は、上記のようにして求めたブロック共重合体(a)及び(ac-1)のエチレン及び炭素数4以上のα-オレフィンの含有量、並びにブロック共重合体(a)中の(ac-1)及び(ac-2)の含有割合から算出することができる。
【0028】
[(ac-1)及び(ac-2)の含有量の算出]
ブロック共重合体(a)が(ac-1)及び(ac-2)からなる多段重合体である場合、(ac-1)及び(ac-2)の各含有量は、製造時の物質収支(マテリアルバランス)によって特定することも可能であるが、より正確にこれらを特定するために、温度昇温溶離分別(TREF)を用いて算出することができる。
【0029】
以下、代表例としてプロピレン-エチレンランダム共重合体の評価法について説明するが、プロピレンと、炭素数4以上のα-オレフィンとのランダム共重合体についても、同様に評価できる。プロピレン-エチレンランダム共重合体の結晶性分布をTREFにより評価する手法は、当業者によく知られるものであり、例えば、次の文献等で詳細な測定法が示されている。
G.Glockner,J.Appl.Polym.Sci.:Appl.Polym.Symp.;45,1-24(1990)
L.Wild,Adv.Polym.Sci.;98,1-47(1990)
J.B.P.Soares,A.E.Hamielec,Polymer;36,8,1639-1654(1995)
【0030】
プロピレン-エチレンブロック共重合体(a)において、(ac-1)及び(ac-2)の結晶性に大きな違いがあることから、双方をTREFにより精度良く判別することが可能である。
【0031】
具体的な方法を、図2を用いて説明する。図2は、プロピレン-エチレンランダムブロック共重合体のTREF測定における溶出量及び溶出量積算の結果の一例を示す図である。TREF溶出曲線(温度に対する溶出量のプロット)において、(ac-1)及び(ac-2)は結晶性の違いにより、各々T(β)及びT(α)にその溶出ピークを示し、その差は十分大きいため、中間の温度T(C)(={T(α)+T(β)}/2)においてほぼ分離が可能である。
【0032】
TREF測定温度の下限は、本測定に用いた装置では-15℃であるが、成分(α)の結晶性が非常に低い又は非晶性成分の場合には、本測定方法において、測定温度範囲内にピークを示さない場合がある。(この場合には、測定温度下限(すなわち-15℃)において溶媒に溶解した成分(α)の濃度は検出される。)
このとき、T(α)は測定温度下限以下に存在するものと考えられるが、その値を測定することができないため、このような場合にはT(α)を測定温度下限である-15℃と定義する。ここで、T(C)までに溶出する成分の積算量をW(α)重量%、T(C)以上で溶出する成分の積算量をW(β)重量%と定義すると、W(α)は結晶性が低い又は非晶性の成分(α)、すなわち(ac-2)の量とほとんど対応しており、W(β)は結晶性が比較的高い成分(β)、すなわち(ac-1)の量とほぼ対応している。TREFによって得られる溶出量曲線、並びにそこから求められる上記の各種の温度及び量の算出の方法は、図2に例示するように行う。
【0033】
[ブロック共重合体(a)の触媒]
ブロック共重合体(a)の合成に用いる触媒としては、特に限定されないが、立体規則性触媒を使用することが好ましい。立体規則性触媒としては、チーグラー触媒、メタロセン触媒等が挙げられる。
【0034】
チーグラー触媒としては、三塩化チタン、四塩化チタン、トリクロロエトキシチタン等のハロゲン化チタン化合物、前記ハロゲン化チタン化合物とハロゲン化マグネシウムに代表されるマグネシウム化合物との接触物等の遷移金属成分と;アルキルアルミニウム化合物又はそれらのハロゲン化物、水素化物、アルコキシド等の有機金属成分との2成分系触媒、さらにそれらの成分に窒素、炭素、リン、硫黄、酸素、ケイ素等を含む電子供与性化合物を加えた3成分系触媒が挙げられる。
【0035】
メタロセン触媒としては、担持型のものが好ましい。
担持型メタロセン触媒の特に好ましい例としては、担体が助触媒の機能を兼ねたイオン交換性層状珪酸塩であるメタロセン触媒が挙げられる。このようなメタロセン触媒は、具体的には、以下に述べる成分[A]、成分[B]及び必要に応じて添加される成分[C]を組み合わせて得られる。
【0036】
・成分[A]:メタロセン錯体
共役五員環配位子を少なくとも一個有する周期表第4~6族の遷移金属化合物
・成分[B]:助触媒
イオン交換性層状珪酸塩
・成分[C]:有機アルミニウム化合物
【0037】
・成分[A]:メタロセン錯体
成分[A]としては、具体的には、次の式[I]で表される化合物を使用することができる。成分[A]は、一種単独でも二種以上併用してもよい。
Q(C4-a )(C4-b )MXY ・・・[I]
式[I]において、Qは、二つの共役五員環配位子を架橋する結合性基を表す。
Mは、周期表第4~6族の遷移金属を表し、中でもチタン、ジルコニウム及びハフニウムが好ましい。
X及びYは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20の酸素含有炭化水素基、炭素数1~20の窒素含有炭化水素基、炭素数1~20のリン含有炭化水素基又は炭素数1~20の珪素含有炭化水素基を示す。
【0038】
及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~20の炭化水素基、ハロゲン、炭素数1~20のハロゲン含有炭化水素基、アルコキシ基、アリールオキシ基、珪素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基又はホウ素含有炭化水素基を示す。また、隣接する2個のR又は2個のRがそれぞれ結合してC~C10環を形成していてもよい。特に、6員環又は7員環を形成して、上記共役五員環と共に、インデン環又はアズレン環を形成することが好ましい。
a及びbは、0≦a≦4、0≦b≦4を満足する整数である。
2個の共役五員環配位子の間を架橋する結合性基Qは、例として、アルキレン基、アルキリデン基、シリレン基、ゲルミレン基等が挙げられる。これらは水素原子がアルキル基、ハロゲン等で置換されたものであってもよい。特には、シリレン基が好ましい。
【0039】
メタロセン錯体として、具体的には次の化合物を好ましく挙げることができる。
(1)メチレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド
(2)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,4-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド
(3)イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(3,4-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド
(4)エチレン(シクロペンタジエニル)(3,5-ジメチルペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド
(5)メチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド
(6)エチレンビス(2-メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド
(7)エチレン1,2-ビス(4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド
(8)エチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド
【0040】
(9)ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド
(10)ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド
(11)ジメチルシリレンビス(4,5,6,7-テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド
(12)ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド
(13)ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(オクタヒドロフルオレニル)ジルコニウムジクロリド
(14)メチルフェニルシリレンビス[1-(2-メチル-4,5-ベンゾ(インデニル)]ジルコニウムジクロリド
(15)ジメチルシリレンビス[1-(2-メチル-4,5-ベンゾインデニル)]ジルコニウムジクロリド
(16)ジメチルシリレンビス[1-(2-メチル-4H-アズレニル)]ジルコニウムジクロリド
(17)ジメチルシリレンビス[1-(2-メチル-4-(4-クロロフェニル)-4H-アズレニル)]ジルコニウムジクロリド
(18)ジメチルシリレンビス[1-(2-エチル-4-(4-クロロフェニル)-4H-アズレニル)]ジルコニウムジクロリド
(19)ジメチルシリレンビス[1-(2-エチル-4-ナフチル-4H-アズレニル)]ジルコニウムジクロリド
【0041】
(20)ジフェニルシリレンビス[1-(2-メチル-4-(4-クロロフェニル)-4H-アズレニル)]ジルコニウムジクロリド
(21)ジメチルシリレンビス[1-(2-メチル-4-(フェニルインデニル))]ジルコニウムジクロリド
(22)ジメチルシリレンビス[1-(2-エチル-4-(フェニルインデニル))]ジルコニウムジクロリド
(23)ジメチルシリレンビス[1-(2-エチル-4-ナフチル-4H-アズレニル)]ジルコニウムジクロリド
(24)ジメチルゲルミレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド
(25)ジメチルゲルミレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド
また、チタニウム化合物、ハフニウム化合物等の他の第4、5及び6族遷移金属化合物についても上記と同様の化合物が好ましく挙げられる。本発明の触媒成分及び触媒については、これらの化合物を併用してもよい。
【0042】
・成分[B]:助触媒(イオン交換性層状珪酸塩)
イオン交換性層状珪酸塩は、天然産のものに限らず、人工合成物であってもよい。イオン交換性層状珪酸塩として粘土化合物を使用することができ、粘土化合物の具体例としては、例えば、白水春雄著「粘土鉱物学」朝倉書店(1995年)に記載されている次のような層状珪酸塩が挙げられる。
(ア)1:1型構造が主要な構成層であるディッカイト、ナクライト、カオリナイト、アノーキサイト、メタハロイサイト、ハロイサイト等のカオリン族、クリソタイル、リザルダイト、アンチゴライト等の蛇紋石族
(イ)2:1型構造が主要な構成層であるモンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト等のスメクタイト族、バーミキュライト等のバーミキュライト族、雲母、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母族、アタパルジャイト、セピオライト、パリゴルスカイト、ベントナイト、パイロフィライト、タルク、緑泥石群
【0043】
本発明で使用する珪酸塩は、上記(ア)及び(イ)の混合層を形成した層状珪酸塩であってもよい。
本発明においては、主成分の珪酸塩が2:1型構造を有する珪酸塩であることが好ましく、スメクタイト族であることがさらに好ましく、モンモリロナイトであることが特に好ましい。主成分とは最も多い成分を意味する。成分[B]は、一種単独でも二種以上併用してもよい。
【0044】
これら珪酸塩を酸、塩、アルカリ、酸化剤、還元剤、有機溶剤等で化学処理することにより活性向上を図ることができる。
酸処理は、イオン交換性層状珪酸塩粒子の表面の不純物を除く、又は層間陽イオンの交換を行うほか、結晶構造のAl、Fe、Mg等の陽イオンの一部又は全部を溶出させることができる。
酸処理で用いられる酸としては、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸が挙げられるが、特に好ましくは硫酸である。
酸処理条件に特に制限はないが、好ましくは5~50重量%の酸の水溶液を60~100℃の温度で1~24時間反応させるような条件であり、その途中で酸の濃度を変化させてもよい。酸処理した後、通常洗浄が行われる。洗浄とは処理系内に含まれる酸をイオン交換性層状珪酸塩から分離除去する操作である。
【0045】
塩類処理で用いられる塩類としては、特定の陽イオンを含有するものを選択して使用することが好ましい。陽イオンの種類については1から4価の金属陽イオンが好ましく、特にLi、Ni、Zn及びHfの陽イオンが好ましい。
