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特開2023-12278吸水性樹脂組成物、並びにこれを用いた吸収体及び吸収性物品、並びに吸水性樹脂組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012278
(43)【公開日】2023-01-25
(54)【発明の名称】吸水性樹脂組成物、並びにこれを用いた吸収体及び吸収性物品、並びに吸水性樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/14 20060101AFI20230118BHJP
   C08L 3/00 20060101ALI20230118BHJP
   C08F 8/00 20060101ALI20230118BHJP
   C08F 20/06 20060101ALI20230118BHJP
   C08J 3/12 20060101ALN20230118BHJP
【FI】
C08L101/14 ZBP
C08L3/00
C08F8/00
C08F20/06
C08J3/12 A CEY
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021115816
(22)【出願日】2021-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】301023009
【氏名又は名称】SDPグローバル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 英二
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 駿佑
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一充
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4F070AA03
4F070AA29
4F070AB13
4F070AC12
4F070AC36
4F070AC87
4F070AE08
4F070AE28
4F070DA48
4F070DA50
4F070DB01
4F070DB06
4F070DB09
4F070DC05
4F070DC07
4F070DC15
4J002AA00W
4J002AB04X
4J002BG01W
4J002GC00
4J002GT00
4J100AG41Q
4J100AJ02P
4J100CA04
4J100FA03
4J100FA19
4J100HA31
4J100HB39
4J100HC10
4J100HC39
4J100JA60
(57)【要約】
【課題】
植物由来の原料を用い、かつ、従来のポリアクリル酸系吸収性樹脂組成物と比べても遜色なく衛生材料などとして使用でき、カーボンニュートラル及び廃棄物削減による環境負荷低減の観点から有用な吸水性樹脂組成物、並びにこれを用いた吸収体及び吸収性物品、並びに吸水性樹脂組成物の製造方法を提供すること。
【解決手段】
水溶性不飽和カルボン酸(a1)及びその塩、並びに加水分解により前記水溶性不飽和カルボン酸(a1)となるモノマー(a2)からなる群より選ばれる1種以上のモノマー(A1)と、架橋剤(b)とを構成単位として有する架橋重合体(A)、及び米(B)を含有する吸水性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性不飽和カルボン酸(a1)及びその塩、並びに加水分解により前記水溶性不飽和カルボン酸(a1)となるモノマー(a2)からなる群より選ばれる1種以上のモノマー(A1)と、架橋剤(b)とを構成単位として有する架橋重合体(A)、及び米(B)を含有する吸水性樹脂組成物。
【請求項2】
前記架橋重合体(A)と前記米(B)の重量比{架橋重合体(A)の重量/米(B)の重量}が、99/1~10/90である、請求項1に記載の吸水性樹脂組成物。
【請求項3】
0.9重量%生理食塩水の保水量が10g/g以上である請求項1又は2に記載の吸水性樹脂組成物。
【請求項4】
前記吸水性樹脂組成物が、粒子状である請求項1~3の何れか1項に記載の吸水性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載の吸水性樹脂組成物を含む吸収体。
【請求項6】
請求項5に記載の吸収体を含む吸収性物品。
【請求項7】
請求項1~4の何れか1項に記載の吸水性樹脂組成物の製造方法であって、
前記架橋重合体(A)を含む含水ゲルを得る重合工程と、
前記含水ゲルを乾燥する乾燥工程と、
前記米(B)を添加する米添加工程と、を有する、吸水性樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
前記重合工程で得られた含水ゲルを細断する細断工程を有する、請求項7に記載の吸水性樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
前記重合工程及び前記細断工程の少なくとも何れかが、前記米添加工程を有する、請求項8に記載の吸水性樹脂組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸水性樹脂組成物、並びにこれを用いた吸収体及び吸収性物品、並びに吸水性樹脂組成物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
吸水性樹脂組成物は、自重の数十倍から数千倍の水を吸収できる樹脂であり、例えばポリアクリル酸系吸収性樹脂組成物等が知られている。これらの吸水性樹脂組成物は、その高い吸水性から使い捨て衛生用品に広く使用されている。しかし、これらの吸水性樹脂組成物を含む衛生用品は、使用後にそのほとんどが焼却処分されており、焼却時に発生する二酸化炭素が地球温暖化を促進するといった懸念が指摘されている。このような状況下、カーボンニュートラルの観点から植物由来原料を用いた吸水性樹脂組成物が強く求められている。
【0003】
植物由来原料として植物由来アクリル酸を利用することが検討されている。しかし、植物由来アクリル酸は、例えば、プロピオン酸、ギ酸、酢酸、アセトアルデヒドなどの不純物が含まれており、重合して得られた吸水性樹脂組成物を含む衛生用品として使用した際の吸収性能低下、臭気発生や人体への悪影響の原因につながるため、使用者にとって好ましいものではない。そのため、植物由来のアクリル酸を製造する際に、蒸留操作や再結晶をすることでアクリル酸中に含まれる不純物を減量したり、アクリル酸を重合した後にゲル状態時に乾燥処理をする際に揮発させる等の処理をしたりすることが考えられる(特許文献1、2)。しかし、これらの方法では揮発した不純物を回収するための加熱によってポリマーが劣化する懸念があり、結果として吸水性樹脂組成物としての吸水性能の低下につながるとともに、工程増加に伴う二酸化炭素排出量増加の観点からも好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特願2012-512867号
