(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122839
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】射出成形設備
(51)【国際特許分類】
B29C 33/42 20060101AFI20230829BHJP
B29C 45/27 20060101ALI20230829BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20230829BHJP
B29C 45/37 20060101ALI20230829BHJP
B29C 45/20 20060101ALI20230829BHJP
B29C 45/07 20060101ALI20230829BHJP
B29C 33/22 20060101ALI20230829BHJP
B29C 45/24 20060101ALI20230829BHJP
B29C 45/74 20060101ALI20230829BHJP
B29C 45/76 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
B29C33/42
B29C45/27
B29C45/26
B29C45/37
B29C45/20
B29C45/07
B29C33/22
B29C45/24
B29C45/74
B29C45/76
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026579
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】503366841
【氏名又は名称】株式会社アイカムス・ラボ
(71)【出願人】
【識別番号】511164260
【氏名又は名称】センチュリーイノヴェーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 孝
(72)【発明者】
【氏名】吉田 淳史
(72)【発明者】
【氏名】沓沢 順一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 利文
(72)【発明者】
【氏名】川崎 博明
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AG05
4F202AG13
4F202AG23
4F202AH12
4F202AK05
4F202AR08
4F202CA11
4F202CB01
4F202CK12
4F202CL02
4F202CL22
4F202CL38
4F202CS10
4F206AH12
4F206AK05
4F206JC05
4F206JC08
4F206JC09
4F206JD04
4F206JL02
4F206JM01
4F206JM02
4F206JM03
4F206JM04
4F206JM06
4F206JN03
4F206JN08
4F206JN11
4F206JN32
4F206JN35
4F206JQ31
4F206JQ51
4F206JQ57
4F206JQ81
4F206JQ83
4F206JQ90
4F206JT03
4F206JT05
4F206JT32
(57)【要約】
【課題】精度の高い樹脂成形品をより安価に製造する。
【解決手段】成形金型30に設けたキャビティ33に溶融した樹脂を射出することによって軸対称形状の樹脂成形品を成形する射出成形設備であって、成形金型30は、キャビティ33の対称軸に沿ってゲート通路35bが設けられたゲートブロック35を備え、ゲートブロック35においてゲート通路35bの周囲となる部分には、対称軸Cを中心とした環状を成す逃げ凹部35dがキャビティ33に臨んで設けられている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形型に設けたキャビティに溶融した樹脂を射出することによって軸対称形状の樹脂成形品を成形する射出成形設備であって、
前記成形型は、前記キャビティの対称軸に沿ってゲート通路が設けられたゲートブロックを備え、前記ゲートブロックにおいて前記ゲート通路の周囲となる部分には、前記対称軸を中心とした環状を成す逃げ凹部が前記キャビティに臨んで設けられていることを特徴とする射出成形設備。
【請求項2】
前記キャビティには、前記対称軸となる位置にコアピンが設けられ、
前記コアピンの端面には、前記ゲート通路の開口端面よりも細径の円柱状を成し、前記対称軸に沿って前記ゲート通路の内部に進入される挿入ピン部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の射出成形設備。
【請求項3】
前記キャビティに樹脂を射出する射出ユニットは、
内径が漸次減少する複数の溶融通路を有した加熱ブロックと、
前記溶融通路に樹脂を供給するプランジャと、
前記溶融通路を通過する樹脂に前記加熱ブロックを介してジュール熱を与えるヒータと
を有し、前記溶融通路において溶融した樹脂をノズルから射出することを特徴とする請求項1に記載の射出成形設備。
【請求項4】
前記ノズルを下方に向けた状態で前記射出ユニットを搬送し、前記ノズルを前記成形型の受入口に対向して配置する搬送機構を備え、
