(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122816
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】シール連結体およびガスケット
(51)【国際特許分類】
F16J 15/06 20060101AFI20230829BHJP
【FI】
F16J15/06 N
F16J15/06 C
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026545
(22)【出願日】2022-02-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000198237
【氏名又は名称】石川ガスケット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 幸夫
【テーマコード(参考)】
3J040
【Fターム(参考)】
3J040AA17
3J040BA02
3J040BA04
3J040EA15
3J040EA17
3J040FA01
3J040FA05
3J040HA17
(57)【要約】
【課題】用途や機能が異なる穴どうしが近接した状態でも、それぞれの穴の用途や機能を損なわずにそれぞれの穴を最適にシールするシール連結体およびガスケットを提供する。
【解決手段】シール連結体10は、Oリング11と、環穴12aが流体の流路の一部を構成するラバーリング12と、一端がOリング11の外周面の一部に接合し、他端がラバーリング12の外周面の一部に接合して、Oリング11およびラバーリング12を連結する連結片13と、を備えていて、平面視で8の字形状を成しており、Oリング11の線径φ1は連結片13の厚さD1よりも厚く、Oリング11の上端部および下端部が連結片13からはみ出していて、ラバーリング12の厚さD2は連結片13の厚さD1よりも厚く、ラバーリング12の上端部および下端部が連結片13からはみ出している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のスクイーズパッキンと、環穴が流体の流路の一部を構成する環状のリングと、一端が前記スクイーズパッキンの外周面の一部に接合し、他端が前記リングの外周面の一部に接合して、前記スクイーズパッキンおよび前記リングを連結する連結片と、を備えていて、平面視で8の字形状を成しており、
前記スクイーズパッキンの厚さは前記連結片の厚さよりも厚く、前記スクイーズパッキンの上端部および下端部が前記連結片からはみ出していて、前記リングの厚さは前記連結片の厚さよりも厚く、前記リングの上端部および下端部が前記連結片からはみ出していることを特徴とするシール連結体。
【請求項2】
前記スクイーズパッキンは、ゴムで構成されたOリングであり、
前記リングは、前記環穴が形成されたリング部とそのリング部の外周面から外側に突出して環状を成すプレート部を有し、前記リング部および前記プレート部のうちの少なくとも前記リング部がゴムで構成されていて、前記リング部の厚さが前記Oリングの線径よりも厚く、前記リング部の上端部および下端部が前記連結片からはみ出していて、前記プレート部の厚さが前記連結片の厚さよりも薄く、
前記連結片は、ゴムで構成されていて、前記他端が前記リング部の外周面の一部に接合し、内部に前記プレート部の一部を内包している請求項1に記載のシール連結体。
【請求項3】
前記プレート部は金属で構成されている請求項2に記載のシール連結体。
【請求項4】
前記Oリング、前記リング部、および、前記連結片を構成するゴムの種類が同一である請求項2または3に記載のシール連結体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のシール連結体が組み込まれたことを特徴とするガスケット。
【請求項6】
請求項2~4のいずれか1項に記載のシール連結体が組み込まれたガスケットであって、
三枚以上の金属板が積層して成り、ダウエルピンあるいはボルトが挿入される締結用穴と流体の流路よりも広く開口した流路用穴と、を有し、
前記Oリングが、前記締結用穴の周縁端部に形成されて前記締結用穴の径方向の内側から外側に向かって窪んだOリング用溝に嵌め込まれ、
前記リングの前記プレート部が、前記流路用穴の周縁端部に形成されて前記流路用穴の径方向の内側から外側に向かって窪んだリング用溝に嵌め込まれて、環軸方向の厚さが前記流路用穴の穴軸方向の深さ以上の厚さである前記リング部が、前記流路用穴の内側に配置されることを特徴するガスケット。
