(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122754
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】味覚提示装置及びそれに用いる電流供給装置
(51)【国際特許分類】
A61N 1/36 20060101AFI20230829BHJP
【FI】
A61N1/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026438
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000253503
【氏名又は名称】キリンホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】801000027
【氏名又は名称】学校法人明治大学
(74)【代理人】
【識別番号】100099645
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】辻(佐藤) 愛
(72)【発明者】
【氏名】宮下 芳明
(72)【発明者】
【氏名】白川 徹
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053BB23
4C053FF04
4C053JJ15
(57)【要約】
【課題】味覚刺激用の電流をユーザの味覚器に供給するための選択肢として、新規な構成の味覚提示装置を提供する。
【解決手段】ユーザの味覚器に接触可能な導電性の通電部14を有し、ユーザに把持されるべき部分には絶縁部13が設けられた飲食用の器具10と、器具10を介して味覚刺激用の電流を味覚器に供給するための電流供給装置20とを味覚提示装置1に設け、電流供給装置20は、ユーザの手首に装着可能な筐体21内に制御装置等を収容して構成し、筐体21の裏面側に一方の電極を設け、筐体21の他方の電極と器具10の通電部14とはケーブル30を介して接続する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの味覚器に対して接触可能な導電性の通電部を有し、前記ユーザによって把持されるべき部分には絶縁部が設けられた飲食用の器具と、
味覚刺激用の電流を前記器具を介して前記味覚器に供給するための電流供給装置と、
前記器具と前記電流供給装置とを接続するケーブルとを備えた味覚提示装置であって、
前記電流供給装置は、
前記電流を出力するための一対の電極が設けられた筐体と、
前記筐体内に設けられ、前記電流が前記味覚器に供給されるように所定の電源の出力を制御する制御装置とを含み、
前記筐体は前記ユーザの手首に装着できるように設けられ、
前記一対の電極のうち、一方の電極は前記ユーザの手首と接するようにして前記筐体の裏面側に設けられ、他方の電極は、前記器具の前記通電部と前記ケーブルを介して接続される味覚提示装置。
【請求項2】
前記他方の電極からの前記ケーブルの引き出し方向が前記筐体の前記裏面側に対して反対側に設定されている請求項1に記載の味覚提示装置。
【請求項3】
前記他方の電極が、前記筐体の前記裏面側に対する反対側の表面に設けられている請求項2に記載の味覚提示装置。
【請求項4】
前記筐体は、前記ユーザの前記手首に巻き付けるようにして装着するためのバンドを備えている請求項1~3のいずれか一項に記載の味覚提示装置。
【請求項5】
前記一方の電極と前記ユーザの手首との間に流れる電流を制限する通電制限部が前記一方の電極内、又は前記一方の電極と前記ユーザの手首との間に設けられている請求項1~4のいずれか一項に記載の味覚提示装置。
【請求項6】
前記器具は、少なくとも一部が前記絶縁部として構成された柄状部を有し、前記器具が前記ユーザの前記味覚器に接する側を先端側としたときに、前記器具の後端側にて前記通電部が露出し、当該露出部分が前記ケーブルとの接続位置として設定されている請求項1~5のいずれか一項に記載の味覚提示装置。
【請求項7】
前記他方の電極及び前記器具のそれぞれと前記ケーブルとの接続点間の距離に対して前記ケーブルの全長が1.35倍以上、かつ3.50倍以下である請求項1~6のいずれか一項に記載の味覚提示装置。
【請求項8】
ユーザの味覚器に対して接触可能な導電性の通電部を有し、前記ユーザによって把持されるべき部分には絶縁部が設けられた飲食用の器具と組み合わせて使用され、前記器具を介して前記味覚器に味覚刺激用の電流を供給する味覚提示装置を構成するための電流供給装置であって、
前記電流を出力するための一対の電極が設けられた筐体と、
前記筐体内に設けられ、前記電流が前記味覚器に供給されるように所定の電源の出力を制御する制御装置とを含み、
前記筐体は前記ユーザの手首に装着できるように設けられ、
前記一対の電極のうち、一方の電極は前記ユーザの手首と接するようにして前記筐体の裏面側に設けられ、他方の電極は、前記器具の前記通電部とケーブルを介して接続される味覚提示用の電流供給装置。
【請求項9】
前記他方の電極からの前記ケーブルの引き出し方向が前記筐体の前記裏面側に対して反対側に設定されている請求項8に記載の電流供給装置。
【請求項10】
