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特開2023-122829薄肉管の製造方法、薄肉管製造用の中間体、および、薄肉管
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122829
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】薄肉管の製造方法、薄肉管製造用の中間体、および、薄肉管
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/12 20060101AFI20230829BHJP
   H01P 11/00 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
B23K20/12 368
B23K20/12 342
H01P11/00 100
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026568
(22)【出願日】2022-02-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000114787
【氏名又は名称】ヤマザキマザック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100196003
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 太郎
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 謙太郎
(72)【発明者】
【氏名】南谷 正泰
(72)【発明者】
【氏名】松原 英司
【テーマコード(参考)】
4E167
【Fターム(参考)】
4E167AA06
4E167AA08
4E167BG08
4E167BG22
4E167BG35
(57)【要約】      (修正有)
【課題】摩擦攪拌接合を用いて薄肉管を容易に製造することを可能にする技術、および、摩擦攪拌接合を用いて容易に製造可能な薄肉管を提供する。
【解決手段】薄肉管の製造方法は、第1面に形成された溝部と溝部の第1側面を規定する第1側壁とを有するブロックと、蓋とを準備する工程と、ブロックと溝部を覆う蓋とによって内部空間が形成されるように、蓋をブロックに配置する工程と、蓋の外縁に沿って、蓋とブロックとを摩擦攪拌により接合する工程と、第1側壁が薄肉壁となるように、第1側壁の一部を切除する工程と、を具備する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面に形成された溝部と前記溝部の第1側面を規定する第1側壁とを有するブロックと、蓋とを準備する工程と、
前記ブロックと、前記溝部を覆う前記蓋とによって内部空間が形成されるように、前記蓋を前記ブロックに配置する工程と、
前記蓋の外縁に沿って、前記蓋と前記ブロックとを摩擦攪拌により接合する工程と、
前記第1側壁が薄肉壁となるように、前記第1側壁の一部を切除する工程と
を具備する
薄肉管の製造方法。
【請求項2】
前記切除する工程は、前記第1側壁の壁厚が、前記摩擦攪拌に用いるショルダの先端半径より小さくなるように、前記第1側壁の一部を切除することを含む
請求項1に記載の薄肉管の製造方法。
【請求項3】
前記接合する工程の実行時において、前記第1側壁の壁厚は、前記摩擦攪拌に用いる前記ショルダの前記先端半径より大きい
請求項2に記載の薄肉管の製造方法。
【請求項4】
前記溝部は、曲線に沿って延在する湾曲溝部を含む
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の薄肉管の製造方法。
【請求項5】
前記蓋の外縁部は、
前記ブロックによって支持される傾斜面と、
前記傾斜面の上端から上方に延在する外側面と
を有し、
前記接合する工程は、摩擦攪拌接合用工具の攪拌ピンが前記外側面を横切り、かつ、前記攪拌ピンが前記傾斜面の下端部分に達していない状態で、前記攪拌ピンを、前記第1面に垂直な方向に移動させることにより実行される
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の薄肉管の製造方法。
【請求項6】
前記ブロックは、前記第1側壁を含む複数の壁を有し、
前記接合する工程の実行後、複数の前記壁の一部が切除されることにより、前記薄肉壁と、他の部材に固定される被固定部とが一体的に形成される
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の薄肉管の製造方法。
【請求項7】
前記準備する工程で準備される前記ブロックは、前記溝部の一方側の端面を規定する第1端壁を有し、
前記接合する工程の実行後に、前記第1端壁が除去される
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の薄肉管の製造方法。
【請求項8】
前記薄肉管は、薄肉導波管であり、
前記溝部および前記蓋は、電磁波を反射する内面を有する
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の薄肉管の製造方法。
【請求項9】
第1側壁、第2側壁、第1端壁、第2端壁、および、底壁を含む複数の壁と、複数の前記壁によって規定される溝部とを有するブロックと、
前記溝部を覆う蓋と
を具備し、
前記蓋の外縁部と、前記第1側壁、前記第2側壁、前記第1端壁および前記第2端壁の各々とが摩擦攪拌により接合されている
薄肉管製造用の中間体。
【請求項10】
第1側壁と前記第1側壁に対向する第2側壁とを含む複数の壁と、複数の前記壁によって規定される溝部とを有する本体部と、
前記溝部を覆う蓋と
を具備し、
前記蓋と前記第1側壁との間の境界に第1摩擦攪拌接合部が形成され、
前記蓋と前記第2側壁との間の境界に第2摩擦攪拌接合部が形成され、
前記第1側壁の第1外側側面および前記第2側壁の第2外側側面の各々は切除加工面であり、前記第1側壁および前記第2側壁の各々は薄肉壁である
薄肉管。
【請求項11】
湾曲管部を有し、
前記湾曲管部の一部を構成する前記第1側壁と前記蓋とが摩擦攪拌接合され、
前記湾曲管部の一部を構成する前記第2側壁と前記蓋とが摩擦攪拌接合されている
請求項10に記載の薄肉管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄肉管の製造方法、薄肉管製造用の中間体、および、薄肉管に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁波の伝送、流体の移送等に使用される薄肉管が知られている。
【0003】
関連する技術として、特許文献1には、導波管の製造方法が開示されている。特許文献1に記載の導波管の製造方法では、断面方形の管状に組み合わせられた金属板の内面に硬質の裏当てが配置され、各金属板の突合せ部分が互いに摩擦攪拌接合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-237621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、摩擦攪拌接合を用いて薄肉管を容易に製造することを可能にする技術、および、摩擦攪拌接合を用いて容易に製造可能な薄肉管を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
いくつかの実施形態における薄肉管の製造方法は、第1面に形成された溝部と前記溝部の第1側面を規定する第1側壁とを有するブロックと、蓋とを準備する工程と、前記ブロックと、前記溝部を覆う前記蓋とによって内部空間が形成されるように、前記蓋を前記ブロックに配置する工程と、前記蓋の外縁に沿って、前記蓋と前記ブロックとを摩擦攪拌により接合する工程と、前記第1側壁が薄肉壁となるように、前記第1側壁の一部を切除する工程と、を具備する。
【0007】
いくつかの実施形態における薄肉管製造用の中間体は、第1側壁、第2側壁、第1端壁、第2端壁、および、底壁を含む複数の壁と、複数の前記壁によって規定される溝部とを有するブロックと、前記溝部を覆う蓋と、を具備する。前記蓋の外縁部と、前記第1側壁、前記第2側壁、前記第1端壁および前記第2端壁の各々とが摩擦攪拌により接合されている。
【0008】
