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特開2023-12275鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置並びに方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012275
(43)【公開日】2023-01-25
(54)【発明の名称】鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置並びに方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 22/00 20060101AFI20230118BHJP
【FI】
G01N22/00 Y
G01N22/00 S
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021115809
(22)【出願日】2021-07-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】512273266
【氏名又は名称】KEYTEC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109553
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】岩田 和彦
(57)【要約】
【課題】鉄筋コンクリート構造体の上層鉄筋及び下層鉄筋の鉄筋径をいずれも推定し得る鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置並びに方法を提供する。
【解決手段】鉄筋コンクリート構造体に埋設されている直交交点にて接触配置される二層構造の鉄筋の配筋方向と直交してレーダ走査して取得した反射波の深さ方向の波形のハイパボーラ情報を2直交方向について取得するハイパボーラ情報取得部と、上層の鉄筋の直径を取得する上層鉄筋直径取得部と、コンクリートの比誘電率をパラメータとして比誘電率別ハイパボーラ曲線情報を取得する比誘電率別ハイパボーラ曲線情報取得部と、コンクリートの比誘電率である実装コンクリート比誘電率を取得する実装コンクリート比誘電率取得部と、下層鉄筋推定直径別ハイパボーラ曲線情報を取得する下層鉄筋推定直径別ハイパボーラ曲線情報取得部と、下層の鉄筋の直径を取得する下層鉄筋直径取得部と、を有する。
【選択図】図3B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直交交点にて接触配置される少なくとも二層構造の鉄筋をコンクリートに配置した鉄筋コンクリート構造体に埋設されている鉄筋の配筋方向と直交して構造体表面をレーダ走査して取得した反射波の深さ方向の波形の情報であるハイパボーラ情報を2直交方向について取得するハイパボーラ情報取得部と、
取得した2直交方向のハイパボーラ情報を用いて相対的に上層の鉄筋の直径を取得する上層鉄筋直径取得部と、
鉄筋コンクリート構造体に用いられているコンクリートの比誘電率をパラメータとして複数採用した場合のハイパボーラ曲線を構成する情報である比誘電率別ハイパボーラ曲線情報を取得する比誘電率別ハイパボーラ曲線情報取得部と、
取得した複数の比誘電率別ハイパボーラ曲線情報と、取得された上層のハイパボーラ情報とに基づいて鉄筋コンクリート構造体に用いられているコンクリートの比誘電率である実装コンクリート比誘電率を取得する実装コンクリート比誘電率取得部と、
取得した実装コンクリート比誘電率を用いて相対的に下層の鉄筋の直径を推定パラメータとした下層鉄筋推定直径別ハイパボーラ曲線を構成する下層鉄筋推定直径別ハイパボーラ曲線情報を取得する下層鉄筋推定直径別ハイパボーラ曲線情報取得部と、
取得した複数の下層鉄筋推定直径別ハイパボーラ曲線情報と、取得したハイパボーラ情報の下層のハイパボーラ情報とに基づいて相対的に鉄筋コンクリート構造体に用いられている下層の鉄筋の直径を取得する下層鉄筋直径取得部と、
を有する鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置。
【請求項2】
取得したハイパボーラ情報と取得した実装コンクリート比誘電率とを用いて鉄筋コンクリート構造体に埋設されている鉄筋の埋設深度を取得する埋設深度取得部をさらに有する請求項1に記載の鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置。
【請求項3】
ハイパボーラ情報取得部は、複数の2直交方向のハイパボーラ情報を取得する複数ハイパボーラ情報取得手段を有し、
上層鉄筋直径取得部は、複数ハイパボーラ情報取得手段が取得した複数のハイパボーラ情報を統計処理することによって上層の鉄筋の直径を取得する統計的上層鉄筋直径取得手段を有する請求項1又は請求項2に記載の鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置。
【請求項4】
直交交点にて接触配置される少なくとも二層構造の鉄筋をコンクリートに配置した鉄筋コンクリート構造体に埋設されている鉄筋の配筋方向と直交して構造体表面をレーダ走査して取得した反射波の深さ方向の波形の情報であるハイパボーラ情報を2直交方向について取得するハイパボーラ情報取得ステップと、
取得した2直交方向のハイパボーラ情報を用いて相対的に上層の鉄筋の直径を取得する上層鉄筋直径取得ステップと、
鉄筋コンクリート構造体に用いられているコンクリートの比誘電率をパラメータとして複数採用した場合のハイパボーラ曲線を構成する情報である比誘電率別ハイパボーラ曲線情報を取得する比誘電率別ハイパボーラ曲線情報取得ステップと、
取得した複数の比誘電率別ハイパボーラ曲線情報と、取得された上層のハイパボーラ情報とに基づいて鉄筋コンクリート構造体に用いられているコンクリートの比誘電率である実装コンクリート比誘電率を取得する実装コンクリート比誘電率取得ステップと、
取得した実装コンクリート比誘電率を用いて相対的に下層の鉄筋の直径を推定パラメータとした下層鉄筋推定直径別ハイパボーラ曲線を構成する下層鉄筋推定直径別ハイパボーラ曲線情報を取得する下層鉄筋推定直径別ハイパボーラ曲線情報取得ステップと、
取得した複数の下層鉄筋推定直径別ハイパボーラ曲線情報と、取得したハイパボーラ情報の下層のハイパボーラ情報とに基づいて相対的に鉄筋コンクリート構造体に用いられている下層の鉄筋の直径を取得する下層鉄筋直径取得ステップと、
を有する計算機である鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置の動作方法。
【請求項5】
取得したハイパボーラ情報と取得した実装コンクリート比誘電率とを用いて鉄筋コンクリート構造体に埋設されている鉄筋の埋設深度を取得する埋設深度取得ステップをさらに有する請求項4に記載の計算機である鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置の動作方法。
【請求項6】
ハイパボーラ情報取得ステップは、複数の2直交方向のハイパボーラ情報を取得する複数ハイパボーラ情報取得サブステップを有し、
上層鉄筋直径取得ステップは、複数ハイパボーラ情報取得サブステップが取得した複数のハイパボーラ情報を統計処理することによって上層の鉄筋の直径を取得する統計的上層鉄筋直径取得サブステップを有する請求項4又は請求項5に記載の計算機である鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置の動作方法。
【請求項7】
直交交点にて接触配置される少なくとも二層構造の鉄筋をコンクリートに配置した鉄筋コンクリート構造体に埋設されている鉄筋の配筋方向と直交して構造体表面をレーダ走査して取得した反射波の深さ方向の波形の情報であるハイパボーラ情報を2直交方向について取得するハイパボーラ情報取得プログラムと、
