(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122758
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】低温液化ガスタンクおよびその構築方法
(51)【国際特許分類】
F17C 3/04 20060101AFI20230829BHJP
B65D 90/02 20190101ALI20230829BHJP
【FI】
F17C3/04 E
B65D90/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026445
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100127797
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 晴洋
(72)【発明者】
【氏名】堀野 聡
(72)【発明者】
【氏名】熊野 友巳
【テーマコード(参考)】
3E170
3E172
【Fターム(参考)】
3E170AA04
3E170AB29
3E170DA01
3E170NA01
3E170QA09
3E170VA01
3E172AA03
3E172AB01
3E172AB04
3E172AB05
3E172AB11
3E172AB15
3E172BA06
3E172BB06
3E172BB12
3E172BB17
3E172BC06
3E172BC07
3E172CA10
3E172CA25
3E172DA04
3E172DA15
3E172DA17
3E172DA23
(57)【要約】
【課題】外槽用パネルの加工性や組み立て性に優れ、大容量化に適応可能な真空断熱構造を備えた低温液化ガスタンクおよびその構築方法を提供する。
【解決手段】低温液化ガスタンク1は、低温液化ガスLGを貯留する内槽12と、複数の外槽パネル2の組立体からなり、内槽12を取り囲む外槽11と、内槽12と外槽11との間の真空断熱層13とを備える。外槽パネル2は、所定間隔を置いて互いに対向する内板21および外板22と、内板21と外板22との間に配設されるハニカム構造体23とを含む。ハニカム構造体23は、ハニカム状に配列された複数本のハニカム中空柱24の集合体からなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温液化ガスを貯留する内槽と、
複数のパネルの組立体からなり、前記内槽を取り囲む外槽と、
前記内槽と前記外槽との間の真空層と、を備え、
前記パネルは、所定間隔を置いて互いに対向する内板および外板と、前記内板と前記外板との間に配設される複数の筒状体とを含む、低温液化ガスタンク。
【請求項2】
請求項1に記載の低温液化ガスタンクにおいて、
前記筒状体は、前記内板への固定側となる第1開口端と、前記外板への固定側となる第2開口端とを有し、
前記内板は、複数の前記筒状体の前記第1開口端が固定可能な板材で形成され、
前記外板は、各々の前記筒状体の前記第2開口端に個別に固定された蓋片の集合で形成されている、低温液化ガスタンク。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の低温液化ガスタンクにおいて、
前記筒状体が角筒体であって、当該角筒体は複数個を隙間無く配設可能な形状を有する、低温液化ガスタンク。
【請求項4】
請求項3に記載の低温液化ガスタンクにおいて、
前記角筒体が、断面が正六角形のハニカム中空柱である、低温液化ガスタンク。
【請求項5】
低温液化ガスを貯留する内槽と、前記内槽を取り囲む外槽と、前記内槽と前記外槽との間の真空層と、を備える低温液化ガスタンクの構築方法であって、
一端側に第1開口端を、他端側に第2開口端を有する筒状体を準備し、
前記内槽を作製し、
所定サイズの球形片からなる内板に、複数の前記筒状体の前記第1開口端を各々固定してなるパネル中間体を複数枚作製し、
