(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122852
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】クロマトグラフ分析装置及びクロマトグラフ分析用プログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 30/86 20060101AFI20230829BHJP
G01N 27/62 20210101ALI20230829BHJP
【FI】
G01N30/86 D
G01N27/62 C
G01N27/62 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026603
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝山 祐治
(72)【発明者】
【氏名】松尾 桐子
(72)【発明者】
【氏名】丸本 理貴人
【テーマコード(参考)】
2G041
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041EA04
2G041EA06
2G041GA03
2G041GA06
2G041GA09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】多検体多成分の分析結果を、ユーザーに分かり易く且つ効率的に確認可能な状態で提供する。
【解決手段】試料毎に、測定データに基いて、複数種類の化合物についての測定結果及び解析結果である複数種類の数値情報を求める解析処理部(22)と、ユーザー操作に応じて、複数種類の数値情報のうちの2種類以上について各々、閾値を基準とするフラグを付与する条件を設定するフラグ条件設定部230と、ユーザー操作に応じて、2種類以上の数値情報に対するフラグの有無の組合せをそれぞれ判定条件とする複数のカテゴリーを設定する合否条件設定部231と、複数のカテゴリーの判定条件に従ってフラグの有無をチェックし、複数のカテゴリーに該当する試料と化合物の組合せを特定する合否判定部232と、その特定された組合せを、該当するカテゴリーに対応付けて又は該カテゴリーが視覚的に識別可能な態様で表示する表示処理部24を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の試料についてそれぞれ複数種類の化合物を対象とする測定を行うクロマトグラフ分析装置であって、
試料毎に、測定により得られたデータに基いて、複数種類の化合物についての測定結果及び該測定結果を用いた解析結果である複数種類の数値情報を求める解析処理部と、
ユーザーによる操作に応じて、前記複数種類の数値情報のうちの2種類以上の数値情報についてそれぞれ、閾値を基準とするフラグを付与する条件を設定するフラグ条件設定部と、
ユーザーによる操作に応じて、前記2種類以上の数値情報に対するフラグの有無の組合せをそれぞれ判定条件とする複数の判定結果カテゴリーを設定する判定結果カテゴリー設定部と、
前記解析処理部により得られた試料毎及び化合物毎の複数種類の数値情報について、前記フラグ条件設定部において設定されたフラグの条件に該当するか否かをチェックして該当する場合にフラグを付与するとともに、前記判定結果カテゴリー設定部において設定された複数の判定結果カテゴリーの判定条件に従ってフラグの有無をチェックし、該複数の判定結果カテゴリーに該当する試料と化合物の組合せを特定する判定処理部と、
前記判定処理部により特定された試料と化合物の組合せを、該組合せが該当する判定結果カテゴリーに対応付けて又は該判定結果カテゴリーが視覚的に識別可能な態様で表示する表示処理部と、
を備えるクロマトグラフ分析装置。
【請求項2】
前記判定結果カテゴリーは複数であり、合格又は不合格の少なくともいずれか一方である判定結果カテゴリーと、それ以外の判定結果カテゴリーとを含む、請求項1に記載のクロマトグラフ分析装置。
【請求項3】
前記複数の判定結果カテゴリーにユーザーにより指定された色を対応付け、前記表示処理部は、前記試料と化合物との組合せに対して前記判定結果カテゴリーに対応付けられた色付けによる表示を行う、請求項2に記載のクロマトグラフ分析装置。
【請求項4】
複数の試料についてそれぞれ複数種類の化合物を対象とする測定を行うクロマトグラフ分析装置に用いられるデータ処理用のプログラムであって、コンピューターに、
試料毎に、測定により得られたデータに基いて、複数種類の化合物についての測定結果及び該測定結果を用いた解析結果である複数種類の数値情報を求める解析処理ステップと、
ユーザーによる操作に応じて、前記複数種類の数値情報のうちの2種類以上の数値情報についてそれぞれ、閾値を基準とするフラグを設定するフラグ設定ステップと、
ユーザーによる操作に応じて、前記2種類以上の数値情報に対するフラグの有無の組合せをそれぞれ判定条件とする複数の判定結果カテゴリーを設定する判定結果カテゴリー設定ステップと、
前記解析処理ステップにおいて得られた試料毎及び化合物毎の複数種類の数値情報について、前記フラグ設定ステップにおいて設定されたフラグに該当するか否かをチェックして該当する場合にフラグを付与するとともに、前記判定結果カテゴリー設定ステップにおいて設定された複数の判定結果カテゴリーの判定条件に従ってフラグの有無をチェックし、該複数の判定結果カテゴリーに該当する試料と化合物の組合せを特定する判定処理ステップと、
