(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122601
(43)【公開日】2023-09-04
(54)【発明の名称】電池およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/553 20210101AFI20230828BHJP
H01M 50/176 20210101ALI20230828BHJP
H01M 50/531 20210101ALI20230828BHJP
H01M 50/184 20210101ALI20230828BHJP
H01M 50/564 20210101ALI20230828BHJP
H01M 50/55 20210101ALI20230828BHJP
【FI】
H01M50/553
H01M50/176
H01M50/531
H01M50/184 A
H01M50/564
H01M50/55 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026253
(22)【出願日】2022-02-23
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小久保 彰格
【テーマコード(参考)】
5H011
5H043
【Fターム(参考)】
5H011AA01
5H011AA09
5H011AA10
5H011AA17
5H011EE04
5H011FF04
5H011GG02
5H011HH02
5H043AA01
5H043AA03
5H043AA07
5H043AA19
5H043BA11
5H043CA04
5H043DA10
5H043EA11
5H043EA35
5H043EA60
5H043HA03D
5H043HA03E
5H043HA05D
5H043HA05E
5H043HA06E
5H043HA09D
5H043HA09E
5H043HA32D
5H043HA32E
5H043JA01E
5H043JA06E
5H043JA12D
5H043JA12E
5H043KA22D
5H043KA22E
5H043KA38D
5H043KA38E
5H043KA45D
5H043KA45E
5H043LA03E
5H043LA21D
5H043LA21E
5H043LA22E
(57)【要約】
【課題】端子部分の接合強度、シール性、製造時の作業性のいずれにも優れた電池をその製造方法とともに提供すること。
【解決手段】本開示技術に係る電池は、ケース2と、ケース2の内部の電極集積体と、外部端子6と、ケース2の内部で電極集積体と外部端子6とを接続する集電端子12とを有し、ケース2には、外部端子6を貫通させて保持する円形の貫通穴8が形成されており、外部端子6は、貫通穴8を貫通して保持される円形断面の柱状部61と、ケース2の外側に位置する対外露出部62と、ケース2の内部にて柱状部61より大径に広がっている鍔状部63とを有し、鍔状部63と集電端子12とが接合されており、外部端子6とケース2との間に貫通穴8の全周にわたって、絶縁封鎖部材10、11が保持されているものである。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、前記ケースの内部に収納された電極集積体と、外部端子と、前記ケースの内部に配置され前記電極集積体と前記外部端子とを接続する集電端子とを有する電池であって、
前記ケースには、前記外部端子を貫通させて保持する円形の貫通穴が形成されており、 前記外部端子は、
前記貫通穴を貫通して保持される円形断面の柱状部と、
前記柱状部と繋がっており前記ケースの外側に位置する対外露出部と、
前記柱状部と繋がっており前記ケースの内部にて前記柱状部より大径に広がっている鍔状部とを有し、
前記鍔状部と前記集電端子とが接合されており、
前記外部端子と前記ケースとの間に前記貫通穴の全周にわたって、前記外部端子と前記ケースとを絶縁するとともに前記ケースの内部と外部とを封鎖する絶縁封鎖部材が保持されている電池。
【請求項2】
請求項1に記載の電池であって、
前記絶縁封鎖部材は、前記貫通穴の全周にわたって前記ケースの内面に沿って広がる面状部を有しており、
前記鍔状部の縁辺が全周にわたって前記集電端子から遠ざかる方向に湾曲して前記面状部に食い込んでいる電池。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電池であって、
