(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122836
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】生繭の乾燥方法、シルク製品および食品
(51)【国際特許分類】
D01B 7/00 20060101AFI20230829BHJP
A23L 35/00 20160101ALI20230829BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20230829BHJP
【FI】
D01B7/00 301Z
A23L35/00
A23L33/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026575
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】304006333
【氏名又は名称】丸中株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591032703
【氏名又は名称】群馬県
(72)【発明者】
【氏名】篠田 一
(72)【発明者】
【氏名】久保川 博夫
(72)【発明者】
【氏名】山本 真揮
【テーマコード(参考)】
4B018
4B036
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018MD76
4B018ME02
4B018ME14
4B018MF06
4B018MF07
4B036LF13
4B036LF17
4B036LF19
4B036LH42
4B036LP03
4B036LP05
4B036LP09
(57)【要約】
【課題】熱による黄変が少なく風合いも柔らかい生糸を量産できるとともに、旨味と風味が良好な食用蛹が得られる生繭の乾燥方法を提供する。
【解決手段】本発明の生繭の乾燥方法は、摂氏40度乃至摂氏90度に保持された容器5の内部に生繭を設置し、生繭に含まれる水分子に近赤外線領域の電磁波を吸収させ、電磁波と共振させることで水分子の水蒸気化を促進させ、これによって発生する水蒸気を容器5の外に排出させる。これにより、乾燥歩合を24時間以内に45パーセント以下とし、生繭の表面と乾燥後の繭の表面を測色してCIELAB座標におけるユークリッド距離として計算された両者の色差を、丁度可知差異とされる2.3より小さくする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生繭に含まれる水分子に近赤外線領域の電磁波を吸収させ、前記電磁波と共振させることで前記水分子の水蒸気化を促進させることを特徴とする、生繭の乾燥方法。
【請求項2】
摂氏40度乃至摂氏90度に保持された容器の内部に生繭を設置し、前記生繭に含まれる水分子に近赤外線領域の電磁波を吸収させ、前記電磁波と共振させることで前記水分子の水蒸気化を促進させ、これによって発生する水蒸気を前記容器の外に排出させることを特徴とする、請求項1に記載の生繭の乾燥方法。
【請求項3】
乾燥歩合を24時間以内に45パーセント以下とすることを特徴とする、請求項1若しくは請求項2に記載の生繭の乾燥方法。
【請求項4】
生繭の表面と乾燥後の繭の表面を測色し、CIELAB座標におけるユークリッド距離として計算した前記生繭の表面と乾燥後の繭の表面の色差が、2.3より小さいことを特徴とする、請求項1~3の何れか1項に記載の生繭の乾燥方法。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載の乾燥方法で乾燥した繭から作製されたシルク製品。
【請求項6】
請求項1~4の何れか1項に記載の乾燥方法で乾燥した繭から取り出された蛹を原料とする食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生繭の乾燥方法、乾燥した繭から作製されたシルク製品、および繭から取り出した蛹を原料とする食品に関する。
【背景技術】
【0002】
蚕は営繭後に蛹化し、その後、約10日で羽化することが知られている。そのため、蛹が羽化する前に繭から絹糸を繰糸する必要がある。養蚕農家から製糸工場へ繭を出荷した時点では、繭の中で蛹が生きているため、羽化による蛾の発生とカビの発生を防いで繭を長期に保存する目的で、摂氏110度乃至摂氏120度の高温加熱による繭の乾燥作業(乾繭)が一般に行われている。乾繭しないで繭を繰糸する生繰りという方法では、常温での長期保存はできないが、高温で乾燥処理をしていないため、熱による黄変が少なく風合いも柔らかい生糸が得られる(非特許文献1参照)。
【0003】
