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特開2023-122743医療管状体の検査装置および検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122743
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】医療管状体の検査装置および検査方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20230829BHJP
【FI】
A61M25/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026422
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141829
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 牧人
(74)【代理人】
【識別番号】100123663
【弁理士】
【氏名又は名称】広川 浩司
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 望
(72)【発明者】
【氏名】松崎 亮太
(72)【発明者】
【氏名】大嶽 祐八
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA01
4C267AA31
4C267BB13
4C267BB14
4C267BB42
4C267HH01
4C267HH07
(57)【要約】
【課題】医療管状体の内層の状態を検出できる医療管状体の検査装置および検査方法を提供する。
【解決手段】導電体により形成される補強体104および絶縁体により形成される内層102を有する医療管状体100の内層102の状態を検出する医療管状体100の検査装置1であって、先端および基端を有する長尺なプローブ3を有し、プローブ3は、当該プローブ3の先端側に配置される第1電極21と、第1電極21よりも基端側の外周に配置される第2電極32と、第1電極21および第2電極32を絶縁する絶縁部40と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電体により形成される導電部および絶縁体により形成される内層を有する医療管状体の前記内層の状態を検出する医療管状体の検査装置であって、
先端および基端を有する長尺なプローブを有し、
前記プローブは、当該プローブの先端側に配置される第1電極と、前記第1電極よりも基端側の外周に配置される第2電極と、前記第1電極および前記第2電極を絶縁する絶縁部と、を有することを特徴とする医療管状体の検査装置。
【請求項2】
前記第2電極は、前記第1電極よりも前記プローブの長尺方向に長いことを特徴とする請求項1に記載の医療管状体の検査装置。
【請求項3】
前記第1電極は、径方向外側へ突出する凸部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の医療管状体の検査装置。
【請求項4】
前記凸部は、前記第1電極の外周面の周方向へ全周的に形成されることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の医療管状体の検査装置。
【請求項5】
前記凸部は、前記第1電極の外周面の周方向の一部に形成されることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の医療管状体の検査装置。
【請求項6】
前記第1電極は、前記プローブの長尺方向と交差する回転軸で回転可能な導電性を備える回転部を有することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の医療管状体の検査装置。
【請求項7】
前記第2電極の外周に摺動可能に配置されるリング状の導電性を備えた付加電極を有することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の医療管状体の検査装置。
【請求項8】
前記第2電極は、コイル状の線材より形成されることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の医療管状体の検査装置。
【請求項9】
導電体により形成される導電部および絶縁体により形成される内層を有する医療管状体の前記内層の状態を検知する医療管状体の検査方法であって、
先端および基端を有する長尺なプローブであり、当該プローブの先端側に配置される第1電極と、前記第1電極よりも基端側の外周に配置される第2電極と、前記第1電極および前記第2電極を絶縁する絶縁部と、を有する前記プローブを、前記医療管状体の内部に挿入し、