具体的な塩類としては、次のものを例示することができる。
陽イオンがLiのものとしては、LiCl、LiBr、LiSO、Li(PO)、Li(ClO)、Li(C)、LiNO、Li(OOCCH)、Li(C)等を挙げることができる。
陽イオンがNiのものとしては、NiCO、Ni(NO、NiC、Ni(ClO、NiSO、NiCl、NiBr等を挙げることができる。
陽イオンがZnのものとしては、Zn(OOCCH、Zn(CHCOCHCOCH、ZnCO、Zn(NO、Zn(ClO、Zn(PO、ZnSO、ZnF、ZnCl、ZnBr、ZnI等を挙げることができる。
陽イオンがHfのものとしては、Hf(OOCCH、Hf(CO、Hf(NO、Hf(SO、HfOCl、HfF、HfCl、HfBr、HfI等を挙げることができる。
【0046】
化学処理後は、乾燥を行うが、一般的には、乾燥温度は100~800℃で実施可能であり、構造破壊を生じるような高温条件(加熱時間にもよるが、例えば800℃以上)は好ましくない。構造破壊されなくとも乾燥温度により特性が変化するために、用途に応じて乾燥温度を変えることが好ましい。乾燥時間は、通常1分~24時間、好ましくは5分~4時間であり、雰囲気は乾燥空気、乾燥窒素、乾燥アルゴン、又は減圧下である。乾燥方法に関しては特に限定されず各種方法で実施可能である。
【0047】
・成分[C]:有機アルミニウム化合物
成分[C]の有機アルミニウム化合物は、必要に応じて任意的に使用される成分であり、下記式[II]で示される化合物が最適である。
(AlR 3-p・・・[II]
式[II]中、Rは、炭素数1~20の炭化水素基を示し、Xは、ハロゲン、水素、アルコキシ基又はアミノ基を示す。pは1~3の整数、qは1~2の整数である。
としては、アルキル基が好ましく、またXは、それがアルコキシ基の場合には炭素数1~8のアルコキシ基が、アミノ基の場合には炭素数1~8のアミノ基が好ましい。
これらのうち、好ましくは、p=3、q=1のトリアルキルアルミニウム並びにp=2、q=1及びX=水素のジアルキルアルミニウムヒドリドである。さらに好ましくは、Rが炭素数1~8であるトリアルキルアルミニウムである。
【0048】
有機アルミニウム化合物は、単独又は複数種混合して使用することができる。また、有機アルミニウム化合物は、触媒調製時だけでなく、予備重合又は本重合時にも添加して使用することができる。
【0049】
[ブロック共重合体(a)の製造方法]
ブロック共重合体(a)の製造方法としては、上記触媒の存在下に、不活性溶媒を用いたスラリー重合法、溶液重合法、実質的に溶媒を用いない気相重合法又は重合モノマーを溶媒とするバルク重合法等が挙げられる。
例えば、スラリー重合法の場合には、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の不活性炭化水素又は液状モノマー中で行うことができる。重合温度は、通常-80~150℃であり、好ましくは40~120℃である。重合圧力は、1~60気圧(0.10~6.08MPa)が好ましく、また得られるブロック共重合体(a)の分子量の調節は、水素又は他の公知の分子量調節剤で行うことができる。重合は連続式又はバッチ式反応で行い、その条件は通常用いられている条件でよい。さらに重合反応は一段で行ってもよく、多段で行ってもよい。ブロック共重合体(a)が多段重合体である場合、前記(ac-1)及び(ac-2)からなる多段重合体であることが好ましい。
メタロセン触媒を用いる場合は、本重合が行われる前に予備重合処理することが望ましい。予備重合に供されるモノマーとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン等のα-オレフィン、1,3-ブタジエン等のジエン化合物、スチレン、ジビニルベンゼン等のビニル化合物を用いることができる。
この予備重合は、不活性溶媒中で穏和な条件で行うことが好ましく、固体触媒(成分[A]と成分[B]の合計)1g当たり、0.01~1,000g、好ましくは0.1~100gの重合体が生成するように行うことが望ましい。
【0050】
重合反応は、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、シクロヘキサン等の不活性炭化水素、液化α-オレフィン等の溶媒存在下、又は不存在下に行われる。本発明においては、固体触媒(固体触媒を予備重合処理した場合は、予備重合で生成した重合体を含まない。)当たりのポリマー生成量をできるだけ大きくすることが望ましい。ポリマー生成量を大きくするために、重合温度及び重合圧力はいずれも高めに設定することが望ましい。
【0051】
通常、重合温度は60~90℃、重合圧力は1.5~4MPa程度から選択される。特に、バルク重合法の場合、重合温度は60~80℃で、重合圧力は温度と相関して2.5~4MPa程度から選択することが好ましい。一方、気相重合法の場合は、重合温度は70~90℃で、重合圧力は1.5~4MPa程度から選択することが好ましい。
さらに、固体触媒の滞留時間を長くすることによっても、固体触媒当たりのポリマー生産量を上げることが可能であるが、あまり長くし過ぎると生産性に影響を与える。好ましい滞留時間は、1~8時間、さらに好ましくは1~6時間である。担体を含めた固体触媒1g当たりのポリマー生産量は20kg以上、好ましくは25kg以上、さらに好ましくは30kg以上となるように、重合条件を設定することが望ましい。
また、重合系内に分子量調節剤として水素を存在させてもよい。さらに、重合温度、分子量調節剤の濃度等を変えて多段階で重合させてもよい。
【0052】
本発明においては、重合終了後、得られたブロック共重合体(a)を、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の不活性飽和炭化水素溶剤、液状α-オレフィン等を用いて、さらに好ましくは炭素数3又は4の不活性炭化水素溶剤又は液状α-オレフィンを用いて、洗浄を行うことが好ましい。
洗浄方法としては、特に制限はなく、撹拌槽での接触処理後上澄みのデカンテーション、向流洗浄、サイクロンによる洗浄液との分離等、公知の方法を用いることができる。
また、洗浄前又は洗浄と同時に、失活剤を添加してもよい。失活剤に関しては、特に制限はなく、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等、又はこれらの混合物を用いることができる。