前記集電端子は、前記鍔状部に向かって突出する突出部を有しており、
前記突出部の付け根に、前記突出部より小径なくびれ部を有する電池。
【請求項4】
ケースと、前記ケースの内部に収納された電極集積体と、外部端子と、前記ケースの内部に配置され前記電極集積体と前記外部端子とを接続する集電端子とを有する電池を製造する電池の製造方法であって、
前記ケースには、前記外部端子を貫通させて保持する円形の貫通穴が形成されており、 前記外部端子は、
前記貫通穴を貫通して保持される円形断面の柱状部と、
前記柱状部と繋がっており前記ケースの外側に位置する対外露出部とを有し、
前記電極集積体および前記集電端子を収納済みの前記ケースにおける前記貫通穴に対して前記外部端子の前記柱状部を差し込んで、前記柱状部の先端を前記ケースの内部にて前記集電端子に押し当てるとともに、
前記外部端子と前記ケースとの間に前記貫通穴の全周にわたって、前記外部端子と前記ケースとを絶縁するとともに前記ケースの内部と外部とを封鎖する絶縁封鎖部材を挟み込み、
前記外部端子を前記柱状部の中心軸の周りに回転させることで、
前記柱状部の先端に、前記柱状部より大径に広がっている鍔状部を形成しつつ、
前記鍔状部と前記集電端子とを接合させる電池の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の電池の製造方法であって、
前記外部端子の回転を、前記外部端子を前記集電端子へ向けて押しつけつつ行う電池の製造方法。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の電池の製造方法であって、
前記絶縁封鎖部材は、前記貫通穴の全周にわたって前記ケースの内面に沿って広がる面状部を有しており、
前記外部端子の回転により形成される前記鍔状部の縁辺を全周にわたって前記集電端子から遠ざかる方向に湾曲させて前記面状部に食い込ませる電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示技術は、電池およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電池の端子部分には、電極集積体側の集電端子と、外部に露出する外部端子との接合箇所が存在する。その接合方法としては、一般的なレーザ溶接の他、特許文献1に記載されている摩擦攪拌接合が挙げられる。外部端子は外装体を貫通して取り付けられる。この貫通箇所にはシールのためのガスケットが挟み込まれる。確実なシールのため、外装体側に突起形状を設けて外部端子との間でガスケットを挟み付けることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来の技術には、レーザ溶接では導通面積の問題がある。両端子の部材が異種材である場合には接合強度の問題もある。摩擦攪拌接合では接合時に接合対象部材の一部に盛り上がり箇所が発生する。この盛り上がり箇所が他の部材と干渉しないように接合後に除去工程を行う必要がある。確実なシールのための外装体側の突起形状により、組み付け時の作業性が悪いという問題もある。
【0005】
本開示技術は、前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは、端子部分の接合強度、シール性、製造時の作業性のいずれにも優れた電池をその製造方法とともに提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示技術の一態様における電池は、ケースと、ケースの内部に収納された電極集積体と、外部端子と、ケースの内部に配置され電極集積体と外部端子とを接続する集電端子とを有する電池であって、ケースには、外部端子を貫通させて保持する円形の貫通穴が形成されており、外部端子は、貫通穴を貫通して保持される円形断面の柱状部と、柱状部と繋がっておりケースの外側に位置する対外露出部と、柱状部と繋がっておりケースの内部にて柱状部より大径に広がっている鍔状部とを有し、鍔状部と集電端子とが接合されており、外部端子とケースとの間に貫通穴の全周にわたって、外部端子とケースとを絶縁するとともにケースの内部と外部とを封鎖する絶縁封鎖部材が保持されているものである。
【0007】
