(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122647
(43)【公開日】2023-09-04
(54)【発明の名称】医療・療法システムを統合するプラットフォーム及びそれを実行する方法
(51)【国際特許分類】
G16H 10/00 20180101AFI20230828BHJP
【FI】
G16H10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027841
(22)【出願日】2023-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2022026273
(32)【優先日】2022-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】522174281
【氏名又は名称】ロゴスサイエンス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】下川 千草
(72)【発明者】
【氏名】中島 栄彦
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA04
(57)【要約】
【課題】
精神疾患、特に認知行動療法の評価用の指標を効率よく管理する方法を提供する。
【解決手段】
サーバと、
少なくとも診断横断的、または複数の異なる精神疾患の評価尺度のセットを含む、複数の疾患の評価尺度を記録したサーバ上のデータベースと、
患者に用いられる情報処理端末と、
前記情報処理端末で動作する精神疾患治療用アプリケーションプログラムとを含むシステムであって、
前記精神疾患治療用アプリケーションプログラムからのリクエストに応じて前記複数の疾患の評価尺度の一部の評価尺度を前記情報処理端末で利用可能とすることを特徴とする医療用システム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバと、
少なくとも、診断横断的、複数の異なる精神疾患、または、複数の異なる心身症疾患の評価尺度の評価尺度を記録したサーバ上のデータベースと、
患者に用いられる情報処理端末と、
前記情報処理端末で動作する精神疾患治療用アプリケーションプログラムとを含むシステムであって、
前記精神疾患治療用アプリケーションプログラムからのリクエストに応じて前記データベースに記憶されたの評価尺度の一部の評価尺度を前記情報処理端末で利用可能とすることを特徴とする医療用システム。
【請求項2】
前記リクエストは疾患情報を含み、前記一部の評価尺度がその疾患情報と対応関係にあるものであることを特徴とする請求項1の医療用システム。
【請求項3】
前記情報処理端末で患者によって入力された前記評価尺度に基づいて、前記サーバあるいは前記情報処理端末で、患者の症状の要因をタイプ分け、ならびに個々人に対して最適化することを特徴とする請求項1または請求項2の医療用システム。
【請求項4】
精神疾患の治療用モジュール(ワーク)が前記サーバ上に含まれ、患者の症状の要因のタイプの治療に用いられる前記治療用モジュールが前記情報処理端末で利用可能とされることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の医療用システム。
【請求項5】
前記サーバまたは前記情報処理端末に、患者が行った評価尺度の評価結果および提供された治療用モジュールの情報を保存することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の医療用システム。
【請求項6】
前記保存された情報に記載された過去にその患者によって実施された治療モジュールが、再度患者によって利用可能とするようにリクエストされた場合、所定のルールに従って前記治療モジュールの提供方法を調整する請求項4または請求項5に記載の医療用システム。
【請求項7】
前記評価尺度のいずれかが選択される場合、その対象となる疾患と、その疾患の合併症が知られる疾患を評価するための評価尺度が同時に選択される請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の医療用システム。