前記内板同士の接合によって、前記内槽を取り囲むように複数枚の前記パネル中間体を組み立てると共に、前記筒状体の前記第2開口端の各々に蓋片を固定することで前記外槽を作製する、低温液化ガスタンクの構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、低温液化ガスを貯留する低温液化ガスタンクおよびその構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低温の液化ガスを貯留する施設として、多重殻タンクが知られている。一般に多重殻タンクは、低温液化ガスを貯留する内槽と、前記内槽を取り囲む外槽と、前記内槽と前記外槽との間の断熱層とを含む。貯留する低温液化ガスの蒸発率(BOR値)を低値とする観点からは、前記断熱層を真空断熱構造とすることが望ましい(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
真空断熱構造を採用するに際しては、真空外圧に耐えるよう、外槽の板厚の厚肉化が必要となる。容量の大きいタンクを構築する場合は、さらなる外槽の厚肉化が求められる。外槽は、球面加工を施した複数枚の鋼板パネルの溶接によって組み立てられる。しかし、鋼板パネルを過度に厚肉化すると、球面加工や溶接が困難となる。
【0005】
本開示の目的は、外槽用パネルの加工性や組み立て性に優れ、大容量化に適応可能な真空断熱構造を備えた低温液化ガスタンクおよびその構築方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一局面に係る低温液化ガスタンクは、低温液化ガスを貯留する内槽と、複数のパネルの組立体からなり、前記内槽を取り囲む外槽と、前記内槽と前記外槽との間の真空層と、を備え、前記パネルは、所定間隔を置いて互いに対向する内板および外板と、前記内板と前記外板との間に配設される複数の筒状体とを含む。
【0007】
本開示の他の局面に係る低温液化ガスタンクの構築方法は、低温液化ガスを貯留する内槽と、前記内槽を取り囲む外槽と、前記内槽と前記外槽との間の真空層と、を備える低温液化ガスタンクの構築方法であって、一端側に第1開口端を、他端側に第2開口端を有する筒状体を準備し、前記内槽を作製し、所定サイズの球形片からなる内板に、複数の前記筒状体の前記第1開口端を各々固定してなるパネル中間体を複数枚作製し、前記内板同士の接合によって、前記内槽を取り囲むように複数枚の前記パネル中間体を組み立てると共に、前記筒状体の前記第2開口端の各々に蓋片を固定することで前記外槽を作製する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、外槽用パネルの加工性や組み立て性に優れ、大容量化に適応可能な真空断熱構造を備えた低温液化ガスタンクおよびその構築方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る低温液化ガスタンクを示す断面図である。
【
図2】
図2は、前記低温液化ガスタンクの外槽を構成する外槽パネルの分解斜視図である。
【
図4】
図4は、前記外槽パネルを構成するハニカム中空柱、内板および六角蓋片を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、前記外槽パネルを構成するハニカム構造体の平面図である。
【
図6】
図6は、本開示に係る低温液化ガスタンクの構築方法の一例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本開示に係る低温液化ガスタンクおよびその構築方法の実施形態を詳細に説明する。本開示の低温液化ガスタンクは、低温の液化ガスを貯留するタンクであって、多重殻構造を備えたタンクである。以下に示す実施形態では、球形の二重殻タンクを例示する。本開示は、タンクの形態には限定されず、三重殻タンクや、平底の多重殻タンクにも適用可能である。貯留される液化ガスは、例えば液化水素、液体ヘリウム、液体窒素、液化天然ガス又は液化石油ガスなどの低温液化ガスである。とりわけ、本開示に係る低温液化ガスタンクは、液化水素の貯留に好適である。
【0011】
[タンク構造]
