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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122763
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】油性固形化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/31 20060101AFI20230829BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20230829BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20230829BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20230829BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20230829BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20230829BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20230829BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20230829BHJP
   A61Q 1/14 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
A61K8/31
A61K8/25
A61K8/92
A61Q19/10
A61K8/81
A61K8/37
A61K8/86
A61K8/19
A61Q1/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026453
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】592106155
【氏名又は名称】ジェイオーコスメティックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089484
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 靖郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 彰悟
(72)【発明者】
【氏名】小幡 俊介
(72)【発明者】
【氏名】丹野 夕麗
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AB171
4C083AB172
4C083AB442
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC172
4C083AC352
4C083AC422
4C083AD022
4C083AD662
4C083BB04
4C083BB12
4C083BB13
4C083BB21
4C083CC23
4C083CC24
4C083DD21
4C083DD30
4C083EE06
4C083EE07
4C083FF05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】クレンジング性能に優れるとともに、洗い流し後のさっぱり感に優れた脂性肌用、とくに男性用に適した油性固形化粧料を提供する。
【解決手段】(A)融点が50~120℃であり、炭化水素系ワックスを含む固形油を1~20質量%、(B)液状油を50~90質量%、(C)HLB値が6~13の非イオン性界面活性剤を15~40質量%、(D)体積平均粒子径が1~200μmの粉体を0.1~20質量%、および(E)一次粒子径が1~50nmである煙霧状シリカ金属酸化物を0.1~10質量%の割合(化粧料全量中の割合)で含有し、(C)成分と(A)成分との質量比(C)/(A)が2~10である油性固形クレンジング化粧料である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)融点が50~120℃であり、炭化水素系ワックスを含む固形油を1~20質量%、(B)液状油を50~90質量%、(C)HLB値が6~13の非イオン性界面活性剤を15~40質量%、(D)体積平均粒子径が1~200μmの粉体を0.1~20質量%、および(E)一次粒子径が1~50nmである煙霧状シリカを0.1~10質量%の割合(化粧料全量中の割合)で含有し、(C)成分と(A)成分との質量比(C)/(A)が2~10である油性固形クレンジング化粧料。