前記他方の電極が、前記筐体の前記裏面側に対する反対側の表面に設けられている請求項9に記載の電流供給装置。
【請求項11】
前記筐体は、前記ユーザの前記手首に巻き付けるようにして装着するためのバンドを備えている請求項8~10のいずれか一項に記載の電流供給装置。
【請求項12】
前記一方の電極と前記ユーザの手首との間に流れる電流を制限する通電制限部が前記一方の電極内、又は前記一方の電極と前記ユーザの手首との間に設けられている請求項8~11のいずれか一項に記載の電流供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的な刺激を利用して、ユーザが感じ取る味覚に変化を与えるための味覚提示装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
健康管理上の都合等から塩分や糖分が制限された薄味の食事を採らざるを得ないユーザに対して、塩味等を増強して満足感を高めるための手法として、電気的な刺激を利用して飲食物の味覚をユーザの嗜好等に合うよう改質して提示する装置が提案されている。例えば、味覚刺激用の電流を供給するための電源装置を手袋上に固定し、その電源装置から一対のケーブルを引き出し、一方のケーブルをコップ、フォーク等の飲食用の器具における導電性部位に接続し、他方のケーブルをユーザの一部、例えば小指や手首に接続してユーザの味覚器に電気的な刺激を与える装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
手袋を利用して味覚刺激用の電流を供給するための電気回路を形成する構成は、味覚提示装置に必要な機能を実現するための一つの解決策である。しかしながら、ユーザの状態や趣向等によっては、異なる選択肢が求められる場合も想定される。
【0005】
そこで、本発明は、味覚刺激用の電流をユーザの味覚器に供給するための選択肢として、新規な構成の味覚提示装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る味覚提示装置は、ユーザの味覚器に対して接触可能な導電性の通電部を有し、前記ユーザによって把持されるべき部分には絶縁部が設けられた飲食用の器具と、味覚刺激用の電流を前記器具を介して前記味覚器に供給するための電流供給装置と、前記器具と前記電流供給装置とを接続するケーブルとを備えた味覚提示装置であって、前記電流供給装置は、前記電流を出力するための一対の電極が設けられた筐体と、前記筐体内に設けられ、前記電流が前記味覚器に供給されるように所定の電源の出力を制御する制御装置とを含み、前記筐体は前記ユーザの手首に装着できるように設けられ、前記一対の電極のうち、一方の電極は前記ユーザの手首と接するようにして前記筐体の裏面側に設けられ、他方の電極は、前記器具の前記通電部と前記ケーブルを介して接続されるものである。
【0007】
本発明の一態様に係る電流供給装置は、ユーザの味覚器に対して接触可能な導電性の通電部を有し、前記ユーザによって把持されるべき部分には絶縁部が設けられた飲食用の器具と組み合わせて使用され、前記器具を介して前記味覚器に味覚刺激用の電流を供給する味覚提示装置を構成するための電流供給装置であって、前記電流を出力するための一対の電極が設けられた筐体と、前記筐体内に設けられ、前記電流が前記味覚器に供給されるように所定の電源の出力を制御する制御装置とを含み、前記筐体は前記ユーザの手首に装着できるように設けられ、前記一対の電極のうち、一方の電極は前記ユーザの手首と接するようにして前記筐体の裏面側に設けられ、他方の電極は、前記器具の前記通電部とケーブルを介して接続されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一形態に係る味覚提示装置の全体構成の一例を示す斜視図。
【
図2】味覚提示装置に用いられる箸の一例を示す図。
【
図3】味覚提示装置に用いられる電流供給装置の正面図。
【
図5】
図3の矢印V方向から観察したときの電流供給装置の側面図。
【
図7】電流供給装置における制御装置の構成の一例を示すブロック図。
【
図8】ケーブル長を検討するための構成の一例を示す図。
【
図9】ケーブル長を検討するための構成の他の例を示す図。
【
図10】ケーブル長の検討において電極を配置する対象となる面を示す図。
【
図11】条件1におけるケーブル長の検討結果を示す図。
【
図12】条件2におけるケーブル長の検討結果を示す図。
【
図13】条件3におけるケーブル長の検討結果を示す図。
【
図14】条件4におけるケーブル長の検討結果を示す図。
【
図15】条件5におけるケーブル長の検討結果を示す図。
【
図16】条件6におけるケーブル長の検討結果を示す図。
【
図17】条件7におけるケーブル長の検討結果を示す図。
【
図18】条件8におけるケーブル長の検討結果を示す図。
【
図19】条件9におけるケーブル長の検討結果を示す図。
【
図20】条件10におけるケーブル長の検討結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本発明の一形態に係る味覚提示装置を説明する。なお、本形態における「味覚提示」とは、ユーザの味覚器を電気的に刺激することにより、飲食物の摂取時にユーザが感じ取る味覚を電気的な刺激を与えない場合の味覚から変化させることを意味する概念である。