図1は、本開示の第1実施形態に係る低温液化ガスタンク1を示す断面図である。低温液化ガスタンク1は、極低温の液化ガスLGを貯留する多重殻タンクである。低温液化ガスタンク1は、球形の二重殻構造を備えたタンク本体10と、タンク本体10をタンク基礎GLよりも高い位置で支持する支柱14とを含む。
【0012】
タンク本体10は、低温液化ガスLGを貯留する貯留空間1Aを有するタンクであって、球形の外槽11と、外槽11に内包された球形の内槽12と、外槽11と内槽12との間に配置される真空断熱層13(真空層)とを含む。外槽11は、その赤道付近で支柱14にて支持されている。内槽12は、ハンガーロッド15を介して外槽11に支持されている。詳しくは、外槽11に一端が固定されたハンガーロッド15の他端が内槽12に固定されることにより、内槽12は外槽11に吊り支持されている。
【0013】
外槽11は、炭素鋼等の金属で構成された密閉体である。外槽11は、内槽12を取り囲むように突き合わせ溶接等により組み立てられた、複数の外槽パネル2の組立体からなる。
図1では、複数の外槽パネル2の一部を図示している。各外槽パネル2は、球形の外槽11の一部を構成するため、球面を持つように曲げ加工されている。後記で詳述するが、本実施形態の外槽11は、所定間隔を置いて互いに対向する内板21および外板22と、内板21と外板22との間に配設される複数の筒状体とを含む。
【0014】
内槽12は、実際に低温液化ガスLGを貯留する槽であって、ステンレス鋼板等の金属で構成された密閉体である。内槽12も、複数のパネルの組立体からなる。内槽12は、真空断熱層13となる所定間隔の空間を置いて外槽11によって取り囲まれている。内槽12は、低温液化ガスLGが貯留される貯留空間1Aを有する。貯留空間1Aの上層部には、低温液化ガスLGから気化したガスが溜まっている。
【0015】
真空断熱層13は、外槽11と内槽12との間隙を真空断熱空間として利用し、内槽12の保冷性を高めるための層である。内槽12の周囲が真空断熱空間とされることで、内槽12に貯留される低温液化ガスLGが液化水素ガスであっても、BOR値を所定の低レートに抑制することが可能となる。真空断熱層13は、粉体断熱材又は固体断熱材を含んでいても良い。例えば、粒状パーライトやグラスウール等の断熱材が真空断熱層13に充填されていても良い。
【0016】
支柱14は、タンク基礎GLから鉛直方向に立設された金属柱である。タンク基礎GLは、少なくとも支柱14の立設箇所に打設されたコンクリート層である。支柱14は、タンク本体10を周方向に所定ピッチで取り囲むように、複数本が立設されている。隣接する支柱14をブレースで連結して、強度補強を図ることが望ましい。なお、支柱14に代えて、スカート構造体でタンク本体10を支持させても良い。
【0017】
以上の通り、本実施形態の低温液化ガスタンク1は、真空断熱層13を備えた真空断熱形式のタンクである。他のタンク形式として、常圧断熱形式のタンクがある。常圧断熱タンクでは、多殻タンク構造の断熱空間が常圧とされると共に、前記断熱空間に保冷用の断熱材が充填され、さらに貯留する低温液化ガスLGと同等又はそれより低い沸点を持つガスが封入される。貯留する低温液化ガスLGが液化天然ガス等である場合、上記常圧断熱タンクにてBOR値を低レートに抑制することが可能である。これは、タンク容量が1万m3を越えるような大型タンクでも同様である。
【0018】
これに対し、貯留する低温液化ガスLGがマイナス253℃での貯蔵が必要となる液化水素ガスである場合は、様相を異にする。液化水素ガスを貯留する場合、低BOR値とするには、高断熱仕様のタンク、つまり上掲の真空断熱形式の低温液化ガスタンク1が必要となる。真空断熱タンクでは、外槽11と内槽12との間隙空間が真空引きされるため、大気圧と接する外槽11に真空外圧が加わることになる。このため、外槽11には真空外圧に耐える板厚を具備させねばならない。
【0019】
