(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122835
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】軽油留分の水素化脱硫方法
(51)【国際特許分類】
C10G 45/02 20060101AFI20230829BHJP
【FI】
C10G45/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026574
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000105567
【氏名又は名称】コスモ石油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100209347
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 洋平
(72)【発明者】
【氏名】植木 弘之
(72)【発明者】
【氏名】生島 宏典
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129AA02
4H129CA07
4H129CA25
4H129DA16
4H129KA07
4H129KB03
4H129KC03Y
4H129KC14Y
4H129KD15Y
4H129KD22Y
4H129KD37Y
4H129KD44Y
4H129NA02
4H129NA45
(57)【要約】
【課題】分解軽油の水素化脱硫処理量を高めることが可能な直留軽油及び分解軽油を含む軽油留分の水素化脱硫方法の提供。
【解決手段】水素化脱硫装置に直留軽油を供給することにより、直留軽油の水素化脱硫反応を開始することと、反応t1日経過時において、前記水素化脱硫装置にさらに前記分解軽油を供給することにより、前記直留軽油の水素化脱硫反応を停止し、直留軽油及び分解軽油の混合油の水素化脱硫反応を開始することと、を含み、前記混合油中の前記分解軽油の含有量は、0.5~30容量%であり、前記軽油留分の水素化脱硫反応の反応終了時を反応ttotal日経過時としたときに、0.1×ttotal≦t1≦0.85×ttotalを満たし、0~ttotal日経過時までの全反応期間において、反応温度を前記水素化脱硫装置の使用上限温度以下とする、軽油留分の水素化脱硫方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直留軽油及び分解軽油を含む軽油留分を、触媒が充填された水素化脱硫装置に供給し、前記軽油留分の水素化脱硫反応を行う、軽油留分の水素化脱硫方法であって、
前記水素化脱硫装置に前記直留軽油を供給することにより、直留軽油の水素化脱硫反応を開始することと、
反応t1日経過時において、前記水素化脱硫装置にさらに前記分解軽油を供給することにより、前記直留軽油の水素化脱硫反応を停止し、直留軽油及び分解軽油の混合油の水素化脱硫反応を開始することと、を含み、
前記混合油中の前記分解軽油の含有量は、0.5~30容量%であり、
前記軽油留分の水素化脱硫反応の反応終了時を反応ttotal日経過時としたときに、
0.1×ttotal≦t1≦0.85×ttotalを満たし、0~ttotal日経過時までの全反応期間において、反応温度を前記水素化脱硫装置の使用上限温度以下とする、軽油留分の水素化脱硫方法。
【請求項2】
反応t2日経過時において、前記水素化脱硫装置への前記分解軽油の供給を停止することにより、前記混合油の水素化脱硫反応を停止し、前記直留軽油の水素化脱硫反応を再開することをさらに含み、
t1<t2≦0.9×ttotalを満たす、請求項1に記載の軽油留分の水素化脱硫方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽油留分の水素化脱硫方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脱硫触媒が充填された軽油水素化脱硫装置では、通常、原油を常圧蒸留装置により処理して得られる常圧蒸留軽油を水素化脱硫している。一方、脱硫触媒の脱硫活性余力がある場合、常圧蒸留軽油よりも脱硫しにくい留分をさらに混合し、水素化脱硫することがある。このような留分としては、重質油を流動接触分解装置により接触分解処理して得られる接触分解軽油が例として挙げられる。
【0003】
特許文献1には、直留軽油と、10容量%留出温度が220℃未満かつ90容量%留出温度が325℃未満の接触分解軽油とを、該接触分解軽油の混合比率を30容量%以下として混合した原料油を、硫黄分10質量ppm以下まで水素化脱硫する低硫黄軽油基材の製造方法が開示されている。このような製造方法とすることにより、脱硫触媒の活性を長期間維持しつつ、硫黄分10質量ppm以下かつ色相L1.5を満たす低硫黄軽油基材を得ることができることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願の発明者らが検討した所、特許文献1に記載の製造方法では、分解軽油の水素化脱硫処理量は充分ではなく、さらなる改善の余地があることがわかった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、分解軽油の水素化脱硫処理量を高めることが可能な直留軽油及び分解軽油を含む軽油留分の水素化脱硫方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の態様を有する。
