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特開2023-122634トリエチレンテトラミン四塩酸塩、その製造方法及び組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122634
(43)【公開日】2023-09-04
(54)【発明の名称】トリエチレンテトラミン四塩酸塩、その製造方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
   C07C 209/86 20060101AFI20230828BHJP
   C07C 211/14 20060101ALI20230828BHJP
   A61K 31/132 20060101ALI20230828BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230828BHJP
【FI】
C07C209/86
C07C211/14
A61K31/132
A61P1/16
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025055
(22)【出願日】2023-02-21
(31)【優先権主張番号】111106476
(32)【優先日】2022-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】523062280
【氏名又は名称】裕捷股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】彭 成毅
(72)【発明者】
【氏名】粱 明仁
(72)【発明者】
【氏名】林 喩偵
(72)【発明者】
【氏名】馮 台雲
【テーマコード(参考)】
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4C206AA01
4C206FA01
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA75
4H006AA01
4H006AA02
4H006AB20
4H006AD15
4H006BB14
4H006BB31
4H006BC10
4H006BE01
(57)【要約】
【課題】本発明は、トリエチレンテトラミン四塩酸塩結晶の調製方法を提供する。
【解決手段】この方法は、供給温度でトリエチレンテトラミン四塩酸塩の水溶液に貧溶媒を添加し、撹拌して結晶を析出させるステップを含み、供給温度は50℃~75℃であり、貧溶媒はアルコール溶媒である。本発明はまた、新規なトリエチレンテトラミン四塩酸塩を提供し、その結晶は、21.9、24.8、25.2、28.0及び35.6±0.1°の2θのピークを有するXRPDパターンを有し、本発明のトリエチレンテトラミン四塩酸塩を使用して調製された組成物は、貯蔵安定性という利点を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリエチレンテトラミン四塩酸塩結晶の製造方法であって、
供給温度でトリエチレンテトラミン四塩酸塩の水溶液に貧溶媒を添加し、撹拌して結晶を析出させるステップ1を含み、
ここで、前記供給温度は50℃~75℃であり、前記貧溶媒はアルコール溶媒である、製造方法。
【請求項2】
前記撹拌は、時間条件及び撹拌温度で行われ、前記時間条件は少なくとも1時間であり、前記撹拌温度は5℃~25℃である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記貧溶媒がメタノールである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記ステップ1は、前記結晶の乾燥減量が1%未満であるように、前記結晶を乾燥させることを更に含む、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記ステップ1の前に、
トリエチレンテトラミン二塩酸塩の水溶液と酸性溶液とを混合して反応溶液とし、酸性化反応を行う予備ステップ1と、
アルコール貧溶媒を加え、撹拌してトリエチレンテトラミン四塩酸塩の粗生成物を析出させる予備ステップ2とを更に含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記反応溶液のpH値が2.0以下である、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記予備ステップ2のアルコール貧溶媒がメタノールである、請求項5に記載の製造方法。
【請求項8】
