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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122665
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】化粧料組成物および毛髪処理方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/06 20060101AFI20230829BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20230829BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20230829BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20230829BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20230829BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
A61K8/06
A61K8/34
A61K8/891
A61K8/37
A61K8/86
A61Q5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026296
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】592255176
【氏名又は名称】株式会社ミルボン
(74)【代理人】
【識別番号】100115901
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100078064
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 鐵雄
(72)【発明者】
【氏名】十亀 麻衣
(72)【発明者】
【氏名】松本 尚人
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB051
4C083AC071
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC172
4C083AC181
4C083AC182
4C083AC342
4C083AC441
4C083AC442
4C083AC692
4C083AD021
4C083AD022
4C083AD151
4C083AD152
4C083AD162
4C083BB06
4C083BB14
4C083CC31
4C083CC33
4C083DD33
4C083EE01
(57)【要約】
【課題】 環状シリコーン以外の揮発性シリコーンまたは揮発性炭化水素が多く配合されており、かつ乳化安定性に優れた水中油滴型乳化物である化粧料組成物の提供、および前記化粧料組成物を用いた毛髪処理方法の提供。
【解決手段】 本発明の化粧料組成物は、高級アルコール、カチオン界面活性剤および水が配合された水中油滴型乳化物であり、環状シリコーン以外の揮発性シリコーンおよび/または揮発性炭化水素が配合されており、前記環状シリコーン以外の揮発性シリコーンおよび/または揮発性炭化水素の配合量が、15質量%以上であり、ポリエーテル変性シリコーン、ソルビタン脂肪酸エステルまたはポリオキシエチレンアルキル(12~14)エーテルがさらに配合されていることを特徴とするものである。また、本発明の毛髪処理方法は、前記化粧料組成物を用いた毛髪処理方法である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高級アルコール、カチオン界面活性剤および水が配合された水中油滴型乳化物である化粧料組成物であって、
環状シリコーン以外の揮発性シリコーンおよび/または揮発性炭化水素が配合されており、
前記環状シリコーン以外の揮発性シリコーンおよび/または揮発性炭化水素の配合量が、15質量%以上であり、
ポリエーテル変性シリコーン、ソルビタン脂肪酸エステルまたはポリオキシエチレンアルキル(12~14)エーテルがさらに配合されていることを特徴とする化粧料組成物。
【請求項2】
25℃での粘度が、1,000~18,000mPa・sである請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項3】
シクロテトラシロキサン、シクロペンタシロキサン、およびシクロヘキサシロキサンから選ばれる1種以上の環状シリコーンが配合されていないか、または、シクロテトラシロキサン、シクロペンタシロキサン、およびシクロヘキサシロキサンから選ばれる1種以上の環状シリコーンが配合されており、その配合量が0.1質量%以下である請求項1または2に記載の化粧料組成物。
【請求項4】
毛髪用である請求項1~3のいずれか1項に記載の化粧料組成物。
【請求項5】
毛髪に塗布後、洗い流さない方法で使用される請求項4に記載の化粧料組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の化粧料組成物を用いたことを特徴とする毛髪処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状シリコーン以外の揮発性シリコーンおよび/または揮発性炭化水素が多く配合されており、かつ乳化安定性に優れた水中油滴型乳化物である化粧料組成物と、前記化粧料組成物を用いた毛髪処理方法とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヘアトリートメントなどの毛髪化粧料においては、高級アルコール、カチオン界面活性剤および水を主成分とする水中油滴型のものが知られており、要求される特性に応じて、揮発性の環状シリコーンや種々の不揮発性シリコーンなどの成分が配合されている(特許文献1など)。また、水中油滴型の化粧料として、特定の多価アルコール変性シリコーン、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、環状シリコーンなどの成分が配合されているもものも知られている(特許文献2など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-186464号公報