[1] 直留軽油及び分解軽油を含む軽油留分を、触媒が充填された水素化脱硫装置に供給し、前記軽油留分の水素化脱硫反応を行う、軽油留分の水素化脱硫方法であって、前記水素化脱硫装置に前記直留軽油を供給することにより、直留軽油の水素化脱硫反応を開始することと、反応t1日経過時において、前記水素化脱硫装置にさらに前記分解軽油を供給することにより、前記直留軽油の水素化脱硫反応を停止し、直留軽油及び分解軽油の混合油の水素化脱硫反応を開始することと、を含み、前記混合油中の前記分解軽油の含有量は、0.5~30容量%であり、前記軽油留分の水素化脱硫反応の反応終了時を反応ttotal日経過時としたときに、0.1×ttotal≦t1≦0.85×ttotalを満たし、0~ttotal日経過時までの全反応期間において、反応温度を前記水素化脱硫装置の使用上限温度以下とする、軽油留分の水素化脱硫方法。
[2] 反応t2日経過時において、前記水素化脱硫装置への前記分解軽油の供給を停止することにより、前記混合油の水素化脱硫反応を停止し、前記直留軽油の水素化脱硫反応を再開することをさらに含み、t1<t2≦0.9×ttotalを満たす、[1]に記載の軽油留分の水素化脱硫方法。
[3] 直留軽油及び分解軽油を含む軽油留分を、触媒が充填された水素化脱硫装置に供給し、前記軽油留分の水素化脱硫反応により脱硫軽油留分を製造する脱硫軽油留分の製造方法であって、前記水素化脱硫装置に前記直留軽油を供給することにより、直留軽油の水素化脱硫反応を開始することと、反応t1日経過時において、前記水素化脱硫装置にさらに前記分解軽油を供給することにより、前記直留軽油の水素化脱硫反応を停止し、直留軽油及び分解軽油の混合油の水素化脱硫反応を開始することと、を含み、前記混合油中の前記分解軽油の含有量は、0.5~30容量%であり、前記軽油留分の水素化脱硫反応の反応終了時を反応ttotal日経過時としたときに、0.1×ttotal≦t1≦0.85×ttotalを満たし、0~ttotal日経過時までの全反応期間において、反応温度を前記水素化脱硫装置の使用上限温度以下とする、脱硫軽油留分の製造方法。
[4] 反応t2日経過時において、前記水素化脱硫装置への前記分解軽油の供給を停止することにより、前記混合油の水素化脱硫反応を停止し、前記直留軽油の水素化脱硫反応を再開することをさらに含み、t1<t2≦0.9×ttotalを満たす、[1]に記載の脱硫軽油留分の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、分解軽油の水素化脱硫処理量を高めることが可能な軽油留分の水素化脱硫方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1~4の軽油留分の水素化脱硫方法における反応温度の経時変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下の記載は本発明の実施態様の一例であり、本発明はこれらの内容に限定されず、その要旨の範囲内で変形して実施することができる。
【0010】
本明細書において「直留軽油」とは、原油を常圧蒸留装置により処理して得られる常圧蒸留軽油を意味する。直留軽油の性状としては例えば、15℃における密度が0.84~0.87g/mL、硫黄分が0.5~1.5質量%、窒素分が0.005~0.05質量%、50容量%留出温度が300~330℃、90容量%留出温度が340~360℃、芳香族炭化水素分が15~35容量%である。
本明細書において「分解軽油」とは、重質油を接触分解装置により接触分解処理して得られる接触分解軽油を意味する。分解軽油の性状としては例えば、15℃における密度が0.89~0.92g/mL、硫黄分が0.01~0.35質量%、窒素分が0.01~0.1質量%、50容量%留出温度が260~290℃、90容量%留出温度が320~365℃、芳香族炭化水素分が30~80容量%である。
本明細書において、直留軽油及び分解軽油を「軽油留分」と総称する。
【0011】
15℃における密度は、JIS K 2249-1(2011)「原油及び石油製品-密度の求め方-第1部:振動法」に準拠して測定することができる。
硫黄分は、JIS K 2541-4(2003)「原油及び石油製品-硫黄分試験方法 第4部:放射線式励起法」に準拠して測定することができる。
窒素分は、JIS K 2609(1998)「原油及び石油製品-窒素分試験方法」に準拠して測定することができる。