外槽11の必要板厚は、タンク容量の大型化に伴い増加する。真空断熱タンクにおいてタンク容量が小さい小型タンクであれば、外槽11の必要板厚は、比較的容易に製作が可能なサイズに設定できる。しかしながら、タンク容量が大きい大型タンクとなると、製作の困難性が増大する。具体的には、外槽11を構成する外槽パネル2において、必要板厚が圧肉すぎる故に球面を持たせる湾曲加工が困難である、外槽パネル2同士の突き合わせ溶接が困難である、といった問題が生じる。このような問題に鑑み、本実施形態の低温液化ガスタンク1は、真空断熱形式を採用しながらもタンク容量の大型化に対応可能なように、外槽パネル2に工夫を加えている。以下、本実施形態の外槽パネル2について詳述する。
【0020】
[外槽パネルの構造]
図2は、低温液化ガスタンク1の外槽11を構成する外槽パネル2の分解斜視図、
図3は組み立てられた状態の外槽パネル2の斜視図である。外槽パネル2は、所定間隔を置いて互いに対向する内板21および外板22と、内板21と外板22との間に配設されるハニカム構造体23とを含む。
【0021】
ハニカム構造体23は、ハニカム中空柱24の集合体からなる。すなわち外槽パネル2は、ハニカム配列された複数のハニカム中空柱24を内板21および外板22で挟持してなるハニカムサンドイッチ構造を有している。ハニカム中空柱24は断面が正六角形の角筒体であり、複数個のハニカム中空柱24をハニカム状に隙間無く配設することで、ハニカム構造体23が構成されている。内板21、外板22およびハニカム中空柱24は、例えば炭素鋼などの高剛性の金属にて形成することができる。
【0022】
ハニカム中空柱24は、その一端側に内板21への固定側となる第1開口端241を、その他端側に外板22への固定側となる第2開口端242を有する。内板21は、複数のハニカム中空柱24の第1開口端241が溶接等で固定可能な平板材で形成されている。内板21には、外槽11の内径に沿う球面を持つように曲げ加工が施される。外板22は、内板21と同様に1枚板で構成しても良いし、
図4および
図5に基づき後述するように、各々のハニカム中空柱24の第2開口端242に個別に蓋片を固定する態様としても良い。
【0023】
ハニカム構造体23は、断面正六角形のハニカム中空柱24に限らず、他の形状を有する筒状体で構成されていても良い。ただし、前記筒状体が角筒体であって、当該角筒体は複数個を隙間無く配設可能な形状を有していることが望ましい。例えば、断面四角形、断面六角形あるいは断面三角形の角筒体の複数個を密に配列してハニカム構造体23を構成しても良い。この場合、隣接する角筒体の側面同士が互いに接触する状態の配列となり、複数の角筒体が高密度に配設されたハニカム構造体23を実現できる。また、複数個の円筒体を可及的に密に配列してなるハニカム構造体23としても良い。これらの中で、断面正六角形のハニカム中空柱24をハニカム配列したハニカム構造体23を内板21および外板22で挟持させてなる外槽パネル2は、最も高剛性化を図り易く、よりタンク容量の大型化に対応し易いので好ましい。
【0024】
[外槽パネルの製造例]
続いて、
図4および
図5を参照して、外槽パネル2の好ましい製造例を説明する。ここでは、外板22が各々のハニカム中空柱24の第2開口端242に個別に固定された六角蓋片25(蓋片)の集合で形成される例を示す。
図4は、外槽パネル2の製造過程を示す図であって、ハニカム中空柱24、内板21および六角蓋片25を示す斜視図である。
図5は、外槽パネル2を外板22側から見た平面図である。
【0025】
先ず、内板21に複数のハニカム中空柱24をハニカム配列状態で固定する。内板21は、外槽11の一部を構成する所定サイズの球形片の形状を有するように、予め曲げ加工が施される。タンク本体10のサイズに比べて、外槽パネル2のサイズは小さいので、1枚の内板21に対する前記曲げ加工は、曲率の小さい曲げ加工となる。内板21に対し、ハニカム中空柱24の第1開口端241が溶接により固定される。
【0026】
一つのハニカム中空柱24は、一対の半割れ片24Aの組み合わせにより形成される。一つの半割れ片24Aは、6つの側面を有するハニカム中空柱24のうち、3つの側面を有している。半割れ片24Aの上端および下端には、溶接用の開先加工が施されることが望ましい。組み立ての一例を挙げると、先ずは内板21上に一方の半割れ片24Aを立設すると共に、当該半割れ片24Aの下端を内板21に溶接する。