いくつかの実施形態における薄肉管は、第1側壁と前記第1側壁に対向する第2側壁とを含む複数の壁と、複数の前記壁によって規定される溝部とを有する本体部と、前記溝部を覆う蓋と、を具備する。前記蓋と前記第1側壁との間の境界に第1摩擦攪拌接合部が形成され、前記蓋と前記第2側壁との間の境界に第2摩擦攪拌接合部が形成されている。前記第1側壁の第1外側側面および前記第2側壁の第2外側側面の各々は切除加工面であり、前記第1側壁および前記第2側壁の各々は薄肉壁である。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、摩擦攪拌接合を用いて薄肉管を容易に製造することを可能にする技術、および、摩擦攪拌接合を用いて容易に製造可能な薄肉管を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、準備工程で準備されるブロックおよび蓋の一例を模式的に示す概略斜視図である。
図2図2は、ブロックに溝部が形成される様子を模式的に示す概略断面図である。
図3図3は、ブロックに溝部が形成される様子を模式的に示す概略断面図である。
図4図4は、ブロックに蓋が配置された様子を模式的に示す概略断面図である。
図5図5は、接合工程が実行されている様子を模式的に示す概略断面図である。
図6図6は、図5において一点鎖線で囲まれた領域Aを拡大して示す概略断面図である。
図7図7は、接合工程が実行されている様子を模式的に示す概略平面図である。
図8図8は、接合工程の実行により形成された薄肉管製造用の中間体の一例を模式的に示す概略斜視図である。
図9図9は、切除工程が実行されている様子を模式的に示す概略断面図である。
図10図10は、切除工程が実行されている様子を模式的に示す概略断面図である。
図11図11は、実施形態における薄肉管の一例を模式的に示す概略斜視図である。
図12図12は、第1の実施形態における薄肉管の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図13図13は、準備工程で準備されるブロックの一例を模式的に示す概略平面図である。
図14図14は、準備工程で準備されるブロックの他の一例を模式的に示す概略平面図である。
図15図15は、準備工程で準備されるブロックの一例を模式的に示す概略斜視図である。
図16図16は、実施形態の第1変形例における薄肉管を模式的に示す概略斜視図である。
図17図17は、実施形態の第2変形例における薄肉管を模式的に示す概略斜視図である。
図18図18は、実施形態の第3変形例における薄肉管を模式的に示す概略斜視図である。
図19図19は、実施形態の第4変形例における薄肉管を模式的に示す概略斜視図である。
図20図20は、実施形態の第5変形例における薄肉管を模式的に示す概略斜視図である。
図21図21は、第1端壁除去工程および第2端壁除去工程によって除去される部分を模式的示す概略斜視図である。
図22図22は、図5において一点鎖線で囲まれた領域Aに、摩擦攪拌接合用工具が達する前の状態を模式的に示す概略断面図である。
図23図23は、摩擦攪拌接合装置の一例を模式的に示す概略部分断面図である。
図24図24は、第3の実施形態における薄肉管の一例を模式的に示す一部切り欠き斜視図である。
図25図25は、第3の実施形態における薄肉管の一例を模式的に示す一部切り欠き斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、実施形態における薄肉管1の製造方法、薄肉管製造用の中間体9、および、薄肉管1について説明する。なお、以下の実施形態の説明において、同一の機能を有する部位、部材については同一の符号を付し、同一の符号が付された部位、部材についての繰り返しとなる説明は省略する。
【0012】
(方向の定義)
本明細書において、蓋4(あるいは、蓋4が配置されることとなる領域)から溝部36に向かう方向を「第1方向DR1」と定義する。また、現実の上下方向に関わらず、第1方向DR1を「下方」と定義し、第1方向DR1とは反対の方向を「上方」と定義する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1乃至図23を参照して、第1の実施形態における薄肉管の製造方法について説明する。図1は、準備工程で準備されるブロック2および蓋4の一例を模式的に示す概略斜視図である。図2および図3は、ブロック2に溝部36が形成される様子を模式的に示す概略断面図である。図4は、ブロック2に蓋4が配置された様子を模式的に示す概略断面図である。図5は、接合工程が実行されている様子を模式的に示す概略断面図である。図6は、図5において一点鎖線で囲まれた領域Aを拡大して示す概略断面図である。図7は、接合工程が実行されている様子を模式的に示す概略平面図である。図8は、接合工程の実行により形成された薄肉管製造用の中間体9の一例を模式的に示す概略斜視図である。図9および図10は、切除工程が実行されている様子を模式的に示す概略断面図である。図11は、実施形態における薄肉管1の一例を模式的に示す概略斜視図である。図12は、第1の実施形態における薄肉管1の製造方法の一例を示すフローチャートである。図13は、準備工程で準備されるブロック2の一例を模式的に示す概略平面図である。図14は、準備工程で準備されるブロック2の他の一例を模式的に示す概略平面図である。図15は、準備工程で準備されるブロック2の一例を模式的に示す概略斜視図である。図16は、実施形態の第1変形例における薄肉管1を模式的に示す概略斜視図である。図17は、実施形態の第2変形例における薄肉管1を模式的に示す概略斜視図である。図18は、実施形態の第3変形例における薄肉管1を模式的に示す概略斜視図である。図19は、実施形態の第4変形例における薄肉管1を模式的に示す概略斜視図である。図20は、実施形態の第5変形例における薄肉管1を模式的に示す概略斜視図である。図21は、第1端壁除去工程および第2端壁除去工程によって除去される部分を模式的示す概略斜視図である。図22は、図5において一点鎖線で囲まれた領域Aに、摩擦攪拌接合用工具60が達する前の状態を模式的に示す概略断面図である。図23は、摩擦攪拌接合装置6の一例を模式的に示す概略部分断面図である。
【0014】
図1に例示されるように、第1ステップST1において、ブロック2と、蓋4とが、準備される。第1ステップST1は、準備工程である。
【0015】
図1に記載の例では、準備工程(第1ステップST1)で準備されるブロック2は、第1面21に形成された溝部36と、溝部36の第1側面36a(図2を参照。)を規定する第1側壁32aと、を有する。準備工程で準備されるブロック2は、溝部36の第2側面36bを規定する第2側壁32bを有していてもよい。
【0016】
ブロック2の第1面21は、摩擦攪拌接合用工具60のショルダ63(必要であれば、図5を参照。)が当接することとなる面である。図1に記載の例では、第1面21は、ブロック2の上面である。また、図1に記載の例では、第1面21の一部が第1側壁32aの上面21aによって構成され、第1面21の一部が、第2側壁32bの上面21bによって構成されている。
【0017】
準備工程(第1ステップST1)は、切削加工によって、ブロック2に溝部36を形成することを含んでいてもよい。換言すれば、ブロック2に溝部36を形成することにより、溝部36を有するブロック2が準備されてもよい。図2に記載の例では、切削工具5を用いて実行される切削加工により、ブロック2に溝部36が形成される。
【0018】
付加的に、図2に例示されるように、準備工程(第1ステップST1)は、切削加工によって、ブロック2に、蓋4を支持する支持面38を形成することを含んでいてもよい。また、図3に例示されるように、準備工程(第1ステップST1)は、切削加工によって、ブロック2に、蓋4を支持する支持面38である傾斜面38fと、傾斜面38fと第1面21とを接続する接続面39と、を形成することを含んでいてもよい。
【0019】
図3に記載の例では、溝部36の一方側に配置される第1側壁32aは、溝部36の第1側面36aを規定する第1内側側面と、第1面21の一部を構成する上面21aと、第1外側側面22aと、を有する。溝部36の第1側面36aは、例えば、第1面21と垂直である。また、第1外側側面22aは、例えば、第1面21と垂直である。なお、本明細書において、多少の誤差は許容される。例えば、本明細書において、「垂直」には、厳密な垂直と、略垂直とが包含される。
【0020】
第2ステップST2において、蓋4がブロック2に配置される。第2ステップST2は、配置工程である。配置工程では、ブロック2と、溝部36を覆う蓋4とによって内部空間SP(図4を参照。)が形成されるように、蓋4がブロック2に配置される。
【0021】
図5に例示されるように、第3ステップST3において、蓋4の外縁E(必要であれば、図7を参照。)に沿って、蓋4と、ブロック2とが摩擦攪拌により接合される。第3ステップST3は、接合工程である。図6に例示されるように、接合工程(第3ステップST3)は、蓋4の外縁部40の上面40eとブロック2の摩擦攪拌接合対象部分の上面とが面一である状態で実行されることが好ましい。なお、本明細書において、多少の誤差は許容される。例えば、本明細書において、「面一」には、厳密な面一と、略面一とが包含される。
