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特開2023-122814現状業務再現装置、将来シナリオ評価装置及びこれらを備えた業務設計支援システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122814
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】現状業務再現装置、将来シナリオ評価装置及びこれらを備えた業務設計支援システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/04 20230101AFI20230829BHJP
   G06Q 10/00 20230101ALI20230829BHJP
   G06Q 10/0631 20230101ALI20230829BHJP
【FI】
G06Q10/04
G06Q10/00
G06Q10/06 302
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026538
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】渡部 潤也
(72)【発明者】
【氏名】河野 敏明
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA04
5L049AA06
(57)【要約】
【課題】日々変化する事業環境を反映して業務設計の効果やリスクを評価し、状況に応じた適切な業務施策を提案する装置を提供する。
【解決手段】
現状業務再現装置101は、業務ログデータを取得するデータ取得部103と、前記業務ログデータによって生成された現状業務のシナリオを用いたシミュレーションから仮想ログデータを作成するシミュレーション部105と、前記業務ログデータの集計・統計値と前記仮想ログデータの集計・統計値とを比較し、差分(信頼度)を算出するログ集計・比較部106と、を備える。
将来シナリオ評価装置102は、外乱パタン又は施策パタンを考慮し生成された将来シナリオ及び前記現状業務のシナリオを用いてシミュレーションモデルを生成する行うシミュレーション部111と、前記シミュレーションモデルからKPIを計算し、前記将来シナリオを評価するシナリオ評価部113と、を備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
現状業務を再現する現状業務再現装置であって、
業務システムから実際の業務に関する業務ログデータを取得するデータ取得部と、前記データ取得部で取得した業務ログデータによって生成された現状業務のシナリオを用いて業務のシミュレーションを行い仮想的な仮想ログデータを作成するシミュレーション部と、前記業務ログデータと前記仮想ログデータとを集計・統計処理し、前記業務ログデータの集計・統計値と前記仮想ログデータの集計・統計値とを比較し、差分である信頼度を算出するログ集計・比較部と、
を備えたことを特徴とする現状業務再現装置。
【請求項2】
請求項1に記載の現状業務再現装置において、
前記信頼度と予め設定された閾値とを比較する判定部と、前記判定部で比較された前記信頼度が前記閾値よりも大きい場合に前記現状業務のシナリオのパラメータを調整するパラメータ調整部と、
を備えたことを特徴とする現状業務再現装置。
【請求項3】
将来シナリオを評価する将来シナリオ評価装置であって、
外乱パタンまたは施策パタンを考慮して生成された将来シナリオを用いてシミュレーションモデルを生成するシミュレーション部と、前記シミュレーション部で生成されたシミュレーションモデルからKPI(Key Performance Indicator)を計算し、前記将来シナリオを評価する評価部と、
を備えたことを特徴とする将来シナリオ評価装置。
【請求項4】
業務システムからのデータに基づく業務支援を行う業務設計支援システムであって、
現状業務を再現する現状業務再現装置と、将来シナリオを評価する将来シナリオ評価装置とを備え、
前記現状業務再現装置は、
業務システムから実際の業務に関する業務ログデータを取得するデータ取得部と、前記データ取得部で取得した業務ログデータによって生成された現状業務のシナリオを用いて業務のシミュレーションを行い仮想的な仮想ログデータを作成する第1シミュレーション部と、前記業務ログデータと前記仮想ログデータとを集計・統計処理し、前記業務ログデータの集計・統計値と前記仮想ログデータの集計・統計値とを比較し、差分である信頼度を算出するログ集計・比較部と、
を備え、
前記将来シナリオ評価装置は、
外乱パタンまたは施策パタンを考慮して生成された将来シナリオ及び前記現状業務のシナリオを用いてシミュレーションモデルを生成する行う第2シミュレーション部と、前記第2シミュレーション部で生成されたシミュレーションモデルからKPI(Key Performance Indicator)を計算し、前記将来シナリオを評価するシナリオ評価部と、
を備えたことを特徴とする業務設計支援システム。
【請求項5】
請求項4に記載の業務設計支援システムにおいて、
前記信頼度と予め設定された閾値とを比較する判定部と、前記判定部で比較された前記信頼度が前記閾値よりも大きい場合に前記現状業務のシナリオのパラメータを調整するパラメータ調整部と、
を備えたことを特徴とする業務設計支援システム。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の業務設計支援システムにおいて、