前記導電部による前記第1電極と前記第2電極との間の導通の検知を試み、
前記導通が検知された場合に前記内層が損傷していると判断することを特徴とする医療管状体の検査方法。
【請求項10】
前記プローブを前記医療管状体の内部に挿入した状態で、前記第2電極の外周に摺動可能に配置したリング状の導電性を備えた付加電極を、前記医療管状体の端面から露出する前記導電部に接触させ、
前記付加電極を前記端面から露出する前記導電部に接触させた状態を維持しつつ、前記前記第1電極を前記医療管状体の内部で前記導電部に接触させることを試みることを特徴とする請求項9に記載の医療管状体の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療管状体の検査装置および検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血管内治療用のカテーテルを病変部へ到達させるために、屈曲に強い構造を備えたガイディングカテーテルが使用される。ガイディングカテーテルは、治療用カテーテルを滑らかに誘導でき、かつ屈曲に強い構造を備えるために、例えば、低摩擦材料からなる内層、編組された金属線からなる補強層、外層の3層で構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-54480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガイディングカテーテルが製品としての機能を達成するためには、内層が、補強層および外層と十分に密着していることが重要である。このため、万が一内層が損傷すると、ガイディングカテーテルは、機能を十分に発揮できない可能性がある。したがって、ガイディングカテーテルの内層の損傷を検出できる装置や方法が望まれる。例えば特許文献1には、バルーンカテーテルのバルーンの破壊を検出可能なシステムが記載されている。しかしながら、特許文献1に記載のシステムを、カテーテルの内層の損傷の検出に使用することは困難である。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、医療管状体の内層の状態を検出できる医療管状体の検査装置および検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明に係る医療管状体の検査装置は、導電体により形成される導電部および絶縁体により形成される内層を有する医療管状体の前記内層の状態を検知する医療管状体の検査装置であって、先端および基端を有する長尺なプローブを有し、前記プローブは、先端側に配置される第1電極と、前記第1電極の基端側の外周に配置される第2電極と、前記第1電極および前記第2電極を絶縁する絶縁部と、を有することを特徴とする。
【0007】
上記目的を達成する本発明に係る医療管状体の検査方法は、導電体により形成される導電部および絶縁体により形成される内層を有する医療管状体の前記内層の状態を検知する医療管状体の検査方法であって、先端および基端を有する長尺なプローブであり、当該プローブの先端側に配置される第1電極と、前記第1電極よりも基端側の外周に配置される第2電極と、前記第1電極および前記第2電極を絶縁する絶縁部と、を有する前記プローブを、前記医療管状体の内部に挿入し、前記導電部による前記第1電極と前記第2電極との間の導通の検知を試み、前記導通が検知された場合に前記内層が損傷していると判断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上記のように構成した医療管状体の検査装置および検査方法は、医療管状体に挿入されたプローブの第1電極および第2電極の導通を検知することで、内層の損傷を検出できる。
【0009】
前記第2電極は、前記第1電極よりも前記プローブの長尺方向に長くてもよい。これにより、検査装置は、第2電極の導電体との接触を検知できる範囲が広いため、内層の損傷を検出できる範囲を広げることができる。
【0010】
前記第1電極は、径方向外側へ突出する凸部を有してもよい。これにより、凸部が、医療管状体の内面に露出する導電部に接触しやすい。このため、検査装置は、内層の損傷をより確実に検出できる。
【0011】
前記凸部は、前記第1電極の外周面の周方向へ全周的に形成されてもよい。これにより、第1電極の凸部は、医療管状体の内面から周方向の全ての方向の導電部に接触しやすい。このため、検査装置は、内層の損傷をより確実に検出できる。
【0012】