上記態様における電池では、絶縁封鎖部材によりケースの貫通穴の全周にわたって外部端子とケースとの絶縁および内外シールがなされている。外部端子はケースの内部にて集電端子とが接合されており、接合強度は良好である。外部端子の鍔状部を除去する必要もなく、製造時の作業性もよい。
【0008】
前記態様の電池では、絶縁封鎖部材は、貫通穴の全周にわたってケースの内面に沿って広がる面状部を有しており、鍔状部の縁辺が全周にわたって集電端子から遠ざかる方向に湾曲して面状部に食い込んでいることが望ましい。このようになっていると、鍔状部の面状部への食い込みにより、シール性がより良好である。
【0009】
前記のいずれかの態様の電池ではまた、集電端子が、鍔状部に向かって突出する突出部を有しており、突出部の付け根に、突出部より小径なくびれ部を有することが望ましい。集電端子のこのような形状は、外部端子との接合の際に形成される。外部端子との間に広い接合面積が得られ、くびれ部より大径となった部分を除去する必要もない。
【0010】
本開示技術の別の一態様における電池の製造方法では、ケースと、ケースの内部に収納された電極集積体と、外部端子と、ケースの内部に配置され電極集積体と外部端子とを接続する集電端子とを有する電池を製造するにあたり、ケースには、外部端子を貫通させて保持する円形の貫通穴が形成されており、外部端子は、貫通穴を貫通して保持される円形断面の柱状部と、柱状部と繋がっておりケースの外側に位置する対外露出部とを有し、電極集積体および集電端子を収納済みのケースにおける貫通穴に対して外部端子の柱状部を差し込んで、柱状部の先端をケースの内部にて集電端子に押し当てるとともに、外部端子とケースとの間に貫通穴の全周にわたって、外部端子とケースとを絶縁するとともにケースの内部と外部とを封鎖する絶縁封鎖部材を挟み込み、外部端子を柱状部の中心軸の周りに回転させることで、柱状部の先端に、柱状部より大径に広がっている鍔状部を形成しつつ、鍔状部と集電端子とを接合させる。これにより、簡素な工程で、端子部分の接合強度およびシール性に優れた電池が得られる。
【0011】
前記態様の製造方法では、外部端子の回転を、外部端子を集電端子へ向けて押しつけつつ行うことが望ましい。これにより、鍔状部の形成が促進され、外部端子の回転の負担は少なくて済む。
【0012】
前記のいずれかの態様の製造方法ではまた、絶縁封鎖部材は、貫通穴の全周にわたってケースの内面に沿って広がる面状部を有しており、外部端子の回転により形成される鍔状部の縁辺を全周にわたって集電端子から遠ざかる方向に湾曲させて面状部に食い込ませることが望ましい。この鍔状部の面状部への食い込みにより、より良好なシール性が得られる。
【発明の効果】
【0013】
本開示技術によれば、端子部分の接合強度、シール性、製造時の作業性のいずれにも優れた電池がその製造方法とともに提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図6】実施の形態に係る電池の組み立て前の状況を示す分解斜視図である。
【
図7】製造の途中の段階での断面図(その1)である。
【
図8】製造の途中の段階での断面図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示技術を具体化した実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は、
図1の電池1に本開示技術を適用したものである。
図1に示す本形態の電池1は、ケース2の内部に電極集積体3を収納したものである。電極集積体3は、正極板と負極板とをセパレータとともに積層したものである。電極集積体3は、ケース2の内部に電解質とともに収納されることによって発電要素として機能するものである。
【0016】
ケース2は、電池1の外装体である。ケース2は、本体4と、蓋部材5とにより構成されている。本体4は、角形の箱体であり上方が開口している形状のものである。電池1では、本体4の開口箇所に蓋部材5が取り付けられて開口が閉鎖されている。蓋部材5には、2つの外部端子6、7が取り付けられている。外部端子6、7の一方が正極端子でもう一方が負極端子である。外部端子6、7により、電池1から外部に放電することができ、外部から電池1に充電することができる。
【0017】
図1中の外部端子6の箇所の構造を
図2および
図3により説明する。
図2に示されるように、平板状の蓋部材5には貫通穴8、9が形成されている。貫通穴8、9は円形である。貫通穴8、9が形成されている位置はむろん、
図1中の外部端子6、7の位置である。