ブロック共重合体(a)としては、市販のものを用いることができ、例えば、日本ポリプロ(株)製の商品名:ノバテック(登録商標)PP(NOVATEC PP)等を挙げることができる。
【0053】
<バイオマスポリエチレン(b)>
バイオマスポリエチレン(b)の代表的な原料モノマーである植物由来エチレンは、サトウキビ等の植物原料に微生物を作用させて発酵させることにより生成したエタノールを、触媒存在下で加熱して分子内脱水反応を行うことにより得ることができる。
バイオマスポリエチレン(b)は、植物由来エチレンを主成分として含むモノマーを重合させて得られたポリマーである。バイオマスポリエチレン(b)の原料モノマーは、植物由来エチレンを100%含むものでなくてもよい。例えば、従来公知の石油由来エチレンモノマーの一部を植物由来エチレンとすることによっても、環境負荷を低減することができるためである。
バイオマスポリエチレン(b)としては、植物由来エチレンを単独重合させて得られたホモポリマーや、植物由来エチレンとα-オレフィンとを共重合させて得られたコポリマーを使用することもできる。α-オレフィンの炭素数は特に限定されないが、1-ブテン、1-ヘキセン又は1-オクテンであることが好ましい。さらに、石油由来エチレンを含んでいてもよい。
【0054】
バイオマスポリエチレン(b)として用いられるポリエチレンとしては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)及び直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を挙げることができる。これらのポリエチレンは、1種又は2種以上をブレンドして用いることができる。
高密度ポリエチレンの密度としては、好ましくは0.940~0.965g/cmであり、この範囲であると、成形品の剛性が向上し好ましい。また、中密度ポリエチレンの密度としては、好ましくは0.925~0.940g/cmであり、この範囲であると成形品の剛性が向上し好ましい。
低密度ポリエチレン又は直鎖状低密度ポリエチレンを用いた場合、成形品の透明性及び耐衝撃性の改良効果が十分となる。
低密度ポリエチレンの密度としては、好ましくは0.910~0.920g/cmであり、より好ましくは0.913~0.917g/cmである。密度が0.910g/cm以上であると剛性が向上し好ましく、密度が0.920g/cm以下であると透明性及び耐衝撃性の改良効果が十分となり好ましい。
また、直鎖状低密度ポリエチレンの密度としては、好ましくは0.895~0.925g/cmであり、より好ましくは0.900~0.917g/cmである。密度が0.895g/cm以上であると剛性が向上し好ましく、密度が0.925g/cm以下であると透明性及び耐衝撃性の改良効果が十分となり好ましい。割れない成形品を与えるということに関しては、直鎖状低密度ポリエチレンが最も好ましい。
【0055】
バイオマスポリエチレン(b)中の全炭素量に対する植物由来の炭素の割合は、バイオマス度と呼ばれ、バイオマスポリエチレン(b)中に含まれる14Cの濃度を測定することによって求めることができる。すなわち、大気中には一定割合の14Cが含まれる一方、石油由来の樹脂の炭素には14Cが含まれていないことから、バイオマスポリエチレン(b)中に含まれる14Cの濃度を測定することによってバイオマス度を求めることができる。具体的に、バイオマスポリエチレン(b)中の炭素が全て石油由来である場合にはバイオマス度は0%となり、バイオマスポリエチレン(b)中の炭素が全て植物由来である場合にはバイオマス度は100%となる。この14Cの濃度を測定する試験方法としてはASTM D6866が挙げられる。
バイオマスポリエチレン(b)は、得られるプロピレン系重合体組成物の成形性等の観点から、ASTM D1238(190℃、2.16kg荷重)に準拠したメルトフローレートが0.1~72g/10分の範囲のものが好ましく用いられ、0.21~72g/10分の範囲のものがより好ましい。
【0056】
バイオマスポリエチレン(b)の市販品としては、例えば「Green PE」シリーズ(Braskem社製商品名)が挙げられる。
【0057】
<<プロピレン系重合体組成物>>
プロピレン系重合体組成物は、ブロック共重合体(a)51~95重量部、及びバイオマスポリエチレン(b)5~49重量部を含有する、合計100重量部である。プロピレン系重合体組成物は、ブロック共重合体(a)51~90重量部、及びバイオマスポリエチレン(b)10~49重量部を含有する、合計100重量部であることが好ましく、ブロック共重合体(a)55~90重量部、及びバイオマスポリエチレン(b)10~45重量部を含有する、合計100重量部であることがより好ましく、プロピレン系重合体組成物は、ブロック共重合体(a)60~90重量部、及びバイオマスポリエチレン(b)10~40重量部を含有する、合計100重量部であることがさらに好ましい。バイオマスポリエチレン(b)が5重量部以上であると、環境負荷低減効果が期待でき、49重量部以下であると、成形品の剛性が十分に得られる。
【0058】
バイオマスポリエチレン(b)が高密度ポリエチレンである場合、プロピレン系重合体組成物は、ブロック共重合体(a)75~95重量部、及びバイオマスポリエチレン(b)5~25重量部を含有する、合計100重量部であることが好ましく、ブロック共重合体(a)80~90重量部、及びバイオマスポリエチレン(b)10~20重量部を含有する、合計100重量部であることがより好ましい。
バイオマスポリエチレン(b)が直鎖状低密度ポリエチレンである場合、プロピレン系重合体組成物は、ブロック共重合体(a)51~80重量部、及びバイオマスポリエチレン(b)20~49重量部を含有する、合計100重量部であることが好ましく、ブロック共重合体(a)51~70重量部、及びバイオマスポリエチレン(b)30~49重量部を含有する、合計100重量部であることがより好ましい。
【0059】
プロピレン系重合体組成物のバイオマス度は、8.4~49%であり、好ましくは8.8~45%、より好ましくは9.0~40%、さらに好ましくは9.0~30%である。バイオマス度が8.4%以上であると、環境負荷低減効果が期待でき、49%以下であると、成形品の剛性が十分に得られる。
【0060】
プロピレン系重合体組成物のバイオマス度(%)は、下記の数式により算出される数値である。
