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  • 特開-不適合部検出装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122820
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】不適合部検出装置
(51)【国際特許分類】
   C14B 99/00 20060101AFI20230829BHJP
   G01N 33/44 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
C14B99/00
G01N33/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026553
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 健一
【テーマコード(参考)】
4F056
【Fターム(参考)】
4F056AA01
4F056DD01
4F056EE20
4F056GG06
(57)【要約】
【課題】床革の表面不具合に起因する不適合部を被覆部への適用前に精度よく検出できる不適合部検出装置を提供する。
【解決手段】不適合部検出装置1は、床革2の裏面2bに押し当てられる押し当て部材5と、床革2の不適合部を検出するための値として、床革2の押し当て部材5に押し当てられた部分の表面2aの面粗さパラメータの最大高さを測定する測定手段9と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床革の裏面に押し当てられる押し当て部材と、
前記床革の不適合部を検出するための値として、前記床革の前記押し当て部材に押し当てられた部分の表面の面粗さパラメータの最大高さを測定する測定手段と、
を備えることを特徴とする不適合部検出装置。
【請求項2】
測定手段により測定された最大高さと予め設定された基準値との比較に応じて、床革の不適合部を決定する決定手段を備える
ことを特徴とする請求項1記載の不適合部検出装置。
【請求項3】
押し当て部材は、床革の裏面に押し当てられる部分に屈曲部を有する
ことを特徴とする請求項1または2記載の不適合部検出装置。
【請求項4】
押し当て部材の屈曲部に押し当てられた床革の表面を押して前記床革を前記屈曲部の内側に折れ曲がらせる折り曲げ手段を備える
ことを特徴とする請求項3記載の不適合部検出装置。
【請求項5】
決定手段により決定された床革の不適合部をこの床革に表示する表示手段を備える
ことを特徴とする請求項1ないし4いずれか一記載の不適合部検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床革の不適合部を検出する不適合部検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両のハンドルすなわちステアリングホイールには、乗員によって把持されるリム部などの被覆部の表面に、意匠性や耐久性を高めるために表皮が施されるものがある。この表皮としては、本革、床革、合成皮革、人工皮革などの様々な材料が用いられる。床革を用いる場合、特に縫い合わせ部付近の表面部分の外観にオレンジの外皮表面と類似する凹凸が生じる不具合事象(以下、オレンジピール事象という)が生じることがある。オレンジピール事象は、床革を裁断する前の一般的な検査方法では検査除去することが容易でなく、床革を縫製した際になって検出されることが多いため、その際に検出された裁断済みの床革は不良品として処分されてしまう。
【0003】
一般的に、床革のオレンジピール事象の発生原因としては、床革の繊維構造の不均一さに起因すると考えられる。すなわち、床革は、革製造工程初期にと殺された原皮の脱毛石灰漬けの後に表皮側かと裏面側とに分割して発生した床皮を、なめし工程や染色工程などを経て製造されるが、その構成するコラーゲン線維束から成り立つ繊維の密度が表皮側よりも低い傾向にあり、体の部位によってその繊維の密度が粗で繊維間の空隙が多い部分が存在する。繊維密度が粗な部分は縫製などによって一定の力が加えられると、繊維が密な部分と比較して収縮しやすく皴が発生しやすいため、オレンジピール事象となることが想定される。
【0004】
床革の原反からパーツ形状に裁断する前に傷や皴などを検査する工程でオレンジピール事象が発生しやすいと考えられる部分を同定し、その部分を使用しないように裁断できれば、損失を最小限に抑制できる。
