(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122880
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】電極搬出装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20230829BHJP
B65H 5/10 20060101ALI20230829BHJP
B65H 3/08 20060101ALI20230829BHJP
B65H 3/48 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
B65H5/10 B
B65H3/08 342A
B65H3/48 310A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026638
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 祐輝
【テーマコード(参考)】
3F101
3F343
5H028
【Fターム(参考)】
3F101CA05
3F101CF03
3F101LA16
3F101LB10
3F343FA13
3F343FB19
3F343FC01
3F343GA01
3F343GB01
3F343JB02
3F343JD28
3F343MA03
3F343MA14
5H028AA05
5H028BB14
5H028BB15
5H028BB19
5H028CC07
5H028CC08
(57)【要約】
【課題】移送装置に対する電極の位置ずれを防止する。
【解決手段】電極搬出装置は、平面視形状が異なる2種類のシート状の電極10,20を、交互に積層する電極貯積部30,40と、電極貯積部30,40に積層されている複数枚の電極10,20のうち最上端の移送対象電極18,28を、吸着した状態で積層台56へ移送する移送装置50と、移送対象電極18,28の下面に移送対象ではない移送非対象電極19,29が密着したときに、移送非対象電極19,29をエアの噴射圧によって移送対象電極18,28から離脱させる離脱装置60,65と、を備え、2種類の電極10,20は、2種類の電極10,20が重なったときに上側の電極10,20に隠れずに平面視において露出する露出部17,27を有し、移送対象電極18,28の下面に移送非対象電極19,29が密着したときに、離脱装置60,65は、移送非対象電極19,29の露出部17,27のみに向けてエアを噴射する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視形状が異なる2種類のシート状の電極を、水平な姿勢で交互に積層して貯めておく電極貯積部と、
前記電極貯積部に積層されている複数枚の前記電極のうち最上端の移送対象電極を、吸着した状態で保持し、前記電極とセパレータとを積層するための積層台へ移送する移送装置と、
前記移送装置によって吸着された前記移送対象電極の下面に移送対象ではない移送非対象電極が密着したときに、前記移送非対象電極をエアの噴射圧によって前記移送対象電極から離脱させる離脱装置と、を備え、
前記2種類の電極は、前記2種類の電極が重なったときに上側の前記電極に隠れずに平面視において露出する露出部を有しており、
前記移送対象電極の下面に前記移送非対象電極が密着したときに、前記離脱装置は、前記移送非対象電極の前記露出部のみに向けてエアを噴射する電極搬出装置。
【請求項2】
前記電極は、基材と、前記基材にスラリーが塗布された塗工部と、前記スラリーが塗布されずに前記基材が露出した未塗工部とを有しており、
前記露出部が前記未塗工部のみに形成されている請求項1に記載の電極搬出装置。
【請求項3】
前記電極貯積部に積層されている前記2種類の電極のうち一方の前記電極を上下反転させたときに、双方の前記電極の前記未塗工部の平面視形状が同一である請求項2に記載の電極搬出装置。
【請求項4】
前記未塗工部には、前記2種類の電極が重なったときに、下側の前記電極の前記未塗工部の前記露出部を露出させる切欠部が形成されている請求項2又は請求項3に記載の電極搬出装置。
【請求項5】
前記切欠部は、前記未塗工部の外周縁のうち直線状縁部の一部を凹ませた形状である請求項4に記載の電極搬出装置。
【請求項6】