【特許文献2】特開2005-232088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、現在では、毛髪への塗布後に洗い流さない方法で使用される、いわゆるアウトバスタイプ(リーブオンタイプ)のトリートメントなどの、水中油滴型乳化物である化粧料も開発されている。
【0005】
毛髪への塗布後に洗い流す方法で使用されることを想定した化粧料では、揮発性シリコーンのような揮発性の油性成分の配合量は、例えば、特許文献1において、0.1~10質量%が好適である旨の記載があるように(段落[0043])、比較的限定的である。これに対し、アウトバスタイプの化粧料においては、毛髪に塗布した際の指通りの良さを高めるに際して揮発性の油性成分の使用が特に有効であるため、例えば15質量%以上といった、比較的多くの量を配合することが望まれる。
【0006】
また、毛髪用に限らず、特許文献2に示されるような皮膚などに用いられる水中油型化粧料においても、揮発性シリコーンのような揮発性の油性成分の配合量を比較的多くすることで、水中油型化粧料の使用感を高めるなどの要望も存在する。
【0007】
そして、現在市場に存在する化粧料では、こうした揮発性の油性成分として、シクロペンタシロキサンなどの環状シリコーンが用いられているものがある。しかしながら、例えばEUでは、使用した後に水で洗い流される化粧料において、シクロペンタシロキサンなどの環状シリコーンの配合規制が存在するなどの理由から、近年では、環状シリコーンの配合量を低減した化粧料や、環状シリコーンを配合しない化粧料の開発も要請されている。
【0008】
環状シリコーンの代替成分としては、環状シリコーン以外の揮発性シリコーンや揮発性炭化水素が有力視されているが、これらは、シクロペンタシロキサンなどの環状シリコーンよりも比重が小さいため、水中油滴型乳化物に多量に添加すると、油相と水相とが分離したり、油滴のサイズが大きくなったりするなど、乳化安定性を損なう問題がある。
【0009】
こうしたことから、水中油滴型乳化物である化粧料組成物において、環状シリコーン以外の揮発性シリコーンや揮発性炭化水素を多量に配合しつつ、乳化安定性を高める技術の開発が求められる。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、環状シリコーン以外の揮発性シリコーンおよび/または揮発性炭化水素が多く配合されており、かつ乳化安定性に優れた水中油滴型乳化物である化粧料組成物を提供することにある。また、本発明の別の目的は、前記化粧料組成物を用いた毛髪処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の化粧料組成物は、高級アルコール、カチオン界面活性剤および水が配合された水中油滴型乳化物であり、環状シリコーン以外の揮発性シリコーンおよび/または揮発性炭化水素が配合されており、前記環状シリコーン以外の揮発性シリコーンおよび/または揮発性炭化水素の配合量が、15質量%以上であり、ポリエーテル変性シリコーン、ソルビタン脂肪酸エステルまたはポリオキシエチレンアルキル(12~14)エーテルがさらに配合されていることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の毛髪処理方法は、本発明の化粧料組成物を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、環状シリコーン以外の揮発性シリコーンおよび/または揮発性炭化水素が多く配合されており、かつ乳化安定性に優れた水中油滴型乳化物である化粧料組成物を提供することができる。また、本発明によれば、前記化粧料組成物を用いた毛髪処理方法が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態(以下、本実施形態という)に基づいて本発明を説明する。
【0015】
<化粧料組成物>
本実施形態の化粧料組成物は、高級アルコール、カチオン界面活性剤および水が配合された水中油滴型乳化物である。本実施形態の化粧料組成物は、高級アルコール、カチオン界面活性剤および水の配合により、水中油滴型乳化物の形態を取ることができる。そして、上記化粧料組成物は、環状シリコーン以外の揮発性シリコーンおよび/または揮発性炭化水素の配合量が15質量%以上であると共に、ポリエーテル変性シリコーン、ソルビタン脂肪酸エステルまたはポリオキシエチレンアルキル(12~14)エーテルが配合されたものである。
【0016】
本実施形態の化粧料組成物によれば、ポリエーテル変性シリコーン、ソルビタン脂肪酸エステルまたはポリオキシエチレンアルキル(12~14)エーテルの作用により、環状シリコーン以外の揮発性シリコーンおよび/または揮発性炭化水素の配合量が15質量%以上であっても、優れた乳化安定性を確保することが可能となる。
【0017】
また、後述するように、本実施形態の化粧料組成物は、アウトバスタイプの毛髪化粧料として有用であるが、環状シリコーン以外の揮発性シリコーンおよび/または揮発性炭化水素の量が15質量%以上というように多く配合されているため、このような用途において、毛髪に塗布した際の指通りの良さに優れたものとなる。
【0018】
(高級アルコール)
本実施形態の化粧料組成物は、1種または2種以上の高級アルコールが配合されたものである。前記高級アルコールとしては、炭素数が12以上22以下のアルコールを用いることができ、例えば、直鎖状の高級アルコール(例えば、ミリスチルアルコール、セタノール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールなど)、分岐状の高級アルコール(例えば、ヘキシルデカノール、イソセチルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノールなど)などが挙げられる。なお、本実施形態の化粧料組成物に配合される前記高級アルコールとしては、化粧料組成物の粘度を高める観点から、炭素数が12以上18以下の高級アルコールを用いると好ましい。
