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特開2023-122855情報処理システム、方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122855
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】情報処理システム、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 20/38 20120101AFI20230829BHJP
【FI】
G06Q20/38 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026606
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】399037405
【氏名又は名称】楽天グループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145838
【弁理士】
【氏名又は名称】畑添 隆人
(74)【代理人】
【識別番号】100103137
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 滋
(74)【代理人】
【識別番号】100216367
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 梨絵
(72)【発明者】
【氏名】ベル マーティー
(72)【発明者】
【氏名】ケイシー ショーン
(72)【発明者】
【氏名】ダウニー ファーガル
(72)【発明者】
【氏名】西宮 甫
(72)【発明者】
【氏名】牟田 将史
【テーマコード(参考)】
5L055
【Fターム(参考)】
5L055AA71
(57)【要約】
【課題】NFTの取引に係る利便性及び柔軟性を向上させることを課題とする。
【解決手段】情報処理システムに、非代替性トークンに紐付けられるコンテンツのデータを含むキーに基づいて生成されたハッシュ値を取得するハッシュ値取得部と、ハッシュ値及び所定の秘密鍵を用いて生成された電子署名とコンテンツのデータを取得する際に参照される資源識別子とを含む、コンテンツのメタデータを生成するメタデータ生成部と、メタデータを一意に示すメタデータ識別子を取得するメタデータ識別子取得部と、メタデータ識別子を含むトークンデータをブロックチェーンに記録することで、メタデータ及びコンテンツが紐づけられた非代替性トークンを発行する、非代替性トークン発行部と、を備えた。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非代替性トークンに紐付けられるコンテンツのデータを含むキーに基づいて生成されたハッシュ値を取得するハッシュ値取得手段と、
前記ハッシュ値及び所定の秘密鍵を用いて生成された電子署名と前記コンテンツのデータを取得する際に参照される資源識別子とを含む、前記コンテンツのメタデータを生成するメタデータ生成手段と、
前記メタデータを一意に示すメタデータ識別子を取得するメタデータ識別子取得手段と、
前記メタデータ識別子を含むトークンデータをブロックチェーンに記録することで、前記メタデータ及び前記コンテンツが紐づけられた非代替性トークンを発行する、非代替性トークン発行手段と、
を備える情報処理システム。
【請求項2】
前記資源識別子は、前記コンテンツを一意に示すコンテンツ識別子を含み、
前記コンテンツのデータがコンテンツ指向型のデータ管理システムに追加されるか否かにかかわらず該データ管理システムのためのコンテンツ識別子生成手順に従って前記コンテンツ識別子を生成するコンテンツ識別子生成手段を更に備える、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記コンテンツ識別子生成手段によって生成された前記コンテンツ識別子に係る前記コンテンツのデータを管理するロケーション指向型のデータ管理手段と、
前記ロケーション指向型のデータ管理手段によって管理されている前記コンテンツのデータを、前記コンテンツ識別子生成手段によって生成された前記コンテンツ識別子を用いてコンテンツ指向型のデータ管理システムに追加するコンテンツデータ追加手段と、
を更に備える請求項2に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記メタデータをコンテンツ指向型のデータ管理システムに追加するメタデータ追加手段を更に備え、
前記メタデータ識別子取得手段は、前記メタデータを前記コンテンツ指向型のデータ管理システムに追加する際に該データ管理システムから発行される識別子を、前記メタデータ識別子として取得する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記非代替性トークン発行手段は、共通の前記メタデータ識別子と互いに異なる付加データとの組み合わせを含む複数のトークンデータを前記ブロックチェーンに記録することで、前記メタデータと前記コンテンツとの一の組み合わせに対して紐づけられた複数の非代替性トークンを発行する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【請求項6】
前記メタデータ生成手段は、前記所定の秘密鍵として前記コンテンツの提供者の秘密鍵を用いる、
請求項1から5のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【請求項7】
前記メタデータ生成手段は、前記ハッシュ値を更に含む前記メタデータを生成する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【請求項8】
前記メタデータ生成手段は、前記非代替性トークンの取引に従って生じるバリューの分配に係る情報を更に含むメタデータを生成する、
請求項1から7のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【請求項9】
前記メタデータ生成手段は、前記分配に係る情報として、前記バリューの分配先を示す情報、該分配先の属性を示す情報、及び該分配先への分配量を算出するための情報、の少なくともいずれかを含むメタデータを生成する、
請求項8に記載の情報処理システム。
【請求項10】
前記情報処理システムのコンピュータは、前記分配に係る情報に基づいて、前記非代替性トークンの取引に従って生じるバリューの分配処理を実行する、
請求項8又は9に記載の情報処理システム。
【請求項11】
前記メタデータ生成手段は、前記コンテンツの提供者の情報、該コンテンツに係る出演者の情報、該コンテンツに係る知的財産権に係るクレジット情報、該コンテンツに係るグループの情報、該コンテンツに係る日時情報、該コンテンツに係るロケーション情報、該コンテンツに係るイベント情報、の少なくともいずれかを更に含むメタデータを生成する、
請求項1から10のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【請求項12】
前記メタデータ生成手段は、前記コンテンツに係るグループ情報及び該グループに所属するメンバー情報を更に含むメタデータを生成する、
請求項1から11のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【請求項13】
前記メタデータ生成手段は、前記メンバーのポジション情報を更に含むメタデータを生成する、