芳香族炭化水素分は、IP 548「determination of aromatic hydrocarbon types in middle distillates-High performance liquid chromatography method with refractive index detection」に準拠して測定することができる。
50容量%留出温度、90容量%留出温度は、JIS K2254(2018)「石油製品-蒸留性状の求め方」に準拠して測定することができる。
【0012】
≪軽油留分の水素化脱硫方法≫
本実施形態の軽油留分の水素化脱硫方法は、直留軽油及び分解軽油を含む軽油留分を、触媒が充填された水素化脱硫装置に供給し、前記軽油留分の水素化脱硫反応を行う。
軽油留分の水素化脱硫方法は、前記水素化脱硫装置に前記直留軽油を供給することにより、直留軽油の水素化脱硫反応を開始することと、反応t1日経過時において、前記水素化脱硫装置にさらに前記分解軽油を供給することにより、前記直留軽油の水素化脱硫反応を停止し、直留軽油及び分解軽油の混合油の水素化脱硫反応を開始することと、を含む。
前記混合油中の前記分解軽油の含有量は、0.5~30容量%であり、前記軽油留分の水素化脱硫反応の反応終了時を反応ttotal日経過時としたときに、0.1×ttotal≦t1≦0.85×ttotalを満たす。
0~ttotal日経過時までの全反応期間において、反応温度を前記水素化脱硫装置の使用上限温度以下とする。
【0013】
本実施形態の軽油留分の水素化脱硫方法は、直留軽油の水素化脱硫反応と、直留軽油及び分解軽油の混合油の水素化脱硫反応(以下、単に「混合油の水素化脱硫反応」ともいう。)を含む。
【0014】
(水素化脱硫装置の使用上限温度)
水素化脱硫装置の使用上限温度は、水素化脱硫装置に充填された触媒、水素化脱硫装置の材質などにより決定される。水素化脱硫装置の使用上限温度は、典型的には、370~450℃である。本実施形態においては、水素化脱硫装置の使用上限温度を例えば、371.7℃とすることができる。
【0015】
(ttotal)
軽油留分の水素化脱硫反応の反応終了時である反応ttotal日経過時は、水素化脱硫装置の使用上限温度から実質的に導かれる。本実施形態においては、0~ttotal日経過時までの全反応期間において、反応温度を前記水素化脱硫装置の使用上限温度以下とする。すなわち、反応温度が水素化脱硫装置の使用上限温度に達したときが、反応ttotal日経過時となる。例えば、反応温度が水素化脱硫装置の使用上限温度×0.93以上となったときを反応ttotal日経過時としてもよく、反応温度が水素化脱硫装置の使用上限温度×0.99以上となったときを反応ttotal日経過時としてもよい。
定期修理などの理由で反応を一旦停止し、その後、停止前と実質的に同様の条件で反応を再開する場合、上記反応の一旦停止は、反応終了とはみなさない。実質的に同様の条件とは、反応再開後の反応が、本実施形態における直留軽油の水素化脱硫反応又は混合油の水素化脱硫反応に該当する場合を意味する。なお、反応温度が水素化脱硫装置の使用上限温度×0.93未満で反応を停止し、その後、本実施形態における直留軽油の水素化脱硫反応又は混合油の水素化脱硫反応を再開しない場合は、前記停止時を反応ttotal日経過時とする。
ttotalは小数でもよく、例えば、ttotal=100.5の場合、反応100日+12時間経過時を意味する(後述のt1、t2も同様)。
【0016】
(混合油の水素化脱硫反応の開始時期:t1日経過時)
本実施形態においては、反応開始~反応t1日経過時までは、直留軽油の水素化脱硫反応を行う。そして、反応t1日経過時以降は、水素化脱硫装置にさらに分解軽油を供給し、混合油の水素化脱硫反応を行う。
【0017】
本願の発明者らは、反応開始時~反応初期において混合油の水素化脱硫反応を行うと、触媒の劣化が大幅に進行することを見出した。一方、反応開始時~反応初期において、直留軽油の水素化脱硫反応を行い、反応中期以降に水素化脱硫装置にさらに分解軽油を供給し、混合油の水素化脱硫反応を開始する場合、触媒の劣化が前述の場合と比べ抑制されることを見出した。
【0018】
また、本願の発明者らは、反応後期~反応終了時において混合油の水素化脱硫反応を開始すると、直留軽油と分解軽油の合計処理量が大幅に低下することを見出した。一方、反応中期~反応後期に混合油の水素化脱硫反応を開始する場合、直留軽油と分解軽油の合計処理量が前述の場合を比べ向上することを見出した。この知見は、直留軽油の水素化脱硫反応よりも、混合油の水素化脱硫反応では反応温度を高く設定する必要があることに起因する。すなわち、反応後期~反応終了時において、混合油の水素化脱硫反応を開始すると、水素化脱硫装置の使用上限温度を超えやすくなり、反応を終了せざるを得なくなる。
【0019】
以上の関係性は、下記式(1)で表される。
0.1×ttotal≦t1≦0.85×ttotal (1)
前記式(1)中、t1、ttotalは、上述した通りである。