前記判定処理ステップにおいて特定された試料と化合物の組合せを、該組合せが該当する判定結果カテゴリーに対応付けて又は該判定結果カテゴリーが視覚的に識別可能な態様で表示部に表示する表示処理ステップと、
を実行させるクロマトグラフ分析用プログラム。
【請求項5】
前記判定結果カテゴリーは複数であり、合格又は不合格の少なくともいずれか一方である判定結果カテゴリーと、それ以外の判定結果カテゴリーとを含む、請求項4に記載のクロマトグラフ分析用プログラム。
【請求項6】
前記複数の判定結果カテゴリーにユーザーにより指定された色を対応付け、前記表示処理ステップでは、前記試料と化合物との組合せに対して前記判定結果カテゴリーに対応付けられた色付けによる表示を行う、請求項4又は5に記載のクロマトグラフ分析用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロマトグラフ分析装置及びクロマトグラフ分析装置に用いられるコンピュータープログラムに関する。ここでいうクロマトグラム分析装置は、液体クロマトグラフ分析装置(LC)、ガスクロマトグラフ分析装置(GC)、液体クロマトグラフ質量分析装置(LC-MS)、ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC-MS)、超臨界流体クロマトグラフ分析装置(SFC)、を含む。
【背景技術】
【0002】
近年、食品中の残留農薬検査や環境水中の汚染物質検査、或いは医薬品開発における薬物動態試験や臨床検査などの様々な分野において、LC-MSやGC-MSを利用した多検体多成分の定量分析が利用されている。一般に、多検体多成分の分析により得られるクロマトグラム等の測定データや、そうした測定データに対する定量解析により得られる定量結果の量はかなり多い。そのため、多検体多成分の測定結果や定量結果をユーザーが確認したり検証したりするための解析作業の効率を向上させるには、簡便な操作で以て、且つ効率良く、しかも見誤りや見逃し等が発生しにくいような態様で測定結果や定量結果を表示することが重要である。
【0003】
こうした要求に応えるためのソフトウェアとして、非特許文献1、2等に記載の多検体定量支援ソフトウェアが製品化されている。非特許文献1、2に開示されているように、この多検体定量支援ソフトウェアでは、全ての試料の定量結果、全ての化合物の定量結果、或いは、全ての試料における全ての化合物の定量結果を集約した2次元テーブル、各試料の化合物毎のクロマトグラム、さらには化合物毎の定量に用いられた検量線などの情報を、一括して画面上に表示することが可能である。
【0004】
また、多検体多成分の分析では、上述したように表示される情報の量の非常に多いため、どの定量結果やピーク検出結果をユーザーが確認すればよいのか分かりにくい。そこで、上述した多検体定量支援ソフトウェアでは、ユーザーにより予め設定された閾値を満たさない定量値等の解析結果や測定結果に、色付けされたフラグを立てた表示を行うことでユーザーに注意を促すフラッギング機能、が搭載されている。例えば非特許文献2には、フラグの基準として、かび臭原因物質の水質基準値を警告濃度値、該水質基準値の1/10の値を注意濃度値として設定し、定量値が水質基準値の1/10を超えた化合物には要注意を表すオレンジ色で以て、また水質基準値を超えた化合物には警告を表す赤色で以て、定量値やクロマトグラムを色付けして明示する例が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「LabSolutions Insight GC/MS & LC/MS用 多検体定量支援ソフトウェア LabSolutions Insight」、[Online]、株式会社島津製作所、[2022年2月1日検索]、インターネット<URL:https://www.an.shimadzu.co.jp/data-net/labsolutions/labsolutions-insight/features.htm>
【非特許文献2】「LabSolutions Insight GCMS用多検体定量支援ソフトウェア」、[Online]、株式会社島津製作所、[2022年2月1日検索]、インターネット<URL:https://www.an.shimadzu.co.jp/gcms/insight.htm>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
多検体多成分の定量分析では測定及び解析の過程で、測定結果や解析結果として、濃度値等の定量値のほかに、化合物毎のピーク面積値、SN比、シンメトリー係数(ピークの対称性を示す係数)、検量線の決定係数(R2)、保持時間差(実測の保持時間と標準的な保持時間との差)など、様々な種類の数値情報が得られる。上述した従来の多検体定量支援ソフトウェアでは、それら異なる種類の数値情報に対しそれぞれ閾値を定めておき、得られた数値が該閾値を超えた場合にフラグを立てることが可能である。
【0007】
しかしながら、例えば或る試料の或る化合物に対して互いに異なる複数種類の数値情報についてのフラグが立っていた場合、熟練した分析者であってもその結果を適切に解釈するのは難しい。何故なら、フラグが立つ要因はその数値情報の種類によって様々であり、単に試料に含まれる量が多過ぎる又は少な過ぎるという以外に、測定条件が適切でない、装置状態が適切でない、検量線作成のための標準試料が適切でない、などの様々な可能性が考えられるからである。そのため、例えば或る試料の或る化合物における或る数値情報についてフラグが立っていた場合であっても、それによってその試料が即座に問題があると判断し得るとは限らず、その結果を機械的に判断することは困難である。