【特許文献2】特願2012-512868号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、植物由来の原料を用い、かつ、従来のポリアクリル酸系吸収性樹脂組成物と比べても遜色なく衛生材料などとして使用でき、カーボンニュートラル及び廃棄物削減による環境負荷低減の観点から有用な吸水性樹脂組成物、並びにこれを用いた吸収体及び吸収性物品、並びに吸水性樹脂組成物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、水溶性不飽和カルボン酸(a1)及びその塩、並びに加水分解により前記水溶性不飽和カルボン酸(a1)となるモノマー(a2)からなる群より選ばれる1種以上のモノマー(A1)と、架橋剤(b)と、を構成単位として有する架橋重合体(A)、及び米(B)を含有する吸水性樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、植物由来の原料を用い、かつ、従来のポリアクリル酸系吸収性樹脂組成物と比べても遜色なく衛生材料などとして使用でき、カーボンニュートラルの観点から有用な吸水性樹脂組成物、並びにこれを用いた吸収体及び吸収性物品、並びに吸水性樹脂組成物の製造方法を提供することができる。また、生産から一定期間経過し、食用に適さなくなった過剰米や加工工程途中で発生する砕米といった廃棄物を有効に活用することができ、廃棄物削減効果も期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<吸水性樹脂組成物>
本実施形態の吸水性樹脂組成物は、水溶性不飽和モノカルボン酸(a1)及びその塩、並びに加水分解により前記水溶性不飽和モノカルボン酸(a1)となるモノマー(a2)からなる群より選ばれる1種以上のモノマー(A1)と、架橋剤(b)とを構成単位として有する架橋重合体(A)、及び米(B)を含有する。
【0009】
前記吸水性樹脂組成物は、植物由来の原料を用い、かつ、従来のポリアクリル酸系吸収性樹脂組成物と比べても遜色なく衛生材料などとして使用でき、カーボンニュートラルの観点から有用である。
【0010】
〔架橋重合体(A)〕
[モノマー(A1)]
(水溶性不飽和カルボン酸(a1)及びその塩)
前記水溶性不飽和カルボン酸(a1)は、水溶性を有する不飽和カルボン酸であれば特に限定されずに用いることができる。前記水溶性不飽和カルボン酸(a1)は、架橋体にした際の吸水性能や入手の容易さの観点から、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、メチレンコハク酸、及びシトラコン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、及びメチレンコハク酸からなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0011】
前記水溶性不飽和モノカルボン酸(a1)の塩としては、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム及びカリウム等)塩、アルカリ土類金属(マグネシウム及びカルシウム等)塩及びアンモニウム(NH)塩等が挙げられる。これらの塩の内、吸収性能等の観点から、アルカリ金属塩及び/又はアンモニウム塩が好ましく、更に好ましいのはアルカリ金属塩、特に好ましいのはナトリウム塩である。
【0012】
(モノマー(a2))
加水分解により前記水溶性不飽和カルボン酸(a1)となるモノマー(a2)を前記水溶性不飽和カルボン酸(a1)とともに、あるいはその代わりに使用することができる。前記モノマー(a2)は特に限定はなく、加水分解によりカルボキシ基となる加水分解性置換基を1個有するモノマー等が例示できる。前記加水分解性置換基としては、酸無水物を含む基(1,3-オキソ-1-オキサプロピレン基、-COO-CO-)、エステル結合を含む基(アルキルオキシカルボニル、ビニルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル又はプロペニルオキシカルボニル、-COOR)及びシアノ基等が挙げられる。なお、Rは炭素数1~3のアルキル基(メチル、エチル及びプロピル)、ビニル、アリル及びプロペニルである。
【0013】
前記モノマー(a2)の加水分解は、重合中、重合後及びこれらの両方のいずれで行っても良いが、得られる吸水性樹脂組成物の吸収性能の観点から、重合後が好ましい。
【0014】
なお、本明細書において、水溶性とは、25℃の水100gに少なくとも100g溶解することを意味する。また、前記モノマー(a2)における加水分解性とは、水及び必要により触媒(酸又は塩基等)の作用により加水分解され、水溶性になる性質を意味する。前記モノマー(a2)の加水分解は、重合中、重合後及びこれらの両方のいずれで行っても良いが、得られる吸水性樹脂組成物の吸収性能の観点から、重合後が好ましい。
【0015】
前記架橋重合体(A)の構成単位として、前記モノマー(A1)の他に、これらと共重合可能なその他のビニルモノマー(A2)を構成単位とすることができる。前記ビニルモノマー(A2)は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0016】
前記ビニルモノマー(A2)としては特に限定はなく、公知(例えば、特許第3648553号公報の0028~0029段落に開示されている疎水性ビニルモノマー、特開2003-165883号公報の0025段落及び特開2005-75982号公報の0058段落に開示されているビニルモノマー等)の疎水性ビニルモノマー等が使用でき、具体的には例えば下記の(i)~(iii)のビニルモノマー等が使用できる。
(i)炭素数8~30の芳香族エチレン性モノマー
スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン及びヒドロキシスチレン等のスチレン、並びにビニルナフタレン、並びにジクロルスチレン等のスチレンのハロゲン置換体等。
(ii)炭素数2~20の脂肪族エチレン性モノマー
アルケン(エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン及びオクタデセン等);並びにアルカジエン(ブタジエン及びイソプレン等)等。
(iii)炭素数5~15の脂環式エチレン性モノマー
モノエチレン性不飽和モノマー(ピネン、リモネン及びインデン等);並びにポリエチレン性ビニルモノマー[シクロペンタジエン、ビシクロペンタジエン及びエチリデンノルボルネン等]等。
【0017】
〔架橋剤(b)〕
前記架橋剤(b)としては特に限定はなく公知(例えば、特許第3648553号公報の0031~0034段落に開示されているエチレン性不飽和基を2個以上有する架橋剤、水溶性置換基と反応し得る官能基を少なくとも1個有してかつ少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する架橋剤及び水溶性置換基と反応し得る官能基を少なくとも2個有する架橋剤、特開2003-165883号公報の0028~0031段落に開示されているエチレン性不飽和基を2個以上有する架橋剤、エチレン性不飽和基と反応性官能基とを有する架橋剤及び反応性置換基を2個以上有する架橋剤、特開2005-75982号公報の0059段落に開示されている架橋性ビニルモノマー並びに特開2005-95759号公報の0015~0016段落に開示されている架橋性ビニルモノマー)の架橋剤等が使用できる。
【0018】
前記架橋剤(b)は、エチレン性不飽和基を2個以上有する架橋剤が好ましく、モノマーとの反応性および吸水特性の観点から、エチレン性不飽和基を2個以上有する多価(メタ)アリル化合物及びアクリルアミド化合物が好ましく、アルキレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール及びソルビトール等の多価アルコールのポリ(メタ)アリルエーテル、テトラアリロキシエタン並びにトリアリルイソシアヌレート等の多価(メタ)アリル化合物、並びに下記一般式(1)で表される化合物からなる群より選ばれる1種以上がさらに好ましい。前記架橋剤(b)は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0019】