前記予備ステップ2における撹拌は、温度条件及び時間条件で行われ、前記温度条件は15℃~35℃であり、前記時間条件は少なくとも2時間である、請求項5に記載の製造方法。
【請求項9】
前記予備ステップ2は、前記トリエチレンテトラミン四塩酸塩の粗生成物の乾燥減量が10%未満であるように、前記トリエチレンテトラミン四塩酸塩の粗生成物を乾燥させることを更に含む、請求項5に記載の製造方法。
【請求項10】
トリエチレンテトラミン四塩酸塩であって、前記トリエチレンテトラミン四塩酸塩の結晶が、21.9、24.8、25.2、28.0及び35.6±0.1°の2θのピークを有するXRPDパターンを有する、トリエチレンテトラミン四塩酸塩。
【請求項11】
請求項10に記載のトリエチレンテトラミン四塩酸塩を含む医薬組成物。
【請求項12】
前記医薬組成物が、薬学的に許容される担体を更に含む、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記担体は、溶解剤、希釈剤、潤滑剤、結合剤、解重合剤、発泡混合物、染料、甘味料、湿潤剤、又は医薬製剤に使用される他の無毒で薬理学的に不活性な物質を含む、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記医薬組成物の剤形は、溶液、エマルジョン、懸濁液、粉末、錠剤、丸剤、トローチ又はカプセルを含む、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項15】
ウィルソン病を予防又は治療するための医薬組成物の製造における、請求項10に記載のトリエチレンテトラミン四塩酸塩の用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリエチレンテトラミン四塩酸塩、特にトリエチレンテトラミン四塩酸塩の合成及び応用の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
トリエンチンとしても知られるトリエチレンテトラミン(Trientine、TETA)は式1の構造を有し、これは、その構造内の4つの窒素原子を用いて銅をキレート化し、体内から過剰な銅を排出するのに役立ち、そのため、ウィルソン病の治療によく使用される。現在、トリエチレンテトラミンは主に塩酸塩の形で治療と研究に使用されており、それはまた、トリエチレンテトラミン二塩酸塩(TETA・2HCl)とトリエチレンテトラミン四塩酸塩(TETA・4HCl)に分けられる。
【0003】
【化1】
【0004】
中国特許登録番号CN102924289Bは、TETA・2HClの合成方法を開示しているが、TETA・2HClの安定性がTETA・4HClの安定性よりも悪いことも教示している。台湾特許公開番号202002956Aは、TETA・4HCl形態B結晶形及びその調製方法を開示している。台湾特許公開番号202002956Aは、国際公開第2006/027705号に記載された方法によって調製されたTETA・4HClの結晶形が形態Aであることを教示しており、また、TETA・4HCl形態Aで作られた錠剤は、40℃、湿度75%で6ヶ月間保存した後、断片が色あせし、それに比べて、TETA・4HCl形態Bで作られた錠剤は時間の経過とともに色あせする傾向が少なく、この結果は、TETA・4HCl形態Bの錠剤の方が安定性が高いことを示す。しかしながら、台湾特許公開番号202002956Aに開示された方法は、低温で結晶析出を行うものであり、TETA・4HCl形態Bの形成を促進するために種結晶を添加する必要があり、手順が複雑で不便である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】中国特許第102924289号明細書
【特許文献2】台湾特許公開第202002956号明細書
【特許文献3】国際公開第2006/027705号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記に基づいて、先行技術におけるTETA・4HClの安定性及び製造方法には依然として欠陥があり、改善する必要があることが分かる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上に鑑みて、本発明の目的は、トリエチレンテトラミン四塩酸塩結晶の製造方法を提供することであり、この方法は、供給温度でトリエチレンテトラミン四塩酸塩の水溶液に貧溶媒を添加し、撹拌して結晶を析出させるステップ1を含み、ここで、供給温度は50℃~75℃であり、貧溶媒はアルコール溶媒である。
【0008】