【0020】
t1は0.10×ttotal以上であり、0.15×ttotal以上であることが好ましく、0.18×ttotal以上であることがより好ましい。t1が前記下限値以上であると、触媒の大幅な劣化が抑制され、結果として分解軽油の処理量を高めることができる。
【0021】
t1は60以上であることが好ましく、90以上であることがより好ましく、110以上あることがさらに好ましい。t1が前記下限値以上であると、触媒の大幅な劣化が抑制され、結果として分解軽油の処理量を高めることができる。
【0022】
反応t1-1日経過時(反応t1日経過時の前日)における反応温度は、水素化脱硫装置の使用上限温度-75℃以上であることが好ましく、水素化脱硫装置の使用上限温度-70℃以上であることがより好ましく、水素化脱硫装置の使用上限温度-65℃以上であることがさらに好ましい。反応温度が前記下限値以上であると、触媒の大幅な劣化が抑制され、結果として分解軽油の処理量を高めることができる。
【0023】
t1は0.85×ttotal以下であり、0.70×ttotal以下であることが好ましく、0.50×ttotal以下であることがより好ましい。t1が前記上限値以下であると、より長期間、混合油の水素化脱硫反応を行うことが可能となり、結果として直留軽油と分解軽油の合計処理量を高めることができる。
【0024】
反応t1-1日経過時(反応t1日経過時の前日)における反応温度は、水素化脱硫装置の使用上限温度-10℃以下であることが好ましく、水素化脱硫装置の使用上限温度-20℃以下であることがより好ましく、水素化脱硫装置の使用上限温度-25℃以下であることがさらに好ましい。反応温度が前記上限値以下であると、より長期間、混合油の水素化脱硫反応を行うことが可能となり、結果として直留軽油と分解軽油の合計処理量を高めることができる。
【0025】
混合油中の分解軽油の含有量は、0.5~30容量%であり、0.5~20容量%であることが好ましく、0.5~10容量%であることがより好ましい。分解軽油の含有量が前記範囲の下限値以上であると、分解軽油の処理量を高めることができる。分解軽油の含有量が前記範囲の上限値以下であると、触媒の大幅な劣化が抑制され、結果として分解軽油の処理量を高めることができる。
【0026】
(混合油の水素化脱硫反応の終了時期:t2日経過時)
混合油の水素化脱硫反応は、軽油留分の水素化脱硫反応の反応終了時まで継続して行ってもよい。本実施形態においては、反応終了時より前に、反応t2日経過時において、水素化脱硫装置への分解軽油の供給を停止することにより、混合油の水素化脱硫反応を停止し、直留軽油の水素化脱硫反応を再開することが好ましい。すなわち、反応t1日経過時~反応t2日経過時まで混合油の水素化脱硫反応を行い、反応t2日経過時~反応ttotal日経過時まで直留軽油の水素化脱硫反応を行うことが好ましい。この場合、混合油の水素化脱硫反応を軽油留分の水素化脱硫反応の反応終了時まで継続して行う場合に比べ、直留軽油と分解軽油の合計処理量を高めることができる。
【0027】
上述した通り、直留軽油の水素化脱硫反応よりも、混合油の水素化脱硫反応では反応温度を高く設定する必要がある。すなわち、反応後期~反応終了時において、混合油の水素化脱硫反応を行うと、水素化脱硫装置の使用上限温度を超えやすくなり、反応を終了せざるを得なくなる。一方、反応後期~反応終了時において、水素化脱硫装置への分解軽油の供給を停止することにより、混合油の水素化脱硫反応を停止し、直留軽油の水素化脱硫反応を再開すると、反応温度を低く設定することが可能となり、反応をより長い期間継続することができる。結果として、直留軽油と分解軽油の合計処理量を高めることができる。
【0028】
以上の関係性は、下記式(2)で表される。
t1<t2≦0.9×ttotal (2)
前記式(2)中、t1、t2、ttotalは、上述した通りである。
【0029】
t2は0.9×ttotal以下であることが好ましく、0.82×ttotal以下であることがより好ましく、0.65×ttotal以下であることがさらに好ましい。t2が前記上限値以下であると、より長期間、軽油留分の水素化脱硫反応を行うことが可能となり、結果として直留軽油と分解軽油の合計処理量を高めることができる。
【0030】
反応t2-1日経過時(反応t2日経過時の前日)における反応温度は、水素化脱硫装置の使用上限温度×0.97℃以下であることが好ましく、水素化脱硫装置の使用上限温度×0.95℃以下であることがより好ましく、水素化脱硫装置の使用上限温度×0.93℃以下であることがさらに好ましい。反応温度が前記上限値以下であると、より長期間、軽油留分の水素化脱硫反応を行うことが可能となり、結果として直留軽油と分解軽油の合計処理量を高めることができる。
【0031】