【0010】
図1に示すように、味覚提示装置1は、飲食用の器具の一例としての一膳の箸10と、その箸10を介してユーザの味覚器(一例として舌の味蕾)に味覚刺激用の電流を供給するための電流供給装置20とを含む。一膳の箸10は一対の単体の箸11、12を組み合わせた組物である。以下では、単体の箸11、12を箸単体11、12と表記することにより、組物としての箸10と区別することがある。
【0011】
電流供給装置20は、その全体がユーザの手首に装着可能な腕時計状のユニットとして構成される。箸単体11、12のいずれか一方(図示の例では下箸としての箸単体11)と、電流供給装置20とは単一のケーブル30を介して電気的に接続される。箸単体11とケーブル30との接続位置は一例として箸単体11の後端部に設定されている。ケーブル30は、一般的な電気機器、例えばスマートフォン等の電子デバイスの充電や通信等に用いられるケーブルと同等の断面寸法及び柔軟性を備えたものであればよい。
【0012】
図2は箸10の一例を示す。ただし、箸単体11は内部構造を示している。一方の箸単体11は、柄状の本体13と、本体13に組み付けられる通電部14とを含む。本体13はその全体が絶縁性の材料、例えば絶縁性の樹脂にて形成される。それにより、本体13は柄状部及び絶縁部の一例として機能する。通電部14は、本体13の先端側、すなわちユーザの味覚器に接する側に露出する電極部14aと、本体13の後端側に露出する端子部14bと、電極部14aと端子部14bとを接続する接続部14cとを含む。電極部14a、端子部14b及び接続部14cはいずれも導電性の材料、例えば導電性の金属材料にて構成される。通電部14は、一例としてインサート成形法を用いて本体13と一体化される。
【0013】
電極部14aは、ユーザの舌に対して接触可能である。ここでいう接触は、舌等の味覚器に対して直接的に接する場合に限らず、ユーザが摂取する飲食物を介して間接的に接触する場合も含む概念である。例えば、箸20によって捉まれた食品を介して電極部14aとユーザの舌(より厳密には舌上の味蕾)とが電気的に接続される場合も「接触」の概念に含まれる。飲食物は固形又は半固形の食品に限らず、飲料や汁物等の液種も含み得る。例えば、ユーザが摂取する汁物に電極部14aが浸かっている場合には、その汁物を介して電極部14aとユーザの舌とが電気的に接続される。
【0014】
端子部14bはケーブル30との接続に利用される。端子部14bとケーブル30との接続は、一例としてケーブル30側に内蔵された磁石の磁力を利用して両者を吸着することによって実現される。ケーブル30の端部の弾性変形を利用して端子部14bにケーブル30を適宜な保持力で接続する構成が採用されてもよい。その他にも、ケーブル30と端子部14bとの接続及びその接続状態の保持は、適宜の構成で実現されてよい。
【0015】
他方の箸単体12は、柄状の本体15のみを有し、通電部は省略されている。本体15は、通電部14を有する側の箸単体11と同形同大である。なお、他方の箸単体12にも通電部14が設けられ、使用時にユーザがいずれか一方の箸単体11、12を選択してケーブル30と接続するものとしてもよい。
【0016】
図3~
図5は電流供給装置20の一例を示す。電流供給装置20は、筐体21と、筐体21の内部に収容される電池22と、制御基板23とを含む。筐体21は、その付属品としてのバンド24を利用して、ユーザの手首に巻き付けるように装着可能である。筐体21はユーザの左右のいずれの手首にも装着可能である。ただし、味覚提示装置1を使用する際は、箸10を持つ手と同一の側の手首に筐体21が装着される。
【0017】
電池22は、味覚刺激用の電流を発生させるための直流電源の一例である。電池22は、一例として円柱状、あるいはボタン状の一次電池(乾電池)であってもよいし、充電によって繰り返し使用可能な二次電池(充電池)であってもよい。各種の電池が電池22として利用可能である。制御基板23は、味覚刺激に適した電流がユーザの味覚器に供給されるように電池22の出力を制御する制御装置が実装された回路基板である。
【0018】
図5に示すように、筐体21は、本体21aと、本体21aに被せるようにして装着されるカバー21bとを含む。本体21aは、バンド24と連結されることによりユーザの手首に装着されるベースとして機能する。バンド24は、筐体21と分離不能に一体化されていてもよいし、筐体21から分離可能であってもよい。カバー21bは本体21aと組み合わされることにより筐体21の内部を閉じる蓋部材として機能する。筐体21はバンド24の方向に長くかつ全体に丸みを帯びた箱型の容器形状である。ただし、筐体21は円形の容器状等、適宜の形状に形成されてよい。
【0019】