上記の発明の目的を達成するために、アルコール溶媒はメタノール(Methanol、MeOH)又はエタノール(Ethanol)を含み、好ましくはメタノールである。
【0009】
上記の発明の目的を達成するために、上記撹拌は、時間条件及び撹拌温度で行われ、ここで、時間条件は少なくとも1時間であり、撹拌温度は5℃~25℃、好ましくは15±5℃である。
【0010】
上記の発明の目的を達成するために、ステップ1は、結晶の乾燥減量が1%未満であるように、結晶を乾燥させることを更に含む。
【0011】
上記の発明の目的を達成するために、ステップ1の前に、トリエチレンテトラミン二塩酸塩の水溶液と酸性溶液とを混合して反応溶液とし、酸性化反応(Acidification)を行う予備ステップ1と、アルコール貧溶媒を加え、撹拌してトリエチレンテトラミン四塩酸塩の粗生成物を析出させる予備ステップ2とを更に含む。
【0012】
上記の発明の目的を達成するために、反応溶液のpH値は2.0以下である。
【0013】
上記の発明の目的を達成するために、予備ステップ2のアルコール貧溶媒はメタノール又はエタノールを含み、このアルコール溶媒は好ましくはメタノールである。
【0014】
上記の発明の目的を達成するために、予備ステップ2における撹拌は、温度条件及び時間条件で行われ、ここで、温度条件は15℃~35℃、好ましくは25±5℃であり、時間条件は少なくとも2時間である。
【0015】
上記の発明の目的を達成するために、予備ステップ2は、トリエチレンテトラミン四塩酸塩の粗生成物の乾燥減量が10%未満であるように、トリエチレンテトラミン四塩酸塩の粗生成物を乾燥させることを更に含む。
【0016】
本発明の別の目的は、トリエチレンテトラミン四塩酸塩を提供することであり、ここで、トリエチレンテトラミン四塩酸塩の結晶は、21.9、24.8、25.2、28.0及び35.6±0.1°に2θのピークを有するXRPDパターンを有する。
【0017】
本発明の別の目的は、医薬組成物を提供することであり、この医薬組成物は、前述の製造方法により製造されたトリエチレンテトラミン四塩酸塩結晶又は前述のトリエチレンテトラミン四塩酸塩を含む。
【0018】
上記の発明の目的を達成するために、医薬組成物は、薬学的に許容される担体を更に含むことができる。
【0019】
上記の発明の目的を達成するために、担体は、溶解剤、希釈剤、潤滑剤、結合剤、解重合剤、発泡混合物、染料、甘味料、湿潤剤、又は医薬製剤に使用される他の無毒で薬理学的に不活性な物質を含む。
【0020】
上記の発明の目的を達成するために、溶解剤は、シクロデキストリン又は修飾シクロデキストリンを含み、希釈剤は、ラクトース、デキストロース、スクロース、セルロース、コーンスターチ又はポテトスターチを含み、潤滑剤は、二酸化ケイ素、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、又はポリエチレングリコールを含み、結合剤は、デンプン、トラガント、ゼラチン、シロップ、アラビアゴム、ソルビトール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、又はポリビニルピロリドンを含み、解重合剤は、デンプン、アルギン酸、アルギン酸塩又はデンプングリコール酸ナトリウムを含み、湿潤剤は、レシチン、ポリソルベート又はラウリル硫酸を含む。
【0021】
上記の発明の目的を達成するために、医薬組成物の剤形は、溶液、エマルジョン、懸濁液、粉末、錠剤、丸剤、トローチ又はカプセルを含む。
【0022】
本発明の更に別の目的は、ウィルソン病を予防又は治療するための医薬組成物の製造における、前述の製造方法により製造されたトリエチレンテトラミン四塩酸塩結晶又は前述のトリエチレンテトラミン四塩酸塩の用途を提供することである。
【発明の効果】
【0023】
要約すると、本発明は、結晶形NのTETA・4HCl及びその製造方法を提供する。本発明が提供するTETA・4HClは、より簡単な製造及びより高い収率という利点を有する。更に、試験によると、本発明が提供する結晶形NのTETA・4HCl及びその組成物は優れた安定性及び耐吸湿性を有し、先行技術におけるTETA・4HCl及び錠剤の保存の欠点を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明のTETA・4HCl粗生成物の調製フローチャートである。
図2】本発明のTETA・4HCl結晶の調製フローチャートである。
図3】本発明の一実施形態によるTETA・4HClのXRPD分析図である。
図4】本発明のTETA・4HCl錠剤の吸湿性試験結果図である。
図5】本発明の一実施形態によるTETA・4HClのXRPD分析図である。