【請求項8】
特定疾患治療用のアプリであって、特定の疾患の評価尺度の他にその疾患の合併症として知られる疾患の評価尺度を併せて患者からの評価結果の取得する工程を行うことを特徴とする医療用システム。
【請求項9】
治療用のアプリであって、患者から、疾患あるいは症状に関する情報の入力を得る工程、前記情報に関連づけられた評価指標または前記情報をAIにより分析して導き出された評価指標を選択する工程、前記評価指標を患者に提示し、その回答を要求する工程を行うことを特徴とする医療システム。
【請求項10】
アプリサプライヤと、治療用アプリ提供機関と、利用者とを含むサプライチェーンで、アプリサプライヤと治療用アプリ提供機関が契約し、アプリ提供機関が利用者にアプリ利用情報を利用者に提供し、治療用アプリ提供機関あるいは利用者がアプリサプライヤに支払し、アプリサプライヤ(あるいはその提携期間)が利用者に治療用アプリを提供するサプライチェーン。
【請求項11】
前記アプリサプライヤは治療用アプリ提供機関に、利用者の治療用アプリの実施状況などの情報を提供することを特徴とする請求項10に記載のサプライチェーン。
【請求項12】
前記情報が利用者の所属する集団としての評価データとして提供されることを特徴とする請求項11に記載のサプライチェーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理端末(例えばスマートフォン)及び情報処理ネットワークシステム(例えばインターネット)を介して、利用可能な治療用アプリの医療技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報処理端末及び情報処理ネットワークシステムを介して、医師と患者やユーザーが直接面会することなく治療を行うための技術(いわゆる「治療用アプリ」)が開発されている(例えば、特許文献1)。
そのような技術では、医療機関等で所定の精神疾患や症状、精神的状態あるいはメンタルヘルスのアプリが指定されると、サプライヤーのサーバに保存された、そのアプリが利用可能となるものである。
【0003】
精神疾患あるいはメンタルヘルス用のアプリの場合、特に、認知行動療法を用いた場合、疾患の症状や精神の状態は、例えばガンといった肉体的な疾患のようにがんの部位というように疾患の原因を特定できるものではなく、様々な精神疾患をもたらす症状を併発してその症状をもたらすことが知られている。さらに、その症状や状態をもたらす要因は多様で個々人によって異なる。したがって、精神疾患の治療をする場合には、疾患に特異的な尺度と、診断横断的な(疾患に横断的な)尺度の二つの種類の尺度によって症状等を理解することが好ましい。また精神疾患の治療に用いられる治療モジュール(以後、ワークと呼ぶ)についても異なる疾患に対して共通のワークが用いられる場合もあれば、疾患や症状が同じであっても、個々人による背景や要因が異なれば、その個々人に対して最適化されたワークを用いる場合もある。これらの尺度やワークを疾患毎に管理すると非常に管理が煩雑となる。さらには、個々人に対するワークの最適化は非常に複雑となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、情報処理端末及び情報処理ネットワークシステムによる診断・治療・予防等を行う医療システム及び当該システムを統合したデータベースとその利用方法である。具体的には、精神疾患に共通した尺度やワークの管理を簡易化、最適化する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) サーバと、
少なくとも、診断横断的、複数の異なる精神疾患、または、複数の異なる心身症疾患の評価尺度の評価尺度を記録したサーバ上のデータベースと、
患者に用いられる情報処理端末と、
前記情報処理端末で動作する精神疾患治療用アプリケーションプログラムとを含むシステムであって、
前記精神疾患治療用アプリケーションプログラムからのリクエストに応じて前記データベースに記憶された評価尺度の一部の評価尺度を前記情報処理端末で利用可能とすることを特徴とする医療用システム。