請求項12に記載の情報処理システム。
【請求項14】
前記メタデータ生成手段は、ユーザに前記コンテンツを享受させるために該ユーザの端末が該コンテンツのデータをどのように処理すればよいかを示す情報を更に含むメタデータを生成する、
請求項1から13のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【請求項15】
前記メタデータ生成手段は、一の前記コンテンツについて発行してよい非代替性トークンの数の上限を示す情報を更に含むメタデータを生成する、
請求項1から14のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【請求項16】
コンピュータが、
非代替性トークンに紐付けられるコンテンツのデータを含むキーに基づいて生成されたハッシュ値を取得するハッシュ値取得ステップと、
前記ハッシュ値及び所定の秘密鍵を用いて生成された電子署名と前記コンテンツのデータを取得する際に参照される資源識別子とを含む、前記コンテンツのメタデータを生成するメタデータ生成ステップと、
前記メタデータを一意に示すメタデータ識別子を取得するメタデータ識別子取得ステップと、
前記メタデータ識別子を含むトークンデータをブロックチェーンに記録することで、前記メタデータ及び前記コンテンツが紐づけられた非代替性トークンを発行する、非代替性トークン発行ステップと、
を実行する方法。
【請求項17】
コンピュータに、
非代替性トークンに紐付けられるコンテンツのデータを含むキーに基づいて生成されたハッシュ値を取得するハッシュ値取得ステップと、
前記ハッシュ値及び所定の秘密鍵を用いて生成された電子署名と前記コンテンツのデータを取得する際に参照される資源識別子とを含む、前記コンテンツのメタデータを生成するメタデータ生成ステップと、
前記メタデータを一意に示すメタデータ識別子を取得するメタデータ識別子取得ステップと、
前記メタデータ識別子を含むトークンデータをブロックチェーンに記録することで、前記メタデータ及び前記コンテンツが紐づけられた非代替性トークンを発行する、非代替性トークン発行ステップと、
を実行させるためのプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ブロックチェーン等の分散型台帳に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブロックチェーンを用いて非代替性トークンを生成及び取引する技術が提案されている(非特許文献1及び2を参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】William Entriken, 他3名、「EIP-721: Non-Fungible Token Standard」 https://eips.ethereum.org/EIPS/eip-721
【非特許文献2】Witek Radomski, 他5名、「EIP-1155: Multi Token Standard」 https://eips.ethereum.org/EIPS/eip-1155
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、NFTを生成し且つ取引するための技術では、NFTの対象となるコンテンツの名称を示すデータや、当該コンテンツを参照するためのデータが管理されている。しかし、従来のNFT関連技術における管理手法では、NFTの取引において参照可能な情報は限定的であり、NFTの取引に係る利便性及び柔軟性が低いという課題があった。
【0005】
本開示は、上記した問題に鑑み、NFTの取引に係る利便性及び柔軟性を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一例は、非代替性トークンに紐付けられるコンテンツのデータを含むキーに基づいて生成されたハッシュ値を取得するハッシュ値取得手段と、前記ハッシュ値及び所定の秘密鍵を用いて生成された電子署名と前記コンテンツのデータを取得する際に参照される資源識別子とを含む、前記コンテンツのメタデータを生成するメタデータ生成手段と、前記メタデータを一意に示すメタデータ識別子を取得するメタデータ識別子取得手段と、前記メタデータ識別子を含むトークンデータをブロックチェーンに記録することで、前記メタデータ及び前記コンテンツが紐づけられた非代替性トークンを発行する、非代替性トークン発行手段と、を備える情報処理システムである。
【0007】
本開示は、情報処理装置、システム、コンピュータによって実行される方法又はコンピュータに実行させるプログラムとして把握することが可能である。また、本開示は、そのようなプログラムをコンピュータその他の装置、機械等が読み取り可能な記録媒体に記録したものとしても把握できる。ここで、コンピュータ等が読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラム等の情報を電気的、磁気的、光学的、機械的又は化学的作用によって蓄積し、コンピュータ等から読み取ることができる記録媒体をいう。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、NFTの対象となっているコンテンツデータの管理の利便性及び柔軟性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係るシステムの構成を示す概略図である。
図2】実施形態に係る情報処理装置の機能構成の概略を示す図である。
図3】実施形態に係るNFT発行処理の流れの一例を示す概略図である。
図4】実施形態においてメタデータ及びトークンデータに採用可能な項目の例を示す図である。
図5】実施形態に係るNFTの一次販売処理の流れの一例を示す概略図である。
図6】実施形態に係る定期集計処理の流れの一例を示す概略図である。
図7】実施形態に係る定期送金処理の流れの一例を示す概略図である。
図8】実施形態に係るオンデマンド送金処理の流れの一例を示す概略図である。
図9】実施形態に係るNFTの二次販売処理の流れの一例を示す概略図である。
図10】バリエーションに係る情報処理装置の機能構成の概略を示す図である。
図11】バリエーションに係る情報処理装置の機能構成の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係るシステム、情報処理装置、方法およびプログラムの実施の形態を、図面に基づいて説明する。但し、以下に説明する実施の形態は、実施形態を例示するものであって、本開示に係るシステム、情報処理装置、方法およびプログラムを以下に説明する具体的構成に限定するものではない。実施にあたっては、実施の態様に応じた具体的構成が適宜採用され、また、種々の改良や変形が行われてよい。
【0011】
本実施形態では、本開示に係る技術を、非代替性トークンを生成し、且つ取引するためのシステムのために実施した場合の実施の形態について説明する。但し、本開示は、非代替性トークン関連技術、代替性トークン関連技術、又はブロックチェーン関連技術のために広く用いることが可能であり、本開示の適用対象は、実施形態において示した例に限定されない。
【0012】