前記ログ集計・比較部は、前記業務ログデータと前記仮想ログデータを集計する期間あるいは時間間隔を変更した複数の信頼度を算出することを特徴とする業務設計支援システム。
【請求項7】
請求項5において、
現状シナリオを格納する現状シナリオ格納部を備え、
前記判定部で比較された前記信頼度が前記閾値よりも小さい場合に前記現状業務のシナリオを格納する現状シナリオ格納部を備えたことを特徴とする業務設計支援システム。
【請求項8】
請求項4又は5に記載の業務設計支援システムにおいて、
前記将来シナリオ評価装置は、前記外乱パタンごとに前記将来シナリオで変更する条件パラメータをセットで用意していることを特徴とする業務設計支援システム。
【請求項9】
請求項4又は5に記載の業務設計支援システムにおいて、
前記将来シナリオ評価装置は、前記施策パタンごとに前記将来シナリオで変更する条件パラメータをセットで用意していることを特徴とする業務設計支援システム。
【請求項10】
請求項4又は5に記載の業務設計支援システムにおいて、
前記業務ログデータから算出したKPIの実績値、前記ログ集計・比較部で算出した前記信頼度、前記外乱パタンによるKPIの変動幅のうち少なくとも一つを、前記施策パタンの将来シナリオのKPI予測値と合わせて提示することを特徴とする業務設計支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保全業務などの各種業務の設計、改善を支援する現状業務再現装置、将来シナリオ評価装置及びこれらを備えた業務設計支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、事業環境の変化が目まぐるしく、様々な業界で、事業環境に応じた業務設計の見直しや改善が求められている。例えば、インフラストラクチャー(infrastructure)、鉄道、産業機器、医療機器などの保全業務では、アセット(設備)の安全かつ安定した運用のために、点検・修理などの保全を継続的に実施する必要がある。このような保全においては、アセットの稼働状況や運用特性、作業員や工具などの保全リソース状況などを考慮して、組織体制や作業基準などが設計されているが、事業環境が変化すると、何らかの業務施策を講じて環境に合った保全業務設計に見直すことが必要である。このような業務施策の構築を支援する方法が特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1には、所定の業務施策のもとでサービス提供者が行うサービス業務についてシミュレーションを実行することで、仮想の業務履歴を生成する業務シミュレータ部と、前記業務シミュレータ部に、異なる内容の業務施策のもとで、順次、シミュレーションを実行させることで、それぞれの業務施策に対応する仮想の業務履歴を取得する取得部と、前記取得部が取得した前記仮想の業務履歴に基づいて算出される評価値が所定の条件を満たす場合に、該仮想の業務履歴に対応する業務施策を、該評価値と対応付けて出力する出力部とを有する業務施策構築支援システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-208035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
社会・環境・顧客・技術など事業環境が急変する中、日々の状況変化を的確に捉え、しなやかに事業変革を継続することが企業の持続的発展の要となっている。上記特許文献1には、仮想の業務履歴を生成する業務シミュレーションにより評価値を算出することで良好な業務施策の提示する方法が記載されているが、業務シミュレーションで生成した仮想の業務履歴が実世界の業務履歴を正しく反映しているか比較されておらず、シミュレーションの評価値が信頼できるかどうか確証が乏しいものであった。このため、特許文献1では、日々変化する実世界の業務をリアルタイムに反映し、予測の信頼性を確保した評価することができなかった。
【0006】
本発明の目的は、日々変化する事業環境を反映して業務設計の効果やリスクを評価し、状況に応じた適切な業務施策を提案する装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために代表的な本発明の業務設計支援システムの一つは、現状業務を再現する現状業務再現装置と、将来シナリオを評価する将来シナリオ評価装置とを備え、前記現状業務再現装置は、業務システムから実際の業務に関する業務ログデータを取得するデータ取得部と、前記データ取得部で取得した業務ログデータによって生成された現状業務のシナリオを用いて業務のシミュレーションを行い仮想的な仮想ログデータを作成する第1シミュレーション部と、前記業務ログデータと前記仮想ログデータとを集計・統計処理し、前記業務ログデータの集計・統計値と前記仮想ログデータの集計・統計値とを比較し、差分である信頼度を算出するログ集計・比較部と、を備え、前記将来シナリオ評価装置は、外乱パタンまたは施策パタンを考慮して生成された将来シナリオ及び前記現状業務のシナリオを用いてシミュレーションモデルを生成する第2シミュレーション部と、前記第2シミュレーション部で生成されたシミュレーションモデルからKPI(Key Performance Indicator)を計算し、前記将来シナリオを評価するシナリオ評価部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、日々変化する事業環境を反映して業務設計の効果やリスクを評価し、状況に応じた適切な業務施策を提案する装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例1に係る業務設計支援システム100の機能ブロック図である。