本体21a及びカバー21bは、一例として樹脂成形品として形成される。筐体21のカバー21bは、本体21aに対して分離可能に設けられてもよいし、本体21aに対して分離不能となるように固定されてもよい。例えば、ユーザによる電池22の交換や制御基板23のメンテナンス等の都合から筐体21内へのアクセスの可能性を確保すべき場合には、カバー21bを本体21aに対して分離可能に設ければよい。その場合、カバー21bを本体21aに対してねじ止めし、あるいは弾性変形を利用して嵌め合わせるといった結合構造を採用することにより、カバー21bを本体21aから完全に分離可能としてもよい。あるいは、ヒンジ等を介してカバー21bを本体21aに対して開閉可能に設けてもよい。一方、筐体21内へのアクセスを確保する必要がない場合は、電池22や制御基板23といった内装部品の実装後に、カバー21bを本体21aに対して接着するといった手法によりカバー21bを本体21aに対して分離不能に固定してもよい。
【0020】
図3及び
図4に示すように、筐体21には味覚刺激用の電流を出力するための一対の電極25、26が設けられる。以下では、電極25、26を、第1電極25、第2電極26と表記して相互に区別することがある。
図4から明らかなように、第1電極25は、ユーザの手首と接することが可能となるように、筐体21の裏面21c側、言い換えれば本体21aの下面側に露出するように設けられている。図示例において、第1電極25は、単一の円盤状の電極として裏面21cに露出する。第1電極25は、ユーザの手首と確実に接触させるため裏面21cから幾らか突出するように設けられてもよい。なお、第1電極25は、その全体が導電性材料として一般に用いられる金属材料等にて形成されることを必ずしも要しない。電気を通さない、又は通し難い絶縁性又は誘電性材料として一般に利用される素材にて形成された通電制限部が第1電極部25上に適宜に設けられてもよい。通電制限部は、例えば第1電極25内に適宜に混在するように設けられてもよいし、第1電極25とユーザの手首との間に介在するように設けられてもよい。通電制限部を設けることにより、第1電極25とユーザの手首との間に流れる電流を適度に制限して、ユーザが過剰な刺激を感じ取るおそれを解消し、又は抑制することができる。通電制限部の素材には、例えば樹脂、セラミックス、マイカ、ゴム、シリコン、繊維が単独で又は適宜に組み合わせて使用されてよく、それらの加工品が通電制限部として用いられてもよい。通電制限部は、好ましくは、ゴム又は繊維にて形成され、さらに好ましくはゴムと繊維との組み合わせによって形成されてよい。
【0021】
第2電極26は、筐体21の裏面に対する反対側となる表面21d側、すなわちカバー21bの表面21d側に設けられている。また、表面21dにおける第2電極26の位置は、手首装着時の先端側を向く側面21eとの境界付近に位置するように表面21dの中心からオフセットして設定されている。電極26の位置をそのように設定すれば、ユーザが着用する衣服の袖口からケーブル30の接続位置をなるべく遠ざけて、ケーブル30と衣服との干渉を回避し、又は低減することが可能である。
【0022】
第2電極26はケーブル30との接続に利用される。一例として、ケーブル30はその端部に内蔵された磁石の磁力を利用して第2電極26に適度な保持力で接続される。ただし、ケーブル30の一端部を挿し込むように第2電極26が設けられてもよい。筐体21からのケーブル30の引き出し方向は、筐体21の裏面21c側に対して反対側に設定されている。つまり、ケーブル30を第2電極26に接続したときに、ケーブル30が筐体21の表面21dとほぼ直交する方向に延びるように第2電極26の向きが定められている。ケーブル30の引き出し方向をそのように設定すれば、筐体21を手首に装着した状態で、筐体21と箸単体11の後端部との間でケーブル30が手首から離れる方向にループを描いて延びる。そのため、ユーザが箸10の向きを種々変化させてもケーブル30とユーザの手との干渉が生じにくい。したがって、ケーブル30の取り回しに起因して箸10の使い勝手が悪化するといった不都合を回避し、あるいはその種の不都合が生じるおそれを低減することが可能である。
【0023】
筐体21の側面21eには、電流供給装置20を操作するための操作部27が設けられている。操作部27は、一例として本体21aとカバー21bとの接合部に沿って並べられた一対の操作ボタン27a、27bを含む。操作ボタン27a、27bには適宜の機能が割り当てられてよい。一例として、一方の操作ボタン27aの一定時間長の押し込み操作によって電源の入り切りを切り替え、他方の操作ボタン27bの操作によって味覚刺激の強度(電流強度)を適宜の段数で切り替え可能とするといったように、操作ボタン27a、27bが使い分けられてよい。操作部27は一対の操作ボタン27a、27bを用いる例に限らず、適宜の操作部材が操作部27に設けられてよい。
【0024】
図6に示したように、筐体21の表面21dには、電流供給装置20の状態を表示するためのインジケータ28が設けられている。インジケータ28は、一例として筐体21の左右方向(バンド24が延びる方向)に沿って4つの円形の発光部28aを配列して構成されている。各発光部28aは、一例として、筐体21内に光源としてのLEDを設け、その光源が発する照明光をカバー21bの半透明部から外部に透過させるように構成される。
図1及び