反応t1日経過時~t2日経過時の期間(t2-t1)、すなわち、混合油の水素化脱硫反応を行う期間は、ttotal×0.1~ttotal×0.80日間であることが好ましく、ttotal×0.15~ttotal×0.65日間であることがより好ましく、ttotal×0.20~ttotal×0.40日間であることがさらに好ましい。前記期間が前記範囲の下限値以上であると、分解軽油の処理量を高めることができる。前記期間が前記範囲の上限値以下であると、触媒の大幅な劣化が抑制され、結果として分解軽油の処理量を高めることができる。
【0032】
本実施形態におけるt1、t2、及び(t2-t1)の組み合わせとしては、t1が0.18×ttotal~0.65×ttotalであり、t2が0.35×ttotal~0.85×ttotalであり、かつ(t2-t1)が0.10×ttotal~0.30×ttotal(日間)であることが好ましく、t1が0.18×ttotal~0.30×ttotalであり、t2が0.30×ttotal~0.50×ttotalであり、かつ(t2-t1)が0.10×ttotal~0.30×ttotal(日間)であることがより好ましい。このようなt1、t2、及び(t2-t1)の組み合わせとすることにより、後述の反応条件において、触媒の劣化が抑制され、結果として混合油中の分解軽油の含有量を、18~30容量%と非常に高い割合にすることが可能となる。この場合、直留軽油の水素化脱硫反応及び混合油の水素化脱硫反応における直留軽油の供給量を一定とした場合に、0~ttotal日経過時までの全反応期間において直留軽油の水素化脱硫反応のみを行う場合と、0~ttotal日経過時までの全反応期間において本発明の軽油留分の水素化脱硫方法を行う場合で、ttotalは実質的に同等の長さとなることがわかった。すなわち、混合油の水素化脱硫反応における分解軽油の処理量の分、直留軽油と分解軽油の合計処理量を高めることが可能となる。
【0033】
反応t1日経過時~t2日経過時に行う混合油の水素化脱硫反応は、1回のみ実施してもよく、前記式(1)及び(2)を満たす限り、複数回実施してもよい。複数回実施可能な場合としては、1回目の混合油の水素化脱硫反応の終了時であるt2(1回目)を確認し、t2(1回目)以降において、前記式(1)及び(2)を満たす2回目の混合油の水素化脱硫反応の開始時期であるt1(2回目)及び2回目の混合油の水素化脱硫反応の終了時期であるt2(2回目)を設定可能な場合である。
混合油の水素化脱硫反応は1~20回行うことが好ましく、1~10回行うことがより好ましく、1回行うことがさらに好ましい。
混合油の水素化脱硫反応を複数回行う場合、混合油の水素化脱硫反応を行う期間の合計は、ttotal×0.15(日間)以上ttotal×0.80(日間)未満であることが好ましく、ttotal×0.18(日間)~ttotal×0.75(日間)であることがより好ましく、ttotal×0.20(日間)~ttotal×0.70(日間)であることがさらに好ましい。前記期間が前記範囲の下限値以上であると、分解軽油の処理量を高めることができる。前記期間が前記範囲の上限値以下であると、触媒の大幅な劣化が抑制され、結果として分解軽油の処理量を高めることができる。
【0034】
(触媒)
本実施形態において、触媒は、特に限定されるものではなく、本分野において公知の軽油の脱硫触媒を使用することができる。触媒の担体として、種々の無機酸化物が使用でき、例えばシリカ、アルミナ、ボリア、マグネシア、チタニア、ゼオライト、シリカ-アルミナ、シリカ-マグネシア、シリカ-ジルコニア、シリカ-トリア、シリカ-ベリリア、シリカ-チタニア、シリカ-ボリア、アルミナ-ジルコニア、アルミナ-チタニア、アルミナ-ボリア、アルミナ-クロミア、アルミナ-ゼオライト、チタニア-ジルコニア、シリカ-アルミナ-トリア、シリカ-アルミナ-ジルコニア、シリカ-アルミナ-マグネシア、シリカ-マグネシア-ジルコニアなど、又はこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらの無機酸化物のうち、好ましいものとしては、アルミナ、シリカ-アルミナ、アルミナ-チタニア、アルミナ-ボリア、アルミナ-ジルコニア、アルミナ-ゼオライトが挙げられ、特に好ましくは、アルミナ、アルミナ-ゼオライトが挙げられ、アルミナの中でもγ-アルミナが特に好ましい。これらの無機酸化物は、1種単体で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
前記担体に活性成分として含有させる金属は、周期表第6族金属及び第8~10族金属の中から選ばれる少なくとも1種類以上の金属であり、好ましくはモリブデン、タングステン、コバルト及びニッケルの金属である。これらの金属は、金属状態又は金属酸化物(複合金属酸化物を含む)、金属硫化物(複合金属硫化物を含む)の何れの形態でも有効であり、また、イオン交換などにより金属が触媒担体と結合した形態で存在してもよい。この金属成分の含有量は、通常、触媒基準かつ酸化物換算で、約10~35質量%の範囲内である。金属含有量が10質量%以上であると、活性点として働く金属の絶対量が多くなり、脱硫活性を始めとする水素化処理活性が発現する。金属含有量が35質量%以下であると、金属の凝集が抑制され活性点の数の減少が抑制され、その結果、水素化処理活性の低下が抑制される。更に、必要に応じて、元素周期律表第6族金属及び第8~10族金属からなる活性金属に加えて、リン、ホウ素、亜鉛、ジルコニア、炭素等を含ませることができる。
