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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122786
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】壁面開口部の閉塞構造
(51)【国際特許分類】
   H02B 1/30 20060101AFI20230829BHJP
   H05K 5/03 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
H02B1/30 E
H05K5/03 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026490
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】小松田 ゆう子
【テーマコード(参考)】
4E360
【Fターム(参考)】
4E360BA11
4E360BD06
4E360EA05
4E360EA24
4E360GB94
(57)【要約】
【課題】制御盤や配電盤の扉などの壁板に形成された開口部を塞ぐにあたって、壁板の外観が損なわれることがなく、しかも、穴開け加工が不要で、一人作業で安全に行うことが可能な壁面開口部の閉塞構造を提供する。
【解決手段】扉2(壁板)の開口部3を塞ぐ状態で扉2に重ねられた表面板4と、表面板4の裏面4aに溶接された上部ボルト5および下部ボルト6とを備える。上部ボルト5、下部ボルト6が貫通する上部貫通孔15、下部貫通孔17を有し、扉2の裏面2bに重ねられた上部背面板11、下部背面板12と、上部ボルト5と下部ボルト6にねじ込まれて上部背面板11、下部背面板12を扉2に押し付けるナット13を備える。表面板4は、開口部3を塞ぐことが可能な大きさに形成され、上部背面板11、下部背面板12と協働して扉2を挟むことにより扉2に保持される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁板に形成された開口部を塞ぐ状態で前記壁板の表面に重ねられた表面板と、
前記表面板の裏面に溶接され、前記開口部を通して前記壁板の裏側に突出するボルトと、
前記ボルトが貫通する貫通孔を有し、前記ボルトが前記貫通孔に挿通された状態で前記壁板の裏面に重ねられた背面板と、
前記ボルトにねじ込まれて前記背面板を前記壁板の前記裏面に押し付けるナットとを備え、
前記表面板は、前記開口部を塞ぐことが可能な大きさに形成され、前記背面板と協働して前記壁板を挟むことにより前記壁板に保持されていることを特徴とする壁面開口部の閉塞構造。
【請求項2】
請求項1に記載の壁面開口部の閉塞構造において、
前記ボルトは、前記表面板の水平方向の両側にそれぞれ設けられ、
前記背面板は、前記開口部を水平方向に横切る大きさに形成されていることを特徴とする壁面開口部の閉塞構造。
【請求項3】
請求項2に記載の壁面開口部の閉塞構造において、
前記背面板は、前記開口部の下側の開口縁に載せられる突起を有し、
前記貫通孔は、前記突起より上方に形成されているとともに、前記ボルトに対する前記背面板の上下方向への移動が許容される形状に形成されていることを特徴とする壁面開口部の閉塞構造。
【請求項4】
請求項1記載の壁面開口部の閉塞構造において、
前記ボルトは、前記表面板の上部であって水平方向の両側にそれぞれ設けられた上部ボルトと、前記表面板の下部であって水平方向の両側にそれぞれ設けられた下部ボルトとからなり、
前記背面板は、前記上部ボルトが貫通する上部貫通孔を有する上部背面板と、前記下部ボルトが貫通する下部貫通孔を有する下部背面板とによって構成され、
前記上部背面板と前記下部背面板は、それぞれ前記開口部を水平方向に横切る大きさに形成され、
前記上部背面板は、前記開口部の上側の開口縁に下方から接触可能な上部突起を有し、
前記下部背面板は、前記開口部の下側の開口縁に載せられる下部突起を有し、
前記上部貫通孔は、前記上部突起より下方に形成されているとともに、前記上部ボルトに対する前記上部背面板の上下方向への移動が許容される形状に形成され、
