(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122704
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】固体電解コンデンサ、及び固体電解コンデンサの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 9/012 20060101AFI20230829BHJP
H01G 9/052 20060101ALI20230829BHJP
H01G 9/00 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
H01G9/012 303
H01G9/052
H01G9/00 290D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026354
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000134257
【氏名又は名称】株式会社トーキン
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】荒木 健二
(72)【発明者】
【氏名】川合 陽洋
(57)【要約】
【課題】製造歩留まりを向上させることが可能な固体電解コンデンサを提供すること。
【解決手段】本発明の一態様にかかる固体電解コンデンサ1は、陽極導出線11と、陽極導出線11が埋設されたコンデンサ素子10と、を備える。陽極導出線11は、当該陽極導出線11が伸びる方向の少なくとも一部の断面が扁平形状であり、扁平形状の陽極導出線11の上面および下面の少なくとも一方には、中央部に設けられた凹部21と、凹部21の一方側から外側に伸びる第1直線部22と、凹部21の他方側から外側に伸びる第2直線部23と、が形成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極導出線と、
前記陽極導出線が埋設されたコンデンサ素子と、を備え、
前記陽極導出線は、当該陽極導出線が伸びる方向の少なくとも一部の断面が扁平形状であり、
前記扁平形状の前記陽極導出線の上面および下面の少なくとも一方には、中央部に設けられた凹部と、前記凹部の一方側から外側に伸びる第1直線部と、前記凹部の他方側から外側に伸びる第2直線部と、が形成されている、
固体電解コンデンサ。
【請求項2】
前記凹部の一方側と前記凹部の他方側との間の距離をAとし、前記第1直線部の外側端部から前記第2直線部の外側端部までの距離をBとした場合、A/Bの値が0.05以上0.95以下である、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項3】
前記凹部、前記第1直線部、及び前記第2直線部は、前記陽極導出線の上面および下面にそれぞれ形成されており、
前記陽極導出線の厚さをCとし、前記上面の凹部の底と前記下面の凹部の底との距離をDとした場合、D/Cの値が0.05以上0.95以下である、請求項1または2に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項4】
前記陽極導出線の上面と下面とに挟まれた、前記陽極導出線の両側側部はそれぞれ、外側に膨らむ曲線形状を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項5】
前記陽極導出線は、当該陽極導出線が前記コンデンサ素子に埋設されている部分において断面が扁平形状である、請求項1~4のいずれか一項に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項6】
前記陽極導出線は、当該陽極導出線が前記コンデンサ素子から露出している部分において断面が扁平形状である、請求項1~5のいずれか一項に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項7】
前記陽極導出線は、前記第1直線部と前記第2直線部とが陽極リードフレームに当接した状態で、前記陽極リードフレームに溶接されている、請求項6に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項8】