前記凸部は、前記第1電極の外周面の周方向の一部に形成されてもよい。これにより、検査装置は、第1電極と第2電極の導通を検知した場合に、凸部が向く方向により、内層の損傷位置を特定することが容易である。
【0013】
前記第1電極は、前記プローブの長尺方向と交差する回転軸で回転可能な回転部を有してもよい。これにより、第1電極が医療管状体の内面と滑りやすくなり、プローブの医療管状体への挿入性を向上でき、かつ医療管状体の内層の損傷の発生を抑制できる。
【0014】
前記第2電極の外周に摺動可能に配置されるリング状の導電性を備えた付加電極を有してもよい。これにより、医療管状体の長尺方向の端部から露出する導電部に、付加電極を介して第2電極を接触させることができる。このため、検査装置は、医療管状体の内層から露出する導電部に対して第2電極を接触させずに第1電極を接触させるだけで、第1電極と第2電極の導通を検知できる。したがって、検査装置は、内層の損傷が小さい場合であっても、内層の損傷を検出できる。
【0015】
前記第2電極は、コイル状の線材より形成されてもよい。これにより、第2電極が柔軟となる。このため、第1電極および第2電極を導電部に接触しやすくなる。また、第2電極の摩擦抵抗を低減して、プローブの医療管状体への挿入性を向上でき、かつ内層の損傷の発生を抑制できる。
【0016】
前記検査装置の検査方法は、前記プローブを前記医療管状体の内部に挿入した状態で、前記第2電極の外周に摺動可能に配置したリング状の導電性を備えた付加電極を、前記医療管状体の端面から露出する前記導電部に接触させ、前記付加電極を前記端面から露出する前記導電部に接触させた状態を維持しつつ、前記第1電極を前記医療管状体の内部で前記導電部に接触させることを試みてもよい。これにより、医療管状体の検査方法は、医療管状体の内層から露出する導電部に対して第2電極を接触させずに第1電極を接触させるだけで、第1電極と第2電極の導通を検知できる。このため、内層の損傷範囲が小さい場合であっても、内層の損傷を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係る検査装置を示す平面図である。
図2】実施形態に係る検査装置のプローブを示す断面図である。
図3】ガイディングカテーテルの医療管状体を示す断面図である。
図4】医療管状体にプローブを挿入した状態を示す断面図である。
図5】第1変形例の検査装置のプローブを医療管状体に挿入した状態を示す断面図である。
図6】変形例である検査装置のプローブを示す断面図であり、(A)は第2変形例、(B)は第3変形例、(C)は第4変形例を示す。
図7】第5変形例の検査装置のプローブを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法は、説明の都合上、誇張されて実際の寸法とは異なる場合がある。また、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0019】
本実施形態に係る検査装置1は、図1に示すように、電気の導通を検出できる回路計2と、電気の導通を検出できるように対をなす第1電極21および第2電極32を備えるプローブ3と、プローブ3を回路計2に接続する接続ケーブル4とを有している。
【0020】
回路計2は、接続ケーブル4を介して接続されるプローブ3の第1電極21と第2電極32との間で電流が流れるか否かを検出できる。接続ケーブル4は、回路計2に接続されるコネクタ5と、プローブ3に接続されるプローブホルダ6と、コネクタ5とプローブホルダ6とを接続するケーブル本体7とを有している。ケーブル本体7は、特に限定されないが、同軸ケーブルである。プローブホルダ6は、本実施形態では、SMB規格(IEC60169-10)に準拠した同軸コネクタ5である。
【0021】
プローブ3は、先端および基端を有して長尺であり、検査対象である医療管状体100の内部に先端側が挿入可能である。プローブ3は、図2に示すように、基端側に配置されてプローブホルダ6に接続可能なプローブ側コネクタ10と、第1電極21が配置される第1電極部材20と、第2電極32が配置される第2電極部材30と、第1電極部材20と第2電極部材30との間を絶縁する絶縁部40と、第2電極部材30およびプローブ側コネクタ10を電気的に接続する接続部50とを有している。プローブ3のプローブ側コネクタ10よりも先端側の部位は、ある程度の可撓性を有している。
【0022】
プローブ側コネクタ10は、プローブホルダ6に接続可能な、SMB規格に準拠した円筒状の同軸コネクタ5である。
【0023】
第2電極部材30は、導電性材料に形成される長尺な管体であり、プローブ側コネクタ10に接続される電極側接続部31と、電極側接続部31よりも先端側に配置される第2電極32とを有している。電極側接続部31は、プローブ側コネクタ10の先端部の内側に配置されて、接続部50によりプローブ側コネクタ10に接続されている。
