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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122777
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】湿式処理用ワークホルダ
(51)【国際特許分類】
   C25D 17/06 20060101AFI20230829BHJP
   C25D 17/08 20060101ALI20230829BHJP
   C23C 18/31 20060101ALI20230829BHJP
   C25D 7/12 20060101ALI20230829BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
C25D17/06 C
C25D17/08 A
C23C18/31 E
C25D7/12
H01L21/304 642A
H01L21/304 648A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026472
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】509154420
【氏名又は名称】株式会社NSC
(72)【発明者】
【氏名】大久保 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】森本 悠介
(72)【発明者】
【氏名】羽鳥 宏隆
(72)【発明者】
【氏名】平野 竣也
【テーマコード(参考)】
4K022
4K024
5F157
【Fターム(参考)】
4K022AA03
4K022AA05
4K022BA08
4K022DA01
4K024AA09
4K024BA15
4K024BB11
4K024CB02
5F157AB02
5F157AB03
5F157AB14
5F157AB20
5F157AB34
5F157BB02
5F157DB37
5F157DC90
(57)【要約】
【課題】処理するワークの形状やサイズや数量等にかかわらず適正に湿式処理をすることが可能な汎用性の高い湿式処理用ワークホルダを提供する。
【解決手段】 ワークホルダ10は、湿式処理されるワーク50を支持するように構成される。ワークホルダ50は、ホルダ本体12、吊り下げ部14、ワーク支持部16,18、および脚部30,125を少なくとも備える。吊り下げ部14は、ホルダ本体12を湿式処理領域内で吊り下げ支持するように構成される。ワーク支持部16,18は、ホルダ本体12に位置調整自在な状態で支持されるとともに、ワーク50を支持するように構成される。脚部30,125は、ホルダ本体12を自立させるように構成される。ワーク支持部16,18は、ワーク50を支持するように構成された位置調整自在なワーク受け具20を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿式処理されるワークを支持するための湿式処理用ワークホルダであって、
ホルダ本体と、
前記ホルダ本体を湿式処理領域内で吊り下げ支持するための吊り下げ部と、
前記ホルダ本体に位置調整自在な状態で支持されるとともに、前記ワークを支持するように構成されたワーク支持部と、
前記ホルダ本体を自立させるように構成された脚部と、
を少なくとも備え、
前記ワーク支持部は、前記ワークを支持するように構成された位置調整自在なワーク受け具を有することを特徴とする湿式処理用ワークホルダ。
【請求項2】
前記ホルダ本体が板状を呈しており、
前記ワーク支持部が、前記ホルダ本体に位置調整自在に取り付け自在な細長い板状を呈するワーク支持部材であり、
前記ワーク受け具が、ワーク支持部材に複数設けられることを特徴とする請求項1に記載の湿式処理用ワークホルダ。
【請求項3】
前記ワーク受け具は、ワークを支持するように構成された支持溝を有しており、前記ワーク支持部材に対して回動自在およびスライド自在に支持されることを特徴とする請求項2に記載の湿式処理用ワークホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿式処理されるワークを支持するための湿式処理用ワークホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス基板やシリコン基板等のワークに金属膜を成膜する際には、無電解めっきが採用されることが多かった。無電解めっき処理を行う場合、ワークをめっき液に接触させるために、ワークを支持するワークホルダを吊り下げた状態でめっき浴内に浸漬させることが多かった。
【0003】
ところが、ワークホルダに支持されたワークに接触するめっき液が滞留している場合、古くなっためっき液が新たなめっき液に置換されないため、ワークの表面への金属イオンの供給が円滑に行われないという不都合が発生することがあった。