図4では、前記溶接の部分を、溶接部WEとして図示している。溶接部WEは、開先加工を施さず、すみ肉溶接で形成しても良い。
【0027】
続いて、他方の半割れ片24Aを、一つのハニカム中空柱24が形成されるように、固定済みの一方の半割れ片24Aに突き合わせて配置する。他方の半割れ片24Aの下端を内板21に溶接して溶接部WEを作る。さらに、互いに対向する一方の半割れ片24Aの側端縁243と他方の半割れ片24Aの側端縁243とを溶接して、半割れ片24A同士を固定する溶接部WEを作る。半割れ片24Aの側端縁243は、一方および他方の側端縁243の突き合わせ箇所に自然開先が形成されるような形状とされることが望ましい。なお、先に一対の半割れ片24Aを溶接してハニカム中空柱24を形成した上で、当該ハニカム中空柱24を内板21に溶接しても良い。
【0028】
一つのハニカム中空柱24が形成されたら、これに隣接して別のハニカム中空柱24を同様の手順で形成する。最終的には、
図5に示すように、内板21に複数のハニカム中空柱24がハニカム状に密に配列され、ハニカム構造体23が形成される。内板21の周縁付近には、一つのハニカム中空柱24が収まらない箇所が生じ得る。このような箇所には、
図5に示すように半割れ片24Aだけを配置しておくことができる。或いは、空き箇所としておいて、内板21と他の外槽パネル2の内板21とを溶接後に、ハニカム中空柱24を割り入れるようにしても良い。
【0029】
その後、各々のハニカム中空柱24の第2開口端242に、六角蓋片25が固定される。六角蓋片25は、第2開口端242の開口部分を塞ぐサイズを有する、平面視で六角形状を有する平板である。六角蓋片25の前記固定は、第2開口端242に形成した開先、若しくは六角蓋片25の側端縁に形成した開先を利用した溶接によって実現できる。溶接に代えて、締結ボルト等の固定具を用いて六角蓋片25を第2開口端242に固定しても良い。
【0030】
内板21に固定されたハニカム中空柱24の全てに対し六角蓋片25が固定されることで、これら六角蓋片25の集合体が外槽パネル2の外板22を構成する。六角蓋片25の集合体からなる外板22の強度を向上させるため、
図5に示すように、隣接する六角蓋片25の端縁同士を溶接してなる溶接部WEを形成することが望ましい。
【0031】
外槽パネル2を構成する各部の寸法の一例を示しておく。内板21の厚さt1は、曲げ加工や隣接する内板21との突き合わせ溶接が容易に厚さとすることが望ましく、例えば15mm~40mmの範囲から選定できる。外板22、すなわち六角蓋片25の厚さt2は、例えば10mm~30mmの範囲から選定できる。ハニカム中空柱24の厚さt3は、8mm~15mm程度の範囲から、ハニカム中空柱24の高さhは、100mm~200mmの範囲から選定できる。また、一つのハニカム中空柱24の幅wは、タンク本体10の直径にもよるが、2.0m~3.0m程度に設定することができる。
【0032】
以上の通り、本実施形態では、外槽11のセグメントとして用いられる外槽パネル2が、内板21、外板22および複数のハニカム中空柱24からなるハニカム構造体23で構成されるサンドイッチ構造を有する。このようなサンドイッチ構造の外槽パネル2は、中空部分を備える複数のハニカム中空柱24が用いられているゆえ軽量である一方で、ハニカム構造を備える故に高剛性を有する。また、外槽パネル2の球面加工等の加工は内板21または外板22単体で行え、溶接による接続は、隣接する内板21同士若しくは外板22同士で行える。その上、ハニカム配列されたハニカム中空柱24で外槽パネル2の剛性が確保できるので、内板21および外板22の肉厚を薄肉化できる。従って、加工性や組み立て性に優れた低温液化ガスタンク1を提供できる。
【0033】
[タンクの構築方法]
図6は、低温液化ガスタンク1の構築方法の一例を説明するための模式図である。ここでは、専らタンク本体10の構築手順を示す。