前記電極貯積部には、前記移送対象電極から離脱して落下する前記移送非対称電極を、前記電極貯積部の所定位置へ案内するガイド部材が設けられている請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電極搬出装置。
【請求項7】
前記ガイド部材が、前記移送非対象電極の未塗工部に形成したガイド孔に挿通されている請求項6に記載の電極搬出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極搬出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、箱形の電極収納部と、移送装置と、エア噴射装置とを備えた電極積層装置が開示されている。電極収納部内には、水平姿勢で積層された複数枚のシート状の電極が収納されている。移送装置は、電極収納部内の電極の上面を吸着パッドによって吸着し、吸着した電極を積層テーブルへ移送する。吸着パッドが移送対象の電極を吸着したときに、この電極の下面に別の電極が密着することがある。この場合、エア噴射装置が上側の電極に向けてエアを噴射し、エアの噴射圧によって上側の電極が撓むのに伴い、下側の電極が剥がれて落下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の電極積層装置では、エア噴射装置が上側の電極に向けてエアを吹き付けるため、この上側の電極が、エアの噴射圧によって吸着パッドからずれる虞がある。吸着パッドに対して電極の位置がずれると、積層テーブルにおける電極の積層位置が揃わなくなる。
【0005】
本開示は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、移送装置に対する電極の位置ずれを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の電極搬出装置は、
平面視形状が異なる2種類のシート状の電極を、水平な姿勢で交互に積層して貯めておく電極貯積部と、
前記電極貯積部に積層されている複数枚の前記電極のうち最上端の移送対象電極を、吸着した状態で保持し、前記電極とセパレータとを積層するための積層台へ移送する移送装置と、
前記移送装置によって吸着された前記移送対象電極の下面に移送対象ではない移送非対象電極が密着したときに、前記移送非対象電極をエアの噴射圧によって前記移送対象電極から離脱させる離脱装置と、を備え、
前記2種類の電極は、前記2種類の電極が重なったときに上側の前記電極に隠れずに平面視において露出する露出部を有しており、
前記移送対象電極の下面に前記移送非対象電極が密着したときに、前記離脱装置は、前記移送非対象電極の前記露出部のみに向けてエアを噴射する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の電極搬出装置によれば、移送装置に吸着された移送対象電極にはエアの噴射圧が作用しない。したがって、エアを噴射して移送非対象電極を移送対象電極から離脱させるときに、移送対象電極が移送装置に対して位置ずれすることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】移送装置によって持ち上げられた移送対象負電極の下面に、移送非対象負電極が密着した状態をあらわす斜視図
【
図5】移送装置によって持ち上げられた移送対象負電極の下面に、移送非対象負電極が密着した状態をあらわす側面図
【
図6】移送対象負電極から移送非対象負電極を離脱させた状態をあらわす斜視図
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで、本開示の望ましい例を示す。
・前記電極は、基材と、前記基材にスラリーが塗布された塗工部と、前記スラリーが塗布されずに前記基材が露出した未塗工部とを有しており、前記露出部が前記未塗工部のみに形成されている電極搬出装置。未塗工部は、損傷しても発電機能や起電機能に影響がないので、未塗工部にエアの噴射圧が作用しても、電極の性能に支障を来すことがない。
・前記電極貯積部に積層されている前記2種類の電極のうち一方の前記電極を上下反転させたときに、双方の前記電極の前記未塗工部の平面視形状が同一である電極搬出装置。この構成によれば、用意する電極は1種類だけで済む。