【0024】
第2電極32は、外周のいずれの位置においても、接触対象に対して電気的に導通可能である。第2電極32は、一定の外径および内径を有することが好ましい。第2電極32の外周面と先端面とが交差する角に位置する第2電極角部33は、検査対象を傷つけないように、R面取り加工またはC面取り加工が施されていることが好ましい。第2電極32の外径Dおよび長尺方向Xの長さL1は、検査対象の形状に対応して適宜設定されることが好ましい。第2電極32の外径Dは、医療管状体100のルーメン101に挿入できるように、例えば2.5mm以下であり、好ましくは2.0mm以下であり、より好ましくは1.8mm以下である。第2電極32の外径Dは、構造として成立できる大きさを有することが好ましく、例えば1.0mm以上である。第2電極32の長尺方向Xの有効長さL1(電極として機能できる部位の長さ)は、例えば10mm以上100mm以下である。一例として、本実施形態においては、第2電極32の外径Dは1.75mmであり、第2電極32の長尺方向Xの有効長さL1は40mmである。第2電極32の外径Dとカテーテル100の内径との差は0.1mm以下であればよく、より好ましくは0.05mm以下である。
【0025】
第1電極部材20は、導電性材料に形成される長尺な部材であり、先端に配置される第1電極21と、基端に配置されてプローブ側コネクタ10の内部で基端側へ突出する突出端子22と、第1電極21と突出端子22との間で長尺に形成される円柱状の導線部23と、を有している。
【0026】
突出端子22は、プローブホルダ6に電気的に接続される端子である。突出端子22は、対をなす同軸の端子であるプローブ側コネクタ10と短絡しないように、プローブ側コネクタ10の内側にプローブ側コネクタ10から離れて配置される。
【0027】
導線部23は、突出端子22から先端側へ向かって一定の外径で延在し、第2電極部材30の内部を貫通して第1電極21へ到達する。
【0028】
第1電極21は、プローブ3の最先端に配置され、基端側の部位が一定の外径で形成されるとともに、先端側の部位が半球状に形成される。第1電極21の外周面と基端面とが交差する角に位置する第1電極角部24は、検査対象を傷つけないように、R面取り加工またはC面取り加工が施されていることが好ましい。第1電極21の長尺方向Xの有効長さL3(電極として機能できる部位の長さ)は、例えば0.5mm以上5.0mm以下であり、本実施形態においては1mmである。第1電極21は、外周のいずれの位置においても、接触対象に対して電気的に導通可能である。
【0029】
導電性を備える第1電極部材20、第2電極部材30およびプローブ側コネクタ10の構成材料は、導電性を備えれば特に限定されず、例えばニッケル、ベリリウム銅等である。
【0030】
絶縁部40は、第1電極部材20と第2電極部材30との間を絶縁するための部材であり、絶縁性材料により形成される。絶縁部40は、第2電極32の先端と第1電極21の基端との間に配置される第1絶縁部材41と、第2電極部材30の内周面と導線部23の外周面との間に配置される第2絶縁部材42とを有している。なお、第1絶縁部材41と第2絶縁部材42は、一体的に形成されてもよい。絶縁部40の構成材料は、特に限定しないが樹脂材料であり、好ましくはフッ素系樹脂であり、より好ましくはPTFEである。第1絶縁部材41の外径は、第1電極21の外径および第2電極32の外径と等しいことが好ましい。
【0031】
第1電極21の基端は、第2電極32の先端から長尺方向Xへ所定の距離L2離れている。距離L2は、特に限定されないが、例えば0.5mm以上3mm以下であり、本実施形態においては1mmである。第1電極21の外径Dは、第2電極32の外径Dと等しい。なお、第1電極21の外径Dは、第2電極32の外径Dと異なってもよい。
【0032】
次に、検査対象である医療管状体100について説明する。医療管状体100は、ガイディングカテーテルの一部を構成する部材であり、図3に示すように、ガイディングカテーテルのルーメン101が形成される管状の部材である。医療管状体100は、ルーメン101の内表面を形成する内層102と、ガイディングカテーテルの外表面を形成する管状の部材である外層103と、内層102および外層103の間に配置される補強体104(導電部)とを備えている。
【0033】
内層102は、ルーメン101の内表面を形成する管状の部材である。内層102の構成材料は、特に限定されないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂、高密度ポリエチレン(HDPE)等の低摩擦の樹脂材料である。