養蚕の第一目的は蚕から絹糸を得ることであるが、蚕の蛹は貴重なタンパク源としても注目されている。脂質、糖質、蛋白質、ビタミン類、ミネラル等のヒトに有用な栄養素を多く含むことから、食用にも利用されている。蛹の段階では内臓に糞が詰まっていないため、長期滞在する宇宙ステーションでの食料としての利用も研究されている。蛹は、非常に栄養価に富んだ有望な資源であるため、食糧問題の解消にも期待がもてる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】天田守ほか著、「生繭繰糸技術と織物特性」群馬県蚕業試験場研究報告、2000年3月発行、p.65-70
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
摂氏110度乃至摂氏120度の高温による乾繭では、繰糸で得られる生糸に熱による黄変が生じ、風合いも硬くなり商品価値が下がることが問題であった。一方、乾繭を行わない生繰りでは、生繭を長期保存することができないため、繰糸可能な期間が限定され、そのために生糸の生産量を増やすことが困難であった。また、蛹を食用とする場合、摂氏110度乃至摂氏120度の乾繭ではタンパク質の変性や分解が生じ、旨味や風味が損なわれるという問題があった。すなわち、本発明が解決しようとする課題は、熱による黄変が少なく風合いも柔らかい生糸を量産できるとともに、旨味と風味が良好な食用蛹が得られる生繭の乾燥方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の生繭の乾燥方法は、生繭に含まれる水分子に近赤外線領域の電磁波を吸収させ、電磁波と共振させることで水分子の水蒸気化を促進させる。
【0007】
本発明の生繭の乾燥方法は、摂氏40度乃至摂氏90度に保持された容器の内部において、生繭に含まれる水分子に近赤外線領域の電磁波を吸収させ、電磁波と共振させることで水分子の水蒸気化を促進させ、これによって発生する水蒸気を容器の外に排出させる。
【0008】
本発明の乾燥方法では、乾燥歩合を24時間以内に45パーセント以下とする。
【0009】
本発明の乾燥方法では、生繭の表面と乾燥後の繭の表面を測色してCIELAB座標におけるユークリッド距離として計算された両者の色差を、丁度可知差異とされる2.3より小さくする。
【0010】
本発明の乾燥方法で乾燥した繭からシルク製品を作製する。
【0011】
本発明の乾燥方法で乾燥した繭から取り出された蛹を原料として食品を製造する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の生繭の乾燥方法では、生繭に含まれる水分の水分子に近赤外線領域の電磁波を吸収させ、電磁波と共振させることで水分子の水蒸気化を促進させることができる。この近赤外線の作用により、摂氏40度乃至摂氏90度という比較的低温でも、24時間以内に乾燥歩合を常温での長期保存に適する45パーセント以下とすることができる。
【0013】
本発明の乾燥方法で低温乾燥した繭は、生繭との比較で表面を測色してCIELAB座標のユークリッド距離として計算した色差が、丁度可知差異とされる2.3より小さくなる。すなわち、熱による黄変が視認されないため、得られる生糸の商品価値を向上させることができる。また、低温の乾燥では、タンパク質の変性及び分解を抑制できるため、生糸の風合いを柔軟に保持できるとともに、旨味と風味が良好な食用蛹が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】請求項1の生繭の乾燥方法に関する乾燥装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の生繭の乾燥方法に関する実施の形態を説明する。
図1に示す本発明で用いた乾燥装置1は、近赤外線発生部2、熱風発生部3、排出口4、容器5、支柱6、及び多段の棚7からなる。ただし、本発明の生繭の乾燥方法は、バッチ式の乾燥装置による実施に限定されるものではなく、ベルトコンベア等の輸送帯の上に繭を載せて移動させる、連続式の乾燥装置によって実施することもできる。
【0016】
生繭とは、蚕の飼育によって得られる繭であって、殺蛹、乾燥又は煮繭をする以前の蛹が生きている状態の繭である。冷蔵によって蛹を仮死状態で保存している繭についても、本発明で生繭として利用できる。蚕の種類としては、シルクの原料となる繭を作るものであれば特に制限はなく利用できる。蚕を大きく分けると、養殖の蚕である家蚕と天然の蚕である野蚕に分類されるが、いずれも本発明において利用可能である。養殖の蚕である家蚕は、元々は自然の中で生きていた桑蚕を起源とし、良質な絹糸を安定して生産するために長い時間をかけて数多くの品種改良がされてきた。こうして品種改良された家蚕の中で、優れた白度の絹糸が得られる繭を作る蚕品種は特に好ましく利用できる。
【0017】