【0005】
一般的には、原反をかまぼこ状の台などに載せて伸ばしたり、裏側から半球状の金属を押し当てて伸ばしたりしながら、目視によって傷や皴などの不具合を検出する。しかしながら、この方法は、主として革表面の観察に過ぎず、床革内部の繊維の粗密状態を検出することが困難であるとともに、目視検査のため検出精度が良好とはいえず、検査者毎のばらつきも生じやすい。
【0006】
例えば、ISO 25178に準じて測定される面粗さにおいて、人工皮革の表面の最大高さを計測し評価する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-150649号公報 (第5-11頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の特許文献1に記載された方法の場合、単に最大高さに基づいて人口皮革の表面の平滑性を評価するに過ぎず、床革の表面不具合に起因する不適合部(不良部分)を被覆部に適用する前に精度よく検出することが求められる。
【0009】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、床革の表面不具合に起因する不適合部を被覆部への適用前に精度よく検出できる不適合部検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の不適合部検出装置は、床革の裏面に押し当てられる押し当て部材と、前記床革の不適合部を検出するための値として、前記床革の前記押し当て部材に押し当てられた部分の表面の面粗さパラメータの最大高さを測定する測定手段と、を備えるものである。
【0011】
請求項2記載の不適合部検出装置は、請求項1記載の不適合部検出装置において、測定手段により測定された最大高さと予め設定された基準値との比較に応じて、床革の不適合部を決定する決定手段を備えるものである。
【0012】
請求項3記載の不適合部検出装置は、請求項1または2記載の不適合部検出装置において、押し当て部材は、床革の裏面に押し当てられる部分に屈曲部を有するものである。
【0013】
請求項4記載の不適合部検出装置は、請求項3記載の不適合部検出装置において、押し当て部材の屈曲部に押し当てられた床革の表面を押して前記床革を前記屈曲部の内側に折れ曲がらせる折り曲げ手段を備えるものである。
【0014】
請求項5記載の不適合部検出装置は、請求項1ないし4いずれか一記載の不適合部検出装置において、決定手段により決定された床革の不適合部をこの床革に表示する表示手段を備えるものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の不適合部検出装置によれば、実際に被覆部に適用した状態を発現した状態で数値による客観的な検査を実施でき、床革の表面不具合に起因する不適合部を被覆部への適用前に精度よく検出できる。
【0016】
請求項2記載の不適合部検出装置によれば、請求項1記載の不適合部検出装置の効果に加えて、床革の不適合部を精度よく検出及び特定できる。
【0017】
請求項3記載の不適合部検出装置によれば、請求項1または2記載の不適合部検出装置の効果に加えて、床革を表皮として被覆部に適用した最終製品の状態を屈曲部により発現できるため、その状態で測定手段による測定を実施することにより、不適合部をより高精度に検出可能となる。
【0018】
請求項4記載の不適合部検出装置によれば、請求項3記載の不適合部検出装置の効果に加えて、床革を被覆部に適用した最終製品の状態をより忠実に発現できる。
【0019】
請求項5記載の不適合部検出装置によれば、請求項1ないし4いずれか一記載の不適合部検出装置の効果に加えて、床革における不適合部の分布を容易に目視できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施の形態の不適合部検出装置を模式的に示す説明図である。
図2】同上不適合部検出装置の一部を模式的に示す説明図である。
図3】同上不適合部検出装置の一実施例における各部の不具合の発生と面粗さパラメータの最大高さとの相関の一例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0022】
図1及び図2において、1は不適合部検出装置である。不適合部検出装置1は、自動車などの車両用のハンドル(ステアリングハンドル)であるステアリングホイールの表皮として用いられる床革2の不適合部3を検出及び特定する装置である。
【0023】