【0008】
即ち、従来のフラッギング機能は、特定の種類の数値情報が閾値を超えているか否かをユーザーが一目で確認するのには適しているものの、複数種類の数値情報に基いて、例えば試料の良否を判断したり、分析者による詳細な検討を要する試料を選別したりするには必ずしも適していなかった。
【0009】
一方で、多検体多成分の定量分析は、試料のスクリーニングなどに利用される場合も多く、そうした目的においては、専門知識を有さないオペレーターが機械的に、不良である可能性の高い試料を抽出したり、技術者による詳細な確認を要する試料を抽出したりしたいという要望が強い。こうした要望に対し上記の従来の多検体定量支援ソフトウェアは、必ずしも十分に対応することが難しかった。
【0010】
本発明はこうした課題に鑑みて成されたものであり、その主たる目的は、測定及び解析の過程で得られる様々な数値情報を的確に且つ柔軟に利用して、多検体多成分の分析結果の中でユーザーによる確認を要するものや明らかに異常なものなどを、ユーザーに分かり易く且つ効率的に確認可能な状態で提供することができるクロマトグラフ分析装置、及びクロマトグラフ分析のためのコンピュータープログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために成された本発明に係るクロマトグラフ分析装置の一態様は、複数の試料についてそれぞれ複数種類の化合物を対象とする測定を行うクロマトグラフ分析装置であって、
試料毎に、測定により得られたデータに基いて、複数種類の化合物についての測定結果及び該測定結果を用いた解析結果である複数種類の数値情報を求める解析処理部と、
ユーザーによる操作に応じて、前記複数種類の数値情報のうちの2種類以上の数値情報についてそれぞれ、閾値を基準とするフラグを付与する条件を設定するフラグ条件設定部と、
ユーザーによる操作に応じて、前記2種類以上の数値情報に対するフラグの有無の組合せをそれぞれ判定条件とする複数の判定結果カテゴリーを設定する判定結果カテゴリー設定部と、
前記解析処理部により得られた試料毎及び化合物毎の複数種類の数値情報について、前記フラグ条件設定部において設定されたフラグの条件に該当するか否かをチェックして該当する場合にフラグを付与するとともに、前記判定結果カテゴリー設定部において設定された複数の判定結果カテゴリーの判定条件に従ってフラグの有無をチェックし、該複数の判定結果カテゴリーに該当する試料と化合物の組合せを特定する判定処理部と、
前記判定処理部により特定された試料と化合物の組合せを、該組合せが該当する判定結果カテゴリーに対応付けて又は該判定結果カテゴリーが視覚的に識別可能な態様で表示する表示処理部と、
を備える。
【0012】
上記課題を解決するために成された本発明に係るクロマトグラフ分析用プログラムの一態様は、複数の試料についてそれぞれ複数種類の化合物を対象とする測定を行うクロマトグラフ分析装置に用いられるデータ処理用のプログラムであって、コンピューターに、
試料毎に、測定により得られたデータに基いて、複数種類の化合物についての測定結果及び該測定結果を用いた解析結果である複数種類の数値情報を求める解析処理ステップと、
ユーザーによる操作に応じて、前記複数種類の数値情報のうちの2種類以上の数値情報についてそれぞれ、閾値を基準とするフラグを付与する条件を設定するフラグ条件設定ステップと、
ユーザーによる操作に応じて、前記2種類以上の数値情報に対するフラグの有無の組合せをそれぞれ判定条件とする複数の判定結果カテゴリーを設定する判定結果カテゴリー設定ステップと、
前記解析処理ステップにおいて得られた試料毎及び化合物毎の複数種類の数値情報について、前記フラグ条件設定ステップにおいて設定されたフラグの条件に該当するか否かをチェックして該当する場合にフラグを付与するとともに、前記判定結果カテゴリー設定ステップにおいて設定された複数の判定結果カテゴリーの判定条件に従ってフラグの有無をチェックし、該複数の判定結果カテゴリーに該当する試料と化合物の組合せを特定する判定処理ステップと、
前記判定処理ステップにおいて特定された試料と化合物の組合せを、該組合せが該当する判定結果カテゴリーに対応付けて又は該判定結果カテゴリーが視覚的に識別可能な態様で表示部に表示する表示処理ステップと、
として動作させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るクロマトグラフ分析装置及びクロマトグラフ分析用プログラムの上記態様では、異なる種類の数値情報がそれぞれ閾値を超えている又は下回っている場合に付与されるフラグを自由に組み合わせることで、試料と化合物との組合せ毎に、例えば、「合格」、「不合格」、「要確認」などの判定結果カテゴリーのいずれかに入るのか、或いは入らないのかを判定することができる。そして、例えば定量結果の一覧表や試料毎及び化合物毎のクロマトグラム表示において、そうした判定結果カテゴリーに入る、つまりは「合格」である又は「不合格」である試料と化合物との組合せを、視覚的にユーザーに分かり易く提示することができる。
【0014】
このようにして本発明に係るクロマトグラフ分析装置及びクロマトグラフ分析用プログラムの上記態様によれば、ユーザーは、多検体多成分の分析結果の中で確認を要するものや明らかに異常なもの、明らかに正常であるものなどを、効率良く且つ見落とし等のミス無く把握することができる。また、専門的な知識を有する者が適切に判定結果カテゴリーやその判定条件等を定めておきさえすれば、そうした知識を有さないオペレーターであっても定量結果の解析作業に当たることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態であるLC-MSシステムの概略構成図。