【0019】
本実施形態の化粧料組成物における高級アルコールの配合量は、化粧料組成物が水中油滴型乳化物の形態を取り得る範囲であれば特に制限はないが、例えば、1質量%以上10質量%以下である。
なお、高級アルコールの配合量の下限値は、化粧料組成物の粘度を高める観点から、2質量%以上が好ましい。また、高級アルコールの配合量の上限値は、低コスト化の観点から、6質量%以下が好ましく、4質量%以下がより好ましい。
【0020】
(カチオン界面活性剤)
本実施形態の化粧料組成物は、1種または2種以上のカチオン界面活性剤が配合されたものである。前記カチオン界面活性剤としては、炭素数が12~22のアルキル基を有する第4級アンモニウム塩または炭素数が12~22のアルキル基を有する第3級アミン塩が挙げられ、上記塩としては、ハロゲン塩、アルキル硫酸塩などが挙げられる。なお、前記アルキル基は、直鎖状または分岐状であってもよく、飽和または不飽和であってもよい。
【0021】
炭素数が12~22のアルキル基を有する第4級アンモニウム塩としては、例えば、モノ長鎖アルキル型の第4級アンモニウム塩(例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、メチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウムなど)、ジ長鎖アルキル型の第4級アンモニウム塩(例えば、塩化ジココイルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムなど)、エチレンオキサイド(E.O.)付加型の第4級アンモニウム塩などが挙げられる。炭素数が12~22のアルキル基を有する第3級アミン塩としては、例えば、脂肪酸アミドアミン(例えば、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミドなど)、ポリオキシエチレンアルキルアミン(例えば、ポリオキシエチレンオレイルアミンなど)、ポリオキシエチレン脂肪酸アミドなどが挙げられる。
【0022】
上記例示のカチオン界面活性剤の中でも、炭素数が12以上22以下のアルキル基を有する第4級アンモニウム塩を用いることが好ましい。また、本実施形態の化粧料組成物に配合されるカチオン界面活性剤として、炭素数が12~22のアルキル基を有する第3級アミン塩を用いる場合は、化粧料組成物の粘度を高める観点から、炭素数が12~22のアルキル基を有する第4級アンモニウム塩を併用することがより好ましい。
【0023】
本実施形態の化粧料組成物におけるカチオン界面活性剤の配合量は、化粧料組成物が水中油滴型乳化物の形態を取り得る範囲であれば特に制限はないが、例えば、0.5質量%以上5質量%以下である。
なお、カチオン界面活性剤の配合量の下限値は、化粧料組成物の粘度を高める観点から、1質量%以上が好ましい。また、カチオン界面活性剤の配合量の上限値は、皮膚刺激が生じる虞を低減する観点から、2質量%以下が好ましい。
【0024】
(環状シリコーン以外の揮発性シリコーンおよび/または揮発性炭化水素)
本実施形態の化粧料組成物は、揮発性の油性成分として、環状シリコーン以外の揮発性シリコーンおよび/または揮発性炭化水素が配合されている。
【0025】
本明細書でいう「環状シリコーン以外の揮発性シリコーン」とは、環状シリコーン以外の、25℃での動粘度が5mm/s以下のシリコーンを意味している。前記25℃での動粘度は、医薬部外品原料規格2006 一般試験法 粘度測定法第1法に準拠して25℃で測定した値である。なお、上記環状シリコーン以外の揮発性シリコーンにおける「環状シリコーン」とは、揮発性シリコーンのうち環状構造を有するものを意味する。
【0026】
前記環状シリコーン以外の揮発性シリコーンとしては、例えば、25℃での動粘度が5mm/s以下の直鎖状シロキサン(例えば、揮発性ジメチコン、ジシロキサン、トリシロキサンなど)、25℃での動粘度が5mm/s以下のアルキルメチコン(例えば、エチルメチコン、カプリリルメチコンなど)、25℃での動粘度が5mm/s以下の分岐状シロキサン(例えば、メチルトリメチコンなど)などが挙げられる。
【0027】
また、本明細書でいう「揮発性炭化水素」とは、沸点が270℃以下であり、25℃で液状の炭化水素である。なお、「25℃で液状」とは、25℃で流動性を示すことを意味する(以下同じ。)。
【0028】
前記揮発性炭化水素としては、例えば、分岐状の揮発性炭化水素(例えば、イソドデカン、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、37.8℃での動粘度が20mm/s以下の水添ポリイソブテン、イソヘキサデカンなど)、直鎖状の揮発性炭化水素(例えば、ドデカン、C9-12アルカン、C10-13アルカンなど)などが挙げられる。前記37.8℃での動粘度は、キャノン-フェンスケ粘度計またはウベローデ粘度計などの粘度計を用いて、JIS Z8803に記載される方法を用いて測定した値である。
【0029】
本実施形態の化粧料組成物は、揮発性成分として、環状シリコーン以外の揮発性シリコーンおよび揮発性炭化水素のうちの1種のみが配合されていてもよく、2種以上が配合されていてもよい(よって、化粧料組成物には、環状シリコーン以外の揮発性シリコーンおよび揮発性炭化水素の両方が配合されていてもよい)。
【0030】
