(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122642
(43)【公開日】2023-09-04
(54)【発明の名称】スチレン系ブロックコポリマー及びその調製法
(51)【国際特許分類】
C08F 297/04 20060101AFI20230828BHJP
C08F 8/04 20060101ALI20230828BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20230828BHJP
C08L 53/02 20060101ALI20230828BHJP
C09J 153/02 20060101ALI20230828BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20230828BHJP
【FI】
C08F297/04
C08F8/04
C08L101/00
C08L53/02
C09J153/02
C09J7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023026038
(22)【出願日】2023-02-22
(31)【優先権主張番号】63/268,390
(32)【優先日】2022-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】523064398
【氏名又は名称】クレイトン・ポリマーズ・ネーデルラント・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グザビエ・マイルデルマンス
(72)【発明者】
【氏名】ジュリー・リー
【テーマコード(参考)】
4J002
4J004
4J026
4J040
4J100
【Fターム(参考)】
4J002AA012
4J002AC012
4J002AC032
4J002AC062
4J002AC072
4J002AC082
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4J100HG03
4J100JA01
4J100JA03
4J100JA43
(57)【要約】 (修正有)
【課題】広い温度領域にわたって、広いタンデルタ(δ)ピークと接着力との組み合わせを有し、かつ経時的に低い剥離接着ビルドアップを有するポリマーを提供する。
【解決手段】水素化の前に、少なくとも1つのビニル芳香族モノマーのポリマーブロックA、少なくとも1つの共役ジエンのポリマーブロックB並びに少なくとも1つのビニル芳香族モノマー及び1,3-ブタジエンモノマーのコポリマーブロックCを含む、水素化スチレン系ブロックコポリマー(HSBC)を開示する。HSBCは15~60重量%の総ビニル芳香族含有量及び20~80%の芳香族ブロック性指数を有する。HSBCの粘弾性特性は、0.7~2のtanδピーク高さ、-40~25℃のtanδピーク温度及び17~40のtanδピーク半分高さでの温度幅値(単位℃)の値を示す。HSBCは、改善された機械的性質を提供し、接着剤及び保護フィルム用途の調製に使用することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのポリマーブロックA、少なくとも1つのポリマーブロックB及び少なくとも1つのコポリマーブロックCを含む水素化スチレン系ブロックコポリマーであって、
水素化の前に、
各ポリマーブロックAがビニル芳香族モノマーに由来し、
各ポリマーブロックBが、イソプレン、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、ファルネセン、ミルセン、ピペリレン、シクロヘキサジエン及びこれらの混合物からなる群から選択される共役ジエンモノマーに由来し、
各コポリマーブロックCが、少なくとも1つのビニル芳香族モノマー及び1,3-ブタジエンモノマーに由来し、
水素化後、前記水素化スチレン系ブロックコポリマーが、
ポリマーブロックB中の重合された共役ジエンモノマーにおける90%超の水素化レベル、
ポリマーブロックC中の重合された1,3-ブタジエンモノマーにおける90%超の水素化レベル、
15~60重量%の総ビニル芳香族含有量、
20~80%の芳香族ブロック性指数(ABI)、及び
10~35のゴム状脂肪族メチル指数(RAMI)
を有し、
前記水素化スチレン系ブロックコポリマーが、
0.7~2のtanδピーク高さ、
-40~25℃のtanδピーク温度、
17~40のtanδピーク半分高さでの温度幅値(単位℃)、及び
14~21のtanδピーク温度と最大損失弾性率ピーク温度との温度差値(単位℃)
を有する(すべての測定は動的機械分析(DMA)(10rad/秒)による)ことを特徴とする、水素化スチレン系ブロックコポリマー。
【請求項2】
前記tanδピーク高さの値と前記tanδピーク半分高さでの温度幅値(単位℃)との乗算値(単位℃)が25℃より大きく、前記tanδピーク高さが0.9超であり、前記tanδピーク半分高さでの温度幅値(単位℃)が22℃より大きい、請求項1に記載の水素化スチレン系ブロックコポリマー。
【請求項3】
前記水素化スチレン系ブロックコポリマーが、-55~-25℃の最大損失弾性率ピーク温度を有する、請求項1に記載の水素化スチレン系ブロックコポリマー。
【請求項4】
前記水素化スチレン系ブロックコポリマーが、25~75%の芳香族ブロック性指数(ABI)及び12~32のゴム状脂肪族メチル指数(RAMI)を有する、請求項1に記載の水素化スチレン系ブロックコポリマー。
【請求項5】
前記水素化スチレン系ブロックコポリマーが、ASTM D412に従って測定して10~60MPaの引張強度を有し、D1238に従って2.16kgの荷重及び230℃で測定して1~200dg/分のメルトフローレート(MFR)を有する、請求項1に記載の水素化スチレン系ブロックコポリマー。
【請求項6】
前記水素化スチレン系ブロックコポリマーが、該水素化スチレン系ブロックコポリマーの全重量に対して、20~55重量%のビニル芳香族含有量(PSC)を有する、請求項1に記載の水素化スチレン系ブロックコポリマー。
【請求項7】
ポリマーブロックBが、重合された1,3-ブタジエンモノマーを含有し、ポリマーブロックB及びC中の前記重合された1,3-ブタジエンモノマーが、ポリマーブロックB及びCの全重量に対して、合わせて少なくとも50重量%である、請求項1に記載の水素化スチレン系ブロックコポリマー。
【請求項8】