バイオマス度(%)=[{A×(B÷100)}/C]×100 ・・・数式(1)
A:バイオマスポリエチレン(b)の重量
B:バイオマスポリエチレン(b)のバイオマス度(%)
C:プロピレン系重合体組成物の重量
なお、バイオマスポリエチレン(b)のバイオマス度(%)は、ASTM D6866に従い測定し、算出できる。
【0061】
<造核剤>
成形品の剛性向上の観点から、プロピレン系重合体組成物は、造核剤を含有すると好ましい。公知の造核剤が使用可能であり、例えば、立体障害性アミド化合物、有機ジカルボン酸金属塩、有機モノカルボン酸金属塩、芳香族カルボン酸系の化合物若しくはその誘導体、ソルビトール系化合物若しくはその誘導体、ノニトール系化合物若しくはその誘導体、ジテルペン酸類の金属塩又はポリマー核剤、含水珪酸マグネシウム等が挙げられる。なかでも、芳香族カルボン酸系の化合物が好ましく、ヒドロキシ-ジ-P-タ-シャリ-ブチル安息香酸アルミニウム又は含水珪酸マグネシウムがより好ましい。
【0062】
造核剤の含有量は、プロピレン系重合体組成物100重量部に対して、好ましくは0.01~0.6重量部、より好ましくは0.05~0.5重量部、さらに好ましくは0.1~0.4重量部、特に好ましくは0.1~0.3重量部の範囲である。造核剤の含有量は、0.10~0.4重量部又は0.10~0.3重量部の範囲であることができる。造核剤の含有量が0.01重量部以上であると、成形品の剛性の発現が期待でき、0.6重量部以下であると、成形品表面へのブリードの懸念が少なくなり、剛性についての費用対効果(コスト・パフォーマンス)及び溶出性の点から有利である。
【0063】
<その他の添加剤>
プロピレン系重合体組成物は、上述した成分に加えて、プロピレン系重合体の安定剤等として使用されている各種酸化防止剤や、紫外線吸収剤、光安定剤、中和剤等の添加剤を配合することができる。
酸化防止剤、紫外線吸収剤及び光安定剤の含有量は、それぞれ、プロピレン系重合体組成物100重量部に対して、好ましくは0.01~1重量部、より好ましくは0.02~0.5重量部、さらに好ましくは0.03~0.2重量部の範囲である。
中和剤の含有量は、プロピレン系重合体組成物100重量部に対して、好ましくは0.01~0.5重量部、より好ましくは0.03~0.2重量部、さらに好ましくは0.05~0.1重量部の範囲である。
【0064】
酸化防止剤としては、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジ-フォスファイト、ジ-ステアリル-ペンタエリスリトール-ジ-フォスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジ-フォスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレン-ジ-フォスフォナイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチル-5-メチルフェニル)-4,4’-ビフェニレン-ジ-フォスフォナイト等のリン系酸化防止剤、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシルフェニル)プロピオネート]メタン、テトラキス[メチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ハイドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ハイドロキシベンジル)イソシアヌレート等のフェノール系酸化防止剤、ジ-ステアリル-β,β’-チオ-ジ-プロピオネート、ジ-ミリスチル-β,β’-チオ-ジ-プロピオネート、ジ-ラウリル-β,β’-チオ-ジ-プロピオネート等のチオ系酸化防止剤等が挙げられる。
【0065】
紫外線吸収剤としては、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール等の紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0066】
光安定剤としては、n-ヘキサデシル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、2,4-ジ-t-ブチルフェニル-3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンゾエート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピぺリジル)セバケート、コハク酸ジメチル-2-(4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジル)エタノール縮合物、ポリ{[6-〔(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ〕-1,3,5-トリアジン-2,4ジイル]〔(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ〕}、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン-2,4-ビス〔N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ〕-6-クロロ-1,3,5-トリアジン縮合物等の光安定剤を挙げることができる。
【0067】
さらに、耐NOxガス変色性が良好な下記式(2)及び下記式(3)で表されるアミン系酸化防止剤、5,7-ジ-t-ブチル-3-(3,4-ジ-メチル-フェニル)-3H-ベンゾフラン-2-オン等のラクトン系酸化防止剤、下記式(4)等のビタミンE系酸化防止剤等を、本願発明の効果を阻害しない範囲で使用することができる添加剤として挙げることができる。
【化1】

【化2】

【化3】
【0068】
中和剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の金属脂肪酸塩;ハイドロタルサイト、例えば、商品名:DHT-4A(協和化学工業(株)製)の下記式(5)で表されるマグネシウムアルミニウム複合水酸化物塩;ミズカラック(登録商標)(水澤化学工業(株)製)の下記式(6)で表されるリチウムアルミニウム複合水酸化物塩;等が挙げられる。
Mg1-xAl(OH)(COx/2・mHO …(5)
