IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ファンケルの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122663
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】ジェル状組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20230829BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20230829BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20230829BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20230829BHJP
   C09D 7/43 20180101ALI20230829BHJP
   C08L 33/00 20060101ALI20230829BHJP
   C08L 5/00 20060101ALI20230829BHJP
   C08K 5/05 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D5/00 Z
C09D7/65
C09D7/20
C09D7/43
C08L33/00
C08L5/00
C08K5/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026289
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】寺西 諒真
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼▲崎▼ 明子
(72)【発明者】
【氏名】秋山 花子
【テーマコード(参考)】
4J002
4J038
【Fターム(参考)】
4J002AB05X
4J002BG01W
4J002BG04W
4J002BG05W
4J002EC036
4J002GB00
4J038BA012
4J038CG022
4J038JA19
4J038MA06
4J038MA15
4J038NA01
4J038NA24
4J038PC11
(57)【要約】
【課題】新規なジェル状組成物を提供すること。
【解決手段】下記(A)~(E)を含有し、(B)を45質量%以上85質量%以下含むジェル状組成物、及び、下記(A)~(C)を含有し、(B)を45質量%以上85質量%以下含むジェル状組成物。
(A)水
(B)エタノール
(C)スフィンゴモナス培養エキス
(D)アクリル酸系増粘剤
(E)無機塩基
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)~(E)を含有し、(B)を45質量%以上85質量%以下含むジェル状組成物。
(A)水
(B)エタノール
(C)スフィンゴモナス培養エキス
(D)アクリル酸系増粘剤
(E)無機塩基
【請求項2】
下記(A)~(C)を含有し、(B)を45質量%以上85質量%以下含むジェル状組成物。
(A)水
(B)エタノール
(C)スフィンゴモナス培養エキス
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジェル状組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
手指の消毒は、風邪、インフルエンザ、新型コロナ等の様々な感染症の予防に有効である。消毒剤は、安価で殺菌効果の高いエタノールが一般的に配合されており、60~80v/v%のエタノール濃度が様々な細菌、ウイルスに対して効果を有するとされている。
ここで、手指用の消毒剤は、使用時に指の間からこぼれないように、増粘することが求められている。エタノールを高配合した消毒剤は、一般的に、アクリル酸系増粘剤を塩基性化合物で中和することにより増粘されているが、無機塩基で中和するとアクリル酸系増粘剤が凝集・析出してしまうため、塩基性化合物としてアルカノールアミンが用いられている(特許文献1~3等)。しかし、アルカノールアミンは、皮膚刺激性を有するため、配合することは好ましくなく、アルカノールアミンを配合しない増粘した消毒剤が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-199700号公報
【特許文献2】特開2000-86408号公報
【特許文献3】特開2008-120765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、新規なジェル状組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の課題を解決するための手段は以下の通りである。
1.下記(A)~(E)を含有し、(B)を45質量%以上85質量%以下含むジェル状組成物。
(A)水