【0022】
図6および図7に示されるように、接合工程は、摩擦攪拌接合用工具60のショルダ63が、蓋4の外縁部40の上面40e、および、ブロック2の第1面21の両方に接触した状態で(図6を参照。)、摩擦攪拌接合用工具60の攪拌ピン61を、蓋4の外縁部40と、ブロック2の第1面21との境界B1に沿って、移動させることを含む(図7における矢印Qを参照。)。なお、図7において、摩擦攪拌接合用工具60のショルダ63および攪拌ピン61の位置が、ハッチングによって示されている。また、図7において、蓋4の外縁部40とブロック2の第1面21との間の境界B1のうち、摩擦攪拌接合された部分が、一点鎖線によって示されている。
【0023】
接合工程(第3ステップST3)の実行により、薄肉管製造用の中間体9が形成される(図8を参照。)。なお、図8において、蓋4の外縁部40とブロック2の第1面21との間の境界B1、且つ、摩擦攪拌接合された部分が、一点鎖線によって示されている。
【0024】
第4ステップST4において、第1側壁32aが薄肉壁となるように、第1側壁32aの一部が切除される。第4ステップST4は、切除工程である。
【0025】
切除工程は、例えば、図9に例示されるように、切削工具5によって、第1側壁32aの一部を切除することを含む。切除工程の実行により、第1側壁32aの壁厚が減少する。また、切除工程の実行により、第1面21の一部が除去される。より具体的には、第1側壁32aの壁厚の減少に伴って、第1面21の面積が減少する。
【0026】
図10に例示されるように、切除工程において、第1側壁32aに加え、第1側壁32a以外の壁(例えば、第2側壁32b)が薄肉化されてもよい。
【0027】
図11には、第1の実施形態における薄肉管の製造方法によって製造された薄肉管1(より具体的には、上述の第1ステップST1乃至第4ステップST4の実行によって製造された薄肉管1)の一例が示されている。
【0028】
第1の実施形態において、蓋4の外縁部40と、ブロック2の第1側壁32aとが摩擦攪拌接合されるときには、第1側壁32aの壁厚が相対的に厚い(図5を参照。)。この場合、第1側壁32aは、摩擦攪拌接合用工具60のショルダ63を好適に支持することができる。よって、摩擦攪拌接合を用いて薄肉管を製造する際に必須と考えられていた裏当て治具(必要であれば、特許文献1を参照。)を省略することが可能である。換言すれば、蓋4とブロック2との間に裏当て治具を配置することなく、蓋4とブロック2とを摩擦攪拌接合することができる。蓋4とブロック2との間に裏当て治具を配置しない場合には、作業者の作業負担が低減される。
【0029】
また、第1の実施形態では、蓋4の外縁部40と、ブロック2の第1側壁32aとが摩擦攪拌によって接合された後、摩擦攪拌接合用工具60のショルダ63を支持するために利用された第1側壁32aが薄肉化される(図9を参照。)。当該薄肉化は、公知の切除装置(例えば、切削工具5、放電加工装置等)を用いて、容易に実行することができる。
【0030】
以上のとおり、第1の実施形態では、摩擦攪拌接合を用いて薄肉管1を容易に製造する方法が提供される。
【0031】
続いて、図1乃至図23を参照して、第1の実施形態(あるいは、後述の第2の実施形態または第3の実施形態)において採用可能な任意付加的な構成について説明する。
【0032】
(第1側壁32aの壁厚)
図9に記載の例では、切除工程(第4ステップST4)は、第1側壁32aの壁厚D1が、摩擦攪拌に用いるショルダ63(換言すれば、摩擦攪拌接合用工具60のショルダ63)の先端半径D2(図5を参照。)より小さくなるように、第1側壁32aの一部を切除することを含む。この場合、接合工程の実行時に摩擦攪拌接合用工具60のショルダ63を支持するために利用された第1側壁32aが、当該ショルダ63の先端半径D2と比較して、十分に薄肉化されることとなる。切除工程(第4ステップST4)は、第1側壁32aの壁厚D1が、1mm以上6mm以下になるように、第1側壁32aの一部を切除することを含んでいてもよい。
【0033】
図5に記載の例では、接合工程(第3ステップST3)の実行時において、第1側壁32aの壁厚D3は、摩擦攪拌に用いるショルダ63の先端半径D2より大きい。この場合、第1側壁32aと蓋4とによって、摩擦攪拌接合用工具60のショルダ63の全体が好適に支持される。よって、摩擦攪拌による接合時に、第1側壁32aがショルダ63から受ける圧力が好適な圧力範囲に維持される。こうして、摩擦攪拌によって流動化された材料が、溝部36側、あるいは、第1外側側面22a側に流出することが防止される。接合工程(第3ステップST3)の実行時において、第1側壁32aの壁厚D3の最小値は、例えば、6mm(あるいは、8mm)より大きい。
【0034】
図13に例示されるように、接合工程(第3ステップST3)の実行前の状態において、第1側壁32aの壁厚D1は、第1側壁32aの第1外側側面22aの延在方向(あるいは、溝部36の延在方向)に沿って変化してもよい。図13に記載の例では、溝部36の第1端部361から溝部36の第2端部362に向かうにつれて、第1側壁32aの壁厚D1が減少する。
【0035】
(溝部36の形状)
図13に記載の例では、ブロック2の溝部36は、曲線に沿って延在する湾曲溝部36Aを含む。図13に記載の例では、湾曲溝部36Aは、曲線状の溝部中心線C1に沿って延在する。ブロック2の溝部36は、湾曲溝部36Aと、直線に沿って延在する直線溝部36Bと、を含んでいてもよい。直線溝部36Bは、直線状の溝部中心線C2に沿って延在する。
【0036】
図13に記載の例では、第1方向DR1に沿う方向にみて、湾曲溝部36Aは、曲線状の外縁部36u(より具体的には、円弧状の外縁部36u)と、曲線状の内縁部36n(より具体的には、円弧状の内縁部36n)と、を含む。代替的に、図14に例示されるように、第1方向DR1に沿う方向にみて、湾曲溝部36Aは、曲線状の外縁部36uと、屈曲内縁部36n’と、を含んでいてもよい。
【0037】
なお、本明細書において、「屈曲」は、湾曲の一形態(換言すれば、湾曲のうちの曲率半径が実質的にゼロである形態)とみなされる。
【0038】
(蓋4の外縁部40の形状)
図7に記載の例では、蓋4の外縁部40は、第1側壁32aに摩擦攪拌接合される第1湾曲縁部40aと、第2側壁32bに摩擦攪拌接合される第2湾曲縁部40bと、を含む。第2湾曲縁部40bの曲率半径は、第1湾曲縁部40aの曲率半径よりも大きい。第1湾曲縁部40aの曲率半径は、ゼロより大きくてもよく、ゼロであってもよい。
【0039】
(薄肉管1の管内空間の形状)
薄肉管1の管内空間(換言すれば、内部空間SP)の形状は、ブロック2の溝部36を覆う蓋4とブロック2とを摩擦攪拌接合可能な限りにおいてどのような形状であってもよい。図11に例示されるように、薄肉管1の管内空間の断面形状(より具体的には、管内空間の長手方向中心線に垂直な面における断面形状)は、矩形形状であってもよい。代替的に、薄肉管1の管内空間の断面形状は、三角形形状であってもよいし、図16に例示されるように、H字形状であってもよい。
【0040】
薄肉管1の管内空間の中心線(なお、中心線は、曲線であってもよい。)に垂直な面における当該管内空間の断面形状および断面積は、当該中心線に沿って一定であることが好ましいが、当該断面形状および断面積のうちの少なくとも一方は、当該中心線に沿って変化してもよい。
【0041】
(薄肉管1の形状)
図11に記載の例では、第1の実施形態における薄肉管の製造方法によって製造される薄肉管1は、湾曲管部11を有する湾曲管1Aである。当該湾曲管1Aは、湾曲管部11に加えて、直線管部12を有していてもよい。図11に例示されるように、第1の実施形態における薄肉管の製造方法によって製造される薄肉管1は、第1の直線管部12aと、第2の直線管部12bと、第1の直線管部12aと第2の直線管部12bとの間に配置される湾曲管部11と、を有していてもよい。また、第1の直線管部12aと第2の直線管部12bとの間のなす角度は、90度より小さくてもよいし、90度であってもよいし、90度より大きくてもよい。
【0042】
湾曲管1Aにおける湾曲管部11の配置に特に制限はない。図17に例示されるように、湾曲管1Aは、U字形状を有するU字管であってもよいし、図18に例示されるように、湾曲管1Aは、2つ以上の湾曲管部11を有する管(例えば、S字管)であってもよい。
【0043】
代替的に、第1の実施形態における薄肉管の製造方法によって製造される薄肉管1は、湾曲管部を有さない直線状の管であってもよい。更に代替的に、図19に例示されるように、第1の実施形態における薄肉管の製造方法によって製造される薄肉管1は、管内空間(換言すれば、内部空間SP)の断面積が、薄肉管1の第1端部1aから第2端部1bに向かうにつれて、徐々に拡大または縮小するテーパ管であってもよい。