このような触媒としては、国際公開公報2O04/054712に記載の触媒、特開2005-305418に記載の触媒、特開2000-342976に記載の触媒が例として挙げられる。
本発明方法を適用するに当たり、触媒層の形態には制約はなく、例えば固定床、移動床、流動床等の触媒層の反応器に適用できる。
【0036】
(反応条件)
直留軽油の水素化脱硫反応及び混合油の水素化脱硫反応の反応条件としては、以下の反応条件であることが好ましい。
水素分圧は、3~8MPaであることが好ましく、4~8MPaであることがより好ましい。水素分圧が前記範囲の下限値以上であると、直留軽油の水素化脱硫反応及び混合油の水素化脱硫反応が進行しやすくなる。
【0037】
反応温度は、300~420℃であることが好ましく、320~400℃であることがより好ましく、330~380℃であることがさらに好ましい。反応温度が前記範囲の下限値以上であると、直留軽油の水素化脱硫反応及び混合油の水素化脱硫反応が進行しやすくなる。反応温度が前記範囲の上限値以下であると、触媒の劣化が抑制される。反応温度とは触媒層の平均温度を意味する。
【0038】
液空間速度は、0.3~5.0hr-1であることが好ましく、0.5~5.0hr-1であることがより好ましく、0.8~5.0hr-1であることがさらに好ましい。液空間速度が前記範囲の下限値以上であると、単位時間あたりの直留軽油及び混合油の処理量が向上する。液空間速度が前記範囲の上限値以下であると、直留軽油の水素化脱硫反応及び混合油の水素化脱硫反応が進行しやすくなる。
【0039】
水素/油比は、150~400Nm3/kLであることが好ましく、200~400Nm3/kLであることがより好ましく、250~400Nm3/kLであることがさらに好ましい。
【0040】
直留軽油の15℃における密度は、0.84~0.87g/mLであることが好ましく、0.84~0.86g/mLであることがより好ましく、0.84~0.85g/mLであることがさらに好ましい。
【0041】
直留軽油の総質量に対する硫黄分は、0.5~1.5質量%であることが好ましく、0.5~1.3質量%であることがより好ましく、0.5~1.1質量%であることがさらに好ましい。
直留軽油の総質量に対する窒素分は、0.005~0.05質量%であることが好ましく、0.005~0.025質量%であることがより好ましく、0.005~0.02質量%であることがさらに好ましい。
直留軽油の総容積に対する芳香族化合物分は、15~35容量%であることが好ましく、15~33容量%であることがより好ましく、15~30容量%であることがさらに好ましい。
【0042】
直留軽油の50容量%留出温度は、300~330℃であることが好ましく、300~320℃であることがより好ましく、300~310℃であることがさらに好ましい。
直留軽油の90容量%留出温度は、340~360℃であることが好ましく、340~358℃であることがより好ましく、340~356℃であることがさらに好ましい。
【0043】
直留軽油の水素化脱硫反応においては、直留軽油を主成分とする原料油中、直留軽油以外にその他の留分が含まれていてもよい。例えば、原料油の総容積に対して分解軽油が0.5容量未満含まれていてもよい。原料油中に含まれていてもよい分解軽油以外のその他の留分としては、例えば、直接脱硫装置から得られる軽油留分が挙げられる。原料油の総容積に対する、その他の留分の含有量は、30容量%以下であることが好ましく、10容量%以下であることがより好ましい。すなわち、直留軽油の水素化脱硫反応における、原料油の総容積に対する直留軽油の含有量は、70容量%以上であることが好ましく、90容量%以上であることがより好ましく、99.5容量%以上であることがさらに好ましい。
【0044】
分解軽油の15℃における密度は、0.89~0.92g/mLであることが好ましく、0.89~0.915g/mLであることがより好ましく、0.89~0.910g/mLであることがさらに好ましい。
【0045】
分解軽油の総質量に対する硫黄分は、0.01~0.35質量%であることが好ましく、0.01~0.30質量%であることがより好ましく、0.01~0.25質量%であることがさらに好ましい。
分解軽油の総質量に対する窒素分は、0.01~0.1質量%であることが好ましく、0.01~0.07質量%であることがより好ましく、0.01~0.05質量%であることがさらに好ましい。
分解軽油の総容積に対する芳香族化合物分は、30~80容量%であることが好ましく、30~75容量%であることがより好ましく、30~70容量%であることがさらに好ましい。
【0046】