【0004】
そこで、従来技術の中には、ワークを処理液に浸漬させた状態で上昇および下降させることが可能なワークホルダ送り機構を採用する湿式処理装置があった。このような構成を採用することによって、均一なワークの表面処理を実現することが可能になるとされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-179747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のワークホルダは同一形状で同一サイズのワークを処理すること想定して専用のワークホルダを用いているため、形状やサイズが異なる複数のワークを処理することには向いていなかった。
【0007】
また、通常はワークホルダごとに収納可能数量が固定されているため、開発試作のために少量のワークを処理したり、イレギュラーな数のワークを処理する必要が発生したりする場合に対応しにくいという不都合があった。
【0008】
本発明の目的は、処理するワークの形状やサイズや数量等にかかわらず適正に湿式処理をすることが可能な汎用性の高い湿式処理用ワークホルダを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る湿式処理用ワークホルダは、湿式処理されるワークを支持するためのものである。湿式処理の代表例として無電解めっき処理が挙げられるが、これ以外にも洗浄処理、エッチング処理等にも用いることが可能である。
【0010】
この湿式処理用ワークホルダは、ホルダ本体、吊り下げ部、ワーク支持部、および脚部を少なくとも備える。ワークホルダの材質の例としては、ステンレス鋼が挙げられるが、必要となる耐食性や加工性や強度等の条件を満たす場合には、他の金属や樹脂等その他の材料を採用することも可能である。
【0011】
吊り下げ部は、ホルダ本体を湿式処理領域(例:無電解めっき処理のめっき浴内、エッチング処理のエッチング槽内等)内で吊り下げ支持するためのものである。吊り下げ部は、ホルダ本体の一部であっても良いし、別部材であっても良い。
【0012】
ワーク支持部は、ホルダ本体に位置調整自在な状態で支持されるとともに、ワークを支持するように構成される。このワーク支持部は、ワークを支持するように構成された位置調整自在なワーク受け具を有する。
【0013】
ワーク支持部は、ホルダ本体の一部であっても良いし、別部材であっても良い。ワーク支持部がホルダ本体と一体となって構成されている場合には、ホルダ本体に対するワーク受け具の位置調整を行うことによってワーク支持部が構成されることになる。
【0014】
脚部は、ホルダ本体を自立させるように構成される。脚部は、ホルダ本体の下部を自立し易い形状にすることで構成しても良いし、ホルダ本体に別途脚部材を取り付けるようにしても良い。
【0015】
この構成においては、ワークの形状やサイズ等に合わせてワーク受け具の位置を適宜調整することにより、汎用性が高いワークホルダが実現する。このため、従来のように処理するワークごとに専用治具を準備する必要がなくなる。
【0016】
また、脚部によってホルダ本体が自立可能になるため、湿式処理領域内において、所望の配置ピッチで所望の数量のワークホルダを配置し易くなる。このため、処理すべきワークの数量の変動にも対応し易くなる。
【0017】
さらに、湿式処理の前後の処理(洗浄、乾燥、焼成等)や処理待ちの間に作業台や机上等の適当な位置に置いておくことが可能であるため、作業効率が向上する。
【0018】
吊り下げることも自立させることも可能なワークホルダを用いることにより、開発から量産まで幅広く対応できるワークホルダが実現する。
【0019】
上述の構成において、
ホルダ本体が板状を呈しており、ワーク支持部が、ホルダ本体に位置調整自在に取り付け自在な細長い板状を呈するワーク支持部材であり、ワーク受け具が、ワーク支持部材に複数設けられることが好ましい。
【0020】
また、ワーク受け具は、ワークを支持するように構成された支持溝を有しており、ワーク支持部材に対して回動自在およびスライド自在に支持されることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、処理するワークの形状やサイズや数量等にかかわらず適正に湿式処理をすることが可能な汎用性の高い湿式処理用ワークホルダを実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係るワークホルダの使用状況の概略を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係るワークホルダの概略構成の一例を示す図である。
図3】ワークホルダの使用方法の一例を示す図である。