前記搬送機構による前記射出ユニットの搬送経路には、前記ノズルの先端部から垂れ下がった樹脂を除去する除去機構が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の射出成形設備。
【請求項5】
前記成形型は、開閉機構を介して互いに開閉可能に設けられ、閉じた場合に相互間に前記キャビティが構成される第1型要素
及び第2型要素を備え、
前記開閉機構を駆動するアクチュエータユニットは、
前記開閉機構を介して前記第1型要素及び前記第2型要素を開閉する第1電動モータと、
前記第1電動モータよりも回転速度が小さく、前記第1型要素及び前記第2型要素を閉じた状態に維持する第2電動モータと
を有することを特徴とする請求項1に記載の射出成形設備。
【請求項6】
前記アクチュエータユニットは、前記第2電動モータからの動力を前記開閉機構に対して選択的に伝達する選択機構部を備えることを特徴とする請求項5に記載の射出成形設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車等の軸対称形状を成す樹脂成形品を成形する射出成形設備に関する。
【背景技術】
【0002】
歯車等の軸対称となる樹脂成形品を射出成形する場合には、成形型に設けたキャビティに対して対称軸に沿ってゲート通路を設けるようにしたものがある。この種の射出成形設備では、キャビティに対して溶融樹脂が周方向に均等に射出されるため、精度の高い樹脂成形品を成形するのに好適である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、樹脂成形品において対称軸となる部分は、軸の端面等のように部品を組み立てる上で基準となる場合が多い。このため、ゲート通路部分に生じたバリを除去する工程が必要となり、製造コストの点では必ずしも好ましいとはいえない。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、精度の高い樹脂成形品をより安価に製造することのできる射出成形設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る射出成形設備は、成形型に設けたキャビティに溶融した樹脂を射出することによって軸対称形状の樹脂成形品を成形する射出成形設備であって、前記成形型は、前記キャビティの対称軸に沿ってゲート通路が設けられたゲートブロックを備え、前記ゲートブロックにおいて前記ゲート通路の周囲となる部分には、前記対称軸を中心とした環状を成す逃げ凹部が前記キャビティに臨んで設けられていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、上述した射出成形設備において、前記キャビティには、前記対称軸となる位置にコアピンが設けられ、前記コアピンの端面には、前記ゲート通路の開口端面よりも細径の円柱状を成し、前記対称軸に沿って前記ゲート通路の内部に進入される挿入ピン部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、上述した射出成形設備において、前記キャビティに樹脂を射出する射出ユニットは、内径が漸次減少する複数の溶融通路を有した加熱ブロックと、前記溶融通路に樹脂を供給するプランジャと、前記溶融通路を通過する樹脂に前記加熱ブロックを介してジュール熱を与えるヒータとを有し、前記溶融通路において溶融した樹脂をノズルから射出することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上述した射出成形設備において、前記ノズルを下方に向けた状態で前記射出ユニットを搬送し、前記ノズルを前記成形型の受入口に対向して配置する搬送機構を備え、前記搬送機構による前記射出ユニットの搬送経路には、前記ノズルの先端部から垂れ下がった樹脂を除去する除去機構が設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上述した射出成形設備において、前記成形型は、開閉機構を介して互いに開閉可能に設けられ、閉じた場合に相互間に前記キャビティが構成される第1型要素及び第2型要素を備え、前記開閉機構を駆動するアクチュエータユニットは、前記開閉機構を介して前記第1型要素及び前記第2型要素を開閉する第1電動モータと、前記第1電動モータよりも回転速度が小さく、前記第1型要素及び前記第2型要素を閉じた状態に維持する第2電動モータとを有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上述した射出成形設備において、前記アクチュエータユニットは、前記第2電動モータからの動力を前記開閉機構に対して選択的に伝達する選択機構部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、環状の逃げ凹部によってゲート通路の周囲に環状の突部が形成されることになる。従って、ゲート通路部分に生じたバリがそのままの状態であっても、突部を基準として組み立て等の位置決めを正確に実施することが可能となる。これにより、樹脂成形後にバリを除去する工程を省略することが可能となり、精度の高い樹脂成形品をより安価に製造することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態である射出成形設備の側面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示した射出成形設備を簡略して示す側面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示した射出成形設備において射出ユニットを省略した平面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示した射出成形設備に適用する射出ユニットの構成を簡略的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、
