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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122828
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】切粉再現装置ならびに切粉再現方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 28/00 20060101AFI20230829BHJP
【FI】
B21D28/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026565
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】515086908
【氏名又は名称】株式会社トヨタプロダクションエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隆晴
(72)【発明者】
【氏名】石田 健二郎
(72)【発明者】
【氏名】小原 和幸
(72)【発明者】
【氏名】麻生 俊二
【テーマコード(参考)】
4E048
【Fターム(参考)】
4E048AD04
(57)【要約】
【課題】被加工材のプレス切断時に切粉が発生する様子を再現可能とする。
【解決手段】切粉再現装置は、被加工材1と下型2の刃先と切断刃4の刃先とを複数のメッシュ10~30に細分化するとともに、各メッシュ10~30のサイズを再現対象となる切粉5の大きさ以下に設定する準備工程と、切断刃4の刃先を被加工材1の表面側のメッシュ10の範囲内に当接させた状態で当該切断刃4を変位させるプレス工程と、切断刃4の変位に伴い被加工材1が切断される過程において被加工材1に生じる主応力および塑性歪を計測する計測工程と、前記計測工程での計測結果が閾値未満であるか否かを判定する判定工程と、前記判定工程で肯定判定した場合に、切断刃4の変位に伴い被加工材1が切断される過程を再現した解析画像、ならびに被加工材1から切粉が発生する様子を再現した解析画像を取得する取得工程と、を実行する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工材を下型と上型とで挟むとともに当該下型および上型の端面から飛び出させた状態にし、前記被加工材に切断刃を接触することにより前記下型の端面上角の刃先と前記切断刃の刃先とで切断する際に切粉が発生する様子を再現する切粉再現装置であって、
前記被加工材と前記下型の刃先と前記切断刃の刃先とを複数のメッシュに細分化するとともに、当該各メッシュのサイズを再現対象となる切粉の大きさ以下に設定する準備工程と、
前記切断刃の刃先を前記被加工材の表面側のメッシュの範囲内に当接させた状態で当該切断刃を変位させるプレス工程と、
前記切断刃の変位に伴い前記被加工材が切断される過程において前記被加工材に生じる主応力および塑性歪を計測する計測工程と、
前記計測工程での計測結果が閾値未満であるか否かを判定する判定工程と、
前記判定工程で肯定判定した場合に、前記切断刃の変位に伴い前記被加工材が切断される過程を再現した解析画像、ならびに前記被加工材から切粉が発生する様子を再現した解析画像を取得する取得工程と、を実行することを特徴とする切粉再現装置。
【請求項2】
被加工材を下型と上型とで挟むとともに当該下型および上型の端面から飛び出させた状態にし、前記被加工材に切断刃を接触することにより前記下型の端面上角の刃先と前記切断刃の刃先とで切断する際に切粉が発生する様子を再現する切粉再現方法であって、
前記被加工材と前記下型の刃先と前記切断刃の刃先とを複数のメッシュに細分化するとともに、当該各メッシュのサイズを再現対象となる切粉の大きさ以下に設定する準備処理と、
前記切断刃の刃先を前記被加工材の表面側のメッシュの範囲内に当接させた状態で当該切断刃を変位させるプレス処理と、
前記切断刃の変位に伴い前記被加工材が切断される過程において前記被加工材に生じる主応力および塑性歪を計測する計測処理と、
前記計測処理での計測結果が閾値未満であるか否かを判定する判定処理と、