ポリマーブロックBが、重合された1,3-ブタジエンモノマーを含有し、ポリマーブロックB及びCが、合わせて、ポリマーブロックB及びC中の前記重合された1,3-ブタジエンモノマーの全重量に対して、1,2付加によって導入された重合された1,3-ブタジエンモノマーを、40~80重量%含有する、請求項1~7のいずれかに記載の水素化スチレン系ブロックコポリマー。
【請求項9】
前記水素化スチレン系ブロックコポリマーが、A-B-C、A-B-C-A、A-B-C-A’、A-B-C-B、A-B-C-A-B、A-B-C-B-A、B-A-B-C-B-A、B-A-B-C-B-A-B、C-B-A-B-C、(A-B-C)nX、(A-B-C-A)nX、(B-A-B-C)nX、(A-B-C-B-A)nX、(C-B-A-B-C)nX又はこれらの混合の一般的な構成を有するスチレン系ブロックコポリマー前駆体(式中、nは正の整数であり、Xはカップリング剤の残基である)の水素化によって得られ、
各ポリマーブロックA及びA’が、独立して、スチレン、p-メチルスチレン、p-エチルスチレン、p-n-プロピルスチレン、p-イソプロピルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-sec-ブチルスチレン、p-イソブチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-デシルスチレンの異性体、p-ドデシルスチレンの異性体、o-置換スチレン、m-置換スチレン、アルファメチルスチレン、1,1-ジフェニルエチレン、1,2-ジフェニルエチレン及びこれらの混合物からなる群から選択されるビニル芳香族モノマーを含み、
各ポリマーブロックBが、イソプレン、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、ファルネセン、ミルセン、ピペリレン、シクロヘキサジエン及びこれらの混合物からなる群から選択される共役ジエンモノマーを含み、
各コポリマーブロックCが、スチレン及び1,3-ブタジエンモノマーを含む、
請求項1~6のいずれかに記載の水素化スチレン系ブロックコポリマー。
【請求項10】
ポリマーブロックB中の前記重合された共役ジエンモノマー及びポリマーブロックC中の前記重合された1,3-ブタジエンモノマーが、独立して、95%超のレベルまで水素化される、請求項1~6のいずれかに記載の水素化スチレン系ブロックコポリマー。
【請求項11】
ポリマーブロックCが、前記ポリマーブロックCの全重量に対して、30~85重量%の重合された1,3-ブタジエンモノマーを含む、請求項1~6のいずれかに記載の水素化スチレン系ブロックコポリマー。
【請求項12】
熱可塑性エラストマー組成物であって、該熱可塑性エラストマー組成物の全重量に対して、
50~99重量%の請求項1~6のいずれかに記載の水素化スチレン系ブロックコポリマー、
1~50重量%の粘着性付与樹脂、及び
0~15重量%の少なくとも1つの添加剤、
を含む、熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項13】
ゴム組成物であって、該ゴム組成物の全重量に対して、
50~99重量%の請求項1~6のいずれかに記載の水素化スチレン系ブロックコポリマー、
1~50重量%のゴム、及び
0~15重量%の少なくとも1つの添加剤
を含む、ゴム組成物。
【請求項14】
アスファルト組成物であって、該アスファルト100重量部に対して、0.5~50重量部の請求項1~6のいずれかに記載の水素化スチレン系ブロックコポリマーを含む、アスファルト組成物。
【請求項15】
請求項1~6のいずれかに記載の水素化スチレン系ブロックコポリマーを含み、1~200μmの厚さを有する接着剤フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水素化スチレン系ブロックコポリマー(HSBC)、調製法及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ビニル芳香族化合物と共役ジエンを含有しているスチレン系ブロックコポリマー(SBC)は、当該技術分野で周知であり、天然ゴム及び/又は合成ゴムの弾性に匹敵する弾性を示す。さらに、高温におけるSBCの加工性は熱可塑性樹脂と比較することができる。
【0003】
SBCは自動車産業、建築、工具製造、接着剤、シーラント、家庭用電化製品のためのパッケージング材などを含むいくつかの用途において使用される。いくつかの用途については、広い振動周波数範囲と広い温度範囲にわたる高音減衰性能又は制振性が要求される。タンデルタ(δ)ピークは、変形される際に材料がエネルギーを消費する効率を特徴づける、貯蔵弾性率に対する損失弾性率の比である。他のいくつかの用途については、例えば、ポリマー、金属、ガラス、木材、家具、取付具、電化製品などの表面を、かき傷、汚れ及びしみから保護することに用いられる表面保護フィルムである。そのような用途で使用されるSBCには、強度、適切な弾性率又は硬度、耐候性、耐熱性などの点で機械的性質のバランスを有する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
広い温度領域にわたって、広いタンデルタ(δ)ピークと接着力との組み合わせを有し、かつ経時的に低い剥離接着ビルドアップを有するポリマーが依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(要旨)
第1の態様において、本開示は、少なくとも1つのポリマーブロックA、少なくともポリマーブロックB及び少なくとも1つのコポリマーブロックCを含む、本質的にそれからなる、又はそれからなる水素化スチレン系ブロックコポリマー(HSBC)に関する。水素化の前に、各ポリマーブロックAはビニル芳香族モノマーに由来し、各ポリマーブロックBは、イソプレン、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、ファルネセン、ミルセン、ピペリレン、シクロヘキサジエン及びこれらの混合物からなる群から選択される共役ジエンモノマーに由来し、各コポリマーブロックCは、少なくとも1つのビニル芳香族モノマー及び1,3-ブタジエンモノマーに由来する。HSBCは、ポリマーブロックB中の重合された共役ジエンモノマーにおける90%超の水素化レベル、ポリマーブロックC中の重合された1,3-ブタジエンモノマーにおける90%超の水素化レベル、15~60重量%の総ビニル芳香族含有量、20~80%の芳香族ブロック性指数(ABI)、及び10~35のゴム状脂肪族メチル指数(RAMI)を有する。HSBCは、0.7~2のtanδピーク高さ、-40~25℃のtanδピーク温度、17~40のtanδピーク半分高さでの温度幅値(単位℃)、及び14~21のtanδピーク温度と最大損失弾性率ピーク温度との温度差値(単位℃)を有する(すべての測定は動的機械分析(DMA)(10rad/秒)による)ことを特徴付とする。