図6】本発明の一実施形態の比較例のXRPD分析図である。
図7】1ヶ月間保存した本発明のTETA・4HClと比較例の安定性比較結果である。
図8】1ヶ月間保存した本発明のTETA・4HClと比較例の安定性比較結果である。
図9】3ヶ月間保存した本発明のTETA・4HClと比較例の安定性比較結果である。
図10】3ヶ月間保存した本発明のTETA・4HClと比較例の安定性比較結果である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書に記載されるすべての技術用語及び科学用語は、別段の定義がない限り、当業者によって一般的に理解される意味を有する。
【0026】
本明細書及び特許請求の範囲に記載されている単数形の用語「一」、「1つ」、及び「該」は、別段の指定がない限り、複数の対象を指す場合がある。
【0027】
本明細書で使用される「又は」、「及び」、「と」は、特に指定しない限り、すべて「及び/又は」を指す。更に、「包含する」及び「含む」という用語は、限定されない開放型接続詞である。前述の段落は体系的な参照のみであり、本発明の主題に対する限定として解釈されるべきではない。
【0028】
用語「治療する」、「治療に用いる」及び同様の用語は、患者が患っている診断可能な病気及びその病気によって引き起こされる関連症状を遅らせる、改善する、軽減する、又は逆転させる方法、並びにその病気又はそれに関連する任意の症状を予防する方法を指す。
【0029】
「薬学的に許容される」という用語は、物質又は組成物がその医薬製剤の他の成分と適合しなければならず、そして患者の症状を悪化させないことを意味する。
【0030】
「薬学的に許容される担体」という用語は、溶媒、乳化剤、懸濁化剤、崩壊剤、結合剤、賦形剤、安定剤、キレート剤、希釈剤、ゲル化剤、防腐剤、潤滑剤、界面活性剤、及び他の同様の担体又は本発明に適用可能な担体からなる群から選択される1種以上の成分を含む。
【0031】
「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、ポリマー、樹脂、可塑剤、充填剤、潤滑剤、希釈剤、結合剤、崩壊剤、溶媒、共溶媒、界面活性剤、防腐剤、甘味料、香味剤、医薬品グレードの染料又は顔料、及び増粘剤のうちの少なくとも1種を含むが、これらに限定されない。
【0032】
「有効量」という用語は、予想される生物学的応答を生じさせ、引き起こすのに必要な用量を指し、治癒するのに必要な定量ではない。当業者は、医薬組成物の有効量が、所望の生物学的終点、送達される生物活性剤、封入マトリックス(encapsulating matrix)の組成、標的組織などの要因に応じて変化し得ることを理解するであろう。
【0033】
「医薬組成物」という用語は、患者への投与に適した形態、濃度及び純度の固体又は液体組成物を指し、投与後に所望の生理学的変化を誘発することができ、医薬組成物は、無菌又は非発熱性(non-pyrogenic)である。
【0034】
「供給(Feed)」という用語は、生産プロセス中に物質を反応槽に投入することを指す。
【0035】
「工程内管理(In-process control、IPC)」という用語は、生産プロセス中に実行される監視及びプロセス調整を指す。
【0036】
「貧溶媒(anti-solvent)」という用語は、溶質の溶解度を低下させるために使用される溶媒を指す。
【0037】
「酸性化反応(Acidification)」という用語は、固体又は液体に十分な量の酸を加えて酸性にし、この酸性によって起こる反応を指す。
【0038】
「結晶析出」又は「結晶化(crystallization)」という用語は、溶液中の溶質の過飽和による結晶の生成を指す。
【0039】
「結晶洗浄(Wash)」という用語は、生産プロセス中に得られた生成物を特定の溶媒で洗浄することを指す。
【0040】
「乾燥減量(loss on drying、LOD)」という用語は、生成物を一定の重量まで乾燥させた後の重量損失を指す。
【0041】
「再結晶(Re-crystallization)」という用語は、物質又は結晶を溶媒に再溶解した後、溶液から再結晶させることを指す。
【0042】
本発明が提供する製造方法は、場合によっては、最初にTETA・2HClをTETA・4HCl粗生成物(Crude trientine tetrahydrochloride)に調製し、次に、TETA・4HCl粗生成物を本発明が提供するTETA・4HClに調製することができる。
【0043】
TETA・4HCl粗生成物(Crude trientine tetrahydrochloride)の調製