前記判定処理で肯定判定した場合に、前記切断刃の変位に伴い前記被加工材が切断される過程を再現した解析画像、ならびに前記被加工材から切粉が発生する様子を再現した解析画像を取得する取得処理と、を行うことを特徴とする切粉再現方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切粉再現装置ならびに切粉再現方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、被プレス材のプレス切断を行う上型及び下型と、上型及び下型に設けられ、被プレス材を切断予定線に沿って切断して製品部分から不要部分を切り取るための一対の上型用切刃及び下型用切刃とを備えたせん断加工用プレス型が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-169595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、プレス切断の過程で発生する不具合の一つである「切粉」についての発生メカニズムは実験によって明らかになっているものの、前記切粉が発生する様子を再現することは実現できていない。
【0005】
このような事情に鑑み、本発明は、被加工材のプレス切断時に切粉が発生する様子を再現可能とする切粉再現装置ならびに切粉再現方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、被加工材を下型と上型とで挟むとともに当該下型および上型の端面から飛び出させた状態にし、前記被加工材に切断刃を接触することにより前記下型の端面上角の刃先と前記切断刃の刃先とで切断する際に切粉が発生する様子を再現する切粉再現装置であって、前記被加工材と前記下型の刃先と前記切断刃の刃先とを複数のメッシュに細分化するとともに、当該各メッシュのサイズを再現対象となる切粉の大きさ以下に設定する準備工程と、前記切断刃の刃先を前記被加工材の表面側のメッシュの範囲内に当接させた状態で当該切断刃を変位させるプレス工程と、前記切断刃の変位に伴い前記被加工材が切断される過程において前記被加工材に生じる主応力および塑性歪を計測する計測工程と、前記計測工程での計測結果が閾値未満であるか否かを判定する判定工程と、前記判定工程で肯定判定した場合に、前記切断刃の変位に伴い前記被加工材が切断される過程を再現した解析画像、ならびに前記被加工材から切粉が発生する様子を再現した解析画像を取得する取得工程と、を実行することを特徴としている。
【0007】
この構成では、前記被加工材と前記下型の刃先と前記切断刃の刃先とに設定する複数のメッシュの大きさを再現対象となる切粉の大きさ以下に設定し、前記切断刃の刃先を前記被加工材のメッシュの範囲内つまり端部以外に当接させるようにしている。
【0008】
これにより、前記被加工材をプレス切断で切断するときに切粉が発生する様子を再現した解析画像を取得することができる。
【0009】
また、本発明は、被加工材を下型と上型とで挟むとともに当該下型および上型の端面から飛び出させた状態にし、前記被加工材に切断刃を接触することにより前記下型の端面上角の刃先と前記切断刃の刃先とで切断する際に切粉が発生する様子を再現する切粉再現方法であって、前記被加工材と前記下型の刃先と前記切断刃の刃先とを複数のメッシュに細分化するとともに、当該各メッシュのサイズを再現対象となる切粉の大きさ以下に設定する準備処理と、前記切断刃の刃先を前記被加工材の表面側のメッシュの範囲内に当接させた状態で当該切断刃を変位させるプレス処理と、前記切断刃の変位に伴い前記被加工材が切断される過程において前記被加工材に生じる主応力および塑性歪を計測する計測処理と、前記計測処理での計測結果が閾値未満であるか否かを判定する判定処理と、前記判定処理で肯定判定した場合に、前記切断刃の変位に伴い前記被加工材が切断される過程を再現した解析画像、ならびに前記被加工材から切粉が発生する様子を再現した解析画像を取得する取得処理と、を行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る切粉再現装置ならびに切粉再現方法によれば、被加工材のプレス切断時に切粉が発生する様子を再現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る切粉再現装置の一実施形態で想定するプレス切断装置の概略構成を示す側面図である。
図2】被加工材のプレス切断の様子を示す斜視図である。
図3】被加工材のプレス切断時に発生する切粉を再現する方法を示すフローチャートである。
図4】プレス切断の初期段階を示す解析画像の断面図で、図2の一部を拡大した状態を示している。
図5図4の一部をさらに拡大して示す図である。
図6図5の続きを示す解析画像の断面図である。