非代替性トークン(以下、「NFT」)とは、暗号化トークンの一種であり、量が同じであれば他のトークンによって代替可能な所謂暗号通貨等の代替性トークン(以下、「FT」)と異なり、他のものでは代替出来ない対象の所有者を示すためのトークンである。本実施形態では、NFTと対象との対応関係を保証可能なデータ(例えば、ハッシュ値を含むデータ)が所謂ブロックチェーンに記録されることでNFTが発行及び取引される例について説明する。但し、NFTを発行及び取引するために採用可能な技術は限定されない。
【0013】
従来、商品やサービス等の取引にあたって支払われるべきバリューの量をデータとして帳簿ファイル等に記録し、支払いの履行を確認することが行われている。しかし、このような確認方法は、データの管理に中央集権的なシステムが用いられ、また、データが改ざんされてしまう可能性や、データの管理方法によっては当該取引に参加する一部のユーザからデータを確認できない場合があった。本実施形態に係るシステムでは、上記した問題に鑑み、取引にあたって支払われるべきバリューの量を示すための同量のFTを発行し、当該FTを実際のバリューの移転に従って操作することで、上記課題の全て又は少なくとも一部を解決することとしている。
【0014】
また、従来、NFTを生成し、且つ取引するための技術が種々提案されている。このような技術では、NFTの対象となっているコンテンツデータを参照するために、コンテンツ指向型データ管理システムが用いられ、コンテンツ指向型データ管理システムによって発行された、当該コンテンツデータのハッシュ値を含む資源識別子(例えば、URI)が用いられている。しかし、従来の手法では、データ管理システムにおける資源識別子が直接ブロックチェーンに登録されるため、様々な要求に応えてコンテンツデータの保存場所を移動させること(例えば、ロケーション指向型データ管理システムからコンテンツ指向型データ管理システムへのコンテンツデータの移動)が困難であった。本実施形態に係るシステムでは、上記した問題に鑑み、コンテンツデータの保管場所にかかわらず上記資源識別子を割り当てた上で、上記資源識別子を含むメタデータを生成し、当該メタデータの識別子を含むトークンデータをブロックチェーンに登録することで、上記課題の全て又は少なくとも一部を解決することとしている。
【0015】
<システムの構成>
図1は、本実施形態に係るシステムの構成を示す概略図である。本実施形態に係るシステムは、ネットワークに接続されることで互いに通信可能な情報処理装置1と、複数のユーザ端末9とを備える。また、本実施形態に係るシステムは、第一データ管理システム5、第二データ管理システム6及びブロックチェーン7に接続されている。
【0016】
情報処理装置1は、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)やHDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置14、NIC(Network Interface Card)等の通信ユニット15、等を備えるコンピュータである。但し、情報処理装置1の具体的なハードウェア構成に関しては、実施の態様に応じて適宜省略や置換、追加が可能である。また、情報処理装置1は、単一の筐体からなる装置に限定されない。情報処理装置1は、所謂クラウドや分散コンピューティングの技術等を用いた、複数の装置によって実現されてよい。
【0017】
ユーザ端末9は、ユーザによって使用される端末装置である。ユーザ端末9は、CPU、ROM、RAM、記憶装置、通信ユニット、入力装置、出力装置等(図示は省略する)を備えるコンピュータである。但し、ユーザ端末9の具体的なハードウェア構成に関しては、実施の態様に応じて適宜省略や置換、追加が可能である。また、ユーザ端末9は、単一の筐体からなる装置に限定されない。ユーザ端末9は、所謂クラウドや分散コンピューティングの技術等を用いた、複数の装置によって実現されてよい。ユーザは、これらのユーザ端末9を介して情報処理装置1に接続し、システムの管理、NFT及びFTの管理、マーケットプレイスへの参加、NFTの取引、等を行う。
【0018】
第一データ管理システム5は、NFTに係るコンテンツのデータ(コンテンツの実体としてのデータ。以下、「コンテンツデータ」と称する。)を管理する。本実施形態において、第一データ管理システム5は、所謂ロケーション指向型のデータ管理システムであり、第一データ管理システム5によって管理されるデータは、データが保管されている場所を示す情報(例えば、URLやアドレス、ファイルパス等と称される情報)を指定することによって参照される。より具体的には、本実施形態では、第一データ管理システム5として、Content Delivery Network(CDN)を用いる例について説明する。
【0019】
第二データ管理システム6は、第一データ管理システム5と同様、コンテンツデータを管理する。但し、第二データ管理システム6は、第一データ管理システム5と異なり、所謂コンテンツ指向型のデータ管理システムであり、第二データ管理システム6によって管理されるデータは、データが保管されている場所を問わず、データに付された一意の識別子(例えば、URI、URNやCID等と称される情報)を指定することによって参照される。より具体的には、本実施形態では、第二データ管理システム6として、InterPlanetary File System(IPFS)を用いる例について説明する。
【0020】
ブロックチェーン7は、データを登録することによってNFT及びFTを発行及び取引するために用いられる。本実施形態では、ブロックチェーンとして、所定の管理主体によって管理されるアカウント(例えば、NFTマーケットプレイスの管理者によって発行されるユーザID)を有するユーザのみが参加可能な、所謂プライベートブロックチェーンが用いられる。このため、本実施形態において、NFTの購入者を含む各ユーザのウォレットは、アカウントに紐付けて管理される。ここで、各ユーザのウォレットの夫々と対応するウォレットアドレスが適宜、生成される。但し、本開示に係る技術を実施するにあたって用いることが可能なブロックチェーンの種類は限定されず、複数の特定の管理主体のそれぞれと対応するアカウントのユーザのみが参加可能なコンソーシアムブロックチェーンが用いられてもよいし、パブリックブロックチェーンが用いられてもよい。また、NFTの発行、NFTの取引、FTの発行及びFTの取引には、同一のブロックチェーンが用いられてもよいし、異なるブロックチェーンが追加で用いられてもよい。
【0021】
図2は、本実施形態に係る情報処理装置1の機能構成の概略を示す図である。情報処理装置1は、記憶装置14に記録されているプログラムがRAM13に読み出され、CPU11によって実行されて情報処理装置1に備えられた各ハードウェアが制御されることで、コンテンツ識別子生成部21、ハッシュ値取得部22、メタデータ生成部23、メタデータ追加部24、メタデータ識別子取得部25、NFT発行部26、コンテンツデータ追加部27、決済受付部31、NFT管理部32、FT発行部33、FT管理部34、バリュー受取確認部35及びポイント付与部36を備える情報処理装置として機能する。なお、本実施形態及び後述する他の実施形態では、情報処理装置1の備える各機能は、汎用プロセッサであるCPU11によって実行されるが、これらの機能の一部又は全部は、1又は複数の専用プロセッサによって実行されてもよい。
【0022】
コンテンツ識別子生成部21は、コンテンツデータがコンテンツ指向型の第二データ管理システム6(IPFS)に追加されるか否かにかかわらず、当該第二データ管理システム6のためのコンテンツ識別子生成手順に従ってコンテンツ識別子を生成する。即ち、本実施形態に係るシステムでは、コンテンツデータがロケーション指向型の第一データ管理システム5によって管理され、少なくとも当初はコンテンツ指向型の第二データ管理システム6によって管理されない場合であっても、IPFSのプロトコルに従って(即ち、コンテンツデータをキーに含むハッシュ演算を行なって)CIDを生成する。