図2A】アセット稼働ログの一例を示す図である。
図2B】作業員行動ログの一例を示す図である。
図3A】ログデータを月単位で集計した場合の一例を示す図である。
図3B】ログデータを週単位で集計した場合の一例を示す図である。
図4A】ログデータを拠点単位で集計した場合の一例を示す図である。
図4B】スキル単位で集計した場合の一例を示す図である。
図5】外乱パタンを設定する画面の一例を示す図である。
図6】施策パタンの設定画面の一例を示す図である。
図7】KPI設定画面の一例を示す図である。
図8】評価結果の出力画面の一例を示す図である。
図9】本発明の実施例1に係る現状業務再現装置101の処理を示すフローチャートである。
図10】本発明の実施例1に係る将来シナリオ評価装置102の処理を示すフローチャートである。
図11】本発明の実施例2に係る業務設計支援システムの機能ブロック図である。
図12】本発明の実施例2に係る現状業務再現装置101の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。各実施例では、業務の例として、保全業務を例に説明するが、これに限定されない。各実施例は、他にも、金融業、運送業などのサービス業、化学、自動車等の製造業、農業などにも適用できる。
【0011】
なお、保全業務には、点検、修理、保守などの各種作業が含まれる。また、保全業務の対象となるアセットには、設備、機器、機械、製品などの各種物品が含まれる。
【実施例0012】
図1は、本発明の実施例1に係る業務設計支援システム100の機能ブロック図である。実施例1は、現状業務再現装置101、将来シナリオ評価装置102、現状シナリオ格納部109、表示部114を有する。
【0013】
現状業務再現装置101は、データ取得部103、現状シナリオ生成部104、シミュレーション部105、ログ集計・比較部106を備えている。現状業務再現装置101は、現実の業務システムの情報に合わせてシナリオを生成し、シミュレーションにより現状業務をコンピュータ上で再現する。
【0014】
データ取得部103は、現実世界の業務システム1000から業務に関する情報を取得する。業務に関する情報として、例えば、資産管理システムに登録されたアセットの型式、設計情報、所在、経過年数、台数などの情報、業務管理システムに登録された従業員の勤怠情報、所属、保有資格、作業ログなどの情報、アセット性能管理システムや状態監視システムに保存されたアセットの稼働ログ、故障ログ、イベントログ、センサーデータなどの情報がある。データ取得部は、指定したタイミングで定期的に指定期間分の業務データを取得する。業務システムとしては、例えばEAM(Enterprise Asset Management:企業資産管理)、APM(Asset Performance Management:設備パフォーマンス管理)、FSM(Field Service Management:フィールドサービス管理)等がある。
【0015】
現状シナリオ生成部104は、データ取得部103で取得した業務ログデータを基に、現状の業務の状態や条件を定義するシナリオを生成する。シナリオは、業務を実行する人員や組織の情報、業務に関わるアセットの情報、業務を構築するシステムの情報、業務の実行ルールに関わる業務プロセスの情報など、多種多様な情報から構成される。例えば、保全業務を対象とした場合、以下のような情報である。
【0016】
業務を実行する人員や組織の情報は、保全事業会社の組織体制、保全を行うサービス拠点の数および場所、保全作業員の人数およびスキル、担当業務および担当アセット、勤務時間帯、等の情報を含む。業務に関わるアセットの情報は、アセットの種類および型式、機能、構成要素、要素間の因果関係、故障モード、故障モードごとの故障発生率、設置台数、設置場所、運用時間、等の情報を含む。また、構成要素なる部品の種類や型式、在庫数、生産頻度、生産時間、等の情報もアセット情報に含まれる。業務を構築するシステムの情報は、資産管理システム、業務管理システム、業務ログシステム、センサ、状態監視システム、予兆診断や遠隔診断等のIoT技術を含み、それぞれに対して、性能、導入コスト、運用コスト、適用するアセットや組織の範囲、等の情報を含む。業務の実行ルールに関わる業務プロセスの情報は、点検や修理といった業務分類、作業の発生頻度、作業時間、作業に必要なスキル、作業に必要なツール、作業に要するコスト、移動時間、等の情報を含む。
【0017】
データ取得部103で取得した業務ログデータから現状シナリオを生成する本実施例では、取得時点での最新情報に基づき現状シナリオを定期的に生成・更新することで、最新の業務状態を反映した現状業務の再現シミュレーションを実行できる。
【0018】
シミュレーション部105(第1シミュレーション部)は、現状シナリオ生成部104で生成したシナリオを受け取り、シミュレーションモデルを生成して、現状の業務をコンピュータ上に再現する業務シミュレーションを行う。シミュレーション部105の計算方法は、現実世界の業務ログに対応した仮想的な業務ログを出力できることを前提としている。これは、例えば、エージェントシミュレーションにより実現できる。
【0019】