本実施形態の化粧料組成物における環状シリコーン以外の揮発性シリコーンおよび/または揮発性炭化水素の配合量(化粧料組成物に、環状シリコーン以外の揮発性シリコーンおよび揮発性炭化水素のうちのいずれか一方のみが配合されている場合には、その配合量であり、両方が配合されている場合は、それらの合計量である。以下同じ。)は、15質量%以上である。そのため、本実施形態の化粧料組成物は、環状シリコーン以外の揮発性シリコーンおよび/または揮発性炭化水素として、環状シリコーン以外の揮発性シリコーンが15質量%以上配合されたものであってもよく、揮発性炭化水素が15質量%以上配合されたものであってもよい。化粧料組成物において、環状シリコーン以外の揮発性シリコーンおよび/または揮発性炭化水素の配合量を15質量%以上で配合した場合に、乳化状態が不安定となる問題が生じ得るが、本実施形態の化粧料組成物であれば、優れた乳化安定性を確保することができる。また、本実施形態の化粧料組成物をアウトバスタイプのヘアトリートメントに使用する場合には、環状シリコーン以外の揮発性シリコーンおよび/または揮発性炭化水素の配合量を上記のようにすることで、毛髪に塗布した際の指通りの良さに優れたものとなる。そのような毛髪に塗布した際の指通りの良さがより優れたものとなる観点から、本実施形態の化粧料組成物における環状シリコーン以外の揮発性シリコーンおよび/または揮発性炭化水素の配合量は、20質量%以上であることが好ましい。
【0031】
本実施形態の化粧料組成物における環状シリコーン以外の揮発性シリコーンおよび/または揮発性炭化水素の配合量の上限値は、例えば、50質量%以下である。前記上限値は、より乳化安定性に優れた水中油滴型乳化物が実現可能となる観点から、30質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
【0032】
(ポリエーテル変性シリコーン、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキル(12~14)エーテル)
本実施形態の化粧料組成物は、ポリエーテル変性シリコーン、ソルビタン脂肪酸エステルまたはポリオキシエチレンアルキル(12~14)エーテルが配合されたものである。これらの配合によって、化粧料組成物の乳化安定性を高めることができる。
本実施形態の化粧料組成物は、ポリエーテル変性シリコーン、ソルビタン脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレンアルキル(12~14)エーテルのうちの1種のみが配合されたものでもよく、2種以上が配合されたものでもよい。
【0033】
(ポリエーテル変性シリコーン)
本実施形態の化粧料組成物に用いられるポリエーテル変性シリコーンは、シリコーンの分子中に、ポリエーテル基(例えば、酸化エチレン基および/または酸化プロピレン基)を有し、アミノ基を含まないものである。
本実施形態の化粧料組成物は、1種または2種以上のポリエーテル変性シリコーンが配合されたものとしてよい。
【0034】
前記ポリエーテル変性シリコーンとしては、例えば、シリコーンの分子中に酸化エチレン基を有するポリエーテル変性シリコーン、シリコーンの分子中に酸化エチレン基および酸化プロピレン基の両方を有するポリエーテル変性シリコーンが挙げられる。
前記ポリエーテル変性シリコーンとしては、例えば、下記一般式(1)~(5)で表されるものが挙げられる。
【0035】
【化1】
【0036】
上記一般式(1)中、vは酸化エチレンの平均付加モル数を示し、1を超え20以下である。また、w、x、yおよびzは、分子量に依存する整数である。
【0037】
上記一般式(1)で表されるポリエーテル変性シリコーンとしては、例えば、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンなどが挙げられる。
【0038】
【化2】
【0039】
上記一般式(2)中、p、q、r、sおよびtは、分子量に依存する整数である。Rは、炭素数8以上22以下の直鎖状または分岐状のアルキル基(該アルキル基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよい)を示す。また、uは酸化エチレンの平均付加モル数を示し、1を超え20以下である。
【0040】
上記一般式(2)で表されるポリエーテル変性シリコーンとしては、例えば、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンなどが挙げられる。
【0041】
【化3】
【0042】
上記一般式(3)中、aおよびbは、分子量に依存する整数である。また、cは酸化エチレンの平均付加モル数を示し、1を超え20以下である。
【0043】
上記一般式(3)で表されるポリエーテル変性シリコーンとしては、例えば、PEG-3ジメチコン、PEG-9ジメチコン、PEG-10ジメチコン、PEG-12ジメチコンなどが挙げられる。
【0044】
【化4】
【0045】
上記一般式(4)中、dおよびeは、分子量に依存する整数である。fは、1を超え5以下である。また、gは酸化エチレンの平均付加モル数を示し、1を超え35以下である。
【0046】
上記一般式(4)で表されるポリエーテル変性シリコーンとしては、例えば、PEG-6メチルエーテルジメチコン、PEG-11メチルエーテルジメチコン、PEG-32メチルエーテルジメチコンなどが挙げられる。
【0047】
【化5】
【0048】
上記一般式(5)中、j、kおよびlは、分子量に依存する整数である。mは、酸化エチレンの平均付加モル数を示し、1を超え25以下である。nは、酸化プロピレンの平均付加モル数を示し、1を超え30以下である。
【0049】
上記一般式(5)で表されるポリエーテル変性シリコーンとしては、例えば、PEG/PPG-20/22ブチルエーテルジメチコン、PEG/PPG-22/22ブチルエーテルジメチコン、PEG/PPG-23/23ブチルエーテルジメチコン、PEG/PPG-24/18ブチルエーテルジメチコン、PEG/PPG-27/9ブチルエーテルジメチコンなどが挙げられる。
【0050】
また、ポリエーテル変性シリコーンとしては、上記一般式(1)~(5)で表されるもの以外にも、例えば、セチルジメチコンとジメチコンのアルコキシル誘導体との共重合体(例えば、セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン)、セチルジメチコンとジメチコンのアルコキシル誘導体のブチルエーテルとの共重合体(例えば、セチルPEG/PPG-15/15ジメチコンブチルエーテル)、ジメチコンのメチル基の一部をポリアルキレングリコールで置換したポリエーテル変性シリコーン(例えば、PEG/PPG-25/25ジメチコン)などを用いることもできる。
【0051】