図1に示した射出成形設備に適用する成形型を示すもので、(a)は閉じた状態の断面図、(b)は開いた状態の断面図である。
【
図7】
図7は、
図6に示した成形型の要部を示す拡大断面図である。
【
図8】
図8は、
図6に示した成形型の開閉機構を模式的に示すもので、(a)は成形型が開いた状態の図、(b)は開閉機構を駆動した状態の図、(c)は成形型が閉じた後の型締め状態を示す図である。
【
図9】
図9は、
図1に示した射出成形設備で成形する樹脂成形品の一例を示すもので、(a)は対称軸に沿って見た図、(b)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る射出成形設備の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
図1~
図4は、本発明の実施の形態である射出成形設備を示すものである。ここで例示する射出成形設備は、
図9に示すように、歯車部1aの一端面にボス部1bを有した平歯車(樹脂成形品)1をPOM(ポリアセタール)等の樹脂によって成形するためのものである。本実施の形態で例示する平歯車1は、歯車部1aの外径が30mmで、歯車部1aの一方の端面に円筒状のボス部1bを有したもので、回転軸心(対称軸)Cを中心とした軸対称形状となっている。
図1~
図4に示すように、射出成形設備は、基準となるテーブル10に射出ユニット20及び成形金型(成形型)30を備えている。
【0016】
射出ユニット20は、平歯車1の材料となる樹脂ペレットを溶融して成形金型30に射出するもので、
図5に示すように、シリンダ本体21、加熱ブロック22、ヒータ23、プランジャ24、ノズル25を備えている。シリンダ本体21は、溶融対象となる樹脂ペレットを収容するためのもので、断面が一様の円形となる筒状を成している。加熱ブロック22は、シリンダ本体21の先端部に設けたブロック状部材であり、熱伝導率の大きな金属によって構成してある。この加熱ブロック22には、複数の溶融通路22aが設けてある。溶融通路22aは、加熱ブロック22の基端から先端に向けて内径が漸次減少するテーパ状を成す貫通孔であり、シリンダ本体21の軸心に沿って形成してある。ヒータ23は、通電により発熱して加熱ブロック22を加熱し、溶融通路22aにおいて樹脂ペレットを溶融するもので、加熱ブロック22の周囲を覆うように設けてある。プランジャ24は、アクチュエータ24aの駆動により動作し、シリンダ本体21に収容された樹脂ペレットを順次加熱ブロック22の溶融通路22aに供給するものである。ノズル25は、プランジャ24の駆動により、加熱ブロック22の溶融通路22aで溶融された樹脂を外部に噴射するものである。
【0017】
この射出ユニット20は、テーブル10との間に搬送機構40が設けてあり、搬送機構40の駆動によりノズル25が下方に向いた状態で予め設定した待機位置と、後述する成形金型30との間を移動することが可能である。搬送機構40は、図には明示していないが、テーブル10に対して射出ユニット20が水平方向に沿って移動可能、かつ上下方向に沿って昇降可能となるように、例えば電動モータやエアシリンダを適宜組み合わせることによって構成してある。
【0018】
成形金型30は、
図6、
図7に示すように、射出ユニット20から射出された樹脂によって平歯車1を成形するもので、上金型(第1型要素)31及び下金型(第2型要素)32を備えている。上金型31及び下金型32は、互いに閉じた状態において相互間に平歯車1に対応した形状のキャビティ33を構成するものである。本実施の形態では、ボス部1bが歯車部1aの一方の端面から鉛直に沿って上方に突出するキャビティ33を形成するように上金型31及び下金型32が設けてある。
【0019】
上金型31には、上面に受板34が設けてあるとともに、中心部にゲートブロック35が配設してある。受板34は、上金型31との間にランナー36を構成するものである。ランナー36は、射出ユニット20のノズル25から射出される溶融樹脂を受け入れるとともに、受け入れた溶融樹脂をキャビティ33に供給するための通路である。受板34の上面には、ランナー36の受入口36aが設けてある。ゲートブロック35は、上金型31の中心部に設けた貫通孔31aに嵌合し、下面35aが上金型の下面から下方に臨むように設けたものである。このゲートブロック35には、上下に沿ってゲート通路35bが設けてある。ゲート通路35bは、下方に向けて漸次内径が減少するテーパ状を成すもので、その軸心がキャビティ33においてボス部1bとなる部分の軸心に合致した状態でゲートブロック35に形成してある。ゲート通路35bの上端開口は、受板34のランナー36に接続してある。ゲート通路35bの下端開口は、ボス部1bの外径よりも小さく、かつボス部1bの内径よりも大きい寸法に設定してある。ゲートブロック35の下面35aにおいてゲート通路35bの周囲となる部分には、突出部35c及び逃げ凹部35dが設けてある。突出部35cは、ゲート通路35bの下端開口がゲートブロック35の下面35aよりもわずかに突出した位置となるように下方に突出したものである。逃げ凹部35dは、キャビティ33に臨む位置に設けた環状を成すもので、ゲートブロック35の下面35aにおいて突出部35cの外周となる部分に形成してある。