エージェントシミュレーションでは、現実世界の登場人物をそれぞれ一つずつエージェントと呼ばれるモデルで表現する。例えば、保全業務のエージェントシミュレーションの場合、現実世界のアセット、或いはアセットの部品など管理単位ごとに、シミュレーション世界にも対応するアセットのデータを個体ごとに生成し、それが自律的に稼働・故障などをすることで、実世界のアセットの挙動を再現する。この時の生成されたデータをエージェントと呼び、アセットの場合はアセットエージェントと呼ぶことにする。
【0020】
また、同様に、保守員も一人ずつエージェントをシミュレーション世界に生成し、保守員エージェントと呼ぶ。それらが作業指示に対して、待機、移動、業務実行、休息などの動作をする。さらに、アセットの運用操作や問題発生時に故障対応依頼を行う運用エージェント、保守員に作業割り当てを行う割り当てエージェント、作業の実施スケジュールを決めるスケジューラエージェントなど、現実世界の保全業務の登場人物に対応したエージェントを生成する。
【0021】
シミュレーション開始時には、入力したシナリオに応じて各エージェントが生成され、各エージェントはシミュレーション時間の経過とともに自律的に動作し、各エージェントの動作はシミュレーションのログデータとして記録される。例えば、アセットエージェントでは、アセット個体ごとに、運転開始時刻、運転終了時刻、故障した時刻、修理して回復した時刻、点検された時刻、等がアセット運用ログとして記録される。また、保守員エージェントでは、保守員ごとに、勤務開始時間、勤務終了時間、作業内容、作業時間、等が保守員作業ログとして記録される。これらの仮想的なログデータがシミュレーション部の結果として出力される。
【0022】
ログ集計・比較部106は、上述のデータ取得部103で取得した業務システムのデータのうち、実際の業務に関する業務ログデータを受け取る。また、ログ集計・比較部106は、シミュレーション部105で出力した上述の仮想ログデータを受け取る。実際の業務ログデータとして、例えば、アセット稼働ログや作業員行動ログが挙げられる。
【0023】
図2Aは、アセット稼働ログの一例を示す図である。図2Bは、作業員行動ログの一例を示す図である。図2Aに示すように、アセット稼働ログには、アセット状態の時間履歴が記録されており、開始時刻、終了時刻、アセットID、アセットタイプ、状態、などの情報から構成される。図2Bに示すように、作業員行動ログには、作業員の行動履歴が記録されており、開始時刻、終了時刻、作業員ID、所属、スキル、作業対象アセットID、作業タイプ、などの情報から構成される。
【0024】
ログ集計・比較部106では、業務システム1000から取得した実際のログデータとシミュレーション部105が出力した仮想ログデータを比較するが、上述したようなログデータは時間的に連続したデータではないため、単純に同一時刻でのデータ値を比較するようなことはできない。そのため、何らかの集計・統計処理が必要である。例えば、現時点から過去1年間のアセット稼働ログを集計し、正常稼働状態であった合計時間を算出して比較する、などがある。また、現時点から過去1か月間の作業員の合計労働時間を算出して比較する、などがある。このように、集計・統計処理するデータは一種類に限定されるものではない。加えて、集計する期間も一種類に限定されるものではない。
【0025】
図3Aは、ログデータを月単位で集計した場合の一例を示す図である。図3Bは、ログデータを週単位で集計した場合の一例を示す図である。図3A及び図3Bでは、横軸に時間、縦軸に平均作業時間を示している。
【0026】
図3Aでは、1年間の平均値を破線、月単位の平均値を実線で示している。破線と実線の差分を見ると、期末繁忙や季節変動といった業務特徴を把握できる。また、図3Bでは、月単位の平均値を破線、週単位の平均値を実線で示している。破線と実線の差分を見ると、第4週の平均値が高くなっており、月末繁忙などの業務特徴を把握できる。このように、集計する期間もしくは時間間隔を変えながら集計することで、業務状態の時間変化の特徴を捉えることができる。
【0027】
また、集計する場合は、エリアごと、所属組織ごと、といったグループ分けをして集計・統計処理してもよい。
【0028】
図4Aは、ログデータを拠点単位で集計した場合の一例を示す図である。図4Bは、スキル単位で集計した場合の一例を示す図である。図4A及び図4Bでは、横軸にグループ名、縦軸に平均作業時間を示している。
【0029】
図4Aでは、拠点ごとに平均作業時間を算出している。また、全拠点の全体平均を破線で示している。全体平均と拠点ごとの平均値の差分を見ると、拠点B、Dが全体平均より作業時間が上回っており、拠点A、Cが全体平均より作業時間が下回っている。このように、図4Aでは、拠点もしくはエリアごとの業務特徴を把握できる。
【0030】
図4Bでは、スキルごとに平均作業時間を算出している。また、全スキルの全体平均を破線で示している。全体平均とスキルごとの平均値の差分を見ると、スキルC、Dが全体平均より作業時間が上回っており、スキルA、Bが全体平均より作業時間が下回っている。このように、図4Bでは、スキルごとの業務特徴を把握できる。このように、集計するグループを変えることで、グループごとの業務特徴を捉えることができる。なお、グループ分けは予めシナリオで規定されたものに限らず、機械学習のクラスタリングなどを用いてグループ分けしても良い。
【0031】