【請求項2】
前記炭化水素系ワックスがフィッシャートロプシュワックスである請求項1に記載の油性固形クレンジング化粧料。
【請求項3】
前記非イオン性界面活性剤のHLB値が8~13であり、化粧料全体に対する(C)成分の含有量が18~40質量%である請求項1または2に記載の油性固形クレンジング化粧料。
【請求項4】
前記(A)成分の化粧料全体に対する含有量が1~10質量%である請求項1~3のいずれかに記載の油性固形クレンジング化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油性固形クレンジング化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、口紅、ファンデーション、アイシャドウ、マスカラ等のメイクアップ化粧料において、耐水性および耐油性がともに優れた製品が開発され、化粧持ちが著しく向上している。そのため、メイクアップ化粧料による化粧膜を落とすに当たっては、メイク(肌上の化粧膜)とのなじみがよく、角質や皮脂等の汚れを除去する性能(汚れ落ち性)に優れた油性クレンジング化粧料が用いられている。油性クレンジング化粧料の具体例としては、クレンジングオイル、ゲル状クレンジング剤、クレンジングクリーム等があるが、そのうちでも、常温で固形状の油性クレンジング化粧料は、使用時の垂れ落ちがなく、メイクとなじませる際のマッサージがしやすいという特長を有しており、その開発が鋭意進められている。
【0003】
特許文献1には、(A)融点が50~120℃である固形油分を1~30質量%、(B)液状油分を50~97質量%、(C)HLB値が5~13の非イオン性界面活性剤を3~30質量%、(D)体積平均粒子径が1~200μmの粉体を0.1~20質量%、および(E)煙霧状シリカを0.01~10質量%の割合(全化粧料基準)で配合すると、洗い流しやすさと洗い流し後のさっぱり感に優れた油性固形クレンジング化粧料が得られる旨記載されている。しかし、この化粧料を脂性肌の女性や一般的に女性に比べて皮脂量の多い男性が使用すると、依然としてべたついた使用感を覚えることがありさらに高い洗い流し後のさっぱり感が求められていた。
【0004】
また、油性クレンジング化粧料の成分として用いられる固形油についての検討も行われており、特許文献2には、炭化水素系ワックスであるフィッシャートロプッシュワックスとエステル系固形油であるベヘン酸ベヘニルを組み合わせた固形油は、低融点でありながら高いオイル固化能を有する旨記載されている。しかし、本発明者らの検討によると、この化粧料を脂性肌の女性や男性が使用すると、依然としてべたついた使用感があることが判明した。
【0005】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-026420号公報
【特許文献2】特開2021-143133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような背景技術の下に完成したものであり、その目的は、男性や、脂性肌の女性が使用してもべたつかずに洗い流し後のさっぱり感に優れた油性固形クレンジング化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明者らは、かかる課題を解決すべく鋭意研究した結果、炭化水素系ワックスを含む固形油を使用し、かつ、該固形油に対する特定HLB値の非イオン性界面活性剤の質量比を制御すると上記要求を満たすことができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
かくして本発明によれば、(A)融点が50~120℃であり、炭化水素系ワックスを含む固形油を1~20質量%、(B)液状油を50~90質量%、(C)HLB値が6~13の非イオン性界面活性剤を15~40質量%、(D)体積平均粒子径が1~200μmの粉体を0.1~20質量%、および(E)一次粒子径が1~50nmである煙霧状シリカを0.1~10質量%の割合(化粧料全量中の割合)で含有し、(C)成分と(A)成分との質量比[(C)/(A)]が2~10である油性固形クレンジング化粧料が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の油性固形クレンジング化粧料は、べたつきのない使用感とクレンジング力に優れ、さらに、洗い流しやすさと洗い流し後のさっぱり感に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(A:固形油分)