本実施の形態において、不適合部3とは、床革2の表面2aにおいて、外観にオレンジの外皮表面と類似する凹凸が生じる不具合事象(以下、オレンジピール事象という)が生じ得る部位をいう。特に、オレンジピール事象は、縫製などによって一定の力が加えられることで床革2の繊維が粗な部分が密な部分と比較して収縮して皴が発生することにより生じると考えられる。
【0024】
床革2は、例えばステアリングホイールの把持部であるリム部などの被覆部(被取付部)の少なくとも一部を覆う被覆部材である。床革2は、リム部を覆うパーツ形状に裁断される前の原反でもよいし、パーツ形状に予め裁断されているものでもよい。つまり、床革2は、所定の面積を有している。
【0025】
不適合部検出装置1は、押し当て部材5を備える。押し当て部材5は、床革2の裏面2bに対して表面2aに向かって、つまり図中の上方向に向かって押し当てられることで床革2に対し収縮方向に力が加わった状態を作り出す部材である。本実施の形態において、押し当て部材5は、オレンジピール事象が多く発生するステアリングホイールのリム部に適用した表皮の縫製部分の状態を発現するためのものである。押し当て部材5は、この押し当て部材5を床革2に押し当てるための移動手段に保持される。また、押し当て部材5が押し当てられる床革2は、保持手段などにより、押し当て部材5の押し当てに対して保持される。
【0026】
押し当て部材5は、所定の剛性を有する任意の材質により形成される。本実施の形態において、押し当て部材5は、例えば合成樹脂により形成される。図示される例では、押し当て部材5は、外周面が円筒面状に形成されている。つまり、押し当て部材5は、断面円形状に形成されている。すなわち、押し当て部材5は、円柱状または円筒状に形成されている。押し当て部材5の半径は、好ましくは、床革2により覆われる被覆部の湾曲形状を模倣する寸法とする。例えば押し当て部材5の半径rは、ステアリングホイールのリム部の太さを模倣するように、30mm~34mmに形成されている。
【0027】
また、本実施の形態において、押し当て部材5は、屈曲部5aを有する。押し当て部材5には、少なくとも屈曲部5aを含む部分に床革2の裏面2bが押し当てられる。図示される例では、押し当て部材5は、屈曲部5aから所定の一方向に延びる第一部分5bと、屈曲部5bから所定の一方向とは異なる(所定の一方向と交差する)所定の他方向に延びる第二部分5cと、を一体的に有するL字状のエルボである。屈曲部5aの屈曲角度θは、床革2により覆われる被覆部の形状を模倣する任意の角度としてよい。例えば、屈曲角度θは、90°~150°に設定されている。
【0028】
なお、押し当て部材5は、一つに限らず、必要に応じて様々な半径r及び屈曲角度θのものを用意し、床革2の状態や床革2により覆われる被覆部の形状に応じて適したものを都度選択することが好ましい。
【0029】
好ましくは、押し当て部材5に押し当てられる床革2の表面2a側には、折り曲げ手段7が配置される。折り曲げ手段7は、押し当て部材5の屈曲部5aに押し当てられた床革2の表面2aを裏面2b側に押して床革2を屈曲部5aの内側に折り曲げるものである。折り曲げ手段7は、床革2を基準として押し当て部材5とは反対側に位置する。本実施の形態では、折り曲げ手段7は、押し当て部材5及び床革2の上方に位置する。折り曲げ手段7は、床革2の表面2aを傷付けないように、床革2との接触部分、すなわち図1における下端部が例えば球状、あるいはローラ状などに形成された突起物である。折り曲げ手段7は、必須の構成ではない。
【0030】
押し当て部材5が押し当てられた床革2の表面2aは、測定手段9により面粗さが測定される。測定手段9は、例えば三次元形状測定器などの、非接触に床革2の面粗さを測定できるものが選択される。本実施の形態において、測定手段9は、床革2の表面2aの面粗さパラメータの最大高さ(Sz)を測定するものである。この最大高さは、床革2の不適合部3を検出するための値として測定する。
【0031】
一例として、測定手段9は、床革2の表面2aを撮像するための撮像手段(撮像素子、レンズ、光源など)を有する。本実施の形態において、測定手段9は、撮像手段により撮像された画像の歪みを補正したり画像処理したりする画像処理手段を有する。測定手段9は、撮像した画像を必要に応じて補正し、面粗さの最大高さを含む各パラメータを画像処理によって測定可能となっている。測定手段9は、床革2の表面2aのうち、少なくとも押し当て部材5が裏面2bに押し当てられている部分に対応する部分を撮像して面粗さパラメータの最大高さの分布を測定する。
【0032】