[式中、xは、0<x≦0.5であり、mは3以下の正の整数である。]
[AlLi(OH)X・mHO …(6)
[式中、Xは、無機又は有機のアニオンであり、nはアニオン(X)の価数であり、mは3以下の正の整数である。]
【0069】
さらに、プロピレン系重合体組成物は、既知の各種添加剤、例えば帯電防止剤、滑剤、分散剤、染料、顔料等を本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
【0070】
プロピレン系重合体組成物の性質、機能等の特性を損なわない範囲で、ブロック共重合体(a)及びバイオポリエチレン(b)以外の他の重合体、例えば、ポリエチレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリレート共重合体、アクリレート重合体、のような一元、二元及び三元共重合体を含有してもよい。他の重合体の含有量は、例えば、プロピレン系重合体組成物100重量部に対して、1~30重量部であることができる。同様に、天然ゴム、ブチルゴム、ジエン系ゴム、EPR、EPDMのような、エラストマーをブレンドすることも可能である。さらに、タルク、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、石膏、マイカのような汎用の無機フィラーを併用することも可能である。
【0071】
<<プロピレン系重合体組成物の製造方法>>
本発明のプロピレン系重合体組成物は、ブロック共重合体(a)、バイオマスポリエチレン(b)、並びに必要に応じて造核剤及びその他の添加剤の各所定量を、ヘンシェルミキサー(商品名)、スーパーミキサー、リボンブレンダー等に投入して混合した後、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、プラベンダー、ロール等で190~260℃の温度範囲で溶融混練することにより得ることができる。
【0072】
<<プロピレン系重合体組成物を含む成形品>>
本発明のプロピレン系重合体組成物を含む成形品は、プロピレン系重合体組成物を射出成形、押出成形、中空成形、真空成形、圧縮成形等の成形法により所望形状に成形することにより得られる。
【0073】
JIS K7171に準拠して測定される曲げ弾性率は、好ましくは700~2200MPaの範囲である。曲げ弾性率が700MPa以上であると射出成型時の金型からの離型性が良好となり、2200MPa以下であると成形品の耐衝撃性が良好となる。曲げ弾性率は、より好ましくは1000~2000MPaであり、さらに好ましくは1100~1900MPaであり、特に好ましくは1200~1900MPaである。
【0074】
JIS K7111に準拠して測定されるシャルピー衝撃強度は、好ましくは3.0kJ/m以上の範囲である。シャルピー衝撃強度が3.0kJ/m以上であると、成形品の輸送時の破損が抑制される。シャルピー衝撃強度は、より好ましくは3.5kJ/m以上であり、さらに好ましくは4.0kJ/m以上である。
【0075】
プロピレン系重合体組成物を含む成形品は、バイオマスポリエチレンを含有しても剛性及び耐衝撃性に優れ、割れないという優れた特徴を有する。成形品の用途としては、特に限定されないが、各種工業材料、自動車関連部品、医療向け及び化粧品向け等の各種容器、日用品、フィルム及び繊維等様々な用途に幅広く使用できる。
【実施例0076】
以下、本発明を実施例、比較例及び参考例を挙げて、詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例、比較例及び参考例において、プロピレン-エチレンブロック共重合体(a)及び(b)並びにプロピレン系重合体組成物の物性測定は下記の方法に従ったものである。
【0077】
<1.測定の方法>
(1)メルトフローレート(MFR):
プロピレン-エチレンブロック共重合体(a)及び(b)並びにプロピレン単独重合体(ac-1)及び(ac-1’)のメルトフローレート(MFR)は、JIS K7210に準拠し、230℃及び2.16kg荷重で測定した。
【0078】
プロピレン-エチレンランダム共重合体(ac-2)のメルトフローレート(MFR)は、ブロック共重合体(a)及び(ac-1)のメルトフローレート(MFR)、並びにブロック共重合体(a)中の(ac-1)及び(ac-2)の含有割合から、以下の式を用いて算出した。
Log[ブロック共重合体(a)のMFR]=[(ac-1)の含有割合]×Log[(ac-1)のMFR]+[(ac-2)の含有割合]×Log[(ac-2)のMFR]
プロピレン-エチレンランダム共重合体(ac-2’)のメルトフローレート(MFR)も同様に、ブロック共重合体(b)及び(ac-1’)のメルトフローレート(MFR)、並びにブロック共重合体(b)中の(ac-1’)及び(ac-2’)の含有割合から、上記式を用いて算出した。
【0079】
(2)プロピレン-エチレンブロック共重合体(a)のエチレン含有量の算出
13C-NMRによりエチレン含有量を検定したエチレン-プロピレンランダム共重合体を基準物質として用い、赤外分光測定を行い、720~730cm-1付近に現れるエチレン由来のピークから、吸光度-エチレン含有量についての検量線を作成した。こうして得た検量線を用い、プロピレン-エチレンブロック共重合体(a)及び(b)のエチレン含有量を算出した。赤外分光測定には、各共重合体のペレットをそれぞれプレス成形により約500μmの厚さのフィルムとしたものを用いた。
【0080】
プロピレン-エチレンランダム共重合体(ac-2)のエチレン含有量は、前記ブロック共重合体(a)のエチレン含有量、並びに前記ブロック共重合体(a)中の(ac-1)及び(ac-2)の含有割合から算出した。プロピレン-エチレンランダム共重合体(ac-2’)のエチレン含有量も同様に、前記ブロック共重合体(b)のエチレン含有量、並びに前記ブロック共重合体(b)中の(ac-1’)及び(ac-2’)の含有割合から算出した。
【0081】
(3)プロピレン-エチレンブロック共重合体(a)及び(b)の各成分量の算出
温度昇温溶離分別(TREF)を用いて、プロピレン-エチレンブロック共重合体(a)中のプロピレン単独重合体(ac-1)及びプロピレン-エチレンランダム共重合体(ac-2)の含有量、並びにプロピレン-エチレンブロック共重合体(b)中のプロピレン単独重合体(ac-1’)及びプロピレン-エチレンランダム共重合体(ac-2’)の含有量を算出した。装置及び測定条件は、以下のとおりである。