【請求項7】
前記Oリングの外周と前記プレート部の外周とが接するまで前記締結用穴と前記流路用用穴とが近接した請求項6に記載のガスケット。
【請求項8】
前記Oリングの内周は、前記締結用穴に挿入された前記ダウエルピンあるいは前記ボルトと非接触である請求項6または7に記載のガスケット。
【請求項9】
前記連結片は、前記Oリング用溝の一部と前記ラバーリング用溝の一部とが合併して形成された前記締結用穴と前記流路用穴との連通部分に配置される請求項6~8のいずれか1項に記載のガスケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール連結体およびガスケットに関し、より詳細には、用途や機能が異なる穴どうしを一つの部材でシールするシール連結体およびそのシール連結体が組み込まれたガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のエンジンの小型化に伴って、ガスケットに形成される水や油などの流路やダウエル穴などの設置スペースが狭くなっている。そこで、軸線周りに環状の補強環と、補強環に取り付けられている弾性体から形成されている軸線周りに環状の弾性体部とを有するガスケット部材を複数備え、複数の補強環の外周面が近接しており、複数の弾性体部が連結されているガスケットが提案されている(特許文献1参照)。特許文献1が開示している発明では、流路をシールする弾性体部を連結させることで、複数の流路の間のスペースが狭い場合であっても組み付けることが可能になっている。
【0003】
ところで、設置スペースの狭小化によりダウエル穴と流路との間のスペースも狭くすることが望まれている。しかしながら、ガスケットに形成された穴という共通点があっても、ダウエル穴と流路用の穴とでは用途や機能が異なっており、要求されるシール性能も異なる。それ故、特許文献1が開示している発明をダウエル穴と流路とが近接したガスケットに適用しても、それぞれの穴の用途や機能を損なわずにそれぞれの穴を最適にシールするには改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、用途や機能が異なる穴どうしが近接した状態でも、それぞれの穴の用途や機能を損なわずにそれぞれの穴を最適にシールするシール連結体およびガスケットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成する本発明のシール連結体は、環状のスクイーズパッキンと、環穴が流体の流路の一部を構成する環状のリングと、一端が前記スクイーズパッキンの外周面の一部に接合し、他端が前記リングの外周面の一部に接合して、前記スクイーズパッキンおよび前記リングを連結する連結片と、を備えていて、平面視で8の字形状を成しており、前記スクイーズパッキンの厚さは前記連結片の厚さよりも厚く、前記スクイーズパッキンの上端部および下端部が前記連結片からはみ出していて、前記リングの厚さは前記連結片の厚さよりも厚く、前記リングの上端部および下端部が前記連結片からはみ出していることを特徴とする。
【0007】
本発明のガスケットは、上記のシール連結体が組み込まれたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、互いに異なるシール性能を有するシール部材どうしを連結片により連結した一つ部材により、用途や機能が異なる穴どうしが近接した状態でも、それぞれの穴の用途や機能を損なわずにそれぞれの穴を最適にシールすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】シール連結体の実施形態を例示する説明図である。
【
図3】ガスケットの実施形態を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のシール連結体およびガスケットを、図に示す実施形態に基づいて説明する。なお、
図1~
図4は、構成が分かり易いように寸法を変化させており、寸法は必ずしも実際に製造するものの比率とは一致させていない。
【0011】
図1に例示するシール連結体10は、後述するガスケット1に組み込まれるガスケット用のものである。シール連結体10は、Oリング11、ラバーリング12、および、連結片13を備えており、Oリング11とラバーリング12とが連結片13を介して連結している。シール連結体10は、平面視(Z方向視)で「8の字」形状を成している。Oリング11が本発明のスクイーズパッキンに相当し、ラバーリング12が本発明のリングに相当している。