【化1】
[一般式(1)中、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基である。Xは、炭素数2以上の脂肪族基を有し、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子を含んでもよいn価の有機基であり、前記脂肪族基は直鎖であっても分岐を有していてもよい。nは2から6の整数である。]
【0020】
前記一般式(1)で表される化合物の市販品としては、FOM-03006、FOM-03007、FOM-03008、FOM-03009(何れも富士フイルム株式会社製)が例示できる。
【0021】
前記架橋重合体(A)における前記架橋剤(b)の含有量(モル%)は、吸収性能等の観点から、前記モノマー(A1)単位の合計モル数、前記ビニルモノマー(A2)を用いる場合は前記モノマー(A1)単位及び前記ビニルモノマー(A2)単位の合計モル数に基づいて、0.001~5が好ましく、更に好ましくは0.005~3、特に好ましくは0.005~1がより好ましい。
【0022】
前記吸水性樹脂組成物は、架橋重合体(A)の表面が表面架橋剤(d)により架橋された構造を有することが好ましい。架橋重合体(A)の表面を架橋することにより前記吸水性樹脂組成物のゲル強度を向上させることができ、前記吸水性樹脂組成物の望ましい保水量と荷重下における吸収量とを満足させることができる。表面架橋剤は、無機物でも有機物でも用いることができる。表面架橋剤(d)としては、公知(特開昭59-189103号公報に記載の多価グリシジル化合物、多価アミン、多価アジリジン化合物及び多価イソシアネート化合物等、特開昭58-180233号公報及び特開昭61-16903号公報の多価アルコール、特開昭61-211305号公報及び特開昭61-252212号公報に記載のシランカップリング剤、特表平5-508425号公報に記載のアルキレンカーボネート、特開平11-240959号公報に記載の多価オキサゾリン化合物等)の有機表面架橋剤等が使用できる。これらの表面架橋剤のうち、経済性及び吸収特性の観点から、多価グリシジル化合物、多価アルコール及び多価アミンが好ましく、更に好ましいのは多価グリシジル化合物及び多価アルコール、特に好ましいのは多価グリシジル化合物、最も好ましいのはエチレングリコールジグリシジルエーテルである。有機表面架橋剤(d)は1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0023】
〔米(B)〕
前記米(B)としては、特に限定ないが、例えば、玄米、白米(短粒種、中粒種、長粒種)、赤米、黒米、うるち米、もち米などが挙げられる。前記米(B)は、精米工程を経て玄米の表面についた米糠を取り除いたものを用いても良い。
【0024】
前記米(B)が含有する澱粉(B1)は、α構造を有していてもよく、β構造を有していてもよい。なお、α構造とは非結晶構造であり、β構造とは結晶構造のことを指し、前記澱粉(B1)は、下記の要領でα化処理がなされたα構造を有することが好ましい。つまり、前記澱粉(B1)は、当初において結晶構造(β構造)を有しているが、適当な量の水分の存在下、70℃以上の温度環境におくと、このβ構造が崩れて非晶構造(α構造)に変化することが知られており、β構造からα構造に変化することを糊化するという。前記澱粉(B1)が高い割合のα構造を有することにより、重合工程やゲル細断工程、乾燥工程等において、前記米(B)と、モノマー(A1)や架橋重合体(A)との相溶性が向上し、吸水性樹脂組成物とした際に吸水性能が良化するため好ましい。
【0025】
前記澱粉(B1)の結晶構造をβ構造からα構造にするα化処理の具体例としては、β構造を有する前記澱粉(B1)を含有する米(B)を水に浸漬させることや水に入れた後に煮沸させる、あるいは水蒸気で蒸すような、一般に食用に供する際に行う熱処理を加える方法が挙げられ、また、米(B)を加熱しながら、または加熱した直後に、せん断をかけることでβ構造からα構造に変換する方法も挙げられる。前記澱粉(B1)の結晶構造をα化させるのに、これらの複数の操作を組み合わせて行ってもよい。
【0026】
α構造を有する米は水分を含んだまま低温に放置されると、時間経過とともに、もとのβ構造の結晶状態に戻る現象(老化という)が観測されることが知られている。一方、α構造の非晶状態を有する澱粉から水分を取り除けば、その後、低温で長期間放置しても米はα構造を維持したままβ構造に可逆転移しない(老化しない)ことが知られている。また、仮に米が老化した場合においても、水分を含んだ状態で一定温度以上で加熱することでα構造に再び戻ることも知られており、前記米(B)はこのような処理を施されたものであってもよい。そのため、前記米(B)は、前記澱粉(B1)の構造がα構造(非晶構造)を有し、水分を含んだ状態、及び、水分を含まない(脱水された)状態のいずれであってもよい。前記澱粉(B1)の結晶構造がα構造(非晶構造)であれば、後重合工程やゲル細断工程、乾燥工程等の際に、前記モノマー(A1)や前記架橋重合体(A)のマトリックスの中で澱粉の分子鎖がほぐれて、微細化して分散されやすくなる。
【0027】
前記米(B)は、生米であってもよく、長粒種、中粒種、短粒種、いずれでも特に制限はなく、精米工程で生じた砕米や米の削り粕であってもよい。また、廃棄物削減による環境負荷低減の観点から砕米を含有することが好ましい。また、前記米(B)の長縦横比は、吸収性能の観点からは4.5以下が好ましく、更に好ましくは、4以下であり、特に好ましくは3以下である。なお、米(B)の縦横比の測定は、例えば、デジタルマイクロスコープ(オリンパス株式会社製 型番DSX500)等によって測定することができる。
【0028】
前記米(B)のサイズは、乾燥粉砕や湿式粉砕等の方法を用いて粉砕することによって調整することができる。前記米(B)を粉砕する場合、前記米(B)は、乾燥生米でもよいし、水に浸漬した米でもよい。粉砕性の観点から、α構造を有する前記米(B)を粉砕することが好ましい。前記米(B)を粉砕する粉砕装置としては、ハンマー式粉砕機、衝撃式粉砕機、ロール式粉砕機及びシェット気流式粉砕機等が使用できる。
【0029】
前記架橋重合体(A)と前記米(B)の重量比{架橋重合体(A)の重量/米(B)の重量}が、物質量の比{架橋重合体(A)の物質量/米(B)の物質量}は、吸水性能とカーボンニュートラル効果の観点から、好ましくは99/1~10/90であり、さらに好ましくは95/5~20/80、最も好ましくは90/10~30/70である。なお、前記米(B)に含まれる水分の重量は、前記米(B)の重量には含まれない。
【0030】
前記吸水性樹脂組成物の炭素の放射性炭素年代測定法によって測定される14C/Cは、カーボンニュートラル効果の観点から、好ましくは1.2×10-12~1.0×10-16、さらに好ましくは1.5×10-12~1.2×10-14である。
【0031】
炭素の放射性炭素年代測定法では、植物由来の材料に存在する炭素を同定することができる。大気中に二酸化炭素として存在していた炭素が、植物中に取り込まれ、その植物を原料として合成された植物由来材料に存在する炭素である放射性炭素(即ち、炭素14)を測定することによる。そして、石油等の化石原料中には炭素14原子が殆ど残っていないため、対象となる試料中における炭素14の濃度を測定し、大気中の炭素14の含有割合(107pMC(percent modern carbon))を指標として逆算することで、試料中に含まれる炭素のうちのバイオマス由来炭素の割合を求めることができる。
【0032】
〔成分(C)〕