本実施形態の化粧料組成物は、ポリエーテル変性シリコーンとして、例えば、上記一般式(1)~(5)のいずれかで表されるポリエーテル変性シリコーン、セチルジメチコンとジメチコンのアルコキシル誘導体との共重合体、セチルジメチコンとジメチコンのアルコキシル誘導体のブチルエーテルとの共重合体、ジメチコンのメチル基の一部をポリアルキレングリコールで置換したポリエーテル変性シリコーンから選ばれる1種または2種以上を用いることができる。
【0052】
本実施形態の化粧料組成物は、より乳化安定性に優れた水中油滴型乳化物が実現可能となる観点から、ポリエーテル変性シリコーンとして、少なくとも、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン、PEG-3ジメチコン、PEG-10ジメチコンから選ばれる1種または2種以上が配合されたものが好ましい。
【0053】
なお、前記ポリエーテル変性シリコーンとしては、本実施形態の化粧料組成物を調製する際の取り扱い性を高める観点から、25℃で液状のものがよい。
【0054】
本実施形態の化粧料組成物に用いられるポリエーテル変性シリコーンとしては、例えば、25℃での動粘度が50mm/s以上3000mm/s以下のものを用いることができる。前記25℃での動粘度は、医薬部外品原料規格2006 一般試験法 粘度測定法第1法に準拠して25℃で測定した値である。なお、本実施形態の化粧料組成物に用いられるポリエーテル変性シリコーンとしては、より乳化安定性に優れた水中油滴型乳化物が実現可能となる観点から、25℃での動粘度が150mm/s以上のものが好ましい。
【0055】
本実施形態の化粧料組成物に用いられるポリエーテル変性シリコーンとしては、より乳化安定性に優れた水中油滴型乳化物が実現可能となる観点から、HLBが2以上15以下のものが好ましく、HLBが3以上10以下のものがより好ましい。上記のポリエーテル変性シリコーンにおけるHLBの値は、ポリエーテル変性シリコーンにおける酸化エチレンの質量百分率の1/5である。
【0056】
(ソルビタン脂肪酸エステル)
本実施形態の化粧料組成物に用いられるソルビタン脂肪酸エステルは、ソルビタンと脂肪酸がエステル結合したものである。本実施形態の化粧料組成物は、1種または2種以上のソルビタン脂肪酸エステルが配合されたものとしてよい。
【0057】
前記ソルビタン脂肪酸エステルとしては、炭素数が12以上22以下のアルキル基を有するものを用いることができ、例えば、ソルビタンモノ脂肪酸エステル(例えば、モノオレイン酸ソルビタン、ヤシ油脂肪酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノイソステアリン酸ソルビタンなど)、ソルビタンセスキ脂肪酸エステル(例えば、セスキオレイン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタンなど)、ソルビタントリ脂肪酸エステル(例えば、トリオレイン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタンなど)などが挙げられる。
【0058】
本実施形態の化粧料組成物に用いられるソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、HLBが1以上10以下である。なお、上記のソルビタン脂肪酸エステルにおけるHLBの値は、グリフィンの式により算出した値である。
【0059】
(ポリオキシエチレンアルキル(12~14)エーテル)
本実施形態の化粧料組成物に用いられるポリオキシエチレンアルキル(12~14)エーテルは、炭素数12~14のアルキル基を有するアルコールに酸化エチレンが付加重合されたものである。本実施形態の化粧料組成物は、1種または2種以上のポリオキシエチレンアルキル(12~14)エーテルが配合されたものとしてよい。
【0060】
前記ポリオキシエチレンアルキル(12~14)エーテルとしては、ポリオキシエチレンアルキル(12~14)エーテル(3E.O.)[化粧品表示名称:(C12-14)パレス-3]、ポリオキシエチレンアルキル(12~14)エーテル(5E.O.)[化粧品表示名称:(C12-14)パレス-5]、ポリオキシエチレンアルキル(12~14)エーテル(7E.O.)[化粧品表示名称:(C12-14)パレス-7]などが挙げられる。
【0061】
前記ポリオキシエチレンアルキル(12~14)エーテルとしては、例えば、酸化エチレンの平均付加モル数が2以上11以下のものを用いることができる。また、前記ポリオキシエチレンアルキル(12~14)エーテルとしては、より乳化安定性に優れた水中油滴型乳化物が実現可能となる観点から、酸化エチレンの平均付加モル数が10以下のものが好ましく、酸化エチレンの平均付加モル数が8以下のものがより好ましい。
【0062】
本実施形態の化粧料組成物に用いられるポリオキシエチレンアルキル(12~14)エーテルとしては、例えば、HLBが6以上14以下である。上記のポリオキシエチレンアルキル(12~14)エーテルにおけるHLBの値は、グリフィンの式で算出した値を意味する。
【0063】
本実施形態の化粧料組成物におけるポリエーテル変性シリコーン、ソルビタン脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレンアルキル(12~14)エーテルの配合量(化粧料組成物に、これらのうちの1種のみが配合されている場合には、その配合量であり、2種以上が配合されている場合は、それらの合計配合量である。以下同じ。)は、例えば、0.01質量%以上3質量%以下である。
【0064】
本実施形態の化粧料組成物におけるポリエーテル変性シリコーン、ソルビタン脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレンアルキル(12~14)エーテルの配合量の下限値としては、より乳化安定性に優れた水中油滴型乳化物が実現可能となる観点から、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましい。