【0044】
薄肉管1の壁厚は、薄肉管1の第1端部1aから第2端部1bに向かうにつれて変化してもよいし、薄肉管1の壁厚は一定であってもよい。
【0045】
薄肉管1の外形形状は、切除工程(第4ステップST4)によって、自由に設定することができる。図20に例示されるように、第1の実施形態における薄肉管1の製造方法は、接合工程(第3ステップST3)の実行後、ブロック2の複数の壁30の一部を切除することにより、薄肉部P1である薄肉壁と、他の部材に固定される被固定部P2とを一体的に形成することを含んでいてもよい。換言すれば、ブロック2の複数の壁30のうち切除加工が施される領域によって薄肉部P1が構成され、ブロック2の複数の壁30のうち切除加工が施されない領域、あるいは、切除加工による切除量が小さな領域によって被固定部P2が構成されてもよい。
【0046】
図20に記載の例では、ブロック2の複数の壁30の一部が切除されることにより、薄肉壁である第1側壁32aと、薄肉壁である第2側壁32bと、他の薄肉管あるいは他の構造物に固定される被固定部P2とが、一体的に形成される。
【0047】
図20に記載の例では、被固定部P2は、薄肉部P1よりも外方に突出する突出部である。また、被固定部P2は、他の部材(例えば、他の薄肉管、あるいは、他の構造物)に固定されるフランジ部37を含む。代替的に、あるいは、付加的に、被固定部P2は、フランジ部37以外の被固定部を含んでいてもよい。
【0048】
上述のとおり、第1の実施形態における薄肉管1の製造方法によって製造される薄肉管1の形状の自由度は大きい。
【0049】
(ブロック2の第2側壁32b)
図3に記載の例では、準備工程(第1ステップST1)で準備されるブロック2は、溝部36の一方側に配置される第1側壁32aと、溝部36の他方側に配置される第2側壁32bと、を有する。第2側壁32bは、溝部36に対して、第1側壁32aとは反対側に配置されている。第2側壁32bは、溝部36の第2側面36bを規定する第2内側側面と、第1面21の一部を構成する上面21bと、第2外側側面22bと、を有する。溝部36の第2側面36bは、例えば、第1面21と垂直である。また、第2外側側面22bは、例えば、第1面21と垂直である。
【0050】
図5に記載の例では、接合工程(第3ステップST3)は、(1)蓋4の外縁部40と、第1側壁32aとを摩擦攪拌により接合すること、および、(2)蓋4の外縁部40と、第2側壁32bとを摩擦攪拌により接合すること、を含む。蓋4の外縁部40と、第2側壁32bとを摩擦攪拌接合することは、破線で示される位置に移動した摩擦攪拌接合用工具60によって実行される。
【0051】
図7に例示されるように、蓋4の外縁部40と、第1側壁32aとが摩擦攪拌接合されることにより、蓋4と第1側壁32aとの間の境界に第1摩擦攪拌接合部81aが形成される。また、蓋4の外縁部40と、第2側壁32bとが摩擦攪拌接合されることにより、蓋4と第2側壁32bとの間の境界に第2摩擦攪拌接合部81bが形成される。
【0052】
図10に記載の例では、切除工程(第4ステップST4)において、第2側壁32bが薄肉壁となるように、第2側壁32bの一部が切除される。切除工程は、例えば、切削工具5によって、第2側壁32bの一部を切除することを含む。切除工程の実行により、第2側壁32bの壁厚が減少する。また、切除工程の実行により、第1面21の一部が除去される。より具体的には、第2側壁32bの壁厚の減少に伴って、第1面21の面積が減少する。
【0053】
(第2側壁32bの壁厚)
図10に記載の例では、切除工程(第4ステップST4)は、第2側壁32bの壁厚D4が、摩擦攪拌に用いるショルダ63(換言すれば、摩擦攪拌接合用工具60のショルダ63)の先端半径D2(図5を参照。)より小さくなるように、第2側壁32bの一部を切除することを含む。切除工程(第4ステップST4)は、第2側壁32bの壁厚D4が、1mm以上6mm以下になるように、第2側壁32bの一部を切除することを含んでいてもよい。
【0054】
図5に記載の例では、接合工程(第3ステップST3)の実行時において、第2側壁32bの壁厚D5は、摩擦攪拌に用いるショルダ63の先端半径D2より大きい。この場合、第2側壁32bと蓋4とによって、摩擦攪拌接合用工具60のショルダ63の全体が好適に支持される。
【0055】
図13に例示されるように、接合工程(第3ステップST3)の実行前の状態において、第2側壁32bの壁厚D4は、第2側壁32bの第2外側側面22bの延在方向(あるいは、溝部36の延在方向)に沿って変化してもよい。図13に記載の例では、溝部36の第1端部361から溝部36の第2端部362に向かうにつれて、第2側壁32bの壁厚D4が増加する。
【0056】
(ブロック2の第1外側端面23c、および、第2外側端面23d)
図13に例示されるように、準備工程(第1ステップST1)で準備されるブロック2は、第1外側端面23c、および/または、第2外側端面23dを有していてもよい。第1外側端面23cは、第1面21に垂直であってもよい。第1外側端面23cは、第1面21、第1外側側面22a、および、第2外側側面22bの各々に接する。第2外側端面23dは、第1面21に垂直であってもよい。第2外側端面23dは、第1面21、第1外側側面22a、および、第2外側側面22bの各々に接する。
【0057】
(ブロック2の第1端壁33c、第2端壁33d、および、底壁34)
図13に記載の例では、準備工程で準備されるブロック2は、溝部36の一方側の端面である第1端面36cを規定する第1端壁33cを有する。図13に記載の例では、第1端壁33cは、溝部36の第1端面36cを規定する第1内側端面と、第1面21の一部を構成する上面21cと、ブロック2の第1外側端面23cの一部と、を有する。
【0058】
図13に記載の例では、準備工程で準備されるブロック2は、溝部36の他方側の端面である第2端面36dを規定する第2端壁33dを有する。なお、溝部36の第2端面36dを規定する第2端壁33dは、図13においてドットによるハッチングが付与された部分に対応する。
【0059】
第2端壁33dは、溝部36に対して、第1端壁33cとは反対側に配置される。図13に記載の例では、第2端壁33dは、溝部36の第2端面36dを規定する第2内側端面と、第1面21の一部を構成する上面21dと、第1外側側面22aの一部と、を有する。第2端壁33dは、ブロック2の第2外側端面23dの一部を有していてもよい。
【0060】
図15に記載の例では、底壁34の内面は、溝部36の底面36gを規定する。図15に記載の例では、底壁34と、第1側壁32aと、第2側壁32bと、第1端壁33cと、第2端壁33dとによって、溝部36が規定されている。
【0061】
図7に記載の例では、接合工程(第3ステップST3)は、蓋4の外縁部40と、第1端壁33cとを摩擦攪拌により接合することを含む。また、接合工程(第3ステップST3)は、蓋4の外縁部40と、第2端壁33dとを摩擦攪拌により接合すること含む。
【0062】
(第1端壁除去工程)
接合工程(第3ステップST3)の実行後に、第1端壁33cが除去されてもよい。換言すれば、第1の実施形態における薄肉管1の製造方法は、第5ステップST5として、ブロック2の溝部36の第1端面36cを規定する第1端壁33c(より具体的には、第1端壁33cの全体)を除去する工程を含んでいてもよい。第5ステップST5は、第1端壁除去工程である。第1端壁除去工程(第5ステップST5)は、上述の切除工程(第4ステップST4)の前に実行されてもよいし、上述の切除工程よりも後に実行されてもよい。
【0063】
(第2端壁除去工程)
接合工程(第3ステップST3)の実行後に、第2端壁33dが除去されてもよい。換言すれば、第1の実施形態における薄肉管1の製造方法は、第6ステップST6として、ブロック2の溝部36の第2端面36dを規定する第2端壁33d(より具体的には、第2端壁33dの全体)を除去する工程を含んでいてもよい。第6ステップST6は、第2端壁除去工程である。第2端壁除去工程(第6ステップST6)は、上述の切除工程(第4ステップST4)の前に実行されてもよいし、上述の切除工程よりも後に実行されてもよい。
【0064】
図21に記載の例では、第1端壁除去工程において、薄肉管製造用の中間体9から、第1端壁33cを含む部分K1(破線によって囲まれた部分を参照。)が除去される。当該除去は、公知の任意の除去装置(例えば、切断装置、切削装置等)を用いて実行される。また、第2端壁除去工程において、薄肉管製造用の中間体9から、第2端壁33dを含む部分K2(破線によって囲まれた部分を参照。)が除去される。当該除去は、公知の任意の除去装置(例えば、切断装置、切削装置等)を用いて実行される。
【0065】