【0006】
第2の態様において、ポリマーブロックBは、重合された1,3-ブタジエンモノマーを含有する。ポリマーブロックB及びC中の重合された1,3-ブタジエンモノマーは、ポリマーブロックB及びCの全重量に対して、合わせて、少なくとも50重量%である。
【0007】
第3の態様において、ポリマーブロックBは重合された1,3-ブタジエンモノマーを含有する。ポリマーブロックB及びCは、ともに、ポリマーブロックB及びC中の重合された1,3-ブタジエンモノマーの全重量に対して、1,2付加によって導入された重合された1,3-ブタジエンモノマーを40~80重量%含有する。
【0008】
第4の態様において、tanδピーク高さの値とtanδピーク半分高さでの温度幅値(単位℃)との乗算値(単位℃)は25℃より大きい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】水素化スチレン系ブロックコポリマーのタンジェントデルタ(tanδ)と損失弾性率(G”)を有するノモグラムのDMA(動的機械分析)の例示である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の用語は、本明細の全体にわたって使用されることになる。
【0011】
「[A、B及びCなどの群]のうちの少なくとも1つ」又は「[A、B及びCなどの群]のうちのいずれか」とは、群からの単一のメンバー、群からの2つ以上のメンバー又は群からのメンバーの組み合わせを意味する。例えば、A、B及びCのうちの少なくとも1つは、例えば、Aのみ、Bのみ若しくはCのみ、並びにA及びB、A及びC、B及びC;又はA、B及びC、又はA、B及びCのうちの他のすべての組合せを含む。「A、B又はC」として示される実施形態のリストは、実施形態Aのみ、Bのみ、Cのみ、「A若しくはB」、「A若しくはC」、「B若しくはC」又は「A、B若しくはC」を含むと解釈するものである。
【0012】
「少なくとも1つのX及びY」とは、「X、X及びY」又は「X、X、X及びY」又は「X及びY」のみなど1つ以上のX及び1つのYがあることを意味する。
【0013】
「コポリマー」とは、2種以上のモノマーに由来するポリマーを示す。
【0014】
「ブロックコポリマー」とは、2種以上のモノマーを含むコポリマーを指し、ここでモノマーはブロックにおいて存在する。各ブロックは、同じブロックコポリマー中の結合している周囲のブロックの一連のモノマーとは異なる一連のモノマー単位で構成されている。各ブロックは、ホモポリマー又はランダムコポリマーから構成されてもよい。
【0015】
ブロックコポリマーの「ポリスチレン含有量」又はPSCは、ブロックコポリマー中のビニル芳香族、例えばスチレンの重量%を指し、ビニル芳香族単位すべての分子量の合計をブロックコポリマーの全分子量で割ることによって計算される。PSCは、プロトン核磁気共鳴(NMR)などの任意の適切な方法を使用して決定することができる。
【0016】
「分子量」又はMwは、ポリマーブロック又はブロックコポリマーのkg/mol単位におけるポリスチレン等価分子量を指す。Mwは、ポリスチレン較正標準を使用したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができ、例えば、ASTM5296-19に従って行われる。GPC検出器は、紫外線若しくは屈折率検出器又はこれらの組合せであってもよい。クロマトグラフは、市販のポリスチレン分子量標準を用いて較正される。GPCを用いて測定されたポリマーのMwは、ポリスチレン等価分子量又は見かけの分子量であり、GPCトレースのピークで測定され、一般にポリスチレン等価の「ピーク分子量」と呼ばれ、Mpと示される。個々のGPCブロックMwは、考慮したブロック重合の前後に測定されたMpの差によって計算することができる。例えば、ブロックBのMwは、種A-BのMpからブロックAのMpを引いたものである。
【0017】
「タンジェントデルタ」又はタンデルタ又はtanD又はtanδは、損失弾性率と弾性率の比を指す。tanδも、粘弾性のシステムにおいて減衰の基準として一般に使用される減衰定数、散逸率又は損失係数と呼ばれる。tanδは、DMAによって測定することができる。
【0018】
「tanδ最大値」は、最大の減衰定数を指す。
【0019】
(コ)ポリマー中の「芳香族ブロック性指数」又はABIは、ポリマーに存在する芳香族単位の全体量における、2個の隣接する芳香族単位を有する芳香族単位の百分率を指す。ABIは、(コ)ポリマーのH-1NMR分光分析法を用いて測定され、下記式により数学的に得られる
ABI=100×(積分2/積分1)
[式中、積分1は、7.5ppm~6.0ppmのH-1NMRスペクトルを積分し、結果を5で割ることによって決定され、積分2は、6.9ppm~6.6ppmから6.0ppmまでの最小シグナル領域のH-1NMRスペクトルを積分し、結果を2で割ることによって決定される。]。
【0020】
(コ)ポリマー中の「ゴム状脂肪族メチル指数」又はRAMIは、ゴム状単位内部に存在する全脂肪族プロトンに対する、共役ジエンに由来する単位のメチル基に存在する脂肪族プロトン(H)の百分率を指す。全脂肪族プロトン及びメチルプロトン含有量は、芳香族単位から脂肪族プロトンの寄与を除去するために修正される。RAMIは、ポリマーのH-1NMR分光分析法を用いて測定され、下記式により数学的に得られる
RAMI=100×(積分2-補正2)/(積分1-補正1)
[式中、積分1は、2.99ppm~0.6ppmのH-1NMRスペクトルを積分することによって決定され、積分2は、1.0ppm~0.8ppmから0.6ppmまでの最小シグナル領域のH-1NMRスペクトルを積分することによって決定される。]。その補正は、HSBC及び積分3に存在するビニル芳香族単位の官能基である。積分3は、7.4ppm~6.2ppmのH-1NMR HSBCスペクトルを積分することによって決定される。ビニル芳香族単位がスチレンモノマーに由来する場合、補正2は0であり、補正1は次のように定義される。補正1=0.6×積分3。
【0021】