【0012】
Oリング11は、環軸方向がZ方向に向いていて、断面が円形の環状体(円環体)を成しており、公知のOリングを用いることができる。Oリング11は、対象となる穴の周縁端部に形成されたOリング用溝に嵌め込まれる。Oリング11を構成しているゴムは、ニトルゴム、シリコーゴム、フッ素ゴムなどの公知のゴムを用いることができる。
【0013】
Oリング11は、断面の円形の径方向(例えば、Z方向)に圧縮される運動用のOリングおよび円筒面固定用のOリングと、その径方向とその径方法に直交する直角方向(例えば、Y方向)に圧縮される平面(フランジ)固定用のOリングと、に分類される。なお、平面固定用のOリングは、直角方向が環径方向の内側から外側に向かう方向の内圧用と、直角方向が環径方向の外側から内側に向かう方向の外圧用と、に分類される。Oリング11の分類は特に限定されるものではないが、例えば、後述するガスケット1に組み込まれる場合に、Oリング11は、内圧用のOリングである。Oリング11の線径φ1、内径R1、外径R2、および、つぶししろ寸法のそれぞれは、Oリング11の分類と対象となる穴の穴径と嵌め込まれるOリング用溝の形状や寸法により規定されており、適宜選択することが可能である。
【0014】
ラバーリング12は、環軸方向がZ方向に向いていて、断面が多角形の環状体を成しており、環状体の中央部に形成された環穴12aが流体の流路の一部を構成する公知のラバーリングを用いることができる。環穴12aが流体の流路の一部を構成するとは、流路の中途位置にラバーリング12が介在して、流路を切れ間なく連ならせることであり、環穴12aの内面が常時、流体に接していなくてもよい。ラバーリング12は、Oリング11の環径方向の外側に配置されている。ラバーリング12は、対象となる穴の周縁端部に形成されたリング用溝に嵌め込まれている。
【0015】
詳述すると、ラバーリング12は、リング部14とプレート部15とを有している。ラバーリング12は、プレート部15の外周部分が対象となる穴の周縁端部に形成されたリング用溝に嵌め込まれて、リング部14が対象となる穴の内側に配置される。リング部14の上端および下端のそれぞれは流体の流路を形成している配管などと直に接触する。ラバーリング12の内径R3、外径R4、リング部14の外径R5のそれぞれは、流体の流路が所望する流路面積と対象となる穴の穴径と嵌め込まれるリング用溝の形状や寸法により規定されており、適宜選択することが可能である。
【0016】
リング部14は、環軸方向がZ方向に向いていて、断面が多角形の環状体を成している。リング部14を構成しているゴムは、Oリング11と同様に公知のゴムを用いることができる。リング部14には、外周面の環軸方向の中途部分に環径方向の外側から内側に向かって窪んだ窪み16が環周方向の全域に亘って形成されている。
【0017】
プレート部15は、環軸方向がZ方向に向いていて、断面が矩形の環状体を成している。プレート部15は、リング部14と同様にゴムで構成してもよい。リング部14およびプレート部15のそれぞれが同一のゴムで構成された場合に、リング部14およびプレート部15が一体化した構造になり、ラバーリング12の製造が容易になるという利点がある。一方で、プレート部15は、金属や合金で構成されることが望ましい。プレート部15が金属や合金で構成されることで、プレート部15の変形が抑制される。その結果、ラバーリング12の脱落を効果的に防止することが可能となる。プレート部15を構成する金属や合金は、ステンレス鋼、銅、アルミニウムなどの公知の金属や合金を用いることができる。プレート部15は、内周部分がリング部14の窪み16に嵌め込まれて、外周部分がリング部14の外周面から外側に突出している。
【0018】
連結片13は、Y方向の一端がOリング11の外周面の一部に接合し、他端がリング部14の外周面の一部に接合して、Oリング11およびラバーリング12を連結している。連結片13を構成しているゴムは、Oリング11と同様に公知のゴムを用いることができる。連結片13は、Oリング11とラバーリング12とを連結でき、かつ、Oリング11およびラバーリング12のそれぞれのシール機能を阻害しない範囲で適宜変形可能である。
【0019】
詳述すると、連結片13は、Oリング11とラバーリング12のリング部14との間に配置されている。連結片13は、その内部にラバーリング12のプレート部15の外周部分の一部を内包している。より具体的に、連結片13は、プレート部15の外周部分の一部の上下端面のそれぞれを覆っている。連結片13とOリング11やラバーリング12との接合には、溶接、溶着、接着、ろう着などが例示される。