前記陽極導出線は前記コンデンサ素子を貫通しており、
前記陽極導出線は、前記陽極導出線が前記コンデンサ素子から露出している両側のそれぞれにおいて第1陽極導出線および第2陽極導出線を構成しており、
前記第1陽極導出線は基板から立設された第1陽極リードフレームに溶接されており、
前記第2陽極導出線は前記基板から立設された第2陽極リードフレームに溶接されている、請求項7に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項9】
前記コンデンサ素子は外装樹脂で外装されており、前記外装樹脂を含む前記固体電解コンデンサの高さが3.0mm以下である、請求項1~8のいずれか一項に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項10】
前記固体電解コンデンサの、動作周波数100KHzにおける等価直列抵抗が20mΩ以下である、請求項1~9のいずれか一項に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項11】
断面が略円形状の素線を、互いに対向するように配置された第1及び第2のローラで挟んで成形し、断面が扁平形状の陽極導出線を形成する第1工程と、
前記陽極導出線が埋設されたコンデンサ素子を形成する第2工程と、を備え、
前記第1及び第2のローラの少なくとも一方には、中央部に設けられた凸部と、前記凸部の一方側から外側に伸びる第3直線部と、前記凸部の他方側から外側に伸びる第4直線部と、が設けられており、
前記第1工程で形成された陽極導出線の上面および下面の少なくとも一方には、中央部に凹部が形成され、前記凹部の一方側から外側に伸びる第1直線部と前記凹部の他方側から外側に伸びる第2直線部とが前記凹部の両側に形成される、
固体電解コンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固体電解コンデンサ、及び固体電解コンデンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器等の様々な分野において固体電解コンデンサが広く用いられている。特許文献1には、タンタル細線と、タンタル細線の周囲に設けられた容量形成部と、容量形成部の周囲に設けられた導電体層と、を備えるノイズフィルタに関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているノイズフィルタ(固体電解コンデンサ)は、タンタル細線(陽極導出線)が円柱構造(つまり、断面形状が円形)である。しかしながら、陽極導出線の形状を円柱構造とした場合は、陽極導出線とリードフレームとを溶接した際に溶接不良が生じることがある。また、薄型化に対応して陽極導出線を円柱構造のまま細くしたり断面が扁平形状となるように潰したりした場合には、陽極体粉末に陽極導出線を挿入した際に陽極導出線が曲がることがあり、製造歩留まりが悪化するという問題がある。
【0005】
上記課題に鑑み本発明の目的は、製造歩留まりを向上させることが可能な固体電解コンデンサ、及び固体電解コンデンサの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様にかかる固体電解コンデンサは、陽極導出線と、前記陽極導出線が埋設されたコンデンサ素子と、を備え、前記陽極導出線は、当該陽極導出線が伸びる方向の少なくとも一部の断面が扁平形状であり、前記扁平形状の前記陽極導出線の上面および下面の少なくとも一方には、中央部に設けられた凹部と、前記凹部の一方側から外側に伸びる第1直線部と、前記凹部の他方側から外側に伸びる第2直線部と、が形成されている。
【0007】