【0020】
下金型32は、金型基部32a、コアピン37、第1下金型板部32b、第2下金型板部32cを備えて構成したものである。コアピン37は、それぞれ円柱状を成すピン基部37a及び挿入ピン部37bを有して構成したもので、金型基部32aの中心孔に配設してある。ピン基部37aは、平歯車1のボス部1bよりも太径、かつ歯車部1aよりも細径に構成したものである。挿入ピン部37bは、ボス部1bの中心孔1cを形成するためのもので、ピン基部37aの上端において互いに軸心を合致した位置から上方に突出している。挿入ピン部37bの先端部は、金型基部32aの上面よりも上方に突出し、上金型31及び下金型32を互いに閉じた場合にゲート通路35bの内部に進入した状態となる。第1下金型板部32b及び第2下金型板部32cは、それぞれ中心部にキャビティ構成部33a,33bを有した円板状を成すもので、第2下金型板部32cの上面が金型基部32aの上面に一致する状態で互いに重ね合わせて金型基部32aの中心孔に嵌合してある。第1下金型板部32bのキャビティ構成部33aは歯車部1aを形成するもので、第2下金型板部32cのキャビティ構成部33bはボス部1bを形成するものである。すなわち、第1下金型板部32bには、歯車部1aに対応する比較的太径の円柱状を成すキャビティ構成部33aが上下に貫通するように形成してある。第2下金型板部32cには、ボス部1bに対応する比較的細径の円柱状を成すキャビティ構成部33bが上下に貫通するように形成してある。それぞれのキャビティ構成部33a,33bには、それぞれの軸心となる位置にコアピン37の挿入ピン部37bが貫通している。また、下方となる第1下金型板部32bのキャビティ構成部33aには、ピン基部37aの上端部が一部挿入した状態となっている。
【0021】
上金型31を支持する上型板38と下金型32を支持する下型板39との間には開閉機構50が設けてある。開閉機構50は、上型板38及び下型板39を介して上金型31と下金型32とを相対的に上下に移動して開閉するものである。本実施の形態では、
図8に模式的示すように、下型板39に設けたナット部材51にネジ軸52を螺合することによって直動機構が構成している。すなわち、テーブル10に対して下型板39を上下に移動可能に支持させた状態で下型板39のナット部材51にネジ軸52を螺合させ、ネジ軸52の端部にアクチュエータユニット60を連結し、アクチュエータユニット60の駆動によってネジ軸52を適宜方向に回転させることにより、下型板39をテーブル10に対して上下に移動させるようにしている。上型板38については、図示せぬ支持部材によってテーブル10に固定してあり、相対移動することはない。アクチュエータユニット60としては、ネジ軸52に対して直交する方向に2つの入力軸61a,61bを備えた直交型の減速機61と、減速機61の一方の入力軸61aに連結した第1電動モータ62と、電磁クラッチ(選択機構部)63を介して減速機61の他方の入力軸61bに連結した第2電動モータ64とを備えたものを適用している。第1電動モータ62は、回転速度が大きな高回転低トルク型のものである。これに対して第2電動モータ64は、第1電動モータ62に対して回転速度が小さい低回転高トルク型のブレーキ付きギヤードモータである。
【0022】
また、射出成形設備には、射出ユニット20のノズル25から下方に延在するように生成されるコールドスラグを除去するための除去機構70が設けてある。除去機構70は、射出ユニット20が待機位置に配置された状態においてノズル25のコールドスラグを切断する第1除去機構部71と、射出ユニット20が待機位置から成形金型30までを移動する間の搬送力を利用してノズル25のコールドスラグを切断する第2除去機構部72とを備えている。図には明示していないが、第1除去機構部71は、アクチュエータ24aの駆動により2つの可動カッタ71aを互いに近接させることによってコールドスラグを切断するように構成してある。第2除去機構部72は、待機位置と成形金型30との間に水平方向に沿って固定カッタ72aを配置することより構成してある。固定カッタ72aの下方域には、切断したコールドスラグを図示せぬ収容箱に案内する回収シュート73が設けてある。
【0023】
上記のように構成した射出成形設備において平歯車1を射出成形するには、まず、射出ユニット20において原料となる樹脂ペレットを溶融する処理が行われる。すなわち、プランジャ24の駆動によりシリンダ本体21に収容された樹脂ペレットが加熱ブロック22の溶融通路22aに送り出されるとともに、ヒータ23の駆動によるジュール熱によって溶融通路22aの樹脂ペレットが溶融された状態となる。
【0024】
ここで、この射出成形設備では、加熱ブロック22に設けた漸次内径が減少する溶融通路22aにおいてジュール熱を加えることで樹脂ペレットを溶融させるようにしている。従って、樹脂ペレットは、ノズル25に到達するまでの間に低圧の状態でより均一に溶融された状態となる。