図3の断面図に示されるように、外部端子6は貫通穴8を貫通して保持されている。貫通穴8は、外部端子6を貫通させて保持する穴である。蓋部材5と外部端子6との間には、インシュレータ10およびガスケット11が挟み込まれている。
【0018】
インシュレータ10およびガスケット11はいずれも、合成樹脂製の絶縁封鎖部材である。インシュレータ10およびガスケット11が貫通穴8の全周にわたってケース2と外部端子6との間に保持されている。これによりケース2と外部端子6とが絶縁され、ケース2の内部と外部とが封鎖されている。インシュレータ10は
図4に示すように、大径部101と小径部102とを有する円環状の樹脂部材である。ガスケット11は、
図5に示す形状の樹脂部材である。ガスケット11は、円筒部111と、面状部112と、枠部113とを有している。円筒部111は円形の有孔状の部分である。面状部112は、貫通穴8の全周にわたって蓋部材5の内面に沿って広がる部分である。枠部113は、面状部112の縁辺から電極集積体3の方へ向かって形成された壁状の部分である。
【0019】
図3中の外部端子6は、柱状部61と、対外露出部62と、鍔状部63とを有する導電部材である。柱状部61は、貫通穴8を貫通して配置されている円形断面の部分である。対外露出部62は、柱状部61と繋がっており、蓋部材5より上方、つまりケース2の外側に位置する部分である。本形態での対外露出部62は、柱状部61より大径の円盤状の部位である。鍔状部63は、柱状部61と繋がっており、蓋部材5より下方、つまりケース2の内側に位置する部分である。鍔状部63は、柱状部61より大径に広がっている形状の部分である。
【0020】
インシュレータ10の小径部102およびガスケット11の円筒部111の外径サイズはいずれも、貫通穴8の中にちょうど嵌まるサイズである。これらの内径サイズはいずれも、その中に外部端子6の柱状部61がちょうど嵌まるサイズである。これらは、貫通穴8の中で対面している。小径部102およびガスケット11の円筒部111は、貫通穴8の中で柱状部61と蓋部材5とに挟まれている。小径部102およびガスケット11の円筒部111はいずれも、貫通穴8の全周にわたって柱状部61を包囲して、いる。ガスケット11の面状部112は、蓋部材5の内面に接している。ガスケット11の枠部113は、面状部112に対して下向きになっている。外部端子6の鍔状部63は全周にわたって、外側ほど上向きに、つまり集電端子12から遠ざかる方向に湾曲している。鍔状部63の縁辺は全周にわたってガスケット11の面状部112に食い込んでいる。
【0021】
図3中には、上記の各部材の他に、集電端子12も存在している。集電端子12は、ケース2の内部に配置され電極集積体3と外部端子6とを接続する導電部材である。
図3中における集電端子12は、平板部121と、突出部122と、接続部123とを有している。平板部121は、蓋部材5と電極集積体3との間でガスケット11の枠部113に保持される平板状の部位である。突出部122は、平板部121における蓋部材5側の面の一部が外部端子6の下端の鍔状部63へ向かって突出している部位である。突出部122は、鍔状部63と接合されている。突出部122の平板部121への付け根の箇所は突出部122より小径なくびれ部124となっている。突出部122はくびれ部124よりも大径に広がっている。接続部123は、電極集積体3の正負の電極板のいずれか一方と接続される部位である。
【0022】
外部端子6と集電端子12とは、同一の金属種のものであってもよいし、異なる金属種のものであってもよい。代表例として、外部端子6がアルミ製で集電端子12が銅製である場合が挙げられる。以下、本形態のものでは外部端子6がアルミ製で集電端子12が銅製であるものとする。インシュレータ10とガスケット11とはいずれも合成樹脂製である。好ましくは、ガスケット11はインシュレータ10と比較してより柔軟な材質のものであることが望ましい。
【0023】
本形態の電池1は、外部端子6が
図3に示す構造のものであることにより、次の利点を有している。第1に、外部端子6の箇所のシール性が優れている。鍔状部63の縁辺がガスケット11の面状部112に食い込んでいるからである。この食い込みにより、インシュレータ10およびガスケット11によるシール性に加えてさらに優れたシール性を有するようにされている。第2に、電流経路として低抵抗である。外部端子6と集電端子12との接合面積が広いからである。第3に、製造過程が簡素である。