(2) 前記リクエストは疾患情報を含み、前記一部の評価尺度がその疾患情報と対応関係にあるものであることを特徴とする(1)の医療用システム。
(3) 前記情報処理端末で患者によって入力された前記評価尺度に基づいて、前記サーバあるいは前記情報処理端末で、患者の症状の要因をタイプ分けまたは個々人に対して最適化することを特徴とする(1)または(2)の医療用システム。
(4) 精神疾患の治療用モジュール(ワーク)が前記サーバ上に含まれ、患者の症状の要因のタイプの治療に用いられる前記治療用モジュールが前記情報処理端末で利用可能とされることを特徴とする(1)ないし(3)のいずれかに記載の医療用システム。
(5) 前記サーバまたは前記情報処理端末に、患者が行った評価尺度の評価結果および提供された治療用モジュールの情報を保存することを特徴とする(1)ないし(4)のいずれかに記載の医療用システム。
(6) 前記保存された情報に記載された過去にその患者によって実施された治療モジュールが、再度患者によって利用可能とするようにリクエストされた場合、所定のルールに従って前記治療モジュールの提供方法を調整する(4)または(5)に記載の医療用システム。
(7) 前記評価尺度のいずれかが選択される場合、その対象となる疾患と合併症が知られる疾患を評価するための評価尺度が同時に選択される(1)ないし(6)のいずれかの医療用システム。
(8) 特定疾患治療用のアプリであって、特定の疾患の評価尺度の他にその疾患の合併症として知られる疾患の評価尺度を併せて、患者からの評価結果を取得する工程を行うことを特徴とする医療用システム。
(9) 治療用のアプリであって、患者から、疾患あるいは症状に関する情報の入力を得る工程、前記情報に関連づけられた評価指標または前記情報をAIにより分析して導き出された評価指標を選択する工程、前記評価指標を患者に提示し、その回答を要求する工程を行うことを特徴とする医療システム。
(10) アプリサプライヤと、治療用アプリ提供機関と、利用者とを含むサプライチェーンで、アプリサプライヤと治療用アプリ提供機関が契約し、アプリ提供機関が利用者にアプリ利用情報を利用者に提供し、治療用アプリ提供機関あるいは利用者がアプリサプライヤに支払し、アプリサプライヤ(あるいはその提携期間)が利用者に治療用アプリを提供するサプライチェーン。
(11) 前記アプリサプライヤは治療用アプリ提供機関に、利用者の治療用アプリの実施状況などの情報を提供することを特徴とする(10)に記載のサプライチェーン。
(12) 前記情報が利用者の所属する集団としての評価データとして提供されることを特徴とする(11)に記載のサプライチェーン。
【発明の効果】
【0007】
疾患に特異的な尺度と、診断横断的な(疾患に横断的な)尺度の二つの種類の尺度によって精神疾患(実際の精神疾患だけでなく、精神疾患の症状に類似した不調を示す場合も含まれる)の症状等を理解するために複数の精神疾患に用いられる尺度を利用する際に、また精神疾患の治療に用いられる治療モジュール(以後、ワークと呼ぶ)を統合したデータベースで管理する際、本発明によればこれらの尺度やワークの管理が簡略化されるだけでなく、個々人に対して最適化される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】治療用プラットフォーム901の管理サーバ931に含まれる患者と評価値等のデータを示す図である。
【
図3】共通部分を利用したクラスタ分析の例を示す図である。
【
図4】管理サーバに保存されている、タイプと処方の対応関係の一覧を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のプラットフォーム(システム)は従来存在しなかった新たな治療用アプリのデータの制御方法を実現するものである。本発明の治療用アプリはそれぞれのサーバおよび/または情報処理端末上で動作する、既存の情報処理手段および入出力手段等を用いて、後述の機能を実現する制御プログラムによって動作するものであるが、各機能はソフトウェアプログラムだけではなく、FPGA等のプログラムされたハードウェアあるいはそれらの混合によって構成しても良い。