図7図6の続きを示す解析画像の断面図である。
図8図7の続きを示す解析画像の断面図である。
図9図8の続きを示す解析画像の断面図である。
図10図9の続きを示す解析画像の断面図である。
図11】本発明に係る切粉再現装置の他の実施形態で想定するプレス切断装置の概略構成を示す斜視図である。
図12】プレス切断の初期段階を示す解析画像を示す図で、図11のプレス切断装置を側面から見ている図である。
図13図12の続きを示す解析画像を示す図である。
図14図13の続きを示す解析画像を示す図である。
図15図14の続きを示す解析画像を示す図である。
図16図15の続きを示す解析画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1から図10に本発明に係る切粉再現装置ならびに切粉再現方法の一実施形態を示している。
【0014】
この切粉再現装置は、例えばソフトウェアを実行することにより各種のプログラムを実行するコンピュータ(制御装置)であって、被加工材1を切断するプレス切断時において切粉5が発生する様子を再現するためのCAE(Computer Aided Engineering)解析のプログラムを実行する。
【0015】
なお、前記コンピュータは、詳細に図示していないが、公知のように、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)をバスにより相互に接続される構成である。
【0016】
前記バスには、入出力インタフェースを介して、少なくとも入力部(キーボード、マウス、マイクロホン、タッチパネル等)、出力部(ディスプレイ、スピーカ等)、記憶部(ハードディスク、不揮発性のメモリ等)、通信部(ネットワークインタフェース等)、外部記憶装置(磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ等)を駆動するドライブが接続される。
【0017】
この切粉再現装置で想定するプレス切断装置は、図1および図2に示すように、被加工材1を下型(ダイ)2と上型(パッド)3とで挟むとともに当該下型2および上型3の端面から飛び出させた状態にし、被加工材1の上から切断刃(パンチ)4を下降させることにより下型2の端面上角の刃先と切断刃4の刃先とで切断するように構成されている。
【0018】
被加工材1は、例えば自動車のボディパネルなどとされる。このボディパネルの素材は、例えば鋼板とされるが、近年においてはアルミニウムとされる。このようなアルミニウムをプレス切断する際には、切粉が発生しやすくなる傾向である。
【0019】
そこで、本発明は、下型2の刃先と切断刃4の刃先とで被加工材1を切断するプレス切断時において切粉5の発生を抑制する技術を確立することを目的として創案された。
【0020】
本発明の一実施形態に係る切粉再現装置は、プレス切断時において切粉5が発生する様子を再現するためのCAE解析のプログラムを装備しているとともに、当該プログラムを実行する構成を有している。
【0021】
次に、上記構成の切粉再現装置により切粉5を再現する方法について、図3のフローチャートを参照して説明する。
【0022】
前記CAE解析では、図1に示すようにXY平面上に2Dモデル化したプレス切断装置を用いる。
【0023】
解析条件について、2Dモデルは、平面ひずみ状態で解析する為、Z並進、X、Yの回転成分は発生しないものとする。被加工材1において切断刃4の刃先から-X方向(図1参照)は解析結果に影響ある範囲(例えば2.3mm)をモデル化する。
【0024】
被加工材1、下型2および切断刃4の各刃先を細分化するメッシュ10,20,30のサイズは、0.01mm、それ以外は0.2~0.6mmにする。
【0025】
下型2および上型3の形状は設計CAD(computer-aided design)を使用し、切断刃4の形状は実測値を元に再現し、下型2および上型3の端面と切断刃4の端面との対向間のクリアランスは0.07mm(実測値)とする。下型2と上型3との隙間は被加工材1の板厚分とする。
【0026】
被加工材1は、アルミニウム(A6T02、破壊条件は主応力が290.6MPa、相当塑性歪は0.89)とし、板厚は1.0mmとする。被加工材1の形状は、絞り工程の解析FEM(有限要素法、Finite Element Method)を使用する。
【0027】
下型2および上型3は、前記アルミニウムの縦弾性係数を100倍して剛体相当とする。
【0028】