【
図2】本実施形態のLC-MSシステムにおける定量結果に基く合否判定処理の手順の一例を示すフローチャート。
【
図3】本実施形態のLC-MSシステムにおけるフラグ条件設定画面の一例を示す図。
【
図4】本実施形態のLC-MSシステムにおける合否条件設定画面の一例を示す図。
【
図5】本実施形態のLC-MSシステムにおける合否条件設定画面で条件設定をした状態を示す図。
【
図6】本実施形態のLC-MSシステムにおける合否判定結果のカラーバー設定画面の一例を示す図。
【
図7】本実施形態のLC-MSシステムにおける一つの試料の定量結果一覧テーブルの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るクロマトグラフ分析装置の一実施形態であるLC-MSシステムについて、添付図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本実施形態のLC-MSシステムの概略構成図である。
このLC-MSシステムは、測定部1と、データ処理部2と、操作部3と、表示部4と、を含む。
【0018】
測定部1は、予め用意された多数の試料を所定の順序で選択する機能を有するオートサンプラー10と、試料に含まれる化合物を時間的に分離する液体クロマトグラフ部(LC部)11と、化合物をイオン化して検出する質量分析部(MS部)12と、を含む。なお、ここでは、MS部12はシングルタイプの四重極型質量分析装置として説明するが、トリプル四重極型質量分析装置又は四重極-飛行時間型質量分析装置などのタンデム型質量分析装置を用いることもできる。
【0019】
データ処理部2は、機能ブロックとして、データ格納部20、クロマトグラム作成部21、定量解析部22、解析作業支援部23、表示処理部24、を含む。解析作業支援部23は、下位の機能ブロックとして、フラグ条件設定部230、合否条件設定部231、合否判定部232、解析結果テーブル作成部233、を含む。
【0020】
データ処理部2は、CPU、RAM、ROMなどを含んで構成されるパーソナルコンピューターをハードウェアとし、該コンピューターにインストールされた専用のデータ処理ソフトウェア(コンピュータープログラム)を該コンピューター上で実行することによりその機能の少なくとも一部を実現する構成とすることができる。
【0021】
上記コンピュータープログラムは、例えば、CD-ROM、DVD-ROM、メモリーカード、USBメモリー(ドングル)などの、コンピューターが読み取り可能である非一時的な記録媒体に格納されてユーザーに提供されるものとすることができる。また、上記プログラムは、インターネットなどの通信回線を介したデータ転送の形式で、ユーザーに提供されるようにすることもできる。さらにまた、上記プログラムは、ユーザーがシステムを購入する時点で、システムの一部であるコンピューター(厳密にはコンピューターの一部である記憶装置)にプリインストールしておくこともできる。
【0022】
まず、本実施形態のLC-MSシステムにおいて多検体多成分の定量分析を実施する際の、測定部1における測定動作を概略的に説明する。この場合、測定対象である複数の(通常はかなり多数の)化合物は予め決まっており、その化合物毎に保持時間と測定対象イオンの質量電荷比m/zが既知である、つまりそれらの情報は予め与えられる。
【0023】
オートサンプラー10には多数の試料(検体)が装填され、図示しない制御部の制御の下で、オートサンプラー10は試料を所定の順番で選択し、選択した試料をLC部11に送る。図示しないが、LC部11では、送液ポンプが略一定流速で移動相をカラムに送給し、インジェクターは所定のタイミングで該移動相中に所定量の試料を注入する。注入された試料は移動相の流れに乗ってカラムへ導入され、カラムを通過する間に試料中の各化合物は時間的に分離される。
【0024】
カラム出口から出た溶出液はMS部12に導入される。図示しないが、MS部12では、イオン源が溶出液中の化合物をイオン化する。生成されたイオンは四重極マスフィルターでm/z値に応じて分離され、特定のm/z値を有するイオンが選択されてイオン検出器により検出される。イオン検出器による検出信号はデジタル信号に変換されてデータ処理部2に送られ、データ格納部20に保存される。
【0025】
多成分の定量分析の際に、MS部12において四重極マスフィルターは、目的の化合物がMS部12に導入される保持時間付近の所定の時間範囲で、該目的化合物に対応するm/z値を有するイオンを選択的に通過させるように駆動される。即ち、多数の目的化合物のそれぞれについて、各目的化合物に対応するイオンに対する選択イオンモニタリング(SIM)測定が実行される。そして、一つの試料に対する所定の測定時間範囲のLC/MS測定が終了すると、オートサンプラー10は次の試料を選択してLC部11に送り、LC部11及びMS部12は上記と同様のLC/MS測定を繰り返す。なお、MS部12としてタンデム型質量分析装置が用いられる場合には、SIM測定ではなく目的化合物に対応する多重反応モニタリング(MRM)トランジションを対象とするMRM測定を実行すればよい。
【0026】
このようにして、データ格納部20には、試料毎に、多数の目的化合物に対応する保持時間付近の所定時間範囲における、特定のm/z値を有するイオンの強度の時間変化を示す測定データ、つまりは抽出イオンクロマトグラム(EIC)を構成する測定データが格納される。この測定データが目的化合物の定量計算を行うためのデータである。