好ましくは、不適合部検出装置1は、測定手段9により測定された、床革2の表面2aの面粗さパラメータの最大高さに基づき床革2の不適合部3を決定する決定手段11を備える。決定手段11は、測定手段9から有線または無線により、面粗さパラメータの最大高さの測定結果を示す情報を直接的または間接的に受け取るように構成されている。決定手段11は、床革2の表面2aの面粗さパラメータの最大高さと、予め設定されている基準値と、の比較に応じて、床革2の不適合部3を決定する。比較用の基準値は、予めオレンジピール事象が発生した箇所について測定された面粗さパラメータの最大高さとの相関に基づいて設定される。決定手段11は、専用または汎用のコンピュータなどが用いられる。
【0033】
好ましくは、決定手段11により決定された不適合部3は、表示手段13により床革2に表示される。表示手段13は、例えばプロジェクタなどであり、決定手段11により決定された不適合部3を示す情報を、床革2の表面2aに色分け表示などにより画像としてマッピングするように構成されている。その他、表示手段13は、例えば床革2の裁断予定線を示す情報など、任意の情報を、不適合部3を示す情報と併せて床革2の表面2aに表示する機能を有していてもよい。表示手段13は、例えば床革2を裁断する裁断手段に併設されていてもよい。
【0034】
次に、一実施の形態の不適合部検出装置1による不適合部3の検出方法について説明する。
【0035】
まず、検査対象となる床革2を、不適合部検出装置1の保持手段などにセットして保持する。
【0036】
次いで、押し当て部材5を床革2の裏面2bに押し当てる。このとき、押し当て部材5は、床革2の裏面2bに対して、一定の角度と一定の圧力とで押し当てる(延伸効果)。また、本実施の形態では、押し当て部材5の屈曲部5aの近傍の位置で床革2の表面2aに折り曲げ手段7を押し当てる。このとき、折り曲げ手段7は、床革2の表面2aに対して、一定の圧力で押し当てて、床革2が押し当て部材5の屈曲部5aの内側に折れ曲がるようにして、床革2を実際の被覆部に取り付けて縫製などをする際の収縮状態を発現させる。
【0037】
この状態で、測定手段9により、床革2の折り曲げられた部分の面粗さパラメータの最大高さを測定する。
【0038】
測定手段9により測定された最大高さは、決定手段11に送られる。決定手段11では、測定された最大高さと、予め設定された基準値と、を比較し、最大高さが基準値を上回っている場合、その部分、本実施の形態では床革2の折り曲げられた部分が不適合部3であると決定する。
【0039】
なお、床革2の面積が広い場合には、押し当て部材5の床革2への押し当て位置を順次変えて、折り曲げ手段7による床革2の折り曲げ、測定手段9による最大高さの測定、および、決定手段11による比較決定を都度実施する。
【0040】
そして、決定手段11により決定された不適合部3を、表示手段13により床革2の表面2aに、オレンジピール事象の発生が予測される箇所としてマッピング表示する。
【0041】
このように、本実施の形態によれば、床革2の裏面2bに押し当て部材5を押し当て、床革2の押し当て部材5に押し当てられた部分の表面2aの面粗さパラメータの最大高さを測定手段9により測定し、測定された最大高さに基づき床革2の不適合部3を検出することで、実際に被覆部に適用した状態を発現した状態で数値による客観的な検査を実施でき、床革2の表面不具合に起因する不適合部3を被覆部への適用前に精度よく検出できる。
【0042】
不適合部3は、測定手段9により測定された床革2の表面2aの面粗さパラメータの最大高さと予め設定された基準値とを、決定手段11により比較して決定することで、床革2の不適合部3を精度よく検出及び特定できる。
【0043】
したがって、裁断済みの床革2を購入して使用する場合には、その床革2を実際に被覆部に適用して縫製などする際にオレンジピール事象が判明して床革2を返品交換などする無駄な工数を削減でき、床革2の原反を購入して自社裁断する場合には、裁断前に不適合部3を検出することで、裁断済みの床革2を被覆部に取り付ける際にオレンジピール事象が発生することを未然に防止でき、作業の無駄、及び、オレンジピール事象が発生した裁断済みの床革2を廃棄するなどの損害を、それぞれ最小限とすることが可能になる。
【0044】
しかも、面粗さパラメータの最大高さという数値によって不適合部3の有無を管理するため、検査者毎のばらつきが少なく高精度に不適合部3を検出できる。
【0045】