第1端壁33cおよび第2端壁33dが除去されることにより、図11に例示されるように、薄肉管1の第1端部1aに、内部空間SPに連通する第1開口OP1が形成され、薄肉管1の第2端部1bに、内部空間SPに連通する第2開口OP2が形成される。
【0066】
なお、図7に例示されるように、ブロック2が、第1側壁32aおよび第2側壁32bに加えて、第1端壁33cおよび第2端壁33dを有する場合、蓋4の外縁部40の全体を、ブロック2の第1面21に摩擦攪拌接合することができる。
【0067】
これに対し、ブロック2が第1端壁33cおよび/または第2端壁33dを有さない場合、蓋4の外縁部40の一部をブロック2に摩擦攪拌接合することができない。また、接合工程(第3ステップST3)は、(1)蓋4の外縁部40とブロック2の第1側壁32aとを摩擦攪拌接合すること、(2)摩擦攪拌接合用工具60をブロック2から一旦離間させること、および、(3)蓋4の外縁部40とブロック2の第2側壁32bとを摩擦攪拌接合すること、を含むこととなる。このように、2つの摩擦攪拌接合のインターバルにおいて、摩擦攪拌接合用工具60をブロック2から一旦離間させる必要があるため、作業効率が低下する。
【0068】
ただし、第1の実施形態において、ブロック2が、第1端壁33cおよび第2端壁33dを有することは必須ではない。ブロック2が、第1端壁33cおよび第2端壁33dを有さない場合には、上述の第1端壁除去工程(第5ステップST5)および第2端壁除去工程(第6ステップST6)は省略される。
【0069】
(支持面38)
図2および図3に記載の例では、準備工程(第1ステップST1)で準備されるブロック2は、蓋4の外縁部40を支持する支持面38を有する。支持面38は、第1方向DR1に沿う方向に見て、溝部36を囲む環状の支持面であることが好ましい。図2に例示されるように、支持面38は、第1面21と平行であってもよい。代替的に、図3に例示されるように、支持面38は、第1面21と非平行であってもよい。
【0070】
図3に記載の例では、支持面38は、傾斜面38f(より具体的には、溝部36に向かうにつれて、高さが低くなる傾斜面)を含む。また、ブロック2は、第1面21および支持面38に加え、第1面21と支持面38とを接続する接続面39を有する。接続面39は、例えば、第1面21に垂直である。
【0071】
(蓋4の外縁部40)
図4に記載の例では、蓋4の外縁部40は、ブロック2によって支持される傾斜面41を有する。当該傾斜面41は、蓋4の中心部に向かうにつれて、高さが低くなる傾斜面である。また、蓋4の外縁部40は、傾斜面41の上端から上方に延在する外側面42を有する。外側面42の上端は、蓋4の上面4eに接している。図4に記載の例では、当該外側面42は、ブロック2の第1面21に垂直である。
【0072】
図22に記載の例では、蓋4の外縁部40の傾斜面41は、ブロック2の傾斜面38fによって支持されている。また、蓋4の外側面42は、ブロック2の接続面39に対向配置されている。
【0073】
図22に記載の例では、接合工程(第3ステップST3)は、摩擦攪拌接合用工具60の攪拌ピン61が蓋4の外側面42を横切り、かつ、攪拌ピン61が蓋4の傾斜面41の下端部分41gに達していない状態で、攪拌ピン61を、第1面21に垂直な方向に移動させることにより実行される。
【0074】
攪拌ピン61が傾斜面41の下端部分41gに達していないことにより、摩擦攪拌により流動化された材料が、溝部36に流出することが防止される。また、蓋4の外縁部40が傾斜面41を有することにより、ブロック2に対する攪拌ピン61の挿入深さL1を小さくしつつ、蓋4とブロック2との境界Bのうち攪拌ピン61が達していない部分の長さL2を短くすることができる。挿入深さL1が小さいことにより、攪拌ピン61の挿入に伴う、ブロック2および蓋4の変形が抑制される。また、長さL2が短いことにより、蓋4とブロック2との境界Bのうち、摩擦攪拌によって接合されていない部分を小さくするか、あるいは、摩擦攪拌によって接合されていない部分を実質的に無くすことができる。
【0075】
また、摩擦攪拌により流動化された材料が溝部36に流出することが防止され、ブロック2および蓋4の変形が抑制され、蓋4とブロック2との境界Bのうち摩擦攪拌によって接合されていない部分が小さいか実質的に無いことにより、薄肉管1の内面の状態が良好となる。よって、例えば、薄肉管1が薄肉導波管である場合には、薄肉導波管の導波特性が向上する。
【0076】
(薄肉導波管)
第1の実施形態における薄肉管の製造方法によって製造される薄肉管1は、例えば、薄肉導波管である。第1の実施形態における薄肉管の製造方法によって製造される薄肉管1が薄肉導波管である場合、溝部36および蓋4の各々は、電磁波を反射する内面を有する。当該薄肉導波管によって伝送される電磁波の波長は、例えば、1mm以上100cm以下である。
【0077】
薄肉導波管は、気象レーダ用の導波管であってもよいし、その他の通信用導波管であってもよい。導波管は、電磁波を、低エネルギ損失で、高アイソレーションで伝送することができるため、第1の実施形態における薄肉管の製造方法によって製造される薄肉導波管を、大電力を必要とするレーダシステム用の伝送路、低損失特性あるいは位相安定性が求められるアンテナ周辺の伝送路、あるいは、実験設備における伝送路として使用することができる。
【0078】
薄肉導波管は、例えば、断面形状が矩形形状である矩形導波管(換言すれば、方形導波管)である。この場合、薄肉導波管の電磁波伝送路を規定する4面のうちの3面(換言すれば、溝部36の内面)は、ブロック2を加工(例えば、切削加工)することによって形成することができ、薄肉導波管の電磁波伝送路を規定する4面のうちの1面(換言すれば、蓋の下面)は、ブロック2と蓋4とを摩擦攪拌接合することによって形成することができる。代替的に、図16に例示されるように、薄肉導波管は、内部空間の断面形状がH字形状である導波管であってもよい。
【0079】
(薄肉管1の材質)
薄肉管1の材質は、摩擦攪拌接合が可能な材質である限り特に制限はない。薄肉管1(例えば、薄肉導波管)は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金等の金属によって構成されていてもよく、その他の材料によって構成されていてもよい。ブロック2の材質と、蓋4の材質とは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0080】
(摩擦攪拌接合装置6)
図23を参照して、接合工程(第4ステップST4)において使用される摩擦攪拌接合装置6の一例について説明する。
【0081】
摩擦攪拌接合装置6は、摩擦攪拌接合用工具60、ワーク支持部材71、摩擦攪拌接合用工具60を支持する工具支持部材73、工具支持部材73をワーク支持部材71に対して相対移動させる第1駆動装置75、攪拌ピン61を回転駆動する第2駆動装置77、および、制御装置79を具備する。
【0082】
摩擦攪拌接合用工具60は、攪拌ピン61と、ショルダ63とを備える。ショルダ63は、ブロック2と蓋4とを同時に押圧可能なショルダ面63sを有する。ショルダ面63sは、ショルダ63の第1方向DR1側の端面である。ショルダ面63sは、攪拌ピン61の回転によって軟化された材料(ブロック2を構成する材料、および、蓋4を構成する材料)を平坦にする。図23に記載の例では、ショルダ面63sは、第1方向DR1に垂直な面である。
【0083】
図23に記載の例では、攪拌ピン61は、ショルダ63に対して、第1軸AXまわりに相対回転可能である。図23に記載の例では、第1軸AXは、ブロック2の第1面21に対して垂直である。また、第1軸AXは、ワーク支持部材71の上面に対して垂直である。
【0084】
図23に記載の例では、攪拌ピン61は、ワーク(より具体的には、ブロック2および蓋4)に対して相対回転するが、ショルダ面63sはワークに対して相対回転しない。代替的に、ショルダ面63sは、攪拌ピン61とともに、ワークに対して、第1軸AXまわりに相対回転してもよい。
【0085】
なお、ショルダ面63sがワークに対して相対回転しない場合、ショルダ面63sがワークに対して相対回転する場合と比較して、摩擦熱が発生する領域を小さくすることができる。その結果、ワークの変形が抑制され、バリの発生が抑制され、良好な接合面を形成することができる。また、ショルダ面63sがワークに対して相対回転しない場合、ワークと回転体(より具体的には、攪拌ピン61)との間の接触面積が小さくなる。このため、摩擦攪拌接合を実行するに際して、回転体(より具体的には、攪拌ピン61)をワークに押し付ける力を小さくすることができる。
【0086】