本発明の一態様にかかる固体電解コンデンサの製造方法は、断面が略円形状の素線を、互いに対向するように配置された第1及び第2のローラで挟んで成形し、断面が扁平形状の陽極導出線を形成する第1工程と、前記陽極導出線が埋設されたコンデンサ素子を形成する第2工程と、を備える。前記第1及び第2のローラの少なくとも一方には、中央部に設けられた凸部と、前記凸部の一方側から外側に伸びる第3直線部と、前記凸部の他方側から外側に伸びる第4直線部と、が設けられている。前記第1工程で形成された陽極導出線の上面および下面の少なくとも一方には、中央部に凹部が形成され、前記凹部の一方側から外側に伸びる第1直線部と前記凹部の他方側から外側に伸びる第2直線部とが前記凹部の両側に形成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、製造歩留まりを向上させることが可能な固体電解コンデンサ、及び固体電解コンデンサの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態にかかる固体電解コンデンサの一例を示す側面図である。
【
図2】
図1の切断線II-IIにおける中央部の部分的な断面図である。
【
図3】実施の形態にかかる固体電解コンデンサのコンデンサ素子部分の断面図である。
【
図4】実施の形態にかかる固体電解コンデンサが備える陽極導出線の構成例を示す断面図である。
【
図5】本発明の効果を説明するための断面図である。
【
図6】本発明の効果を説明するための断面図である。
【
図7】実施の形態にかかる陽極導出線の製造方法を説明するための断面図である。
【
図8】関連技術にかかる陽極導出線の製造方法を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本実施の形態にかかる固体電解コンデンサの一例を示す側面図である。
図1に示すように、本実施の形態にかかる固体電解コンデンサ1は、コンデンサ素子10および陽極導出線11を備える。
【0011】
陽極導出線11は、一部がコンデンサ素子10の内部に埋設されており、コンデンサ素子10から露出している部分は陽極リードフレーム50と接続されている。具体的には、陽極リードフレーム50は、水平方向(x軸方向)に伸びる台座部51と、当該台座部51から鉛直方向(z軸方向)に立設された立設部53と、を備える。そして、陽極導出線11が立設部53の頂面と接続されることで、陽極導出線11と陽極リードフレーム50とが電気的に接続される。例えば、陽極導出線11は、溶接によって立設部53に接続される。台座部51は、基板(不図示)と接続される。
【0012】
コンデンサ素子10の陰極体15(
図2参照)は、コンデンサ素子10の下面側(z軸方向マイナス側)において陰極端子52と電気的に接続されている。例えば、陰極体15は、導電性接着剤を用いて陰極端子52に接続される。陰極端子52は、基板(不図示)と接続される。
【0013】
なお、
図1に示す構成例では、陽極導出線11がコンデンサ素子10に埋め込まれ、コンデンサ素子10の一方側から陽極導出線11が露出している構成(2端子構造)を示した。しかしながら本実施の形態では、陽極導出線11がコンデンサ素子10を貫通し、コンデンサ素子10の両側から陽極導出線11が露出している構成(3端子構造)としてもよい。
【0014】
図2は、コンデンサ素子10の内部構造を説明するための断面図であり、
図1の切断線II-IIにおける中央部の部分的な断面図である。
図2に示すように、コンデンサ素子10は、陽極体12、誘電体層13、固体電解質層14、及び陰極体15を備える。コンデンサ素子10の中央部には、陽極導出線11が配置されている。
【0015】
陽極導出線11は、例えば金属タンタル(Ta)を用いて形成されている。陽極導出線11の詳細については後述する。
【0016】
陽極体12は、陽極導出線11の周囲(コンデンサ素子10から露出している陽極導出線11以外の部分)を被覆している。陽極体12は、弁作用金属である金属タンタル(Ta)を用いて形成できる。例えば、陽極導出線11を金属タンタル粉末(陽極体12)に挿入した後、焼結することで形成してもよい。
【0017】
誘電体層13は、陽極体12の表面に形成されている。例えば、誘電体層13は、陽極体12の表面を陽極酸化することで形成できる。例えば、陽極体12にタンタルを用いた場合は、陽極体12を陽極酸化することで、陽極体12の表面に酸化タンタル被膜(誘電体層13)を形成できる。例えば、誘電体層13の厚みは、陽極酸化の電圧によって適宜調整できる。
【0018】