・前記未塗工部には、前記2種類の電極が重なったときに、下側の前記電極の前記未塗工部の前記露出部を露出させる切欠部が形成されている電極搬出装置。この構成によれば、露出部を、未塗工部の外周縁から部分的に突出した形状にする必要がないので、露出部が異物の干渉によって変形することを防止できる。
・前記切欠部は、前記未塗工部の外周縁のうち直線状縁部の一部を凹ませた形状である電極搬出装置。この構成によれば、開口縁が全周に亘って繋がった孔状の切欠部に比べると、平面視における切欠部の位置や電極の向きを目視で確認し易い。
・前記移送対象電極から離脱して落下する前記移送非対称電極を、前記電極貯積部の所定位置へ案内するガイド部材を備えている電極搬出装置。この構成によれば、移送対象電極から離脱して落下する移送非対称電極を、電極貯積部における一定の位置へ戻すことができる。
・前記ガイド部材が、前記移送非対象電極の未塗工部に形成したガイド孔に挿通されている電極搬出装置。この構成によれば、未塗工部は、損傷しても発電機能や起電機能に影響がないので、未塗工部がガイド部材に摺接しても、電極の性能に支障を来すことがない。
【0010】
[実施形態1]
本開示を具体化した実施形態1を、
図1~
図6を参照して説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。本実施形態1において、前後の方向については、
図1~6におけるX軸の正方向を前方と定義する。左右の方向については、
図1~4,6におけるY軸の正方向を右方と定義する。左右方向と幅方向を同義で用いる。上下の方向については、
図1~6におけるZ軸の正方向を上方と定義する。
【0011】
本実施例の電極搬出装置は、シート状のセパレータ55を挟んでシート状の負電極10とシート状の正電極20を交互に積層して構成される積層電極体の製造に用いられる装置である。電極搬出装置は、積層台56と、負電極10を貯留する負電極貯積部30と、正電極20を貯めておく正電極貯積部40と、移送装置50と、負電極用離脱装置60と、正電極用離脱装置65とを備えている。積層台56の上面においては、負電極貯積部30に貯められている負電極10と、正電極貯積部40に貯められている正電極20が、夫々、1枚ずつ交互に移送されて積層される。
【0012】
<負電極10>
負電極10は、全体として長方形をなすシート状の負極用基材11と、負極用基材11の表裏両面に塗布した負極用スラリー12とを有する。尚、
図1,2,4~6では、負電極10の厚さを誇張して描いている。負極用スラリー12は、負極活物質、結着剤、導電材、分散増粘剤等を混練したものであり、負極用基材11のうち後端部を除いた領域に塗布されている。負電極10のうち負極用スラリー12が塗布された長方形の領域は、負極側塗工部13として機能する。
【0013】
負電極10のうち、負極用基材11に負極用スラリー12が塗布されずに負極用基材11が露出した後端部の領域を、左右方向に細長い負極側未塗工部14と定義する。負極側未塗工部14には、1つの負極側切欠部15と、2つの負極側ガイド孔16が形成されている。負極側切欠部15は、負極側未塗工部14の左右方向両端部のうち、いずれか一方の端部のみに配置されている。負極側切欠部15は、負電極10の外周縁のうち後縁部10Rの一部と側縁部10Sの一部とを方形に切り欠いた形態である。2つの負極側ガイド孔16は、負極側未塗工部14の左右方向中央部と、左右両端部のうち負極側切欠部15が形成されていない側の端部とに配置されている。負極側ガイド孔16の開口面積は、負極側切欠部15よりも小さい。
【0014】
<正電極20>
正電極20は、全体として負電極10と同様の構成である。尚、
図1,3では、正電極20の厚さを誇張して描いている。正電極20のうち正極用基材21に正極用スラリー22が塗布された領域は、正極側塗工部23として機能する。正電極20のうち、正極用スラリー22が塗布されずに正極用基材21が露出した前端部の領域を、左右方向に細長い正極側未塗工部24と定義する。正極側未塗工部24には、1つの正極側切欠部25と、2つの正極側ガイド孔26が形成されている。正極側切欠部25は、正極側未塗工部24の左右方向両端部のうち、いずれか一方の端部のみに配置されている。正極側切欠部25は、正電極20の外周縁のうち前縁部20Fの一部と側縁部20Sの一部とを方形に切り欠いた形態である。2つの正極側ガイド孔26は、正極側未塗工部24における左右方向中央部と、左右両端部のうち正極側切欠部25が形成されていない側の端部とに配置されている。