【0025】
この間、成形金型30においては、電磁クラッチ63が切断された状態で第1電動モータ62が駆動し、上金型31及び下金型32が互いに閉じた状態となり、その後、電磁クラッチ63が接続状態となることで第2電動モータ64の駆動により上金型31及び下金型32が互いに近接した状態となっている。
【0026】
ここで、この射出成形設備によれば、上金型31及び下金型32を閉じる際に、高回転低トルク型の第1電動モータ62を適用している。このため、上金型31及び下金型32を速い速度で閉じた状態に配置することができ、段取時間の短縮化を図ることができる。しかも、上金型31及び下金型32が閉じた後においては、低回転高トルク型の第2電動モータ64を駆動することによってその状態を維持するようにしているため、上金型31及び下金型32の間に大きな型締め力を加えることが可能となる。
【0027】
射出ユニット20において樹脂ペレットが溶融されると、第1除去機構部71のアクチュエータが駆動し、2つの可動カッタ71aが互いに近接するように動作する。この結果、仮にノズル25の先端部から溶融樹脂が漏出することによってコールドスラグが生成されていたとしても、第1除去機構部71によってこれが切断されることになる。
【0028】
第1除去機構部71が駆動した後においては、搬送機構40が適宜動作することにより、射出ユニット20が成形金型30の上方部に搬送され、その後、下降することによりノズル25がランナー36の受入口36aに押圧された状態となる。ノズル25が受入口36aに押圧された後においては、プランジャ24の駆動によりランナー36を介して溶融樹脂がキャビティ33に充填される。
【0029】
この間、この射出成形設備によれば、射出ユニット20の搬送経路上に第2除去機構部72が設けてある。従って、第1除去機構部71においてコールドスラグを除去した後、仮に成形金型30に搬送されるまでの間にノズル25から溶融樹脂が漏出したとしても、第2除去機構部72の固定カッタ72aを通過する際にこれが切断されて除去されることになる。従って、ランナー36の受入口36aに対しては、コールドスラグが除去され状態のノズル25が押し当てられることになり、ランナー36にコールドスラグが混入することに起因した溶融樹脂の充填不良を招来するおそれがない。加えて、除去機構70を設けたことにより、ノズル25に弁体及びこれを駆動するためのアクチュエータを設ける必要がなくなり、射出ユニット20の製造コストを低減することが可能となる。
【0030】
さらに、上述したように、上金型31及び下金型32は、大きな型締め力によって互いに閉じた状態に維持されている。従って、溶融樹脂を射出する間においても、上金型31と下金型32との隙間が拡大する懸念がなく、互いの間の隙間から溶融樹脂が漏出するおそれもない。またさらに、ゲート通路35bがキャビティ33の軸心となる位置に設けてあるため、軸対称形状となるキャビティ33に対して周方向に均等に溶融樹脂が充填されることになり、精度の高い樹脂成形品を成形するのに好適である。
【0031】
キャビティ33に溶融樹脂が充填された後においては、電磁クラッチ63を切断するとともに、第1電動モータ62を反転させることによって上金型31及び下金型32を開けば、樹脂によって成形された平歯車1を得ることができる。
【0032】
ここで、この射出成形設備によれば、ゲートブロック35の下面35aにおいてゲート通路35bの周囲となる部分に環状の逃げ凹部35dを形成しているため、成形された平歯車1においてボス部1bの端面となる部分には、
図9に示すように、環状の突部1dが設けられることになる。また、ゲートブロック35の下面35aには、逃げ凹部35dとゲート通路35bとの間に突出部35cが設けてある。従って、ボス部1bの端面において環状の突部1dよりも内周側となる部分が環状の窪み部1eとなる。従って、上金型31及び下金型32を開く際にゲート通路35bに残留していた樹脂によってバリ1fが生じた場合にも、このバリ1fが設けられる部分が上述の窪み部1eであり、しかもその周囲に環状の突部1dが設けられているため、バリ1fが突部1dを越えて突出するおそれがない。従って、バリ1fがそのままの状態であっても、ボス部1bの端面の突部1dを基準として組み立て等の位置決めを正確に実施することが可能となる。これにより、樹脂成形後にバリ1fを除去する工程を省略することが可能となり、精度の高い樹脂成形品をより安価に製造することができるようになる。
【0033】
なお、上述した実施の形態では、樹脂成形品としてボス部1bを有した平歯車1を例示しているが、軸対称形状のものであればこれに限定されない。
【符号の説明】
【0034】
1 平歯車
20 射出ユニット
22 加熱ブロック
23 ヒータ
24 プランジャ
25 ノズル
30 成形金型
31 上金型
32 下金型
33 キャビティ
35 ゲートブロック
35b ゲート通路
35d 逃げ凹部
36a 受入口
37 コアピン
37b 挿入ピン部
40 搬送機構
50 開閉機構
51 ナット部材
52 ネジ軸
60 アクチュエータユニット
61 減速機
61a,61b 入力軸
62 第1電動モータ
63 電磁クラッチ
64 第2電動モータ
70 除去機構
71 第1除去機構部
71a 可動カッタ
72 第2除去機構部
72a 固定カッタ
73 回収シュート
C 回転軸心