前記吸収性樹脂組成物は、前記架橋重合体(A)及び前記米(B)以外の成分(C)を含んでも良い。前記成分(C)としては、前記米(B)以外の植物由来材料、防腐剤、防かび剤、抗菌剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、芳香剤、消臭剤、通液性向上剤、発泡剤、無機質粉末及び有機質繊維状物等が挙げられる。
【0033】
前記米(B)以外の植物由来材料としては、油脂、タンパク質、繊維質、エキス類、糖類等が挙げられる。これらのうち、吸水性能の観点から好ましくは、油脂、繊維質、糖類、更に好ましくは、繊維質、糖類である。
【0034】
前記油脂としては、大豆油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、トウモロコシ油、オリーブ油、サフラワー油、紅花油、綿実油、ナタネ油、ヒマシ油、ゴマ油、等が挙げられる。
【0035】
前記繊維質としては、植物性繊維が挙げられ、植物性繊維としては、ケナフ、ジュート麻、マニラ麻、サイザル麻、雁皮、楮、バナナ、パイナップル、ココヤシ、トウモロコシ、サトウキビ、バガス、ヤシ、パピルス、葦、エスパルト、サバイグラス、麦、稲、竹、スギ及びヒノキ等の針葉樹、広葉樹及び綿花などの各種の植物が有する繊維が挙げられる。
【0036】
前記糖類としては、フルクトース、グルコース、乳糖、マルトース、ガラクトース、スクロース、澱粉、セルロース、セルロース誘導体等が挙げられる。
【0037】
前記吸水性樹脂組成物は、吸水時のゲル強度、荷重下吸収量及びゲル通液速度を向上させる観点から、前記成分(C)として、好ましくはヨウ素、テルル、アンチモン及びビスマスからなる群から選ばれる少なくとも1種の典型元素を含む。前記吸水性樹脂組成物が当該典型元素を含む場合、前記吸水性樹脂組成物中の当該典型元素の含有量は、吸水時のゲル強度、荷重下吸収量及びゲル通液速度を向上させる観点から、0.0005~0.1重量%が好ましく、0.001~0.05重量%がより好ましい。当該典型元素を含む前記吸水性樹脂組成物は、前記モノマー(A1)、及び前記架橋剤(b)を含む単量体組成物を、後述の前記有機典型元素化合物の存在下で重合し、得られた含水ゲルを乾燥させることにより、得ることができる。
【0038】
前記成分(C)の量は吸水性樹脂組成物の重量に基づいて、通常、5重量%以下である。また、必要により発泡構造を有してもよいし、造粒や成型がされていてもよい。
【0039】
なお、前記吸水性樹脂組成物の保水量(g/g)は、後述する方法で測定することができ、吸収量の観点から10以上であることが好ましく、15以上が更に好ましく、18以上が特に好ましい。また、上限値は、べとつきの観点から、60以下が好ましく、55以下がさらに好ましく、50以下が特に好ましい。保水量は、前記架橋剤(b)、前記表面架橋剤(d)の使用量(重量%)で適宜調整することができる。
【0040】
また、前記吸水性樹脂組成物の荷重下吸収量(g/g)は、後述する方法で測定することができ、荷重下でのオムツの吸収量の観点から好ましくは14以上であり、16以上が更に好ましく、特に好ましくは、20以上である。荷重下吸収量は保水量と相反することが経験的に知られており、オムツの構成により高保水量が求められる場合と高ゲル通液速度が求められる場合とがある。
【0041】
前記吸水性樹脂組成物の形状は特に限定されないが、吸収性能を向上させる観点から、粒子状が好ましい。粒子状の前記吸水性樹脂組成物(以下、吸水性樹脂組成物粒子ともいう)重量平均粒子径(μm)は、250~600であり、好ましくは300~500、より好ましくは340~460である。重量平均粒子径が250μmを下回ると通液性能が悪化し、600μmを上回ると吸収速度が悪化するため、この範囲であると、吸収性能がさらに良好となる。
【0042】
なお、重量平均粒子径は、ロータップ試験篩振とう機及び標準ふるい(JISZ8801-1:2006)を用いて、ペリーズ・ケミカル・エンジニアーズ・ハンドブック第6版(マックグローヒル・ブック・カンバニー、1984、21頁)に記載の方法で測定される。すなわち、JIS標準ふるいを、上から1000μm、850μm、710μm、500μm、425μm、355μm、250μm、150μm、125μm、75μm及び45μm、並びに受け皿、の順等に組み合わせる。最上段のふるいに測定粒子の約50gを入れ、ロータップ試験篩振とう機で5分間振とうさせる。各ふるい及び受け皿上の測定粒子の重量を秤量し、その合計を100重量%として各ふるい上の粒子の重量分率を求め、この値を対数確率紙[横軸がふるいの目開き(粒子径)、縦軸が重量分率]にプロットした後、各点を結ぶ線を引き、重量分率が50重量%に対応する粒子径を求め、これを重量平均粒子径とする。
【0043】
前記吸水性樹脂組成物粒子に含まれる微粉の含有量は少ないほど通液性能が良好となるため、全吸水性樹脂組成物粒子の合計重量に占める150μm未満の粒子径を有する吸水性樹脂組成物粒子の重量割合(重量%)は3以下であり、好ましくは1以下である。150μm未満の粒子径を有する吸水性樹脂組成物粒子の重量割合は、上記の重量平均粒子径を求める際に作成するグラフを用いて求めることができる。
【0044】
吸水性樹脂組成物粒子の形状については特に限定はなく、不定形破砕状、リン片状、パール状及び米粒状等が挙げられる。これらのうち、紙おむつ用途等での繊維状物とのからみが良く、繊維状物からの脱落の心配がないという観点から、不定形破砕状が好ましい。
【0045】
<吸水性樹脂組成物の製造方法>
本実施形態の吸水性樹脂組成物の製造方法は、前記吸水性樹脂組成物の製造方法であって、
前記架橋重合体(A)を含む含水ゲルを得る重合工程と、
前記含水ゲルを乾燥する乾燥工程と、
前記米(B)を添加する米添加工程と、を有する。
【0046】
〔重合工程〕
前記重合工程は、少なくとも前記モノマー(A1)及び前記架橋剤(b)を含む単量体組成物を重合して前記架橋重合体(A)を含む含水ゲルを得る工程である。前記単量体組成物の重合方法としては、公知の溶液重合や、公知の逆相懸濁重合が挙げられる。
【0047】
前記単量体組成物の重合方法の内、好ましいのは溶液重合法であり、有機溶媒等を使用する必要がなく生産コスト面で有利なことから、特に好ましいのは水溶液重合法であり、保水量が大きく、且つ水可溶性成分量の少ない吸水性樹脂組成物が得られ、重合時の温度コントロールが不要である点から、水溶液断熱重合法が最も好ましい。
【0048】
前記単量体組成物を水溶液重合で重合する場合、水と有機溶媒とを含む混合溶媒を使用することができ、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド及びこれらの2種以上の混合物を挙げられる。前記単量体組成物を水溶液重合で重合する場合、有機溶媒の使用量(重量%)は、水の重量を基準として40以下が好ましく、更に好ましくは30以下である。
【0049】
重合に触媒を用いる場合、従来公知のラジカル重合用触媒が使用可能であり、例えば、アゾ化合物[アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシアノ吉草酸及び2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ハイドロクロライド等]、無機過酸化物(過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム及び過硫酸ナトリウム等)、有機過酸化物[過酸化ベンゾイル、ジ-t-ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、コハク酸パーオキサイド及びジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート等]及びレドックス触媒(アルカリ金属の亜硫酸塩又は重亜硫酸塩、亜硫酸アンモニウム、重亜硫酸アンモニウム及びアスコルビン酸等の還元剤とアルカリ金属の過硫酸塩、過硫酸アンモニウム、過酸化水素及び有機過酸化物等の酸化剤との組み合わせよりなるもの)等が挙げられる。これらの触媒は、単独で使用してもよく、これらの2種以上を併用しても良い。