本発明において(A)成分の固形油分は常温(25℃)で固体の油であり、少なくとも一部の成分として炭化水素系ワックスを含むものである。固形油分中の炭化水素系ワックスの含有量は5質量%以上であることが好ましく、より好ましくは20~95質量%、さらに好ましくは30~90質量%である。炭化水素系ワックスの含有量がこの範囲にあることにより、少量の固形油で液状油を固められるため、固形油の含有量を少なくすることができ、そのため肌に固形油が残りにくく、良好な洗い流し後のさっぱり感が得られる。
【0012】
固形油分の融点は50~120℃、好ましくは55℃~105℃、より好ましくは60~100℃である。固形油分の融点は、医薬部外品原料規格の一般試験法である融点測定法第2法によって測定することができる。融点が過度に低い場合は、(B)成分の液状油を均一に固化させることができず、また、油性固形クレンジング化粧料の輸送時や携帯時に振動や衝撃で液状化したり、保形性が悪く固形の形状を維持することができない。逆に、融点が過度に高い場合は、組成物が硬くなりクレンジング化粧料として使用する際に指取れが悪くなるとともに、溶融させる際に高温での操作が必要になるため(B)成分および(C)成分の酸化劣化を引き起こしやすくなる。
【0013】
固形油分の必須成分である炭化水素系ワックスとしては、例えば、パラフィンワックス、ポリエチレン、エチレン-プロピレンコポリマー、マイクロクリスタリンワックス、セレシン、オゾケライト、フィッシャートロプシュワックス等が挙げられる。これらの中でも少量で液状油を固化する能力の高いフィッシャートロプシュワックスおよびポリエチレンを好適に用いることができる。炭化水素系ワックスの市販品としては、パラフィンワックスである日本精鑞社製のパラフィンワックス135、パラフィンワックス140、パラフィンワックス150、HNP-11;マイクロクリスタリンワックスである日本精鑞社製のHNP-9、Hi-Mic-2065、Hi-Mic-1070、Hi-Mic-1080、Hi-Mic-1090、HNP-0190、Sonneborn社製のMultiwax W-445;ポリエチレンワックスであるNEW PHASE TECHNOLOGIES社のPERFORMALENE 400、PERFORMALENE 500、PERFORMALENE 655;合成ワックス(フィッシャートロプシュワックス)であるCIREBELLE社のCIREBELLE 108、CIREBELLE 305等が挙げられる。
【0014】
固形油分は炭化水素系ワックスのみで構成してもよいが、所望によりその他の固形油を含むことができる。炭化水素系ワックスと併用可能な固形油分としては、モクロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、ミツロウ(ビーズワックス)等のロウ類、水添ホホバ油、ベヘン酸ベヘニル、水添ヒマシ油、硬化油、高級アルコール、シリコーンワックス等が挙げられる。それらの市販品としては、キャンデリラワックスであるセラリカNODA社の精製キャンデリラワックスNO.1、キャンデリラNC1630、横関油脂工業社の精製キャンデリラワックスCG-7、精製キャンデリラワックスSR-3、日本ナチュラルプロダクツ社の精製キャンデリラワックスCG-7、精製キャンデリラワックスSR-3、日本ナチュラルプロダクツ社の高融点キャンデリラワックスFR100;ベヘン酸ベヘニルである理研ビタミン社製のベヘン酸ベヘニル等が挙げられる。
【0015】
上記(A)成分は単一の化合物で構成されたものでもよいし、また、二種以上の化合物を適宜組み合わせて構成されたものであってもよい。なかでも炭化水素系ワックス、とくにフィッシャートロプシュワックスとベヘン酸ベヘニルを組み合わせて用いると、固形油の融点を下げ、かつ、高いオイル固化能を発揮する。フィッシャートロプシュワックスとベヘン酸ベヘニルを併用する場合、ベヘン酸ベヘニル(b)とフィッシャートロプシュワックス(f)との比率[(b):(f)]]は、質量比で10:90~90:10、とくに20:80~90:10であることが好ましい。
【0016】