固体電解質層14は、誘電体層13の表面に形成されている。例えば、固体電解質層14は、導電性高分子を用いて形成することができる。固体電解質層14を形成する際は、例えば、化学酸化重合や電解重合等を用いることができる。また、導電性高分子溶液を塗布(含浸)して乾燥することで固体電解質層14を形成してもよい。
【0019】
固体電解質層14は、例えばピロール、チオフェン、アニリンおよびその誘導体を少なくとも一種以上含む単量体からなる重合体を含むことが好ましい。加えて、ドーパントとしてスルホン酸系化合物を含むことが好ましい。また、固体電解質層14には、上述の導電性高分子に加えて、二酸化マンガン、酸化ルテニウム等の酸化物材料、TCNQ(7,7,8,8,-テトラシアノキノジメタンコンプレックス塩)等の有機半導体等が含まれていてもよい。
【0020】
陰極体15は、固体電解質層14の表面に形成されている。例えば、陰極体15は、固体電解質層14の表面に形成されたグラファイト層と、グラファイト層の表面に形成された銀ペースト層とを用いて構成してもよい。陰極体15は、コンデンサ素子10の下面側(z軸方向マイナス側)において、導電性接着剤を用いて陰極端子52に接続される。
【0021】
図3は、本実施の形態にかかる固体電解コンデンサのコンデンサ素子部分の断面図であり、コンデンサ素子10と陽極導出線11の断面形状を説明するための断面図である。なお、
図3では陰極端子52の図示を省略している。
【0022】
図3に示すように、陽極導出線11はコンデンサ素子10に埋設されている。本実施の形態において、コンデンサ素子10の断面(yz平面で切断した断面)の形状は、長手方向が水平方向(y軸方向)に伸びる矩形状である。例えば、コンデンサ素子10の高さ(z軸方向の長さ)は、2.0mm以下が好ましい。また、本実施の形態にかかる固体電解コンデンサにおいて、コンデンサ素子10は外装樹脂で外装されていてもよく、この場合、外装樹脂を含む固体電解コンデンサの高さは3.0mm以下が好ましい。
【0023】
陽極導出線11は、当該陽極導出線11が伸びる方向(x軸方向)と垂直な断面が扁平形状である。また、陽極導出線11の上面には、中央部に設けられた凹部21aと、凹部21aの一方側から外側(y軸方向マイナス側)に伸びる第1直線部22aと、凹部21aの他方側から外側(y軸方向プラス側)に伸びる第2直線部23aと、が形成されている。同様に、陽極導出線11の下面には、中央部に設けられた凹部21bと、凹部21bの一方側から外側(y軸方向マイナス側)に伸びる第1直線部22bと、凹部21bの他方側から外側(y軸方向プラス側)に伸びる第2直線部23bと、が形成されている。また、陽極導出線11の上面と下面とに挟まれた、陽極導出線11の両側側部(y軸方向における両側端部)はそれぞれ、外側に膨らむ曲線形状24、25を有する。なお、以下では凹部21a、21bを総称して凹部21と記載する場合もある。他の構成要素についても同様である。
【0024】
図3に示す構成例では、凹部21a、21bの断面形状が曲線形状である構成例を示した。しかしながら本実施の形態では、凹部21a、21bの断面形状は、曲線形状以外の形状であってもよく、凹部21a、21bの中心に向かって徐々に深くなるような形状であれば特に限定されることはない。例えば、凹部21a、21bの断面形状は、台形状であってもよく、V字状であってもよい。凹部21a、21bの断面形状をこのような形状とすることで、陽極体粉末に陽極導出線11を挿入する際に、凹部21a、21b表面における陽極体粉末の流動性を向上させることができる。
【0025】
図4に示すように、本実施の形態では、陽極導出線11の凹部21の一方側と凹部21の他方側との間の距離をAとし、第1直線部22の外側端部から第2直線部23の外側端部までの距離をBとした場合、A/Bの値を0.05以上0.95以下、好ましくは0.1以上0.9以下としてもよい。特に、陽極導出線11自身の強度を考慮すると、A/Bの値は0.2以上0.5以下とすることがより好ましい。
【0026】
また、本実施の形態では、陽極導出線11の厚さをCとし、上面の凹部21aの底と下面の凹部21bの底との距離をDとした場合、D/Cの値を0.05以上0.95以下、好ましくは0.1以上0.9以下としてもよい。特に、陽極導出線11自身の強度を考慮すると、D/Cの値は0.5以上0.8以下とすることがより好ましい。