本開示は、改善された機械的性質を備えた水素化スチレン系ブロックコポリマー(HSBC)に関し、広いタンデルタ(δ)ピーク及び広い接着温度領域を有し、接着剤、保護フィルム、熱可塑性コンパウンドのオーバーモールディングなどを含む用途に用いられるものとして特徴付けられる。
【0022】
(水素化スチレン系ブロックコポリマー(HSBC))
HSBCは、SBC前駆体を水素化することにより形成され、SBCは、少なくとも1つの端部ポリマーブロックA、少なくとも1つの内部のポリマーブロックB及び/又はポリマーブロックCを有する直鎖状、分岐鎖状、又は放射状のブロックコポリマーである。
【0023】
いくつかの実施形態において、SBC前駆体は、A-B-C、A-B-C-A、A-B-C-A’、A-B-C-B、A-B-C-A-B、A-B-C-B-A、B-A-B-C-B-A、B-A-B-C-B-A-B、C-B-A-B-C、(A-B-C)nX、(A-B-C-A)nX、(B-A-B-C)nX、(A-B-C-B-A)nX、(C-B-A-B-C)nX又はこれらの混合の一般的な構成を有し、式中、nは2~30の整数であり、Xはカップリング剤の残基である。ポリマーブロックA及びA’は同じである又は異なっており、ビニル芳香族モノマーに基づく。ポリマーブロックBは、共役ジエンモノマーに由来する。コポリマーブロックCは、少なくとも1つのビニル芳香族モノマー及び1,3-ブタジエンモノマーに由来する。
【0024】
いくつかの実施形態において、ビニル芳香族モノマーは、スチレン、p-メチルスチレン、p-エチルスチレン、p-n-プロピルスチレン、p-イソプロピルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-sec-ブチルスチレン、p-イソブチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-デシルスチレンの異性体、p-ドデシルスチレンの異性体、o-置換スチレン、m-置換スチレン、アルファメチルスチレン、1,1-ジフェニルエチレン及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0025】
いくつかの実施形態において、共役ジエンモノマーは、イソプレン、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、ファルネセン、ミルセン、ピペリレン、シクロヘキサジエン及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0026】
いくつかの実施形態において、ポリマーブロックBは、ポリマーブロックB中の重合された共役ジエンモノマーの全重量に対して、最大100、70~100又は75~98又は80~95又は>70又は>75又は80重量%の量の重合された1,3-ブタジエンモノマーを有する。いくつかの実施形態において、ポリマーブロックBは、ブロックB中の重合されたモノマーの全重量に対して、0~30又は2~25又は5~20重量%の1,3-ブタジエン以外の重合された共役ジエンモノマーを含む。いくつかの実施形態において、ポリマーブロックBは、1,3-ブタジエンモノマーのホモポリマーブロックである。
【0027】
いくつかの実施形態において、ポリマーブロックB及びC中に存在する重合された1,3-ブタジエンモノマーの総量は、ポリマーブロックB及びCの全重量に対して、合わせて、>50又は>55又は>60又は>65又は>70又は>75重量%である。
【0028】
いくつかの実施形態において、コポリマーブロックCは、コポリマーブロックCの全重量に対して、30~85、30~80又は35~75又は40~70又は45~65又は50~80又は<75重量%の重合された1,3-ブタジエンモノマーを含む。
【0029】
いくつかの実施形態において、コポリマーブロックCは、コポリマーブロックCの全重量に対して、15~70又は20~60又は25~50重量%の重合されたビニル芳香族モノマーを含む。
【0030】
ブロックB及びCは、1,2付加及び/又は1,4付加のいずれかによって1,3-ブタジエンモノマーを導入することができる。いくつかの実施形態において、ブロックB及びCは、ともに、ブロックB及びC中の重合された1,3-ブタジエンモノマーの全重量に対して、40~80又は45~80又は65~80又は70~80重量%の、1,2付加によって導入された1,3-ブタジエンモノマーを含有する。
【0031】
いくつかの実施形態において、SBC前駆体を水素化してHSBCを得、ポリマーブロックA及びC中の重合されたビニル芳香族モノマーは、本質的に水素化されないままであり、ポリマーブロックB中の重合された共役ジエン単位及びブロックC中の重合された1,3-ブタジエン単位の多くは水素化されることを意味する。
【0032】
いくつかの実施形態において、ポリマーブロックB中の重合された共役ジエンモノマー及びコポリマーブロックC中の重合された1,3-ブタジエンモノマーは、ポリマーブロックB中の重合された共役ジエンモノマー及びコポリマーブロックC中の重合された1,3-ブタジエンモノマーの重量に対して、>70又は>80又は>85又は>90又は>95又は>98又は>99又は>99.9%のレベルまで、独立して水素化される。
【0033】
いくつかの実施形態において、ブロックA及びC中の重合されたビニル芳香族モノマーは、ブロックA及びC中の重合されたビニル芳香族モノマーの重量に対して、<30又は<25又は<20又は<15又は<10又は<5又は<2%のレベルまで、独立して水素化される。
【0034】
いくつかの実施形態において、ポリマーブロックAは、2~50又は3~45又は5~40又は10~35又は15~30又は>3又は<35kg/molのMpを有する。いくつかの実施形態において、ポリマーブロックBは、10~300又は15~150又は20~100又は25~80又は30~60又は>15又は<90kg/molのMpを有する。いくつかの実施形態において、コポリマーブロックCは、5~300又は10~200又は15~150又は20~120又は25~100又は30~90又は>15又は<160kg/molのMpを有する。
【0035】
いくつかの実施形態において、SBC前駆体の全重量に対して、ポリマーブロックAは、5~35又は10~30又は5~25、>8又は<40重量%を構成し、ポリマーブロックBは、5~35又は10~30又は5~25又は>8又は<40重量%を構成し、コポリマーブロックCは、30~75又は35~70又は40~65又は>25又は<60重量%を構成する。