図3は全ての発光部28aが消灯してカバー21bの周囲に同化し、それにより発光部28aの視認が不可能又は困難となっている状態を示している。インジケータ28による状態表示も適宜の設定が可能である。例えば、電源の投入時及び切断時に4つの発光部28aをすべて一時的に点灯させ、味覚刺激の強度が変更された場合には、その設定された強度に応じた個数の発光部28aを一時的に点灯させるといったごとくである。箸10の通電部14がユーザの味覚器に接してユーザの味覚器を含む電気回路に電流が流れた場合に、それを発光部28aの点灯状態の変化、例えば発光強度の増加によって示してもよい。
【0025】
図7は、制御基板23上に実装される制御装置40の一例を示している。制御装置40は、電池22の出力を味覚刺激に適合するように制御するために必要な各種の動作制御を実行する制御ユニット41と、制御ユニット41の指示に従って電極25、26間に出力される電流を調整する出力調整回路42と、電池22の出力を制御ユニット41の動作に必要な程度に昇圧して制御ユニット41に供給する一次昇圧回路43と、一次昇圧回路43の出力を味覚刺激に適した程度に昇圧して出力調整回路42に供給する二次昇圧回路44とを含む。
【0026】
制御ユニット41は、プログラミングが可能なマイクロプロセッサを含んだコンピュータユニットである。制御ユニット41は、操作部27の操作を検出し、検出結果に応じて電極25、26間に供給すべき電流の極性及び電流値を出力調整回路42に指示する。出力調整回路42は、二次昇圧回路44からの出力を制御ユニット41の指示に従って調整することにより、電極25、26間に所定の味覚刺激用の電流を供給する。
【0027】
出力調整回路42には、さらにモニタ回路45が接続される。モニタ回路45は、電極間25、26の通電状態を監視し、通電が検出されるとその旨を制御ユニット41に通知する。第1電極25がユーザの手首に接し、箸単体11と第2電極26とがケーブル30を介して接続され、さらに箸単体11の電極部14aがユーザの味覚器と直接的に、又は飲食物を介して間接的に接した場合、電極25、26間に、ユーザの身体、箸単体11の通電部14及びケーブル30を介した電気回路が形成されて電極25、26間が通電、その通電が出力調整回路42を介してモニタ回路45にて検出される。
【0028】
制御ユニット41は、操作ボタン27aの電源投入操作が検出されるとその制御動作を開始し、モニタ回路45にて通電の検出が通知されると、所望の味覚刺激用の電流が電極25、26間に供給されるように出力調整回路42の動作を制御する。例えば、制御ユニット41は、第1電極25が陽極、第2電極26が陰極となる陰極刺激、あるいは、第1電極25が陰極、第2電極26が陽極となる陽極刺激が実現されるように出力調整回路42に電流の極性を指示し、かつ操作ボタン27bの操作に応じた電流の目標値を出力調整回路42に指示する。さらに、電流波形に関しても、例えば通電開始から電流値がその目標値に達するまでの電流の変化率(単位時間当たりの電流値の変化量)が制御ユニット41から出力調整回路42に指示されてもよい。陰極刺激及び陽極刺激は通電の検出後、適宜のタイミングで切り替えられてもよい。例えば通電開始後の初期段階では陰極刺激が実施され、その後の所定の時期に陰極刺激から陽極刺激へと極性が反転するように極性が指示されてもよい。いずれにしても、制御ユニット41は操作ボタン27bの操作に応じて電流の目標値を増減させつつ、予め定められた波形の電流が電極25、26からユーザに供給されるように出力調整回路42に指示を与え、出力調整回路42はその指示に応じて二次昇圧回路44の出力を調整して電極25、26に所望の波形の電流を供給する。
【0029】
制御ユニット41は、さらにインジケータ28の発光部28aの点灯、消灯を制御装置40の動作状態に応じて適宜に切り替え制御する。その制御の例は上述した通りである。なお、制御装置40には、味覚刺激用の電流から不要な周波数成分を除去するローパスフィルタ等のフィルタ、ノイズ成分を除去するコンデンサ、インダクタ、フェライトコア等の各種の回路要素が付加されてよい。
【0030】
以上に説明したように、味覚提示装置1では、第1電極25をユーザの手首に接するように配置したため、電流供給装置20と飲食用の器具としての箸10とを1本のケーブル30にて接続するだけで、味覚刺激のための電気回路を形成する準備が整う。よって、2本のケーブルを配線する場合と比較して、準備の手間が軽減される。加えて、電流供給装置20の第2電極26からのケーブル30の引き出し方向を、筐体21の裏面21c側に対して反対側となる表面21d側に設定しているので、ケーブル30をユーザの手首から離れる方向にループを描くように取り回すことが可能である。そのため、ケーブル30とユーザとが干渉するおそれを回避、又は低減し、それにより、味覚提示装置1の使い勝手を向上させることができる。
【0031】
本形態の味覚提示装置1においては、ケーブル30の長さを過度に短く設定すると、第2電極26と箸10との間のケーブル30の余長が十分に確保できず、箸10の動きが必要以上に制限されるおそれがある。一方、ケーブル30の長さが過度に長ければ、ケーブル30自体がユーザに絡んだり、食器等の器具に触れて邪魔になるおそれがある。そのような観点からケーブル30の長さ(以下、ケーブル長と呼ぶことがある。)の好適範囲を検討した結果を以下に説明する。