【0015】
<負電極貯積部30>
図1に示すように、積層台56の左方には負電極貯積部30が配置されている。負電極貯積部30は、水平な負電極用基台31と、負電極用基台31の後端部から上方へ突出した3本(複数本)の負電極用ガイド部材32とを有する。3本の負電極用ガイド部材32は、円形断面の棒状をなし、左右方向に間隔を空けて配置されている。
【0016】
負電極貯積部30は、負極側未塗工部14の平面視形状が異なる2種類の負電極10を、水平な姿勢で交互に積層した状態で貯めておく。2種類の負電極10は、負極側ガイド孔16を負極用ガイド部材に嵌合することによって、平面視において一定の位置に保持されている。
図2に示すように、2種類の負電極10は、同一形状の負電極10からなり、一方の負電極10を、左右方向中央の前後方向の対称軸(図示省略)を中心として反転させることによって、2種類の負電極10の組合せが成立している。
【0017】
2種類の負電極10を、外周縁同士が整合するように上下に重ねた状態では、負極側切欠部15の位置が2種類の負電極10の相互間で左右逆となり、上側の負極側切欠部15において下側の負極側未塗工部14の一部が露出する。この下側の負極側未塗工部14における露出領域を、負極側露出部17と定義する。負極側露出部17は、負極側ガイド孔16を含む領域である。左右方向中央部の負極側ガイド孔16の位置は、2種類の負電極10の相互間で合致する。
【0018】
<正電極貯積部40>
積層台56の右方には正電極貯積部40が配置されている。正電極貯積部40は、水平な正電極用基台41と、正電極用基台41の前端部から上方へ突出した3本(複数本)の正電極用ガイド部材42とを有する。3本の正電極用ガイド部材42は、円形断面の棒状をなし、左右方向に間隔を空けて配置されている。
【0019】
正電極貯積部40は、正極側未塗工部24の平面視形状が異なる2種類の正電極20を、水平な姿勢で交互に積層した状態で貯めておく。2種類の正電極20は、正極側ガイド孔26を正電極用ガイド部材42に嵌合することによって、平面視において一定の位置に保持されている。
図3に示すように、2種類の正電極20は、同一形状の正電極20からなり、一方の正電極20を、左右方向中央の前後方向の対称軸(図示省略)を中心として反転させることによって、2種類の正電極20の組合せが成立している。
【0020】
2種類の正電極20を、外周縁同士が整合するように上下に重ねた状態では、正極側切欠部25の位置が2種類の正電極20の相互間で左右逆となり、上側の正極側切欠部25において下側の正極側未塗工部24の一部が露出する。この下側の正極側未塗工部24における露出領域を、正極側露出部27と定義する。正極側露出部27は、正極側ガイド孔26を含む領域である。左右方向中央部の正極側ガイド孔26の位置は、2種類の正電極20の相互間で合致する。
【0021】
<移送装置50>
移送装置50は、負電極貯積部30に積層されている複数の負電極10のうち、最上端の移送対象負電極18を、一枚ずつ取り出して、積層台56へ移送する機能を有する。移送装置50は、正電極貯積部40に積層されている複数の正電極20のうち、最上端の移送対象正電極28を、一枚ずつ取り出して、積層台56へ移送する機能も有する。
【0022】
移送装置50は、図示しない駆動機構によって移動する可動部材51と、可動部材51から下方へ延出したアーム部52と、アーム部52の下端部に取り付けた吸盤53とを備えている。可動部材51は、負電極貯積部30の上方位置と、積層台56の上方位置と、正電極貯積部40の上方位置との間で左右方向に往復する移送動作を行う。可動部材51の移送経路は、積層台56の上方位置を含む。可動部材51は、負電極貯積部30の真上において昇降する搬出動作と、積層台56の真上で昇降する供給動作と、正電極貯積部40の真上で昇降する搬出動作とを行う。吸盤53は、負極側塗工部13の上面に密着することによって、負電極10を吸着する。吸盤53は、正極側塗工部23の上面に密着することによって、正電極20を吸着する。
【0023】
<負電極用離脱装置60>