(A)成分の含有量は、油性固形化粧料全体に対して1~20質量%であり、好ましくは2~15質量%、より好ましくは3~10質量%である。(A)成分が過度に少ないと保形性が十分ではなくなるとともに、軟らかすぎて、マッサージ効果が低下する。逆に、過度に多い場合にはべたつきを感じるとともに、洗い流しにくくなり、洗い流し後のさっぱり感が低下する。
【0017】
(B)液状油
本発明で用いられる(B)液状油は、融点50℃未満の常温において半固形状~液状の油分である。通常の化粧料に用いられるものであれば特に制限されず、動物油、植物油、合成油のいずれであってもよい。液状油の具体例としては、パルミチン酸エチルヘキシル、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、トリエチルヘキサノイン、炭酸ジカプリリル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、デカイソステアリン酸デカグリセリル、ダイマー酸とダイマージオールとのオリゴマーエステル、テトライソステアリン酸ペンタエリトリット、テトライソステアリン酸ジグリセリル、エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレステロール脂肪酸エステル、ホホバ油等のエステル類; 揮発性イソパラフィン、ポリブテン、ポリイソブチレン、重質流動イソパラフィン、流動パラフィン、α-オレフィンオリゴマー、スクワラン、ワセリン等の炭化水素類; オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類; イソステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸類; オレイルアルコール、イソステアリルアルコール等の高級アルコール類; 低重合度ジメチルポリシロキサン、環状シリコーン、高重合度ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルトリメチコン、カプリリルトリメチコン、架橋型オルガノポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等のシリコーン油類; パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤類; ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体類;等が挙げられる。
【0018】
メイク汚れの除去性および洗い流しやすさの点からエステル類の使用が好ましく、パルミチン酸エチルヘキシル、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、トリエチルヘキサノイン、炭酸ジカプリリルが好ましく用いられる。
【0019】
油性固形クレンジング化粧料全量中、(B)液状油の含有量は、50~97質量%であり、好ましくは、55~95質量%、より好ましくは、60~92質量%である。液状油の含有量がこの範囲にあることにより、良好なクレンジング性能(メイク落ちの良さ)を達成することができる。
【0020】
(C)非イオン性界面活性剤
本発明の油性固形クレンジング化粧料においては、(C)成分としてHLB値が6~13の範囲にある非イオン性界面活性剤が用いられる。ここで「HLB値が6~13の範囲にある非イオン性界面活性剤」とは、HLB値が6~13の範囲にある1種の非イオン性界面活性剤であるか、その範囲のHLB値を有する複数の非イオン性界面活性剤の組合せである。本発明において、HLB値がこの範囲以外の非イオン性界面活性剤を含んでも良いが、洗い流し後のさっぱり感の点から、HLB値が6未満の非イオン性界面活性剤の含有量は、化粧料全体に対し、1質量%以下であることが好ましい。
【0021】
なお、HLBとは親水性と親油性のバランスを0~20までの値で示す指標であり、0に近づくほど親油性が高く、20に近づくほど親水性が高いことを示している。HLB値の算出法としては種々の計算法が知られている他、製造元から提供されるカタログ等にその値が記載されている。本明細書においては、非イオン性界面活性剤のHLB値は、非イオン性界面活性剤が市販品である場合には、メーカーカタログ記載のHLB値を採用しており、また、市販品ではない場合には、「界面活性剤便覧」第307頁(産業図書株式会社出版、1960年発行)に記載されているグリフィン(Griffin)の方法(HLB値=20×親水部の式量の総和/分子量)により算出した数値を採用している。
【0022】