【0023】
ハッシュ値取得部22は、コンテンツデータを含むキーに基づいて生成されたハッシュ値を取得する。ここで取得されるハッシュ値は、情報処理装置1によって算出されてものであってもよいし、その他のコンピュータによって算出されたものであってもよい。また、ハッシュ値の算出にあたっては、コンテンツ識別子生成部21によるCIDの生成とは異なるアルゴリズムが用いられてもよいし、同様のアルゴリズムが用いられたり、CIDと算出処理が共用されたりしてもよい。
【0024】
メタデータ生成部23は、ハッシュ値取得部22によって取得されたハッシュ値と、当該ハッシュ値及び所定の秘密鍵を用いて生成された電子署名と、コンテンツデータを取得する際に参照される資源識別子とを含む、コンテンツのメタデータを生成する。本実施形態において、資源識別子には、コンテンツを一意に示すコンテンツ識別子(CID)を含む統一資源識別子(URI)が用いられる。また、電子署名に用いられる所定の秘密鍵には、コンテンツの提供者の秘密鍵が用いられてよいが、システム管理者の秘密鍵等、その他の秘密鍵が用いられてもよい。
【0025】
メタデータ追加部24は、メタデータを第二データ管理システム6に追加する。ここで、第二データ管理システム6は、上述の通りコンテンツ指向型のデータ管理システム(本実施形態では、IPFS)であるため、メタデータを第二データ管理システム6に追加すると、第二データ管理システム6から当該メタデータを一意に示すメタデータ識別子(CID)が発行される。
【0026】
メタデータ識別子取得部25は、メタデータをコンテンツ指向型の第二データ管理システム6に追加する際に当該第二データ管理システム6から発行される識別子(CID)を、メタデータを一意に示すメタデータ識別子として取得する。
【0027】
NFT発行部26は、メタデータ識別子を含むトークンデータをブロックチェーン7に記録することで、メタデータ及びコンテンツが紐づけられたNFTを発行する(所有者のウォレットに付与する)。本実施形態では、このようにすることで、コンテンツがNFTにメタデータを介して間接的に紐付けられる。但し、トークンデータにコンテンツのハッシュ値やCIDを含めることで、コンテンツがNFTに直接的に紐付けられてもよい。また、本実施形態では、一のコンテンツに紐づけられた複数のNFTが発行されてもよい。この場合、NFT発行部26は、共通のコンテンツ識別子(CID)と互いに異なる付加データ(例えば、シリアル番号)との組み合わせを含む複数のメタデータを生成して生成された複数のメタデータに夫々対応する複数のトークンデータをブロックチェーン7に記録する方法や、共通のメタデータ識別子と互いに異なる付加データ(例えば、シリアル番号)との組み合わせを含む複数のトークンデータをブロックチェーン7に記録する方法等を採用することで、一のコンテンツに紐づけられた複数のNFTを発行する。
【0028】
コンテンツデータ追加部27は、管理者による指示に従って、ロケーション指向型の第一データ管理システム5によって管理されているコンテンツデータを、コンテンツ識別子生成部21によって生成されたコンテンツ識別子を用いてコンテンツ指向型の第二データ管理システム6に追加する。但し、コンテンツデータは、当初から第二データ管理システム6に追加されていてもよい。
【0029】
決済受付部31は、購入者による支払バリューの決済を、当該購入者が有するアカウントに紐付けられた決済手段を介して受け付ける。ここで、購入者は、NFT購入代金支払いのために用いるバリューとして、法定通貨、管理者によって発行されるポイント及び電子マネー等の電子的バリュー、等を用いることができる。NFT購入代金支払いのために用いるバリューの種類は限定されず、例えば、BitcoinやEthereum等の暗号通貨が用いられてもよい。また、本実施形態では、法定通貨を支払う際の決済手段としてクレジットカード、デビットカード、電子マネー等を想定しており、ポイントを支払う際の決済手段としてポイント管理者のポイント管理システムを想定している。但し、決済手段についても本実施形態における例示に限定されず、前払式であるか後払式であるかを問わず、既知の又は将来登場する様々な決済手段が採用されてもよい。例えば、支払いに暗号通貨が用いられる場合には、対象の暗号通貨のためのブロックチェーンネットワークが決済手段として用いられる。
【0030】
NFT管理部32は、ユーザに取得された商品に係るNFTを、当該ユーザのウォレットに移動させる。なお、本実施形態において、商品には、NFTに紐付けられたコンテンツに関する所定の権利や他の特典(ポイントやデータ等)が含まれていてもよい。
【0031】
FT発行部33は、商品が購入されたことを契機として、当該商品の購入者による支払バリュー(例えば、日本円やポイント)の量に対応する量のFT(プライベートなFT)を、ブロックチェーン7上で発行する。ここで発行され、後述するFT管理部34によって管理されるFTは、取引に係るバリューの量を示すために用いられるものであり、取引に係るバリュー自体として用いられるものではない。即ち、商品の購入に他の種類のFTである暗号通貨が用いられた場合であっても、FT発行部33は、支払いバリュー(例えば、BitcoinやEthereum)の量に対応する量のFTを、ブロックチェーン7上で発行する。また、本実施形態では、FT発行部33によって発行されたFTが一旦システム管理者のウォレットに入ってから各ウォレットに移動される例について説明しているが、発行時点でのFTの付与先はシステム管理者のウォレットに限定されず、購入者であるユーザのウォレットに対して発行されてもよい。
【0032】
FT管理部34は、支払バリューの少なくとも一部を受け取るべきユーザのウォレットに、FT発行部33によって発行されたFTのうち当該ユーザが受け取るべきバリューの量に対応する量のFTを付与する(ブロックチェーン7に記録する)。より具体的には、FT管理部34は、発行されたFTのうち第一の部分を、商品の販売者のウォレットに付与し、第二の部分を、システム管理者のウォレットに付与するか又は使用不能状態に遷移させ(所謂暗号通貨コインの焼却(burn)や暗号通貨コインへのフラグ付与)、第三の部分を、商品に係る権利者(IPホルダー。商品を一次販売する企業に限定されず、著作権や肖像権等を有する個人等も含まれる)のウォレットに付与する。ここで、FTのうち第一の部分は、支払バリューのうち販売者が(商品販売の売上として)受け取るべきバリューの量に対応し、第二の部分は、支払バリューのうちシステム管理者が(仲介手数料やシステム利用料として)受け取るべきバリューの量に対応し、第三の部分は、支払バリューのうち権利者が(ロイヤルティとして)受け取るべきバリューの量に対応する。なお、本実施形態において、トークンをウォレットに付与するとは、当該ウォレットと対応するウォレットアドレスに当該トークンを紐付ける、送信する、移動する、または、移転すること等を指す。
【0033】
バリュー受取確認部35は、支払バリューの少なくとも一部を受け取るべきユーザが、当該ユーザのウォレットに付与されたFTに対応する量のバリューを受け取ること、又は受け取ったことを確認する。バリュー受取確認部35によってバリューの受け取り(受け取り予定であってもよいし、受け取り完了であってもよい)が確認されると、FT管理部34は、ユーザのウォレットに付与されたFTのうち、バリュー受取確認部35によって受取が確認されたバリューの量に対応する量のFTを、使用不能状態に遷移させるか又は当該ユーザのウォレット以外のウォレットに移動させる。