【0027】
次に、データ処理部2において実施される多検体多成分の定量解析について説明する。
データ処理部2においてクロマトグラム作成部21は、データ格納部20から各試料に対応する上記測定データを読み出し、目的化合物毎に抽出イオンクロマトグラムを作成する。或る目的化合物が試料に含まれる場合、その目的化合物に対応する抽出イオンクロマトグラムにはピークが現れる。定量解析部22は、各抽出イオンクロマトグラムに対してピーク検出処理を行い、ピークが検出された場合には、ピーク面積(又はピーク高さ)を算出する。このとき、ピークのピークトップ位置に対応する実測の保持時間、ピーク波形の対称性を示すシンメトリー係数などの数値情報も併せて算出される。定量解析部22は、標準試料を分析することで作成された検量線を参照して、目的化合物毎にピーク面積値から濃度値を算出する。これにより、試料毎に、各目的化合物についての濃度値が定量値として求まる。
【0028】
定量解析部22は、目的化合物毎に算出された濃度値やその過程で求まったピーク面積値、実測の保持時間、シンメトリー係数などの各種の数値情報を、測定データに対応付けて又は測定データと同じファイル若しくはフォルダに格納したうえでデータ格納部20に保存する。なお、定量解析部22による定量解析処理は、多数の試料についての全ての測定が終了したあとにバッチ的に実行されてもよいし、多数の試料のうちの一部の試料の測定が終了した時点で(つまり一連の測定中に)逐次的に実行されてもよい。
【0029】
いずれにしても、多検体多成分の定量解析が終了すると、データ格納部20には多数の試料に対する大量の測定データや定量結果等が格納された状態となる。この状態で解析作業支援部23が中心となって実施される、特徴的な解析処理について、
図2~
図7を参照しつつ説明する。
【0030】
図2は、本実施形態のLC-MSシステムにおける合否判定処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図3はフラグ条件設定画面の一例を示す図、
図4は合否条件設定画面の一例を示す図、
図5は合否条件設定画面で条件設定をした状態を示す図、
図6は合否判定結果のカラーバー設定画面の一例を示す図、
図7は一つの試料の定量結果一覧テーブルの一例を示す図である。
【0031】
ユーザーが操作部3により所定の操作を行うと、フラグ条件設定部230は
図3に例示するようなフラグ設定画面5を、表示処理部24を通して表示部4の画面上に表示する。
図3に示すように、フラグ設定画面5には、測定対象である化合物の一覧を示す化合物テーブル50が配置されている。この化合物テーブル50には、化合物毎に、化合物名、測定対象のm/z値、標準的な保持時間が示され、さらにフラグを設定可能である項目(測定結果や解析結果である数値情報)が横方向に配列されている。
【0032】
フラグを設定可能である項目としては、例えば、濃度値、ピーク面積値、ピーク高さ値、SN比、ピークのシンメトリー係数、保持時間差、検量線の決定係数(R2)、濃度に関する所定の設定値からのずれの程度を示す正確さ%、複数のm/z値におけるイオン強度の比、などのうちの複数とすることができる。ここでは主たる目的が定量分析であるため、最も重要な数値情報である濃度値については、濃度上限値と濃度下限値のそれぞれについて、ユーザーによる確認を促すことを目的とする「注意」と、濃度自体やその計算過程又は測定過程で重大な問題がある可能性を示す「警告」の2段階のフラグを設けている。つまり、濃度に関しては、「濃度上限値(注意)」、「濃度上限値(警告)」、「濃度下限値(注意)」、「濃度下限値(警告)」の四つのフラグがあり、各フラグに対して設定される閾値に基いて、濃度値は五つのレベル(一つはフラグ無し)に分類され得る。
【0033】
ここでは、フラグはサンプルタイプ毎に、全ての化合物に対して設定することが可能である。サンプルタイプは、未知試料、標準試料など、試料の種別を示すものであり、
図3に示したフラグ設定画面3ではタブ切替えによりサンプルタイプを指定することができる。ユーザーが操作部3により「編集」ボタン53をクリック操作すると、各項目の閾値欄51への入力が可能となる。そこで、ユーザーは化合物毎に適宜に閾値を入力又は修正することにより、フラグを付与する項目とそのフラグを付与する条件(閾値)を設定する(ステップS1)。
【0034】
図3の例では、化合物名がaaa、…、hhhである7個の化合物に対していずれも濃度下限値(警告)フラグが設定されており、その閾値はいずれも2.5である。ユーザーはそれ以外の項目のフラグも適宜に設定することができる。このようなフラグの設定のやり方は、上述した多検体定量ソフトウェアを利用した従来のLC-MSでも同様である。
【0035】
所望のフラグを全て設定したならば、ユーザーは操作部3により、フラグ設定画面50上の「合否条件」ボタン52をクリック操作する。この操作を受けて合否条件設定部231は、
図4に例示するような合否条件設定画面6を表示部4に表示する。合否条件設定画面6には、合否条件設定テーブル60と、合否判定結果出力条件設定部61と、が配置されている。合否条件設定テーブル60には、その時点で設定されているフラグの種類が縦方向に示され、その各フラグについて、「不合格」と「要確認」という二つの判定結果カテゴリーにおける判定条件に加えるか否かを選択するためのチェックボックスが設けられている。
【0036】