非イオン性界面活性剤のHLB値が6未満の場合は、肌の上でメイクをクレンジング化粧料になじませた後に水またはぬるま湯で洗い流そうとしても、水とのなじみが悪いためにきれいに洗い流すことができず、洗い流し後のさっぱり感が得られない。逆に、HLB値が13を越える場合には、疎水性のメイクをクレンジング化粧料になじませることができず、メイク落ちが不十分となる。中でも、HLB値が7~11の範囲にあると、メイク落ちおよび洗い流しやすさが良好である。(C)成分の非イオン性界面活性剤は、固体状、液状のいずれでもよいが、25℃で液状の非イオン性界面活性剤を使用するとメイク落ちおよび洗い流しやすさの点でより優れた性能が得られる。
【0023】
(C)成分として用いるHLB値が6~13の非イオン性界面活性剤の具体例としては、ステアリン酸ポリグリセリル-4、オレイン酸ポリグリセリル-2、イソステアリン酸ポリグリセリル-2、ジステアリン酸ポリグリセリル-10等のポリグリセリン脂肪酸エステル; PEG-10水添ヒマシ油、PEG-20水添ヒマシ油等のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油; ステアリン酸PEG-5等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル; オレス-3、ステアレス-6等のポリオキシエチレンアルキルエーテル; イソステアリン酸ラウレス-8、ステアリン酸ステアレス-12等の脂肪酸ポリオキシエチレンアルキルエーテル; トリステアリン酸PEG-15グリセリル、トリイソステアリン酸PEG-5グリセリル、トリイソステアリン酸PEG-10グリセリル、トリイソステアリン酸PEG-20グリセリル、トリステアリン酸PEG-20グリセリル等のポリオキシエチレン脂肪酸グリセリル; イソステアリン酸PEG-15水添ヒマシ油、トリイソステアリン酸PEG-20水添ヒマシ油等の脂肪酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;等が挙げられる。その他にもソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマーと長鎖アルコールとのエーテル、ポリブチレングリコールポリグリセリンコポリマーと長鎖アルコールのエーテル等を挙げることができる。中でも、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリル、脂肪酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油および脂肪酸ポリオキシエチレンアルキルエーテルが、メイク落ちおよび洗い流しやすさの観点から好ましく用いられる。
【0024】
(C)成分として用いる非イオン性界面活性剤が分子中に脂肪酸残基を有する場合、その脂肪酸残基としては、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸等のような炭素数10~22の高級脂肪酸の残基であることが好ましく、中でも非イオン性界面活性剤の性状が液状となり、耐酸化安定性に優れる分岐高級脂肪酸の残基であることが好ましく、特にイソステアリン酸残基が好ましい。
【0025】
(C)成分として用いる25℃で液状の非イオン性界面活性剤の市販品としては、例えば、エマレックスRWIS-320(トリイソステアリン酸PEG-20水添ヒマシ油;日本エマルジョン社製;HLB値 6)、ユニオックスGT-20IS(トリイソステアリン酸PEG-20グリセリル;日油社製;HLB値 10.4)等があり、また、25℃で固体状の市販品としては、例えば、エマレックスGWS-320(トリステアリン酸PEG-20グリセリル;日本エマルジョン社製;HLB値 8)、エマレックスSWS-12(ステアリン酸ステアレス-12;日本エマルジョン社製;HLB値 8)、エマレックス608(ステアレス-8;日本エマルジョン社製;HLB値 9)等がある。
【0026】
(C)成分の使用量は、油性固形クレンジング化粧料全量中に15~40質量%、好ましくは15~35質量%、より好ましくは18~30質量%である。この量が過度に少ない場合は洗い流しやすさおよび洗い流し後のさっぱり感が低下し、過度に多い場合は皮膚への刺激が懸念される。
【0027】