【0010】
(各種アプリの統合データベース)
図1に統合データベースの例を示した。
図1(A)において、治療用プラットフォーム(システム)101、ED治療用アプリ群111,睡眠障害治療用アプリ群112、インターネット150、管理サーバ131、
図1(B)において、治療用プラットフォーム(システム)102、ED治療用アプリ群111、睡眠障害治療用アプリ群112、インターネット150、ED治療用アプリ111の管理サーバ132、睡眠障害治療用アプリ群112の管理サーバ133、管理サーバ132と管理サーバ133のデータを統合制御するための統合サーバ134が含まれる。ここで、例として二つの治療用アプリがプラットフォームに含まれる例を示したが、治療用アプリの数はこれに限定されるものではなく、また、共通のデータを含むものであれば治療用アプリだけでなく、メンタルヘルスケアアプリ等もプラットフォームに加入することができる。
それぞれの治療用アプリ群には、それぞれの治療用アプリを実施可能な情報処理端末とそれを利用する患者等が含まれる。
図1(A)は複数の治療用アプリを集中して制御・管理する管理サーバが設けられるケース、
図1(B)は治療用アプリごとに管理サーバが設けられるケースで、それぞれの管理サーバの共通データを利用可能とする制御・管理を行う統合サーバが設けられている。統合サーバ134は、例えば、管理サーバ132の共通データを管理サーバ133の呼び出しに応じて利用可能に、または、その逆に利用可能としている。あるいは、管理サーバ132と管理サーバ133の共通データを統合サーバ134に記憶するようにし、異なる管理サーバのデータを共有可能としている。
【0011】
管理サーバ131あるいは統合サーバ134には、ED治療用アプリ群111に用いられる認知行動療法に基づく診断横断的な指標A、ED治療用アプリ群111に用いられる疾患特異的な指標B、睡眠障害治療用アプリ群112に用いられる疾患特異的な指標Cが記憶されている(指標データベース121)。ここで例示として指標A(たとえば、特開2022-068362に記載されたPFQ)、指標B(たとえば、IIEF-5、IIEF-15)、指標C(たとえば、PSQI、AIS)が例として挙げられたが、その他の治療用あるいはメンタルヘルスケアに用いられる指標が記憶されていてもよい。また、診断横断的な指標として一つの指標Aが挙げられたがこれに限定されるものではなく、うつ病(たとえば、BDI、SDS)や不安症(たとえば、LSAS、GAD-7)などの指標を含み診断横断的な評価を可能とする指標のセットを用いることもできる。また、ここでは最も好ましい例として認知行動療法に基づいて説明を行っているが、他の心理療法や、それらの指標を用いてもよい。各治療用アプリを処方された患者の各々に対応するように作成された患者データベース122には、患者に提示され、患者が回答した指標の種類と指標の評価結果、患者から取得された日常生活下データ(EMA)、セルフモニタリングデータ、患者に処方された治療モジュール(ワーク)等が日時毎に経時的に記録されている。患者への提示、患者の回答は、サーバからデータを患者の情報処理端末に送信し、患者の情報処理端末の表示部に指標の質問項目が表示され、その質問項目に患者が情報処理端末に備えられたタッチパネルやキーボードの入出力手段を用いて回答するなど公知の手段を用いることができるが、音声入力や視線入力などその他の手法を用いてもよい。患者の指標に対する評価結果やEMAデータを統計分析(例えばクラスタ分析、AIによる分類)して患者の生物・心理社会的要因(プロセス)に基づくタイプ分けを行うアルゴリズムやルールを記録した分析データベース123,認知・行動様式のタイプとそのタイプに処方される治療モジュール(ワーク)の対応表とが記憶された対応関係データベース124が含まれている。この例では、EDに特異的な指標として、指標B、睡眠障害に特異的な指標として指標Cが用いられているが、例えば、EDに特異的な指標だけではなく、EDとの合併症が知られている、糖尿病や他の合併症の指標を追加、あるいはPMS(月経随伴症状)の場合は、PMSの指標だけでなくうつ病の指標を追加して用いて統計分析してもよい。これによって、他の疾患の早期発見にもつながる。