ログ集計・比較部106では、さらに、業務システム1000からの実際のログデータの集計・統計値と、シミュレーション部105が出力した仮想ログデータの集計・統計値の差分を計算する。この差分を「信頼度」と呼ぶ。信頼度が小さいほど、実際のログデータとシミュレーションの仮想ログデータの差が小さいことを意味し、シミュレーションの信頼性が高いことを意味する。算出した信頼度データは表示部114に渡して、表示部114の画面に表示する。これにより、ユーザは、現在のシミュレーション結果がどの程度現実の業務と整合しているのかを定量的に把握することができる。なお、上述したように、ログ集計・統計処理の方法は複数あってよく、そのため、信頼度の値も複数あってよい。
【0032】
現状業務再現装置101でシミュレーションに使用した現状シナリオは、現状シナリオ格納部109に保存される。
【0033】
次に将来シナリオを評価する将来シナリオ評価装置102の構成について説明する。
【0034】
図1において、将来シナリオ評価装置102は、将来シナリオ生成部110、シミュレーション部111(第2シミュレーション部)、KPI計算部112、シナリオ評価部113を有する。将来シナリオ評価装置では、将来想定され得る外乱や施策を考慮した将来の業務状態をシミュレーションし、事業や業務の重要業績評価指標(KPI:Key Performance Indicator)を算出して多様なシナリオ条件下でKPIを比較することで、シナリオの良し悪しを評価して、事業戦略や業務設計変更の判断を支援する情報を提供する。
【0035】
将来シナリオ生成部110は、現状シナリオ格納部109に保存された現状シナリオを取得する。取得した現状シナリオを基準条件として、将来想定され得る外乱や施策を考慮した条件変更を行い、将来シナリオを生成する。
【0036】
実施例1では、想定され得る外乱や施策は予めパタン化されている。外乱パタンとして、例えば、自然災害、疫病、サイバー攻撃、などが考えられる。
【0037】
図5は、外乱パタンを設定する画面の一例を示す図である。図5では、パタンごとに変化する条件パラメータのセットが用意されており、各条件パラメータの変動幅を設定している。このように、外乱パタンごとにシナリオの条件パラメータをセットで用意することで、条件パラメータ設定の手間を削減できる。
【0038】
図5において、自然災害パタンでは、影響する条件パラメータとして、影響サイトをAサイトと指定し、影響拠点としてSC1を指定し、保守員数の変動幅として-5~0人と指定し、拠点-サイト間移動時間の変動幅として0~+100%と指定し、停止システムとして状態監視システムを指定している。これは、台風などの自然災害により、Aサイトのアセットが同時に停止し、SC1のサービス拠点で保守員が最大5人業務不能状態に陥り、拠点とサイト間の移動時間が最大2倍になり、状態監視システムが停止した状況を想定した条件設定である。なお、これらの複数の条件パラメータは個別に変動させても、同時に変動させてもよく、変動パタンは自然災害パタンだけでも多岐に渡る。
【0039】
また、疫病パタンでは、影響拠点としてSC1とSC5を指定し、保守員数の変動幅として-20~0人と指定している。これは、疫病によってSC1とSC5のサービス拠点でそれぞれ最大20人が業務不能となった状態を想定した条件設定である。
【0040】
また、サイバー攻撃パタンでは、影響サイトとしてAサイトとBサイトを指定し、影響拠点としてSC1とSC5を指定し、停止システムとして予兆診断システムを指定している。これは、サイバー攻撃によりAサイトとBサイトのアセットの予兆診断システムが停止し、SC1とSC5のサービス拠点で情報にアクセスできない状態を想定した条件設定である。
【0041】
前述の各種外乱パタンの条件パラメータをそれぞれ独立に変動させることで、多数の変動条件を生成することができる。これらの多数の変動条件を、現状シナリオに加えることで、多様な外乱による変動が加わった複数の将来シナリオを生成する。
【0042】
施策パタンについても、外乱パタンと同様に、現状シナリオに施策による条件変更を加えることで、複数の将来施策を考慮した将来シナリオを生成する。施策パタンの例として、予兆診断や修理リコメンド、遠隔診断などのIoTソリューションを新たに導入するIoT施策、サービス拠点の数や位置の変更や各サービス拠点の作業員人数を変更する組織変更施策、定期点検周期や部品交換周期などを変更する保全ポリシー変更施策、などがある。また、複数の業務施策パタンを組み合わせた複合施策も一つの施策と捉えることができる。ここで、施策とは、シナリオの持つ各種情報のうち、意図的に変更することができる情報のパラメータを変更することを意味する。例えば、保守員増強施策は保守員の人数を増加した値に変更すること、IoT導入施策は予兆診断などのIoT技術の数を増加した値に変更すること、と言うことができる。なお、変更とは同じ値に変更することも含み、ある時点での保全業務の状態を継続する現状維持施策と言える。また、変更する項目数は一つに限らず、複数同時に変更してもよい。
【0043】
図6は、施策パタンの設定画面の一例を示す図である。図6の例では、施策シナリオA、B、Cの3つの異なる業務施策シナリオ画面を開き、それぞれ別の施策設定をしている。図6の例では、施策シナリオCの設定として、IoT施策パタンとして予兆診断を選択し、その条件パラメータである性能値として誤報率10%、失報率3%を入力している。また、予兆診断を適用する適用範囲として、エリア単位での指定を選択し、Aサイトのアセットに予兆診断を適用すると指定している。加えて、組織変更施策パタンとして保守員数変更を選択し、条件パラメータとして変更人数を+3人と入力している。また、その変更を施すサービス拠点の範囲を、SC単位での指定を選択して、SC1とSC5を指定している。さらに、保全ポリシー変更施策パタンとして定期点検周期変更を選択し、条件パラメータとして対象をAコンポーネント点検に指定し、周期を6ヶ月と入力している。すなわち、図6の施策シナリオCは3つの施策パタンを組み合わせた業務施策シナリオの例である。