負電極用離脱装置60は、負電極貯積部30の上方に設けられている。負電極用離脱装置60は、移送装置50が一度に複数枚の負電極10を持ち上げたときに、一番上の移送対象負電極18のみを残し、それより下側の移送非対象負電極19を離脱させるための装置である。移送非対象負電極19は、負電極貯積部30に積層されている複数枚の負電極10のうち、最上端から2番目以下に積層されている負電極10である。
【0024】
負電極用離脱装置60は、駆動機構(図示省略)によって左右方向に移動する。負電極用離脱装置60は、下向き又は斜め下向きにエアを噴射する負電極用エアノズル61を有する。負電極用離脱装置60が左右方向に移動すると、負電極用エアノズル61が、エアの噴出方向を負極側未塗工部14に向けた状態で左右方向へ移動する。
【0025】
<正電極用離脱装置65>
正電極用離脱装置65は、正電極貯積部40の上方に設けられている。正電極用離脱装置65は、移送装置50が一度に複数枚の正電極20を持ち上げたときに、一番上の移送対象正電極28のみを残し、それより下側の移送非対象正電極29を離脱させるための装置である。移送非対象正電極29は、正電極貯積部40に積層されている複数枚の正電極20のうち、最上端から2番目以下に積層されている正電極20である。
【0026】
正電極用離脱装置65は、駆動機構(図示省略)によって左右方向に移動する。正電極用離脱装置65は、下向き又は斜め下向きにエアを噴射する正電極用エアノズル66を有する。正電極用離脱装置65が左右方向に移動すると、正電極用エアノズル66が、エアの噴出方向を正極側未塗工部24に向けた状態で左右方向へ移動する。
【0027】
<搬出工程>
次に、負電極10と正電極20を積層台56へ移送する工程を説明する。まず、移送装置50の吸盤53が、負電極貯積部30の真上へ移動して下降し、移送対象負電極18の上面を吸着する。吸盤53が移送対象負電極18を吸着したまま上昇すると、移送対象負電極18が持ち上げられる。このとき、移送非対象負電極19が、静電気等によって移送対象負電極18の下面に密着していると、移送対象負電極18と一緒に移送非対象負電極19も持ち上げられてしまう。この場合、負電極用離脱装置60の負電極用エアノズル61から、移送非対象負電極19の負極側露出部17の上面に向けてエアが噴射される。エアの噴射圧によって、移送非対象負電極19が移送対象負電極18から引き離されて落下する。
【0028】
落下する移送非対象負電極19は、2つの負極側ガイド孔16を2本の負電極用ガイド部材32に嵌合させているので、平面視において位置ずれしたり向きを変えたりすることがない。これにより、移送対象負電極18から離脱した移送非対象負電極19は、一定の位置と向きを保った状態で落下し、負電極貯積部30内における元の位置(積層位置)に戻る。
【0029】
移送非対象負電極19を離脱した後は、移送対象負電極18が、移送装置50によって、積層台56に上面に運ばれて載置される。移送非対象負電極19を離脱させる際に、負電極用離脱装置60から噴射されるエアは、移送非対象負電極19の負極側露出部17のみに向けて吹き付けられ、移送対象負電極18の負極側未塗工部14には吹き付けられない。したがって、移送対象負電極18は、エアの噴射圧に起因して吸盤53に対して前後左右に位置ずれする虞がなく、積層台56における移送対象負電極18の載置位置は一定となる。
【0030】
負電極10を積層台56に載置した後、載置した負電極10の上面にセパレータ55が載置される。この間、移送装置50の吸盤53が、正電極貯積部40の真上へ移動して下降し、移送対象正電極28の上面を吸着する。吸盤53が移送対象正電極28を吸着したまま上昇すると、移送対象正電極28が持ち上げられる。このとき、移送非対象正電極29が、移送対象正電極28の下面に密着して一緒に持ち上げられた場合は、負電極10の場合と同様、正電極用離脱装置65の正電極用エアノズル66から、移送非対象正電極29の正極側露出部27の上面に向けてエアが噴射される。エアの噴射圧によって、移送非対象正電極29が移送対象正電極28から引き離されて落下する。
【0031】
落下する移送非対象正電極29は、2つの正極側ガイド孔26を2本の正電極用ガイド部材42に嵌合させているので、平面視において位置ずれしたり向きを変えたりすることがない。これにより、移送対象正電極28から離脱した移送非対象正電極29は、一定の位置と向きを保った状態で落下し、正電極貯積部40内における元の位置(積層位置)に戻る。