近赤外線発生部2とは、およそ700ナノメートル乃至2500ナノメートルの波長を有する近赤外線領域の電磁波を、容器5内部に設置した繭に向けて放射する部品である。近赤外線発生部2の内部には近赤外線を放射する光熱源を備え、反射板を介して放射された近赤外線を容器5内に拡散できる構造を有することが好ましい。近赤外線は赤外線の中でも波長が短いため、放射された物質の表面で吸収されることなく、透過して物質の内部までエネルギーを伝えることが可能である。すなわち、繭の内部に近赤外線が浸透することにより、繭の表層と内部の蛹に同時にエネルギーを伝達できる。また、近赤外線は窒素や酸素のような等核二原子分子には吸収されず、水蒸気などの異核二原子分子や三原子以上の気体分子に吸収される性質を有する。このため、容器5内の空気にエネルギーが奪われることなく、対象物である繭に効率良くエネルギーを与えることが可能となる。
【0018】
繭を乾燥状態に導く近赤外線の作用は、繭に含まれる水分子が電磁波を吸収して振動することにより、水分子の水蒸気化が促進されることで発現する。すなわち、水分子の振動状態を1つずつ変化させる遷移のエネルギーが近赤外線の波長領域に相当し、特に1.2マイクロメートル、1.45マイクロメートル及び1.94マイクロメートルなどの固有の吸収帯で高い振動状態になる。この振動のエネルギーは分子同士の衝突によって、回転や並進といった他の運動エネルギーに変換されるため、水がより高温になって水蒸気化が促進され、その結果として繭が乾燥される。
【0019】
水分子の振動状態を変化させることで繭を乾燥状態に導くためには、近赤外線発生部2は水分子の固有吸収帯において高エネルギーの電磁波を放射できる部品であることが好ましい。従って、近赤外線領域の放射するヒーターの中でも、特に1マイクロメートル乃至2マイクロメートルの波長範囲で電磁波を放射できるハロゲンランプヒーターを近赤外線発生部2の光熱源として利用することが望ましい。また、前記波長範囲の電磁波はタンパク質分子にも吸収されるため、水分子とともにタンパク質分子も振動させることで、繭内部の蛹の乾燥を効率的に行うことができる。
【0020】
熱風発生部3は、容器5内に熱風を放出する部品である。放出された熱風は容器5内を対流し、雰囲気を摂氏40度乃至摂氏90度の所定温度に保持する。従来の乾繭では、雰囲気温度を摂氏110度乃至摂氏120度まで上昇させるため、絹タンパク質中に含まれるチロシン等のアミノ酸が酸化・分解されてメラニン物質に変わる黄変現象が生じていた。さらに、蛹のタンパク質が変性あるいは分解されることにより、蛹の旨味や風味も損なわれていた。本発明では、雰囲気温度を従来法より低温に設定することにより、絹及び蛹のタンパク質の変性あるいは分解を抑制できる。容器5内の雰囲気温度としては摂氏40度乃至摂氏90度が好ましく、さらに黄変等を軽減するためは摂氏40度乃至摂氏70度がより好ましい。
【0021】
排出口4は、乾燥過程で発生する水蒸気を容器5の外に排出するための開口部である。温度の高い空気は熱膨張により体積が大きくなるため、同じ質量では密度が低くなり、空気は上部へ流れていく。従って、容器中の熱を逃がさずに水分を効率よく抜くためには、排出口4は容器5の低い位置に設置されていることが好ましい。排出口4からの排出量が大きすぎると容器5内部の温度維持にかかるコストが高くなるため、強制排出を行う電動ファン等は不要である。仮に、容器5の容積が0.3立方メートル程度であれば、排出口4は直径5センチメートル乃至10センチメートルの開口部として備えてあればよい。
【0022】
容器5は、乾燥する繭量に応じた容積を有し、摂氏90度の温度に対する耐久性があって、さらに外部への放熱を抑制できる保温性を有する素材で構成されているものであれば好ましく利用できる。保温性を有する素材としては、断熱材を内部に挟み込んだ板材が挙げられ、断熱材にはグラスウールシート等を利用することができる。また、容器5内部の表面が近赤外線を良好に鏡面反射できれば、近赤外線を効率的に繭に吸収させることが可能となる。このため、容器5の内側の板材は研磨した金属板であることが好ましい。容器5の容積としては、効率的な乾燥には風が通る隙間が必要であるため、生繭重量1キログラム当たり0.03立方メートル乃至0.1立方メートルであることが望ましい。風通し良好であって近赤外線が繭にムラ無く放射されるためには、床面中央に回転軸となる支柱6が立ち、この支柱6に多段の棚7を取り付けて360度回転できる構造を容器5が備えていればより好ましく実施できる。
【0023】
繭の乾燥は、常温での長期保存を可能とすることが目的であり、そのためには蛹の腐敗とカビの発生を抑制できる乾燥歩合(生繭の元重量に対する乾燥後の繭の重量の百分率)にまで水分量を減少させる必要がある。生繭が含有する水分は、繭層が10パーセント乃至13パーセント、蛹が74パーセント乃至79パーセント程度であり、腐敗とカビの発生を防ぐためには蛹の含水率を15パーセント前後とすることが望ましい。本発明では、蛹の含水率が15パーセント程度となる乾燥歩合を45パーセントと見積り、生繭の元重量に対する乾燥後の繭重量の百分率が45パーセント以下に到達するまで乾燥させる。また、乾燥に要する時間については短い方が望ましいが、一日一回の乾燥処理を実施するためには、最長でも24時間以内に上記の乾燥状態に到達できることが好ましい。