【0044】
上述の方法で生成された外乱パタンや施策パタンを考慮した多数の将来シナリオは、シミュレーション部111に入力される。シミュレーション部111は、受け取った多数の将来シナリオに対してそれぞれシミュレーションモデルを生成し、各将来シナリオで業務をコンピュータ上に再現する業務シミュレーションを行う。
【0045】
KPI計算部112は、シミュレーション部111の出力データ(シミュレーションモデル)を受け取り、予め設定したKPIを計算する。
【0046】
図7は、KPI設定画面の一例を示す図である。図7の例では、KPI項目として、アセット稼働率、CO2排出量、応答時間、施策コスト、保守コスト、人件費、残業時間、作業効率、総作業工数、などの項目がある。例えば、アセット稼働率は、シミュレーション結果であるアセット運用ログを統計分析することで算出できる。残業時間は、シミュレーション結果である保守員作業ログを統計分析することで算出できる。KPIとしてアセット稼働率を選択すれば、稼働率保証を行う保守契約において、稼働率保証値を満たす業務設計の検討ができる。KPIとして、CO2排出量を選択すれば、脱炭素社会に貢献するための業務設計の検討ができる。KPIとして、残業時間を選択すれば、残業時間を減らす働き方改革に対応した業務設計の検討ができる。
【0047】
シナリオ評価部113は、KPI計算部112で算出した将来シナリオごとのKPIを比較・評価する。評価結果は表示部114へ渡され、ユーザの画面に表示される。
【0048】
図8は、評価結果の出力画面の一例を示す図である。図8の例では、KPIとしてアセット稼働率が表示されている。評価結果は、横軸が時間、縦軸がKPIのグラフで示されている。
【0049】
横軸中心付近が現在時点であり、現在時点より左側に過去の実績ログデータから算出したKPIの実績値を実線で示し、現在時点より右側にシミュレーションによる予測結果を破線で示している。過去の実績KPIの履歴を同時に示すことで、KPIの変動傾向を把握することができる。シミュレーションによる予測結果には、上述の外乱パタンを考慮した将来シナリオでシミュレーションした場合のKPIの変動範囲をグレーで示している。すなわち、自然災害、疫病、サイバー攻撃といった予め想定した外乱により、KPIがグレーの範囲で変動し得ることを示しており、この結果から、どの程度KPIが変動する危険性があるかのリスク評価をすることができる。
【0050】
また、図8の例では、ログ集計・比較部106で算出した信頼度の値をエラーバーとして表示している。信頼度を表示することにより、シミュレーション結果の誤差範囲を考慮しながら結果を評価・判断することができる。図8の例では、現状の業務設計のままである現状シナリオと、施策パタンAを評価した2つのシミュレーション結果を示している。これにより、施策パタンAによりKPIが改善し、また外乱による変動範囲も小さくなっていることを定量的に把握することができ、施策パタンAが良好な施策であると判断する根拠となる。
【0051】
次に、現状業務再現装置の処理及び将来シナリオ評価装置の処理について、図9及び図10を用いて説明する。図9は、本発明の実施例1に係る現状業務再現装置101の処理を示すフローチャートである。図10は、本発明の実施例1に係る将来シナリオ評価装置102の処理を示すフローチャートである。
【0052】
図10において、ユーザは、データ取得部103に対して業務システム1000からのデータ取得タイミングを指定する(ステップS201)。
【0053】
データ取得部103は、ユーザからの指示に従い、取得タイミングになったか否かを判断する(ステップS202)。
【0054】
データ取得部103は、ユーザが指示した取得タイミングになった場合には(ステップS202のYes)、業務システム1000からデータを取得し、現状シナリオ生成部104のデータを渡す(ステップS203)。データ取得部103は、ユーザが指示した取得タイミングになっていない場合には(ステップS202のNo)、ステップS202の処理を繰り返す。
【0055】
現状シナリオ生成部104は、データ取得部103で取得したデータに基づき、現状シナリオを生成し、シミュレーション部105に渡す(ステップS204)。
【0056】
シミュレーション部105は、現状シナリオ生成部104で生成した現状シナリオに基づきシミュレーションを実行し、仮想ログをログ集計・比較部106に渡す(ステップS205)。
【0057】
ログ集計・比較部106は、シミュレーション部105で得られた仮想ログと、データ取得部103で取得した業務システム1000の実際のログとを比較し、差分(信頼度)を算出する(ステップS207)。ログ集計・比較部106は、算出した信頼度を表示部114に渡す。
【0058】
現状業務再現装置101は、シミュレーションに使用した現状シナリオを現状シナリオ格納部109に保存する(ステップS208)。
【0059】
表示部114は、後述する将来シナリオ評価装置102で算出した現状再現シミュレーションのKPIと、ログ集計・比較部106で算出した信頼度を表示部114に出力する(ステップS209)。
【0060】
