IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 恵源食品株式会社の特許一覧

特開2023-122600油ちょう食品製造用の揚げ粉及び該揚げ粉を用いた油ちょう食品の製造方法
<>
  • 特開-油ちょう食品製造用の揚げ粉及び該揚げ粉を用いた油ちょう食品の製造方法 図1
  • 特開-油ちょう食品製造用の揚げ粉及び該揚げ粉を用いた油ちょう食品の製造方法 図2
  • 特開-油ちょう食品製造用の揚げ粉及び該揚げ粉を用いた油ちょう食品の製造方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122600
(43)【公開日】2023-09-04
(54)【発明の名称】油ちょう食品製造用の揚げ粉及び該揚げ粉を用いた油ちょう食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/157 20160101AFI20230828BHJP
   A23L 17/00 20160101ALI20230828BHJP
【FI】
A23L7/157
A23L17/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026251
(22)【出願日】2022-02-23
(71)【出願人】
【識別番号】522072183
【氏名又は名称】恵源食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122574
【弁理士】
【氏名又は名称】吉永 貴大
(72)【発明者】
【氏名】永▲浜▼ 健
(72)【発明者】
【氏名】土屋 泰則
【テーマコード(参考)】
4B025
4B042
【Fターム(参考)】
4B025LB06
4B025LD04
4B025LG02
4B025LG44
4B025LG60
4B025LP01
4B042AC05
4B042AD18
4B042AE10
4B042AG14
4B042AH01
4B042AH03
4B042AK11
4B042AP05
(57)【要約】
【課題】素揚げと同等に衣を感じさせず、骨と魚肉を同時に食することができ、かつ、スナックのようなサクサクとしたテクスチャーを有する油ちょう食品製造用の揚げ粉、及び、該揚げ粉を用いた油ちょう食品の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】油ちょう食品の製造方法であって、原料食品に、寒天粉末とこんにゃく粉末とを含む揚げ粉を付着させる工程と、前記揚げ粉を付着させた原料食品を油で揚げる工程と、を有する、油ちょう食品の製造方法により解決する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油ちょう食品製造用の揚げ粉であって、
寒天粉末と、こんにゃく粉末とを含む、揚げ粉。
【請求項2】
前記寒天粉末が7~9重量部、前記こんにゃく粉末が1~3重量部である、請求項1に記載の揚げ粉。
【請求項3】
さらに、米粉を含む、請求項1又は2に記載の揚げ粉。
【請求項4】
油ちょう食品の製造方法であって、
原料食品に、請求項1~3のいずれか1項に記載の揚げ粉を付着させる工程と、
前記揚げ粉を付着させた原料食品を油で揚げる工程と、
を有する、油ちょう食品の製造方法。
【請求項5】
前記食品が、骨付き魚肉である、請求項4に記載の油ちょう食品の製造方法。
【請求項6】
前記原料食品を、厚さ1~4mmにスライスする工程を有する、請求項4又は5に記載の油ちょう食品の製造方法。
【請求項7】
前記原料食品が、鯉である、請求項4に記載の油ちょう食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油ちょう食品製造用の揚げ粉、及び該揚げ粉を用いた油ちょう食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで油ちょう食品製造用の揚げ粉としては、小麦粉や片栗粉を主原料としたものが一般的である。
【0003】
例えば、特開2002-315527号公報には、 (A)α化澱粉以外の澱粉と、(B)小麦蛋白、大豆蛋白、乳蛋白及び卵蛋白から選ばれた少なくとも1種の蛋白素材と、(C)コラーゲン及び/又はゼラチンと、(D)寒天と、(E)グルコマンナンとを含有させて製造される揚物用衣材が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-315527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、食材の有効利用及び食品廃棄物を減少させるための工夫が求められている。例えば、魚類を油ちょうする際に、これまで骨や内蔵は取り除いて廃棄されるのが一般的であったが、これらも魚肉とともに油ちょうし食材として利用する動きがある。ポテトチップスに代表されるスナックはサクサクとしたテクスチャーが従来から人気であり、魚類を骨ごと食べられるようなスナックを製造することができれば、食材の有効利用及び食品廃棄物の減少が促進されるものと期待される。