前記下部貫通孔は、前記下部突起より上方に形成されているとともに、前記下部ボルトに対する前記下部背面板の上下方向への移動が許容される形状に形成されていることを特徴とする壁面開口部の閉塞構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁板の開口部を壁板の表面に閉塞用の板部材のみが露出する状態で閉塞する壁面開口部の閉塞構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ビルシステムに用いる製品として、制御盤の扉に取付穴を開けて設置する製品がある。このような製品を扉とは異なる場所に移設した場合は、扉に取付穴だけが残ってしまう。制御盤や配電盤などの自立盤の開口部は、例えば特許文献1に記載されているように、保安性を確保するとともに外観が損なわれることを防ぐために、平板などの蓋板で開口部を塞がなければならない。制御盤や配電盤の扉などの壁板の開口部を蓋板で塞ぐにあたっては、壁板の開口部の周囲に貫通孔を穿設し、この貫通孔に通したボルトを使用して蓋板を壁板に固定することが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-341621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
制御盤や配電盤の扉などの壁板に蓋板を取付けて開口部を塞ぐにあたっては、以下のような課題がある。
(1)壁板に蓋板固定用の貫通孔を穿設する際に騒音が生じる。壁板の近くに第三者が居る場合は、騒音が迷惑になる。
(2)壁板に蓋板固定用の貫通孔の穿設する際に生じる切りくずが壁板の内側に設置されている機器に入り、この機器が故障するおそれがある。
(3)壁板の正面に取付用ボルトの頭部が露出していると、壁板の外観が損なわれる。
(4)蓋板を壁板に取付ける作業は、壁板の正面から蓋板を押さえる作業者と、壁板の裏側で固定作業を行う作業者とが必要になる。
(5)蓋板を壁板に取付ける作業を一人で行うと、蓋板を固定する作業中に部品を落下させるおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、制御盤や配電盤の扉などの壁板に形成された開口部を塞ぐにあたって、壁板の外観が損なわれることがなく、しかも、穴開け加工が不要で、一人作業で安全に行うことが可能な壁面開口部の閉塞構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するために本発明に係る壁面開口部の閉塞構造は、壁板に形成された開口部を塞ぐ状態で前記壁板の表面に重ねられた表面板と、前記表面板の裏面に溶接され、前記開口部を通して前記壁板の裏側に突出するボルトと、前記ボルトが貫通する貫通孔を有し、前記ボルトが前記貫通孔に挿通された状態で前記壁板の裏面に重ねられた背面板と、前記ボルトにねじ込まれて前記背面板を前記壁板の前記裏面に押し付けるナットとを備え、前記表面板は、前記開口部を塞ぐことが可能な大きさに形成され、前記背面板と協働して前記壁板を挟むことにより前記壁板に保持されているものである。
【0007】
本発明は、前記壁面開口部の閉塞構造において、前記ボルトは、前記表面板の水平方向の両側にそれぞれ設けられ、前記背面板は、前記開口部を水平方向に横切る大きさに形成されていてもよい。
【0008】
本発明は、前記壁面開口部の閉塞構造において、前記背面板は、前記開口部の下側の開口縁に載せられる突起を有し、前記貫通孔は、前記突起より上方に形成されているとともに、前記ボルトに対する前記背面板の上下方向への移動が許容される形状に形成されていてもよい。
【0009】
本発明は、前記壁面開口部の閉塞構造において、前記ボルトは、前記表面板の上部であって水平方向の両側にそれぞれ設けられた上部ボルトと、前記表面板の下部であって水平方向の両側にそれぞれ設けられた下部ボルトとからなり、前記背面板は、前記上部ボルトが貫通する上部貫通孔を有する上部背面板と、前記下部ボルトが貫通する下部貫通孔を有する下部背面板とによって構成され、前記上部背面板と前記下部背面板は、それぞれ前記開口部を水平方向に横切る大きさに形成され、前記上部背面板は、前記開口部の上側の開口縁に下方から接触可能な上部突起を有し、 前記下部背面板は、前記開口部の下側の開口縁に載せられる下部突起を有し、前記上部貫通孔は、前記上部突起より下方に形成されているとともに、前記上部ボルトに対する前記上部背面板の上下方向への移動が許容される形状に形成され、前記下部貫通孔は、前記下部突起より上方に形成されているとともに、前記下部ボルトに対する前記下部背面板の上下方向への移動が許容される形状に形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、背面板が壁板の裏側に位置する状態でナットを締め込んで表面板を壁板の表面に重ねることによって、開口部を表面板で塞ぐことができる。壁板の表面には表面板のみが露出するだけであり、表面板の取付けは、穴開け作業を行うことなく、壁板の裏側から一人で行うことがきる。