図6では、工場サイドでの作業と、タンク設置現場サイドにおける作業とに区分している。工場では、内槽12のセグメントとなる複数の内槽パネルを作製する工程S11と、外槽パネル2の完成前の中間品である外槽パネル中間体20を作製する工程S12との作業が行われる。タンク設置現場では、前記内槽パネルを用いて内槽12を組み立てる工程S21と、外槽パネル中間体20を用いて外槽11を組み立てる工程S22との作業が行われる。
【0034】
工程S11では、例えばステンレス鋼板からなる所定サイズの矩形平板に、内槽12の球径に沿うように曲げ加工を施すことで、内槽パネルが作製される。作製された所要枚数の内槽パネルは、タンク設置現場に搬入される。工程S21では、準備された内槽パネル群を順次球形を形成するように組み上げつつ溶接し、内槽12を組み立てる。内槽12の構築方法は従前と同様であるので、その詳細は割愛する。
【0035】
工程S12では、外槽パネル2を構成する内板21およびハニカム中空柱24が準備される。内板21は、例えば炭素鋼からなる所定サイズの矩形平板である。内板21は、外槽11の内径に沿う球面を持つように曲げ加工が施され、球形片とされる。ハニカム中空柱24は、例えば炭素鋼からなり、
図4に例示したように、内板21への固定側となる第1開口端241と、外板22への固定側となる第2開口端242とを有する六角の筒状体である。
【0036】
外槽パネル中間体20の作製に際しては、曲げ加工が施与された内板21の凸側表面に、複数のハニカム中空柱24をハニカム配列しつつ、それらの第1開口端241を各々溶接にて固定する。
図4に例示したように、一対の半割れ片24Aで一つのハニカム中空柱24を構成する場合、予め一対の半割れ片24Aを溶接で一体化してハニカム中空柱24を作製した後に、内板21に当該ハニカム中空柱24を溶接固定しても良いし、半割れ片24Aの単位で内板21に溶接固定して行くようにしても良い。所要数のハニカム中空柱24を内板21に固定してハニカム構造体23が形成されることで、外槽パネル中間体20の作製が完了する。この工程S12の段階では、ハニカム中空柱24の第2開口端242には、外板22を構成する六角蓋片25は取り付けられない。作製された外槽パネル中間体20は、タンク設置現場に搬入される。
【0037】
工程S22の外槽11の組み立ては、隣接する外槽パネル中間体20の内板21同士を溶接接合する工程S23と、六角蓋片25をハニカム中空柱24に溶接固定する工程S24とを含む。工程S23では、内槽12を取り囲むように複数枚の外槽パネル中間体20を球形に組み立てつつ、隣り合う内板21の側端縁同士を例えば突き合わせ溶接で接合する。
図6では3枚の外槽パネル中間体20が、溶接部WEで接合されている状態を簡略的に示している。実際は、外槽パネル中間体20の接合体は、外槽11の形状に沿うように球形に湾曲した形状を有する。なお、外槽パネル中間体20は、隣り合う内板21同士が十字継手とならない配置で球形に組み立てられる。
【0038】
工程S24では、各々のハニカム中空柱24に対して六角蓋片25が準備される。ハニカム中空柱24の第2開口端242の各々に、六角蓋片25が溶接により固定される。また、
図5に示したように、隣り合う六角蓋片25も溶接で固定される。以上の作業により、外槽11が作製される。なお、内板21の周縁付近でハニカム中空柱24の装填されていない部分があれば、隣り合う内板21に跨がる形で、ハニカム中空柱24を溶接する。この際、内板21同士の溶接部WEと、ハニカム中空柱24と内板21との溶接部WEとが重ならないよう、スカラップを取ることが望ましい。
【0039】
以上説明した低温液化ガスタンク1の構築方法によれば、内板21、外板22およびハニカム構造体23で構成されるサンドイッチ構造を有する外槽パネル2を用いた外槽11の構築作業の一部を工場で行い、残部作業をタンク設置現場で行わせることができる。すなわち、外槽パネル中間体20を工場製作とするので外槽パネル2の作製作業性が向上し、タンク設置現場での溶接作業を抑制できる。結果として、タンク構築の作業性を向上させることができる。また、サンドイッチ構造を有する外槽パネル2を用いた外槽11は、軽量であると共に曲げ加工や溶接が容易に行える一方で、大きな真空外圧に耐える強度を有する。従って、本実施形態の低温液化ガスタンク1は、例えば液化水素ガスを貯留する真空断熱形式を採用した大容量のタンクとして好適である。