取得した2直交方向のハイパボーラ情報を用いて相対的に上層の鉄筋の直径を取得する上層鉄筋直径取得プログラムと、
鉄筋コンクリート構造体に用いられているコンクリートの比誘電率をパラメータとして複数採用した場合のハイパボーラ曲線を構成する情報である比誘電率別ハイパボーラ曲線情報を取得する比誘電率別ハイパボーラ曲線情報取得プログラムと、
取得した複数の比誘電率別ハイパボーラ曲線情報と、取得された上層のハイパボーラ情報とに基づいて鉄筋コンクリート構造体に用いられているコンクリートの比誘電率である実装コンクリート比誘電率を取得する実装コンクリート比誘電率取得プログラムと、
取得した実装コンクリート比誘電率を用いて相対的に下層の鉄筋の直径を推定パラメータとした下層鉄筋推定直径別ハイパボーラ曲線を構成する下層鉄筋推定直径別ハイパボーラ曲線情報を取得する下層鉄筋推定直径別ハイパボーラ曲線情報取得プログラムと、
取得した複数の下層鉄筋推定直径別ハイパボーラ曲線情報と、取得したハイパボーラ情報の下層のハイパボーラ情報とに基づいて相対的に鉄筋コンクリート構造体に用いられている下層の鉄筋の直径を取得する下層鉄筋直径取得プログラムと、
を有する計算機に読み取らせて実行可能な鉄筋コンクリート構造体の構造推定方法。
【請求項8】
取得したハイパボーラ情報と取得した実装コンクリート比誘電率とを用いて鉄筋コンクリート構造体に埋設されている鉄筋の埋設深度を取得する埋設深度取得プログラムをさらに有する請求項7に記載の計算機に読み取らせて実行可能な鉄筋コンクリート構造体の構造推定方法。
【請求項9】
ハイパボーラ情報取得プログラムは、複数の2直交方向のハイパボーラ情報を取得する複数ハイパボーラ情報取得サブプログラムを有し、
上層鉄筋直径取得プログラムは、複数ハイパボーラ情報取得サブプログラムが取得した複数のハイパボーラ情報を統計処理することによって上層の鉄筋の直径を取得する統計的上層鉄筋直径取得サブプログラムを有する請求項7又は請求項8に記載の計算機に読み取らせて実行可能な鉄筋コンクリート構造体の構造推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、後日提出する予定の国内優先権主張出願の基礎となるものである。
本発明は、鉄筋コンクリート構造体のコンクリート内部において直交交点にて接触配置される少なくとも二層構造の鉄筋、所謂、メッシュ配筋の鉄筋の直径を推定するのに用いられる鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置並びに方法に関する。なお、本発明の鉄筋には、断面円形の丸鋼と呼ばれる鉄筋、及び、表面に凹凸を設けた異形鉄筋と呼ばれる鉄筋の双方を含むが、本明細書において、便宜上断面円形の丸鋼として扱うこととする。
【背景技術】
【0002】
近い将来の発生が予想される大地震に対する備えとしてや、老朽化対策として、近年、ビルや橋梁等の多くの鉄筋コンクリート構造体に対する補強の施工が行われている。この補強施工を行う場合には、鉄筋コンクリート構造体のコンクリートに埋設されている鉄筋の位置及び鉄筋の直径を把握する必要がある。
【0003】
従来において、建造時の設計図等から鉄筋の情報が得られない場合に採用される鉄筋の直径推定方法としては、例えば、電磁波レーダを用いた推定方法が知られている。この鉄筋の直径推定方法では、図1Aの平面図に示すように、コンクリートCの内部において上層鉄筋0101及び下層鉄筋0102が互いに直交交点0103で接触するようにして上下二層に配置されている鉄筋コンクリート構造体である床0100に対して、まず、電磁波レーダの送信アンテナからコンクリートCの内部に電磁波を輻射し、上層鉄筋0101及び下層鉄筋0102のそれぞれで反射して戻る反射波を受信アンテナで受けることで上層鉄筋0101及び下層鉄筋0102の各埋設深度(かぶり深さ)を測定する。
【0004】
上層鉄筋0101及び下層鉄筋0102の各埋設深度DU,DL(m)は、送信アンテナから輻射された電磁波が上層鉄筋0101及び下層鉄筋0102で反射して受信アンテナで受信されるまでの時間TU,TL(s)の半分(片道分)に、コンクリートCを透過する電磁波の速度V(m/s)を掛けて求められ、式1,式2で表される。
DU=(1/2)×TU×V 式1
DL=(1/2)×TL×V 式2
【0005】
この際、電磁波の空気(真空)中の速度は3×10(m/s)であり、この電磁波がコンクリートCを透過する際の速度Vは、媒質であるコンクリートC固有の比誘電率で定まり、式3で表される。なお、コンクリートCの乾燥でも湿潤でもない標準的な比誘電率εは6~8である。
V=(3×10)/(ε1/2 式3
【0006】
したがって、上層鉄筋0101及び下層鉄筋0102の各埋設深度DU,DL(m)は、式1~式3により、式4及び式5で表される。
DU=(1/2)×{(3×10)/(ε1/2}×TU 式4
DL=(1/2)×{(3×10)/(ε1/2}×TL 式5
【0007】
そして、この鉄筋の直径推定方法では、図1Bの直交交点0103での拡大断面図に示すように、上層鉄筋0101の埋設深度DUと下層鉄筋0102の埋設深度DLとの差から上層鉄筋0101の直径φを推定するようにしている。
この鉄筋の直径推定方法に類似する方法としては、例えば、特許文献1に記載された鉄筋径の推定方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5-323026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、通常上層鉄筋及び下層鉄筋に同じ直径の鉄筋が用いられる床等の鉄筋コンクリート構造体の場合や、表裏いずれの側からもコンクリートの内部に電磁波を輻射できる壁等の鉄筋コンクリート構造体の場合には、上記した鉄筋の直径推定方法によって、上層鉄筋のみならず下層鉄筋の直径をも推定することができる。
【0010】
しかしながら、上記した従来における鉄筋の直径推定方法において、コンクリート支柱等のように、上層鉄筋及び下層鉄筋(主筋及び帯筋)に互いに異なる直径の鉄筋が用いられる場合や、コンクリートの内部に電磁波を輻射できるのが表の一方側に限られている場合には、下層鉄筋の直径を推定することができないという問題を有しており、この問題を解決することが従来の課題となっている。
【0011】
本発明は、上記した従来の課題を解決するためになされたものであり、上層鉄筋及び下層鉄筋が互いに直交交点で接触するようにしてコンクリート内部に配置されている鉄筋コンクリート構造体における上層鉄筋及び下層鉄筋の鉄筋の直径をいずれも推定することが可能な鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置並びに方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、以下の鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置並びに方法を提供する。
すなわち、本発明の第一の態様は、直交交点にて接触配置される少なくとも二層構造の鉄筋をコンクリートに配置した鉄筋コンクリート構造体に埋設されている鉄筋の配筋方向と直交して構造体表面をレーダ走査して取得した反射波の深さ方向の波形の情報であるハイパボーラ情報を2直交方向について取得するハイパボーラ情報取得部と、取得した2直交方向のハイパボーラ情報を用いて相対的に上層の鉄筋の直径を取得する上層鉄筋直径取得部と、鉄筋コンクリート構造体に用いられているコンクリートの比誘電率をパラメータとして複数採用した場合のハイパボーラ曲線を構成する情報である比誘電率別ハイパボーラ曲線情報を取得する比誘電率別ハイパボーラ曲線情報取得部と、取得した複数の比誘電率別ハイパボーラ曲線情報と、取得された上層のハイパボーラ情報とに基づいて鉄筋コンクリート構造体に用いられているコンクリートの比誘電率である実装コンクリート比誘電率を取得する実装コンクリート比誘電率取得部と、取得した実装コンクリート比誘電率を用いて相対的に下層の鉄筋の直径を推定パラメータとした下層鉄筋推定直径別ハイパボーラ曲線を構成する下層鉄筋推定直径別ハイパボーラ曲線情報を取得する下層鉄筋推定直径別ハイパボーラ曲線情報取得部と、取得した複数の下層鉄筋推定直径別ハイパボーラ曲線情報と、取得したハイパボーラ情報の下層のハイパボーラ情報とに基づいて相対的に鉄筋コンクリート構造体に用いられている下層の鉄筋の直径を取得する下層鉄筋直径取得部と、を有する構成としている。