【0027】
なお、本実施の形態では、陽極導出線11がコンデンサ素子10に埋設されている部分、及び、陽極導出線11がコンデンサ素子10から露出している部分の両方において、陽極導出線11の断面形状を
図4に示す形状(凹部21、第1直線部22、及び第2直線部23を有する形状)としてもよい。
【0028】
また、本実施の形態では、陽極導出線11が伸びる方向(x軸方向)の少なくとも一部において、陽極導出線11の断面形状を
図4に示す形状(凹部21、第1直線部22、及び第2直線部23を有する形状)としてもよい。具体的には、陽極導出線11がコンデンサ素子10に埋設されている部分において、陽極導出線11の断面形状を
図4に示す形状とし、他の部分の陽極導出線11の断面形状を他の形状としてもよい。また、陽極導出線11がコンデンサ素子10から露出している部分において、陽極導出線11の断面形状を
図4に示す形状とし、他の部分の陽極導出線11の断面形状を他の形状としてもよい。
【0029】
なお、
図3、
図4に示す構成例では、陽極導出線11の上面および下面の両方に、凹部21a、21b、第1直線部22a、22b、及び第2直線部23a、23bを設けた構成を示した。しかしながら本実施の形態では、陽極導出線11の上面および下面の片方のみに、凹部21、第1直線部22、及び第2直線部23を設けるようにしてもよい。この場合は、陽極導出線11が陽極リードフレーム50(立設部53)と接する側の面に、凹部21、第1直線部22、及び第2直線部23を設けることが好ましい。
【0030】
以上で説明したように、本実施の形態では、固体電解コンデンサの陽極導出線11の断面形状を扁平形状としている。そして、陽極導出線11の上面および下面の少なくとも一方に、凹部21と、当該凹部21の一方側から外側に伸びる第1直線部22と、凹部21の他方側から外側に伸びる第2直線部23と、を形成している。
【0031】
本実施の形態では、陽極導出線11の形状をこのような形状としているので、陽極導出線とリードフレームとを溶接した際に溶接不良が生じることを抑制できる。また、陽極体粉末に陽極導出線を挿入した際に陽極導出線が曲がることを抑制できる。したがって、本実施の形態にかかる発明により、製造歩留まりを向上させることが可能な固体電解コンデンサ、及び固体電解コンデンサの製造方法を提供することができる。
【0032】
図5、
図6は、本発明の効果を説明するための断面図である。
図5の左図に示すように、比較例にかかる固体電解コンデンサ101は、陽極導出線111が円柱構造(つまり、断面形状が円形)であったため、台座部151から立設する立設部153(陽極リードフレーム)と陽極導出線111との接触部155が点となり不安定であった。このため、陰極体と陰極端子とを導電性接着剤を用いて接着する際に固体電解コンデンサ101が傾いて接着不良となったり、コンデンサ素子が外装樹脂から露出して露出不良となったりする場合があった。
【0033】
これに対して本実施の形態にかかる固体電解コンデンサ1では、
図5の右図に示すように、陽極導出線11が第1直線部22と第2直線部23とを備えるので、立設部53と陽極導出線11との接触部55、56が線状となり安定する。したがって、接着不良や露出不良の発生を抑制できる。
【0034】
また、
図5の左図に示すように、比較例にかかる固体電解コンデンサ101は、立設部153と陽極導出線111との接触部155が点であるため、電気的に点で接続されていた。このため、陽極導出線111と立設部123との接続抵抗が高くなるという問題があった。
【0035】
これに対して本実施の形態にかかる固体電解コンデンサ1では、
図5の右図に示すように、陽極導出線11が第1直線部22と第2直線部23とを備えるので、立設部53と陽極導出線11との接触部155、156が線状となり、面接触となる。このため、陽極導出線11と立設部53との接続抵抗を低くすることができる。
【0036】
また、
図6の左図に示す比較例にかかる固体電解コンデンサ102のように、陽極導出線111を扁平形状とし、陽極導出線111と立設部153とが2つの接触部157、158で接するように構成した場合は、溶接時にスパークが発生する場合があった(
図5に示した構成においても同様にスパークが発生する場合があった)。