【0036】
いくつかの実施形態において、HSBCの全重量に対して、HSBCは、15~60、20~55又は25~50又は30~45重量%の総ビニル芳香族含有量(PSC)を有する。
【0037】
いくつかの実施形態において、HSBCは、10~35又は12~32又は15~30又は17~30又は>20又は>25のRAMIを有する。
【0038】
いくつかの実施形態において、HSBCは、20~80%又は25~75%又は30~70%又は35~65%又は40~60%又は>30%又は>40%又は<75%のABIを有する。
【0039】
いくつかの実施形態において、HSBCは、OH、ハロゲン、酸無水物、アミノ、エポキシ、ホスフィノ、SO3Y、CO2Z(式中、Yは金属陽イオン、H、アルコキシ又はアリールオキシである)からなる群から選択される少なくとも1つの官能基をさらに含む。
【0040】
(SBC前駆体の調製法)
SBC前駆体は、当該技術分野で公知のプロセスによって調製することができ、米国特許第7449518号において開示されている。典型的には、SBC前駆体は、開始剤の存在下、溶液中でモノマーを逐次(又は連続)重合を用いるアニオン重合によって重合させ、続いて、重合されたブロックコポリマー鎖を停止させることによって調製される。モノマーの重合は、開始剤を含有する溶液にモノマーを段階的に添加し、続いて、得られた逐次ブロックコポリマー鎖をカップリング剤(存在する場合)とカップリングさせ、続いて、HSBCを製造するための水素化工程によって実施され得る。
【0041】
開始剤は、一般に有機リチウム化合物、例えば、エチル-、プロピル-、イソプロピル-、n-ブチル-、sec-ブチル-、tert-ブチル-、フェニル-、ヘキシルビフェニル-、ヘキサメチレンジ-、ブタジエニル-、イソプレネイル-、1,1-ジフェニルヘキシルリチウム又はポリスチリルリチウム、などの有機金属化合物である。必要な開始剤の量は、達成されるべき分子量に基づいて計算され、重合されるモノマーの全重量に対して一般に0.002~5重量%である。重合用の溶媒としては、4~12個の炭素原子を有する脂肪族、脂環式又は芳香族炭化水素、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン、イソオクタン、ベンゼン、アルキルベンゼン、例えば、トルエン、キシレン又はエチルベンゼン並びにこれらの混合物を挙げることができる。
【0042】
いくつかの実施形態において、連続する重合ステップの運転条件は、-30~150℃又は10~100℃又は30~90℃の温度でのアニオン重合の運転条件に類似している。重合は、温度、モノマー成分の濃度、ブロックコポリマーの分子量などに応じて、不活性雰囲気、例えば、窒素中又は約0.5~65バールの範囲内の圧力下において<12時間又は5分~5時間の間、実施される。
【0043】
カップリング剤の例としては、二官能性又は多官能性化合物、例えば、ジビニルベンゼン、脂肪族又は芳香脂肪族炭化水素のハロゲン化物、例えば、1,2-ジブロモエタン、ビス(クロロメチル)ベンゼン又は四塩化ケイ素、ジアルキル若しくはジアリールケイ素二塩化物、アルキル若しくはアリールケイ素三塩化物、四塩化スズ、アルキルケイ素メトキシド、アルキルケイ素エトキシド、多官能性アルデヒド、例えばテレフタル酸ジアルデヒド、ケトン、エステル、無水物又はエポキシドを挙げることができる。いくつかの実施形態において、カップリング剤は、メチルトリメトキシシラン(MTMS)、メチルトリエトキシシラン(MTES)、テトラメトキシシラン(TMOS)、アジピン酸ジメチル及びこれらの混合物から選択される。
【0044】
適切な量のカップリング剤を使用して、所望のカップリング効率、例えば、>50%又は>60%又は>70%又は>80%又は>90%を得ることができる。
【0045】
いくつかの実施形態において、SBC前駆体は、米国特許第3670054号及び第3700633号に開示されているような水素化プロセスを使用して水素化される。重合された共役ジエンモノマーの二重結合に選択的であり、重合されたビニル芳香族モノマーの芳香族不飽和を実質上そのままにしておく水素化プロセスを使用することができる。
【0046】
いくつかの実施形態において、水素化プロセスは、金属、例えば、ニッケル、コバルト又はチタン、及び適切な還元剤、例えば、アルミニウムアルキルを含む触媒又は触媒前駆体を使用する。十分な量の触媒が、反応温度、所望するポリマーの分子量などに応じて使用される。水素化は、25~175℃又は35~150℃又は50~100℃の温度で、5分~8時間又は30分~4時間の範囲の間に制御される。水素化が完了した後、触媒及び触媒残渣は、ブロックコポリマーから分離される。
【0047】
(HSBCに基づいた組成物)
HSBCは、主成分として熱可塑性エラストマー組成物(TPE)の中で使用することができる又はコンパウンド中でポリオレフィンと混合することができる又はゴム組成物中でゴムと混合することができる。
【0048】
いくつかの実施形態において、熱可塑性エラストマー組成物(TPE)は、HSBC、任意選択の粘着性付与樹脂、任意選択の(他の)ポリマー、任意選択の添加剤を含んで調製される。HSBCは、TPE組成物全重量に対して、50~99又は60~90又は70~95重量%の量で添加することができる。
【0049】
他のポリマーの例としては、ポリ乳酸、ポリスチレン、ポリエチレングリコール、ポリ(ビニルアルコール)、ポリウレタン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリルアミド)、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(ブチルサクシネート)、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリフェニルオキシド、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(n-ビニルピロリドン)、ポリエチレンイミン、ポリ(ジメチルアクリルアミド)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリアクリレート、ポリ(ジメチルシロキサン)、前述のポリマーとのコポリマー及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0050】