【0013】
また、本発明の第二の態様は、取得したハイパボーラ情報と取得した実装コンクリート比誘電率とを用いて鉄筋コンクリート構造体に埋設されている鉄筋の埋設深度を取得する埋設深度取得部をさらに有する構成としている。
【0014】
さらに、本発明の第三の態様において、ハイパボーラ情報取得部は、複数の2直交方向のハイパボーラ情報を取得する複数ハイパボーラ情報取得手段を有し、上層鉄筋直径取得部は、複数ハイパボーラ情報取得手段が取得した複数のハイパボーラ情報を統計処理することによって上層の鉄筋の直径を取得する統計的上層鉄筋直径取得手段を有する構成としている。
【0015】
一方、本発明の第四の態様に係る鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置の動作方法おいて、直交交点にて接触配置される少なくとも二層構造の鉄筋をコンクリートに配置した鉄筋コンクリート構造体に埋設されている鉄筋の配筋方向と直交して構造体表面をレーダ走査して取得した反射波の深さ方向の波形の情報であるハイパボーラ情報を2直交方向について取得するハイパボーラ情報取得ステップと、取得した2直交方向のハイパボーラ情報を用いて相対的に上層の鉄筋の直径を取得する上層鉄筋直径取得ステップと、鉄筋コンクリート構造体に用いられているコンクリートの比誘電率をパラメータとして複数採用した場合のハイパボーラ曲線を構成する情報である比誘電率別ハイパボーラ曲線情報を取得する比誘電率別ハイパボーラ曲線情報取得ステップと、取得した複数の比誘電率別ハイパボーラ曲線情報と、取得された上層のハイパボーラ情報とに基づいて鉄筋コンクリート構造体に用いられているコンクリートの比誘電率である実装コンクリート比誘電率を取得する実装コンクリート比誘電率取得ステップと、取得した実装コンクリート比誘電率を用いて相対的に下層の鉄筋の直径を推定パラメータとした下層鉄筋推定直径別ハイパボーラ曲線を構成する下層鉄筋推定直径別ハイパボーラ曲線情報を取得する下層鉄筋推定直径別ハイパボーラ曲線情報取得ステップと、取得した複数の下層鉄筋推定直径別ハイパボーラ曲線情報と、取得したハイパボーラ情報の下層のハイパボーラ情報とに基づいて相対的に鉄筋コンクリート構造体に用いられている下層の鉄筋の直径を取得する下層鉄筋直径取得ステップと、を有する計算機である構成としている。
【0016】
また、本発明の第五の態様は、取得したハイパボーラ情報と取得した実装コンクリート比誘電率とを用いて鉄筋コンクリート構造体に埋設されている鉄筋の埋設深度を取得する埋設深度取得ステップをさらに有する構成としている。
【0017】
さらに、本発明の第六の態様において、ハイパボーラ情報取得ステップは、複数の2直交方向のハイパボーラ情報を取得する複数ハイパボーラ情報取得サブステップを有し、上層鉄筋直径取得ステップは、複数ハイパボーラ情報取得サブステップが取得した複数のハイパボーラ情報を統計処理することによって上層の鉄筋の直径を取得する統計的上層鉄筋直径取得サブステップを有する構成としている。
【0018】
そして、本発明の第七の態様に係る鉄筋コンクリート構造体の構造推定方法は、直交交点にて接触配置される少なくとも二層構造の鉄筋をコンクリートに配置した鉄筋コンクリート構造体に埋設されている鉄筋の配筋方向と直交して構造体表面をレーダ走査して取得した反射波の深さ方向の波形の情報であるハイパボーラ情報を2直交方向について取得するハイパボーラ情報取得プログラムと、取得した2直交方向のハイパボーラ情報を用いて相対的に上層の鉄筋の直径を取得する上層鉄筋直径取得プログラムと、鉄筋コンクリート構造体に用いられているコンクリートの比誘電率をパラメータとして複数採用した場合のハイパボーラ曲線を構成する情報である比誘電率別ハイパボーラ曲線情報を取得する比誘電率別ハイパボーラ曲線情報取得プログラムと、取得した複数の比誘電率別ハイパボーラ曲線情報と、取得された上層のハイパボーラ情報とに基づいて鉄筋コンクリート構造体に用いられているコンクリートの比誘電率である実装コンクリート比誘電率を取得する実装コンクリート比誘電率取得プログラムと、取得した実装コンクリート比誘電率を用いて相対的に下層の鉄筋の直径を推定パラメータとした下層鉄筋推定直径別ハイパボーラ曲線を構成する下層鉄筋推定直径別ハイパボーラ曲線情報を取得する下層鉄筋推定直径別ハイパボーラ曲線情報取得プログラムと、取得した複数の下層鉄筋推定直径別ハイパボーラ曲線情報と、取得したハイパボーラ情報の下層のハイパボーラ情報とに基づいて相対的に鉄筋コンクリート構造体に用いられている下層の鉄筋の直径を取得する下層鉄筋直径取得プログラムと、を有する構成としている。
【0019】
また、本発明の第八の態様は、取得したハイパボーラ情報と取得した実装コンクリート比誘電率とを用いて鉄筋コンクリート構造体に埋設されている鉄筋の埋設深度を取得する埋設深度取得プログラムをさらに有する構成としている。
【0020】
さらに、本発明の第九の態様において、ハイパボーラ情報取得プログラムは、複数の2直交方向のハイパボーラ情報を取得する複数ハイパボーラ情報取得サブプログラムを有し、上層鉄筋直径取得プログラムは、複数ハイパボーラ情報取得サブプログラムが取得した複数のハイパボーラ情報を統計処理することによって上層の鉄筋の直径を取得する統計的上層鉄筋直径取得サブプログラムを有する構成としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、鉄筋コンクリート構造体において、コンクリート内部に配置されている互いに直交交点で接触する上層鉄筋及び下層鉄筋の各鉄筋の直径をいずれも推定することができるという非常に優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1A】鉄筋コンクリート構造体である床の平面図
図1B図1Aの鉄筋コンクリート構造体における上層鉄筋及び下層鉄筋の直交交点での拡大断面図
図2】ハードウェア構成を説明するための図
図3A】実施形態1に係る鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置及び電磁波レーダの概略構成図
図3B】実施形態1における鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置の機能ブロック図
図3C】鉄筋コンクリート構造体の鉄筋に対する電磁波の輻射によりハイパボーラ波形が二次元画像上に形成される理由を説明する模式図
図3D】鉄筋コンクリート構造体の鉄筋に対する電磁波の輻射により二次元画像上に形成されるハイパボーラ波形の特徴を示す図
図3E】実施形態1の鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置における上層鉄筋直径取得部の機能を具体的に示す模式図
図3F】コンクリートの比誘電率εとハイパボーラ図形との関係を示す模式図
図3G】実施形態1の鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置における実装コンクリート比誘電率取得部の機能を具体的に示す模式図
図3H】実施形態1の鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置におけるデータベース化した複数のハイパボーラ図形を示す表
図3I】実施形態1の鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置における下層鉄筋直径取得部の機能を具体的に示す模式図