【0037】
これに対して本実施の形態にかかる固体電解コンデンサ1では、立設部53に陽極導出線11を溶接する際、陽極導出線11の第1直線部22と第2直線部23とが立設部53(陽極リードフレーム)に当接した状態で、立設部53に溶接される。つまり、立設部53と陽極導出線11とが面接触した状態で溶接されるので、溶接時にスパークが発生することを抑制できる。
【0038】
一例を挙げると、本実施の形態にかかる陽極導出線11のA/Bの値を0.1以上0.9以下とし、D/Cの値を0.1以上0.9以下とした場合(
図4参照)、立設部53に陽極導出線11を溶接した際のスパーク発生率は0%(20サンプル中0%)であった。一方、
図6の左図に示す陽極導出線111を用いた場合は、立設部153に陽極導出線111を溶接した際のスパーク発生率は50%(20サンプル中50%)であった。
【0039】
また、
図5に示した比較例にかかる固体電解コンデンサ101のように、陽極導出線111を円柱構造(つまり、断面形状が円形)とした場合は、固体電解コンデンサを薄型化するために陽極導出線111の線径を小さくすると、陽極体粉末に陽極導出線111を挿入する際に、陽極導出線111が曲がる場合があった。また、陽極導出線の断面形状を単純な扁平形状とした場合は、陽極導出線が曲がりやすいため、陽極体粉末に陽極導出線を挿入する際に、陽極導出線111が曲がる場合があった。
【0040】
これに対して本実施の形態にかかる固体電解コンデンサ1では、陽極導出線11の上面および下面の少なくとも一方に凹部21を設けているので、陽極導出線11の曲がりに対する強度を強くできる。したがって、陽極体粉末に陽極導出線11を挿入する際に陽極導出線11が曲がることを抑制できる。
【0041】
一例を挙げると、本実施の形態にかかる陽極導出線11のA/Bの値を0.1以上0.9以下とし、D/Cの値を0.1以上0.9以下とした場合(
図4参照)、陽極体粉末に陽極導出線11を挿入した際、曲がりが発生した割合は0%(100サンプル中0%)であった。一方、凹部21を設けない扁平形状の陽極導出線を用いて同様の検証を実施した場合、陽極体粉末に陽極導出線を挿入した際、曲がりが発生した割合は20%(100サンプル中20%)であった。
【0042】
更に本実施の形態にかかる固体電解コンデンサ1では、陽極導出線11の上面および下面の少なくとも一方に凹部21を設けているので、陽極体粉末に陽極導出線11を挿入する際に、陽極体粉末の一部を凹部21の形状に沿って流動させることができる。このように、陽極導出線11の表面近傍において陽極体粉末を流動させることで、陽極体粉末が高密度となることを抑制できる。よって、陽極体への酸化剤溶液、モノマー液、及び導電性高分子溶液の染み込みが容易となる。これにより重合反応によって形成される固体電解質14の形成を均一にできるため、ESR値が大きくなることを抑制できる。
【0043】
一例を挙げると、本実施の形態かかる固体電解コンデンサの、動作周波数100KHzにおける等価直列抵抗(ESR)は20mΩ以下である。これに対し、凹部21を設けない扁平形状の陽極導出線を用いた固体電解コンデンサでは、動作周波数100kHzにおけるESRは30mΩとなり、1.5倍の値を示した。
【0044】
次に、本実施の形態にかかる固体電解コンデンサの製造方法について説明する。
本実施の形態にかかる固体電解コンデンサを製造する際は、まず、断面が扁平形状(
図4に示した形状)の陽極導出線11を形成する。そして、陽極導出線11が埋設されたコンデンサ素子10を形成する。具体的には、陽極導出線11を陽極体粉末(タンタル粉末)に挿入した後、焼結して陽極体12(
図2参照)を形成する。その後、陽極体12の表面に電気化学的に誘電体層13を形成する。例えば、誘電体層13は、陽極体12の表面を陽極酸化することで形成できる。
【0045】
その後、誘電体層13の表面に固体電解質層14を形成する。例えば、固体電解質層14は、導電性高分子を用いて形成することができる。固体電解質層14を形成する際は、例えば、化学酸化重合や電解重合等を用いることができる。また、導電性高分子溶液を塗布(含浸)して乾燥することで固体電解質層14を形成してもよい。次に、固体電解質層14の表面に陰極体15を形成する。そして、導電性接着剤を用いて陰極体15を陰極端子52に接続する。