【0032】
1.検討の手法
ケーブル長の好適範囲を検討するため、以下の評価1、2を実施した。そして、評価1にて4点、評価2にて「なし」の結果が得られた例をケーブル長に関する好適範囲内であると判定した。
(評価1)
箸を使って食品を摂取する所作に対してケーブルが与える制限の程度を、異なるケーブル長ごとに以下の4段階で評価した。
1点:箸を用いて物を掴むことができない。
2点:箸を用いて物を掴むことができるが、箸を動かせる範囲に制限がある(手首は初期状態から固定)。
3点:箸を動かす範囲は制限されないが、手首を曲げる範囲に制限がある。
4点:箸を動かす範囲、手首を動かす範囲ともに制限がない。
(評価2)
箸を使って食品を摂取する際にケーブルがユーザの身体や食器、食卓等の周囲の器具類に接触する程度を、異なるケーブル長ごとに以下の2段階で評価した。
あり:口に食品を運ぶ動作をした時にケーブルが接触する。
なし:口に食品を運ぶ動作をした時にケーブルの接触がない。
【0033】
2.検討の条件
評価1、2を実施するにあたって、以下の条件を設定した。
(被験者)
日本人の標準的な体格の成人女性を被験者として選定した。被験者の手の寸法は以下の通りであった。
・掌の最下部~中指付け根の寸法:100mm
・中指の付け根~中指の第一関節(指先に近い関節)の寸法:48mm
・掌最下部(手首のしわ)~中指先端までの寸法:170mm
【0034】
(ケーブルの接続位置)
箸単体とケーブルとの接続に関しては、
図8に示すように箸単体の後端を接続点C1とする場合、
図9に示すように箸単体の側面を接続点C1とする場合のそれぞれを検討対象に設定した。一方、筐体とケーブルとの接続に関しては、
図10に示すように、筐体の裏面を除く5つの面A~Eのそれぞれにケーブル接続用の電極(
図3の第2電極26に相当)を設定し、評価1、2を実施した。したがって、ケーブルの接続位置の相違により、検討の条件は以下の10種類に区分される。
・条件1:箸単体の後端に接続点C1、筐体の面Aに接続点C2
・条件2:箸単体の後端に接続点C1、筐体の面Bに接続点C2
・条件3:箸単体の後端に接続点C1、筐体の面Cに接続点C2
・条件4:箸単体の後端に接続点C1、筐体の面Dに接続点C2
・条件5:箸単体の後端に接続点C1、筐体の面Eに接続点C2
・条件6:箸単体の側面に接続点C1、筐体の面Aに接続点C2
・条件7:箸単体の側面に接続点C1、筐体の面Bに接続点C2
・条件8:箸単体の側面に接続点C1、筐体の面Cに接続点C2
・条件9:箸単体の側面に接続点C1、筐体の面Dに接続点C2
・条件10:箸単体の側面に接続点C1、筐体の面Eに接続点C2
【0035】
(その他の条件)
条件1~10のいずれにおいても、箸単体の全長Lは225mmに設定した。被験者が箸を持つ位置に関しては、親指と箸単体との接触箇所CPから箸単体とケーブルとの接続点C1までの距離Xが条件1~5の場合は78mm、条件6~10の場合は50mmに設定した。
【0036】
3.測定項目
箸単体側の接続点C1と筐体側の接続点C2との間の直線距離Aとしたとときに、直線距離Aに対するケーブル長Bの比B/A、接続点C1、C2のそれぞれにおけるケーブルの傾斜角α、βを測定した。距離Aは手首を自然に伸ばした状態で測定した。条件1~5の場合の傾斜角αは箸単体の長手方向軸線に対してケーブルが傾く角度とし、条件6~10の場合の傾斜角αは、接続点C1における箸単体の法線方向に対してケーブルが傾く角度とした。傾斜角βは条件1~10のいずれの場合でも筐体側の電極が指向する方向(電極面の法線方向であって、ケーブルの脱着方向に相当する。)に対してケーブルが傾く角度とした。
【0037】
条件1~10のそれぞれにおける測定項目の結果、評価1、2の結果、及び判定結果を
図8~
図17に示す。これらの結果から考察するに、ケーブル長Bが接続点C1、C2間の直線距離Aに対して1.35倍以上であれば箸の動きに制限がないと推定できる。一方、ケーブル長Bの上限に関しては、条件によって種々変化し明確な基準が見い出し難いものの、B/A=2.667にてケーブルの接触が「あり」となる場合が最も厳しく(
図12図14、及び
図17のA=150、B=400の例)、B/A=3.500でも接触なしとなる例(
図18のA=100、B=350の例)があったこと、多くの例でB/A=3.00以内であれば接触「なし」の結果が明確に増えること、を考慮すると、ケーブル長Bは接続点間の距離Aに対して好ましくは3.00倍以下、より好ましくは2.60倍以下に設定すれば、ケーブルの食器、食卓等への接触を比較的良好に回避できると推定される。
【0038】
なお、接続点間の距離Aは、被験者の手の大きさに応じて変化する。しかしながら、ケーブル長Bの距離Aに対する比によって好適範囲を特定しているため、その好適範囲は手の大小にかかわらず通用し得るものと推察される。本発明の味覚提示装置を実際の製品として具現化するにあたって、手の大きさが異なる様々なユーザに対してケーブル長を適合させるためには、想定されるユーザ層における手の大きさの標準的データを参照してケーブル長を設定し、あるいは長さが異なる複数のケーブルを用意して、ユーザに適した長さのケーブルを選択させるといった対応が可能である。