図4】実施形態1における鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置のハードウェア構成例を示す図
図5】実施形態1における鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置の処理フローチャート
図6】実施形態2における鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置の機能ブロック図
図7】実施形態2における鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置のハードウェア構成例を示す図
図8】実施形態2における鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置の処理フローチャート
図9A】実施形態3における鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置の機能ブロック図
図9B】実施形態3の鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置における複数ハイパボーラ情報取得手段の機能を具体的に示す模式図
図10】実施形態3における鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置のハードウェア構成例を示す図
図11】実施形態3における鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置の処理フローチャート
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施形態を説明する。実施形態と請求項の相互の関係は以下のとおりである。実施形態1は主に請求項1,4,7に関し、実施形態2は主に請求項2,5,8に関し、実施形態3は主に請求項3,6,9に関する。
なお、本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得る。
【0024】
<本発明を構成し得るハードウェアについて>
本発明は、原則的に電子計算機を利用する発明であるが、ソフトウェアによって実現され、ハードウェアによっても実現され、ソフトウェアとハードウェアの協働によっても実現される。本発明の各構成要件の全部又は一部を実現するハードウェアでは、コンピュータの基本的構成であるCPU,メモリ,バス,入出力装置,各種周辺機器,ユーザインターフェースなどによって構成される。各種周辺機器には、記憶装置,インターネット等のインターフェース,インターネット等機器,ディスプレイ,キーボード,マウス,スピーカー,カメラ,ビデオ,テレビ,実験室又は工場等での生産状態を把握するための各種センサ(流量センサ,温度センサ,重量センサ,液量センサ,赤外線センサ,出荷個数計数機,梱包個数計数機,異物検査装置,不良品計数機,放射線検査装置,表面状態検査装置,回路検査装置,人感センサ,作業者作業状況把握装置(映像,ID,PC作業量などで)等),CD装置,DVD装置,ブルーレイ装置,USBメモリ,USBメモリインターフェイス,着脱可能タイプのハードディスク,一般的なハードディスク,プロジェクタ装置,SSD,電話,ファックス,コピー機,印刷装置,ムービー編集装置,各種センサ装置などが含まれる。
【0025】
また、本発明のシステムは、必ずしも一つの筐体によって構成されている必要はなく、複数の筐体を通信で結合して構成されるものであってもよい。また、通信は、LAN,WAN,wifi(登録商標),ブルートゥース(登録商標),赤外線通信,超音波通信であってもよく、一部が国境を跨いで設置されていてもよい。さらに、複数の筐体のそれぞれが異なる主体によって運営されていてもよく、一の主体によって運営されていてもよい。本発明のシステムの運用主体は、単数であるか複数であるかは問わない。また、本発明のシステムの他に第三者の利用する端末、さらに他の第三者の利用する端末を含むシステムとしても発明を構成することができる。また、これらの端末は国境を越えて設置されていてもよい。さらに、本発明のシステムや前記端末の他に第三者の関連情報や、関連人物の登録のために利用される装置、登録の内容を記録するためのデータベースに利用される装置等が用意されてもよい。これらは、本発明のシステムに備えてもよいし、本発明のシステム外に備えてこれらの情報を利用することができるように本発明のシステムを構成してもよい。
【0026】
図2に示すように、コンピュータは、マザーボード上に構成される、チップセット,CPU,不揮発性メモリ,メインメモリ,各種バス,BIOS,各種インターフェース,リアルタイムクロック等からなる。これらはオペレーティングシステムやデバイスドライバ,各種プログラム等と協働して動作する。本発明を構成する各種プログラムや各種データはこれらのハードウェア資源を効率的に利用して各種の処理を実行するように構成されている。
【0027】
≪チップセット≫
「チップセット」は、コンピュータのマザーボードに実装され、CPUの外部バスと、メモリや周辺機器を接続する標準バスとの連絡機能、つまり、ブリッジ機能を集積した大規模集積回路(LSI)のセットである。2チップセット構成を採用する場合と、1チップセット構成を採用する場合とがある。CPUやメインメモリに近い側をノースブリッジ、遠い側で比較的低速な外部I/Oとのインターフェースの側にサウスブリッジが設けられる。
【0028】
(ノースブリッジ)
ノースブリッジには、CPUインターフェース,メモリコントローラ,グラフィックインターフェースが含まれる。従来のノースブリッジの機能のほとんどをCPUに担わせてもよい。ノースブリッジは、メインメモリのメモリスロットとはメモリバスを介して接続し、グラフィックカードのグラフィックカードスロットとは、ハイスピードグラフィックバス(AGP,PCI Express)で接続される。
【0029】
(サウスブリッジ)
サウスブリッジは、PCIインターフェース(PCIスロット)とPCIバスを介して接続して、ATA(SATA)インターフェース,USBインターフェース,Ethernetインターフェース等とのI/O機能やサウンド機能を担う。高速な動作が必要でない、あるいは不可能であるようなPS/2ポート,フロッピーディスクドライブ,シリアルポート,パラレルポート,ISAバスをサポートする回路を組み込むことは、チップセット自体の高速化の足かせとなるため、サウスブリッジのチップから分離させ、スーパーI/Oチップと呼ばれる別のLSIに担当させることとしてもよい。CPU(MPU)と、周辺機器や各種制御部を繋ぐためにバスが用いられる。バスはチップセットによって連結される。メインメモリとの接続に利用されるメモリバスは、高速化を図るために、これに代えてチャネル構造を採用してもよい。バスとしてはシリアルバスかパラレルバスを採用できる。パラレルバスは、シリアルバスが1ビットずつデータを転送するのに対して、元データそのものや元データから切り出した複数ビットをひとかたまりにして、同時に複数本の通信路で伝送する。クロック信号の専用線がデータ線と平行して設けられ、受信側でのデータ復調の同期を行う。CPU(チップセット)と外部デバイスをつなぐバスとしても用いられ、GPIB,IDE/(パラレル)ATA,SCSI,PCI等がある。高速化に限界があるため、PCIの改良版PCI ExpressやパラレルATAの改良版シリアルATAでは、データラインはシリアルバスでもよい。
【0030】
≪CPU≫
CPUは、メインメモリ上にあるプログラムと呼ばれる命令列を順に読み込んで解釈・実行することで信号からなる情報を同じくメインメモリ上に出力する。CPUは、コンピュータ内での演算を行なう中心として機能する。なお、CPUは、演算の中心となるCPUコア部分と、その周辺部分とから構成され、CPU内部に、レジスタ,キャッシュメモリ,キャッシュメモリとCPUコアとを接続する内部バス,DMAコントローラ,タイマ,ノースブリッジとの接続バスとのインターフェース等が含まれる。なお、CPUコアは一つのCPU(チップ)に複数備えられていてもよい。また、CPUに加えてグラフィックインターフェース(GPU)若しくはFPUによって、処理を行ってもよい。