下型2は完全拘束(X、Yの並進およびZ回転を拘束)とし、切断刃4は上型3の移動完了後に、X並進、Z回転を拘束と、Y並進方向へ移動する(入力は速度200mm/s)。
【0029】
接触条件は、2D_AUTOMATIC_SURFACE_TO_SURFACE(2次元モデル用の接触判定を計算する時に必要な接触条件定義の名称)を定義する。
【0030】
そして、図3に示すフローチャートを開始する前の準備工程(準備処理)として、図1に示すように、被加工材1を下型2と上型3とで挟むとともに当該下型2および上型3の端面から飛び出させた状態にし、この状態において、被加工材1、下型2および切断刃4の各刃先を複数のメッシュ10,20,30に細分化する。なお、各メッシュ10~30のサイズは再現対象となる切粉5の大きさ以下に設定する。
【0031】
このような準備をしてから、図3に示すフローチャートを開始する。まず、ステップS1において、切断刃4の刃先を被加工材1の表面に設定されるメッシュ10の範囲内に当接させるように設定し(図5参照)、その状態で切断刃4を変位(下降)させる(プレス工程、プレス処理)。
【0032】
この切断刃4の変位の進展に伴い、切断刃4の刃先が被加工材1の表面に接触すると、ステップS2で肯定(YES)判定し、続くステップS3に移行する。
【0033】
なお、切断刃4の変位がさらに進展すると、例えば図4および図5に示すように、被加工材1が切断され始めるとともに、上型3の端面から飛び出している部分が下向きに撓み始める。また、切断刃4による切断については、公知のように、切断刃4の刃先が切断開始から所定深さ位置までの間がせん断となり、当該所定深さ位置から被加工材1の下面を通過するまでの間が破断となる。この破断過程において、被加工材1の切断された部分の一部が外へ塑性変形しながら張り出すようになるとともに、切粉5が発生することがある(図8および図9参照)。
【0034】
ステップS3では、被加工材1の切断が進展する過程において被加工材1に生じる主応力および塑性歪を計測する(計測工程、計測処理)。
【0035】
このステップS3に続いて、ステップS4では、この計測工程での計測結果が閾値未満であるか否かを判定する(第1判定工程、第1判定処理)。
【0036】
このステップS4で肯定(YES)判定した場合には、ステップS5において、切断刃4の下降に伴い被加工材1が変形する過程を再現した解析画像(図4から図7参照)、ならびに被加工材1から切粉5が発生する様子を再現した解析画像(図8および図9参照)を取得する(取得工程、取得処理)。
【0037】
一方、上記ステップS4で否定(NO)判定した場合には、ステップS6において、被加工材1の切断が完了したか否かを判定する(第2判定工程、第2判定処理)。なお、前記切断の完了は、切断刃4の刃先が被加工材1の下面よりも下に変位したか否かを判定することで行える。
【0038】
このステップS6で否定(NO)判定した場合には、ステップS1に戻る。一方、上記ステップS6で肯定(YES)判定した場合には、ステップS7において、被加工材1の切断が完了したと認識して、当該切断完了状態を示す解析画像(図10参照)を取得してから、CAE解析を終了する(終了工程、終了処理)。
【0039】
以上説明したように本発明を適用した実施形態では、CAE解析において、被加工材1と下型2の刃先と上型3の刃先とに設定する複数のメッシュ10,20,30の大きさを再現対象となる切粉5の大きさ以下に設定し、プレス切断時に上型3の刃先を被加工材1に設定したメッシュ10の範囲内つまり端部以外に当接させるようにしている。
【0040】
これにより、CAE解析により被加工材1をプレス切断するときに切粉5が発生する様子を再現した解析画像を取得することができる。
【0041】
つまり、CAE解析によりプレス切断時に切粉5が発生する様子を再現することができるから、CAE解析におけるプレス切断の諸条件を適宜変更することにより、切粉5の発生が減少する様子を確認することができる。その結果、実際にプレス切断を行うことに伴い切粉5が発生することを抑制する技術を確立できるようになる。
【0042】
なお、本発明は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲内および当該範囲と均等の範囲内で適宜に変更することが可能である。
【0043】
図11図16に本発明の他の実施形態を示している。この実施形態では、CAE解析において、図11に示すようにXYZ面上に3Dモデル化したプレス切断装置を用いる。このプレス切断装置は、上記実施形態のプレス切断装置の切断刃4を、上抜刃4A、寄抜刃4Bにしている。