粘着性付与樹脂の例としては、1つ以上の天然ロジン若しくは修飾ロジン又はポリオールを使用して製造されたものを含むロジンエステル、ポリテルペン樹脂、フェノール修飾テルペン樹脂、芳香族樹脂、石油の分解/精製から得られるC5若しくはC9炭化水素流を使用して製造されたものなどの脂肪族石油樹脂、これらの水素化された形態又はこれらの混合物を挙げることができる。いくつかの実施形態において、粘着性付与樹脂は、TPE組成物全重量に対して、1~50又は10~40又は5~30重量%の量で使用される。
【0051】
いくつかの実施形態において、HSBCは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン(PB)、ポリイソブチレン、エチレンプロピレンゴム、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリブタジエン(例えばポリ-1,3-ブタジエン又はポリ-1,2-ブタジエン)などのポリジエン、ポリイソプレン、ポリジシクロペンタジエン(PDCPD)、エチリデンノルボルネン又はビニルノルボルネンのポリマー、EPDMゴム、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高分子量ポリエチレン(HMWPE)及び超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリオレフィンエラストマー(POE)及びこれらの混合物からなる群から選択されるポリオレフィンと混合される。いくつかの実施形態において、ポリオレフィンに対するHSBCの重量比は、1:10~10:1又は7:3~3:7又は2:3~3:2である。
【0052】
いくつかの実施形態において、HSBCは、天然ゴム、合成ゴム及びこれらの混合物から選択された、1つ以上のゴムと混合される。ゴムの例としては、天然ゴム(NR)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、エチレン/α-オレフィンゴム(EPR)、エチレンビニルアセテート(EVA)、スチレン/ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル/ブタジエンゴム(NBR)、ポリクロロプレンゴム、ポリブタジエンゴム(BR)、合成ポリイソプレンゴム(IR)、イソブチレン-イソプレンゴム(IIR)及びこれらの混合物を挙げることができる。いくつかの実施形態において、ゴム組成物は、ゴム組成物の全重量に対して、50~99重量%のHSBC、1~50重量%のゴム及び0~15重量%の添加剤を含み調製される。
【0053】
いくつかの実施形態において、任意選択の添加剤は、活性化剤、硬化剤、中和剤、増粘剤、融合助剤、スリップ剤、剥離剤、抗微生物剤、界面活性剤、酸化防止剤、オゾン分解防止剤、変色pH指示薬、可塑剤、粘着性付与剤、フィルム形成添加剤、染料、顔料、架橋剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、触媒、充填剤、酸化還元対、繊維、難燃剤、粘度調節剤、湿潤剤、脱気剤、強化剤、接着促進剤、着色料、熱安定剤、潤滑剤、流動性調節剤、防滴剤、帯電防止剤、加工助剤、応力緩和用添加剤、促進剤、耐水性剤、防水剤、親水性付与剤、導電性付与剤、熱伝導性付与剤、電磁遮蔽特性付与剤、蛍光剤、滑り特性付与剤、発泡剤及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0054】
可塑剤の例としては、パラフィン系油、ナフテン系油、天然油、水素化処理されたナフテン系油、低分子量ポリオレフィン、低分子量液状ゴム及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0055】
充填剤は、アンダルサイト、ケイ線石、カヤナイト、ムライト、葉ろう石又はアロフェンなどの無機ケイ酸塩;鉱物ケイ酸カルシウム、シリカ、石英粉末;硫酸バリウムなどの金属硫酸塩;酸化亜鉛、二酸化チタンなどの金属酸化物;ゼオライト、リューサイト、カリ長石、黒雲母、セッコウ、硬セッコウ又は重晶石;及びタルク又はチョーク(CaCO3)などのカルシウム鉱物;金属水酸化物、雲母、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、及びこれらの混合物から選択される。
【0056】
いくつかの実施形態において、使用される添加剤は、HSBCを含んでいる組成物の全重量に対して、0~15又は5~15又は1~10又は0.5~5重量%である。
【0057】
HSBCに基づいた組成物は、ヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、一軸押出機又はニ軸押出機、混練機などの適切な加工装置を使用して前述の成分を混合することにより調製することができる。その後、組成物は、さらなる処理又は最終使用用途向けにペレット化することができる。他の実施形態において、HSBCを含む組成物は、従来のプラスチック加工機器、例えば、押し出し、圧縮成形、射出成形、ガスアシスト射出成形、中空成形、シート成形、回転成形、ラミネート加工、カレンダー加工、真空成形、熱成形又は熱間成形を使用して最終使用用途に、直接処理される。
【0058】
(HSBCの特性)
HSBCは、高性能用途においてHSBCを使用するために適合させる改善された機械的特性及び熱的物性を提供する。HSBCは、硬化剤を用いて又は硬化剤を用いることなく、処理することができる。HSBCは、広い温度領域において改善された接着性能及び高い減衰性能を示し、同時に良好な機械的特性のバランスを維持する。
【0059】
いくつかの実施形態において、HSBCを接着剤層として使用する場合、接着剤層を表面から剥離する際に、粘着力不足により容易に剥離することができる。HSBCは、長い保管時間(例えば、1日、1週間、1か月、3か月又はそれ以上)の後又は輸送の間及び様々な環境条件の下であっても、保護された表面からの易剥離性を提供する保護フィルムの成分の使用に特に適している。
【0060】
いくつかの実施形態において、HSBCは、ASTM D412に従って測定して、10~60又は15~55又は18~50又は20~45又は22~40又は25~38、>15又は>20MPaの引張強度を有する。
【0061】
いくつかの実施形態において、HSBCは、DMA(10rad/秒)によって測定された、-40~25℃又は-35~20℃又は-30~15℃又は-25~-10℃又は-5~25℃のtanδピーク温度を有する。
【0062】