【0034】
ポイント付与部36は、購入者が有するアカウントに、商品の購入の際に支払バリューの少なくとも一部として使用可能なポイントを付与する。また、ポイント付与部36は、第一の商品が購入された際に、当該第一の商品とは異なる第二の商品のための支払バリューの少なくとも一部として使用可能なポイントを付与してもよい。例えば、ポイント付与部36は、マーケットプレイスにおいてNFTが購入されると、購入代金に基づいて算出されたポイント(例えば、購入代金の1%に相当するポイントを購入者のアカウントに付与する。ここで付与されたポイントは、他のNFTの購入の際に、購入代金の一部又は全部として使用することが可能であり、決済受付部31は、ユーザのアカウントに紐づけられたポイント残高のうちユーザによって指定された量のポイントを、NFTの購入代金に充当することができる。
【0035】
<処理の流れ>
次に、本実施形態に係るシステムにおいて実行される処理の流れを説明する。なお、以下に説明する処理の具体的な内容及び処理順序は、本開示を実施するための一例である。具体的な処理内容及び処理順序は、本開示の実施の形態に応じて適宜選択されてよい。
【0036】
図3は、本実施形態に係るNFT発行処理の流れの一例を示す概略図である。本概略図に示された処理は、販売されるNFTとの対応付けが予定されるコンテンツデータがシステムに入力されたことを契機として実行される。
【0037】
ステップS101からステップS103では、コンテンツデータに従ってCIDが生成される。情報処理装置1は、コンテンツ提供者からのコンテンツデータの入力を受け付ける(ステップS101)。ここで、本システムによって取り扱い可能なコンテンツの種類及びデータの形式は限定されない。動画や静止画、音響(何らかの音響であればよく、音楽、環境音、人の声、動物の鳴き声、等が例示される。)、三次元モデル、図面、テキスト、ゲーム内オブジェクト(ゲーム内キャラクタやアイテム、カード等)、チケット等、様々な対象をコンテンツとして扱うことが可能であるし、これらのコンテンツをデータとして保持する際のデータ形式も限定されない。
【0038】
コンテンツ提供者からのコンテンツデータが入力されると、コンテンツ識別子生成部21は、当該コンテンツデータがIPFS(第二データ管理システム6)に追加されるか否かにかかわらず、IPFSのプロトコルに従ってCIDを生成する(ステップS102)。このため、当該CIDには、所定のハッシュアルゴリズムを用いて算出された、コンテンツデータのハッシュ値が含まれる。本実施形態では、コンテンツデータが当初はIPFSに追加されず、従来のロケーション指向型の第一データ管理システム5(本実施形態に示す例では、CDN)に保存される例について説明する。本実施形態において、情報処理装置1は、コンテンツデータを、CDNを利用する第一データ管理システムに保存する(ステップS103)。また、ステップS102で生成されたCIDは、コンテンツデータをロケーション指向型の第一データ管理システム5に追加する場合にも、当該ロケーション指向型の第一データ管理システム5において、コンテンツデータを示すインデックス(例えば、ファイル名や検索キー)として用いることが出来る。その後、処理はステップS104へ進む。
【0039】
ステップS104からステップS106では、メタデータが生成される。ハッシュ値取得部22は、ステップS101で得られたコンテンツデータを含むキーに基づいて、所定のハッシュアルゴリズムを用いてハッシュ値を算出する(ステップS104)。そして、メタデータ生成部23は、ステップS104で算出されたハッシュ値とコンテンツ提供者の秘密鍵を用いて電子署名を作成する(ステップS105)。電子署名の処理の詳細については、従来の又は将来開発される電子署名技術が用いられてよいため、説明を省略する。なお、ここで用いられた秘密鍵に対応する公開鍵はマーケットプレイスで公開される。これによって、公開鍵を取得可能な者であれば誰でもコンテンツの正当性を確認することが出来る。電子署名が作成されると、メタデータ生成部23は、ステップS104で算出されたハッシュ値と、ステップS105で生成された電子署名と、コンテンツデータを取得する際に参照されるURI(資源識別子)とを含む、コンテンツのメタデータを生成する(ステップS106)。ここで、メタデータ中のURIには、ステップS102でIPFSのプロトコルに従って生成されたCIDが含まれる。これによって、将来的にコンテンツデータがIPFSに追加された場合であっても、当該URIを指定することでIPFSからコンテンツデータを取得することが可能となる。その後、処理はステップS107へ進む。
【0040】
ステップS107及びステップS108では、メタデータが保存される。メタデータ追加部24は、ステップS106までの処理で生成されたメタデータを、IPFSに追加する(ステップS107)。IPFSでは、データがアップロードされると、所定サイズよりも大きいデータは分割され(chunking)、追加されるデータ(ここでは、メタデータ)をキーとして求められたハッシュ値を用いて、追加されるデータ(ここでは、メタデータ)を一意に示すコンテンツ識別子(CID)が発行される。このCIDは、当該データが追加された時点において存在していたことを示すパーマネントな記録として機能する。なお、上述の通りCIDは追加されるデータのハッシュ値に基づいており、全く同じデータに対して発行されるCIDは同一であり、また同一のデータに対するCIDは不変である。そして、メタデータ識別子取得部25は、IPFSから発行されたCIDを、メタデータCID(ステップS102で生成されたコンテンツデータのCIDと区別するため、「メタデータCID」と称する)として取得する(ステップS108)。その後、処理はステップS109へ進む。
【0041】
ステップS109からステップS110では、トークンデータがブロックチェーン7に記録されることで、NFTが発行される。NFT発行部26は、メタデータCIDを含むトークンデータを作成する(ステップS109)。そして、NFT発行部26は、作成されたトークンデータを直接ブロックチェーン7に記録することでメタデータ及びコンテンツが紐づけられたNFTを、所有者のウォレットに付与し発行する(ステップS110)。その後、当該図面に示された処理は終了する。
【0042】
図4は、本実施形態においてメタデータ及びトークンデータに採用可能な項目の例を示す図であり、以下に列挙するトークンデータを含む。なお、一のコンテンツに対して複数のNFTが発行されるコレクティブルの形式のトークンを想定している。
- tokenID (トークンID)
- collectibleID (コレクティブルID)
- serialNumber (シリアル番号。一のコンテンツに紐づけられた複数のNFTを発行する場合、一のコンテンツに対して一のコレクティブルIDと複数の異なるシリアル番号を設定することで、複数のNFTを発行することが出来る。)
- maxTokens (一のコレクティブルについて発行されるNFTの数の上限)
- tokenMetadataURI (NFTが発行された場合にNFTからメタデータを参照するためのURIで、メタデータのCIDを含む。)
【0043】
また、メタデータは、以下に列挙するデータを含む。