【0046】
次に、本実施の形態にかかる陽極導出線の製造方法について説明する。
図7は、本実施の形態にかかる陽極導出線の製造方法を説明するための断面図である。本実施の形態にかかる陽極導出線11を製造する際は、陽極導出線11の原材料となる素線30の上下面を、2つのローラ40で挟んで押しつぶしながら、素線30をx軸方向に送ることで製造する。なお、
図7では下側のローラの図示を省略している。
【0047】
本実施の形態では、ローラ40の表面に、凸部41と、凸部41の一方側から外側に伸びる第3直線部42と、凸部41の他方側から外側に伸びる第4直線部43とを設けている。ローラ40は回転軸45を中心に回転する。このような形状を備える2つのローラ40を用いて素線30の上下面を挟んで押しつぶすことで、
図4に示したような陽極導出線11を形成することができる。
【0048】
つまり、ローラ40の凸部41は陽極導出線11の凹部21を形成し、ローラ40の第3直線部42は陽極導出線11の第1直線部22を形成し、ローラ40の第4直線部43は陽極導出線11の第2直線部23を形成する。
【0049】
本実施の形態では、ローラ40の表面の凸部41の両側に第3直線部42と第4直線部43とを設けている。よって、素線30の上下面を2つのローラ40で挟んで押しつぶして陽極導出線11を製造する際に、素線30の位置がローラ40に対してずれることを抑制することができる。
【0050】
なお、
図7に示す構成例では、凸部41の断面形状が曲線形状を有する構成例を示した。しかしながら本実施の形態では、凸部41の断面形状は、曲線形状以外の形状であってもよく、凸部41の中心に向かって徐々に高くなるような形状であれば特に限定されることはない。
【0051】
図8は、関連技術にかかる陽極導出線の製造方法を説明するための断面図である。関連技術では、ローラ140の表面に、曲線形状を有する凸部141のみが設けられている。ローラ140は回転軸145を中心に回転する。なお、
図8においても下側のローラの図示を省略している。
【0052】
図8に示す関連技術では、2つのローラ140を用いて素線130の上下面を挟んで押しつぶして陽極導出線111を形成する際に、素線130が左右(y軸方向)にずれる場合がある(図中の矢印を参照)。このため、
図8の下図に示すように、形成された陽極導出線111に形成された凹部121の位置が中心からずれる場合があった。
【0053】
これに対して本実施の形態では、
図7に示したように、ローラ40の表面の凸部41の両側に第3直線部42と第4直線部43とを設けている。よって、素線30の上下面を2つのローラ40で挟んで押しつぶして陽極導出線11を製造する際に、素線30の位置がローラ40に対してずれることを抑制することができる。したがって、陽極導出線11に形成された凹部21の位置が中心からずれることを抑制できる。
【0054】
なお、本実施の形態では、上側および下側のローラ40の少なくとも一方に、凸部41、第3直線部42、及び第4直線部43を設けてもよい。つまり、陽極導出線11の一方のみに凹部21、第1直線部22、及び第2直線部23を形成する場合は、2つのローラ40のうちの一方のみに凸部41、第3直線部42、及び第4直線部43を設ける。
【0055】
以上、本発明を上記実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施の形態の構成にのみ限定されるものではなく、本願特許請求の範囲の請求項の発明の範囲内で当業者であればなし得る各種変形、修正、組み合わせを含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0056】
1 固体電解コンデンサ
10 コンデンサ素子
11 陽極導出線
12 陽極体
13 誘電体層
14 固体電解質層
15 陰極体
21、21a、21b 凹部
22、22a、22b 第1直線部
23、23a、23b 第2直線部
24、25 曲線形状
30 素線
40 ローラ
41 凸部
42 第3直線部
43 第4直線部
45 回転軸
50 陽極リードフレーム
51 台座部
52 陰極端子
53 立設部
55、56 接触部