(B)エタノール
(C)スフィンゴモナス培養エキス
(D)アクリル酸系増粘剤
(E)無機塩基
2.下記(A)~(C)を含有し、(B)を45質量%以上85質量%以下含むジェル状組成物。
(A)水
(B)エタノール
(C)スフィンゴモナス培養エキス
【発明の効果】
【0006】
本発明のジェル状組成物は、増粘しており使用時に指の間からこぼれ落ちにくく、使用性に優れている。本発明のジェル状組成物は、アルカノールアミンを用いることなく、凝集・析出を生じさせずに増粘することができ、皮膚への刺激が少なく、安全性が高い。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の第一のジェル状組成物は、(A)水、(B)エタノール、(C)スフィンゴモナス培養エキス、(D)アクリル酸系増粘剤、(E)無機塩基を含有し、(B)を45質量%以上85質量%以下含む。
本発明の第二のジェル状組成物は、(A)水、(B)エタノール、(C)スフィンゴモナス培養エキスを含有し、(B)を45質量%以上85質量%以下含む。
以下、本発明の第一のジェル状組成物と第二のジェル状組成物をまとめて、本発明のジェル状組成物ともいう。本発明において、ジェル状組成物とは、粘性を有する液体組成物を意味する。
【0008】
(B)エタノール
本発明のジェル状組成物におけるエタノールの配合量は、製剤のバリエーションを提供するために45質量%以上85質量%以下が好ましい。また、エタノールの配合量は、殺菌性の点から、55質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、また、80質量%以下であることが好ましい。
【0009】
(C)スフィンゴモナス培養エキス
スフィンゴモナス培養エキス(化粧品表示名称)は、スフィンゴモナス属細菌を用いた発酵により製造される組成物であり、多糖類、セラミド等を含む。
本発明のジェル状組成物におけるスフィンゴモナス培養エキスの配合量は特に制限されないが、例えば、0.001質量%以上5.0質量%以下である。増粘性、使用性の点で、スフィンゴモナス培養エキスの配合量は、0.02質量%以上0.2質量%以下が好ましい。
スフィンゴモナス培養エキスは、保湿剤としても作用し、(B)エタノールが揮発した後の乾燥を防ぐことができる。
スフィンゴモナス培養エキスとしては、市販品を用いることができ、例えば、Lubrizol Advanced Materials, Inc.製、Kelco-Care Diutan Gumが挙げられる。本市販品は、微生物発酵技術による多糖類を含む。
【0010】
メカニズムは不明であるが、(C)スフィンゴモナス培養エキスを含有することにより、(B)エタノール濃度が45質量%以上85質量%以下である高濃度条件下でも、(D)アクリル酸系増粘剤を析出させることなく、(E)無機塩基により増粘することができる。
【0011】
(C)スフィンゴモナス培養エキスは、(B)エタノールを45質量%以上85質量%以下含む高濃度エタノール水溶液に対して、多少の増粘性を示す。本発明の第二のジェル状組成物は、(D)、(E)成分を含む第一のジェル状組成物ほどではないが、(C)スフィンゴモナス培養エキスにより多少は増粘されており、手にとって塗り拡げる際に、指の間から垂れ落ちることを防止することができる。
【0012】
(D)アクリル酸系増粘剤
アクリル酸系増粘剤は、化粧品、医薬外用品等において使用されているものを特に制限することなく使用することができ、例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、架橋型ポリアクリル酸、架橋型ポリアクリル酸ナトリウム、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、カルボマー、ポリアクリルアミド、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)共重合体、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)共重合体、ポリアクリレート-13、ポリアクリレートクロスポリマー-6等の1種または2種以上を用いることができる。これらの中で、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体やカルボマーが使用時によれを生じにくいため好ましい。
第一のジェル状組成物におけるアクリル酸系増粘剤の配合量は特に制限されないが、例えば、0.001質量%以上5.0質量%以下である。チューブ容器での使用性の点からは、0.2質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。また、第一のジェル状組成物において、アクリル酸系増粘剤の配合量は、(B)スフィンゴモナス培養エキス1質量部に対して、0.5質量部以上20質量部以下であることが好ましく、1質量部以上15質量部以下であることがより好ましく、5質量部以上10質量部以下であることがさらに好ましい。
【0013】