【0012】
図2に管理サーバ131と治療用アプリ111、112の動作例を示した。まず、患者が例えばスマートフォンにインストールされたED治療用アプリ111を起動し(S1)、ED治療用アプリ111(S2)はEDの症状を分析するために管理サーバ131に指標サーバ121から必要となる指標Aおよび指標Bを利用者端末(患者の情報処理端末)にダウンロードするようにリクエストし、利用者端末上で指標への回答を可能とする。ここで、利用者端末に指標をダウンロードせずに、利用者端末のブラウザで指標の項目を表示できるようにしてもよい。次に患者が指標の項目についての回答を行い、サーバへその回答結果を送信する(S4)。回答結果の入力に基づいて統計分析を行う(S5)。統計分析の際にAIを使ってタイプ分けを行ってパーソナライズ化、最適化してもよい。ここで、統計分析の一例としてクラスタ分析を利用したタイプ分けの例を
図3に示す。
図3はED治療用アプリのクラスタ分析の一例を示した。なおこの統計分析のアルゴリズムが分析データベース123に記憶されている。ED治療用アプリでは、患者に対して指標Aと指標Bへの回答を患者の情報処理端末を介して則す。次に、管理サーバで患者の回答から評価結果を算出する。続いて、管理サーバでは(1)指標Aの評価結果が30未満の場合はタイプAと、(2)指標Aの評価結果が30以上の場合、さらに、指標Bの評価値を比較し、40未満の場合はタイプCと、40以上の場合はタイプDとタイプ分けする。次に、対応関係データベース124を参照しながら、患者のタイプ分けされたタイプに対応付けられている治療モジュール(ワーク)を患者に提供する。提供の仕方としては、利用者端末にダウンロードし、対応関係データベース124に対応関係とともに記憶された治療モジュール(ワーク)の提供計画(治療計画)に従って、患者に利用可能に提供する。ここではダウンロードして利用することを説明したが、計画に従って、サーバ上のデータを参照するように構成してもよい。次に、治療計画に基づいた一定の間隔ごとに治療効果を図るアセスメント用の指標を用いて治療効果を測定し、その結果をサーバにフィードバックする(FB)。効果が得られていない場合は、日常生活下データやワークの実施状況などを参酌し、モデルケースと比較して問題がある部所を特定して改善提案を患者、あるいは、担当医師に通知する。そしてこのデータおよび、他の患者の治療効果をもとにして、タイプ分けや個々人に対する最適化に問題がある場合は、それらの相関関係からタイプ分けのアルゴリズムを修正する、あるいは、タイプと治療モジュールの対応に問題がある場合は、それらの相関関係から対応関係を修正する。
図4(A)にタイプと治療モジュール(ワーク)の対応関係の一覧と、
図4(B)にその一覧の修正の例を示した。なお、個々人に対して最適化する場合には、タイプがさらに細分化され、最終的には一人ひとりに最適なワークのセットが提案される。
【0013】
次に、これらの患者ごとに、実施した指標や、指標の評価結果、治療モジュール(ワーク)、治療効果、日常生活下データなどが経時的に患者データベース122に記録される。この患者データベースは電子カルテや健康診断などのメンタルヘルスケアデータベースと連携させ、それらに記録された個人の身体的データ、病歴、治療歴などをこれらの修正の情報として用いると、アルゴリズムや対応関係の最適化がより効率的になる。また、ある治療アプリがある患者に実施され、そのタイプ分けの結果、所定の治療モジュール(ワーク)が処方された際に、その患者に関する患者データベースを評価し、もし、過去に同じワークなどの処方が見つかった場合、所定のルール(たとえば、1か月以内に、他の治療アプリから同じワークが提供されていた場合は、新たな治療アプリからのワークとしては提供せず、前のワークの結果を新たなアプリに適用する、あるいは、2年より前に処方されていた場合にはそのワークに関しては通常通りの提供を行うなど)に従って治療モジュール(ワーク)の処方を修正し、最適化する。
【0014】