【0044】
例えば、本発明の一実施形態では、TETA・4HCl粗生成物の調製は、TETA・2HClを純水と混合して溶解し、酸性溶液を加えて酸性化反応(Acidification)を行い、次に貧溶媒を加え、撹拌を続けて結晶を析出させ(Crystallization)、その後、反応懸濁液を濾過し、結晶を洗浄し、生成物を乾燥させてTETA・4HCl粗生成物を得ることである。
【0045】
ここで、貧溶媒はTETA・4HClが実質的に不溶性である任意の溶媒であってもよく、限定されないが、エタノール又はメタノールを含み、メタノールが最適であり、酸性溶液は、酸性化反応に一般的に使用される任意の溶液であってもよく、好ましくは塩酸、より好ましくは35%以上の塩酸である。
【0046】
より良好な調製効果を得るために、TETA・2HClと純水との重量比は0.5:1~1:1、好ましくは1:1であり、酸性化反応の温度は10℃~40℃、好ましくは20±10℃であり、酸性化反応の反応溶液のpH値は2.0以下であり、貧溶媒の添加温度は10℃~40℃、好ましくは20±10℃であり、貧溶媒とTETA・2HClとの重量比は2:1~6:1、好ましくは4:1であり、結晶析出の温度は15℃~35℃、好ましくは25±5℃であり、連続撹拌時間は少なくとも2時間であり、生成物の乾燥減量(LOD)は10%未満、好ましくは5.0%以下である。
【0047】
TETA・4HCl結晶(trientine tetrahydrochloride)の調製
【0048】
本発明の一実施形態では、本発明が提供するTETA・4HCl結晶の調製は、TETA・4HCl粗生成物を純水と混合して溶解し、貧溶媒を加え、撹拌を続けて再結晶(Crystallization)させて結晶を析出させ、その後、反応懸濁液を濾過し、結晶を洗浄し、生成物を乾燥させて本発明が提供するTETA・4HCl結晶を得ることである。
【0049】
ここで、貧溶媒はTETA・4HClが実質的に不溶性である任意の溶媒であってもよく、限定されないが、エタノール又はメタノールを含み、メタノールが最適である。
【0050】
より良好な調製効果を得るために、TETA・4HCl粗生成物と純水との重量比は1:1~1:2、好ましくは1:1.2であり、生成物と純水との混合溶解温度は、15℃~35℃、好ましくは25±5℃であり、TETA・4HCl粗生成物と貧溶媒との重量比は、1:2~1:6、好ましくは1:4であり、貧溶媒の供給温度は50℃~75℃、好ましくは60±5℃であり、連続撹拌温度は5℃~25℃、好ましくは15±5℃であり、連続撹拌時間は少なくとも1時間であり、生成物の乾燥減量(LOD)は1%未満、好ましくは0.6%以下である。
【0051】
本発明が提供する医薬組成物について、当業者に周知の技術を使用して、本明細書により提供される有効成分又は組成物を少なくとも1つの薬学的に許容される担体(vehicle)と組み合わせて、本発明の組成物に適した剤形を調製することができる。剤形には、溶液(Solution)、エマルジョン(Emulsion)、懸濁液(Suspension)、粉末(Powder)、錠剤(Tablet)、丸剤(Pill)、トローチ(Troche)又はカプセル(Capsule)及び他の同様の剤形又は本発明に適用可能な剤形が含まれるが、これらに限定されない。
【0052】
更に、本発明に記載の医薬組成物の適切な投与経路には、限定されないが、経口投与、注射、粘膜、局所経皮、及び他の同様の投与経路又は本発明に適用可能な投与経路が含まれ、そのうち、最良の投与経路は経口投与である。
【0053】
当業者は、従来の技術に従って、本発明が提供するTETA・4HCl及び少なくとも1つの薬学的に許容される担体を適切な剤形に調製することができる。例えば、本発明の一実施形態では、医薬組成物は経口剤形であり、これは、必要に応じて本発明が提供するTETA・4HCl結晶を粉砕又は造粒するステップ1と、必要に応じてTETA・4HCl結晶を薬学的に許容される担体と組み合わせて混合物を形成するステップ2とを含むプロセスステップに従って調製することができる。
【0054】
経口剤形が錠剤である場合、ステップ2の後に、混合物を圧縮して錠剤を形成するステップ3と、必要に応じて錠剤を糖衣コーティング又はフィルムコーティングするステップ4とを更に含むことができる。経口剤形がカプセル又は粉末である場合、ステップ2の後に、混合物をカプセルに封入することを更に含むことができる。プロセスステップは、粉砕、造粒、糖衣コーティング又はフィルムコーティングを含むがこれらに限定されない他の基本的な製薬ステップを更に含んでもよい。
【0055】