- title (トークンのタイトル)
- description (トークンの説明)
- image (ブラウザからアクセス可能な、コンテンツ又はコンテンツのサムネイルのURL)
- contentProviderName (コンテンツ提供者の名称)
- contentURI (コンテンツデータを参照するためのURI(CIDを含む))
- contentHash (コンテンツデータのハッシュ値)
- contentSignature (コンテンツデータの電子署名)
【0044】
更に、本実施形態では、メタデータ及び/又はトークンデータに含まれる項目として、以下に例示される項目が採用されてよい。
- royaltyInfo (ロイヤルティとしてのバリューの分配の検証に使用される情報で、ウォレットアドレスやロイヤルティの割合を含む。)
- externalURL (ユーザをサービス又はコンテンツのページに導くURL)
- rarity (コンテンツ又はNFTのレア度)
- series (コンテンツのシリーズ情報)
【0045】
その他、メタデータ及び/又はトークンデータには、コンテンツ提供者の情報、コンテンツに係る出演者の情報、コンテンツに係る知的財産権(著作権、商標権、実演者の権利等)に係るクレジット情報、コンテンツに係るグループの情報、コンテンツに係る日時情報、コンテンツに係るロケーション(公演会場等。メタバースや配信公演も含まれてよい)情報、コンテンツに係るイベント情報(スポーツの試合に係るシリーズ/シーズン名や公演名、コンセプト等)、等が更に含まれていてもよい。ここで、出演者には、俳優や演奏者、スポーツコンテンツにおける選手やアイドル/バンドコンテンツにおけるメンバーが含まれ、グループには、スポーツコンテンツにおけるチーム名やアイドルコンテンツにおけるグループ名、バンドコンテンツにおけるグループ名が含まれ、日時には、コンテンツのリリース日時や収録日時が含まれる。これらの情報は、夫々独立した項目としてメタデータ及び/又はコンテンツデータに含まれてもよいし、上述した「description」や「series」等の包括的な項目中に記載されてもよい。また、出演者の情報には、コンテンツにおける当該出演者の役割(スポーツコンテンツにおけるポジション(「投手」等)やアイドルコンテンツにおけるポジション、バンドコンテンツにおける担当楽器等)が含まれてもよい。
【0046】
上記説明したNFT発行処理によれば、IPFSのプロトコルに従って生成されたコンテンツデータのCIDがメタデータに保存され、当該メタデータのCIDがトークンデータに含まれる形でブロックチェーン7に記録されるため、NFT発行時にIPFSに追加されなかったコンテンツデータがコンテンツデータ追加部27によって後からIPFSに追加される場合にも、IPFSから発行されるCIDはステップS102で生成されたCIDと同一となり、生成済のNFTに影響することなく、コンテンツデータの同一性を保証することが可能である。即ち、上記説明したNFT発行処理によれば、NFTの対象であるコンテンツデータが当初IPFSに追加されなかった場合であっても、当該コンテンツデータを任意のタイミングでIPFSに追加することが可能となる。
【0047】
図5は、本実施形態に係るNFTの一次販売処理の流れの一例を示す概略図である。本概略図に示された処理は、NFTの購入を希望するユーザのユーザ端末9から購入要求が送信されたことを契機として実行される。なお、図中の各口座又はウォレット内に示されたバリューの量及びFTの量は、本図面に示された処理が完了した状態における、各口座又はウォレットにおけるバリューの量及びFTの量である。
【0048】
ステップS201からステップS203では、NFTの購入要求が受信され、支払バリューの決済が行われる。コンテンツ提供者によってNFTがマーケットプレイスに出品され、販売者(ここでは、コンテンツ提供者)と購入者とがNFTの価格に合意すると、購入者は1又は複数のNFTを購入する旨の要求を情報処理装置1によって管理されるマーケットプレイスに対して送信し、支払い手続きを行う。なお、購入者が一括して購入可能なNFTは1つに限定されず、購入者は、複数のNFTを一括して購入してもよい。更に、複数のNFTは、販売者によって作成された複数のNFTを含むパックであってもよい。
【0049】
ここで、価格の決定方法は限定されず、例えば、販売者によって予め提示された価格に購入者が同意した場合に購入可能となる方法が採用されてもよいし、オークション等のように、価格を変動させながら販売者と購入者との間で合意可能な価格が決定されていく方法が適切な範囲で採用されてもよい。決済受付部31は、購入者による支払バリューの決済を、当該購入者が有するアカウントに紐付けられた決済手段を介して受け付ける(ステップS201)。購入者によって支払われたバリュー(図に示した例では、日本の法定通貨である日本円で1,000円)は、決済サービスに入金され(ステップS202)、管理システムは、バリューの支払い(決済)が行われ完了したことを、マーケットプレイスを管理する情報処理装置1に通知する(ステップS203)。その後、処理はステップS204へ進む。ここで、決済サービスは、システム管理者の口座にかかる管理または連携が可能な金融システムであってよい。なお、決済サービスへのバリューの支払い(例として法定通貨の入金)は、ステップS202の態様で決済前に行われてよく、後払い決済などの態様で決済後に行われてもよい。
【0050】
ステップS204からステップS207では、FTを用いたバリュー管理が実行される。FT発行部33は、ステップS201における購入者による支払バリューの量(図に示した例では1,000円)に対応する量のFT(図に示した例では1,000Coin。以下、本実施形態で発行されるFTの名称を仮に「Coin」として説明する。但し、本開示に係るFTの名称は限定されない。)を、マーケットプレイスの支払用ウォレット(システム管理者のウォレット)に対して発行する(ステップS204)。そして、FT管理部34は、発行されたFTのうち、システム管理者が受け取るべきバリューの量に相当するFT(図に示した例では、マージンが20%に設定されており、200Coin)を、マーケットプレイスのマージン処理用ウォレットに付与し(ステップS205)、商品の販売者及び権利者が受け取るべきバリューの量に相当するFT(図に示した例では800Coin)を、商品の販売者であるコンテンツ提供者のウォレットに付与する(ステップS206)。
【0051】
一次販売処理に伴って、NFT管理部32は、購入された商品に係るNFTを、販売者のウォレットから購入者のウォレットに移動させる。この際、NFTの移動は、後述する二次販売処理のステップS605からS607の処理(図9を参照)と同様、販売者及び/又は権利者が受け取るべきFTの販売者及び/又は権利者のウォレットへの付与(ステップS205及びステップS206)と同時且つ不可分に実行されてよい。但し、NFTの移動のタイミングは、ここで示された例に限定されない。そして、FT管理部34は、マージン処理用ウォレットに付与されたFTを焼却(burn)し、使用不能状態に遷移させ(ステップS207)、当該図面に示された処理は終了する。
【0052】
図6は、本実施形態に係る定期集計処理の流れの一例を示す概略図である。本概略図に示された処理は、所定期間(例えば、1月毎に1回)毎に実行される。なお、図中の各口座又はウォレット内に示されたバリューの量及びFTの量は、本図面に示された処理が完了した状態における、各口座又はウォレットにおけるバリューの量及びFTの量である。