本発明の油性固形クレンジング化粧料においては、(C)成分の非イオン性界面活性剤と(A)成分の固形油との質量比[(C)/(A)]は、2~10であり、好ましくは2.2.5~8、さらに好ましくは3~7である。[(C)/(A)]の値が過度に小さい場合には、洗い流し後においても固形油が肌に残りやすく、洗い流し後のさっぱり感が得られない。過度に大きい場合には、乾燥感や皮膚への刺激が懸念される。
【0028】
(D:粉体)
本発明においては、上記(A)~(C)成分に加えて、(D)成分として粉体が用いられる。本発明に用いられる粉体は、体積平均粒子径として1~200μm、好ましくは2~100μm、より好ましくは5~50μmを有するものである。このような平均粒子径の粉体を適量配合することにより、メイク汚れの吸着やマッサージ時の適度な摩擦の付与に寄与するとともに、メイク落ち、マッサージ効果の向上に寄与し、余分な皮脂も吸着するため、特に洗い流し後のさっぱり感を向上させる。粉体の体積平均粒子径が過度に小さい場合は、メイク落ちやマッサージのし易さの改善効果が得られない。逆に、過度に大きい場合は、マッサージ時に刺激を感じることがあり、また、化粧料を製造する際に粉体の沈降が生じ易くなる。そのため粉体の分散が不均一となって、製品の外観や品質の安定性を損なうことになる。
【0029】
本発明において、体積平均粒子径は、レーザー回折/散乱粒度分布測定装置(例えば堀場製作所製LA-950)を用いて、95容量%のエタノールを溶媒とし、5分間超音波分散(本多電子社製超音波洗浄機W-113、28kHz)して測定されるものであり、1次粒子径を指すものではない。
【0030】
(D)成分の配合量は、全化粧料に対して0.1~20質量%、好ましくは0.2~15質量%、さらに好ましくは1~10質量%である。この範囲で(D)成分を含むと、メイク落ちとマッサージ効果が改善される。
【0031】
(D)成分の粉体は、化粧料に使用可能なものであれば特に限定されるものではなく、その材質(有機、無機等)、形状(球状、針状、板状等)や粒子構造(多孔質、無孔質等)の如何を問わずいずれのものも使用できる。なかでも、粉体が多孔質であったり、比表面積が大きいものはメイク汚れや余分な皮脂を吸着する性能に優れているので、好ましく用いられる。
【0032】
(D)成分の粉体としては、たとえば、タルク、白雲母、合成雲母、金雲母、合成フッ素金雲母、セリサイト、ゼオライト、カオリン、ベントナイト、サポナイト、ヘクトライト、天然クレイ、海泥、活性白土等の粘土鉱物; ケイ酸、無水ケイ酸(シリカ)、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、窒化ホウ素、オキシ塩化ビスマス、アルミナ、酸化ジルコニウム、ヒドロキシアパタイト等の無機酸化物または無期塩; シリコーン粉末、シリコーン弾性粉末、ポリウレタン粉末、セルロース粉末、ナイロン粉末、シルク粉末、PMMA粉末、スターチ、ポリエチレン粉末、ラウロイルリシン、金属セッケン、植物粉末(アンズ核粒、クルミ核粒、グルコマンナン粉体等)等の有機粉体; 活性炭、薬用炭、竹炭等の炭粉体;およびこれらの複合体や造粒物を例示することができる。
【0033】
これらの中でも粘土鉱物または炭粉末を使用すると、メイク落ち、洗い流し後のさっぱり感において一段と良好なクレンジング化粧料を得ることができる。粘土鉱物である天然クレイおよび海泥は、産出地によって組成や色相が必ずしも同一ではないが、いずれもカオリン、モンモリロナイト、マイカ等の混合物である。天然クレイや海泥の具体例としては、モロッコ溶岩クレイ、タナクラクレイ、パラオ白泥、ブラジル産のSparclay(商品名)及びTersil(商品名)、フランス産のClargile(商品名)等が挙げられる。
【0034】
本発明においては、さらに(E)成分として煙霧状シリカを含有する。固形油分を含む配合物でクレンジング化粧料を製造するには、均一に混合された溶融状態にある配合物を所定の容器に充填した後、冷却して固化する工程が必要である。(D)成分の粉体を含む配合物の場合、容器に充填された配合物が速やかに固化すれば粉体の分散状態を均一に保つことができる。たとえば、口紅のようなメイクアップ化粧料は、一般的に製品の重量が数グラムであるため充填から固化までが極めて短時間であり、配合物中に含まれている紛体の分散性が損なわれるリスクは少ない。しかし、クレンジング化粧料の場合は、製品当たりの重量が100グラム程度またはそれを超えるものが一般的であるため、配合物を充填した容器を外側から冷風等で冷却しても固化までの所要時間が長く、その間に粉体成分の沈降を起こすことがある。粉体成分が沈降すると、粉体成分の分散が不均一になり、化粧料の上下方向に粉体成分の含有率の偏りが発生する。その結果として、化粧料の外観が損なわれるとともに、品質の安定性も損なわれることになる。