【0050】
ラジカル重合触媒の使用量(重量%)は、前記モノマー(A1)の重量に基づいて、前記ビニルモノマー(A2)を用いる場合は、前記モノマー(A1)及び前記ビニルモノマー(A2)の合計重量に基づいて、0.0005~5が好ましく、更に好ましくは0.001~2である。
【0051】
重合時には、必要に応じて連鎖移動剤等の重合コントロール剤を併用しても良く、これらの具体例としては、次亜リン酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、アルキルメルカプタン、ハロゲン化アルキル、チオカルボニル化合物等が挙げられる。これらの重合コントロール剤は、単独で使用してもよく、これらの2種以上を併用しても良い。
【0052】
重合コントロール剤の使用量(重量%)は、前記モノマー(A1)の重量に基づいて、前記ビニルモノマー(A2)を用いる場合は、前記モノマー(A1)及び前記ビニルモノマー(A2)の合計重量に基づいて、0.0005~5が好ましく、更に好ましくは0.001~2である。
【0053】
前記架橋重合体(A)は、前記モノマー(A1)及び前記架橋剤(b)を含む単量体組成物を、有機ヨウ素化合物、有機テルル化合物、有機アンチモン化合物及び有機ビスマス化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機典型元素化合物の存在下で重合することにより、吸水時のゲル強度、荷重下吸収量及びゲル通液速度を向上させることができる。
【0054】
前記有機ヨウ素化合物、前記有機テルル化合物、前記有機アンチモン化合物、及び前記有機ビスマス化合物としては、ラジカル重合のドーマント種として働く有機典型元素化合物であれば制限はなく、WO2011/016166にドーマント種として記載の有機ヨウ素化合物、WO2004/014848に記載の有機テルル化合物、WO2006/001496に記載の有機アンチモン化合物及びWO2006/062255に記載の有機ビスマス化合物等を用いることができる。なかでも反応性の観点から有機典型元素化合物が好ましい。これら有機典型元素化合物は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
有機典型元素化合物としては、2-ヨードプロピオニトリル、2-メチル-2-ヨードプロピオニトリル、α-ヨードベンジルシアニド、2-ヨードプロピオン酸アミド、エチル-2-メチル-2-ヨード-プロピネート、2-メチル-ヨードプロピオン酸メチル、2-メチル-ヨードプロピオン酸プロピル、2-メチル-ヨードプロピオン酸ブチル、2-メチル-ヨードプロピオン酸ペンチル、2-メチル-ヨードプロピオン酸ヒドロキシエチル、2-メチル-2-ヨード-プロピオン酸(塩)、2-ヨードプロピオン酸(塩)、2-ヨード酢酸(塩)、2-ヨード酢酸メチル、2-ヨード酢酸エチル、2-ヨードペンタン酸エチル、2-ヨードペンタン酸メチル、2-ヨードペンタン酸(塩)、2-ヨードヘキサン酸(塩)、2-ヨードヘプタン酸(塩)、2,5-ジヨードアジピン酸ジエチル、2,5-ジヨードアジピン酸(塩)、2,6-ジヨード-ヘプタン二酸ジメチル、2,6-ジヨード-ヘプタン二酸(塩)、α-ヨード-γ-ブチロラクトン、2-ヨードアセトフェノン、ベンジルヨージド、2-ヨード-2-フェニル酢酸(塩)、2-ヨード-2-フェニル酢酸メチル、2-ヨード-2-フェニル酢酸エチル、1,4-ビス(1’-ヨードエチル)ベンゼン、エチレングリコールビス(2-メチル-2-ヨード-プロピネート)、トリス(2-メチル-ヨードプロピオン酸)グリセロール、1,3,5-トリス(1’-ヨードエチルベンゼン)、エチレングリコールビス(2-ヨード-2フェニルアセテート)等が挙げられ、なかでも好ましいものとしては、2-メチル-2-ヨードプロピオニトリル、エチル-2-メチル-2-ヨード-プロピネート、2-メチル-2-ヨード-プロピオン酸(塩)、2-ヨード酢酸(塩)、2-ヨード酢酸メチル、2,5-ジヨードアジピン酸ジエチル、2,5-ジヨードアジピン酸、エチレングリコールビス(2-メチル-2-ヨード-プロピネート)、エチレングリコールビス(2-ヨード-2フェニルアセテート)等が挙げられる。前記有機典型元素化合物が塩の場合、前記有機典型元素化合物としては、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム及びカリウム等)塩、アルカリ土類金属(マグネシウム及びカルシウム等)塩及びアンモニウム(NH)塩等が挙げられる。これらの塩の内、吸収性能等の観点から、アルカリ金属塩及び/又はアンモニウム塩が好ましく、更に好ましいのはアルカリ金属塩、特に好ましいのはナトリウム塩である。
【0056】
前記有機典型元素化合物の使用量は、吸水時のゲル強度、荷重下吸収量及びゲル通液速度を向上させる観点から、前記モノマー(A1)の重量に基づいて、前記ビニルモノマー(A2)を用いる場合は、前記モノマー(A1)及び前記ビニルモノマー(A2)の合計重量に基づいて、好ましくは0.0005~0.1重量%、更に好ましくは0.005~0.05重量%である。
【0057】
重合方法として懸濁重合法又は逆相懸濁重合法をとる場合は、必要に応じて、従来公知の分散剤又は界面活性剤の存在下に重合を行っても良い。また、逆相懸濁重合法の場合、従来公知のキシレン、ノルマルヘキサン及びノルマルヘプタン等の炭化水素系溶媒を使用して重合を行うことができる。
【0058】
重合時における前記モノマー(A1)及び前記架橋剤(b)を含む単量体組成物濃度、前記ビニルモノマー(A2)を用いる場合は、前記モノマー(A1)、前記ビニルモノマー(A2)、及び前記架橋剤(b)を含む単量体組成物濃度は、10~50重量%が好ましく、15~40重量%が更に好ましい。また、米(B)を重合時に添加させる場合は、糊化を促進させる観点から、単量体組成物濃度は、1~50重量%が好ましく、10~40重量%が更に好ましい。
【0059】
重合開始温度は、使用する触媒の種類によって適宜調整することができるが、0~100℃が好ましく、更に好ましくは2~80℃である。重合時の到達温度は、反応性の観点から50℃以上が好ましく、60℃以上が更に好ましい。前記重合工程が前記米添加工程を有する場合(後述)、前記米(B)に含有される前記澱粉(B1)の糊化を促進させる観点から、重合時の到達温度は、60℃以上が好ましく、70℃以上が更に好ましい。
【0060】
重合に溶媒(有機溶媒及び水等)を使用する場合、重合後に溶媒を留去することが好ましい。溶媒に有機溶媒を含む場合、留去後の有機溶媒の含有量(重量%)は、架橋重合体(A)の重量に基づいて、0~10が好ましく、更に好ましくは0~5、特に好ましくは0~3、最も好ましくは0~1である。この範囲であると、吸水性樹脂組成物の吸収性能が更に良好となる。
【0061】
溶媒に水を含む場合、留去後の水分(重量%)は、架橋重合体(A)の重量に基づいて、0~20が好ましく、更に好ましくは1~10、特に好ましくは2~9、最も好ましくは3~8である。この範囲であると、吸収性能が更に良好となる。
【0062】
前記の重合方法により架橋重合体(A)が水を含んだ含水ゲル状物(以下、含水ゲルともいう)を得ることができる。
【0063】