通常、「不合格」という判定結果カテゴリーは、データに異常があると想定される場合のものであり、例えば、測定目的に対してその試料の定量結果に問題がある場合(健康診断を目的としてメタボリックシンドロームの基準値を超えるマーカー成分が検出された場合など)、試料について得られたデータに基く信号処理や計算に問題がある場合(シンメトリー係数が閾値を上回っている場合など)、試料に対する測定自体に問題がある場合(SN比が閾値を下回っている、保持時間が大きくずれている、ピークが検出できない場合など)などを要因とする判定結果である。
【0037】
また、「要確認」という判定結果カテゴリーは「不合格」ではないもののデータに問題がある可能性がある場合の判定結果である。例えば、濃度値が閾値を大きく下回り且つ保持時間も設定値から大きくずれていれば、高い確度で「不合格」であると推定されるが、濃度値が閾値を下回っていても保持時間が正しければ、測定は正しく実施されている可能性があり、問題があるか否かはクロマトグラムの波形を確認しないと判断しにくい。そこで、そうした場合には「要確認」という判定結果が有効である。また、たとえフラグが立っていたとしても、「不合格」及び「要確認」に該当しない結果は全て「合格」という判定結果カテゴリーに振り分けることができる。
【0038】
本例では、「不合格」は指定された全てのフラグが立っている(つまりは論理積である)ことを条件とした判断であり、「要確認」は指定されたフラグのうちの少なくとも一つが立っている(つまりは論理和である)ことを条件とした判断であるが、これは適宜に変更可能である。但し、全てのフラグが立っていることを判断の条件とする場合、同じ方向性の(上限値であれば上の方向、下限値であれば下の方向)警告と注意のフラグを同時に条件として定めることは許容されない。つまり、例えば濃度上限値(警告)フラグと濃度上限値(注意)フラグとの両方を指定することはできない。これは、同方向性の複数のフラグが同時に付与されることはないためである。
【0039】
ユーザーは、合否条件設定画面6上で、「不合格」、「要確認」のそれぞれ、又は一方についてチェックボックスにチェックマークを入れる操作を行うことで、判断条件とするフラグを選択する(ステップS2)。
図5は判断の条件としてフラグを選択した例である。ここでは、「濃度上限値(警告)」フラグと「シンメトリー係数」フラグの両方が立っていることを条件として「不合格」と判断する。また、「濃度下限値(注意)」フラグ、「濃度上限値(注意)」フラグ、又は「シンメトリー係数」フラグのいずれか一つが立っていることを条件として「要確認」と判断する。
【0040】
次に、ユーザーは、合否条件設定画面6上で合否判定結果の出力(表示)に関する条件を設定する(ステップS3)。具体的には、標準的に、「不合格」、「要確認」、及び「合格」との判定結果に対してはそれぞれ、「fail」、「Inconclusive」、「Pass」との文字が出力されるように設定されているが、それ以外の文字で出力したい場合、ユーザーは、合否判定結果出力条件設定部61における上三つのチェックボックスの一又は複数にチェックマークを入れ、出力させたい文字列を入力する。また、判定結果を文字で示さないオプションを設けることもできる。
【0041】
また、判定結果を文字だけでなく色でも表示したい場合には、ユーザーは「判定カラーバーを表示する」のチェックボックスにチェックマークを入れる。そのうえで、所定の操作を行うと、合否条件設定部231は、
図6に例示するような表示色選択画面7を表示部4に表示する。この画面内の「不合格」、「要確認」、及び「合格」との判定結果に対する色選択欄71において、それぞれ使用する色を選択することができる。選択したあとにユーザーが「OK」ボタン72をクリック操作すると、選択した色が登録される。また、合否条件設定画面6上でユーザーが「OK」ボタン62をクリック操作すると、その時点で設定されている合否条件が登録される。
【0042】
上述のようにしてフラグの条件設定及び合否条件の設定がなされている状態で、ユーザーが操作部3により所定の操作を行うと、合否判定部232は、上述したように登録されたフラグの設定条件に従い、データ格納部20に保存されている測定結果や解析結果である数値情報を判定することで、その設定条件に該当する数値情報にフラグを付与する。さらに、合否判定部232は、上述したように登録された合否条件に従いフラグの有無を調べることにより、「不合格」及び「要確認」にそれぞれ該当する試料と化合物との組合せを特定する。また、それ以外の試料と化合物との組合せを「合格」であると判定する(ステップS4)。
【0043】
解析結果テーブル作成部233は、試料毎に、全ての化合物にそれぞれ対応する解析結果や測定結果である数値情報を列挙したテーブル、化合物毎に、全ての試料にそれぞれ対応する解析結果や測定結果である数値情報を列挙したテーブル、或いは、全ての試料と全ての化合物との組合せにそれぞれ対応して一つの解析結果若しくは測定結果である数値情報を配置したテーブルなどを作成する。その際に、上述したように付与されたフラグの情報、及びフラグに基く合否判定結果を示す欄をテーブル中に設ける。表示処理部24は、作成された定量結果一覧テーブルを含む解析結果画面を表示部4に表示する(ステップS5)。
【0044】
定量結果一覧テーブルを含む解析結果画面には、該テーブルのほか、例えば、特定の試料における全ての又は一部の化合物に対応する抽出イオンクロマトグラムのピーク波形や、濃度算出のために用いられた検量線などの他の情報を、併せて表示することができる。
【0045】
図7は、一つの試料について、化合物毎の数値情報を列挙したテーブルの一例である。