分解軽油の50容量%留出温度は、260~290℃であることが好ましく、260~285℃であることがより好ましく、270~280℃であることがさらに好ましい。
分解軽油の90容量%留出温度は、320~365℃であることが好ましく、320~360℃であることがより好ましく、330~355℃であることがさらに好ましい。
上記90容量%留出温度の範囲は、本実施形態の分解軽油が比較的重質な分解軽油であることを意味する。重質な分解軽油は触媒の劣化を進行させやすいため、直留軽油と分解軽油の混合油の水素化脱硫反応を行う場合、分解軽油の処理量を高めるために、比較的軽質な分解軽油(90容量%留出温度が低い分解軽油)が従来使用されていた。一方、本発明の軽油留分の水素化脱硫方法を採用することにより、従来よりも重質な分解軽油を使用しても触媒の劣化を抑制することができ、後述の実施例で具体的に示すように、重質な分解軽油をより多く処理することが可能となることを本願の発明者らは見出した。
【0047】
混合油の水素化脱硫反応においては、直留軽油及び分解軽油を主成分とする混合油中、直留軽油及び分解軽油以外にその他の留分が含まれていてもよい。混合油の水素化脱硫反応における、原料油の総容積に対する混合油の含有量は、75容量%以上であることが好ましく、85容量%以上であることがより好ましく、99.5容量%以上であることがさらに好ましい。
【0048】
生成油(脱硫軽油留分)の15℃における密度は、0.81~0.85g/mLであることが好ましく、0.81~0.845g/mLであることがより好ましく、0.81~0.84g/mLであることがさらに好ましい。
【0049】
生成油の総質量に対する硫黄分は、0.0001~0.0008質量%であることが好ましく、0.0004~0.0008質量%であることがより好ましく、0.0006~0.0008質量%であることがさらに好ましい。
【0050】
生成油の50容量%留出温度は、270~320℃であることが好ましく、280~310℃であることがより好ましく、285~310℃であることがさらに好ましい。
生成油の90容量%留出温度は、320~360℃であることが好ましく、325~360℃であることがより好ましく、325~355℃であることがさらに好ましい。
【0051】
本実施形態の軽油留分の水素化脱硫方法を商業規模で行うには、上述の触媒の固定床、移動床、あるいは流動床式の触媒層を水素化脱硫装置中の反応器内に形成し、この反応器内に軽油留分を導入し、上記の条件下で軽油留分の水素化脱硫反応を行えばよい。最も一般的には、固定床触媒層を反応器内に形成し、軽油留分を反応器の上部に導入し、軽油留分を固定床の上から下に通過させ、反応器の下部から生成油を流出させるものか、反対に軽油留分を反応装置の下部に導入し、軽油留分を固定床の下から上に通過させ、反応器の上部から生成油を流出させる。
【0052】
本実施形態の軽油留分の水素化脱硫方法は、上述の触媒を、単独の反応器に充填して行う一段の水素化脱硫方法でもよく、複数の反応器に充填して行う多段連続水素化脱硫方法でもよい。
【0053】
触媒は、使用前に(すなわち、直留軽油の水素化脱硫反応を行う前に)、反応器内で硫化処理して活性化することが好ましい。硫化処理は、常圧又はそれ以上の水素分圧の水素雰囲気下で、硫黄化合物を含む石油蒸留物、それにジメチルスルファイドや二硫化炭素等の硫化材を加えたもの、又は硫化水素を流通させて行うことができる。硫化処理における温度は、200~400℃であることが好ましく、250~350℃であることがより好ましい。
【実施例0054】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0055】
触媒として、アルミナ-HYゼオライト担体(アルミナ:HYゼオライト質量比=95:5)に、コバルトが触媒基準、酸化物換算で6.0質量%、モリブデンが触媒基準、酸化物換算で27.0質量%、リンが触媒基準、酸化物換算で4.0質量%、炭素が触媒基準、元素換算で4.0質量%担持された触媒を用いた。
【0056】
触媒は、使用前に、反応器内で硫化処理して活性化した。硫化処理は、反応器内に充填された触媒層に約22℃で水素及び直留軽油を流通させ、20℃/hrで300℃まで昇温、300℃で24hr保持、その後20℃/hrで350℃まで昇温することにより行った。水素及び直留軽油の流通条件として、水素分圧は4.9MPa、表1に記載の性状の直留軽油を液空間速度1.5hr-1で流通させた。水素/油比は、200Nm3/kLとした。
【0057】
(反応条件)
反応に使用した直留軽油及び分解軽油の性状を表1に示す。表1中のT50は50容量%留出温度を表し、T90は90容量%留出温度を表す。なお、密度(15℃)、硫黄分、窒素分、T50、T90、芳香族分は、上述の方法で測定を行った。
また、実施例1~4の反応条件を表2に示す。なお、表2中(直留軽油)との記載は、直留軽油の水素化脱硫反応における反応条件である。なお、反応によって生成した生成油とガスの混合流体は反応器出口から流出させ、気液分離器で生成油を分離し、硫黄分を上述の方法で測定した。