〔細断工程〕
本実施形態の吸水性樹脂組成物の製造方法は、必要に応じて、前記含水ゲルを細断する細断工程を有してもよい。細断後のゲルの大きさ(最長径)は50μm~10cmが好ましく、更に好ましくは100μm~2cm、特に好ましくは1mm~1cmである。この範囲であると、乾燥工程での乾燥性が更に良好となる。
【0064】
細断は、公知の方法で行うことができ、細断装置(例えば、ベックスミル、ラバーチョッパ、ファーマミル、ミンチ機、衝撃式粉砕機及びロール式粉砕機)等を使用して細断できる。また、必要に応じて、上記のようにして得られる含水ゲル重合体にアルカリを混合して中和することもできる。酸基の中和度は、50~80モル%であることが好ましい。中和度が50モル%未満の場合、得られる含水ゲル重合体の粘着性が高くなり、製造時及び使用時の作業性が悪化する場合がある。更に得られる吸水性樹脂組成物の保水量が低下する場合がある。一方、中和度が80%を超える場合、得られた樹脂のpHが高くなり人体の皮膚に対する安全性が懸念される場合がある。
【0065】
なお、中和は、吸水性樹脂組成物の製造において、架橋重合体(A)の重合以降のいずれの段階で行ってもよく、例えば、含水ゲルの状態で中和する等の方法が好ましい例として例示される。
【0066】
中和する塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物や、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩を通常使用できる。
【0067】
なお、有機溶媒の含有量及び水分は、赤外水分測定器[(株)KETT社製JE400等:120±5℃、30分、加熱前の雰囲気湿度50±10%RH、ランプ仕様100V、40W]により加熱したときの測定試料の重量減量から求められる。
【0068】
〔乾燥工程〕
本実施形態の吸水性樹脂組成物の製造方法は、前記含水ゲルを乾燥し、含水ゲル中の溶媒(水を含む)を留去する吸水性樹脂組成物を得る乾燥工程を有する。
【0069】
前記乾燥工程において、含水ゲル中の溶媒を留去する方法としては、80~230℃の温度の熱風で留去(乾燥)する方法、100~230℃に加熱されたドラムドライヤー等による薄膜乾燥法、(加熱)減圧乾燥法、凍結乾燥法、赤外線による乾燥法、デカンテーション及び濾過等が適用できる。
【0070】
〔米添加工程〕
本実施形態の吸水性樹脂組成物の製造方法は、前記米(B)を添加する米添加工程を有する。前記米添加工程において、前記米(B)を添加する方法は特に限定されないが、前記米(B)の添加方法としては特に限定はなく、前記重合工程で、前記モノマー(A1)及び前記架橋剤(b)を含む単量体組成物の重合を前記米(B)の存在下で行う方法、前記細断工程で前記米(B)を添加する方法、前記乾燥工程で得られた吸水性樹脂組成物と前記米(B)を混練する方法、前記表面架橋工程で前記架橋重合体(A)と前記表面架橋剤(d)と前記米(B)とを混合する方法等が例示できる。前記重合工程で、前記モノマー(A1)及び前記架橋剤(b)を含む単量体組成物の重合を前記米(B)の存在下で行う場合、前記重合工程は、前記米添加工程を有する。前記細断工程で前記米(B)を添加する場合、前記細断工程は、前記米添加工程を有する。前記表面架橋工程で前記米(B)を添加する場合、前記表面架橋工程は、前記米添加工程を有する。吸水性能を向上させる観点から、前記米(B)は前記吸水性樹脂組成物中に分散していることが好ましいため、前記重合工程及び前記細断工程の少なくとも何れかが前記米添加工程を有することが好ましい。前記吸水性樹脂組成物における前記米(B)の分散性については、例えば、紫外光の透過率の測定や後述のヨウ素溶液中に吸水性樹脂粒子を入れ、膨潤ゲルとした状態で確認することができる。更に、測定で得た画像を画像処理ソフトウェア(例えば、WinROOF、等)で処理することで定量的に解析することもできる。
【0071】
当該米添加工程で添加する米(B)が含有する前記澱粉(B1)は、β構造を有していてもよく、α構造を有していてもよいが、前記澱粉(B1)がβ構造を有する場合は、事前に適当な量の水分の存在下70℃以上の温度環境において糊化(α化)させるとよい。なお、前記重合工程が前記米添加工程を有する場合、当該米添加工程で添加する米(B)が含有する前記澱粉(B1)がβ構造を有する場合は、当該重合工程において澱粉(B1)の結晶化構造をβ構造からα構造に変化(糊化)させることができる。前記澱粉(B1)がα構造を有する場合は、前記澱粉(B1)がβ構造を有する場合と比較して、前記重合工程や細断工程等において、前記米(B)の、前記モノマー(A1)や前記架橋重合体(A)との相溶性が向上するため、前記吸水性樹脂組成物の吸水性能が良化する。
【0072】
前記米(B)がα構造を有する前記澱粉(B1)を含む場合、前記米(B)を脱水することで前記澱粉(B1)の老化を抑制することができる。このような、乾燥させた、α構造を有する前記澱粉(B1)を含む前記米(B)を使用することにより、製造工程の短縮や、コスト削減を図ることが期待できる。なお、α構造を有する前記澱粉(B1)を含む前記米(B)は、β構造を有する前記澱粉(B1)を含む前記米(B)を水分の存在下で加熱して前記澱粉(B1)を糊化させた後、そのまま真空装置により雰囲気を減圧することで得られる。
【0073】
〔混練工程〕
本実施形態の吸水性樹脂組成物の製造方法は、前記架橋重合体(A)又は前記含水ゲルと、前記成分(C)と、を混練する混練工程を有してもよい。前記混練工程において、前記架橋重合体(A)又は前記含水ゲルと、前記成分(C)と、を混練する方法としては、円筒型混合機、スクリュー型混合機、スクリュー型押出機、タービュライザー、ナウター型混合機、双腕型ニーダー、流動式混合機、V型混合機、ミンチ混合機、リボン型混合機、流動式混合機、気流型混合機、回転円盤型混合機、コニカルブレンダー及びロールミキサー等の混合装置を用いて均一混合する方法が挙げられる。また、当該混練工程は、前記米添加工程を有していてもよい。
【0074】
〔粉砕工程〕
本実施形態の吸水性樹脂組成物の製造方法は、前記乾燥工程で得られた吸水性樹脂組成物を粉砕し、前記架橋重合体(A)を含有する粒子状の吸水性樹脂組成物を得る粉砕工程を有していてもよい。
【0075】
前記粉砕工程において、前記架橋重合体(A)を含有する吸水性樹脂組成物を粉砕する方法については、特に限定はなく、粉砕装置(例えば、ハンマー式粉砕機、衝撃式粉砕機、ロール式粉砕機及びシェット気流式粉砕機)等が使用できる。粉砕された架橋重合体(A)は、必要によりふるい分け等により粒度調整できる。
【0076】
〔表面架橋工程〕
前記架橋重合体(A)の表面を前記表面架橋剤(d)によって架橋する場合、本実施形態の吸水性樹脂組成物の製造方法は、前記乾燥工程で得られた、前記架橋重合体(A)を含有する吸水性樹脂組成物を表面架橋する表面架橋工程を有する。
【0077】
前記表面架橋剤(d)の使用量(重量%)は、表面架橋剤の種類、架橋させる条件、目標とする性能等により種々変化させることができるため特に限定はないが、吸収特性の観点等から、架橋重合体(A)の重量に基づいて、0.001~3が好ましく、更に好ましくは0.005~2、特に好ましくは0.01~1.5である。
【0078】
架橋重合体(A)の表面架橋は、架橋重合体(A)を含有する吸水性樹脂組成物と表面架橋剤(d)とを混合し、加熱することで行うことができる。架橋重合体(A)を含有する吸水性樹脂組成物と表面架橋剤(d)との混合方法としては、円筒型混合機、スクリュー型混合機、スクリュー型押出機、タービュライザー、ナウター型混合機、双腕型ニーダー、流動式混合機、V型混合機、ミンチ混合機、リボン型混合機、流動式混合機、気流型混合機、回転円盤型混合機、コニカルブレンダー及びロールミキサー等の混合装置を用いて架橋重合体(A)を含有する吸水性樹脂組成物と有機表面架橋剤(d)とを均一混合する方法が挙げられる。この際、表面架橋剤(d)は、水及び/又は任意の溶剤で希釈して使用しても良い。