【0020】
図2は、Oリング11とラバーリング12との連結部分の断面を示している。連結片13のZ方向の厚さD1がOリング11の線径φ1(Oリング11のZ方向の厚さ)やラバーリング12のリング部14のZ方向の厚さD2よりも厚くなると、Oリング11やラバーリング12のシール機能が阻害される。それ故、Oリング11の線径φ1は、連結片13の厚さD1よりも太くなっている。Oリング11のZ方向の上端部は連結片13の上端から上方に向かってはみ出していて、Oリング11のZ方向の下端部は連結片13の下端から下方に向かってはみ出している。また、リング部14の厚さD2は、連結片13の厚さD1よりも厚くなっている。リング部14のZ方向の上端部は連結片13の上端から上方に向かってはみ出していて、リング部14のZ方向の下端部は連結片13の下端から下方に向かってはみ出している。加えて、ラバーリング12のプレート部15の厚さD3は、Oリング11の線径φ1や連結片13の厚さD1よりも薄くなっている。
【0021】
Oリング11、ラバーリング12のリング部14、および、連結片13のそれぞれを構成するゴムの種類は、同一であることが望ましい。それぞれのゴムの種類が同一であれば、Oリング11、リング部14、および、連結片13のそれぞれが一体化し、一体化によりそれぞれの接合部分の耐久性の向上には有利になる。なお、一体化を具現化する製造方法としては、別々に製造されたOリング11およびラバーリング12を並べた後に、Oリング11およびリング部14を構成するゴムと同一のゴムを熱風溶着や熱溶着、超音波溶着などの公知の溶着方法を用いて接合する方法が例示される。
【0022】
以上のように、本実施形態によれば、互いに異なるシール性能を有するOリング11とラバーリング12とを連結片13により連結した一つ部材であるシール連結体10により、用途や機能が異なる穴どうしが近接した状態でも、それぞれの穴の用途や機能を損なわずにそれぞれの穴を最適にシールすることができる。
【0023】
シール連結体10は、連結片13のY方向の長さを調節することで、Oリング11とラバーリング12との間の長さを調節することができる。シール連結体10は、Oリング11の外周面とラバーリング12のプレート部15の外周面とが接するまで、Oリング11とラバーリング12との間を近づけることが可能である。
【0024】
図3に例示するガスケット1は、公知のエンジンのシリンダブロックとシリンダヘッドとの間に介在するエンジン用のシリンダヘッドガスケットである。ガスケット1は、三枚以上の金属板2が積層して成り、シリンダボア3、ボア用シール4、締結用穴5、Oリング用溝6、流路用穴7、リング用溝8、および、シール連結体10を備えている。ガスケット1は、図示しないシリンダボア、ボア用シール、締結用穴、Oリング用溝、流路用穴、リング用溝を多数備えている。
【0025】
金属板2のそれぞれは、Z方向に積層している。金属板2を構成する金属や合金は、ステンレス鋼、銅、アルミニウムなどの公知の金属や合金を用いることができる。金属板2が三枚以上積層していれば、所定の穴の周縁端部において、最上部の金属板2および最下部の金属板2に形成された穴の穴径よりもそれ以外の中途部の金属板2に形成された穴の穴径を小さくすることで、断面が「Uの字」形状の溝を容易に形成することが可能になる。金属板2は、それぞれが異なる金属や合金で構成されていてもよい。ガスケット1にける金属板2の積層数は、三層以上、六層以下が望ましい。
【0026】
シリンダボア3は、シリンダブロックに形成されたシリンダボアと連通している。ボア用シール4は、シリンダボア3を囲んでおり、シリンダボア3のシールとして機能している。ボア用シール4は、金属板2を屈曲させて形成したビードや折り返し、端部に取り付けられたグロメットなどが例示される。
【0027】
締結用穴5は、ガスケット1の締結時に用いられる穴である。締結用穴5としては、ガスケット1の締結時の位置決めに要するダウエルピンが挿入されるダウエル穴、ガスケット1をシリンダブロックとシリンダヘッドとの間に締結するボルトが挿入されるボルト穴が例示される。ダウエル穴は、ガスケット1に二つ形成されていればよい。ボルト穴は、ガスケット1に形成されたシリンダボア3の数に応じた数が形成されていればよい。
【0028】