いくつかの実施形態において、HSBCは、0.7~2又は0.9~1.95又は1~1.9又は1.05~1.85又は1.1~1.8又は1.15~1.75又は1.2~1.7又は>0.9又は>1又は>1.1又は>1.2のtanδピーク高さを有する。
【0063】
いくつかの実施形態において、HSBCは15~40又は18~35又は17~32又は22~40又は20~30又は>22又は>24の「半値全幅」(FWHM)又はtanδピーク半分高さでの温度幅値(単位℃)を有する。
【0064】
いくつかの実施形態において、HSBCは、-55℃~-25℃又は-43℃~-30℃又は-45℃~-35℃又は-40℃~-30℃の最大損失弾性率ピーク温度を有する。温度の関数として得られた、最大損失弾性率G”は、10rad/sの掃引周波数でピーク値(「損失弾性率G”」ピーク温度)に到達する。
【0065】
いくつかの実施形態において、HSBCは、14~21又は13.5~20.5又は13~20又は12.5~19.5又は12~19又は11.5~18.5のtanδピーク温度と最大損失弾性率ピーク温度との温度差値(単位℃)を有する。
【0066】
いくつかの実施形態において、HSBCは、>25又は>27又は>28又は>30又は>32又は>35又は>38又は>40又は25~50又は22~45又は24~42のtanδピーク高さの値とtanδピーク半分高さでの温度幅値(℃)との乗算値(単位℃)を有する。
【0067】
いくつかの実施形態において、HSBCは、D1238に従って2.16kgの荷重及び230℃で測定して、1~200又は2~100又は5~80又は10~60又は15~50又は20~40又は10~20dg/分のメルトフローレート(MFR)を有する。
【0068】
(用途)
HSBCは、例えば、振動減衰、接着剤、ラベル、封止剤、シール、音響効果、通信技術、コーティング、例えば、壁コーティング又は金属コーティング、靴の部品、ワイヤ及びケーブルの用途で用いることができる。接着剤は、感圧及びホットメルト接着剤とすることができる。
【0069】
いくつかの実施形態において、HSBCは、電子機器、家財道具、家具、ディスプレイ、タッチスクリーンなどを含む広い用途領域で使用するために、成形品、例えば、自動車部品(自動車内装材及び自動車外装材)、食品包装容器などの様々な容器、家庭用電化製品、医療機器部品、工業用部品、玩具及び粘着性フィルム、例えば、ガラス、木材、金属、ポリマー、陶磁器などの表面を保護するための表面保護フィルム、を製造するのに使用される。
【0070】
いくつかの実施形態において、保護フィルム(又は接着剤フィルム)は、1~200μm又は5~100μm又は10~50μm又は5~30μmの厚さを有するHSBCを含み、基材フィルムの厚さは10μm~5mm又は50μm~2mm又は100μm~1mm又は30μm~200μmであってもよい。保護フィルムは、公知の方法、例えば、流延、押し出し、流延フィルム押し出し、ブローンフィルム押し出しなどによって調製することができ、基材フィルム、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニレンオキシドなどを有することができる。
【0071】
HSBCは、広い使用温度範囲、例えば、-50℃~100℃又は-30℃~+80℃又は-10℃~50℃又は0℃~100℃において、屋外用途及び屋内用途の両方に対して、振動の減衰用途又は音の減衰用途、例えば、エネルギー吸収のために使用することができる。
【0072】
いくつかの実施形態において、アスファルト組成物は、アスファルト(又はビチューメン)の100重量部に対して、0.5~50重量部のHSBCを含む。アスファルト組成物は、屋根の板材に使用することができる。
【実施例0073】
以下の実施例は非限定的であることが意図されている。
【0074】
ポリマー分子量を、ASTM5296に従ってポリスチレン校正標準を使用して、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定した。
【0075】
すべてのポリマー試料のガラス転移温度(Tg)をASTM4065に従って、DMAによって測定した。温度掃引実験を、特に限定しない限り剪断モードにより、-80~200℃で2℃/分の加熱勾配及び10rad/sで実施し、ここで、貯蔵弾性率(G’)、損失弾性率(G”)及び損失係数(tanδ)を温度の関数として得た。このtanδピーク温度は、ゴム相のTgであると考えられる。10rad/s又は1HzのDMAデータは、大きく異なっていないが、提供される範囲は、剪断モード測定において10rad/sで指定される。
【0076】
温度領域の幅の関数としての減衰性能を、DMAを使用して測定した。1つの方法では、10rad/sでの掃引振動数における、tanδがピーク値を得る温度(「ピークタンデルタ」温度)と、損失弾性率G”がピーク値を得る温度(「損失弾性率G”」ピーク温度)との温度差(単位℃)を決定した。より大きな温度差は、ピークtanδ値で測定された減衰係数に近い、広いtanδピーク及び減衰性能を意味する。別の方法では、tanδピーク幅をtanδの最大高さの半分におけるtanδの全幅によって評価した。
【0077】
HSBCの試料検体を、2つの異なる方法を用いて調製した。第1の方法では、試料を、180℃において高圧下にプレスして2mm(厚さ)のプレートに調製した。第2の方法では、ポリマーを室温でトルエンに溶解した10重量%の溶液からフィルム試料を、流延した。得られた流延フィルムを、40℃で真空オーブンの中で引き続き乾燥した。
【0078】
引張り応力-歪を、ASTM D412に従って測定した。硬度ショアAを、ASTM D2240に従って測定した。別段の指定がない限り、報告したメルトフローレート(MFR)はすべて、D1238に従って、2.16kgの荷重及び230℃で測定した。
【0079】
実施例で使用されている成分は次の通りである。
【0080】
HSBC-C1は、A-C-A’の構造を備えた水素化スチレン系ブロックコポリマーである。ポリマーブロックAは、約6.4kg/molのMpを含むスチレンのポリマーブロックである。コポリマーブロックCは、約135kg/molのMpを有するスチレン及び1,3-ブタジエンのポリマーブロックである。PSCは32.4重量%である。
【0081】
HSBC-C2は、(A-C)nXの構造を有する水素化スチレン系ブロックコポリマーである。ブロックAは、約7.3kg/molのMpを有するスチレンのポリマーブロックである。コポリマーブロックCは、約55kg/molのMpを有するスチレン及び1,3-ブタジエンのコポリマーブロックである。カップリング効率は95%であり、PSCは33.8重量%である。