【0079】
架橋重合体(A)と表面架橋剤(d)とを混合する際の温度は特に限定されないが、10~150℃が好ましく、更に好ましくは20~100℃、特に好ましくは25~80℃である。
【0080】
架橋重合体(A)と表面架橋剤(d)とを混合した後、通常、加熱処理を行う。加熱温度は、吸水性樹脂組成物の耐壊れ性の観点から好ましくは100~180℃、更に好ましくは110~175℃、特に好ましくは120~170℃である。180℃以下の加熱であれば蒸気を利用した間接加熱が可能であり設備上有利であり、100℃未満の加熱温度では吸収性能が悪くなる場合がある。また、加熱時間は加熱温度により適宜設定することができるが、吸収性能の観点から、好ましくは5~60分、更に好ましくは10~40分である。表面架橋して得られる吸水性樹脂組成物を、最初に用いた表面架橋剤と同種又は異種の表面架橋剤を用いて、更に表面架橋することも可能である。
【0081】
架橋重合体(A)の表面を表面架橋剤(d)により架橋した後、必要により篩別して粒度調整する。得られた粒子の平均粒経は、好ましくは100~600μm、更に好ましくは200~500μmである。微粒子の含有量は少ない方が好ましく、100μm以下の粒子の含有量は3重量%以下であることが好ましく、150μm以下の粒子の含有量が3重量%以下であることが更に好ましい。
【0082】
<吸収体>
前記吸水性樹脂組成物を用いて吸収体を得ることができる。吸収体としては、前記吸水性樹脂組成物を単独で用いても良く、他の材料と共に用いて吸収体としても良い。当該他の材料としては繊維状物等が挙げられる。繊維状物と共に用いた場合の吸収体の構造及び製造方法等は、公知のもの(特開2003-225565号公報、特開2006-131767号公報及び特開2005-097569号公報等)と同様である。
【0083】
上記繊維状物として好ましいのは、セルロース系繊維、有機系合成繊維及びセルロース系繊維と有機系合成繊維との混合物である。
【0084】
セルロース系繊維としては、例えばフラッフパルプ等の天然繊維、ビコースレーヨン、アセテート及びキュプラ等のセルロース系化学繊維が挙げられる。このセルロース系天然繊維の原料(針葉樹及び広葉樹等)、製造方法(ケミカルパルプ、セミケミカルパルプ、メカニカルパルプ及びCTMP等)及び漂白方法等は特に限定されない。
【0085】
有機系合成繊維としては、例えばポリプロピレン系繊維、ポリエチレン系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリエステル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリウレタン系繊維及び熱融着性複合繊維(融点の異なる上記繊維の少なくとも2種を鞘芯型、偏芯型、並列型等に複合化された繊維、上記繊維の少なくとも2種をブレンドした繊維及び上記繊維の表層を改質した繊維等)が挙げられる。
【0086】
これらの繊維状物の内で好ましいのは、セルロース系天然繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリエチレン系繊維、ポリエステル系繊維、熱融着性複合繊維及びこれらの混合繊維であり、更に好ましいのは、得られた吸水剤の吸水後の形状保持性に優れるという点で、フラッフパルプ、熱融着性複合繊維及びこれらの混合繊維である。
【0087】
上記繊維状物の長さ、太さについては特に限定されず、長さは1~200mm、太さは0.1~100デニールの範囲であれば好適に使用することができる。形状についても繊維状であれば特に限定されず、細い円筒状、スプリットヤーン状、ステープル状、フィラメント状及びウェブ状等が例示される。
【0088】
前記吸水性樹脂組成物粒子を、繊維状物と共に吸収体とする場合、前記吸水性樹脂組成物粒子と繊維の重量比率(吸水性樹脂組成物粒子の重量/繊維状物の重量)は40/60~90/10が好ましく、更に好ましくは70/30~80/20である。
【0089】
<吸収性物品>
前記吸水性樹脂組成物を用いて吸収性物品を得ることができる。具体的には、上記吸収体を用いる。吸収性物品としては、紙おむつや生理用ナプキン等の衛生用品のみならず、結露防止剤、農業・園芸用保水剤、廃血液固化剤、使い捨てカイロ等の各種産業分野用における各種水性液体の吸収や保持剤用途、ゲル化剤用途等の各種用途に使用されるものとして適用可能である。吸収性物品の製造方法等は、公知のもの(特開2003-225565号公報、特開2006-131767号公報及び特開2005-097569号公報等に記載のもの)と同様である。
【実施例0090】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、部は重量部、%は重量%を示す。なお、吸水性樹脂の生理食塩水に対する保水量、荷重下吸収量は以下の方法により測定した。
【0091】
<保水量の測定方法>
目開き63μm(JIS Z8801-1:2006)のナイロン網で作製したティーバッグ(縦20cm、横10cm)に測定試料1.00gを入れ、生理食塩水(食塩濃度0.9%)1,000ml中に無撹拌下、1時間浸漬した後引き上げて、15分間吊るして水切りした。その後、ティーバッグごと、遠心分離器にいれ、150Gで90秒間遠心脱水して余剰の生理食塩水を取り除き、ティーバックを含めた重量(h1)を測定し次式から保水量を求めた。なお、使用した生理食塩水及び測定雰囲気の温度は25℃±2℃であった。
保水量(g/g)=(h1)-(h2)
なお、(h2)は、測定試料の無い場合について上記と同様の操作により計測したティーバックの重量である。
【0092】
<荷重下吸収量の測定方法>
目開き63μm(JIS Z8801-1:2006)のナイロン網を底面に貼った円筒型プラスチックチューブ(内径:25mm、高さ:34mm)内に、30メッシュふるいと60メッシュふるいを用いて250~500μmの範囲にふるい分けした測定試料0.16gを秤量し、円筒型プラスチックチューブを垂直にしてナイロン網上に測定試料がほぼ均一厚さになるように整えた後、この測定試料の上に分銅(重量:306.2g、外径:24.5mm、)を乗せた。この円筒型プラスチックチューブ全体の重量(M1)を計量した後、生理食塩水(食塩濃度0.9%)60mlの入ったシャーレ(直径:12cm)の中に測定試料及び分銅の入った円筒型プラスチックチューブを垂直に立ててナイロン網側を下面にして浸し、60分静置した。60分後に、円筒型プラスチックチューブをシャーレから引き上げ、これを斜めに傾けて底部に付着した水を一箇所に集めて水滴として垂らすことで余分な水を除去した後、測定試料及び分銅の入った円筒型プラスチックチューブ全体の重量(M2)を計量し、次式から荷重下吸収量を求めた。なお、使用した生理食塩水及び測定雰囲気の温度は25℃±2℃であった。
荷重下吸収量(g/g)={(M2)-(M1)}/0.16
【0093】
<含水率の測定方法>
赤外水分測定器[(株)KETT社製JE400等:120±5℃、30分、加熱前の雰囲気湿度50±10%RH、ランプ仕様100V、40W]によりサンプル2.00gを加熱し、減少重量の加熱前サンプル重量に対する比を含水率(%)とした。
【0094】
<実施例1>