また、本実施形態の化粧料組成物におけるポリエーテル変性シリコーン、ソルビタン脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレンアルキル(12~14)エーテルの配合量が多すぎると、化粧料組成物の粘度が低下する傾向にある。よって、例えば、本実施形態の化粧料組成物の剤型を、より好適なクリーム状とすることを容易にする観点からは、化粧料組成物におけるポリエーテル変性シリコーン、ソルビタン脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレンアルキル(12~14)エーテルの配合量の上限値は、1質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以下であることがより好ましい。
【0065】
本実施形態の化粧料組成物は、化粧料組成物におけるポリエーテル変性シリコーン、ソルビタン脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレンアルキル(12~14)エーテルの配合量に対する化粧料組成物における環状シリコーン以外の揮発性シリコーンおよび/または揮発性炭化水素の配合量の質量比((環状シリコーン以外の揮発性シリコーンおよび/または揮発性炭化水素の配合量)/(ポリエーテル変性シリコーン、ソルビタン脂肪酸エステル、およびポリオキシエチレンアルキル(12~14)エーテルの配合量)比)は、特に限定されず、適宜設定するとよい。
本実施形態の化粧料組成物は、化粧料組成物の粘度をより高める観点から、上記の質量比の上限値として、300以下が好ましく、200以下がより好ましい。また、本実施形態の化粧料組成物は、より乳化安定性に優れた水中油滴型乳化物が実現可能となる観点から、上記の質量比の下限値として、50以上が好ましく、70以上がより好ましい。
【0066】
(水)
本実施形態の化粧料組成物は水中油滴型乳化物であり、水が配合される。水の配合量は、化粧料組成物が水中油滴型乳化物となるように適宜設定すればよいが、通常、50質量%以上80質量%以下である。
【0067】
(任意成分)
本実施形態の化粧料組成物は、上述した成分(高級アルコール、カチオン界面活性剤、水、環状シリコーン以外の揮発性シリコーン、揮発性炭化水素、ポリエーテル変性シリコーン、ソルビタン脂肪酸エステル、およびポリオキシエチレンアルキル(12~14)エーテル)以外の任意成分が配合されたものとしてよい。任意成分としては、化粧料組成物に配合可能な成分を用いることができ、例えば、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤、低級アルコール、多価アルコール、糖類、油脂(植物油を含む)、エステル油、炭化水素、ロウ、脂肪酸、不揮発性シリコーン、リン脂質、高分子化合物、蛋白、アミノ酸、動植物抽出物、微生物由来物、無機化合物、香料、防腐剤、酸化防止剤、金属イオン封鎖剤、紫外線吸収剤、色素、還元剤、酸化剤、ビタミン、染料、顔料、酸、アルカリなどが挙げられる。
【0068】
(不揮発性シリコーン)
本実施形態の化粧料組成物は、1種または2種以上の不揮発性シリコーンが配合されたものとしてよい。前記不揮発性のシリコーンとしては、例えば、ジメチルシリコーン(例えば、25℃での動粘度が5mm/sを超えるジメチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン(重合度が650以上)など)、アミノ変性シリコーン(例えば、アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、コカミドプロピルジメチルアンモニオヒドロキシプロピルオキシプロピルシロキサン・メチルポリシロキサン共重合体酢酸塩など)、アミノ・ポリエーテル変性シリコーン(例えば、(ビスイソブチルPEG-14/アモジメチコン)コポリマーなど)、アミノフェニル変性シリコーン(例えば、アミノプロピルフェニルトリメチコンなど)、フェニル変性シリコーン(例えば、メチルフェニルポリシロキサン、フェニルプロピルジメチルシロキシケイ酸など)、シラノール基含有シリコーン(例えば、ジメチコノール、高重合ジメチコノール、ジメチルシロキサン・シラノール高重合メチルポリシロキサンなど)、長鎖アルキル変性シリコーン(例えば、セチルジメチコン、ステアロキシメチルポリシロキサンなど)、シリコーン3次元架橋物(例えば、(ビニルジメチコン/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、(ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン/ビスビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジメチコン/フェニルビニルジメチコン)クロスポリマーなど)などが挙げられる。本実施形態の化粧料組成物に配合される前記不揮発性シリコーンの配合量は、例えば、1質量%以上20質量%以下である。
【0069】
(環状シリコーン)
なお、本実施形態の化粧料組成物は、シクロテトラシロキサン、シクロペンタシロキサン、およびシクロヘキサシロキサンから選ばれる1種以上の環状シリコーンが配合されていてもよく、配合されていないものであってもよい。本実施形態の化粧料組成物にシクロテトラシロキサン、シクロペンタシロキサン、およびシクロヘキサシロキサンから選ばれる1種以上の環状シリコーンが配合されている場合、その配合量(環状シリコーンとして、シクロテトラシロキサン、シクロペンタシロキサン、およびシクロヘキサシロキサンのうちのいずれか1種のみが配合されている場合にはその配合量であり、上記の環状シリコーンのうち2種以上が配合されている場合は、それらの合計量である。以下同じ。)は、例えば、0.1質量%以下である。なお、シクロテトラシロキサン、シクロペンタシロキサン、およびシクロヘキサシロキサンから選ばれる1種以上の環状シリコーンの配合量は、0.05質量%以下としてもよい。
【0070】
(剤型)
本実施形態の化粧料組成物は、乳液状、クリーム状、ゲル状などの剤型とすることができる。なお、本実施形態の化粧料組成物は、適度な粘度によって適用対象に塗布しやすくなるため、クリーム状の剤型が好ましい。