【0031】
≪不揮発性メモリ≫
(HDD)
ハードディスクドライブの基本構造は、磁気ディスク,磁気ヘッド及び磁気ヘッドを搭載するアームから構成される。外部インターフェースは、SATAA(過去ではATA)を採用することができる。高機能なコントローラ、例えば、SCSIを用いて,ハードディスクドライブ間の通信をサポートする。例えば、ファイルを別のハードディスクドライブにコピーする時、コントローラがセクタを読み取って別のハードディスクドライブに転送して書き込むといったことができる。この時ホストCPUのメモリにはアクセスしない。したがってCPUの負荷を増やさないで済む。
なお、不揮発性メモリとしては「NANDフラッシュ」から構成されるSSDをHDDとともに採用してもよいし、HDDに置き換えて採用してもよい。
【0032】
≪メインメモリ≫
CPUが直接アクセスしてメインメモリ上の各種プログラムを実行する。メインメモリは揮発性のメモリでDRAMが用いられる。メインメモリ上のプログラムはプログラムの起動命令を受けて不揮発性メモリからメインメモリ上に展開される。その後もプログラム内で各種実行命令や、実行手順にしたがってCPUがプログラムを実行する。
【0033】
≪オペレーティングシステム(OS)≫
オペレーティングシステムは、コンピュータ上の資源をアプリケーションに利用させるための管理をしたり、各種デバイスドライバを管理したり、ハードウェアであるコンピュータ自身を管理するために用いられる。小型のコンピュータではオペレーティングシステムとしてファームウェアを用いることもある。
【0034】
≪デバイスドライバ≫
デバイスドライバは、オペレーティングシステムを介して計算機に付属する各種のデバイスをユーザやアプリケーションに利用可能にするためのデバイスのハードウェアを制御するプログラムである。
【0035】
≪BIOS≫
BIOSは、コンピュータのハードウェアを立ち上げてオペレーティングシステムを稼働させるための手順をCPUに実行させるもので、最も典型的にはコンピュータの起動命令を受けるとCPUが最初に読取りに行くハードウェアである。ここには、ディスク(不揮発性メモリ)に格納されているオペレーティングシステムのアドレスが記載されており、CPUに展開されたBIOSによってオペレーティングシステムが順次メインメモリに展開されて稼働状態となる。なお、BIOSは、バスに接続されている各種デバイスの有無をチェックするチェック機能をも有している。チェックの結果はメインメモリ上に保存され、適宜オペレーティングシステムによって利用可能な状態となる。なお、外部装置などをチェックするようにBIOSを構成してもよい。
【0036】
≪I/Oコントローラ≫
I/Oコントローラは、外部機器との接続に利用される。USBコネクタもその一例である。
【0037】
≪USB,IEEE1394コネクタ,LAN端子等≫
USB,IEEE1394コネクタ、LAN端子等は、最も代表的な通信規格のインターフェースである。
【0038】
以上については、本願明細書中の全ての実施形態におけるハードウェア構成の説明で共通に利用される構成である。
<実施形態1>
【0039】
本実施形態は、主に請求項1,4,7に関する。
<実施形態1 鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置 概要>
【0040】
本実施形態に係る鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置は、鉄筋コンクリート構造体のコンクリート内部に電磁波を輻射し、コンクリート内部において互いに直交交点で接触するようにして配置されている上層鉄筋及び下層鉄筋で反射して戻る反射波を受信することで、上層鉄筋及び下層鉄筋のそれぞれについて反射波の深さ方向の波形情報である所謂ハイパボーラ(hyperbola)情報を取得する。
【0041】
このような鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置では、鉄筋コンクリート構造体のコンクリート内部に配置されている互いに直交交点で接触する上層鉄筋及び下層鉄筋のハイパボーラ情報を取得するので、上層鉄筋の鉄筋径のみならず下層鉄筋の鉄筋径をも推定することができるという効果を奏する。
<実施形態1 鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置 構成>
【0042】
図3Aに示すように、本実施形態の鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置0360は、ノート型パソコン等の計算機であり、鉄筋コンクリート構造体(本実施形態では建築物の床)0300のコンクリートCの内部に互いに直交交点0303で接触するようにして配置されている上下二層の上層鉄筋0301及び下層鉄筋0302の各直径を台車状の電磁波レーダ0350を用いて推定する装置である。本実施形態において、構造推定装置0360と電磁波レーダ0350とは無線ランを介してデータの送受信を行うように構成されており、この無線ランを介してのデータの送受信は、電磁波レーダを輻射していない状態で行われるようにしている。
本実施形態では、コンクリートCの内部に配置されている鉄筋群が上下二層である場合を例示しているが、鉄筋群が三層以上である場合も当然適用可能である。
また、構造推定装置0360と電磁波レーダ0350とは、有線を介してデータの送受信を行うように構成されていたり、USB等のメモリを介してデータの送受信を行うように構成されていたりしてもよい。
【0043】
台車状を成す電磁波レーダ350は、上層鉄筋0301及び下層鉄筋0302の配筋方向と直交して構造体表面をレーダ走査するレーダであり、コンクリートCの内部に向けて電磁波を輻射する送信アンテナ0351と、上層鉄筋0301及び下層鉄筋0302でそれぞれ反射して戻る反射波(図3Aでは上層鉄筋0301で反射する電磁波のみ示す)を受ける受信アンテナ0352と、送信アンテナ0351から輻射されて上層鉄筋0301及び下層鉄筋0302でそれぞれ反射して受信アンテナ0352に戻るまでの電磁波の波形を表示するレーダ画面0353を搭載している。この場合、車輪0354には距離計が組み込まれており、構造体表面をレーダ走査する際の送信位置から受信位置までの距離が判るようになっている。なお、電磁波レーダ350でレーダ走査を行うの際の移動速度は、上層鉄筋及び下層鉄筋の各鉄筋径の推定には関与しないので、電磁波レーダ350のレーダ走査は、自動及び手動のいずれであってもよい。
【0044】
このような電磁波レーダ350を用いて構造体表面をレーダ走査する場合には、電磁波レーダ350を上層鉄筋0301の配筋方向と直交して移動させると共に、下層鉄筋0302の配筋方向と直交して移動させる必要がある。
電磁波レーダ350を移動させる方向を決めるにあたっては、まず、電磁波レーダ350でレーダ走査することで、上層鉄筋0301及び下層鉄筋0302の配筋位置を把握する。そして、構造体表面上において、配筋位置が判別した上層鉄筋0301の間に罫線Laを引くと共に、同じく配筋位置が判別した下層鉄筋0302の間に罫線Lbを引き、これらの罫線La,Lbに沿って電磁波レーダ350を自動又は手動により移動させるようにする。
【0045】
ここで、電磁波レーダ350を自走式のものとした場合には、例えば、ビル屋上や橋梁等の屋外におけるレーダ走査において、GPS(全地球測位システム)を用いて移動させるようにしてもよい。また、例えば、ビル床面等の屋内におけるレーダ走査において、ビルの内部に複数のビーコンを配置すると共に電磁波レーダ350にビーコン用の受信端末を搭載して、複数のビーコンに案内されて移動させるようにしてもよい。
<実施形態1 構成 機能ブロック>
【0046】