Oリング用溝6は、締結用穴5を囲んでいる。Oリング用溝6に、Oリング11が嵌め込まれることで、締結用穴5を通る流体が金属板2どうしの層間に浸透することを防止することが可能となる。締結用穴5を通る流体は特に限定されるものではない。例えば、プッシュロッドを介してロッカーアームを押し上げることで、シリンダヘッドの上に設置されたバルブの開閉を行うオーバーヘッドバルブエンジンでは、その流体がシリンダヘッドの上部に溜まったオイルである。
【0029】
流路用穴7は、流体の流路を接続するための穴である。流体としては、エンジンの潤滑用のオイルや冷却用の水が例示される。流路用穴7は、流体の流路よりも広く開口している。リング用溝8は、流路用穴7を囲んでいる。リング用溝8に、ラバーリング12が嵌め込まれることで、流体の流路がガスケット1により途切れる部分がラバーリング12により切れ間なく連なるとともに、ラバーリング12によりシールされることで、流路からの流体の漏れを防止することが可能となる。
【0030】
図中では、締結用穴5と流路用穴7とが近接しており、それらシールする部材としてシール連結体10を用いている。図示しない締結用穴や流路用穴が互いに近接しない限りは、締結用穴を囲んでいるOリング用溝にはOリング11と同種のOリングのみが嵌め込まれ、流路用穴を囲んでいるリング用溝にはラバーリング12と同種のラバーリングのみが嵌め込まれる。
【0031】
図4にシール連結体10が組み込まれたガスケット1がシリンダブロック30とシリンダヘッド31との間に挟持された状態の断面の一例を示す。ガスケット1は、五枚の金属板2が積層して成り、締結用穴5には、ダウエルピン32が挿入されており、流路用穴7には、流体の流路33が接続されている。シール連結体10は、Oリング11がOリング用溝6に嵌め込まれていて、ラバーリング12のプレート部15がリング用溝8に嵌め込まれている。
【0032】
締結用穴5は、最上部の金属板2に形成された穴の穴径R6がダウエルピン32のピン径を基準として所定の公差に収まるように設定されている。締結用穴5は、最下部の金属板2に形成された穴も最下部の金属板2に形成された穴と同様に穴径R6に設定されてもよい。
【0033】
Oリング用溝6は、締結用穴5の周縁端部に形成されている。Oリング用溝6は、締結用穴5の径方向の内側から外側に向かって「Uの字」形状に窪んでいる。詳述すると、Oリング用溝6は、最上部および最下部の金属板2を除いた中途部の三枚の金属板2に最上部および最下部の金属板2に形成された穴よりも径の広い穴を形成することで形成されている。
【0034】
Oリング11は、Oリング用溝6に嵌め込まれることで、平面固定の内圧用のOリングとして機能する。詳述すると、Oリング11の線径φ1は、Oリング用溝6のZ方向の幅D4よりも太い。Oリング11の外径R2は、Oリング用溝6の外径R7よりも長い。それ故、Oリング11は、最上部および最下部の金属板2どうしによりZ方向に圧縮され、締結用穴5を通る流体による締結用穴5の径方向の内側から外側に向かう方向の内圧によりY方向に圧縮されることになる。その結果、Oリング11により金属板2どうしの層間が密閉され、締結用穴5を通る流体が層間に侵入することを防ぐことができる。また、Oリング11の内径R1は、締結用穴5の穴径R6よりも長い。それ故、Oリング11は、締結用穴5に挿入されるダウエルピン32に非接触となる。これにより、Oリング11を設けても、シリンダブロック30およびシリンダヘッド31の基準となるダウエルピン32を挿入するための穴寸法を維持できる。
【0035】
流路用穴7は、最上部および最下部の金属板2に形成された穴の穴径R8がシリンダブロック30およびシリンダヘッド31に形成された流路33の流路径R9よりも長い。詳述すると、穴径R8は、ラバーリング12のリング部14の外径R5よりも長い。
【0036】
リング用溝8は、流路用穴7の周縁端部に形成されている。リング用溝8は、流路用穴7の径方向の内側から外側に向かって「Uの字」形状に窪んでいる。詳述すると、リング用溝8は、最上部および最下部の金属板2を除いた中途部の三枚の金属板2に最上部および最下部の金属板2に形成された穴よりも径の広い穴を形成することで形成されている。
【0037】