【0071】
(粘度)
本実施形態の化粧料組成物が好適な剤型であるクリーム状である場合、その粘度は、例えば1,000mPa・s以上18,000mPa・s以下である。また、後述するように、本実施形態の化粧料組成物は、アウトバスタイプのヘアトリートメントに適用することが好ましいが、このような用途への適用を考慮すると、その粘度は、3,000mPa・s以上8,000mPa・s以下であることが好ましい。本実施形態の化粧料組成物における上記粘度は、B型粘度計において、粘度に応じて選定したローターを使用し、25℃、12rpmの条件で測定した60秒後の値である。
【0072】
(pH)
本実施形態の化粧料組成物は、例えば、pHが3以上9以下である。
【0073】
(用途)
本実施形態の化粧料組成物の用途については特に制限はなく、水中油滴型乳化物である各種の化粧料に適用可能である。
【0074】
本実施形態の化粧料組成物は、例えば、毛髪用とすることができる。毛髪用としては、ヘアケア用途(例えば、ヘアトリートメント、スタイリング兼用ヘアトリートメント、多剤式ヘアトリートメントの一構成剤、パーマの前処理用ヘアトリートメント、パーマの後処理用ヘアトリートメント、ヘアカラーリングの前処理用ヘアトリートメント、ヘアカラーリングの後処理用ヘアトリートメント、ブリーチの前処理用ヘアトリートメント、ブリーチの後処理用ヘアトリートメントなど)、ヘアスタリング用途などが挙げられる。なお、前記ヘアトリートメントは、洗い流さないヘアトリートメントであってもよく、洗い流すヘアトリートメントであってもよい。本実施形態の化粧料組成物は、毛髪に塗布した際の指通りの良さに優れるため、毛髪への塗布後に洗い流さない方法で使用されるアウトバスタイプのヘアトリートメントとして、好ましく用いることができる。
【0075】
また、本実施形態の化粧料組成物は、上述した毛髪用以外にも、頭皮用、頭皮以外の皮膚用とすることができる。頭皮用としては、例えば、頭皮用リンス、頭皮用コンディショナー、頭皮用トリートメント(例えば、洗い流さない頭皮用トリートメント、洗い流す頭皮用トリートメント、多剤式の頭皮用トリートメントの一構成剤)、頭皮用パック、頭皮用マスク、頭皮用乳液などが挙げられる。
【0076】
(調製方法)
本実施形態の化粧料組成物の調製方法については、特に制限はなく、必要な成分を使用し、従来から知られている水中油滴型乳化物の調製方法によって調製すればよい。
【0077】
(使用方法)
本実施形態の化粧料組成物は、例えば、適量を手に取り、適用対象(濡れた毛髪または乾いた毛髪、濡れた頭皮、頭皮以外の皮膚など)に塗布する方法により使用することができる。
【0078】
(対象毛髪)
本実施形態の化粧料組成物の使用対象となる毛髪は、特に限定されず、パーマ処理、カラーリング処理またはブリーチ処理の履歴がある毛髪、およびそれらの処理の履歴がない毛髪のいずれでもよい。
【0079】
<毛髪処理方法>
本実施形態の毛髪処理方法は、上述した本実施形態の化粧料組成物を用いて毛髪を処理する方法である。本実施形態の毛髪処理方法は、上述した本実施形態の化粧料組成物を用いる以外には、化粧料組成物を用いた公知の毛髪処理方法を採用すればよい。
【実施例0080】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。なお、以下の表1~表4では化粧料組成物全体で、それぞれ100%となるように各成分の配合量を%で示すが、その%はいずれも質量%であり、また、これらの表中ではその%の表示を省略し、配合量を表す数値のみで表示する。なお、表1~表4における「-」の表記は、その成分が未配合であることを示す。
【0081】
(実施例1~14、参考例1、比較例1~3)
実施例1~14、参考例1、および比較例1~3の化粧料組成物を表1~表3に示す組成となるように、各成分を混合して、化粧料組成物を調製した。なお、実施例1~14、参考例1、および比較例1~3の化粧料組成物において、揮発性ジメチコン(環状シリコーン以外の揮発性シリコーン)には25℃での動粘度が1.5mm/sのジメチルシリコーンを用いた。
【0082】
得られた実施例1~14、参考例1、および比較例1~3の化粧料組成物は、いずれも25℃での粘度が1000mPa・s以上7000mPa・s以下の水中油滴型乳化物であった。なお、参考例1の化粧料組成物で使用したタマリンドガムは増粘剤であり、後述する振動試験で化粧料組成物に付加する振動の程度を、比較例1の化粧料組成物と同程度とするために配合したものである。
【0083】
実施例1~14、参考例1および比較例1~3の化粧料組成物について、下記の振動試験を行って乳化安定性を評価した。
【0084】
内容量が50mlの円筒形スクリュー管(ポリエチレンテレフタレート製、高さ:8.2cm、直径:3.4cm)を複数用意し、実施例1~14、参考例1および比較例1~3の化粧料組成物を、それぞれ別のスクリュー管に20gずつ注入して、蓋をした。
【0085】
化粧料組成物を収容した各スクリュー管を横に寝かせ、高さ方向に平行な方向に11.7cmの振幅で、30秒間に約80回往復する速さで10分間振動を与える振動試験を行った。そして、振動試験後の各化粧料組成物の状態を目視で観察し、下記の基準に従って乳化安定性を評価した。
【0086】
〔実施例1~14、参考例1および比較例1~3の化粧料組成物の乳化安定性の評価基準〕
◎ : 振動試験の前後で乳化状態に変化がない(振動試験の前後でスクリュー管に収容された化粧料組成物の外観に変化が認められない)。
〇 : 振動試験後の油滴のサイズが振動試験前よりも大きいが、油相と水相との分離は生じていない(振動試験の前後でスクリュー管に収容された化粧料組成物の外観に変化が認められないが、振動試験前と振動試験後にそれぞれスクリュー管に収容された化粧料組成物を横に倒して上から目視で観察した際、スクリュー管の壁面に付着した化粧料組成物が、振動試験前よりも振動試験後の方が油滴のサイズが大きくなっている)。
× : 振動試験後に油相と水相とが分離した。
【0087】
各化粧料組成物の配合組成と、これらの評価結果とを表1~表3に示す。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