【0006】
しかしながら、骨付き魚肉を素揚げで油ちょうする場合、骨まで食べられるような油ちょう条件では魚肉がボソボソとして食感が悪くなる。一方、魚肉の食感を優先するような油ちょう条件では骨が固く、骨まで食べることができない。小麦粉や片栗粉を主原料とする揚げ粉を用いた場合は、食材の周りに衣(ころも)が形成されるため、チップスというよりは衣の食感を有する唐揚げに近い油ちょう食品になってしまう。
【0007】
そこで、本発明は、素揚げと同等に衣を感じさせず、骨と魚肉を同時に食することができ、かつ、スナックのようなサクサクとしたテクスチャーを有する油ちょう食品製造用の揚げ粉、及び、該揚げ粉を用いた油ちょう食品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明者らは、小麦粉や片栗粉に代わる揚げ粉原料を種々検討したところ、寒天粉末とこんにゃく粉末を含む揚げ粉が上記課題を解決することができるとの知見を得た。
【0009】
本発明はかかる知見に基づきなされたものであり、油ちょう食品製造用の揚げ粉であって、寒天粉末と、こんにゃく粉末とを含む、揚げ粉を提供するものである。
【0010】
本発明はまた、油ちょう食品の製造方法であって、原料食品に、前記揚げ粉を付着させる工程と、前記揚げ粉を付着させた原料食品を油で揚げる工程と、を有する、油ちょう食品の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、素揚げと同等に衣を感じさせず、骨と魚肉を同時に食することができ、かつ、スナックのようなサクサクとしたテクスチャーを有する油ちょう食品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】揚げ粉を鯉の切り身に付着させた後の状態を示す図である。
図2】異なる揚げ粉を使用して油ちょう処理(二度揚げ)した食品の外観を示す図である。
図3】異なる揚げ粉を使用して油ちょう処理(一度揚げ)した食品の外観を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施形態について詳細に説明する。まず初めに、本実施形態に係る揚げ粉について説明する。
【0014】
本実施形態に係る揚げ粉は、油ちょう食品製造用の揚げ粉であって、寒天粉末と、こんにゃく粉末とを含む。
【0015】
寒天粉末は、テングサ(天草)、オゴノリなどの紅藻類の粘液質を凍結・乾燥し、これをさらに粉砕することで得られたものである。食用であれば特に限定はなく、市販の寒天粉末を使用することができる。
【0016】
こんにゃく粉末は、こんにゃくいもを乾燥・精製した精粉(グルコマンナン)を主成分とするものである。但し、本実施形態では荒粉が含まれていてもよい。一般的な板こんにゃく製造に使用されるこんにゃく粉末であれば特に限定はない。
【0017】
本実施形態に係る揚げ粉は、上記の寒天粉末と、こんにゃく粉末を混合して製造することができる。本実施形態において、後述する原料からの適度な水分を吸収させる観点から、前記寒天粉末は7~9重量部、前記こんにゃく粉末は1~3重量部であることが好ましい。
【0018】
本実施形態に係る揚げ粉は、寒天粉末とこんにゃく粉のみでも油ちょう食品を製造するための揚げ粉として使用することができ、骨付き魚肉を油ちょうする際に使用すると、サクサクとした良好なテクスチャーを有する油ちょう食品を製造することができる。なお、寒天もこんにゃくもグルテンを含んでいないため、いわゆるグルテンフリー食材ということもできる。
【0019】
使用に際しては、本実施形態に係る揚げ粉を粉末のまま、直接原料食品に付着させる。原料食品に骨付き魚肉を使用する場合は、原料食品に適度な水分(ドリップ)が存在するため、特に水に溶いて使用する必要はない。
【0020】
本実施形態に係る揚げ粉は、さらに、油ちょう食品の風味及び食感向上の観点から、米粉を含むことが好ましい。米粉の配合量は特に限定はないが、0.5~2重量部であることが好ましい。
【0021】
次に、上述した揚げ粉を用いた油ちょう食品の製造方法について説明する。本実施形態に係る油ちょう食品の製造方法は、原料食品に、先述した揚げ粉を付着させる工程と、前記揚げ粉を付着させた原料食品を油で揚げる工程と、を有する。
【0022】
前記食品としては、従来より揚げ物の揚げ種として使用されてきた野菜類、肉類、魚類、きのこ類などの食材を使用することができるが、本実施形態に係る揚げ粉の特徴が生かせる食品として、骨付き魚肉を使用することが好ましい。骨付き魚肉とは、骨が除去される前の魚の意味であり、魚全体や、魚の切り身(骨付き)などをいう。小型魚であれば全体を使用することができ、中型魚や大型魚は切り身(骨付き)を使用することが好ましい。
【0023】
本実施形態において、サクサクとした食感の油ちょう食品を製造するという観点からは、前記原料食品を厚さ1~4mmにスライスする工程を含むことが好ましい。原料食品を1~4mmにスライスする方法は特に限定はないが、生鮮状態でスライスすることが困難な場合は、原料食品を予め冷凍処理、半冷凍処理、加熱処理、半加熱処理してからスライスすることが好ましい。
【0024】