リング部14の環穴12aの穴径R3は、流路33の流路径R9よりも長い。プレート部15の外径R4は、リング用溝8の外径R10よりも短い。リング部14の外径R5は、流路用穴7の穴径R8よりも短い。それ故、プレート部15がリング用溝8に嵌め込まれて、リング部14が流路用穴7よりも内側に配置される。この結果、環穴12aが流路33の一部として機能する。また、リング部14の厚さD2は、流体用穴7の穴軸方向の深さ、つまり、ガスケット1の厚さD5以上の厚さである。それ故、リング部14のリング部14の上端はシリンダヘッド31に形成された流路33の下端に直に接触し、リング部14の下端はシリンダブロック30に形成された流路33の上端に直に接触することで、リング部14は上下方向に圧縮される。これにより、流路33のガスケット1により途切れた箇所をラバーリング12により繋ぐことで、流路33が切れ目なく連なることになる。また、圧縮されたリング部14により流路33から流体が漏れ出て金属板2どうしの層間に侵入することを防止することができる。
【0038】
締結用穴5および流路用穴7どうしが近接することで、Oリング用溝6の一部およびリング用溝8の一部が合併して、締結用穴5および流路用穴7を連通する連通穴9が形成されている。連通穴9は、三枚の中途部の金属板2が無く、最上部および最下部の金属板2のみが積層することで形成されている。連通穴9は、平面視で連結片13と同様の形状を成している。連通穴9には、シール連結体10がガスケット1に組み込まれたときに、連結片13が配置される。連通穴9は、Oリング11およびラバーリング12により塞がれている。
【0039】
以上のように、本実施形態によれば、締結用穴5と流路用穴7とが近接した状態でも、シール連結体10を用いることで、Oリング11が締結用穴5をシールし、ラバーリング12が流路用穴7をシールする。これにより、締結用穴5では、Oリング11によるシールにより、締結用穴5の穴径R6が確保される構成でありながら複数の金属板2の層間をシールすることが可能となる。また、流路用穴7では、ラバーリング12によるシールにより、流体が流路33から漏れ出ることをより確実に防ぐことが可能となる。
【0040】
本実施形態は、このように用途や機能が異なる複数の穴を一つの部材によりシールすることで、部品点数や組付け工数の削減、組付け不良リスクの回避する構成でありながら、用途や機能が異なる穴どうしが近接した状態でも、それぞれの穴の用途や機能を損なわずにそれぞれの穴を最適にシールすることが可能となる。
【0041】
シール連結体10は、Oリング11の外周面とラバーリング12のプレート部15の外周面とが接するまで、Oリング11とラバーリング12との間を近づけることが可能である。つまり、ガスケット1においては、Oリング11の外周面とラバーリング12のプレート部15の外周面とが接するまで、締結用穴5と流路用穴7とを近接させることができる。これにより、設置スペースの狭小化に対応するには有利になる。
【0042】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明のシール連結体およびガスケットは特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0043】
本発明のスクイーズパッキンは、Oリング11に限定されずに、Xリング、Dリング、Tリングなどの公知のスクイーズパッキンを用いることができる。また、スクイーズパッキンは、対象となるOリング用溝に嵌め込まれて押し潰された際に、自身の弾性によりシール可能であれば、ゴム以外の材料で構成されてもよく、公知のメタル中空Oリングを用いることもできる。
【0044】
本発明のリングは、リング部14およびプレート部15を有するラバーリング12に限定されずに、特許文献1(特許第6628214号)のように、リング部のみを有するラバーリングを用いることができる。リング部のみを有するラバーリングは、対象となるリング用溝にリング部が嵌め込まれる。この場合には、Oリングの線径とリング部の厚さとが等しくなる。リングは、ゴム以外の材料で構成されてもよく、公知の金属リングを用いることもできる。
【0045】
Oリング11は、バックアップリングを有していてもよい。ガスケット1に組み込まれるシール連結体10のOリング11がバックアップリングを有する場合に、バックアップリングは、Oリング11の外側に配置するとよい。
【0046】
本発明のガスケットは、シリンダヘッドガスケットに限定されるものではなく、三枚以上の金属板2が積層して成り、締結用穴5と流路用穴7とが形成されるガスケットであればよい。例えば、水冷式モータのガスケットである。
【0047】
締結用穴5としては、ダウエル穴とボルト穴とを例示したが、ボルト穴の周辺はボルト軸力の作用による締結応力が集中する。それ故、ボルト穴はシリンダボアや流路用穴などの他の穴に近接させないことが多い。したがって、締結用穴5としては、ボルト穴よりもダウエル穴の方が適している。