【0040】
[本開示のまとめ]
以上説明した具体的実施形態には、以下の構成を有する開示が含まれている。
【0041】
本開示の一局面に係る低温液化ガスタンクは、低温液化ガスを貯留する内槽と、複数のパネルの組立体からなり、前記内槽を取り囲む外槽と、前記内槽と前記外槽との間の真空層と、を備え、前記パネルは、所定間隔を置いて互いに対向する内板および外板と、前記内板と前記外板との間に配設される複数の筒状体とを含む。
【0042】
この低温液化ガスタンクによれば、外槽の構成部材として、内板、外板および複数の筒状体で構成されるサンドイッチ構造を有するパネルが用いられる。このようなサンドイッチ構造のパネルは、複数の筒状体が用いられているゆえ軽量である一方で、高剛性を有する。また、パネルの球面加工等の加工は内板若しくは外板単体で、溶接接続等は、隣接する内板同士若しくは外板同士で行える。その上、複数の筒状体でパネルの剛性が確保できるので内板および外板は薄肉化できる。従って、パネルの加工性や組み立て性に優れた低温液化ガスタンクを提供できる。
【0043】
上記の低温液化ガスタンクにおいて、前記筒状体は、前記内板への固定側となる第1開口端と、前記外板への固定側となる第2開口端とを有し、前記内板は、複数の前記筒状体の前記第1開口端が固定可能な板材で形成され、前記外板は、各々の前記筒状体の前記第2開口端に個別に固定された蓋片の集合で形成されることが望ましい。
【0044】
この低温液化ガスタンクによれば、外板が個々の筒状体に固定される蓋体の集合からなるので、一枚板の外板を用いる場合に比べて、外板と筒状体との接合作業を容易化することができる。また、例えば内板に複数の筒状体を取り付けたパネル中間体を工場で製作し、タンク設置現場で前記パネル中間体を組み立てると共に前記筒状体の第2開口端に蓋片を取り付けることによって外槽を作製するという、作業性に優れるタンク構築が可能となる。
【0045】
上記の低温液化ガスタンクにおいて、前記筒状体が角筒体であって、当該角筒体は複数個を隙間無く配設可能な形状を有することが望ましい。
【0046】
この低温液化ガスタンクによれば、外槽パネルを、ハニカム配列された角筒体を内板および外板で挟持してなるハニカムサンドイッチ構造とすることができる。従って、前記パネルの高剛性化を図ることができ、よりタンク容量の大型化に対応し易い。
【0047】
とりわけ、前記角筒体が、断面が正六角形のハニカム中空柱であることが望ましい。この態様であれば、より一層、パネルの高剛性化を図ることができる。
【0048】
本開示の他の局面に係る低温液化ガスタンクの構築方法は、低温液化ガスを貯留する内槽と、前記内槽を取り囲む外槽と、前記内槽と前記外槽との間の真空層と、を備える低温液化ガスタンクの構築方法であって、一端側に第1開口端を、他端側に第2開口端を有する筒状体を準備し、前記内槽を作製し、所定サイズの球形片からなる内板に、複数の前記筒状体の前記第1開口端を各々固定してなるパネル中間体を複数枚作製し、前記内板同士の接合によって、前記内槽を取り囲むように複数枚の前記パネル中間体を組み立てると共に、前記筒状体の前記第2開口端の各々に蓋片を固定することで前記外槽を作製する。
【0049】
この低温液化ガスタンクの構築方法によれば、外槽構築の一部作業を工場作業とし、残部作業をタンク設置現場で行わせることが可能であり、タンク構築の作業性を向上させることができる。すなわち、内板に複数の筒状体を取り付けたパネル中間体を工場作業で製作し、これをタンク設置現場に搬入する。そして、内板同士の接合によって前記パネル中間体を外槽の形状に組み立てると共に、前記第2開口端に外板を構成する蓋片を取り付けることによって外槽を作製できる。
【符号の説明】
【0050】
1 低温液化ガスタンク
11 外槽
12 内槽
13 真空断熱層(真空層)
2 外槽パネル(パネル)
20 外槽パネル中間体(パネル中間体)
21 内板
22 外板
23 ハニカム構造体
24 ハニカム中空柱(角筒体)
241 第1開口端
242 第2開口端
25 六角蓋片(蓋片)
LG 低温液化ガス