【0082】
[装置]
(TREF部)
TREFカラム:4.3mmφ×150mmステンレスカラム
カラム充填材:100μm 表面不活性処理ガラスビーズ
加熱方式:アルミヒートブロック
冷却方式:ペルチェ素子(ペルチェ素子の冷却は水冷)
温度分布:±0.5℃
温調器:(株)チノー製 デジタルプログラム調節計KP1000(バルブオーブン)
加熱方式:空気浴式オーブン
測定時温度:140℃
温度分布:±1℃
バルブ:6方バルブ 4方バルブ
【0083】
(試料注入部)
注入方式:ループ注入方式
注入量:ループサイズ 0.1ml
注入口加熱方式:アルミヒートブロック
測定時温度:140℃
【0084】
(検出部)
検出器:波長固定型赤外検出器 FOXBORO社製 MIRAN 1A
検出波長:3.42μm
高温フローセル:LC-IR用ミクロフローセル 光路長1.5mm 窓形状2φ×
4mm長丸 合成サファイア窓板
測定時温度:140℃
(ポンプ部)
送液ポンプ:センシュウ科学社製 SSC-3461ポンプ
【0085】
[測定条件]
溶媒:o-ジクロロベンゼン(0.5mg/mLのBHTを含む)
試料濃度:5mg/mL
試料注入量:0.1mL
溶媒流速 :1mL/分
【0086】
(4)曲げ弾性率
JIS K7171に準拠して、曲げ弾性率を測定した。
【0087】
(5)シャルピー衝撃強度
JIS K7111に準拠して、23℃のシャルピー衝撃強度を測定した。
【0088】
(6)MD及びTD方向の割れ試験
120mm×120mm×2mmの試験片を射出成形(成形温度:200℃、金型温度:40℃)により作製した。図1に示すように、試験片のMD及びTD方向に平行に、それぞれ、剪定ばさみで幅15mmとなるように長さ30mmほどの切り込みを2本入れ、その部分を手で折り曲げて、以下の基準で割れを評価した。
○:90度以上折り曲げた場合、割れ目(裂け目、クラック)又は白化が発生しても、いくつかの部分に分かれない(割れない)。
×:90度以上折り曲げるといくつかの部分に分かれる(割れる)。
【0089】
<2.樹脂、添加剤>
2-1.プロピレン-エチレンブロック共重合体(a)及び(b)の製造
(1)製造例1
(i)固体触媒成分(a-1)の製造
窒素置換した内容積50リットルの撹拌機付槽に脱水及び脱酸素したn-ヘプタン20リットルを導入し、次いで、塩化マグネシウム10モルとテトラブトキシチタン20モルとを導入して95℃で2時間反応させた後、温度を40℃に下げ、メチルヒドロポリシロキサン(粘度20センチストークス)12リットルを導入して、さらに3時間反応させた後、反応液を取り出し、生成した固体成分をn-ヘプタンで洗浄した。
引き続いて、前記撹拌機付槽を用いて該槽に脱水及び脱酸素したn-ヘプタン5リットルを導入し、次いで、上記で合成した固体成分をマグネシウム原子換算で3モル導入した。次いで、n-ヘプタン2.5リットルに、四塩化珪素5モルを混合して30℃、30分間かけて導入して、温度を70℃に上げ、3時間反応させた後、反応液を取り出し、生成した固体成分をn-ヘプタンで洗浄した。
【0090】
さらに、引き続いて、前記撹拌機付槽を用いて該槽に脱水及び脱酸素したn-ヘプタン2.5リットルを導入し、フタル酸クロライド0.3モルを混合して90℃、30分間で導入し、95℃で1時間反応させた。反応終了後、n-ヘプタンで洗浄した。次いで、室温下四塩化チタン2リットルを追加し、100℃に昇温した後2時間反応した。反応終了後、n-ヘプタンで洗浄した。さらに、四塩化珪素0.6リットル、n-ヘプタン8リットルを導入し90℃で1時間反応し、n-ヘプタンで十分洗浄し、固体成分を得た。この固体成分中にはチタンが1.30重量%含まれていた。
【0091】
次に、窒素置換した前記撹拌機付槽にn-ヘプタン8リットル、上記で得た固体成分を400gと、t-ブチル-メチル-ジメトキシシラン0.27モル、ビニルトリメチルシラン0.27モルを導入し、30℃で1時間接触させた。次いで15℃に冷却し、n-ヘプタンに希釈したトリエチルアルミニウム1.5モルを15℃条件下30分かけて導入、導入後30℃に昇温し、2時間反応させ、反応液を取り出し、n-ヘプタンで洗浄して固体触媒成分(a-1)390gを得た。得られた固体触媒成分(a-1)中には、チタンが1.22重量%含まれていた。
【0092】
さらに、n-ヘプタンを6リットル、n-ヘプタンに希釈したトリイソブチルアルミニウム1モルを15℃条件下30分かけて導入し、次いで、プロピレンを、20℃を越えないように制御しつつ約0.4kg/時間で1時間導入して予備重合した。その結果、固体1g当たり0.9gのプロピレンが重合したポリプロピレン含有の固体触媒成分(a-1)が得られた。
【0093】
(ii)プロピレン-エチレンブロック共重合体(a)の製造
内容積230リットルの流動床式反応器を2個連結してなる連続反応装置を用いて、重合を行った。
まず、第1反応器で、重合温度85℃、プロピレン分圧2.16MPa(絶対圧)、分子量調節剤としての水素を、水素/プロピレンのモル比で0.013となるように連続的に供給すると共に、トリエチルアルミニウムを5.25g/hrで、固体触媒成分(a-1)として、上記記載の触媒をポリマー重合速度が20kg/hrになるように供給した。第1反応器で重合したパウダー(結晶性プロピレン重合体)は、反応器内のパウダー保有量を60kgとなるように、連続的に抜き出し、第2反応器に連続的に移送した(前段重合工程)。
【0094】
重合温度80℃で、圧力1.5MPaになるように、プロピレンとエチレンをエチレン/プロピレンのモル比で1.15となるように、連続的に供給し、さらに、分子量調節剤としての水素を、水素/プロピレンのモル比で0.010となるように連続的に供給すると共に、活性水素化合物としてエチルアルコールを、トリエチルアルミニウムに対して3.0倍モルになるように供給した。第2反応器で重合したパウダーは、反応器内のパウダー保有量を40kgとなるように連続的にベッセルに抜き出し、水分を含んだ窒素ガスを供給して反応を停止させ、プロピレン-エチレンブロック共重合体を得た(後段重合工程)。
【0095】
プロピレン-エチレンブロック共重合体(a)について、温度昇温溶離分別(TREF)測定を行い、図2と同様に、溶出量及び溶出量積算を示すグラフを得た。T(α)は、結晶性が低い(ac-2)の溶出ピーク温度に相当し、T(β)は、結晶性が高い(ac-1)の溶出ピーク温度に相当するものである。T(α)及びT(β)の溶出ピークは十分に分離可能であった。