図4】複数のワークホルダを連結する状態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係るワークホルダ10の使用状態の一例を示している。ワークホルダ10は、湿式処理されるべきワーク50を保持するように構成されている。
【0024】
この実施形態では、湿式処理の例として、無電解めっき処理を行う例を説明するが、その他の湿式処理においてワークホルダ10を用いることは可能である。また、湿式処理の前後の工程(脱脂工程、洗浄工程、熱処理工程)においてもワークホルダ10を用いることが可能である。
【0025】
無電解めっき処理においては、めっき浴60が用いられる。この実施形態においては、めっき浴60には、例えば、銅イオンおよび還元剤を含むめっき液が用いられている。空気バブリング機構(図示省略)等を用いてめっき液を攪拌しつつ、めっき浴60にワーク50を所定時間浸漬することによって、ワーク50に所望の銅めっき膜が形成される。
【0026】
例えば、めっき浴60における銅イオン源の例としては、硫酸銅(例:銅濃度1グラム/リットル~5グラム/リットル程度)が挙げられる。錯化剤の例としては、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)が、還元剤の例としてホルムアルデヒド(CH2 O)がそれぞれ挙げられる。
【0027】
めっき浴60において、適宜、界面活性剤を添加しても良い。また、成膜のための金属イオン源、錯化剤、還元剤は、上述したものに限定されるものではなく、様々な種類の湿式処理においてワークホルダ10を用いることが可能である。
【0028】
この実施形態では、めっき浴60の温度は通常40~80℃程度に設定される。この環境で、5~30分程度ワーク50を浸漬することによって、0.2~0.8μm程度の厚みの膜をワーク50の被処理面に形成するようにしている。
【0029】
図2は、ワークホルダ10の概略構成を示している。上述のように、ワークホルダ10は、無電解めっき処理されるワーク50を支持するように構成される。
【0030】
ワークホルダ10は、ホルダ本体12、吊り下げ部材14、第1のワーク支持部材16、第2のワーク支持部材18、脚取付部125、および脚部材30を備える。
【0031】
ホルダ本体12は、ステンレス鋼からなる平面視コ字状の板状を呈しており、長手方向に沿って配列された複数の長孔40を有している。ホルダ本体12の両端部は直角に折り曲げられており、この部分が自立するための脚取付部125の役割をしている。
【0032】
吊り下げ部材14は、ステンレス鋼からなる細長い板状を呈しており、長手方向に沿って配列された複数の長孔40が設けられている。吊り下げ部材14は、ホルダ本体12をめっき浴60内で吊り下げ支持する役割を果たすためものであり、留め具90によって一方の端部がホルダ本体12に取り付けられるとともに、他方の端部がワーク搬送機構またはワーク保持機構に設けられたフック70に吊り下げられている。
【0033】
吊り下げ部材14に設けられた複数の長孔40のうち好適な位置の長孔40に選択的にフック70を通すことによって、めっき浴60における好適な高さにワークホルダ10を配置することが可能になる。
【0034】
この実施形態では、吊り下げ部材14がホルダ本体12とは別個独立した部材となっているが、ホルダ本体12の一部を吊り下げ部として構成しても良い。
【0035】
第1のワーク支持部材16および第2のワーク支持部材18は、それぞれ長手方向に沿って配列された複数の長孔40を有するステンレス鋼からなる細長い板状を呈している。第1のワーク支持部材16および第2のワーク支持部材18は、ホルダ本体12の所望の位置の長孔40に留め具90によって取り付けられる。
【0036】
第1のワーク支持部材16および第2のワーク支持部材18を取り付ける長孔40を選択したり、長孔40の長さ範囲内で留め具90を緩めてスライドさせたりすることによって、ホルダ本体12における第1のワーク支持部材16および第2のワーク支持部材18の位置調整が可能となる。
【0037】
この実施形態では、第1のワーク支持部材16および第2のワーク支持部材18がホルダ本体12とは別個独立した部材となっているが、ホルダ本体12の一部をワーク支持部として構成しても良い。
【0038】
第1のワーク支持部材16および第2のワーク支持部材18は、それぞれワーク50を支持するように構成された位置調整自在な複数のワーク受け具20を備えている。
【0039】
ワーク受け具20は、第1のワーク支持部材16および第2のワーク支持部材18に回動自在およびスライド自在な状態で取り付けられる。ワーク受け具20にはワーク50を支持するための支持溝が設けられている。なお、ここで、回動自在およびスライド自在な状態とは留め具90を緩めた状態において角度調整したり位置調整したりできることを意味しており、留め具90を締め付けることにより位置は固定される。