【0044】
解析前の準備工程(準備処理)として、図11に示すように、被加工材1を下型2と上型3とで挟むとともに当該下型2および上型3の端面から飛び出させた状態にし、この状態において、被加工材1、下型2、上抜刃4A、寄抜刃4Bの各刃先を複数のメッシュ(図示省略、図4の符号10,20,30参照)に細分化する。なお、各メッシュ10~30のサイズは再現対象となる切粉5の大きさ以下に設定する。
【0045】
被加工材1は、アルミニウム(A6T02、破壊条件は主応力が290.6MPa、相当塑性歪は0.89)とし、板厚は1.0mmとする。被加工材1の形状は、絞り工程の解析FEM(有限要素法、Finite Element Method)を使用する。
【0046】
下型2および上型3は、被加工材1の材料とする前記アルミニウムの縦弾性係数を100倍して剛体相当とする。
【0047】
解析条件について、製品側(上抜刃4Aの刃先からY方向)は解析結果に影響ある範囲のみモデル化し、X方向は形状沿いに10mmをモデル化している。
【0048】
被加工材1、下型2、上抜刃4A、寄抜刃4Bの各刃先を細分化する各メッシュのサイズは、0.0125mm、それ以外は0.2~0.6mmにする。
【0049】
下型2および上型3は、形状を設計CAD(computer-aided design)を使用する。下型2完全拘束(X、Y、Zの並進と回転を拘束)とする。上型3は、下型2との隙間が被加工材1の板厚分となるようにZ並進方向へ移動する。下型2と上型3との隙間は被加工材1の板厚分とする。
【0050】
上抜刃4Aの形状は、実測値を元に再現する。この上抜刃4Aは、上型3の変位完了後に、Z並進方向に変位(移動)させる(入力は速度200mm/S、X、Y並進、X、Y、Z回転は拘束)。上型3の端面と上抜刃4A、寄抜刃4Bの端面との対向間のクリアランスは0.21mm(実測値)とする。
【0051】
寄抜刃4Bの形状は、実測値を元に再現する。この寄抜刃4Bは、上抜刃4Aの変位完了後に、寄抜刃4Bの抜き方向へ変位(移動)させる(入力は速度:200mm/S、抜き方向以外の並進、回転は拘束)。
【0052】
接触条件は、ERODING_SURFACE_TO_SURFACE(3次元ソリッドメッシュを用いた解析時に有効な接触条件定義の名称)を定義する。
【0053】
次に、CAE解析により切粉再現装置により切粉5を再現する方法について説明する。
【0054】
まず、図12に示すように、被加工材1を下型2と上型3とで挟むとともに当該下型2および上型3の端面から飛び出させた状態にしておいて、上抜刃4Aの刃先を被加工材1の表面に接触させる。
【0055】
この状態において、図13図14に示すように、上抜刃4Aを変位(移動)させる。この上抜刃4Aの変位の進展に伴い被加工材1が切断され始める。この切断については、公知のように、上抜刃4Aの刃先が切断開始から所定深さ位置までの間がせん断となり、当該所定深さ位置から被加工材1の下面を通過するまでの間が破断となる。
【0056】
そして、図15図16に示すように、下型2と上型3とで挟まれている残余の被加工材1の突出部分の表面に寄抜刃4Bに接触させて変位(移動)させることにより、前記被加工材1の突出部分を切断する。
【0057】
前記切断の終了段階、つまり図16に示すように、寄抜刃4Bが下型2に到達したときに、被加工材1の切断端部から一部が破断して切粉5が発生する。
【0058】
このように、この実施形態においても上記実施形態と同様に、CAE解析により被加工材1をプレス切断するときに切粉5が発生する様子を再現した解析画像を取得することができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、被加工材を下型と上型とで挟むとともに当該下型および上型の端面から飛び出させた状態にし、前記被加工材の上から切断刃を下降させることにより前記下型の端面上角の刃先と前記切断刃の刃先とで切断する際に切粉が発生する様子を再現する切粉再現装置ならびに切粉再現方法に好適に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 被加工材
2 下型
3 上型
4 切断刃
5 切粉
10 被加工材1のメッシュ
20 下型2のメッシュ
30 切断刃4のメッシュ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16