【0035】
(E)成分の煙霧状シリカはフュームドシリカとも称される微細な非晶質のシリカであり、外観はふわふわとした軽い白色の粉末である。煙霧状シリカは、例えば、四塩化ケイ素のような原料を酸水素炎中で高温加水分解して得ることができる。煙霧状シリカの一次粒子径は1~50nmであり、3~25nmであることが好ましく、5~15nmであることがとくに好ましい。一次粒子径が過度に大きい場合は、クレンジング化粧料の製造工程において配合物を溶融充填する際に(D)成分の沈降を効果的に抑制することができない。一次粒子径は、透過電子顕微鏡写真または電解放出型走査電子顕微鏡写真により測定した30~50個の粒子の平均値として求めることができる他、製造元から提供されるカタログ等にその値が記載されている。本明細書においては、煙霧状シリカの一次粒子径は、メーカーカタログに記載されている値を採用している。また煙霧状シリカの比表面積は、好ましくは30m/g以上であり、さらに好ましくは50~400m/gであり、とくに好ましくは、100~400m/gである。比表面積が過度に小さい場合は、クレンジング化粧料の製造工程において配合物を溶融充填する際に(D)成分の沈降を効果的に抑制することができない。
【0036】
(E)成分の配合量は、全化粧料に対して0.01~10質量%、好ましくは0.1~5質量%、さらに好ましくは0.2~3質量%である。また、(D)成分に対する(E)成分の割合(E/D)は、0.01~10であることが好ましく、より好ましくは0.05~5である。(E)成分の配合量が上記の範囲であると、化粧材中に含まれる(D)成分の分散状態が向上し、クレンジング化粧料の製造工程において配合物を溶融充填する際に(D)成分の沈降を効果的に抑制することができる。
【0037】
(E)成分は親水性を示す未処理の煙霧状シリカであっても、疎水化処理を施した煙霧状シリカであってもよい。疎水化処理の具体例としてはジメチルジクロロシラン処理、トリメチルシリルクロライドやヘキサメチルジシラザンによるトリメチルシロキシ処理、オクチルシラン化処理、ジメチルシリコーンオイル処理、メチルハイドロジェンポリシロキサンを用いたコーティング焼付け処理、金属石鹸によるコーティング等が挙げられる。これらの煙霧状シリカのなかでも、洗い流しやすさの観点から未処理のものが好ましく用いられる。
【0038】
(E)成分の市販品としては、未処理の煙霧状シリカとしてAEROSIL 50、AEROSIL 130、AEROSIL 200、AEROSIL 200V、AEROSIL 200CF、AEROSIL 200FAD、AEROSIL 300、AEROSIL 300CF、AEROSIL 380、AEROSIL 380S(以上、日本アエロジル社製)等;疎水化処理したものとして、AEROSIL R972、AEROSIL R972V、AEROSIL R972CF、AEROSIL R974、AEROSIL R976S、AEROSIL RX200、AEROSIL RX300、AEROSIL RY200、AEROSIL R202、AEROSIL R805、AEROSIL R812、AEROSIL RA200H(以上、日本アエロジル社製)、CAB-O-SIL TS530(キャボット社製)等が挙げられる。
【0039】
本発明の油性固形クレンジング化粧料においては(F)成分として少量の水を含んでいてもよい。水の含有量は化粧料全体の5質量%以下であることが好ましく、その範囲であれば(C)成分の非イオン性界面活性剤と水とが可溶化状態、すなわち、分散媒として油性成分が存在し、(C)成分と水が逆ミセルとなった状態を形成する。その結果、(C)成分の非イオン性界面活性剤が油剤に溶解し易くなり、長期間の保存においても(C)成分の分離や析出が起こらず、保存安定性が向上する。とくに、水の含有量が0.02~3質量%のときに、その効果は顕著である。
【0040】
本発明の油性固形クレンジング化粧料は、通常の化粧料に用いられる成分、例えば、(D)成分以外の粉体、染料、油性ゲル化剤、油溶性樹脂、多価アルコール類、低級アルコール、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、保湿剤、香料、酸化防止剤、防腐剤、消泡剤、美容成分、各種エキス等の添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。
【0041】