【0040】
この実施形態では、第1のワーク支持部材16、第2のワーク支持部材18、ワーク受け具20によって本発明のワーク支持部が構成される。ただし、ワーク受け具20を直接ホルダ本体12の所望の位置に取り付けてワーク50を支持する場合には、複数のワーク受け具20が本発明のワーク支持部に対応することになる。
【0041】
脚部材30は、ホルダ本体12の脚取付部125に回動自在およびスライド自在な状態で取り付けられる。脚部材30は、ステンレス鋼からなる細長い板状を呈しており、配置角度を調整することによってホルダ本体12を自立させるように構成される。
【0042】
この実施形態では、脚部材30がホルダ本体12とは別個独立した部材となっているが、ホルダ本体12の一部の形状を工夫(例:脚取付部125の面積を拡大する等)することによってワーク支持部として構成しても良い。
【0043】
続いて、図3(A)~図3(C)を用いてワークホルダ10の使用方法の一例を説明する。まず、ワーク50の形状やサイズに応じて、第1のワーク支持部材16および第2のワーク支持部材18の取付位置を決定する。
【0044】
図3(A)に示すように、ホルダ本体12における複数の長孔40のうち最適な位置にあるものを選択して、第1のワーク支持部材16および第2のワーク支持部材18の概ねの高さを決定する。その後、選択した長孔40の長さの範囲内で昇降させつつ高さを微調整した後に留め具90を締め付けることによって位置を固定することができる。
【0045】
この実施形態では、留め具90として、ボルトとナットの組み合わせを採用しているが、ビス、ワッシャ、スプリング等を適宜用いたり、カシメ留め等を適宜利用したりすることが可能である。
【0046】
続いて、図3(B)に示すように受け具20の位置を調整することによってワーク50を安定的に保持できるようにする。この実施形態では、ワーク受け具20の支持溝がワーク50の中心に向かって開放するように、ワーク受け具20の角度を調整している。
【0047】
ワーク受け具20の調整手法はこれには限定されることはなく、ワーク受け具20間の距離を調整したり、向きを調整したりすることによって、さまざまなサイズや形状のワーク50に汎用的に対応することが可能である。
【0048】
必要に応じて、図3(C)に示すように、脚部材30を角度を調整すると良い。ワークホルダ10を置くスペースや、必要とされる自立の安定度に応じて、適宜、脚部材30の角度を調整したり、異なるサイズの脚部材30に取り換えたりすると良い。
【0049】
ワークホルダ10は、無電解めっき処理の前後の工程でも利用できるため、一連の流れにおけるワーク50の積み替え作業数を減らすことが可能となる。
【0050】
ワークホルダ10においては、ワーク50に対して挟む力を加えないため、挟み跡が発生するといった不都合がない。また、ワーク50の下部(ワーク50における中央よりも下側の領域)を支持するため、メッキ液の液だれに起因する汚損を防止する効果が期待できる。
【0051】
また、受け冶具20の溝の形状や厚みの微調整も行い易いため、より多くの種類のワークに対応することが可能となる。
【0052】
さらには、ワークホルダ10の全体として、多数の長孔40が設けられているため、軽量化を図ることが可能であるとともに、めっき液が滞留しにくい状況を形成することが可能である。
【0053】
ワークホルダ10はそれぞれが自立可能であり、各種のワーク50に対応することが可能であるため、開発段階から量産段階まで幅広く利用することが可能である。さらに、図4に示すように、複数のワークホルダ10を連結して1つのワーク保持構造を構築することによって、多数のワーク50のハンドリングが行い易くなる。
【0054】
図4に示すように、ワークホルダ10の脚取付部125を連結部材80の所望の位置に固定するとともに、脚取付部125が連結された複数のワークホルダ10の上部を連結ポール85によって連結することによって、まとまった数のワーク50(異種類混合も可)を同時にハンドリングすることが可能になる。
【0055】
このような構成を採用する場合、ワークホルダ10の配置ピッチが近すぎると、めっき液の滞留や液だれの原因にもなるため、適宜、適当な間隔を設けるようにすると良い。この構成は、不揃いなサイズのワーク50をまとめて処理する際に利用可能であるため、生産性向上効果が期待できる。
【0056】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0057】
10-ワークホルダ
12-ホルダ本体
14-吊り下げ部材
16-第1のワーク支持部材
18-第2のワーク支持部材
20-ワーク受け具
30-脚部材
40-長孔
50-ワーク
60-めっき浴
70-フック
80-連結部材
85-連結ポール
90-留め具
図1
図2
図3
図4