上記実施例では、管理サーバ131への指標のリクエストは、ED治療用アプリ111からのリクエストであり、この場合、ED治療用アプリ111内に、必要な指標名のセットが記憶されており、そのセットをリクエストを行うことによって管理サーバ131に記憶されている指標群から必要とされる指標をアプリで利用可能としていたが、診断に必要となる指標セットを医療機関の医師等が設定して、それをリクエスト可能となるようにしてもよい。また、上記治療用アプリは、指標によるタイプ分け、タイプに応じた治療モジュール(ワーク)の選択、それらの提供、治療の効果測定、あるいはその他の医師や、患者の家族・知人とのコミュニケーションなどを行うようにしているが、それぞれの機能を切り出したものやその組み合わせでもかまわない。
【0015】
上述の治療用アプリでは、治療用アプリからのリクエストによって、サーバの指標のデータをダウンロードして利用可能としていたが、治療用アプリからのリクエストによって、サーバからのデータを一時的に読みだして利用するようにしても良い。ただし、ダウンロードした場合は、同様に、その他の治療に必要な制御プログラムや治療モジュールのプログラムを患者の情報処理端末にあらかじめ記憶あるいは適宜にダウンロードさせスタンドアロンで動作するようにすることができる。スタンドアロンで動作可能とすることで通信環境の悪い環境での利用も可能となる。
【0016】
上述の実施例では、疾患に応じて必要な指標が対応付けられたリストをサーバもしくは情報処理端末に備え、そのリストに基づくリクエストにより、その指標もしくは指標群の評価を行うことを教示し、疾患に応じた指標としては、疾患特異的な単独または複数の評価指標と、必要に応じて診断横断的な単独または複数の指標の組み合わせ(疾患特異的な評価指標の場合もある)を、疾患としては対象となる疾患のみの場合、あるいは対象となる疾患と合併して発生することが知られている疾患に対する疾患特異的な単独または複数の評価指標をさらに組み合わせて利用することを教示してきたが本発明の指標の選択方法はこれに限られない。たとえば、治療用アプリの利用の前段で、患者に、様々な症状や疾患についての情報入力を要求し、それらの情報に応じて関連付けられた疾患に特異的な指標を利用すること、あるいは患者が入力した症状をAIで分析し、対応する疾患の指標を利用することも可能である。この場合も疾患に特異的な指標と、診断横断的な指標を組み合わせても良い。この応用例は、患者が自分の症状や疾患を勘違いしているケースなどに似たような症状や疾患の指標も併せて評価することができるので、誤った治療モジュールを提供する可能性を低減することができる。
【0017】
(汎用治療用プログラム)
図5に汎用治療用アプリの一例を示した。汎用治療用アプリ500は入出力ブロック501、指標評価ブロック502(、タイプ分けブロック503)、治療ブロック504、通信制御ブロック505を含む。汎用治療用アプリ505は、まず、医療機関で、電子カルテソフトウェアなどを介して発行された疾患情報に対応したライセンスコードや、医師等の入力などの初期情報によって、汎用プログラムを特定の疾患に応じたアプリとする。この初期情報に基づいて、指標評価ブロック502は必要な指標をサーバに通信制御ブロック505(以後、サーバとの通信はこのブロックを介することの記載を省略する)を介してリクエストして、この汎用治療用アプリで利用可能とする。指標に患者が回答し、その結果をサーバに送信し、タイプ分けを行う(このタイプ分けは、タイプ分けアルゴリズムをタイプ分けブロック503に記憶させ、タイプ分けもアプリ内で行ってもよい)。続いて、タイプの情報に応じた治療計画や治療モジュール(ワーク)を汎用治療用アプリ500にダウンロードし、汎用治療用アプリ500で治療モジュールを実施する。
【0018】
(ビジネスモデル1)
本発明のビジネスモデルは従来存在しなかった新たな治療用アプリのサプライチェーン(システム)を情報処理ネットワークを介して実現するものである。本発明のサプライチェーンはそれぞれのサーバおよび/または情報処理端末上で動作する、既存の情報処理手段および入出力手段等を用いて、後述の機能を実現する制御プログラムによって動作するものであるが、各機能はソフトウェアプログラムだけではなく、FPGA等のプログラムされたハードウェアあるいはそれらの混合によって構成しても良い。