押し当て部材5が、床革2の裏面2bに押し当てられる部分に屈曲部5aを有することで、床革2を表皮として被覆部に適用した最終製品の状態を屈曲部5aにより発現できるため、その状態で測定手段9による測定および決定手段11による比較決定を実施することにより、不適合部3をより高精度に検出及び特定可能となる。
【0046】
さらに、押し当て部材5の屈曲部5aに押し当てられた床革2の表面2aを折り曲げ手段7により押して床革2を屈曲部5aの内側に折れ曲がらせることで、床革2を被覆部に適用した最終製品の状態をより忠実に発現できる。
【0047】
決定手段11により決定された床革2の不適合部3を、表示手段13によって床革2に表示することで、床革2における不適合部3の分布を容易に目視できる。そこで、床革2を裁断する際に、その不適合部3の位置を避けた裁断を行うことができ、裁断済みの床革2を被覆部に取り付ける際にオレンジピール事象が発生することによる作業の無駄、及び、オレンジピール事象が発生した裁断済みの床革2を廃棄するなどの損害を、それぞれ最小限とすることが可能になる。
【0048】
次に、本実施の形態の実施例について説明する。
【0049】
本実施例は、オレンジピール事象と面粗さパラメータの最大高さとの相関を確認するためのものである。本実施例では、床革2として、SC SIAM社製のスムース調を使用した。
【0050】
そして、床革2の原反を、目視による従来の検査方法により検査するとともに、床革2の原反を裁断したパーツを自動車用のステアリングホイールのリム部の表面に巻き付けて縫製した後、各部についてオレンジピール事象の有無を判定した。その後、その判定したパーツの近傍の床革2の原反に対し、不適合部検出装置1の測定手段9により面粗さパラメータの最大高さを測定した。本実施例では、測定手段9としては、株式会社キーエンス製の三次元形状測定装置VR5200を用いた。
【0051】
各部におけるオレンジピール事象の有無と、目視検査の結果と、その判定したパーツの近傍の床革2の原反で測定手段9により測定した面粗さパラメータの最大高さと、を図3に示す。
【0052】
図3に示すように、目視検査でNG判定された部位(サンプルNo.1)については、その近傍の床革2の原反の面粗さパラメータの最大高さが大きな数値を示した。他方、目視検査でOK判定された部位で、かつ、オレンジピール事象が発生した部位(サンプルNo.3)については、その近傍の床革2の原反の面粗さパラメータの最大高さが、やや高めの数値を示した。また、目視検査でOK判定され、かつ、オレンジピール事象が発生しなかった部位(サンプルNo.2、4、5)については、その近傍の床革2の原反の面粗さパラメータの最大高さが、オレンジピール事象が発生した部位の近傍の床革2の原反の面粗さパラメータの最大高さより小さい数値を示した。
【0053】
この図3の結果から、オレンジピール事象の発生の有無とその近傍の床革2の原反の面粗さパラメータの最大高さとに相関が見られ、オレンジピール事象の発生の有無を予測するための指標として面粗さパラメータの最大高さが妥当であることが示された。そして、目視検査を通過しつつオレンジピール事象が発生した部位の近傍の床革2の原反の面粗さパラメータの最大高さに基づいて、決定手段11による比較決定の基準値を設定することで、本実施の形態の不適合部検出装置1により不適合部3を高精度に検出できることが示された。
【0054】
なお、上記一実施の形態において、測定手段9は、撮像手段と画像処理手段とを一体的に有するものとしたが、これに限らず、撮像手段と画像処理手段とを別個に有し、例えば画像処理手段を決定手段11に組み込んだものなどでもよい。
【0055】
また、測定手段9と決定手段11とを一体的に備える装置を用いてもよい。
【0056】
さらに、決定手段11は、不適合部3の判定用のソフトウェアなどとして、汎用のコンピュータにインストールして構成してもよい。
【0057】
そして、押し当て部材5を移動手段によって移動させて床革2の裏面2bに押し当てる構成としたが、これに限らず、床革2を移動手段によって移動させて押し当て部材5に押し当てる構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、例えば自動車などの車両用のステアリングホイールの表皮として用いられる床革の不適合部の検出に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0059】
1 不適合部検出装置
2 床革
2a 表面
2b 裏面
3 不適合部
5 押し当て部材
5a 屈曲部
7 折り曲げ手段
9 測定手段
11 決定手段
13 表示手段
図1
図2
図3