【0053】
はじめに、情報処理装置1は、図5を参照して説明した一次販売処理のステップS202で決済サービスに入金された、購入者によって支払われたバリュー(図に示した例では1,000円)から、必要に応じて手数料(図に示した例では50円)を差し引き(ステップS301)、残り(図に示した例では950円)をマーケットプレイスの口座に送金する(ステップS302)。その後、処理はステップS303へ進む。
【0054】
情報処理装置1は、管理者のユーザ端末9(以下、「オペレータ端末」と称する)に対して送金完了を通知する(ステップS303)。送金完了の通知を受けたオペレータ端末は、当該所定期間(例えば、当該月)における、商品名、コンテンツ提供者名、販売価格及び支払いID等を含む販売記録を、マーケットプレイスを管理する情報処理装置1から取得する(ステップS304)。また、情報処理装置1は、ステップS302におけるマーケットプレイスの口座への送金額を、マーケットプレイスの口座を管理するシステム(例えば、銀行システム等)に対して認証する(ステップS305)。その後、当該図面に示された処理は終了する。
【0055】
図7は、本実施形態に係る定期送金処理の流れの一例を示す概略図である。本概略図に示された処理は、所定期間(例えば、1月毎に1回)毎に、図6を参照して説明した定期集計処理が完了したことを契機として実行される。なお、図中の各口座又はウォレット内に示されたバリューの量及びFTの量は、本図面に示された処理が完了した状態における、各口座又はウォレットにおけるバリューの量及びFTの量である。
【0056】
はじめに、バリュー受取確認部35は、コンテンツ提供者のウォレットを参照することで、商品の販売者及び権利者がコンテンツ提供者のウォレットに付与されたFTに対応する量のバリュー(図に示した例では800円)を受け取る予定であることを確認し、更に、実際のバリューを商品の販売者及び権利者に送金するための支払リストを生成する(ステップS401)。なお、図7ではコンテンツ提供者のウォレットには処理完了後の0Coinが示されているが、ステップS401の確認時点では800Coinが付与されており(図6を参照)、コンテンツ提供者が800円を受け取り予定であることが分かる。ここで、支払リストは、コンテンツ提供者名、支払量(800円)、口座等の支払先にかかる情報、等を含むリストである。ステップS401でバリューの受け取り(ここでは、受け取り予定)が確認されると、FT管理部34は、コンテンツ提供者のウォレットに付与されたFTのうち、ステップS401で受取が確認されたバリューの量(図に示した例では800円)に対応する量のFT(図に示した例では800Coin)を焼却し、使用不能状態に遷移させる(ステップS402)。その後、処理はステップS403へ進む。
【0057】
オペレータ端末は、当該所定期間(本実施形態では、当該月)における支払リストを情報処理装置1から取得し(ステップS403)、取得された支払リストに従って、銀行システムに対して、マーケットプレイスの口座からコンテンツ提供者の口座への、商品の販売者及び権利者が受け取るべきバリュー(図に示した例では800円)の送金を指示する(ステップS404)。ここで、送金後にマーケットプレイスの口座に残るバリュー(図に示した例では、図6で口座に入金された950円からコンテンツ提供者の口座に送金される800円を除いた150円)が、システム管理者が受け取るべきバリューである。指示されたバリューの送金が完了すると(ステップS405)、当該図面に示された処理は終了する。
【0058】
図8は、本実施形態に係るオンデマンド送金処理の流れの一例を示す概略図である。本概略図に示された処理は、コンテンツ提供者のユーザ端末9から、バリューの引き出し要求が送信されたことを契機として実行される。なお、図中の各口座又はウォレット内に示されたバリューの量及びFTの量は、本図面に示された処理が完了した状態における、各口座又はウォレットにおけるバリューの量及びFTの量である。
【0059】
はじめに、情報処理装置1は、コンテンツ提供者のユーザ端末9からの引き出し要求を受信する(ステップS501)。ここで、バリュー受取確認部35は、コンテンツ提供者のウォレットを参照することで、商品の販売者及び権利者がコンテンツ提供者のウォレットに付与されたFTに対応する量のバリュー(図に示した例では800円)を受け取る予定であることを確認する。なお、図8ではコンテンツ提供者のウォレットには処理完了後の0Coinが示されているが、ステップS501の確認時点では800Coinが付与されており(図6を参照)、コンテンツ提供者が800円を受け取り予定であることが分かる。そして、コンテンツ提供者からの引き出し要求が受信されると、FT管理部34は、コンテンツ提供者のウォレットに付与されたFTのうち、ステップS501で引き出し要求されたバリューの量(図に示した例では800円)に対応する量のFT(図に示した例では800Coin)を焼却し、使用不能状態に遷移させる(ステップS502)。その後、処理はステップS503へ進む。
【0060】
情報処理装置1は、ステップS501で受信された引き出し要求に従って、銀行システムに対して、マーケットプレイスの口座からコンテンツ提供者の口座への、商品の販売者及び権利者が受け取るべきバリュー(図に示した例では800円)の送金を指示する(ステップS503)。ここで、送金後にマーケットプレイスの口座に残るバリュー(図に示した例では、図6で口座に入金された950円からコンテンツ提供者の口座に送金される800円を除いた150円)が、システム管理者が受け取るべきバリューである。指示されたバリューの送金が完了すると(ステップS504)、当該図面に示された処理は終了する。
【0061】
図9は、本実施形態に係るNFTの二次販売処理の流れの一例を示す概略図である。本概略図に示された処理は、NFTの購入を希望するユーザのユーザ端末9から購入要求が送信されたことを契機として実行される。なお、図中の各口座又はウォレット内に示されたバリューの量及びFTの量は、本図面に示された処理が完了した状態における、各口座又はウォレットにおけるバリューの量及びFTの量である。
【0062】
ステップS601からステップS603では、NFTの購入要求が受信され、支払バリューの決済が行われる。販売者によってNFTがマーケットプレイスに出品され、販売者(ここでは、コンテンツ提供者又は他のユーザからNFTを購入したユーザ)と購入者とがNFTの価格に合意すると、購入者はNFTを購入する旨の要求を情報処理装置1に対して送信し、支払い手続きを行う。なお、価格の決定方法が限定されないこと、NFT購入代金支払いのために用いるバリューの種類が限定されないこと、及び決済手段が限定されないことについては、図5を参照して説明した一次販売処理と同様である。決済受付部31は、購入者による支払バリューの決済を、当該購入者が有するアカウントに紐付けられた決済手段を介して受け付ける(ステップS601)。購入者によって支払われたバリュー(図に示した例では1,000円)は、決済サービスに入金され(ステップS602)、管理システムは、バリューの支払いが行われたことを情報処理装置1に通知する(ステップS603)。その後、処理はステップS604へ進む。なお、決済サービスへのバリューの支払い(例として法定通貨の入金)は、ステップS602の態様で決済前に行われてよく、後払い決済などの態様で決済後に行われてもよい。
【0063】