また、図23に記載の例では、ショルダ63は、回転駆動されないフレーム73aに取り付けられている。この場合、ワークからショルダ63(より具体的には、ショルダ面63s)が受ける力は、フレーム73aによって支持される。よって、工具支持部材73とシャフト73bとの間に介在するベアリングには、大きな軸方向荷重が作用しない。このため、図23に記載の摩擦攪拌接合装置6は、シャフト73bを高速回転させることが可能である。
【0087】
図23に記載の例では、ショルダ面63sが、ブロック2と蓋4との摩擦攪拌接合対象領域の上面に対して、平行である。代替的に、ショルダ面63sを当該摩擦攪拌接合対象領域の上面に対して傾斜させた状態で、ブロック2と蓋4との摩擦攪拌接合が行われてもよい。また、図23に記載の例では、摩擦攪拌接合時に、攪拌ピン61の回転軸である第1軸AXは、ブロック2と蓋4との摩擦攪拌接合対象領域の上面に対して垂直である。代替的に、摩擦攪拌接合時に、当該第1軸AXは、当該摩擦攪拌接合対象領域の上面に対して傾斜していてもよい。更に、図23に記載の例では、ショルダ面63sは、平坦面であるが、代替的に、ショルダ面63sは、凸曲面あるいは凹曲面を有していてもよい。
【0088】
ワーク支持部材71は、ワーク(より具体的には、ブロック2)を支持する。ワーク支持部材71は、例えば、ワークが固定される支持テーブルである。
【0089】
図23に記載の例では、摩擦攪拌接合装置6は、ベース72と、ワーク支持部材71をベース72に対して相対移動させる駆動装置75a(例えば、支持テーブル駆動装置)を備える。当該駆動装置75aは、工具支持部材73をワーク支持部材71に対して相対移動させる第1駆動装置75のうちの1つである。
【0090】
工具支持部材73は、摩擦攪拌接合用工具60を支持する。図23に記載の例では、工具支持部材73は、ショルダ63が固定されるフレーム73aと、攪拌ピン61を保持するピンホルダ62に回転力を伝達するシャフト73bとを備える。工具支持部材73は、主軸台と呼ばれることもある。また、シャフト73bは、回転主軸と呼ばれることもある。
【0091】
図23に記載の例では、摩擦攪拌接合装置6は、第2ベース74と、工具支持部材73を第2ベース74に対して相対移動させる駆動装置75bを備える。当該駆動装置75bは、工具支持部材73をワーク支持部材71に対して相対移動させる第1駆動装置75のうちの1つである。
【0092】
第1駆動装置75は、工具支持部材73をワーク支持部材71に対して相対移動させる装置である。図23に記載の例では、第1駆動装置75は、ワーク支持部材71をベース72に対して相対移動させる駆動装置75a、および、工具支持部材73を第2ベース74に対して相対移動させる駆動装置75bを含む。代替的に、第1駆動装置75は、駆動装置75aおよび駆動装置75bのうちの一方のみを備えていてもよい。
【0093】
図23に記載の例では、駆動装置75aは、ワーク支持部材71を、水平面に沿う方向(換言すれば、XY平面に沿う方向)に移動させる装置である。
【0094】
図23に記載の例では、駆動装置75bは、工具支持部材73を、3次元的に移動させる装置である。換言すれば、駆動装置75bは、工具支持部材73をX軸に沿う方向に移動させることができ、工具支持部材73をY軸に沿う方向に移動させることができ、工具支持部材73をZ軸に沿う方向に移動させることができる。図23に記載の例では、Z軸は、鉛直方向に沿う方向であり、第1方向DR1に平行な方向である。
【0095】
第2駆動装置77は、攪拌ピン61を回転駆動する。より具体的には、第2駆動装置77は、シャフト73bと動力伝達可能に接続されており、第2駆動装置77は、シャフト73bおよびピンホルダ62を介して、攪拌ピン61を回転駆動する。
【0096】
制御装置79は、第1駆動装置75および第2駆動装置77を制御する。図23に記載の例では、制御装置79は、第1駆動装置75を制御する第1駆動装置制御手段79aと、第2駆動装置77を制御する第2駆動装置制御手段79bとを備える。
【0097】
第1駆動装置75が制御装置79(より具体的には、第1駆動装置制御手段79a)から制御信号を受信すると、第1駆動装置75は、ワーク支持部材71および/または工具支持部材73を移動させる。換言すれば、第1駆動装置75が制御装置79から制御信号を受信すると、第1駆動装置75は、工具支持部材73をワーク支持部材71に対して相対移動させる。
【0098】
第2駆動装置77が制御装置79(より具体的には、第2駆動装置制御手段79b)から制御信号を受信すると、第2駆動装置77は、攪拌ピン61を第1軸AXまわりに回転させる。より具体的には、第2駆動装置77が制御装置79から制御信号を受信すると、第2駆動装置77は、シャフト73bを回転させる。シャフト73bの回転は、ピンホルダ62を介して攪拌ピン61に伝達される。こうして、攪拌ピン61が第1軸AXまわりを回転する。
【0099】
図23に記載の例では、制御装置79は、プログラムおよびデータを記憶する記憶装置791(換言すれば、メモリ)を備える。記憶装置791に記憶されたプログラムを制御装置79が実行することにより、当該制御装置79は、上述の第1駆動装置制御手段79aおよび/または第2駆動装置制御手段79bとして機能する。
【0100】
図23に記載の例では、摩擦攪拌接合装置6は、制御装置79に制御パラメータ等を入力する入力装置78を備える。
【0101】
上述の接合工程(第3ステップST3)において、攪拌ピン61を、ブロック2と蓋4の外縁部40との間の境界部分に挿入する挿入工程と、ブロック2の第1面21と蓋4の外縁部40との両方に接するショルダ63を、蓋4の外縁Eに沿って移動させる移動工程とが実行される。
【0102】
上述の挿入工程では、第1駆動装置75および第2駆動装置77が、制御装置79によって制御されることにより、第2駆動装置77が、攪拌ピン61を第1軸AXまわりに回転させ、且つ、攪拌ピン61がブロック2と蓋4との間の境界部分に挿入されるように、第1駆動装置75が摩擦攪拌接合用工具60を移動させる。
【0103】
また、上述の移動工程では、第1駆動装置75および第2駆動装置77が、制御装置79によって制御されることにより、第2駆動装置77が、攪拌ピン61を第1軸AXまわりに回転させ、且つ、ブロック2の第1面21と蓋4の外縁部40との両方に接するショルダ63が、蓋4の外縁Eに沿って移動するように、第1駆動装置75が摩擦攪拌接合用工具60を移動させる。
【0104】
摩擦攪拌接合装置6は、摩擦攪拌接合用工具60を保持可能、かつ、切削工具5(必要であれば、図9図10を参照。)を保持可能な工作機械であってもよい。この場合、1つの工作機械を用いて、上述の第3ステップST3(換言すれば、蓋4の外縁Eに沿って、蓋4とブロック2とを摩擦攪拌により接合する工程)と、上述の第4ステップST4(換言すれば、第1側壁32aが薄肉壁となるように、第1側壁32aの一部を切除する工程)とを、順に実行することができる。なお、当該工作機械において、工具支持部材73が、摩擦攪拌接合用工具60と切削工具5とを選択的に支持可能なように構成されていてもよく、当該工作機械が、摩擦攪拌接合用工具60を支持する工具支持部材73に加えて、切削工具5を支持する第2の工具支持部材を有していてもよい。
【0105】
(第2の実施形態)
図1乃至図23を参照して、第2の実施形態における薄肉管製造用の中間体9について説明する。
【0106】
第2の実施形態では、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。他方、第2の実施形態では、第1の実施形態で説明済みの事項についての繰り返しとなる説明は省略する。したがって、第2の実施形態において、明示的に説明をしなかったとしても、第1の実施形態において説明済みの事項を第2の実施形態に適用できることは言うまでもない。逆に、第2の実施形態で説明される全ての事項は、第1の実施形態に適用可能である。
【0107】
図8に例示されるように、第2の実施形態における薄肉管製造用の中間体9は、ブロック2と、蓋4とを備える。
【0108】
図15に例示されるように、ブロック2は、複数の壁30を有し、複数の壁30は、第1側壁32aと、第2側壁32bと、第1端壁33cと、第2端壁33dと、底壁34とを含む。また、ブロック2は、第1側壁32a、第2側壁32b、第1端壁33c、第2端壁33dおよび底壁34を含む複数の壁30によって規定される溝部36を有する。
【0109】
第1側壁32a、第2側壁32b、第1端壁33c、第2端壁33d、底壁34、および、溝部36については、第1の実施形態において説明済みであるため、第1側壁32a、第2側壁32b、第1端壁33c、第2端壁33d、底壁34、および、溝部36についての繰り返しとなる説明は省略する。
【0110】
蓋4は、溝部36を覆う。蓋4については、第1の実施形態において説明済みであるため、蓋4についての繰り返しとなる説明は省略する。
【0111】