T(C)までに溶出する成分の積算量W(α)が(ac-2)の含有量であり、T(C)以上で溶出する成分の積算量W(β)が(ac-1)の含有量であると仮定し、各成分の含有量を算出した。その結果、プロピレン-エチレンブロック共重合体(a)に占める(ac-1)及び(ac-2)の割合は、それぞれ、91.5重量%及び8.5重量%であった。
【0096】
得られたプロピレン-エチレンブロック共重合体をPP-1とした。PP-1の配合及び物性を表1に示す。
【0097】
【表1】
【0098】
(2)製造例2
プロピレン-エチレンブロック共重合体(b)の製造
特開2015-3981号公報の実施例1に記載の触媒、重合設備を使用して重合した。第1反応器にて重合温度:75℃、プロピレン分圧:1.8MPa(絶対圧)、分子量調節剤としての水素を水素/プロピレンのモル比:0.026となるように連続的に供給すると共に、別途トリエチルアルミニウムを5.2g/hrで、触媒量を20kg/hrの生産量となるように供給した。生産したパウダーは、反応器内のパウダー保有量を60kgとなるように20kg/hrで連続的に抜出し、第2反応器に連続的に移送した(前段重合工程)。
【0099】
第2反応器で、重合温度:80℃、モノマー圧力:1.5MPaになるようにプロピレンとエチレンをエチレン/プロピレンのモル比で1.1となるように連続的に供給し、さらに、分子量調節剤としての水素を、水素/プロピレンのモル比で0.0020となるように連続的に供給すると共に、エチルアルコールを第1反応器に供給するトリエチルアルミニウムに対して1.6倍モルになるように供給した。第2反応器で重合したパウダーは、反応器内のパウダー保有量を40kgとなるように連続的に22.5kg/hrでベッセルに抜き出し、抜き出したパウダーは、水分を含んだ窒素ガスを供給して反応を停止させ、プロピレン-エチレンブロック共重合体を得た(後段重合工程)。
【0100】
プロピレン-エチレンブロック共重合体(b)について、温度昇温溶離分別(TREF)測定を行い、図2と同様に、溶出量及び溶出量積算を示すグラフを得た。T(α)は、結晶性が低い(ac-2’)の溶出ピーク温度に相当し、T(β)は、結晶性が高い(ac-1’)の溶出ピーク温度に相当するものである。T(α)及びT(β)の溶出ピークは十分に分離可能であった。
T(C)までに溶出する成分の積算量W(α)が(ac-2’)の含有量であり、T(C)以上で溶出する成分の積算量W(β)が(ac-1’)の含有量であると仮定し、各成分の含有量を算出した。その結果、プロピレン-エチレンブロック共重合体(b)に占める(ac-1’)及び(ac-2’)の割合は、それぞれ、87.3重量%及び12.7重量%であった。
【0101】
得られたプロピレン-エチレンブロック共重合体をPP-2とした。PP-2の配合及び物性を表2に示す。
【0102】
【表2】
【0103】
2-2.バイオマスポリエチレン(b)
高密度ポリエチレン(HDPE)
PE-1:Braskem社製商品名「Green PE SGM9450F」
密度:0.952g/cm、ASTM D1238(190℃及び2.16kg荷重)に準拠したメルトフローレート:0.12g/10分、バイオマス度:96%。(MFR以外の特性はメーカーカタログ値を示す。)
直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)
PE-2:Braskem社製商品名「Green PE SLL118」
密度:0.916g/cm、ASTM D1238(190℃及び2.16kg荷重)に準拠したメルトフローレート:1.0g/10分、バイオマス度:87%。(いずれの特性もメーカーカタログ値を示す。)
【0104】
2-3.その他添加剤
(A-1)ヒンダードフェノール系酸化防止剤「IR1010」
テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシルフェニル)プロピオネート]メタン。BASFジャパン(株)製、商品名「IRGANOX(登録商標)1010」。
(A-2)リン系酸化防止剤「IF168」
トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト。BASFジャパン(株)製、商品名「IRGAFOS(登録商標)168」。
(B-1)中和剤「CAST」
ステアリン酸カルシウム。日油(株)製。
(N-1)造核剤「ALPTB」
ヒドロキシ-ジ-P-タ-シャリ-ブチル安息香酸アルミニウム。オクサリスケミカルズ株式会社製、商品名「AL-PTBBA」。
(N-2)造核剤「P7」
含水珪酸マグネシウム(MgSi10(OH))。松村産業(株)製、商品名「P7」。
【0105】
実施例1~4、比較例1及び参考例1
各重合体及び添加剤を表3に記載の配合割合(重量部)で準備し、スーパーミキサーでドライブレンドした後、芝浦機械株式会社製TEM-35B二軸押出機を用いて、窒素雰囲気下ダイ出口部温度220℃で溶融混練し、ペレット化した。得られたペレットを用いて、物性を測定した。評価結果を表3に示す。
【0106】
【表3】
【0107】
表3より明らかなように、実施例1の組成物はバイオマス度が高いことに加え、バイオマスポリエチレンを配合しない参考例1の組成物と同等の良好な機械物性を示している。ここで、実施例1~4のプロピレン系重合体組成物は、プロピレン-エチレンブロック共重合体及びバイオマスポリエチレンを規定量含有したものであり、環境負荷低減できる材料であり、耐衝撃性及び剛性に優れ、割れ試験の結果も良好であった。
なかでも、バイオマスポリエチレンとして、直鎖状低密度ポリエチレンを使用した実施例2は、バイオマス度を39.2%まで上げても、剛性及び割れない特性を維持しつつ、耐衝撃性が一段と優れており、好ましい。
一方、比較例1の組成物は、プロピレン-エチレンブロック共重合体及びバイオマスポリエチレンの合計100重量部に対する、バイオマスポリエチレンの含有量が49重量部を超えており、TD方向の割れ試験によって割れが発生した。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明のプロピレン系重合体組成物は、バイオマスポリエチレンを含有しても剛性及び耐衝撃性に優れ、割れない成形品を与える。該組成物は、バイオマス度が8.4~49%であり、環境負荷を低減でき、有用である。
図1
図2