【0082】
低密度ポリエチレン(LDPE)は、コア層及びバック層として使用される。
【0083】
プロピレン-エチレンのブロックコポリマー(RcPP)のランダムコポリマーは、コア層とバック層として使用される。
【0084】
([実施例1]-HSBCの調製)
シクロヘキサン(593kg)を、ステンレス鋼の反応器に添加した。これに、2.7kgのsec-BuLi触媒を添加し、続いて、7分間かけて40.5kgの第1のスチレンモノマーを添加した。43分の後で、かつピーク反応温度が45℃に到達した後に、試料を採って第1のスチレン重合体ブロックの形成を確認した。反応混合物へ、0.82kgの1,2-ジエトキシプロパンを添加し、続いて、193.5kgの第1の1,3-ブタジエンを68分間の期間にわたって添加した。この反応を、40分の間、46~51℃で維持した。ブタジエンポリマーブロックの形成を、反応のこの段階で試料を分析することにより確認した。さらに、反応混合物に、第1の1,3-ブタジエンの添加を継続しながら、37kgの第2のスチレンを12分かけて添加した。第1の1,3-ブタジエンの添加開始から84分の後、別の1.4kgの量の第2のブタジエンを反応混合物に添加した。0.33kgのメチルトリメトキシシラン(MTMS)を反応混合物に添加した。約45分の後、18gのメタノールを添加し、反応混合物の試料を採取し、SBC前駆体の形成を確認した。SBC前駆体の水素化を、重合された1,3ブタジエン単位の変換が水素化レベル>98mol%になるまでコバルト触媒の存在下に実施した。コバルト触媒を反応混合物から除去し、ブロックコポリマー溶液をIonox1330安定剤で処理した。ブロックコポリマー溶液を蒸発凝固させ、続いて乾燥して、HSBCを得た。
【0085】
([実施例2~4])
反応条件中の反応物の量及び小さな変更以外は、実施例1の手順を繰り返した。反応物の量と反応条件の詳細を表1に示す。
【0086】
【0087】
表2及び3は、実施例1~4において調製されたHSBCの構造及び特性を、HSBC-C1及びHSBC-C2と比較する。
【0088】
【0089】
【0090】
([実施例5])
HSBCを含有する保護フィルムを調製し、剥離接着力(PA)特性を評価した。保護フィルム(又は接着剤フィルム/層)試料を、三層共押し出しプロセスを用いて調製した。最上層はHSBC又はHSBCを含んでいる組成物であったが、その一方で2つの他の層はポリプロピレン及び/又はポリエチレンのポリオレフィン裏打ち層であった。溶融温度を、190~250℃の範囲に調節して、約10μmの接着剤層及び裏打ち層としてそれぞれ約20μmのポリオレフィンの2つの層を有する滑らかな押し出し成型品を得た。押し出されたフィルムを冷却し、接着剤層が中央になるように押し出されたフィルムに巻き付けて、ロール状の保護フィルムを形成させた。異なる保護フィルムのフィルムの厚さを、表4に示す。
【0091】
剥離接着力(PA)(180°)を、FTM1(剥離接着力(180°)試験装置)に従って、ステンレス鋼又はPMMA板上で測定した。FTM1テスト方法を用いて、自己接着性の感圧材料の接着力又は剥離性の性能を定量化した。剥離接着力とは、標準試験板に所定の条件で塗布された感圧塗工材料を、所定の角度及び速度で試験板から剥がすのに必要な力として定義される。接着力を塗布後20分及び24時間で測定し、後者を最大接着力と見なした。
【0092】
PAビルドアップを評価するために、保護フィルムと基板との間の室温での接触時間で20分の後にPAテストを行ない、様々なエージングステップの後にPAテストを行なった。保護フィルムによって保護された試験板を、以下の2つのエージングのうちの1つに供し、室温まで冷却してPA試験を行なった。第1のエージング手順により、保護された試験板を75℃で7日間維持して室温まで冷却してPA試験を行なった一方で、第2のエージング手順により、保護された試験板を80℃で2時間維持して室温まで冷却してPA試験を行なった。個々の接着層HSBCの厚さは、約6~11μmであった。LDPEバック層を、接着層HSBCの支持のために用い、バック層及び接着層HSBCの総厚みは約40~50μmであった。
【0093】
表4により、実施例1~4のHSBC及びHSBC-C1及びHSBC-C2から調製した保護フィルムのPAを含む試験結果を比較する。
【0094】
【0095】
表4に示すように、ステンレス鋼(SUS)及びPMMA板の両方について、実施例2~4の75℃で7日後又は80℃で2時間後の剥離接着力(PA)の%での増加は、HSBC-C1及びHSBC-C2の例と比較してより小さい。これらの結果は、最小の接着ビルドアップがエージング時間及びエージング温度の結果であることを示している。HSBC-C2は、75℃エージングの後に問題のある凝集破壊をまねく。
【0096】
([実施例6~9])
上記手順で説明したように保護フィルム試料を調製したが、接着剤層については、MFRが5g/10分であることを特徴とする種々の量のランダム共重合体PP(94%プロピレン及び6%エチレン)を用いてHSBC(実施例3)の乾燥混合物を押し出し機に供給した。バック層は、純粋なランダムコポリマーPPであった。PA180°を、保護フィルムによって保護された導光板上で測定し、保護フィルムによって保護された導光板を、以下の2つのエージングのうちの1つに供し、室温まで冷却してPA試験を行なった。第1のエージング手順により、保護された試験板を5kgの圧力下に80℃で2時間維持して室温まで冷却してPA試験を行なった一方で、第2のエージング手順により、保護された試験板を5kgの圧力下に110℃で2時間維持して室温まで冷却してPA試験を行なった。透明度試験については、HSBC/PP混合物の2mmのプラークを調製した。
【0097】
表5に、接着剤層としてHSBC/ランダムコポリマーPP混合物を使用して、保護フィルム上で測定した透明度とPA値を示す。
【0098】
【0099】
本明細書では、さまざまな態様を説明するために「含む(comprising)」及び「含む(including)」という用語を使用しているが、本開示のより具体的な態様を提供するために「含む(comprising)」及び「含む(including)」の代わりに「から本質的になる(consisting essentially of)」及び「からなる(consisting of)」という用語を使用することができ、またそれらが開示もされている。