アクリル酸(三菱化学社製)220部、架橋剤(b)としてのペンタエリスリトールトリアリルエーテル(ダイソー社製)0.61部、及び脱イオン水770部を攪拌・混合してモノマー水溶液を調製し、この混合液を断熱重合可能な重合槽に投入した。溶液中に窒素ガスを導入することにより、溶液中の溶存酸素量を1ppm以下とし、溶液温度を5℃とした。この重合溶液に、2%の2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]水溶液3.3部、1%過酸化水素水溶液0.8部及び2%アスコルビン酸水溶液1.6部を添加・混合して重合を開始させた。重合開始を示す温度上昇が確認され約70℃に達した後、70±2℃で約12時間重合することにより含水ゲルを得た。
【0095】
アルファ米(尾西の白飯;尾西食品社製 含水率6.2%)100部を300mlコニカルビーカーにはかり取り、25℃のイオン交換水160部に1時間浸漬させ、水切りして、米(B-1)を得た。この時の米(B-1)の固形分含量は、36.1%であった。
【0096】
次にこの含水ゲル500部をミンチ機(ROYAL社製12VR-400K)で細断しながら、48.5%水酸化ナトリウム水溶液90部、米(B-1)14.9部を添加して混合・中和し、中和ゲル(中和度:72%)を得た。更に、中和した含水ゲルを通気型乾燥機{150℃、風速2m/秒}で50分間乾燥し、乾燥体を得た。乾燥体をジューサーミキサー(Oster社製OSTERIZER BLENDER)にて粉砕した後、ふるい分けして、目開き710~150μmの粒子径範囲に調整して、架橋重合体(A-1)を得た。
【0097】
ついで、得られた架橋重合体(A-1)100部を高速攪拌(細川ミクロン製高速攪拌タービュライザー:回転数2000rpm)しながら、有機表面架橋剤(d)としてのエチレングリコールジグリシジルエーテル0.01部、プロピレングリコール0.1部、及び水0.1部を混合した混合液を添加し、均一混合した後、140℃で40分間加熱して、本発明の吸水性樹脂組成物(P-1)を得た。
【0098】
<実施例2>
実施例1において、米(B-1)14.9部を31.3部に変更した以外、実施例1と同様にして本発明の吸水性樹脂組成物(P-2)を得た。
【0099】
<実施例3>
実施例1において、米(B-1)14.9部を282.1部に変更した以外、実施例1と同様にして本発明の吸水性樹脂組成物(P-3)を得た。
【0100】
<実施例4>
アクリル酸(三菱化学社製)155部、架橋剤(b)としてのペンタエリスリトールトリアリルエーテル(ダイソー社製)0.43部、及び脱イオン水840部を攪拌・混合してモノマー水溶液を調製し、この混合液を断熱重合可能な重合槽に投入した。溶液中に窒素ガスを導入することにより、溶液中の溶存酸素量を1ppm以下とし、溶液温度を5℃とした。この重合溶液に、2%の2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]水溶液2.3部、1%過酸化水素水溶液0.6部及び2%アスコルビン酸水溶液1.2部を添加・混合して重合を開始させた。重合開始を示す温度上昇が確認され約52℃に達した後、更に9時間熟成して含水ゲル状重合体を得た。
【0101】
次にこの含水ゲル500部をミンチ機(ROYAL社製12VR-400K)で細断しながら、48.5%水酸化ナトリウム水溶液65部、米(B-1)470部を添加して混合・中和し、中和ゲル(中和度:72%)を得た。更に、中和した含水ゲルを通気型乾燥機{150℃、風速2m/秒}で50分間乾燥し、乾燥体を得た。乾燥体をジューサーミキサー(Oster社製OSTERIZER BLENDER)にて粉砕した後、ふるい分けして、目開き710~150μmの粒子径範囲に調整して、架橋重合体(A-2)を得た。
【0102】
ついで、得られた架橋重合体(A-2)100部を高速攪拌(細川ミクロン製高速攪拌タービュライザー:回転数2000rpm)しながら、有機表面架橋剤(d)としてのエチレングリコールジグリシジルエーテル0.01部、プロピレングリコール0.1部、及び水0.1部を混合した混合液を添加し、均一混合した後、140℃で40分間加熱して、本発明の吸水性樹脂組成物(P-4)を得た。
【0103】
<実施例5>
アクリル酸(三菱化学社製)220部、架橋剤(b)としてのペンタエリスリトールトリアリルエーテル(ダイソー社製)0.61部、米(B-1)100部、及び脱イオン水770部を攪拌・混合してモノマー水溶液を調製し、この混合液を断熱重合可能な重合槽に投入した。溶液中に窒素ガスを導入することにより、溶液中の溶存酸素量を1ppm以下とし、溶液温度を5℃とした。この重合溶液に、2%の2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]水溶液3.3部、1%過酸化水素水溶液0.8部及び2%アスコルビン酸水溶液1.6部を添加・混合して重合を開始させた。重合開始を示す温度上昇が確認され約70℃に達した後、70±2℃で約12時間重合することにより含水ゲルを得た。
【0104】
次にこの含水ゲル500部をミンチ機(ROYAL社製12VR-400K)で細断しながら、48.5%水酸化ナトリウム水溶液65部を添加して混合・中和し、中和ゲル(中和度:72%)を得た。更に、中和した含水ゲルを通気型乾燥機{150℃、風速2m/秒}で50分間乾燥し、乾燥体を得た。乾燥体をジューサーミキサー(Oster社製OSTERIZER BLENDER)にて粉砕した後、ふるい分けして、目開き710~150μmの粒子径範囲に調整して、架橋重合体(A-3)を得た。
【0105】
ついで、得られた架橋重合体(A-3)100部を高速攪拌(細川ミクロン製高速攪拌タービュライザー:回転数2000rpm)しながら、有機表面架橋剤(d)としてのエチレングリコールジグリシジルエーテル0.01部、プロピレングリコール0.1部、及び水0.1部を混合した混合液を添加し、均一混合した後、140℃で40分間加熱して、本発明の吸水性樹脂組成物(P-5)を得た。
【0106】
<比較例1>
アクリル酸(a1-1)(三菱化学製)230部、架内部架橋剤(b-2)トリアリルペンタエリスリトール(TCI製)0.63部及び脱イオン水760部を攪拌・混合しながら3℃に保った。この混合物中に窒素を流入して溶存酸素量を1ppm以下とした後、2%の2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]水溶液3.4部、1%過酸化水素水溶液0.89部、2%アスコルビン酸水溶液1.7及を添加・混合して重合を開始させた。混合物の温度が90℃に達した後、90±2℃で約12時間重合することにより含水ゲルを得た。
【0107】
次にこの含水ゲルをミンチ機(ROYAL社製12VR-400K)で細断しながら、48.5%水酸化ナトリウム水溶液261部を添加して混合・中和し、中和ゲル(中和度:72%)を得た。更に、中和した含水ゲルを通気型乾燥機{150℃、風速2m/秒}で50分間乾燥し、乾燥体を得た。乾燥体をジューサーミキサー(Oster社製OSTERIZER BLENDER)にて粉砕した後、ふるい分けして、目開き710~150μmの粒子径範囲に調整して、架橋重合体(A-4)を得た。
【0108】
ついで、得られた架橋重合体(A-4)100部を高速攪拌(細川ミクロン製高速攪拌タービュライザー:回転数2000rpm)しながら、有機表面架橋剤(d)としてのエチレングリコールジグリシジルエーテル0.03部、プロピレングリコール0.5部、及び水0.5部を混合した混合液を添加し、均一混合した後、140℃で40分間加熱して、比較用の吸水性樹脂組成物(R-1)を得た。
【0109】
【表1】
【0110】
表1の結果から、本発明の吸水性樹脂組成物は、植物原料である米を含有し、かつ、従来のポリアクリル酸系吸収性樹脂組成物と比べても遜色なく衛生材料などとして使用できることがわかる。