【0024】
本発明の乾燥方法で乾燥した繭から作製するシルク製品とは、繰糸によって取り出される生糸および精練糸を含む繊維製品に限定されるものではなく、繭毛羽を集めて糸にしたキビソ、製糸または精練の過程で廃棄されていたセリシンを原料とする医薬品等、繭を構成するシルクの一部あるいは全部を利用する製品である。すなわち、生糸、精練糸、キビソ、撚り糸、染色加工糸、組紐、布帛、衣類、襟巻き、肩掛け、鞄、装飾品、小物・雑貨等を含む繊維製品、シルクを一度溶解させて繊維、フィルム又はスポンジ等に成形加工した再生シルク製品、さらには化粧品、衛生用品及び医薬品等が挙げられる。特に、再生シルク製品、化粧品、衛生用品及び医薬品等の原料として利用する場合には、タンパク質の変性及び分解を抑制できる本発明の乾燥方法は好ましく利用できる。
【0025】
本発明の乾燥方法で乾燥した繭から取り出された蛹を原料とする食品として、例えば、佃煮等の煮物、丸焼き等の焼き物、唐揚げ等の揚げ物、すり鉢やミキサーで細かく粉砕した粉末、及びこれらを加えて調理する加工食品、健康食品、栄養食品、非常食用の保存食品等が挙げられる。
【実施例0026】
以下、本発明の実施例及び比較例を説明するが、本発明はこれら実施例及び比較例によって限定されるものではない。
【0027】
(実施例1)
乾燥装置1を構成する容器5は、断熱性のグラスウールシートを両側から挟み込んだステンレス板を利用して作製し、内側のステンレス板表面は近赤外線が良好に鏡面反射するように研磨を施した。容器5の外寸法は、幅75センチメートル、奥行83.5センチメートル、高さ144センチメートルとした。容器5の床から42センチメートルの高さを中央として近赤外線発生部2を設置した。近赤外線発生部2の光熱源としてタングステンフィラメントを用いた全長65センチメートルのハロゲンランプヒーターを使用し、さらに、近赤外線が効率よく繭へと伝達するように、ハロゲンランプヒーターと繭を載せる棚7との間に直径1.3センチメートルの多数の穴が空いたステンレス製の反射板を設置した。熱風発生部3は容器5の床上85センチメートルの位置に設置し、直径6センチメートルの排出口4は容器5の床上15センチメートルの位置に設置した。容器5の床面中央に回転軸となる支柱6を直立させ、この支柱6に取り付ける棚7として、直径55センチメートルの円形の棚7を等間隔に7段取り付けて、棚7が360度回転できる構造にした。乾燥する生繭としては、蚕品種「錦秋鐘和」の家蚕を令和3年夏蚕期に飼育し、収穫後に摂氏4度の仮死状態で冷蔵保存していた繭を用いた。前記生繭を乾燥装置1の棚7に1段当たりに約850グラムとして全量約6キログラムを載せ、近赤外線を照射しながら摂氏55度の温度で24時間乾燥した。その結果、生繭の元重量に対する乾燥後の繭の重量の百分率である乾燥歩合は44.2パーセントとなった。
【0028】
(色差評価)
(0027)に記載した生繭の表面と乾燥後の繭の表面を倉敷紡績株式会社製の分光測色機COLOR-7xを用いて測色し、CIELAB座標におけるユークリッド距離として計算される両者の色差を算出した。その結果、生繭を基準色(色差0)とすると、乾燥後の繭の色差は0.73であった。この色差は丁度可知差異の2.3以下であり、目視による色の違いは確認できなかった。
【0029】
(実施例2)
(0027)に記載した乾燥装置1及び生繭約7キログラムを利用し、摂氏70度の温度で8時間乾燥した。その結果、生繭の元重量に対する乾燥後の繭の重量の百分率である乾燥歩合は43.9パーセントとなった。
【0030】
(色差評価)
(0029)に記載した生繭の表面と乾燥後の繭の表面を倉敷紡績株式会社製の分光測色機COLOR-7xを用いて測色し、(0028)と同様に両者の色差を算出した。その結果、生繭を基準色(色差0)とすると、乾燥後の繭の色差は0.95であった。この色差は丁度可知差異の2.3以下であり、目視による色の違いは確認できなかった。
【0031】
(比較例)
生繭として、蚕品種「錦秋鐘和」の家蚕を令和3年夏蚕期に飼育し、収穫後に摂氏4度の仮死状態で冷蔵保存していた繭を用いた。前記生繭を熱風乾燥機により一般的な乾繭条件で乾燥した。すなわち、乾燥条件としては、雰囲気の温度を30分間で常温から摂氏110度乃至摂氏120度まで上昇させ、続いて摂氏110度乃至摂氏120度で45分間保持し、その後5時間で摂氏60度まで低下させた。その結果、生繭の元重量に対する乾燥後の繭の重量の百分率である乾燥歩合は、42パーセント乃至43パーセントとなった。
【0032】
(色差評価)
(0031)に記載した生繭の表面と乾燥後の繭の表面を倉敷紡績株式会社製の分光測色機COLOR-7xを用いて測色し、(0028)と同様に両者の色差を算出した。その結果、生繭を基準色(色差0)とすると、乾燥後の繭の色差は2.95であった。この色差は丁度可知差異の2.3を超えており、元の生繭と比較して黄変していることが目視で確認できた。