【0034】
補強体104は、内層102の外周囲に、複数の線材105を、隙間を有するように管状に編組して形成される。線材の構成材料は、導電性を備えており、例えばステンレス鋼、白金(Pt)・タングステン(W)等の金属線、炭素繊維等である。複数の線材105の隙間は、内層102および/または外層103の材料が入り込んでいる。
【0035】
外層103は、内層102および補強体104の外周囲を覆う管状の部材である。外層103の構成材料は、特に限定されず、例えば、ポリエステルエラストマー等の樹脂材料である。
【0036】
医療管状体100は、内層102、補強体104および外層103を有する長い管体から、長尺方向Xの両端を切断されて切り出される。したがって、医療管状体100の長尺方向Xの端面106(切断面)から、補強体104が露出している。
【0037】
次に、本実施形態に係る検査装置1を用いた検査方法について説明する。
【0038】
まず、検査者は、図1に示すように、回路計2に接続された接続ケーブル4のプローブホルダ6に、プローブ3のプローブ側コネクタ10を接続する。これにより、第1電極21と第2電極32が電気的に回路計2に接続されて、第1電極21と第2電極32とを用いた導通試験が可能となる。
【0039】
次に、検査者は、検査対象である医療管状体100を準備し、図4に示すように、医療管状体100の端面106に形成される開口から、ルーメン101内にプローブ3を挿入する。第1電極21と第2電極32は、長尺方向Xに距離L2離れているため、内層102に、長尺方向Xへ距離L2を超える損傷があって補強体104が距離L2を超える長さで露出している場合に、露出している補強体104に、第1電極21および第2電極32の両方が接触可能である。補強体104は、導電性を有するため、第1電極21および第2電極32の両方が補強体104に接触すると、第1電極21および第2電極32が補強体104により導通し、回路計2によって導通が検出される。これにより、検査装置1は、内層102の損傷を検出できる。
【0040】
以上のように、本実施形態に係る検査装置1は、導電体により形成される導電部(補強体104)および絶縁体により形成される内層102を有する医療管状体100の内層102の状態を検出する医療管状体100の検査装置1であって、先端および基端を有する長尺なプローブ3を有し、プローブ3は、当該プローブ3の先端側に配置される第1電極21と、第1電極21よりも基端側の外周に配置される第2電極32と、第1電極21および第2電極32を絶縁する絶縁部40と、を有する。
【0041】
上記のように構成した医療管状体100の検査装置1は、医療管状体100に挿入されたプローブ3の第1電極21および第2電極32の導通を検知することで、導電部(補強体104)が内層102から露出していることを検出して、内層102の損傷を検出できる。
【0042】
第2電極32は、第1電極21よりもプローブ3の長尺方向Xに長い。これにより、検査装置1は、第2電極32の導電部(補強体104)との接触を検知できる範囲が広いため、内層102の損傷を検出できる範囲を広げることができる。
【0043】
本実施形態に係る検査装置1の検査方法は、導電体により形成される導電部(補強体104)および絶縁体により形成される内層102を有する医療管状体100の内層102の状態を検知する医療管状体100の検査方法であって、先端および基端を有する長尺なプローブ3であり、当該プローブ3の先端側に配置される第1電極21と、第1電極21よりも基端側の外周に配置される第2電極32と、第1電極21および第2電極32を絶縁する絶縁部40と、を有するプローブ3を、医療管状体100の内部に挿入し、導電部による第1電極21と第2電極32との間の導通の検知を試み、導通が検知された場合に内層102が損傷していると判断する。これにより、医療管状体100の検査方法は、医療管状体100に挿入したプローブ3の第1電極21および第2電極32の導通を検知することで、内層102の損傷を検出できる。
【0044】