本発明のプラットフォームを用いたビジネスモデルを
図6に示した。本プラットフォームには本発明のアプリ・データベースを含むシステムを提供するサプライヤー601、医療機関602、患者603が含まれる。ビジネスモデルとしては(1)アプリサプライヤー601が医療機関602にライセンス(販売権)を提供する、(2)医療機関の医師602が患者603に特定の疾患用のアプリを処方する、この処方は電子カルテなどを介したライセンスコード(バーコードや二次元コードなど)、あるいは、薬局などで商品に添付したライセンスコード(バーコードや二次元コードなど)の提供を伴う、このライセンスコードには疾患情報や、処方情報(期間など)が含まれる、(3)患者603は診療費や代金を医療機関や薬局等に支払う、(4)患者603はアプリサプライヤー601からアプリをダウンロードし(ここで課金するようにしてもよい)、医療機関602から処方されたライセンスコードを適用して疾患のアプリとしてアクティベーションする。(5)患者603は治療用アプリによる治療を行う。ここで、医療機関602については非プログラム医療機器の場合は一般の薬局やホームページなどでも販売できるので、その場合は、医療機関602に代えて薬局等602とし、こういったチャネルを用いることができる。その場合は、(3)で患者はアプリの料金を薬局等、あるいはダウンロードする際のサーバとのやり取りの際に支払うことになる。ダウンロードするアプリについても当初は一定期間の治療を目的とした一括払いの治療用プログラムを提供し、その後はサブスク型の状態を維持するための治療用アプリへの移行、あるいは、サブスク型の除隊を維持するための治療用アプリを提供し、その中で、アセスメントを行って、悪化している症状に対して、一定期間の治療を目的とした一括払いの治療用プログラムを提供することなどが考えられる。また、いずれかを無料提供するなどの変形も可能である。本発明のサプライチェーンを医療機関が用いる場合は、患者の治療経過を観察するために、アプリサプライヤからサーバに保存された患者によるプログラムの実施状況や評価指標のデータ、健康状態などの電子データを医療機関に送信し、医療機関はその端末でそれらの情報を確認できるようにするとさらに都合がよい。本実施例のサプライチェーンは特定の疾患などで患者のペインが強い場合に好ましい。
【0019】
(ビジネスモデル2)
本発明のプラットフォームを用いた別のビジネスモデルを
図7に示した。本プラットフォームには本発明のアプリ・データベースを含むシステムを提供するサプライヤー701、企業や保険団体等702、従業員や加入者703が含まれる。ビジネスモデルとしては(1)アプリサプライヤー701が企業や保険団体等702にライセンス(販売権)を提供する、(2)企業・保険団体等702の担当者が従業員や加入者703に特定のメンタルヘルスケア用のアプリを提供する、この提供方法は企業のイントラネットや保険団体のホームページなどを介したライセンスコード(バーコードや二次元コード、あるいはその他の認証情報など)の提供により行い、このライセンスコードにはヘルスケア情報や、提供情報(期間など)が含まれる、(3)企業や保険団体等702がアプリの代金を支払う。(4)従業員や加入者703はアプリサプライヤー701からアプリをダウンロードし、企業や保険団体等702から提供されたライセンスコードを適用して疾患のアプリとしてアクティベーションする。(5)従業員や加入者703はヘルスケア用アプリによる治療・改善を行う。ダウンロードするアプリについても当初は一定期間の治療を目的とした一括払いの治療用プログラムを提供し、その後はサブスク型の状態を維持するための治療用アプリへの移行、あるいは、サブスク型の健康状態を維持するための治療用アプリを提供し、その中で、アセスメントを行って、悪化している症状に対して、一定期間の治療を目的とした一括払いの治療用プログラムを提供することなどが考えられる。また、いずれかを無料提供するなどの変形も可能である。