ステップS604からステップS608では、FTを用いたバリュー管理が実行される。FT発行部33は、ステップS601における購入者による支払バリューの量(図に示した例では1,000円)に対応する量のFT(図に示した例では1,000Coin)を、マーケットプレイスの支払用ウォレットに対して発行する(ステップS604)。そして、FT管理部34は、発行されたFTのうち、コンテンツ提供者(商品に係る権利者)が受け取るべきバリューの量に相当するFT(図に示した例では、ロイヤルティが5%に設定されており、50Coin)を、コンテンツ提供者のウォレットに付与し(ステップS605)、システム管理者が受け取るべきバリューの量に相当するFT(図に示した例では、マージンが5%に設定されており、50Coin)を、マーケットプレイスのマージン処理用ウォレットに付与し(ステップS606)、商品の販売者が受け取るべきバリューの量に相当するFT(図に示した例では900Coin)を、商品の販売者であるユーザのウォレットに付与する(ステップS607)。なお、本実施形態において、ロイヤルティ及び/又はマージンは、メタデータ及び/又はトークンデータに含まれる「royaltyInfo」を参照して計算されてよい。
【0064】
ここで、NFT管理部32は、購入された商品に係るNFTを、販売者のウォレットから購入者のウォレットに移動させる。この際、NFTの移動は、販売者及び/又は権利者が受け取るべきFTの販売者及び/又は権利者のウォレットへの付与(ステップS605からステップS607)と同時且つ不可分に実行されることが好ましい。即ち、NFT管理部32及びFT管理部34は、ブロックチェーン7上でNFTを移転させるためのトランザクションにおいて、販売者のウォレットに移転されるFTと販売者から購入者に移転されるNFTとの両方を、現在の所有者を示すためのインプット及び移転先を示すためのアウトプットとして用いることで、販売者がFTを受領しない限りNFTが購入者に移転しないようにしている。この際、NFT管理部32及びFT管理部34は、販売者及び購入者の双方についてのインプット及びアウトプットのための電子署名を合わせてネットワークに公開することで、取引を成立させることができる。NFT管理部32及び/又はFT管理部34は、例として、UTXO(Unspent Transaction Output)の態様をとるトランザクション形式に基づき、NFT及び/又はFTを移転するトランザクションを処理してよい。ブロックチェーン7上のこのような取引処理は、特にC2C取引(一旦販売されたNFTのユーザ間での二次取引の他、一般のユーザがコンテンツ提供者としてNFTを販売する取引も含む)において、取引の安全性を高めるために有効である。但し、ブロックチェーン7上のこのような取引処理は、C2C以外の取引(例えば、B2C取引)においても採用されてよい。即ち、図5を参照して説明した一次販売処理においても、NFTの移動は、販売者及び/又は権利者が受け取るべきFTの販売者及び/又は権利者のウォレットへの付与と同時且つ不可分に実行されてよい。その後、FT管理部34は、マージン処理用ウォレットに付与されたFTを焼却(burn)し、使用不能状態に遷移させ(ステップS608)、当該図面に示された処理は終了する。
【0065】
二次販売処理終了後に実行される集計処理及び送金処理の詳細は、図6から図8を参照して説明した上記処理と同様であるため、説明を省略する。
【0066】
<その他の効果>
上記実施形態において開示された技術によれば、取引にあたって支払われるべきバリューの量を示すための同量のFTを発行し、当該FTを実際のバリューの移転に従って操作することで、ロイヤルティやマージン、販売者の利益等、取引にあたって支払われるべきバリューをデータとして好適に管理することが可能となる。例えば、上記実施形態によれば、データの改ざんを防止しつつ、データの管理に中央集権的でない分散的なシステムを用いることが可能となり、また、取引に参加するユーザ自身がバリューの量を管理するデータ(ここでは、FT)を参照することが可能となる。
【0067】
また、上記実施形態において開示された技術によれば、コンテンツ提供者がIPFSへのコンテンツ保存を望まない等の事情がある場合にも、保存先について他のオプションを提供しつつ、コンテンツ提供者やユーザ(所有者、販売者、購入者等)の要望に応じてコンテンツの保存先をIPFSに変更することが可能となる。また、別の観点からは、コンテンツデータの保存場所とメタデータの保存場所とを分け、且つメタデータにIPFS方式のCIDを含めることで、第三者による偽NFTの生成や改ざんを防止する効果を得つつ、NFTを他のブロックチェーンに移動すること(例えば、プライベートなNFTからパブリックなNFT(スタンダード方式のNFT)への乗り換え)が容易となる。
【0068】
<バリエーション>
図10は、バリエーションに係る情報処理装置1bの機能構成の概略を示す図である。上記説明した実施形態では、取引にあたって支払われるべきバリューの量に対応する量のFTを発行し、当該FTを実際のバリューの移転に従って操作する処理を、NFTの取引にあたって支払われるバリューの管理に用いる例を説明したが、上記説明した、FTを用いたバリュー管理は、NFT以外の商品やサービス等の取引にあたって支払われるべきバリューの管理に用いられてもよい。この場合、処理の開始の契機がNFT以外の商品やサービス等であることを除けば、各機能部による処理の内容は概略同様である。情報処理装置1bは、記憶装置に記録されているプログラムがRAMに読み出され、CPUによって実行されて、情報処理装置1bに備えられた各ハードウェアが制御されることで、決済受付部31、FT発行部33、FT管理部34及びバリュー受取確認部35を備える情報処理装置として機能する。
【0069】
図11は、バリエーションに係る情報処理装置1cの機能構成の概略を示す図である。上記説明した実施形態では、資源識別子を含むメタデータを生成し、当該メタデータの識別子を含むトークンデータをブロックチェーン7に登録する処理が、上記バリューの管理と併せて実施される例を説明したが、メタデータ関連処理は、NFT関連の技術のために広く用いることが可能である。情報処理装置1cは、記憶装置に記録されているプログラムがRAMに読み出され、CPUによって実行されて、情報処理装置1cに備えられた各ハードウェアが制御されることで、コンテンツ識別子生成部21、ハッシュ値取得部22、メタデータ生成部23、メタデータ追加部24、メタデータ識別子取得部25及びNFT発行部26を備える情報処理装置として機能する。
【0070】
また、上記説明した実施形態では、メタデータをIPFSに追加する例について説明したが、メタデータについても、コンテンツデータと同様、IPFS等のコンテンツ指向型データ管理システムに追加せず、例えばCDN等のロケーション指向型データ管理システムに保存しつつ、CIDのみ生成して発行するようにしてもよい。
【0071】
なお、上記説明した実施形態では、分散型台帳としてブロックチェーンを用いる例を説明したが、本開示に係る技術を実装するにあたって採用可能な分散型台帳は所謂ブロックチェーンに限定されない。本開示に係る技術を実現するにあたって求められる機能及び構成を有するものであれば、ブロックチェーン以外の分散型台帳が用いられてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 情報処理装置

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11