本実施形態において、骨の栄養を効率よく摂取できる観点から、前記原料食品は、鯉(コイ)、鰻(ウナギ)、鯛(タイ)、鮭(サケ)、鱧(ハモ)、ウツボ、鮗(コノシロ)、鰊(ニシン)、飛魚(トビウオ)からなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。これらの魚類は、骨が多いことから避けられる傾向にあったが、本実施形態では骨も摂取しやすい状態に調理することができる。また、本実施形態に係る油ちょう食品の製造方法によれば、これらの魚類は骨のみならず皮と内蔵も同時に調理し、食品として摂取することができる。
【0025】
本実施形態においては、好みに応じて、塩などの調味料や、胡椒、花椒などの香辛料を添加してもよい。また、油ちょう処理後にこれらの風味付けを行ってもよい。
【0026】
油ちょう処理は、食品原料に応じて適宜設定されるが、例えば、骨付き・内蔵つきの鯉の切り身(厚さ約4mm)であれば、120℃、15分揚げた後、再び150℃、5分揚げるといった二度揚げのほか、180℃、10分の油ちょう処理で行うことができる。
【0027】
一般に「チップス」とは芋、豆類、トウモロコシなどの炭水化物を食用油で揚げた食品をいい、「唐揚げ」とは肉・魚介・野菜等に調味料を配した小麦粉、澱粉等をまぶして食用油で揚げた食品をいう。チップスも唐揚げも揚げ油を使用した調理方法で得られた食品という点では共通するが、チップスは、外観上、衣が明確には視認できず衣の食感もないが、唐揚げは食材に小麦粉や片栗粉などをまぶして油で揚げたものであるため、外観上、衣が明確に視認でき、衣の食感もある。
【0028】
本実施形態により製造される油ちょう食品は、チップス並びに唐揚げの定義上、そのどちらにもあてはならない全く新しい油ちょう食品となるが、外観上、衣が明確に存在しない素揚げと同様であり、食感上、衣の食感がなくサクサクとしたテクスチャーを有するため、チップスに分類され、唐揚げとは明確に区別される。
【実施例0029】
1.揚げ粉の調製
表1の配合からなる揚げ粉を調製した(実施例1)。なお、比較対象として、片栗粉使用区(比較例1)、小麦粉使用区(比較例2)、揚げ粉不使用区(素揚げ)(比較例3)を用意した。
【0030】
【表1】
【0031】
2.油ちょう食品の製造
真鯉(宮崎県産)の頭部と胆嚢(苦玉)を除去し、-20℃で冷凍したものを、骨と内臓を有したまま厚さ4mmに輪切り(筒切り)状にスライスした。これらの切り身を、室温で、表1の配合の揚げ粉に全体的に付着させた。揚げ粉を付着させた2時間後の切り身を観察したところ、比較例1、2の揚げ粉は切り身のドリップを吸収している様子が観察されたが、実施例1の揚げ粉には、比較例1、2のような状態は観察されず、表面は粉末のサラサラ感が保持されていた(図1)。
【0032】
次に、サラダ油を使用して、120℃で15分間揚げた後に一旦取り出し、粗熱が取れた後、150℃で5分間揚げること(二度揚げ)により、所望の油ちょう食品を得た。油で揚げている間、比較例1、2の揚げ粉を使用した区では揚げ物同士が付着してしまうため、途中、菜箸で切り離しながら油ちょうしたが、実施例1の揚げ粉を使用した区では揚げ粉同士が付着する現象は見られなかった。
【0033】
得られた油ちょう食品の食感を評価するため、外観を目視観察した後、以下の評価基準で官能評価を実施した。
○:チップスらしいサクサクとした食感
△:骨・魚肉、皮・内蔵どちらかが固く食べづらい
×:骨・魚肉、皮・内蔵ともに固く食べづらい
【0034】
油ちょう食品の外観を図2に示す。また、官能評価の結果を表2に示す。外観については、実施例1の油ちょう食品は揚げ粉を使用していない比較例3(素揚げ)と同様であったのに対し、比較例1と2油ちょう食品は、鶏の唐揚げのような衣が観察され、チップスらしい外観とはいえなかった。
【0035】
官能評価については、実施例1の油ちょう食品はチップスらしいサクサクとした食感であったが、外観が似ていた比較例3(素揚げ)はチップスらしさを通り越して揚げ過ぎで硬さが強調された。比較例1と2の油ちょう食品は、衣が存在するためチップスとは言えず、むしろ鳥の唐揚げのような食感であった。
【0036】
【表2】
【0037】
次に、油ちょう処理の条件を変え、180℃、10分で油ちょう処理を行った。目視観察と官能評価は上記と同様に実施した。
【0038】
油ちょう食品の外観を図3に示す。また、官能評価の結果を表3に示す。外観については、上述と同様、実施例1の油ちょう食品は揚げ粉を使用していない比較例3(素揚げ)と同様であったのに対し、比較例1と2油ちょう食品は、鶏の唐揚げのような衣が観察され、チップスらしい外観とはいえなかった。
【0039】
官能評価については、実施例1の油ちょう食品は骨も肉も食べやすく、歯ざわりも良好であった。比較例1、2のような衣は存在しなかった。実施例1と外観が似ていた比較例3(素揚げ)は揚げ過ぎでぼそぼそとした食感であり、商品のレベルに達していなかった。比較例1と2の油ちょう食品は、衣が顕著に食感に影響し、硬さが強調された。また、衣によって内部まで火が十分に通らず、骨が硬かった。
【0040】
【表3】
図1
図2
図3