薬学的に許容される担体は、溶解剤、希釈剤、潤滑剤、結合剤、解重合剤、発泡混合物、染料、甘味料、湿潤剤、又は医薬製剤に使用される他の無毒で薬理学的に不活性な物質を含むが、これらに限定されない。溶解剤は、シクロデキストリン又は修飾シクロデキストリンを含むが、これらに限定されない。希釈剤は、ラクトース、デキストロース、スクロース、セルロース、コーンスターチ又はポテトスターチを含むが、これらに限定されない。潤滑剤は、二酸化ケイ素、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、又はポリエチレングリコールを含むが、これらに限定されない。結合剤は、デンプン、トラガント、ゼラチン、シロップ、アラビアゴム、ソルビトール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、又はポリビニルピロリドンを含むが、これらに限定されない。解重合剤は、デンプン、アルギン酸、アルギン酸塩又はデンプングリコール酸ナトリウムを含むが、これらに限定されない。湿潤剤は、レシチン、ポリソルベート又はラウリル硫酸を含むが、これらに限定されない。
【0056】
医薬組成物は最大で85重量パーセント濃度(wt%)のTETA・4HClを含み、例えば、本発明の一実施形態では、医薬組成物は50重量パーセント濃度(wt%)のTETA・4HClを含む。医薬組成物は、好ましくは無菌で発熱物質を含まない。
【0057】
本発明で使用する材料は、特に指定しない限り、すべて市販されている容易に入手できる材料である。
【0058】
特定の特徴を含めて、本発明の新規な技術的特徴は、特許出願の範囲内で開示されており、本発明の技術的特徴をよりよく理解するために、本明細書、本発明の原理に基づく実施形態、及び添付の図面と併せて、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
【0059】
以下の実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。
【実施例0060】
実施例1、TETA・4HClの合成
【0061】
TETA・4HCl粗生成物(Crude trientine tetrahydrochloride)の調製
【0062】
図1のフローチャートに示すように、トリエチレンテトラミン二塩酸塩(Trientine Dihydrochloride、TETA・2HCl)10kgと純水(Purified water、PW)10kgを反応槽に入れ、25±5℃で溶解した。反応槽の温度を15±5℃に設定し、次に温度20±10℃で反応槽に35%以上の塩酸(Hydrochloric acid)9.45~9.9kgを加え、20±10℃の温度で酸性化反応(Acidification)を行い、反応溶液のpH値を2.0以下に制御した。次に、反応槽の温度を15±5℃に設定し、内部温度20±10℃でメタノール(Methanol、MeOH)40kgを加えて結晶を析出させた(Crystallization)。次に、反応槽の温度を25±5℃に制御し、少なくとも2時間撹拌した。その後、反応槽内の懸濁液を濾過し、結晶をメタノール25kgずつで2回洗浄した。最後に、乾燥減量(LOD)が<5%になるまで生成物を乾燥させ、TETA・4HCl粗生成物を得た。
【0063】
TETA・4HCl(trientine tetrahydrochloride)の調製
【0064】
図2のフローチャートに示すように、前述のステップで得られたTETA・4HCl粗生成物及びその重量の1.2倍の純水を反応槽に入れ、25±5℃で溶解した。次に、TETA・4HCl粗生成物の重量の4倍のメタノールを供給温度60±5℃で加え、その後、反応槽の温度を下げ、反応槽の温度を15±5℃に設定し、内部温度が15±5℃まで下がった後、この温度で少なくとも1時間撹拌を続け、再結晶(Re-crystallization)させて結晶を析出させた。その後、反応槽内の懸濁液を濾過し、結晶を毎回TETA・4HCl粗生成物の重量の2.5倍のメタノールで2回洗浄した。最後に、生成物のLODを0.6%未満まで乾燥させてTETA・4HClを得た。
【0065】
実施例2、TETA・4HClの結晶形の分析
【0066】
実施例1に記載の方法により調製されたTETA・4HClを、X線粉末回折(X-Ray Powder Diffraction、XRPD)によって分析した。結果を図3に示す。本発明が提供するTETA・4HClの結晶は、21.9、24.8、25.2、28.0及び35.6±0.1°の2θのピークを有するXRPDパターンを有し、結晶形N(Form N)と命名される。
【0067】
実施例3、安定性試験1