図8に記載の例において、蓋4の外縁部40と、第1側壁32a、第2側壁32b、第1端壁33cおよび第2端壁33dの各々とは、摩擦攪拌により接合されている。より具体的には、蓋4の外縁部40と第1側壁32aとの間の境界に第1摩擦攪拌接合部81aが形成され、蓋4の外縁部40と第2側壁32bとの間の境界に第2摩擦攪拌接合部81bが形成されている。また、蓋4の外縁部40と第1端壁33cとの間の境界に第3摩擦攪拌接合部81cが形成され、蓋4の外縁部40と第2端壁33dとの間の境界に第4摩擦攪拌接合部81dが形成されている。
【0112】
図8に記載の例では、第1摩擦攪拌接合部81aと、第3摩擦攪拌接合部81cと、第2摩擦攪拌接合部81bと、第4摩擦攪拌接合部81dとによって、環状の摩擦攪拌接合部(換言すれば、閉じた摩擦攪拌接合部)が形成されている。
【0113】
第2の実施形態における薄肉管製造用の中間体9において、ブロック2と蓋4とによって規定される内部空間(換言すれば、溝部36と蓋4とによって規定される内部空間)は、密閉空間であってもよい。
【0114】
第2の実施形態における薄肉管製造用の中間体9は、溝部36を有するブロック2と蓋4とを摩擦攪拌接合することにより、容易に製造することができる。
【0115】
また、第2の実施形態における薄肉管製造用の中間体9において、第1側壁32aの一部および第2側壁32bの一部が切除され、第1端壁33cおよび第2端壁33dが除去されることにより、薄肉管1が製造される。換言すれば、第2の実施形態における薄肉管製造用の中間体9から薄肉管1(図11等を参照。)を容易に製造することができる。
【0116】
(第3の実施形態)
図1乃至図25を参照して、第3の実施形態における薄肉管1について説明する。図24および図25は、第3の実施形態における薄肉管1の一例を模式的に示す一部切り欠き斜視図である。
【0117】
第3の実施形態では、第1の実施形態および第2の実施形態と異なる点を中心に説明する。他方、第3の実施形態では、第1の実施形態または第2の実施形態で説明済みの事項についての繰り返しとなる説明は省略する。したがって、第3の実施形態において、明示的に説明をしなかったとしても、第1の実施形態または第2の実施形態において説明済みの事項を第3の実施形態に適用できることは言うまでもない。逆に、第3の実施形態で説明される全ての事項は、第1の実施形態または第2の実施形態に適用可能である。
【0118】
図11に例示されるように、第3の実施形態における薄肉管1は、本体部3と、蓋4と、を備える。本体部3と蓋4とは、摩擦攪拌によって接合されている。
【0119】
図24に例示されるように、本体部3は、複数の壁30を有し、複数の壁30は、第1側壁32aと、第1側壁32aに対向配置される第2側壁32bと、底壁34とを含む。また、本体部3は、第1側壁32a、第2側壁32bおよび底壁34を含む複数の壁30によって規定される溝部36を有する。
【0120】
第1側壁32a、第2側壁32b、底壁34、および、溝部36については、第1の実施形態において説明済みであるため、第1側壁32a、第2側壁32b、底壁34、および、溝部36についての繰り返しとなる説明は省略する。
【0121】
図24に記載の例では、蓋4と第1側壁32aとの間の境界に第1摩擦攪拌接合部81aが形成され、蓋4と第2側壁32bとの間の境界に第2摩擦攪拌接合部81bが形成されている。第1摩擦攪拌接合部81aは、蓋4の外縁部40と、第1側壁32aの上縁部324aとを摩擦攪拌接合することにより形成され、第2摩擦攪拌接合部81bは、蓋4の外縁部40と、第2側壁32bの上縁部324bとを摩擦攪拌接合することにより形成される(必要であれば、第1の実施形態における接合工程を参照。)。
【0122】
図24に記載の例において、第1側壁32aの第1外側側面22aおよび第2側壁32bの第2外側側面22bの各々は切除加工が施された切除加工面であり、第1側壁32aおよび第2側壁32bの各々は、薄肉壁である。
【0123】
第1側壁32aを薄肉壁にすることは、蓋4と第1側壁32aとが摩擦攪拌接合された後、第1側壁32aの一部を切除することにより実行され、第2側壁32bを薄肉壁にすることは、蓋4と第2側壁32bとが摩擦攪拌接合された後、第2側壁32bの一部を切除することにより実行される(必要であれば、第1の実施形態における切除工程を参照。)。
【0124】
第3の実施形態における薄肉管1は、溝部36を有するブロック2と蓋4とを摩擦攪拌接合し、第1側壁32aおよび第2側壁32bに切除加工を施すことにより、容易に製造することができる。
【0125】
続いて、図1乃至図25を参照して、第3の実施形態において採用可能な任意付加的な構成について説明する。
【0126】
(薄肉導波管)
第3の実施形態における薄肉管1は、薄肉導波管であってもよい。薄肉導波管については、第1の実施形態において説明済みであるため、薄肉導波管についての繰り返しとなる説明は省略する。
【0127】
(湾曲溝部36A)
図24に記載の例では、溝部36(より具体的には、第1側壁32a、第2側壁32bおよび底壁34を含む複数の壁30によって規定される溝部36)は、湾曲溝部36Aを含む。また、薄肉管1は、湾曲内部空間SP1を規定する湾曲管部11を含み、当該湾曲内部空間SP1は、湾曲溝部36Aと、湾曲溝部36Aを覆う蓋4とによって形成されている。
【0128】
付加的に、溝部36(より具体的には、第1側壁32a、第2側壁32bおよび底壁34を含む複数の壁30によって規定される溝部36)は、直線溝部36Bを含んでいてもよい。また、薄肉管1は、直線状の内部空間SP2を規定する直線管部12を含み、当該直線状の内部空間SP2は、直線溝部36Bと直線溝部36Bを覆う蓋4とによって形成されていてもよい。
【0129】
湾曲溝部36A、および/または、直線溝部36Bは、例えば、ブロック2を切削することにより容易に形成することができる(必要であれば、第1の実施形態における準備工程を参照。)。
【0130】
図24に記載の例では、薄肉管1は、湾曲管部11を有し、湾曲管部11の一部を構成する第1側壁32aと蓋4とが摩擦攪拌接合され、湾曲管部11の一部を構成する第2側壁32bと蓋4とが摩擦攪拌接合されている。こうして、摩擦攪拌接合によって、湾曲した電磁波伝送路、あるいは、湾曲した流路を容易に形成することができる。従来、摩擦攪拌接合によって形成される薄肉管において、湾曲した電磁波伝送路(または、湾曲した流路)を有するものは見当たらないが、摩擦攪拌によって湾曲した電磁波伝送路(または、湾曲した流路)が形成された後で、第1側壁32aおよび第2側壁32bが薄肉化されることにより、湾曲した電磁波伝送路(または、湾曲した流路)の形成、摩擦攪拌接合部の形成、および、薄肉化の全てを実現することができる。
【0131】
図25に記載の例では、湾曲溝部36Aの一方側に第1側壁32aが配置され、湾曲溝部36Aの他方側に第2側壁32bが配置されている。
【0132】
第1側壁32aは、湾曲溝部36Aの一部を規定する第1湾曲内面321aを有し、第2側壁32bは、湾曲溝部36Aの一部を規定する第2湾曲内面321bを有する。第2湾曲内面321bの曲率半径は、第1湾曲内面321aの曲率半径よりも大きい。第1湾曲内面321aの曲率半径は、ゼロより大きくてもよく、ゼロであってもよい。
【0133】
薄肉管の湾曲管部が曲げ加工によって形成される場合、湾曲管部のうちの曲率半径の大きな外側部分が過剰に延伸されて当該外側部分に亀裂が生じる可能性がある。また、薄肉管の湾曲管部が曲げ加工によって形成される場合、湾曲管部のうちの曲率半径の小さな内側部分が過剰に圧縮されて当該内側部分に皺が生じる可能性がある。
【0134】
これに対し、第3の実施形態では、第1湾曲内面321aを有する第1側壁32aと蓋4とが摩擦攪拌接合され、第2湾曲内面321bを有する第2側壁32bと蓋4とが摩擦攪拌接合されることによって、薄肉管1の湾曲管部11が形成される。よって、第1側壁32aまたは第2側壁32bに、皺または亀裂が生じない。
【0135】
図25に記載の例では、溝部36の延在方向に沿う方向における第2湾曲内面321bの長さ(曲線長さ)は、溝部36の延在方向に沿う方向における第1湾曲内面321aの長さ(曲線長さ)よりも長い。第2湾曲内面321bの長さを、第1湾曲内面321aの長さよりも長くすることは、ブロック2(図1を参照。)を切削することにより容易に実現できる。換言すれば、第1側壁32aの第1湾曲内面321aは切削加工面であってもよく、第2側壁32bの第2湾曲内面321bは切削加工面であってもよい。図25に記載の例では、第2湾曲内面321bの長さを、第1湾曲内面321aの長さよりも長くするために、曲げ加工を行う必要がない。よって、曲げ加工に伴って、第1湾曲内面321aまたは第2湾曲内面321bに、皺または亀裂が生じることがない。