【0024】
図3の端子構造を有する電池1の製造方法を説明する。まず、外部端子6および集電端子12の、電池1への組み付け前における元々の形状を説明する。組み付け前における外部端子6は、
図6中に示されるように、柱状部61および対外露出部62を有するが鍔状部63を有しない形状のものである。組み付け前における集電端子12は、突出部122の径が外部端子6の柱状部61と同径であるものである。この時点での集電端子12では、平板部121と突出部122との境目がくびれ状となっていない。
【0025】
電池1の製造の際には、あらかじめ、電極集積体3に集電端子12を接続して、それらをケース2の本体4に収納しておく。むろん、電極集積体3より上方に集電端子12の平板部121が配置され、突出部122が上を向く状態としておく。この状態に対して、インシュレータ10、ガスケット11、外部端子6、蓋部材5を取り付ける。
【0026】
具体的には、蓋部材5の貫通穴8に、インシュレータ10とガスケット11と外部端子6とを取り付ける。これにより、貫通穴8にインシュレータ10の小径部102およびガスケット11の円筒部111が差し込まれ、さらにそこに外部端子6の柱状部61がインシュレータ10側から差し込まれた状態を得る。この状態の蓋部材5を、電極集積体3および集電端子12を収納済みの本体4の開口部に取り付ける。このとき、ガスケット11の枠部113に集電端子12の平板部121が嵌まるようにする。これにより、本体4の開口が閉鎖される。
【0027】
そして外部端子6を、その柱状部61の先端が突出部122の頂面に接するまで押し込む。この状態での断面図を
図7に示す。
図7の状態では、貫通穴8の全周にわたって、ケース2と外部端子6との間にインシュレータ10およびガスケット11が挟み込まれている。これにより、ケース2と外部端子6とが絶縁され、ケース2の内部と外部とが封鎖されている。ガスケット11の面状部112は、貫通穴8の全周にわたって蓋部材5の内面に沿って広がっている。柱状部61の先端は、ケース2の内部にて突出部122の頂面に押し当てられている。
【0028】
この状態で
図8に示すように、外部端子6を軸周りに回転させる。しかし集電端子12は回転できず静止したままであるため、柱状部61の先端と突出部122の頂面との間に摩擦が生じ、発熱する。この発熱により、柱状部61の先端と突出部122の頂面との接触面付近の温度が上昇する。この温度上昇により、次の3つの事象が起こる。
【0029】
第1に、柱状部61の先端に鍔状部63が形成される。温度上昇により軟化した柱状部61の先端が塑性変形するからである。下側には集電端子12があり拘束されているので、柱状部61の先端付近は、
図8中の左右方向に、つまり直径が拡大する方向に伸びていく。この伸びた部分が鍔状部63である。鍔状部63は、直径がある程度大きくなってくと、その縁辺が全周にわたり上向きに湾曲してくる。鍔状部63のうち摩擦発熱箇所からより遠い上面側が下面側より先に冷えるためである。上向きに湾曲した鍔状部63の縁辺が面状部112に食い込む。
図8では、鍔状部63の縁辺がガスケット11の面状部112に食い込んだ状態を描いている。この食い込みは、全周にわたって起こっており、ガスケット11によるシール封止をより確実にする効果を奏する。
【0030】
第2に、集電端子12の突出部122が変形する。集電端子12を構成する銅も、外部端子6を構成するアルミほどではないにせよ温度上昇により軟化するからである。突出部122も直径が拡大する方向に伸びていく。上方には柱状部61があり拘束されているからである。これにより突出部122に、直径が拡大した拡径部125が形成される。ただし銅はアルミほど変形しやすい訳ではないので、鍔状部63のように反り状を呈するまでには至らない。突出部122の平板部121への付け根の箇所はほとんど広がらない。この箇所は発熱箇所から少し離れており、温度上昇の程度が小さいからである。このためくびれ部124が形成される。
【0031】
第3に、鍔状部63の下面と突出部122の頂面とが摩擦圧接により接合される。温度上昇により主として外部端子6のアルミの一部が溶融して一時的に溶融部Xが形成されるからである。回転を終えて温度が下がると、溶融部Xが再び固化して、外部端子6と集電端子12とが接合される。これにより、柱状部61の元々の断面積に匹敵する広い接合面積が得られる。このため接合強度が高く電気抵抗は小さい。