【0068】
米国薬局方(United States Pharmacopeia、USP)に開示された方法に従って、薄層クロマトグラフィー(Thin-layer chromatography、TLC)を使用してクロマトグラフィー純度(Chromatographic purity)を確認し、実施例1で合成したTETA・4HClを異なる温度(25℃~40℃)及び異なる湿度(60%RH~75%RH)で1ヶ月保存した後、含まれる不純物(impurity)を分析した。結果を表1に示す。TETA・4HClを異なる温度及び異なる湿度で1ヶ月保存した結果、不純物が検出されず、この結果は、本発明が提供するTETA・4HClが良好な安定性を有することを証明した。
【0069】
【表1】
【0070】
実施例4、安定性試験2
【0071】
実施例1に記載の方法により調製されたTETA・4HClを錠剤に圧縮し、その錠剤を25℃、60%RH又は40℃、75%RHの環境条件下で3ヶ月間保存し、その含有量及び不純物を分析した。
【0072】
結果を表2に示す。錠剤を3か月間保存した後、TETA・4HClの明らかな分解は見られず、また、すべての不純物は最初の測定結果と同じであり、且つ分析の定量限界(Quantification Limit)よりも低かった。
【0073】
【表2】
【0074】
実施例5、吸湿性試験
【0075】
実施例4に記載の錠剤を25℃、75%RHの環境条件で1ヶ月保存した後、その吸湿性を試験し、市販のトリエンチン塩酸塩錠剤(Cuprior(登録商標)、TETA・4HCl形態B錠剤)及び市販のTETA・2HClカプセルを比較例として使用した。結果を図4に示す。本発明のTETA・4HCl結晶から調製された錠剤は明らかな吸湿による重量増加を示さないが、市販のTETA・2HClカプセルの吸湿による重量増加は元の重量の75%以上であり、この結果は、本発明のTETA・4HCl結晶から調製された錠剤がより優れた耐吸湿性を有することを証明した。
【0076】
実施例6、収率分析及び安定性比較
【0077】
実施例1に記載された調製方法に従って結晶形NのTETA・4HClを調製し、台湾特許公開番号202002956Aに開示された方法によって形態BのTETA・4HClを比較例として調製した。
【0078】
XRPD分析結果を図5及び図6に示す。図5は本発明のTETA・4HCl結晶のXRPDパターンであり、図6は比較例のXRPDパターンであり、比較例のXRPDパターンは、台湾特許公開番号202002956Aに記載の形態Bであることを示す。収率の結果を表3に示す。本発明が提供する調製方法に従って調製されたTETA・4HCl(結晶形N)は、予想外に収率が高く(77.1%~86.6%)、また、本発明が提供する方法は、調製手順において低温で結晶を析出させる必要がなく、種結晶を使用することなくTETA・4HClを取得できるという利点を有する。
【0079】
【表3】
【0080】
更に、本発明のTETA・4HClと比較例を異なる温度(25℃~40℃)及び異なる湿度(60%RH~75%RH)で1ヶ月又は3ヶ月保存した後、米国薬局方に開示された方法に従って、薄層クロマトグラフィーを使用してクロマトグラフィー純度を確認した。安定性の比較結果を図7図10に示す。本発明のTETA・4HClは、比較例と同様の安定性を有する。
【0081】
上記の結果を要約すると、本発明が提供する調製方法は、調製手順がより簡単であるという利点を有するだけでなく、TETA・4HClを高収率で得ることができることが分かる。更に、本発明が提供する調製方法により合成されたTETA・4HClは、結晶形Nに属し、本発明が提供するTETA・4HCl及びその組成物は、優れた安定性及び耐吸湿性を有し、先行技術に存在する安定性の問題を改善することができる。
【0082】
本明細書の好ましい実施形態に開示されている内容に関して、当業者は、前述の実施形態が単なる例にすぎないことを明確に理解することができ、当業者は、本発明の技術的特徴から逸脱することなく、多くの変換及び置換を通じて実装することができる。本明細書の実施形態によれば、本発明は、実装を妨げることなく様々な変形が可能である。本明細書で提供される特許請求の範囲は、本発明の範囲を定義するものであり、この範囲は、前述の方法及び構造並びにそれらと同等の発明をカバーする。
【0083】
上記の多くの特徴は、新規性と創造性の法定特許要件を完全に満たしているため、法律に従って出願を提出し、発明を奨励するために本発明特許出願を承認するよう貴庁に懇願する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10