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、図5に示す第1変形例のように、検査装置1は、第2電極32の外周に摺動可能に配置されるリング状の導電性を備えた付加電極60を有してもよい。付加電極60は、第2電極32との電気的な導通を維持しながら、第2電極32の外周面に沿って、長尺方向Xへ摺動可能である。これにより、検査装置1は、医療管状体100の長尺方向Xの端部から露出する導電部(補強体104)に、付加電極60を介して第2電極32を接触させることができる。検査者は、プローブ3を医療管状体100の内部に挿入した状態で、第2電極32の外周に摺動可能に配置したリング状の導電性を備えた付加電極60を、医療管状体100の端面106から露出する導電部に接触させ、付加電極60を前記端面106から露出する導電部に接触させた状態を維持しつつ、第1電極21を医療管状体100の内部で導電部に接触させることを試みることができる。このため、医療管状体100の内層102から露出する導電部に対し第2電極32を接触させずに第1電極21を接触させるだけで、第1電極21と第2電極32の導通を検知できる。このため、内層102の損傷範囲が小さい場合であっても、内層102の損傷を検出できる。
【0045】
また、図6(A)に示す第2変形例のように、第1電極21は、径方向外側(長尺方向Xと垂直な方向)へ突出する凸部25を有してもよい。これにより、凸部25が、医療管状体100の内面に露出する導電部(補強体104)に接触しやすい。このため、検査装置1は、内層102の損傷をより確実に検出できる。また、第1電極21の第1電極角部24が、医療管状体100の内層102に接触しにくくなるため、内層102の損傷の発生を抑制できる。
【0046】
また、凸部25は、第1電極21の外周面の周方向へ全周的に形成される。これにより、第1電極21の凸部25は、医療管状体100の内面から周方向の全ての方向の導電部に接触しやすい。このため、検査装置1は、内層102の損傷をより確実に検出できる。
【0047】
また、図6(B)に示す第3変形例のように、第1電極21は、当該第1電極21の外周面の周方向の一部に形成される第2凸部26を有してもよい。これにより、検査装置1は、第1電極21により、内層102の局所的な損傷(例えば、ピンホール)を検出できる。また、検査装置1は、第1電極21と第2電極32の導通を検知した場合に、第2凸部26が向く方向により、内層102の損傷位置を特定することが容易である。
【0048】
また、図6(C)に示す第4変形例のように、第1電極21は、プローブ3の長尺方向Xと交差する回転軸で回転可能な導電性を備える回転部27を有してもよい。これにより、第1電極21が医療管状体100の内面と滑りやすくなり、プローブ3の医療管状体100への挿入性を向上でき、かつ内層102の損傷の発生を抑制できる。なお、本変形例は、第1電極21が回転部27を有しているが、第1電極21とは異なる部材として、長尺方向Xと交差する回転軸で回転可能な回転部が設けられてもよい。
【0049】
また、図7に示す第5変形例のように、第2電極32は、コイル状の線材34より形成されてもよい。これにより、第2電極32が柔軟となるため、導線部23も柔軟であれば、プローブ3が湾曲するように変形しやすくなる。このため、第1電極21および第2電極32を導電部に接触しやすくなる。また、第2電極32の摩擦抵抗を低減して、プローブ3の医療管状体100への挿入性を向上でき、かつ内層102の損傷の発生を抑制できる。
【0050】
また、第2電極32は、第2、第3変形例の第1電極21と同様に、凸部25や第2凸部26を有してもよい。
【0051】
また、検査装置1は、ロボットアーム等の機械的・電気的に動作を制御可能な構成により、挿入および検出を制御されてもよい。
【0052】
また、医療管状体は、カテーテルの管体に限定されない。例えば、医療管状体は、金属製のステント(導電部)の内側に薬剤を含む内層が被覆された薬剤溶出性ステント(DES: drug eluting stent)であってもよい。そして、例えば、検査者は、血管を模擬した試験モデル内に薬剤溶出性ステントを配置し、医薬品の安定性試験である過酷試験を行った後に、検査装置1により、薬剤溶出性ステント薬剤層(内層)の損傷(例えば、剥離)の状態を検出することができる。
【0053】
また、検査装置1は、実臨床において、血管等の生体管腔に留置されたステントの位置を確認するために使用されてもよい。
【0054】
また、検査装置1は、超音波を用いた血管内超音波検査(IVUS:Intravascular ultrasound)では、ハレーションによるノイズで見えなくなるような、医療管状体(例えば、薬剤溶出性ステント)の内層の微小な剥離や損傷の検出に使用されてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 検査装置
2 回路計
3 プローブ
21 第1電極
25 凸部
26 第2凸部
27 回転部
32 第2電極
40 絶縁部
60 付加電極
100 医療管状体
101 ルーメン
102 内層
103 外層
104 補強体(導電部)
106 端面
X 長尺方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7