図3Bに示すように、本実施形態の鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置0360は、ハイパボーラ情報取得部0361と、上層鉄筋直径取得部0362と、比誘電率別ハイパボーラ曲線情報取得部0363と、実装コンクリート比誘電率取得部0364と、下層鉄筋推定直径別ハイパボーラ曲線情報取得部0365と、下層鉄筋直径取得部0366と、を有している。
<実施形態1 構成 機能ブロック ハイパボーラ情報取得部>
【0047】
「ハイパボーラ情報取得部0361」は、電磁波レーダ0350の送信アンテナ0351からコンクリートCの内部に向けて電磁波を輻射し、直交交点0303で接触するようにしてコンクリートC内に配置されている上下二層の上層鉄筋0301及び下層鉄筋0302でそれぞれ反射して戻る反射波を受信アンテナ0352で受けることで、上層鉄筋0301及び下層鉄筋0302の各反射波の深さ方向の波形情報であるハイパボーラ情報を取得する。
【0048】
ここで、電磁波レーダ350を上層鉄筋0301の配筋方向と直交して移動させる場合、送信アンテナ0351からコンクリートCの内部に輻射される電磁波は、進行方向及び後退方向に対しても広がりを持っているため、図3Cの二次元画像(断面画像)に示すように、例えば、電磁波レーダ0350が上層鉄筋0301の直上を通過する前の位置P1でも、前方の上層鉄筋0301からの斜めの反射波R1を受信することとなる。この際、電磁波レーダ350のレーダ画面0353では、位置P1で輻射された電磁波が反射波R1となって戻るまでの1/2時間t1又は上層鉄筋0301までの距離d1が位置P1の直下に表示されるようになっている。電磁波が反射波となって戻るまでの1/2時間t2又は電磁波レーダ0350から上層鉄筋0301までの距離d2は、電磁波レーダ0350が上層鉄筋0301の直上の位置P2を通過する際に最短となり、その後、電磁波レーダ0350が位置P3を通過した際は、後方の上層鉄筋0301からの斜めの反射波を受信することとなり、電磁波レーダ350のレーダ画面0353では、位置P3で輻射された電磁波が反射波R3となって戻るまでの1/2時間t3時間の半分が上層鉄筋0301までの距離d3に換算されて位置P3の直下に表示されるようになっている。
その結果、レーダ画面0353には、上層鉄筋0301をピークとする左右対称の山形波形、すなわち、深さ方向の波形の情報であるハイパボーラ波形(情報)が表示される。
なお、このレーダ情報の画像処理を一般的に述べると以下のようになる。電磁波レーダを備えた台車の、例えば底部重心点の位置をレーダ輻射の原点位置とし、この原点位置の直線上の位置の関数としてレーダによる鉄筋からの反射時間(往復時間又は片道時間の定数倍)又は原点直下に鉄筋があったと仮定した場合の鉄筋の埋設深度(コンクリート厚)を表現する。
【0049】
このハイパボーラ波形は、図3Dの上部に示すように、鉄筋の埋設深度が浅い場合に山形の頂部が最も鋭いハイパボーラ波形1になり、この鉄筋と同一径の鉄筋の埋設深度が深くなるにつれて山形の頂部が緩いハイパボーラ波形2,3,4になるという特徴を有する。さらに、ハイパボーラ波形は、図3Dの下部に示すように、細い鉄筋の場合に山形の頂部が鋭いハイパボーラ波形5になり、太い鉄筋の場合に山形の頂部が緩いハイパボーラ波形6になるという特徴を有する。
【0050】
そして、上層鉄筋0301の場合と同様に、電磁波レーダ0350を下層鉄筋0302の配筋方向と直交して移動させることで、レーダ画面0353には、下層鉄筋0302をピークとする左右対称の山形波形、すなわち、深さ方向の波形の情報であるハイパボーラ波形(情報)が表示される。
<実施形態1 構成 機能ブロック 上層鉄筋直径取得部>
【0051】
「上層鉄筋直径取得部0362」は、ハイパボーラ情報取得部0361で取得した2直交方向のハイパボーラ情報を用いて相対的に上層鉄筋0301の直径の情報を取得する。
【0052】
具体的には、図3Eに示すように、ハイパボーラ情報取得部0361で取得した上層鉄筋0301のハイパボーラ波形WU及び下層鉄筋0302のハイパボーラ波形WLを比較して、各々の頂点部の差である上層鉄筋0301の直径の情報Ifを取得する。
この上層鉄筋直径取得部0362で取得する上層鉄筋0301の直径の情報Ifは、コンクリートCの比誘電率εが標準的な6~8を用いて取得したものである。
【0053】
また、上層鉄筋直径取得部0362では、後述する実装コンクリート比誘電率を取得するために、電磁波レーダ0350のレーダ画面0353において、鉄筋の埋設深度及び直径をパラメータとしてハイパボーラ波形をシミュレートしたハイパボーラ図形を表示し、ハイパボーラ情報取得部0361で取得した上層鉄筋0301のハイパボーラ情報であるハイパボーラ波形にカーブフィッティングすることで、上層鉄筋0301のハイパボーラ波形に最もよく当てはまるハイパボーラ図形を求める。
<実施形態1 構成 機能ブロック 比誘電率別ハイパボーラ曲線情報取得部>
【0054】
「比誘電率別ハイパボーラ曲線情報取得部0363」は、鉄筋コンクリート構造体に用いられているコンクリートの比誘電率εをパラメータとして複数採用した場合のハイパボーラ図形(曲線)を構成する情報である比誘電率別ハイパボーラ曲線情報を取得する。
【0055】
ここで、図3Fの上部に模式的に示すように、電磁波レーダ0350が構造物表面を位置P1から上層鉄筋0301の直上位置P2を通って位置P3まで移動する過程において、コンクリートの比誘電率εが小さい場合における上層鉄筋0301からの一点鎖線で示す反射時間Tが、位置P2で1T、位置1,3で2Tであるのに対して、比誘電率εが大きい場合における上層鉄筋0301からの二点鎖線で示す反射時間Tは、位置P2で2T、位置1,3で4Tである。
つまり、コンクリートの比誘電率εとハイパボーラ図形との間には、図3Fの下部に示すように、コンクリートの比誘電率εが小さい場合には山形の頂部が緩い一点鎖線で示すハイパボーラ波形になり、一方、コンクリートの比誘電率εが大きい場合には山形の頂部が鋭い二点鎖線で示すハイパボーラ波形になるという関係がある。
【0056】
この比誘電率別ハイパボーラ曲線情報取得部0363では、このようなコンクリートの比誘電率εとハイパボーラ図形との関係に基いて、ハイパボーラ図形を構成する比誘電率別ハイパボーラ曲線情報を取得する。
<実施形態1 構成 機能ブロック 実装コンクリート比誘電率取得部>
【0057】
「実装コンクリート比誘電率取得部0364」は、比誘電率別ハイパボーラ曲線情報取得部0363で取得した複数の比誘電率別ハイパボーラ曲線情報と、ハイパボーラ情報取得部0361で取得された上層のハイパボーラ情報(直径)とに基づいて鉄筋コンクリート構造体に用いられているコンクリートの比誘電率である実装コンクリート比誘電率を取得する。
【0058】
この実装コンクリート比誘電率取得部0364では、上述したハイパボーラ図形にハイパボーラ情報取得部で取得した鉄筋径及び深度を与えて、同じくハイパボーラ情報取得部で取得した上層鉄筋のハイパボーラ波形にカーブフィッティングして、図3Gに示すように、二点鎖線で示すハイパボーラ図形F1が一点鎖線で示すハイパボーラ図形F2を経て上層鉄筋のハイパボーラ波形Wに一致するように、比誘電率別ハイパボーラ曲線情報取得部で取得した比誘電率別ハイパボーラ曲線情報に基づいて比誘電率を調整することで、実装コンクリート比誘電率を取得する。
【0059】
この際、ハイパボーラ図形は、図3Hに示すように、上記した「鉄筋の埋設深度の深浅及び鉄筋の太さの大小に応じてハイパボーラ波形における山形の頂部の緩急が変化する特徴」に基づいてデータベース化した複数のハイパボーラ図形から上層鉄筋0301のハイパボーラ波形とのカーブフィッティングに適したものを選択することができる。
<実施形態1 構成 機能ブロック 下層鉄筋推定直径別ハイパボーラ曲線情報取得部>
【0060】