図7に示した定量結果一覧テーブルにおいて、フラグが設定されている化合物には「フラグ」の列にフラグマークが表示され、「フラグID」の列にそのフラグの種別が記号で示されている。「RT(実測)」及び「濃度」の列には、各化合物に対応する実測の保持時間と濃度値が示されている。そして、「フラグ 合否結果」の列には、「合格(Pass)」、「不合格(fail)」、「要確認(Inconclusive)」のいずれかの文字が表示され、さらに判定カラーバーで指定されている色の矩形状のマークが表示される。さらに、不合格と判定された化合物cccにおいて不合格の原因となったフラグが付与されている数値情報、この例では濃度値の背景は、「不合格」の判定結果に対応する表示色で塗り潰されている。
【0046】
上述したように、本実施形態のLC-MSシステムでは、定量結果一覧テーブルにおいて合否判定結果は試料及び化合物に対応して個別に表示されるので、ユーザーはいずれの試料のいずれの化合物が不合格であるのか、或いは、要確認であるのかを一目で把握することができる。従って、例えば、専門的な知識を有さないオペレーターであっても、不合格である試料のみを抽出する作業を行ったり、要確認である試料と化合物との組合せを抽出して専門的な知識を有する他の担当者へ回送したりすることができる。
【0047】
また本実施形態のLC-MSシステムでは、「不合格」、「要確認」、「合格」などのそれぞれ異なる判定結果カテゴリーに対し、異なる組合せのフラグの条件を設定することが可能である。そのため、判定結果カテゴリーの内容や目的に応じて、様々な状態を把握することができるという柔軟性と拡張性がある。また、一般に、様々な項目についてフラグを設定していると、フラグが立っている状況を見ても試料に問題があるのか装置や測定条件に問題があるのかを解釈するのが困難である。これに対し、本実施形態のLC-MSシステムでは、複数の種類のフラグについてまとめて判定することができるので、異常や不具合の状況を把握し易くなる。
【0048】
また、「不合格」、「要確認」、「合格」などの判定結果カテゴリー毎にフィルタリングを行うことで、特定の判定結果カテゴリーに含まれる試料や化合物、或いはその組合せのみを表示することもできる。このようにフィルタリングして一部の定量結果のみを表示する場合であっても、そのフィルタリングに直接関連しないフラグの有無を表示することができるため、ユーザーは絞り込まれた結果においてもそのフラグの有無を確認することができる。
【0049】
また、
図7に示すような定量結果一覧テーブルを表示させたあと、再び、フラグ設定画面5に戻ってフラグ付与のための閾値を調整することもできる。その場合、閾値が変更されるとフラグの有無及びそれに基く合否判定結果も変更される。これにより、例えば或る試料中の或る化合物の解析結果が不合格と判定されるように、フラグの付与条件自体を調整することが可能である。
【0050】
なお、本実施形態のLC-MSシステムでは、「不合格」と「要確認」という二つの判定結果カテゴリーについて合否判定条件を定め、それに該当しないものを「合格」にしていたが、この判定結果カテゴリーの名称は適宜に変更することができ、ユーザーが自由に設定可能としてもよい。例えば、残留農薬の検査を目的とした定量分析の場合には、「不合格」ではなく「出荷停止」とする、或いは、健康診断を目的とした定量分析の場合には、「不合格」ではなく「要治療」とする等、その目的に応じた名称とすればよい。
【0051】
また、上記実施形態は本発明をLC-MSに適用したものであるが、本発明がクロマトグラムを取得して該クロマトグラムに基いて定量解析を行うことが可能であるクロマトグラフ装置全般に適用し得ることは明らかである。即ち、本発明はLC-MSのほか、GC-MS、LC、GC、SFCなどに広く適用することが可能である。
【0052】
さらに、上記実施形態や上述した各種の変形例はいずれも本発明の一例であるから、本発明の趣旨の範囲で適宜修正や変更、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは当然である。
【0053】
[種々の態様]
上述した例示的な実施形態が以下の態様の具体例であることは、当業者には明らかである。
【0054】
(第1項)本発明に係るクロマトグラフ分析装置の一態様は、複数の試料についてそれぞれ複数種類の化合物を対象とする測定を行うクロマトグラフ分析装置であって、
試料毎に、測定により得られたデータに基いて、複数種類の化合物についての測定結果及び該測定結果を用いた解析結果である複数種類の数値情報を求める解析処理部と、
ユーザーによる操作に応じて、前記複数種類の数値情報のうちの2種類以上の数値情報についてそれぞれ、閾値を基準とするフラグを付与する条件を設定するフラグ条件設定部と、
ユーザーによる操作に応じて、前記2種類以上の数値情報に対するフラグの有無の組合せをそれぞれ判定条件とする複数の判定結果カテゴリーを設定する判定結果カテゴリー設定部と、
前記解析処理部により得られた試料毎及び化合物毎の複数種類の数値情報について、前記フラグ条件設定部において設定されたフラグの条件に該当するか否かをチェックして該当する場合にフラグを付与するとともに、前記判定結果カテゴリー設定部において設定された複数の判定結果カテゴリーの判定条件に従ってフラグの有無をチェックし、該複数の判定結果カテゴリーに該当する試料と化合物の組合せを特定する判定処理部と、
前記判定処理部により特定された試料と化合物の組合せを、該組合せが該当する判定結果カテゴリーに対応付けて又は該判定結果カテゴリーが視覚的に識別可能な態様で表示する表示処理部と、