【符号の説明】
【0048】
1 ガスケット
2 金属板
5 締結用穴
6 Oリング用溝
7 流路用穴
8 リング用溝
10 シール連結体
11 Oリング
12 ラバーリング
12a 環穴
13 連結片
14 リング部
15 プレート部
【手続補正書】
【提出日】2023-01-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のスクイーズパッキンと、環穴が流体の流路の一部を構成する環状のリングと、一端が前記スクイーズパッキンの外周面の一部に接合し、他端が前記リングの外周面の一部に接合して、前記スクイーズパッキンおよび前記リングを連結する連結片と、を備えていて、平面視で8の字形状を成しており、
前記スクイーズパッキンの厚さは前記連結片の厚さよりも厚く、前記スクイーズパッキンの上端部および下端部が前記連結片からはみ出していて、前記リングの厚さは前記連結片の厚さよりも厚く、前記リングの上端部および下端部が前記連結片からはみ出しており、
前記リングは、前記環穴が形成されたリング部とそのリング部の外周面から外側に突出して環状を成すプレート部を有し、前記リング部および前記プレート部のうちの少なくとも前記リング部がゴムで構成されていて、前記リング部の厚さが前記Oリングの線径よりも厚く、前記リング部の上端部および下端部が前記連結片からはみ出していて、前記プレート部の厚さが前記連結片の厚さよりも薄いことを特徴とするシール連結体。
【請求項2】
前記スクイーズパッキンは、ゴムで構成されたOリングであり、
前記連結片は、ゴムで構成されていて、前記他端が前記リング部の外周面の一部に接合し、内部に前記プレート部の一部を内包している請求項1に記載のシール連結体。
【請求項3】
前記プレート部は金属で構成されている請求項2に記載のシール連結体。
【請求項4】
前記Oリング、前記リング部、および、前記連結片を構成するゴムの種類が同一である請求項2または3に記載のシール連結体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のシール連結体が組み込まれたことを特徴とするガスケット。
【請求項6】
請求項2~4のいずれか1項に記載のシール連結体が組み込まれたガスケットであって、
三枚以上の金属板が積層して成り、ダウエルピンあるいはボルトが挿入される締結用穴と流体の流路よりも広く開口した流路用穴と、を有し、
前記Oリングが、前記締結用穴の周縁端部に形成されて前記締結用穴の径方向の内側から外側に向かって窪んだOリング用溝に嵌め込まれ、
前記リングの前記プレート部が、前記流路用穴の周縁端部に形成されて前記流路用穴の径方向の内側から外側に向かって窪んだリング用溝に嵌め込まれて、環軸方向の厚さが前記流路用穴の穴軸方向の深さ以上の厚さである前記リング部が、前記流路用穴の内側に配置されることを特徴するガスケット。
【請求項7】
前記Oリングの外周と前記プレート部の外周とが接するまで前記締結用穴と前記流路用穴とが近接した請求項6に記載のガスケット。
【請求項8】
前記Oリングの内周は、前記締結用穴に挿入された前記ダウエルピンあるいは前記ボルトと非接触である請求項6または7に記載のガスケット。
【請求項9】
前記連結片は、前記Oリング用溝の一部と前記リング用溝の一部とが合併して形成された前記締結用穴と前記流路用穴との連通部分に配置される請求項6~8のいずれか1項に記載のガスケット。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
上記の目的を達成する本発明のシール連結体は、環状のスクイーズパッキンと、環穴が流体の流路の一部を構成する環状のリングと、一端が前記スクイーズパッキンの外周面の一部に接合し、他端が前記リングの外周面の一部に接合して、前記スクイーズパッキンおよび前記リングを連結する連結片と、を備えていて、平面視で8の字形状を成しており、前記スクイーズパッキンの厚さは前記連結片の厚さよりも厚く、前記スクイーズパッキンの上端部および下端部が前記連結片からはみ出していて、前記リングの厚さは前記連結片の厚さよりも厚く、前記リングの上端部および下端部が前記連結片からはみ出しており、前記リングは、前記環穴が形成されたリング部とそのリング部の外周面から外側に突出して環状を成すプレート部を有し、前記リング部および前記プレート部のうちの少なくとも前記リング部がゴムで構成されていて、前記リング部の厚さが前記Oリングの線径よりも厚く、前記リング部の上端部および下端部が前記連結片からはみ出していて、前記プレート部の厚さが前記連結片の厚さよりも薄いことを特徴とする。