したがって、制御盤や配電盤の扉などの壁板に形成された開口部を塞ぐにあたって、壁板の外観が損なわれることがなく、しかも、穴開け加工が不要で、一人作業で安全に行うことが可能な壁面開口部の閉塞構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明に係る壁面開口部の閉塞構造を示す断面図である。
図2図2は、壁面開口部の閉塞構造の正面図である。
図3図3は、壁面開口部の閉塞構造の分解斜視図である。
図4図4は、表面板組立体の断面図である。
図5図5は、表面板組立体を開口部に通している状態を示す斜視図である。
図6図6は、表面板組立体を開口部の開口縁に係合させる動作を説明するための閉塞構造の斜視図と断面図である。
図7図7は、下部ボルトの位置を調整する動作を説明するための要部の断面図である。
図8図8は、上部背面板が取り付けられた表面板組立体の断面図である。
図9図9は、ねじ先カバーを取付ける行程を示す表面板組立体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る壁面開口部の閉塞構造の一実施の形態を図1図9を参照して詳細に説明する。
図1に示す壁面開口部の閉塞構造1は、図示していない制御盤や配電盤などの自立盤に用いられている開閉式の扉2に形成されている開口部3を閉塞するものである。この実施の形態においては、扉2が本発明でいう「壁板」に相当する。
開口部3の開口形状は、この実施の形態においては、図2に示すように扉2を正面から見た状態で左右方向に長い長方形である。
【0013】
開口部3は、閉塞構造1の表面板4によって閉塞されている。表面板4は、図2に示すように、開口部3より大きい長方形の金属板で、図1に示すように、開口部3を塞ぐ状態で扉2の表面2aに重ねられている。図1図2におけるI-I線断面図である。図2は、表面板4の一部を破断して描いてある。表面板4の長辺の長さ(左右方向の長さ)W1は、開口部3の左右方向の開口幅W2より長い。また、表面板4の短辺の長さ(上下方向の長さ)H1は、開口部3の上下方向の開口幅H2より大きい。この実施の形態による表面板4の短辺の長さH1は、開口部3の左右方向の開口幅W2より短い。このため、表面板4は、短辺が水平になる姿勢とすることにより、開口部3を通して扉2の裏側から表側に出すことが可能である。
【0014】
図3に示すように、表面板4の上部であって水平方向の両側には、それぞれ上部ボルト5が起立する状態で溶接されている。また、表面板4の下部であって水平方向の両側には、それぞれ下部ボルト6が起立する状態で溶接されている。これらの上部ボルト5と下部ボルト6は、図1に示すように表面板4が扉2に重ねられた状態において扉2の開口部3の中に挿入される位置に配置されている。これらの上部ボルト5および下部ボルト6と表面板4との溶接は、図1に示すように、上部ボルト5および下部ボルト6の外周面と表面板4の裏面4aとに跨がって溶接ビード7が形成されるように行われている。
【0015】
また、上部ボルト5と下部ボルト6は、図1に示すように表面板4が扉2に重ねられた状態において、開口部3を通して扉2の裏側に突出する長さを有しており、後述する上部背面板11と下部背面板12とを貫通している。上部ボルト5および下部ボルト6の長さは、開口部3の上下方向の開口幅H2より短い。また、これらの上部ボルト5および下部ボルト6には、それぞれナット13がねじ込まれているとともに、ねじ先カバー14が取付けられている。ナット13は、上部ボルト5と下部ボルト6とにねじ込まれることにより上部背面板11と下部背面板12とをそれぞれ扉2の裏面2bに押し付ける。
ねじ先カバー14は、柔軟性を有する材料によってキャップ状に形成されており、上部ボルト5の先端部や下部ボルト6の先端部が挿入された状態で上部ボルト5および下部ボルト6に取付けられている。
【0016】
上部背面板11と下部背面板12は、それぞれ金属板によって形成されている。上部背面板11と下部背面板12の形状は、水平方向に長い長方形である。これらの上部背面板11と下部背面板12は、扉2の開口部3を水平方向に横切る大きさに形成されている。
上部背面板11は、上部ボルト5が貫通する上部貫通孔15と、表面板4に向けて突出する上部突起16とを有している。上部貫通孔15は、上部突起16より下方に形成されているとともに、上部ボルト5に対する上部背面板11の上下方向への移動が許容されるように、上下方向に長い形状に形成されている。上部突起16は、詳細には図示してはいないが、上部背面板11の一部を加圧成形によって表面側に突出させて形成されている。この上部背面板11は、図1に示すように、上部ボルト5が上部貫通孔15に挿通されるとともに、上部突起16が開口部3内に入る状態で扉2の裏面2bに重ねられる。上部突起16は、開口部3の上側の開口縁3aに下方から接触可能である。