【0039】
本発明は上述した形態に限定されず、種々の変形又は変更を施した形態にて実施されてよい。例えば、味覚提示装置を構成するために用いるべき飲食用の器具は箸に限らない。ユーザの味覚器に対して直接に接触し、又は飲食物を介して接触する導電性の通電部を有し、かつユーザによって把持されるべき部分が絶縁部として構成される限り、各種の飲食用の器具が用いられてよい。例えば、フォーク、スプーン等の飲食用具において、ユーザの舌に接し得る先端部が導電性の金属材料にて構成され、ユーザに把持される部分が絶縁性の樹脂にて構成されていれば、その金属材料にて構成された通電部にケーブルを接続することにより、本発明の味覚提示装置における飲食用の用具として利用可能である。特に、スプーン、フォーク等はユーザが把持するための柄状部分を有しているため、その柄状部分に絶縁部を設ける一方で、柄状部分の後端部等の適宜の位置に通電部を露出させ、その露出部分にケーブルを接続すれば、上記の箸20と同様に味覚提示装置の飲食用器具として利用可能である。
【0040】
飲料、汁物等の液種を摂取するためのコップ、椀等の食器類であっても、液種に接する部分に通電部を有し、ユーザによって把持されるべき部分に絶縁部が設けられた構成であれば、その通電部にケーブルを接続することにより、液種を介して通電部とユーザの舌とを電気的に接続して味覚刺激用の電流を供給するための電気回路を形成することが可能である。また、本発明の味覚提示装置にて用いることが可能な飲食用の器具は、味覚提示装置を構成するための専用品として提供される器具に限らず、上述した通電部及び絶縁部が存在する限りにおいて、汎用品として市販される各種の飲食用の器具が使用可能である。
【0041】
上記の形態では、電流供給装置20の電源としての電池22を筐体21内に収容したが、電源として、筐体21外に設けられる外部電源が利用されてもよい。その場合、筐体21に電源接続用の端子を設け、その端子と外部電源とを電源ケーブルを介して接続すればよい。交流の外部電源を利用する場合はその出力をAC/DCコンバータにて直流に変換して制御装置に供給すればよい。外部電源は、飲食物の摂取時において、飲食用の器具のようにユーザの動作に伴って自由に動くことを要しない。したがって、外部電源を利用する場合の電源ケーブルは、飲食物の摂取動作の邪魔にならないように取り回せば足りる。そのため、電源ケーブルが追加されても、電流供給装置と飲食用の器具とを単一のケーブルで接続すれば味覚刺激用の電流を供給するための電気回路を形成できることによる利点を享受することが可能である。
【0042】
上記の形態では、筐体21の表面21dに第2電極26を設けることにより、ケーブル30を第1電極25が設けられる筐体21の裏面21cとは反対側に引き出すように構成したが、ケーブルの引き出し方向をそのように設定するためには、第2電極26を裏面21cに対する反対側の表面21dに設定することを必ずも要しない。例えば、筐体21の側面21e(
図10では面Aに相当する。)に第2電極26が設けられる場合でも、ケーブル30の第2電極26に対する接続端部を、第2電極26に接する端子部分に対してケーブルが90°屈曲した方向に延ばされる屈曲型、あるいはL型の構成とすれば、ケーブル30の引き出し方向を第1電極25に対する反対側に設定することが可能である。ただし、上述した検討における条件1~4、6~9の結果から明らかなように、ケーブルの引き出し方向を筐体の裏面に対する反対側に設定しない場合でも、飲食用の器具の動きを阻害しないようにケーブルを取り回すことが可能である。
【0043】
上述した実施の形態及び変形例から導き出される本発明の各種の態様を以下に記載する。なお、以下の説明では、本発明の各態様の理解を容易にするために添付図面に図示された対応する構成要素を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0044】
本発明の一態様に係る味覚提示装置(1)は、ユーザの味覚器に対して接触可能な導電性の通電部(14)を有し、前記ユーザによって把持されるべき部分には絶縁部(13)が設けられた飲食用の器具(10)と、味覚刺激用の電流を前記器具を介して前記味覚器に供給するための電流供給装置(20)と、前記器具と前記電流供給装置とを接続するケーブル(30)とを備えた味覚提示装置であって、前記電流供給装置は、前記電流を出力するための一対の電極(25、26)が設けられた筐体(21)と、前記筐体内に設けられ、前記電流が前記味覚器に供給されるように所定の電源(22)の出力を制御する制御装置(40)とを含み、前記筐体は前記ユーザの手首に装着できるように設けられ、前記一対の電極のうち、一方の電極(25)は前記ユーザの手首と接するようにして前記筐体の裏面(21c)側に設けられ、他方の電極(26)は、前記器具の前記通電部と前記ケーブルを介して接続されるものである。
【0045】