本発明のサプライチェーンを企業あるいは保険組合等が用いる場合は、従業員や加入者等の健康状態(特にメンタルヘルス)を把握するために、アプリサプライヤからプログラムの実施状況や評価指標のデータなどの電子データを企業や保険組合等の管理者に送信し、企業や保険組合等の管理者はその端末でそれらの情報を確認できるようにするとさらに都合がよい。ここで個人情報保護の観点からそれらの情報のマスク機能があると都合がよい。マスク機能とは従業員等の特定の(あるいは選択された)個人情報等をサーバに保存された従業員の実施状況や評価結果、状態などを読み出さない、あるいは、それらの情報を読み出した場合でも表示しない機能を言う。また、この情報は企業や保険組合の管理者に対して、利用者個人だけでなく、利用者の属する集団(所属する部門、企業ごと、業種)での平均値などの分析用の情報として提供される、あるいは、管理者の嬢処理端末で処理されると都合がよい。本実施例のサプライチェーンは特定の企業のプレゼンティイズムなどによる労働生産性をペイントする企業や保険組合で実施する場合に好ましい。
【0020】
ビジネスモデル1、ビジネスモデル2ではアプリサプライヤがアプリのダウンロード元のサーバがあるものとして説明したがこの例に限られるものではなく、アプリサプライヤと提携するサーバ(例えば、Google PlayやApple Storeなど)を利用して、そこからダウンロードするように構成しても良い。
【0021】
本発明での疾患としては特に、プロセスベースドCBTを心因性勃起障害(ED)患者の医療(治療、診断、予防・再発防止・早期発見・合併している疾病の発見、セルフケア等)に適用する場合について説明する。ただし、本発明は心因性EDのみならず、他の性機能障害、配偶者またはパートナーとの関係性の問題、うつ病、強迫症、パニック症、広場恐怖症、全般性不安症や社交不安症やスピーチ不安、限局性恐怖症、心的外傷後ストレス障害、不眠症、過敏性腸症候群、摂食障害と肥満、肥満その他の生活習慣病、双極性障害、境界性パーソナリティー障害、注意欠如・多動症、慢性または持続性疼痛、性機能障害、勃起障害以外の配偶者またはパートナーとの関係性の問題、アルコール依存その他の各種依存症、統合失調症及び他の重度精神病、不妊症(男性、女性)、アトピー性皮膚炎、過活動膀胱(尿失禁)、アンチエイジング、更年期障害、月経前症候群(PMS)、心因性視覚障害、歯科心身症、舌痛症、歯科恐怖症、醜形恐怖症等についても適用可能である。また、これらの疾患が合併していても適用可能である。さらに、疾患だけではなく、メンタルヘルス全般の維持・改善用の用途としても用いられることができる。
【0022】
本明細書では、指標とは主に文言を使った指標を意図しているが、視覚や聴覚を使った評価尺度も指標に含まれる。代表的な指標は特許文献1などに記載されているものが利用可能であるが、精神疾患分野、特に認知行動療法等の心理療法に用いられる当業者に周知の指標が利用可能である。日常生活下データは、日常生活の中で様々な質問に答えてもらうことで収集する心理データや、心拍数、血圧、血中酸素濃度、歩数、歩行速度、睡眠時間や睡眠の質(眠りが深い・浅い等)、活動量、行動範囲(行動履歴:例えばGPSにより計測・取得)、血糖値等の生理データ、行動データ、感情・気分データ、夜間勃起データ等を含んでいる。すなわち、日常生活下データは心理・行動・生理データ、セルフモニタリングデータを包含する
【0023】
本発明では「医療用」「治療用」という用語を用いているが、医療用あるいは治療用だけでなくセルフケア、メンタルヘルスの不調の維持・改善などを対象としたものも含まれる、「患者」という用語は、メンタルに不調を抱える健常者も含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0024】
101・・・治療用プラットフォーム
111・・・ED治療用アプリ群
112・・・睡眠障害治療用アプリ群
121・・・指標データベース
122・・・患者データベース
123・・・分析データベース
124・・・対応関係データベース
150・・・インターネット
132、133・・・管理サーバ
134・・・統合サーバ