【0017】
下部背面板12は、下部ボルト6が貫通する下部貫通孔17と、表面板4に向けて突出する下部突起18とを有している。この実施の形態においては、下部背面板12が請求項3に記載した発明における「背面板」に相当する。
下部貫通孔17は、下部突起18より上方に形成されているとともに、下部ボルト6に対する下部背面板12の上下方向への移動が許容されるように、上下方向に長い形状に形成されている。下部突起18は、上部突起16と同様に、下部背面板12に加圧成形によって形成されている。
【0018】
この下部背面板12は、図1に示すように、下部ボルト6が下部貫通孔17に挿通されるとともに、下部突起18が開口部3内に入って開口部3の下側の開口縁3bに載せられた状態で扉2の裏面2bに重ねられる。
この実施の形態による上部背面板11と下部背面板12は、上下方向に対称に形成されており、同一の形状に形成することができる。すなわち、1種類の背面板を上部背面板11あるいは下部背面板12として使用することができる。
【0019】
次に、上述した壁面開口部の閉塞構造1によって扉2の開口部3を塞ぐ際の手順を図4図9を参照して説明する。開口部3を塞ぐにあたっては、先ず、図4に示す表面板組立体21を組立てる。表面板組立体21は、上部ボルト5と下部ボルト6とが溶接された表面板4と、2本の下部ボルト6が下部貫通孔17に通されることにより下部ボルト6に支持された下部背面板12と、下部ボルト6の先端部にねじ込まれたナット13とによって構成されている。
【0020】
下部背面板12を下部ボルト6に支持させるにあたっては、下部突起18が表面板4に向けて突出し、下部貫通孔17が下部突起18より上に位置するように行う。この下部背面板12は、下部ボルト6に沿って移動可能である。
扉2の開口部3を塞ぐにあたって、作業者(図示せず)が扉2の表側と裏側とに容易に行き来できない場合は、扉2の裏側から作業を行う。この場合、図5に示すように表面板組立体21を扉2の裏側から開口部3に通し、扉2の表側に持ち出す。この作業は、例えば、表面板4の短辺が水平になるように表面板組立体21を倒し、上部ボルト5と下部ボルト6を開口部3に通すことによって行うことができる。
【0021】
次に、下部背面板12を扉2の表側から開口部3を通して扉2の裏側に戻す。この作業を行うにあたっては、先ず、例えば図6(A)に示すように、表面板組立体21を左右方向に傾斜させて下部背面板12の左右方向の一方の端部を開口部3に挿入する。図6(A)は、開口部3を通す際の表面板組立体21の斜視図である。そして、下部背面板12を表面板4に対して表面板4から離れる方向に移動させて下部背面板12と表面板4との間の間隔を拡げ、さらに、表面板組立体21を左右方向に平行移動させて、下部背面板12の左右方向の一方の端部と表面板4との間に開口部3の開口縁を挿入する。
【0022】
次に、表面板組立体21を左右方向の他方に傾斜させるようにして下部背面板12の他方の端部を開口部3内に挿入する。そして、図6(B)に示すように、下部背面板12の左右方向の両端部が扉2の裏面2bと対向するように、表面板組立体21を左右方向に移動させる。図6(B)は、開口部3に対する位置が決められた表面板組立体21の斜視図である。その後、図6(C)に示すように、表面板組立体21を下げて下部ボルト6を開口部3の下側の開口縁3bに載せる。図6(C)は、扉2に仮に取り付けられた表面板組立体21の断面図である。このように下部ボルト6が開口部3の開口縁3bに載せられた状態においては、表面板4と下部背面板12との間に扉2が挟まれるために、作業者が表面板組立体21から手を放したとしても表面板組立体21が扉2に保持される。この状態に達するまでの上記の行程は、扉2の表側からでも行うことが可能である。
【0023】
下部ボルト6と表面板4との境界となる部分には溶接ビード7が形成されている。このため、図7(A)に示すように、下部ボルト6を開口部3の下側の開口縁に載せた状態では溶接ビード7が扉2に当たるために表面板4を扉2の表面2aに重ねることはできず、表面板4と扉2との間に隙間dが生じる。図7(A)~(C)は、表面板組立体と扉2の一部を拡大して示す断面図である。このように隙間dが生じることを防ぐために、図7(B)に示すように、表面板組立体21を僅かに持ち上げるようにして下部背面板12の下部突起18を開口部3の下側の開口縁3bに載せる。下部突起18が開口縁3bに載せられることにより、溶接ビード7が開口縁3bより上方に退くために、表面板4を扉2の表面2aに重ねることができるようになる。この状態でナット13を手で締め込み、下部背面板12と表面板4とによって扉2を挟む{図7(C)参照}。すなわち、表面板4は、下部背面板12と協働して扉2を挟むことにより扉2に保持されることになる。