【0136】
図25に記載の例では、第1摩擦攪拌接合部81aは、曲線に沿って延在する第1曲線状接合部82aを含む。また、第2摩擦攪拌接合部81bは、曲線に沿って延在する第2曲線状接合部82bを含む。付加的に、第1摩擦攪拌接合部81aは、直線に沿って延在する第1直線状接合部83aを含んでいてもよく、第2摩擦攪拌接合部81bは、直線に沿って延在する第2直線状接合部83bを含んでいてもよい。
【0137】
(第1側壁32a)
図25に記載の例では、第1側壁32aは、溝部36の一部を規定する内面と、外面20aとを有する。第1側壁32aの内面は、例えば、ブロック2を切削加工することにより形成される切削加工面である。
【0138】
図25に記載の例では、第1側壁32aの外面20aは、上面21aと、第1外側側面22aと、を有する。第1外側側面22aは、第1側壁32aの外側の側面である。
【0139】
第1側壁32aの上面21aは、蓋4の外縁部40の上面と面一である。第1側壁32aの上面21aの全体は、摩擦攪拌された摩擦攪拌面であってもよいし、第1側壁32aの上面21aの一部のみが摩擦攪拌された摩擦攪拌面であってもよい。なお、蓋4の上面4eおよび第1側壁32aの上面21aのうち、摩擦攪拌接合用工具60と接触する部分は、平坦面であることが好ましいが、その他の部分(換言すれば、摩擦攪拌接合用工具60と接触しない部分)には起伏あるいは凹凸が存在していてもよい。また、当該起伏あるいは凹凸が、後述の被固定部P2として機能してもよい。
【0140】
第1外側側面22aは、切除加工が施された切除加工面を含む。第1外側側面22aの全体が切除加工面であることが好ましい。第1外側側面22aが、切除加工面であることは、第1側壁32aが薄肉化されていることを意味する。第1側壁32aの壁厚は、例えば、1mm以上6mm以下である。第1側壁32aの壁厚は、溝部36の延在方向に沿って変化してもよいし、一定であってもよい。第1側壁32aの第1外側側面22aは、全体が平坦面であってもよいし、第1外側側面22aに起伏あるいは凹凸が存在していてもよい。当該起伏あるいは凹凸が、後述の被固定部P2として機能してもよい。
【0141】
(第2側壁32b)
図25に記載の例では、第2側壁32bは、溝部36の一部を規定する内面20bと、外面とを有する。内面20bは、例えば、ブロック2を切削加工することにより形成される切削加工面である。
【0142】
図25に記載の例では、第2側壁32bの外面は、上面21bと、第2外側側面22bと、を有する。第2外側側面22bは、第2側壁32bの外側の側面である。
【0143】
第2側壁32bの上面21bは、蓋4の外縁部40の上面と面一である。第2側壁32bの上面21bの全体は、摩擦攪拌された摩擦攪拌面であってもよいし、第2側壁32bの上面21bの一部のみが摩擦攪拌された摩擦攪拌面であってもよい。なお、蓋4の上面4eおよび第2側壁32bの上面21bのうち、摩擦攪拌接合用工具60と接触する部分は、平坦面であることが好ましいが、その他の部分(換言すれば、摩擦攪拌接合用工具60と接触しない部分)には起伏あるいは凹凸が存在していてもよい。また、当該起伏あるいは凹凸が、後述の被固定部P2として機能してもよい。
【0144】
第2外側側面22bは、切除加工が施された切除加工面を含む。第2外側側面22bの全体が切除加工面であることが好ましい。第2外側側面22bが、切除加工面であることは、第2側壁32bが薄肉化されていることを意味する。第2側壁32bの壁厚は、例えば、1mm以上6mm以下である。第2側壁32bの壁厚は、溝部36の延在方向に沿って変化してもよいし、一定であってもよい。第2側壁32bの第2外側側面22bは、全体が平坦面であってもよいし、第2外側側面22bに起伏あるいは凹凸が存在していてもよい。当該起伏あるいは凹凸が、後述の被固定部P2として機能してもよい。
【0145】
(底壁34)
図25に記載の例では、底壁34は、溝部36の一部を規定する内面34nと、外面とを有する。内面34nは、例えば、ブロック2を切削加工することにより形成される切削加工面である。底壁34の壁厚は、例えば、1mm以上6mm以下である。
【0146】
(被固定部P2)
図19および図20に例示されるように、薄肉管1は、第1側壁32a、第2側壁32b、および、底壁34のうちの少なくとも一つと一体的に形成され、他の部材(例えば、他の薄肉管、あるいは、他の構造物)に固定される被固定部P2を有していてもよい。被固定部P2は、ブロック2の複数の壁30(例えば、第1側壁32a、第2側壁32b、および、底壁34)に切除加工を施すことにより形成される。より具体的には、第1側壁32aに切除加工が施されることにより、第1側壁32aが薄肉壁となり、第1側壁32aのうち切除加工が施されない領域、あるいは、切除加工による切除量が小さな領域によって被固定部P2の一部が形成される。また、第2側壁32bに切除加工が施されることにより、第2側壁32bが薄肉壁となり、第2側壁32bのうち切除加工が施されない領域、あるいは、切除加工による切除量が小さな領域によって被固定部P2の一部が形成される。代替的に、あるいは、付加的に、蓋4に、被固定部P2が形成されていてもよい。
【0147】
図19および図20に記載の例では、被固定部P2は、他の部材(例えば、他の薄肉管、あるいは、他の構造物)に固定されるフランジ部37を含む。代替的に、あるいは、付加的に、被固定部P2は、フランジ部37以外の被固定部を含んでいてもよい。
【0148】
本発明は上記各実施形態または各変形例に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施形態または各変形例は適宜変形又は変更され得ることは明らかである。また、各実施形態または各変形例で用いられる種々の技術は、技術的矛盾が生じない限り、他の実施形態または他の変形例にも適用可能である。さらに、各実施形態または各変形例における任意付加的な構成は、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0149】
1 :薄肉管
1A :湾曲管
1a :薄肉管の第1端部
1b :薄肉管の第2端部
2 :ブロック
3 :本体部
4 :蓋
4e :蓋の上面
5 :切削工具
6 :摩擦攪拌接合装置
9 :薄肉管製造用の中間体
11 :湾曲管部
12 :直線管部
12a :第1の直線管部
12b :第2の直線管部
20a :第1側壁の外面
20b :第2側壁の内面
21 :第1面
21a :第1側壁の上面
21b :第2側壁の上面
21c :第1端壁の上面
21d :第2端壁の上面
22a :第1側壁の第1外側側面
22b :第2側壁の第2外側側面
23c :第1端壁の第1外側端面
23d :第2端壁の第2外側端面
30 :壁
32a :第1側壁
32b :第2側壁
33c :第1端壁
33d :第2端壁
34 :底壁
34n :底壁の内面
36 :溝部
36A :湾曲溝部
36B :直線溝部
36a :溝部の第1側面
36b :溝部の第2側面
36c :溝部の第1端面
36d :溝部の第2端面
36g :溝部の底面
36n :湾曲溝部の内縁部
36n’ :湾曲溝部の屈曲内縁部
36u :湾曲溝部の外縁部
37 :フランジ部
38 :支持面
38f :傾斜面
39 :接続面
40 :蓋の外縁部
40a :第1湾曲縁部
40b :第2湾曲縁部
40e :蓋の外縁部の上面
41 :傾斜面
41g :傾斜面の下端部分
42 :蓋の外側面
60 :摩擦攪拌接合用工具
61 :攪拌ピン
62 :ピンホルダ
63 :ショルダ
63s :ショルダ面
71 :ワーク支持部材
72 :ベース
73 :工具支持部材
73a :フレーム
73b :シャフト
74 :第2ベース
75 :第1駆動装置
75a、75b:駆動装置
77 :第2駆動装置
78 :入力装置
79 :制御装置
79a :第1駆動装置制御手段
79b :第2駆動装置制御手段
81a :第1摩擦攪拌接合部
81b :第2摩擦攪拌接合部
81c :第3摩擦攪拌接合部
81d :第4摩擦攪拌接合部
82a :第1曲線状接合部
82b :第2曲線状接合部
83a :第1直線状接合部
83b :第2直線状接合部
321a :第1湾曲内面
321b :第2湾曲内面
324a :第1側壁の上縁部
324b :第2側壁の上縁部
361 :溝部の第1端部
362 :溝部の第2端部
791 :記憶装置
B :蓋とブロックとの境界
B1 :蓋の外縁部とブロックの第1面との境界
E :蓋の外縁
K1 :第1端壁を含む部分
K2 :第2端壁を含む部分
OP1 :第1開口
OP2 :第2開口
P1 :薄肉部
P2 :被固定部
SP :内部空間
SP1 :湾曲内部空間
SP2 :直線状の内部空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25