なお、ログ集計・比較部106で算出した信頼度は、図3A図4Bで示したように、業務ログデータと仮想ログデータを集計する期間あるいは時間間隔を変更した複数の信頼度を算出する。
【0061】
次に図10を用いて、将来シナリオ評価装置の処理について説明する。
【0062】
図10において、ユーザは、将来シナリオ生成部110に対して外乱パタン、施策パタンを設定する(ステップS301)。
【0063】
将来シナリオ生成部110は、現状シナリオ格納部109から現状シナリオを取得する(ステップS302)。
【0064】
将来シナリオ生成部110は、全パタンの将来シナリオの生成が完了していない場合には(ステップS303のNo)、外乱パタン、施策パタンの一つを選択する(ステップS304)。
【0065】
将来シナリオ生成部110は、現状シナリオ格納部109から取得した現状シナリオを基に、施策パタンまたは外乱パタンの変化分を付与し、将来シナリオを生成し、シミュレーション部111に渡す(ステップS305)。
【0066】
シミュレーション部111は、将来シナリオ生成部110で生成された将来シナリオでシミュレーションを実行し、KPI計算部112に渡す(ステップS306)。
【0067】
KPI計算部112では、シミュレーション部111で実行されたシミュレーション結果に基づき、将来シナリオのKPIを算出し、シナリオ評価部113に渡す(ステップS307)。
【0068】
シナリオ評価部113は、算出された将来シナリオのKPIを記憶部に格納し、格納完了したことを将来シナリオ生成部110に伝える(ステップS308)。
【0069】
将来シナリオ生成部110は、現状シナリオに更新があったか否か判断し(ステップS309)、現状シナリオに更新が無い場合には(ステップS309のNo)、ステップS304からの処理を実行する。なお、ステップS304では、選択されていない施策パタン、外乱パタンを選択する。
【0070】
将来シナリオ生成部110は、現状シナリオに更新があった場合には(ステップS309のYes)、ステップS302からの処理を実行する。
【0071】
将来シナリオ生成部110は、ステップS303において全パタンの将来シナリオの生成が完了した場合には、シナリオ評価部113に完了した旨を伝える。シナリオ評価部113は、全パランの将来シナリオを評価し、表示部114へ出力する(ステップS310)。
【0072】
表示部114では、現状業務再現装置101からの信頼度、将来シナリオの評価結果を合わせて表示する。
【0073】
実施例1では、現状業務再現装置101、将来シナリオ評価装置102、現状シナリオ格納部109、表示部114を同一の業務設計支援システム100の内部に構成しているが、これらは別々のシステム上に構成してもよい。例えば、現状業務再現装置101は業務システムのある顧客サイトのサーバ、現状シナリオ格納部および将来シナリオ評価装置はクラウド、表示部はユーザのローカルPCに構成し、これらをネットワークで接続してもよい。
【0074】
また、図9及び図10で示した処理フローは、現状業務再現装置101の処理の後に将来シナリオ評価装置102の処理を実行しても良く、或いはそれぞれが並行して同時に処理を実行しても良い。処理を独立に実施した場合には、現状業務再現装置101は、将来シナリオ評価装置102の処理によらず業務システム1000とリアルタイムで連携することができる。
【0075】
実施例1によれば、業務システムの情報をリアルタイムに反映したシミュレーションによるシナリオ評価が可能となり、現実世界のリアルな業務特徴を考慮した良好な施策判断を支援することができる。
【0076】
また、実施例1によれば、自然災害などの外乱を考慮したリスク評価ができる。
【0077】
さらに、実施例1によれば、シミュレーションの予測信頼度・妥当性を踏まえたシナリオ評価ができる。
【実施例0078】
次に、本発明の実施例2について説明する。図11は、本発明の実施例2に係る業務設計支援システムの機能ブロック図である。実施例2において、実施例1と同様の構成については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0079】
実施例2は、図1の実施例1に対して、現状業務再現装置101の構成要素として、判定部107、パラメータ調整部108が追加されている。
【0080】
判定部107は、ログ集計・比較部106で算出した信頼度を受け取り、信頼度の値を予め設定した閾値と比較する。信頼度が閾値よりも小さい場合は、現状シナリオを現状シナリオ格納部109に保存するとともに、信頼度の値を表示部114に渡す。この場合の動作は、実施例1と同一である。一方、信頼度が閾値よりも大きい場合は、信頼度の値をパラメータ調整部108に渡し、現状シナリオ格納部109には現状シナリオを保存しない。
【0081】
パラメータ調整部108は、受け取った信頼度の値に応じて現状シナリオの条件パラメータを調整する。調整された条件パラメータは、現状シナリオ生成部104に渡され、現状シナリオが修正される。
【0082】
パラメータ調整部108で調整される条件パラメータとして、例えば、アセットの故障率や劣化度といった信頼性に関わるパラメータ、アセットの運用パタン、作業員の稼働パタン、などがある。信頼度として、例えば、アセットの正常稼働時間を用いた場合は、関連するパラメータとしてアセットの故障率や劣化度、または、アセットの運用パタンのパラメータを調整する。信頼度として、例えば、作業員の作業時間を用いた場合は、作業員の稼働パタンのパラメータを調整する。このように、信頼度として算出する値と調整するパラメータをセットで定義すれば、無数にある条件パラメータをむやみに変更することなく、効率的にパラメータ調整できる。