【0024】
このように表面板組立体21を扉2に仮に取付けた後、図8に示すように、表面板組立体21に上部背面板11を取付ける。上部背面板11を表面板組立体21に取付けるにあたっては、先ず、上部背面板11を上部突起16が表面板4に向けて突出するとともに上部貫通孔15が上部突起16より下に位置する姿勢として上部貫通孔15に上部ボルト5を挿通させる。そして、上部突起16が開口部3の中に入るように上部背面板11の上下方向の位置を調整し、上部ボルト5にナット13を締め込んでナット13で上部背面板11を押して扉2の裏面2bに重ねる。その後、2本の下部ボルト6に螺合しているナット13と、2本の上部ボルト5に螺合しているナット13とをそれぞれ工具(図示せず)によって所定の締め付けトルクで締め込む。そして、図9に示すように、上部ボルト5の先端部と下部ボルト6の先端部とにそれぞれねじ先カバー14を取付ける。ねじ先カバー14が上部ボルト5と下部ボルト6とに取り付けられることにより、表面板組立体21を扉2に取付ける作業が完了し、扉2の開口部3が表面板4によって閉塞されることになる。
【0025】
このように構成された壁面開口部の閉塞構造1においては、上部背面板11と下部背面板12が扉2の裏側に位置する状態でナット13を締め込んで表面板4を扉2の表面2aに重ねることによって、開口部3を表面板4で塞ぐことができる。扉2の表面2aには表面板4のみが露出するだけであり、表面板4の取付けは、穴開け作業を行うことなく、扉2の裏側から一人で行うことができる。
したがって、この実施の形態によれば、制御盤や配電盤の扉2に形成された開口部3を塞ぐにあたって、扉の外観が損なわれることがなく、しかも、穴開け加工が不要で、一人作業で安全に行うことが可能な壁面開口部の閉塞構造を提供することができる。
【0026】
この実施の形態による下部ボルト6は、表面板4の水平方向の両側にそれぞれ設けられている。下部背面板12は、開口部3を水平方向に横切る大きさに形成されている。このため、下部背面板12が扉2の裏側に位置する状態で下部ボルト6を開口部3の下側の開口縁3bに載せることによって、表面板4を扉2に仮に保持させることができる。したがって、作業者が表面板4や下部背面板12などから手を放しても全ての部材が扉2に保持されるから、作業者が工具を手に取ったり、ナット13を締め込む作業を簡単に行うことができる。
【0027】
この実施の形態による下部背面板12は、開口部3の下側の開口縁3bに載せられる下部突起18を有している。下部貫通孔17は、下部突起18より上方に形成されているとともに、下部ボルト6に対する下部背面板12の上下方向への移動が許容される形状に形成されている。このため、下部突起18を開口部3の下側の開口縁3bに載せることで下部ボルト6の溶接部の溶接ビード7と扉2との干渉を避けることができるから、表面板4を扉2に隙間なく密着させて外観向上を図ることができる。
【0028】
この実施の形態による壁面開口部の閉塞構造1は、上部背面板11と下部背面板12とを用いて表面板4を扉2に取付ける構成が採られている。上部背面板11と下部背面板12は、いずれも開口部3を水平方向に横切る大きさに形成されている。上部背面板11は上部突起16と上部貫通孔15を有し、下部背面板12は下部突起18と下部貫通孔17とを有している。上部貫通孔15は上部突起16より下方に位置し、下部貫通孔17は下部突起18より上方に位置している。このため、表面板4を扉2に上部背面板11と下部背面板12とによって強固に取付けることが可能な構成を採っているにもかかわらず、上部背面板11と下部背面板12は上下方向に対称に形成されているために共通の一つの部品として形成することができるから、製造コストを可及的低く抑えることができる。
【0029】
上述した実施の形態においては上部背面板11と下部背面板12とを使用して表面板4を扉2に取付ける例を示したが、本発明は、このような限定にとらわれることなく、1枚の背面板を使用して表面板4を扉2に取付けることができる。この場合は、表面板4の例えば中央部に1本あるいは複数本のボルトを立設し、開口部3を横切る形状の1枚の背面板と表面板4とで扉2を挟む。
【符号の説明】
【0030】
1…壁面開口部の閉塞構造、2…扉(壁板)、3…開口部、3a,3b…開口縁、4…表面板、5…上部ボルト、6…下部ボルト、11…上部背面板、12…下部背面板、13…ナット、15…上部貫通孔、16…上部突起、17…下部貫通孔、18…下部突起。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9