(E)無機塩基
無機塩基は、アクリル酸系増粘剤をゲル化して増粘させるものである。無機塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を用いることができる。これらの中で、水酸化カリウムがよれを生じにくいため好ましい。
第一のジェル状組成物における無機塩基の配合量は、特に制限されないが、例えば、(D)アクリル酸系増粘剤100質量部に対して、0.01質量部以上1質量部以下である。
【0014】
本発明の第一のジェル状組成物は、(A)~(E)以外にも、プロパノール、イソプロパノール等の低級アルコール、他の増粘剤、多価アルコール、保湿剤、油剤、界面活性剤、香料、有効成分等を含むことができる。特に、本発明のジェル状組成物は、多価アルコールを含むことが好ましい。予め、(C)スフィンゴモナス培養エキスを多価アルコールに分散した後に(A)水を加えることにより、(C)スフィンゴモナス培養エキスがダマになりにくく、溶解させることが容易となる。多価アルコールとしては、グリセリン、ジグリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール等を用いることができる。また、本発明の第一のジェル状組成物は、(D)アクリル酸系増粘剤が(E)無機塩基により増粘することができるため、アルカノールアミンの配合量が1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることがさらに好ましく、含まないことが最も好ましい。
本発明の第二のジェル状組成物は、第一のジェル状組成物と同様に、(A)~(C)以外にも低級アルコール、増粘剤、多価アルコール、保湿剤、油剤、界面活性剤、香料、有効成分等を含むことができ、多価アルコールを含むことが好ましい。
【0015】
本発明のジェル状組成物は、消毒剤に用いることが好ましいが、その用途に限られず、皮膚外用剤、スキンケア剤、クレンジング剤等の用途に用いることもできる。
【実施例0016】
・使用原料
(A)水:精製水
(B)エタノール:発酵アルコール 95度1級(エタノール)
(C)スフィンゴモナス培養エキス:Lubrizol Advanced Materials, Inc.製、Kelco-Care Diutan Gum
(D)カルボマー:和光純薬工業(株)、ハイビスワコー105
(D)(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー:住友精化(株)、AQUPEC HV-701EDR
(E)水酸化カリウム:特級 水酸化カリウム
ペンチレングリコール:ジオールPD
DPG:DPG-FC(外原規)
BG:1,3-ブチレングリコール(UK)
グリセリン:化粧品用濃グリセリン
【0017】
・調製
粉末状である(C)スフィンゴモナス培養エキスを多価アルコールに分散した後、(A)水を加えた。これによりスフィンゴモナス培養エキスが膨潤する。これに、(D)アクリル酸系増粘剤の水溶液を加えてホモミキサーで均一撹拌し、さらに(B)エタノールを加えてホモミキサーで均一撹拌した後に、(E)水酸化カリウム水溶液を加えてホモミキサーで均一撹拌し、ジェル状組成物を得た。実施例10のジェル状組成物は、(D)、(E)を加えない以外は同様にして調製した。各成分の配合量(質量%)は、下記表1に示す。
【0018】
<評価方法>
・増粘
調製したジェル状組成物100mlを、200ml容ビーカーに入れた。ビーカーを、水平から斜め45度に素早く傾け、目視にて液面が水平になるまでの挙動を下記の基準にて判定し、評価した。
〇:傾けるのに遅れて水平となる。
×:傾けるのとほぼ同時に水平となる。
・析出
調製したジェル状組成物50mlを、60ml容サンプルビンに入れ、サンプルを室温下で目視により下記の基準にて判定し、評価した。
〇:析出がなく均一透明状態を維持。
×:析出が見られる。
【0019】
析出試験での評価が○であったものについて、下記評価を行った。
・塗布時のよれ
調製したジェル状組成物0.5mlを、手のひらに塗布して塗り拡げる際の挙動を下記の基準にて判定し、評価した。
〇:塗布している際に固形分(カス)が出ない。
×:塗布している途中に固形分(カス)が出る。
・チューブ容器での使用性
調製したジェル状組成物20mlを、30ml容チューブ容器(口径:3φ)に封入した。
〇:フタを開けた状態で吐出口を下に向けても液が垂れ落ちない。
×:フタを開けた状態で吐出口を下に向けると液が垂れ落ちる。
【0020】
【表1】
【0021】
本発明の第一のジェル状組成物である実施例1~9で得られた消毒剤は、チューブ容器の吐出口から垂れ落ちない程度に増粘し、使用性に優れていた。また、保管後に析出は生じず、肌に適用した際にもよれは生じず、揮発後の乾燥も感じなかった。
本発明の第二のジェル状組成物である実施例10で得られた消毒剤は、保管後に析出は生じず、肌に適用した際にもよれは生じず、揮発後の乾燥も感じなかった。また、チューブ容器の吐出口からは垂れ落ちてしまうが、使用時に指の間からこぼれ落ちない程度には増粘した。