【手続補正書】
【提出日】2023-04-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のスクイーズパッキンと、環穴が流体の流路の一部を構成する環状のリングと、一端が前記スクイーズパッキンの外周面の一部に接合し、他端が前記リングの外周面の一部に接合して、前記スクイーズパッキンおよび前記リングを連結する連結片と、を備えていて、平面視で8の字形状を成しており、
前記スクイーズパッキンの厚さは前記連結片の厚さよりも厚く、前記スクイーズパッキンの上端部および下端部が前記連結片からはみ出していて、前記リングの厚さは前記連結片の厚さよりも厚く、前記リングの上端部および下端部が前記連結片からはみ出しており、
前記スクイーズパッキンは、ゴムで構成されたOリングであり、
前記リングは、前記環穴が形成されたリング部とそのリング部の外周面から外側に突出して環状を成すプレート部を有し、前記リング部および前記プレート部のうちの少なくとも前記リング部がゴムで構成されていて、前記リング部の厚さが前記Oリングの線径よりも厚く、前記リング部の上端部および下端部が前記連結片からはみ出していて、前記プレート部の厚さが前記連結片の厚さよりも薄いことを特徴とするシール連結体。
【請求項2】
前記連結片は、ゴムで構成されていて、前記他端が前記リング部の外周面の一部に接合し、内部に前記プレート部の一部を内包している請求項1に記載のシール連結体。
【請求項3】
前記プレート部は金属で構成されている請求項2に記載のシール連結体。
【請求項4】
前記Oリング、前記リング部、および、前記連結片を構成するゴムの種類が同一である請求項2または3に記載のシール連結体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のシール連結体が組み込まれたことを特徴とするガスケット。
【請求項6】
請求項2~4のいずれか1項に記載のシール連結体が組み込まれたガスケットであって、
三枚以上の金属板が積層して成り、ダウエルピンあるいはボルトが挿入される締結用穴と流体の流路よりも広く開口した流路用穴と、を有し、
前記Oリングが、前記締結用穴の周縁端部に形成されて前記締結用穴の径方向の内側から外側に向かって窪んだOリング用溝に嵌め込まれ、
前記リングの前記プレート部が、前記流路用穴の周縁端部に形成されて前記流路用穴の径方向の内側から外側に向かって窪んだリング用溝に嵌め込まれて、環軸方向の厚さが前記流路用穴の穴軸方向の深さ以上の厚さである前記リング部が、前記流路用穴の内側に配置されることを特徴するガスケット。
【請求項7】
前記Oリングの外周と前記プレート部の外周とが接するまで前記締結用穴と前記流路用穴とが近接した請求項6に記載のガスケット。
【請求項8】
前記Oリングの内周は、前記締結用穴に挿入された前記ダウエルピンあるいは前記ボルトと非接触である請求項6または7に記載のガスケット。
【請求項9】
前記連結片は、前記Oリング用溝の一部と前記リング用溝の一部とが合併して形成された前記締結用穴と前記流路用穴との連通部分に配置される請求項6~8のいずれか1項に記載のガスケット。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
上記の目的を達成する本発明のシール連結体は、環状のスクイーズパッキンと、環穴が流体の流路の一部を構成する環状のリングと、一端が前記スクイーズパッキンの外周面の一部に接合し、他端が前記リングの外周面の一部に接合して、前記スクイーズパッキンおよび前記リングを連結する連結片と、を備えていて、平面視で8の字形状を成しており、前記スクイーズパッキンの厚さは前記連結片の厚さよりも厚く、前記スクイーズパッキンの上端部および下端部が前記連結片からはみ出していて、前記リングの厚さは前記連結片の厚さよりも厚く、前記リングの上端部および下端部が前記連結片からはみ出しており、前記スクイーズパッキンは、ゴムで構成されたOリングであり、前記リングは、前記環穴が形成されたリング部とそのリング部の外周面から外側に突出して環状を成すプレート部を有し、前記リング部および前記プレート部のうちの少なくとも前記リング部がゴムで構成されていて、前記リング部の厚さが前記Oリングの線径よりも厚く、前記リング部の上端部および下端部が前記連結片からはみ出していて、前記プレート部の厚さが前記連結片の厚さよりも薄いことを特徴とする。