水素化脱硫装置の使用上限温度は371.7℃とした。水素化脱硫装置の使用上限温度×0.99℃に達した時点(すなわち、367.4℃に達した時点)を反応終了時とした。
【0058】
【0059】
【0060】
[実施例1]
水素化脱硫装置に直留軽油を供給することにより、直留軽油の水素化脱硫反応を開始した。反応121日経過時において、水素化脱硫装置にさらに分解軽油を供給することにより、前記直留軽油の水素化脱硫反応を停止し、直留軽油及び分解軽油の混合油の水素化脱硫反応を開始した。反応241日経過時において、水素化脱硫装置への前記分解軽油の供給を停止することにより、前記混合油の水素化脱硫反応を停止し、前記直留軽油の水素化脱硫反応を再開した。反応600日経過時において、水素化脱硫装置への前記直留軽油の供給を停止し、反応を終了した。なお、直留軽油の水素化脱硫反応及び混合油の水素化脱硫反応における、直留軽油の供給量は、30,000BPDとした。また、混合油の水素化脱硫反応における、分解軽油の供給量は、8,600BPDとした。すなわち、t
1=121であり、t
2=241であり、t
total=600であり、混合油中の前記分解軽油の含有量は、22容量%であった。これらの情報、及び全反応期間における直留軽油の処理量(表3中のtotal直留軽油)、分解軽油の処理量(表3中のtotal分解軽油)を表3に示す(以下、実施例2~4についても同様に示す)。また、反応温度の経時変化を
図1に示す(以下、実施例2~4についても同様に示す)。
【0061】
[実施例2]
水素化脱硫装置に直留軽油を供給することにより、直留軽油の水素化脱硫反応を開始した。反応241日経過時において、水素化脱硫装置にさらに分解軽油を供給することにより、前記直留軽油の水素化脱硫反応を停止し、直留軽油及び分解軽油の混合油の水素化脱硫反応を開始した。反応361日経過時において、水素化脱硫装置への前記分解軽油の供給を停止することにより、前記混合油の水素化脱硫反応を停止し、前記直留軽油の水素化脱硫反応を再開した。反応600日経過時において、水素化脱硫装置への前記直留軽油の供給を停止し、反応を終了した。なお、直留軽油の水素化脱硫反応及び混合油の水素化脱硫反応における、直留軽油の供給量は、30,000BPDとした。また、混合油の水素化脱硫反応における、分解軽油の供給量は、7,500BPDとした。
【0062】
[実施例3]
水素化脱硫装置に直留軽油を供給することにより、直留軽油の水素化脱硫反応を開始した。反応361日経過時において、水素化脱硫装置にさらに分解軽油を供給することにより、前記直留軽油の水素化脱硫反応を停止し、直留軽油及び分解軽油の混合油の水素化脱硫反応を開始した。反応479日経過時において、水素化脱硫装置への前記分解軽油の供給を停止することにより、前記混合油の水素化脱硫反応を停止し、前記直留軽油の水素化脱硫反応を再開した。反応600日経過時において、水素化脱硫装置への前記直留軽油の供給を停止し、反応を終了した。なお、直留軽油の水素化脱硫反応及び混合油の水素化脱硫反応における、直留軽油の供給量は、30,000BPDとした。また、混合油の水素化脱硫反応における、分解軽油の供給量は、5,200BPDとした。
【0063】
[実施例4]
水素化脱硫装置に直留軽油を供給することにより、直留軽油の水素化脱硫反応を開始した。反応481日経過時において、水素化脱硫装置にさらに分解軽油を供給することにより、前記直留軽油の水素化脱硫反応を停止し、直留軽油及び分解軽油の混合油の水素化脱硫反応を開始した。反応600日経過時において、水素化脱硫装置への前記直留軽油及び前記分解軽油の混合油の供給を停止し、反応を終了した。なお、直留軽油の水素化脱硫反応及び混合油の水素化脱硫反応における、直留軽油の供給量は、30,000BPDとした。また、混合油の水素化脱硫反応における、分解軽油の供給量は、3,000BPDとした。
【0064】
【0065】
本発明の実施例1~4の軽油留分の水素化脱硫方法は、反応t1日経過時において、混合油の水素化脱硫反応を開始しても触媒の大幅な劣化が起こらず(反応温度の急上昇が起こらず)、結果として分解軽油の処理量が高くなることがわかった。
なお、上述した通り、本願の発明者らは、t1が0.1×ttotal未満で混合油の水素化脱硫反応を開始した場合、触媒の劣化が起こり、反応温度が上昇することをすでに確認している。この場合に混合油の水素化脱硫反応の期間を実施例1~4と同程度の120日間程度(t2-t1)とし、367.4℃に達するまでの時間(ttotal)を実施例1~4と同じ600日間とする場合、混合油中の分解軽油の含有量を低い値とせざるを得ず、実施例1~4と同様の直留軽油の処理量とした場合、分解軽油の処理量は低くなると考えられる。
【0066】
また、反応t2日経過時において、水素化脱硫装置への分解軽油の供給を停止することにより、混合油の水素化脱硫反応を停止し、直留軽油の水素化脱硫反応を再開した実施例1~3では、実施例4よりも分解軽油の処理量が高くなることがわかった。