【0083】
実施例1の図3A及び図3Bを用いて説明したように、ログ集計の期間あるいは時間間隔を変えることで、季節変動や期末繁忙、月末繁忙といったカレンダーに応じた業務特徴を捉えることができる。従って、信頼度として、ログ集計の期間あるいは時間間隔を変更した複数の信頼度に対して、信頼度判定とパラメータ調整を行えば、季節変動や期末繁忙、月末繁忙といったカレンダーに応じた業務特徴を再現したシミュレーションができる。
【0084】
また、実施例1の図4A及び図4Bを用いて説明したように、ログ集計するグループ単位を変えることで、拠点・エリアやスキルなどのグループごとの業務特徴を捉えることができる。したがって、信頼度として、ログ集計するグループを変更した複数の信頼度に対して、信頼度判定とパラメータ調整を行えば、拠点・エリアやスキルなどのグループごとの業務特徴を再現したシミュレーションができる。
【0085】
上述の信頼度の判定とパラメータ調整のプロセスを追加することで、実際のログデータの集計・統計値と閾値範囲内で整合する現状シナリオのみを将来シナリオ評価装置で用いることになるため、シナリオ評価の予測信頼度を確保することができる。
【0086】
図12は、本発明の実施例2に係る現状業務再現装置101の処理を示すフローチャートである。
【0087】
図12において、ユーザは、データ取得部103に対して業務システム1000からのデータ取得タイミングを指定する(ステップS201)。
【0088】
データ取得部103は、ユーザからの指示に従い、取得タイミングになったか否かを判断する(ステップS202)。
【0089】
データ取得部103は、ユーザが指示した取得タイミングになった場合には(ステップS202のYes)、業務システム1000からデータを取得し、現状シナリオ生成部104のデータを渡す(ステップS203)。データ取得部103は、ユーザが指示した取得タイミングになっていない場合には(ステップS202のNo)、ステップS202の処理を繰り返す。
【0090】
現状シナリオ生成部104は、データ取得部103で取得したデータに基づき、現状シナリオを生成し、シミュレーション部105に渡す(ステップS204)。
【0091】
シミュレーション部105は、現状シナリオ生成部104で生成した現状シナリオに基づきシミュレーションを実行し、仮想ログをログ集計・比較部106に渡す(ステップS205)。
【0092】
ログ集計・比較部106は、シミュレーション部105で得られた仮想ログと、データ取得部103で取得した業務システム1000の実際のログとを比較し、差分(信頼度)を算出する(ステップS207)。ログ集計・比較部106は、算出した信頼度を判定部107に渡す。
【0093】
判定部107は、予め設定した閾値と、ログ集計・比較部106で算出した信頼度とを比較する(ステップS210)。信頼度が閾値よりも小さい場合(ステップS210のYes)、判定部107(現状業務再現装置101)は、シミュレーションに使用した現状シナリオを現状シナリオ格納部109に保存するとともに、信頼度の値を表示部114に渡す(ステップS211)。
【0094】
表示部114は、将来シナリオ評価装置102で算出した現状再現シミュレーションのKPIと、ログ集計・比較部106で算出した信頼度を表示部114に出力する(ステップS212)。
【0095】
ステップS210において、信頼度が閾値よりも大きい場合(ステップS210のNo)、判定部107(現状業務再現装置101)は、信頼度の値をパラメータ調整部108に渡し、現状シナリオ格納部109には現状シナリオを保存しない。
【0096】
パラメータ調整部108は、受け取った信頼度の値に応じて現状シナリオの条件パラメータを調整し、現状シナリオ生成部104に渡す(ステップS213)。
【0097】
将来シナリオ評価装置102の処理は、実施例1と同様であるので、説明は省略する。
【0098】
実施例2では、実施例1と同様、図12及び図10で示した処理フローは、現状業務再現装置101の処理の後に将来シナリオ評価装置102の処理を実行しても良く、或いはそれぞれが並行して同時に処理を実行しても良い。処理を独立に実施した場合には、現状業務再現装置101は、将来シナリオ評価装置102の処理によらず業務システム1000とリアルタイムで連携することができる。一方、将来シナリオ評価装置では、常時将来シナリオ評価を実施することで、リスクを常時モニタリングできる。また、処理を独立させることで、現状業務再現装置と将来シナリオ評価装置を別システムに構成することが容易となる。
【0099】
実施例2によれば、予測信頼度を確保した施策やリスクの評価が可能となる。
【0100】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0101】
100…業務設計支援システム、101…現状業務再現装置、102…将来シナリオ評価装置、103…データ取得部、104…現状シナリオ生成部、105…シミュレーション部、106…ログ集計・比較部、107…判定部、108…パラメータ調整部、109…現状シナリオ格納部、110…将来シナリオ生成部、111…シミュレーション部、112…KPI計算部、113…シナリオ評価部、114…表示部、1000…業務システム
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12