上記態様の味覚提示装置においては、筐体をユーザの手首に装着すれば一方の電極がユーザの手首と接触する。他方の電極を飲食用の器具の通電部とケーブルにて接続し、その器具の通電部がユーザの味覚器と接することにより、一方の電極と他方の電極とが、ユーザの味覚器を含む身体、飲食用の器具の通電部及びケーブルを介して電気的に接続され、味覚刺激用の電流を味覚器に供給するための電気回路が形成される。電流供給装置の筐体を手首に装着し、かつその一方の電極と飲食用の器具の通電部との間を単一のケーブルで接続すれば味覚提示装置を使用する準備が整う。複数本のケーブルをユーザや飲食用の器具と接続する必要がなく、手袋のような専用品を装着する必要もない。したがって、準備に要する手間が比較的小さく、使い勝手がよい味覚提示装置をユーザの選択肢として提供することができる。
【0046】
上記態様の味覚提示装置においては、前記他方の電極からの前記ケーブルの引き出し方向が前記筐体の前記裏面側に対して反対側に設定されてもよい。この場合は、ケーブルを筐体の裏面側に対して反対側、つまり手首から離れる側にループを描くように取り回して飲食用の器具と接続することができる。そのため、飲食物の摂取時にケーブルとユーザとが干渉するおそれを回避、又は低減して味覚提示装置の使い勝手を向上させることが可能である。
【0047】
前記他方の電極は、前記筐体の前記裏面側に対する反対側の表面(21d)に設けられてもよい。その場合には、ケーブルを手首から離れる方向に確実に取り回して上記の利点をより確実に享受することが可能である。
【0048】
さらに、前記筐体は、前記ユーザの前記手首に巻き付けるようにして装着するためのバンド(24)を備えてもよい。この場合は、腕時計等と同様に電流供給装置をユーザの手首に簡単に装着することが可能である。
【0049】
上記態様の味覚提示装置において、前記一方の電極と前記ユーザの手首との間に流れる電流を制限する通電制限部が前記一方の電極内、又は前記一方の電極と前記ユーザの手首との間に設けられてもよい。これによれば、第1電極とユーザの手首との間における電流を適度に制限して、ユーザが過剰な刺激を感じ取るおそれを解消し又は抑制することが可能である。
【0050】
前記器具は、少なくとも一部が前記絶縁部として構成された柄状部(13)を有し、前記器具が前記ユーザの前記味覚器に接する側を先端側としたときに、前記器具の後端側にて前記通電部が露出し、当該露出部分(14b)が前記ケーブルとの接続位置として設定されてもよい。柄状部の後端側はユーザが把持すべき部分よりも手の甲側に突出するため、その位置にてケーブルを接続すれば、器具を持つユーザから離れる方向にケーブルを取り回し易く、飲食物の摂取動作に対してケーブルが邪魔になり難い。そのような利点は、筐体からのケーブルの引き出し方向を裏面側と反対側に設定した場合にさらに相乗的に発揮され得る。
【0051】
前記他方の電極及び前記器具のそれぞれと前記ケーブルとの接続点(C1、C2)間の距離(A)に対して前記ケーブルの全長が1.35倍以上、かつ3.50倍以下であってもよい。ケーブルの全長をこのような範囲に設定すれば、飲食用の器具の動きをケーブルが制限するおそれを回避又は低減し、一方でケーブルが食器等に接して飲食動作の邪魔になるおそれも回避又は低減することができる。
【0052】
本発明の一態様に係る電流供給装置(20)は、ユーザの味覚器に対して接触可能な導電性の通電部(14)を有し、前記ユーザによって把持されるべき部分には絶縁部(13)が設けられた飲食用の器具(10)と組み合わせて使用され、前記器具を介して前記味覚器に味覚刺激用の電流を供給する味覚提示装置(1)を構成するための電流供給装置であって、前記電流を出力するための一対の電極(25、26)が設けられた筐体(21)と、前記筐体内に設けられ、前記電流が前記味覚器に供給されるように所定の電源(22)の出力を制御する制御装置(40)とを含み、前記筐体は前記ユーザの手首に装着できるように設けられ、前記一対の電極のうち、一方の電極(25)は前記ユーザの手首と接するようにして前記筐体の裏面(21c)側に設けられ、他方の電極(26)は、前記器具の前記通電部とケーブル(30)を介して接続されるものである。
【0053】
上記態様の電流供給装置によれば、筐体をユーザの手首に装着しかつ他方の電極と飲食用の器具の通電部とをケーブルで接続することにより、上記の態様の味覚提示装置を構成することができる。
【0054】
上記形態の電流供給装置においては、上述した態様に係る味覚提示装置と同様の付加的態様を含んでもよい。すなわち、前記他方の電極からの前記ケーブルの引き出し方向が前記筐体の前記裏面側に対して反対側に設定されてもよい。前記他方の電極が、前記筐体の前記裏面側に対する反対側の表面(21d)に設けられてもよい。さらに、前記筐体は、前記ユーザの前記手首に巻き付けるようにして装着するためのバンド(24)を備えてもよい。前記一方の電極と前記ユーザの手首との間に流れる電流を制限する通電制限部が前記一方の電極内、又は前記一方の電極と前記ユーザの手首との間に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 味覚提示装置
10 箸(飲食用の器具)
13 本体(柄状部、絶縁部)
14 通電部
20 電流供給装置
21 筐体
21c 筐体の裏面
21d 筐体の表面
22 電池
23 制御基板
24 バンド
25、26 電極
30 ケーブル
40 制御装置
C1、C2 接続点