【表3】
【0091】
表1~表3に示す通り、環状シリコーン以外の揮発性シリコーンである揮発性ジメチコンの配合量が10質量%である参考例1の化粧料組成物は、振動試験後においても、その乳化状態は変化しないが、この配合量を15質量%とした比較例1の化粧料組成物および20質量%とした比較例2の化粧料組成物は、振動試験後に油相と水相とが分離した。これに対し、ポリエーテル変性シリコーン、ソルビタン脂肪酸エステルまたはポリオキシエチレンアルキル(12~14)エーテルを配合した実施例1~14の化粧料組成物は、振動試験後において、乳化状態に変化がないか、または油滴のサイズが増大する程度に留まっており、比較例1、2の化粧料組成物よりも優れた乳化安定性を有していた。
【0092】
また、ポリエーテル変性シリコーン、ソルビタン脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレンアルキル(12~14)エーテルに代えて、毛髪化粧料でよく使用されているノニオン界面活性剤であるポリオキシエチレンラウリルエーテル(2E.O.)を用いた比較例3の化粧料組成物は、振動試験後に油相と水相とが分離した。
【0093】
なお、25℃での動粘度が140mm/sのポリエーテル変性シリコーンを用いた実施例7の化粧料組成物に比べて、25℃での動粘度が140mm/sを超えるポリエーテル変性シリコーンを用いた実施例1~6、9~12の化粧料組成物は、乳化安定性に優れていた。そのため、ポリエーテル変性シリコーンとして、25℃での動粘度が150mm/s以上のものを用いると、より乳化安定性に優れることがわかる。
また、実施例7の化粧料組成物と実施例8の化粧料組成物との比較から、ポリエーテル変性シリコーンとして、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンを用いることで、より乳化安定性に優れることがわかる、
【0094】
(実施例15、参考例2、比較例4)
実施例15、参考例2、比較例4の化粧料組成物を表4に示す組成となるように、各成分を混合して、化粧料組成物を調製した。
【0095】
得られた実施例15、参考例2、比較例4の化粧料組成物は、いずれも25℃での粘度が1000mPa・s以上2000mPa・s以下の水中油滴型乳化物であった。なお、参考例2の化粧料組成物で使用したタマリンドガムは増粘剤であり、振動試験で化粧料組成物に付加する振動の程度を、比較例4の化粧料組成物と同程度とするために配合したものである。
【0096】
実施例15、参考例2および比較例4の化粧料組成物について、実施例1の化粧料組成物などと同様にして振動試験を行い、乳化安定性を評価した。なお、これらの化粧料組成物の乳化安定性は、下記の基準に従って評価した。
【0097】
〔実施例15、参考例2および比較例4の化粧料組成物の乳化安定性の評価基準〕
〇 : 振動試験前後で乳化状態に変化がない(振動試験の前後でスクリュー管に収容された化粧料組成物の外観に変化が認められない)。
△ : 振動試験後の油滴のサイズが振動試験前よりも大きい(振動試験の前後でスクリュー管に収容された化粧料組成物の外観に変化が認められないが、振動試験前と振動試験後にそれぞれスクリュー管に収容された化粧料組成物を横に倒して上から目視で観察した際、スクリュー管の壁面に付着した化粧料組成物が、振動試験前よりも振動試験後の方が油滴のサイズが大きくなっている)。
【0098】
各化粧料組成物の配合組成と、これらの評価結果とを表4に示す。
【0099】
【表4】
【0100】
表4に示す通り、揮発性炭化水素であるイソドデカンの配合量が10質量%である参考例2の化粧料組成物は、振動試験後においても、その乳化状態は変化しないが、この配合量を15質量%とした比較例4の化粧料組成物は、振動試験後に油滴のサイズが増大した。一方、ポリエーテル変性シリコーンを配合した実施例15の化粧料組成物は、振動試験後にも乳化状態に変化がなく、油滴のサイズの増大が抑制されており、比較例4の化粧料組成物よりも優れた乳化安定性を有していた。
【0101】
以下、ヘアトリートメントの処方例1~13を示す。
【0102】
(処方例1)
セタノール 3質量%、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 0.6質量%、メチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウム 0.5質量%、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム 0.6質量%、揮発性ジメチコン(25℃での動粘度が1.5mm/sのジメチルシリコーン) 10質量%、イソドデカン 10質量%、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 0.1質量%、不揮発性ジメチコン 2質量%、不揮発性ジメチコノール 2質量%、安息香酸アルキル(C12-15) 5質量%、イソプロパノール 0.3質量%、フェノキシエタノール 0.4質量%、香料 0.2質量%、水 65.3質量%
【0103】
(処方例2~13)
処方例2~13は、上記処方例1から、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンのみを、以下の成分のいずれかに変更したものである。
処方例2:ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、処方例3:PEG-3ジメチコン、処方例4:PEG-9ジメチコン、処方例5:PEG-10ジメチコン、処方例6:PEG-12ジメチコン、処方例7:PEG-11メチルエーテルジメチコン、処方例8:PEG-32メチルエーテルジメチコン、処方例9:セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン、処方例10:PEG/PPG-25/25ジメチコン、処方例11:PEG/PPG-20/22ブチルエーテルジメチコン、処方例12:(C12-14)パレス-7、処方例13:モノオレイン酸ソルビタン