「下層鉄筋推定直径別ハイパボーラ曲線情報取得部0365」は、実装コンクリート比誘電率取得部0364で取得した実装コンクリート比誘電率を用いて相対的に下層の鉄筋の直径を推定パラメータとした下層鉄筋推定直径別ハイパボーラ曲線を構成する下層鉄筋推定直径別ハイパボーラ曲線情報を取得する。具体的には、実装コンクリート比誘電率取得部0364で取得した実装コンクリート比誘電率及び上層鉄筋で求めたハイパボーラ図形を用いて下層鉄筋推定直径別のハイパボーラ図形を取得する。
<実施形態1 構成 機能ブロック 下層鉄筋直径取得部>
【0061】
「下層鉄筋直径取得部0366」は、下層鉄筋推定直径別ハイパボーラ曲線情報取得部0365で取得した複数の下層鉄筋推定直径別ハイパボーラ曲線情報(ハイパボーラ図形)と、ハイパボーラ情報取得部0361で取得したハイパボーラ情報の下層鉄筋のハイパボーラ情報(ハイパボーラ波形)とに基づいて相対的に鉄筋コンクリート構造体に用いられている下層の鉄筋の直径を取得する。
【0062】
この下層鉄筋直径取得部0366では、図3Iの上部に示すように、下層鉄筋推定直径別ハイパボーラ曲線情報取得部0365で取得した下層鉄筋推定直径別のハイパボーラ図形、すなわち、上層鉄筋0301で求めた破線で示すハイパボーラ図形Fの山形の頂部を下層鉄筋0302の実線で示すハイパボーラ波形Wの山形の頂部に合わせた状態において、ハイパボーラ波形Wの山形の頂部がハイパボーラ図形Fの山形の頂部よりも緩やかな場合は、下層鉄筋0302の方が上層鉄筋0301よりも太いと判断する。なお、図3Iでは、便宜上、上層鉄筋及び下層鉄筋を同じ方向にして示している。
この際、図3Iの中部に示すように、ハイパボーラ波形Wの山形の頂部がハイパボーラ図形Fの山形の頂部と一致する場合は、下層鉄筋の直径0302が上層鉄筋0301の直径と同じと判断し、図3Iの下部に示すように、ハイパボーラ波形Wの山形の頂部がハイパボーラ図形Fの山形の頂部よりも鋭い場合は、下層鉄筋0302の方が上層鉄筋0301よりも細いと判断する。
【0063】
そして、この下層鉄筋直径取得部0366では、上記の判断を行った結果、ハイパボーラ図形がハイパボーラ波形に一致していない場合には、両者が一致するようにハイパボーラ図形の直径を調整することで、下層鉄筋の直径を推定する。
<実施形態1 鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置 ハードウェア構成>
【0064】
図4に示すように、本実施形態の鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置0460は、CPU0461と、HDD、ROM等の不揮発性メモリ0462と、D-RAM等のメインメモリ0463と、インターフェースとから構成されている。不揮発性メモリ0462には、プログラムとしてハイパボーラ情報取得プログラム、上層鉄筋直径取得プログラム、比誘電率別ハイパボーラ曲線情報取得プログラム、実装コンクリート比誘電率取得プログラム、下層鉄筋推定直径別ハイパボーラ曲線情報取得プログラム、下層鉄筋直径取得プログラムが格納されている。データとしては、電流信号や位相角の情報であり、これらのプログラムやデータは、メインメモリ0463の保持領域に読み込まれて作動領域で実行される。また、インターフェースには、特定小電力無線等がある。
<実施形態1 鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置 処理の流れ>
【0065】
本実施形態の鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置では、図5に示すように、ハイパボーラ情報取得ステップS0501が実行されて、直交交点にて接触配置される少なくとも二層構造の鉄筋をコンクリートに配置した鉄筋コンクリート構造体に埋設されている鉄筋の配筋方向と直交して構造体表面をレーダ走査して取得した反射波の深さ方向の波形の情報であるハイパボーラ情報が2直交方向について取得される。
次いで、上層鉄筋直径取得ステップS0502が実行されて、取得した2直交方向のハイパボーラ情報を用いて相対的に上層の鉄筋の直径が取得され、次に、比誘電率別ハイパボーラ曲線情報取得ステップS0503が実行されて、鉄筋コンクリート構造体に用いられているコンクリートの比誘電率をパラメータとして複数採用した場合のハイパボーラ曲線を構成する情報である比誘電率別ハイパボーラ曲線情報が取得される。
これに続いて、実装コンクリート比誘電率取得ステップS0504が実行されて、取得した複数の比誘電率別ハイパボーラ曲線情報と、取得された上層のハイパボーラ情報とに基づいて鉄筋コンクリート構造体に用いられているコンクリートの比誘電率である実装コンクリート比誘電率が取得される。
そして、下層鉄筋推定直径別ハイパボーラ曲線情報取得ステップS0505が実行されて、取得した実装コンクリート比誘電率を用いて相対的に下層の鉄筋の直径を推定パラメータとした下層鉄筋推定直径別ハイパボーラ曲線を構成する下層鉄筋推定直径別ハイパボーラ曲線情報が取得された後、下層鉄筋直径取得ステップS0506が実行されて、取得した複数の下層鉄筋推定直径別ハイパボーラ曲線情報と、取得したハイパボーラ情報の下層のハイパボーラ情報とに基づいて相対的に鉄筋コンクリート構造体に用いられている下層の鉄筋の直径が取得される。
<実施形態1 鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置 効果>
【0066】
本実施形態に係る鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置は、鉄筋コンクリート構造体のコンクリート内部に配置されている互いに直交交点で接触する上層鉄筋及び下層鉄筋のハイパボーラ情報であるハイパボーラ波形を取得するので、上層鉄筋及び下層鉄筋の各ハイパボーラ波形に基づいて、上層鉄筋の鉄筋径のみならず下層鉄筋の鉄筋径をも推定することができるという効果を奏する。
<実施形態2>
【0067】
本実施形態は、主に請求項2,5,8に関する。
<実施形態2 鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置 概要>
【0068】
本実施形態は実施形態1を基本とし、取得したハイパボーラ情報と取得した実装コンクリート比誘電率とを用いて鉄筋コンクリート構造体に埋設されている鉄筋の埋設深度を取得する埋設深度取得部をさらに有する構成としたことを特徴としている。
<実施形態2 鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置 構成>
【0069】
図6に示すように、本実施形態の構造推定装置0660において、先の実施形態と相違するところは、埋設深度取得部0667をさらに有している点にあり、他の構成は先の実施形態と同じである。
【0070】
具体的には、この埋設深度取得部0667において、ハイパボーラ情報取得部0661で取得した上層鉄筋及び下層鉄筋の各反射波の深さ方向の波形情報に含まれる比誘電率εとして、実装コンクリート比誘電率取得部0664で取得した実装コンクリート比誘電率を用いることで、上層鉄筋の埋設深度及びこれに基づく下層鉄筋の埋設深度を取得する。
<実施形態2 鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置 ハードウェア構成>
【0071】
図7に示すように、本実施形態の鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置0760は、CPU0761と、HDD、ROM等の不揮発性メモリ0762と、D-RAM等のメインメモリ0763と、インターフェースとから構成されている。不揮発性メモリ0762には、プログラムとしてハイパボーラ情報取得プログラム、上層鉄筋直径取得プログラム、比誘電率別ハイパボーラ曲線情報取得プログラム、実装コンクリート比誘電率取得プログラム、下層鉄筋推定直径別ハイパボーラ曲線情報取得プログラム、下層鉄筋直径取得プログラム、埋設深度取得プログラムが格納されている。データとしては、電流信号や位相角の情報であり、これらのプログラムやデータは、メインメモリ0763の保持領域に読み込まれて作動領域で実行される。また、インターフェースには、特定小電力無線等がある。