【0032】
上記の外部端子6の軸周りの回転を、外部端子6を集電端子12へ向けて下向きに押しつけつつ行ってもよい(
図8中の矢印F)。つまり、外部端子6を軸周りに回転させる際に外部端子6に加圧力Fを印加してもよい。この加圧力Fにより、加圧しない場合と比較して、鍔状部63および拡径部125の形成がより促進される。また、外部端子6を回転させる回転時間をより短くすることができる。あるいは、外部端子6の回転速度をより遅くすることができる。
【0033】
上記の外部端子6の回転の際に、インシュレータ10もともに回転する可能性がある。インシュレータ10が外部端子6とともに回転するのかしないのかは、どちらでもよい。インシュレータ10に、またはインシュレータ10および蓋部材5に、インシュレータ10の回転を阻止する何らかの形状を設けておいてもよい。ガスケット11は、外部端子6とともに回転することはない。
【0034】
上記の説明でもう一方の外部端子7については特に言及しなかったが、外部端子6の構造および製造方法と同じでもよいし、異なる構造および製造方法でもよい。異なる構造および製造方法で外部端子7を構成する場合には、従来公知の構造および製造方法を用いることが考えられる。今後新たな構造および製造方法が考案された場合にはその構造および製造方法を用いることも考えられる。上記のようにして本体4の開口を蓋部材5で閉鎖するとともに外部端子6、7を取り付けることで、本形態の電池1が製造される。その後の電解質注入および初期充電により、電池1は使用可能な状態となる。
【0035】
以上詳細に説明したように本実施の形態の電池1によれば、インシュレータ10およびガスケット11により外部端子6とケース2とを絶縁しつつ、外部端子6の鍔状部63をガスケット11に食い込ませることでシール性を高めた構造となっている。また、外部端子6と集電端子12との接合を外部端子6の回転による摩擦圧接により行うことで、広い接合面積を得つつ、外部端子6の一部分に鍔状部63を形成させてガスケット11に食い込ませるようにしている。
【0036】
この製造方法では、摩擦圧接後に鍔状部63を除去する必要もなければ拡径部125を除去する必要もない。シール性が鍔状部63のガスケット11への食い込みにより確実であるため、蓋部材5にシール性のための形状を設けておく必要もない。このため蓋部材5へのインシュレータ10およびガスケット11の配置の作業が容易である。このようにして、端子部分の接合強度、シール性、製造時の作業性のいずれにも優れた電池1およびその製造方法が実現されている。
【0037】
本実施の形態および実施例は単なる例示にすぎず、本開示技術を何ら限定するものではない。したがって本開示技術は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。例えば、適用対象たる電池の電池種は問わない。適用対象箇所は、正極外部端子、負極外部端子、それらの両方のいずれでもよい。外部端子6、7の取り付け位置がケース2のうち蓋部材5ではなく本体4側にあるものであってもよい。もう一方の外部端子7の構成について、前述のものの他に、ケース2の全体もしくはその本体4の部分がその役割を果たすものであってもよい。
【0038】
インシュレータ10とガスケット11とが別体でなく一体であるものであってもよい。外部端子6の対外露出部62は、円盤状に限らず多角形状であってもよい。対外露出部62の形状としてあるいは、円盤状の部分の上に多角形状の突起部分を設けた多段状のものとしてもよい。集電端子12については、突出部122の当初における直径が柱状部61の直径と同等であることは必須ではない。接合工程後において拡径部125やくびれ部124が形成されていることも必須ではない。集電端子12の全体形状についても任意であり、電極集積体3の構成に合わせたものでよい。外部端子6および集電端子12の材質は、前述の代表例とは別のものであってもよい。外部端子6をある程度予熱しておいてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 電池 11 ガスケット
2 ケース 12 集電端子
3 電極集積体 61 柱状部
4 本体 62 対外露出部
5 蓋部材 63 鍔状部
6 外部端子 102 小径部
7 外部端子 111 円筒部
8 貫通穴 112 面状部
9 貫通穴 122 突出部
10 インシュレータ 123 接続部