本発明の油性固形クレンジング化粧料は、常温(25℃)、常圧(1気圧)で流動性を示さないものであり、その形状は特に限定されない。形状の具体例としては、スティック状、棒状、板状、容器への流し込み成形したもの等が挙げられる。これら各種のクレンジング化粧料は、常法にしたがって調製することができる。例えば、全原料を融点以上に加熱し、均一に混合した後、溶融状態のまま容器や金型等に流し込み、冷却または放冷し、油性固形クレンジング化粧料とすることができる。
【0042】
本発明の油性固形クレンジング化粧料は、べたつきがなく、洗い流し後のさっぱり感に優れることから脂性肌用、とくに男性用のクレンジング化粧料として好適に使用することができる。本発明の油性固形クレンジング化粧料は、メイク落としの機能に加えて、マッサージ化粧料に求められる特性、すなわち、適度な粘性と滑り性および滑り性の持続性を備えている。そのため、本発明の油性固形クレンジング化粧料とは別に、マッサージ化粧料としても使用することができる。本発明の油性固形クレンジング化粧料を使用するに際しては、メイクに化粧料をなじませた後、水またはぬるま湯で洗い流すことによってメイクを除去することができる。そのため、従来の油性固形クレンジング化粧料を使用する際には、使用後に必要と考えられていたセッケン等の洗顔料による洗顔操作を省くことが可能である。
【実施例0043】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下の記載における処方中の配合量は、特に断りのない限り全量に対する質量%である。また、以下の実施例および比較例における本発明の油性固形クレンジング化粧料の評価方法は、以下のとおりである。
【0044】
(べたつきのなさ、メイク落ちの良さ、洗い流しやすさ、洗い流し後のさっぱり感)
20~40代男性評価パネル10名が市販の肌色日焼け止めクリーム(ACRO社製、ファイブイズムバイスリー FFコントロール UV ツール)を肌に塗布した後、評価用のサンプルでクレンジングを行い、各項目について下記(1)に示す評価基準に基づき1~5の5段階で評点を付けた。評価者10名の評点の平均値を算出し、下記(2)に示す4段階判定基準によりクレンジング化粧料としての性能を判定した。
【0045】
(1)評価基準
5点:良い
4点:やや良い
3点:どちらとも言えない
2点:やや悪い
1点:悪い
【0046】
(2)4段階判定基準
A:平均点が4以上5以下
B:平均点が3以上4未満
C:平均点が2以上3未満
D:平均点が2未満
【0047】
実施例1~3および比較例1~4
(油性固形クレンジング化粧料)
表1に示す処方の油性固形クレンジング化粧料を下記の製造手順に従って調製した。得られた油性固形クレンジング化粧料について、べたつきのなさ、メイク落ちの良さ、洗い流しやすさ、洗い流し後のさっぱり感を上記の方法により評価した。評価結果は表3に示すとおりである。
【0048】
(製造手順)
(1)表1に示す1~13の成分を82℃に加熱し、均一に混合する。
(2)上記(1)で調製した混合液を、溶融状態のまま70℃でジャー容器に充填した後、放冷して油性固形クレンジング化粧料とする。
【0049】
【表1】
【0050】
表1に示すように、実施例1~2の油性固形クレンジング化粧料は、べたつきのなさ、メイク落ちの良さ、洗い流しやすさ、および洗い流し後のさっぱり感に優れていた。また、実施例3の油性固形クレンジング化粧料は、べたつきのなさ、メイク落ちの良さ、および洗い流しやすさに優れており、洗い流し後のさっぱり感も良好であった。それに対し、(C)成分の含有量が低く、[(C)/(A)]比が2を下回る油性固形クレンジング化粧料は、洗い流しやすさおよび洗い流し後のさっぱり感に劣っていた(比較例1)。また、(D)成分および(E)成分を含有しない油性固形クレンジング化粧料((比較例2)は、洗い流しやすさおよび洗い流し後のさっぱり感に大きく劣るものであった。さらに、実施例1に比べて(A)成分の含有量が高く、[(C)/(A)]比が2を下回る油性固形クレンジング化粧料(比較例3)、および実施例3に比べて(A)成分の含有量が高く、(C)成分の含有量が低い油性固形クレンジング化粧料(比較例4)は、洗い流しやすさ、および洗い流し後のさっぱり感に劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によれば、クレンジング性能に優れるとともに、洗い流し後のさっぱり感に優れた、脂性肌用、とくに男性用に適した油性固形化粧料が提供される。