を備える。
【0055】
(第4項)また本発明に係るクロマトグラフ分析用プログラムの一態様は、複数の試料についてそれぞれ複数種類の化合物を対象とする測定を行うクロマトグラフ分析装置に用いられるデータ処理用のプログラムであって、コンピューターに、
試料毎に、測定により得られたデータに基いて、複数種類の化合物についての測定結果及び該測定結果を用いた解析結果である複数種類の数値情報を求める解析処理ステップと、
ユーザーによる操作に応じて、前記複数種類の数値情報のうちの2種類以上の数値情報についてそれぞれ、閾値を基準とするフラグを付与する条件を設定するフラグ条件設定ステップと、
ユーザーによる操作に応じて、前記2種類以上の数値情報に対するフラグの有無の組合せをそれぞれ判定条件とする複数の判定結果カテゴリーを設定する判定結果カテゴリー設定ステップと、
前記解析処理ステップにおいて得られた試料毎及び化合物毎の複数種類の数値情報について、前記フラグ条件設定ステップにおいて設定されたフラグの条件に該当するか否かをチェックして該当する場合にフラグを付与するとともに、前記判定結果カテゴリー設定ステップにおいて設定された複数の判定結果カテゴリーの判定条件に従ってフラグの有無をチェックし、該複数の判定結果カテゴリーに該当する試料と化合物の組合せを特定する判定処理ステップと、
前記判定処理ステップにおいて特定された試料と化合物の組合せを、該組合せが該当する判定結果カテゴリーに対応付けて又は該判定結果カテゴリーが視覚的に識別可能な態様で表示部に表示する表示処理ステップと、
として動作させる。
【0056】
第1項に記載のクロマトグラフ分析装置は、液体クロマトグラフ分析装置、ガスクロマトグラフ分析装置、液体クロマトグラフ質量分析装置、ガスクロマトグラフ質量分析装置、超臨界流体クロマトグラフ分析装置、を含む。
【0057】
第1項に記載のクロマトグラフ分析装置及び第4項に記載のクロマトグラフ分析用プログラムでは、異なる種類の数値情報がそれぞれ閾値を超えている又は下回っている場合に付与されるフラグを自由に組み合わせることで、試料と化合物との組合せ毎に、例えば、「合格」、「不合格」、「要確認」などの判定結果カテゴリーのいずれかに入るのか、或いは入らないのかを判定することができる。そして、例えば定量結果の一覧表や試料毎及び化合物毎のクロマトグラム表示において、そうした判定結果カテゴリーに入る、つまりは「合格」である又は「不合格」である試料と化合物との組合せを、視覚的にユーザーに分かり易く提示することができる。
【0058】
このようにして第1項に記載のクロマトグラフ分析装置及び第4項に記載のクロマトグラフ分析用プログラムによれば、ユーザーは、多検体多成分の分析結果の中で確認を要するものや明らかに異常なもの、明らかに正常であるものなどを、効率良く且つ見落とし等のミス無く把握することができる。また、専門的な知識を有する者が適切に判定結果カテゴリーやその判定条件等を定めておきさえすれば、そうした知識を有さないオペレーターであっても定量結果の解析作業に当たることができる。
【0059】
(第2項)第1項に記載のクロマトグラフ分析装置において、前記判定結果カテゴリーは複数であり、合格又は不合格の少なくともいずれか一方である判定結果カテゴリーと、それ以外の判定結果カテゴリーとを含むものとすることができる。
【0060】
(第5項)第4項に記載のクロマトグラフ分析用プログラムにおいて、前記判定結果カテゴリーは複数であり、合格又は不合格の少なくともいずれか一方である判定結果カテゴリーと、それ以外の判定結果カテゴリーとを含むものとすることができる。
【0061】
上記「それ以外の判定結果カテゴリー」とは、例えば、ユーザーに対しクロマトグラム波形や検量線等の数値情報以外の情報の確認を促す指示に対応するものとすることができる。
【0062】
第2項に記載のクロマトグラフ分析装置及び第5項に記載のクロマトグラフ分析用プログラムによれば、例えば合格や不合格の基準とは全く異なる基準で以て、クロマトグラム波形の確認などが必要である試料と化合物との組合せを抽出することができる。
【0063】
(第3項)第1項又は第2項に記載のクロマトグラフ分析装置では、前記複数の判定結果カテゴリーにユーザーにより指定された色を対応付け、前記表示処理部は、前記試料と化合物との組合せに対して前記判定結果カテゴリーに対応付けられた色付けによる表示を行うものとすることができる。
【0064】
(第6項)また第4項又は第5項に記載のクロマトグラフ分析用プログラムでは、前記複数の判定結果カテゴリーにユーザーにより指定された色を対応付け、前記表示処理ステップでは、前記試料と化合物との組合せに対して前記判定結果カテゴリーに対応付けられた色付けによる表示を行うものとすることができる。
【0065】
第3項に記載のクロマトグラフ分析装置及び第6項に記載のクロマトグラフ分析用プログラムによれば、例えば濃度値などの数値が一覧で表示される定量結果テーブル等において合格、不合格、或いは要確認などの判定結果カテゴリーに入る試料や化合物をユーザーが簡単に見つけることができる。
【符号の説明】
【0066】
1…測定部
10…オートサンプラー
11…液体クロマトグラフ部(LC部)
12…質量分析部(MS部)
2…データ処理部
20…データ格納部
21…クロマトグラム作成部
22…定量解析部
23…解析作業支援部
230…フラグ条件設定部
231…合否条件設定部
232…合否判定部
233…解析結果テーブル作成部
24…表示処理部
3…操作部
4…表示部