<実施形態2 鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置 処理の流れ>
【0072】
本実施形態の鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置では、図8に示すように、下層鉄筋直径取得ステップS0806が実行されて、取得した複数の下層鉄筋推定直径別ハイパボーラ曲線情報と、取得したハイパボーラ情報の下層のハイパボーラ情報とに基づいて相対的に鉄筋コンクリート構造体に用いられている下層の鉄筋の直径が取得されたのち、埋設深度取得ステップS0807が実行されて、ハイパボーラ情報取得ステップS0801の実行で取得したハイパボーラ情報と実装コンクリート比誘電率取得ステップS0804の実行で取得した実装コンクリート比誘電率とを用いて鉄筋コンクリート構造体に埋設されている鉄筋の埋設深度が取得される。
<実施形態2 鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置 効果>
【0073】
本実施形態に係る鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置では、鉄筋コンクリート構造体のコンクリート内部に配置されている互いに直交交点で接触する上層鉄筋及び下層鉄筋の各鉄筋径に加えて、鉄筋の埋設深度をも推定することができるという効果を奏する。
<実施形態3>
【0074】
本実施形態は、主に請求項3,6,9に関する。
<実施形態3 鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置 概要>
【0075】
本実施形態は実施形態1,2を基本とし、鉄筋コンクリート構造体のコンクリート内部に電磁波を輻射して複数の2直交方向のハイパボーラ情報を取得し、これらの取得した複数のハイパボーラ情報を統計処理することで、上層鉄筋の直径を取得する構成としたことを特徴としている。
本実施形態では、複数の2直交方向のハイパボーラ情報を取得するので、上層鉄筋の直径の推定精度向上が図られる。
<実施形態3 鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置 構成>
【0076】
図9Aに示すように、本実施形態の構造推定装置0960において、先の実施形態と相違するところは、ハイパボーラ情報取得部0961が、複数の2直交方向のハイパボーラ情報を取得する複数ハイパボーラ情報取得手段0961aを有し、上層鉄筋直径取得部0962が複数ハイパボーラ情報取得手段0961aで取得した複数のハイパボーラ情報を統計処理することによって上層鉄筋の直径を取得する統計的上層鉄筋直径取得手段0962aを有している点にあり、他の構成は先の実施形態と同じである。
【0077】
ここで、上層鉄筋のハイパボーラ情報を取得する際に、電磁波の輻射による深度測定を上層鉄筋及び下層鉄筋の交点直上で行うと、上層鉄筋からの反射波に下層鉄筋からの反射波が干渉してしまい、これが上層鉄筋のハイパボーラ情報である深度の精度に影響して正確な深度測定を行うことができない。
この問題に対処するべく、本実施形態の構造推定装置0960では、上述のような対応策を講じている。
具体的には、図9Bの部分平面図に示すように、あらかじめレーダ走査することで得た上層鉄筋0901及び下層鉄筋0902のメッシュ配筋において、複数ハイパボーラ情報取得手段としての複数の測定点x1,x2,x3,・・・,y1,y2,y3,・・・を、2直交交点から上下左右に等間隔で設定している。
【0078】
そして、上層鉄筋0901及び下層鉄筋0902の各配筋方向と直交してレーダ走査するに際して、例えば、上層鉄筋0901の配筋方向と直交してレーダ走査するに際しては、上層鉄筋0901上の複数の測定点x1,x2,x3,・・・を通過するように横方向の破線に沿ってレーダ走査し、一方、下層鉄筋0902の配筋方向と直交してレーダ走査するに際しては、下層鉄筋0902上の複数の測定点y1,y2,y3,・・・を通過するように縦方向の破線に沿ってレーダ走査する。
【0079】
本実施形態の構造推定装置0960では、以下に示す式6を統計的上層鉄筋直径取得手段としており、上記のようなレーダ走査により測定点x1,x2,x3,・・・及び測定点y1,y2,y3,・・・で得られた測定値を式6に当てはめて、互いに隣接する上下の2点と左右の2点(例えば、図9Bにおける円内に位置する測定点)の測定値の平均の差を計算することで、鉄筋の傾き等の誤差を平均化することができるようにしている。
Δd=|((dx2+dx1)/2)-((dy2+dy1)/2)| 式6
【0080】
この際、例えば、上記の上下左右の4つの測定点を上下平均及び左右平均だけでなく、組み合わせを変えて各々の値を再計算することで、上層鉄筋の値を補正することができる。なお、式6による鉄筋径の計算結果において、他の数値に突出して異なる数値が出た場合は、フィルタを通すことで排除する。
<実施形態3 鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置 ハードウェア構成>
【0081】
図10に示すように、本実施形態の鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置1060は、CPU1061と、HDD、ROM等の不揮発性メモリ1062と、D-RAM等のメインメモリ1063と、インターフェースとから構成されている。不揮発性メモリ1062には、プログラムとしてハイパボーラ情報取得プログラム、複数ハイパボーラ情報取得サブプログラム、上層鉄筋直径取得プログラム、統計的上層鉄筋直径取得サブプログラム、比誘電率別ハイパボーラ曲線情報取得プログラム、実装コンクリート比誘電率取得プログラム、下層鉄筋推定直径別ハイパボーラ曲線情報取得プログラム、下層鉄筋直径取得プログラム、埋設深度取得プログラムが格納されている。データとしては、電流信号や位相角の情報であり、これらのプログラムやデータは、メインメモリ1063の保持領域に読み込まれて作動領域で実行される。また、インターフェースには、特定小電力無線等がある。
<実施形態3 鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置 処理の流れ>
【0082】
本実施形態の鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置では、図11に示すように、ハイパボーラ情報取得ステップS1101の実行に際して、複数ハイパボーラ情報取得サブステップS1101aが実行されて複数の2直交方向のハイパボーラ情報を取得され、上層鉄筋直径取得ステップS1102の実行に際して統計的上層鉄筋直径取得サブステップS1102aが実行されて、複数のハイパボーラ情報を統計処理することで上層鉄筋の直径が取得される。
<実施形態3 鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置 効果>
【0083】
本実施形態では、複数の2直交方向のハイパボーラ情報を取得するので、鉄筋の傾き等の誤差を平均化することができ、その結果、上層鉄筋の直径の推定精度向上を実現することが可能であるという効果を奏する。
【符号の説明】
【0084】
0360 鉄筋コンクリート構造体の構造推定装置
0361 ハイパボーラ情報取得部
0362 上層鉄筋直径取得部
0363 比誘電率別ハイパボーラ曲線情報取得部
0364 実装コンクリート比誘電率取得部
0365 下層鉄筋推定直径別ハイパボーラ曲線情報取得部
0366 下層鉄筋直径取得部
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11