【0032】
移送非対象正電極29を離脱した後は、移送対象正電極28が、移送装置50によって、積層台56に上面に運ばれ、セパレータ55の上面に載置される。移送非対象正電極29を離脱させる際に、正電極用離脱装置65から噴射されるエアは、移送非対象正電極29の正極側露出部27のみに向けて吹き付けられ、移送対象負電極18の正極側未塗工部24には吹き付けられない。したがって、移送対象正電極28は、エアの噴射圧に起因して吸盤53に対して前後左右に位置ずれする虞がなく、積層台56における移送対象正電極28の載置位置は一定となる。つまり、平面視において、移送対象正電極28は、積層台56に載置されている負電極10に対して適正な位置関係で載置される。
【0033】
正電極20が積層台56に載置された後は、載置した正電極20の上面にセパレータ55が載置される。この後、上記した負電極10の移送工程と、上記した正電極20の移送工程が繰り返されることによって、積層台56上に積層電極体が構成される。
【0034】
負電極10を負電極貯積部30から搬出する際に、移送対象負電極18から離脱して落下した移送非対象負電極19は、次の搬出工程では、移送対象負電極18として積層台56へ移送される。上記したように、移送対象負電極18から離脱して落下した移送非対象負電極19は、負電極用ガイド部材32によって負電極貯積部30の平面視における所定の位置(当初から積層されていた位置)に戻る。したがって、負電極貯積部30に戻った移送非対象負電極19は、吸盤53に対して適正な位置関係を保った状態で吸盤53に吸着される。
【0035】
正電極20を正電極貯積部40から搬出する際に、移送対象正電極28から離脱して落下した移送非対象正電極29は、次の搬出工程では、移送対象正電極28として積層台56へ移送される。移送対象正電極28から離脱して落下した移送非対象正電極29も、負電極10と同様に、正電極用ガイド部材42によって正電極貯積部40の平面視における所定の位置に戻る。したがって、正電極貯積部40に戻った移送非対象正電極29は、吸盤53に対して適正な位置関係を保った状態で吸盤53に吸着される。
【0036】
<実施形態1の作用及び効果>
本実施形態1の電極搬出装置は、負電極貯積部30と、正電極貯積部40と、移送装置50と、負電極用離脱装置60と、正電極用離脱装置65とを有する。負電極貯積部30は、シート状をなす複数枚の負電極10を、水平な姿勢で積層して貯めておく。負電極貯積部30に積層される複数枚の負電極10は、平面視形状が異なる2種類の負電極10からなる。負電極貯積部30においては、2種類の負電極10が交互に積層されている。負電極10は、負極用基材11と、負極用基材11に負極用スラリー12が塗布された負極側塗工部13と、負極用スラリー12が塗布されずに負極用基材11が露出した負極側未塗工部14とを有している。
【0037】
正電極貯積部40は、シート状をなす複数枚の正電極20を、水平な姿勢で積層して貯めておく。正電極貯積部40に積層される複数枚の正電極20は、平面視形状が異なる2種類の正電極20からなる。正電極貯積部40においては、2種類の正電極20が交互に積層されている。正電極20は、正極用基材21と、正極用基材21に負極用スラリー12が塗布された正極側塗工部23と、正極用スラリー22が塗布されずに正極用基材21が露出した正極側未塗工部24とを有している。
【0038】
移送装置50は、負電極貯積部30に積層されている複数枚の負電極10のうち最上端の移送対象負電極18を、吸着した状態で保持し、負電極10と正電極20とセパレータ55とを積層するための積層台56へ移送する。また、移送装置50は、正電極貯積部40に積層されている複数枚の正電極20のうち最上端の移送対象正電極28を、吸着した状態で保持して積層台56へ移送する。
【0039】
負電極用離脱装置60は、移送装置50によって吸着されて保持された移送対象負電極18の下面に移送対象ではない移送非対象負電極19が密着したときに、移送非対象負電極19を、エアの噴射圧によって移送対象負電極18から離脱させて、負電極貯積部30へ落下させる。負電極用離脱装置60は、エアの噴射圧によって移送非対象負電極19を移送対象負電極18から離脱させるようになっている。負電極10の負極側未塗工部14が、負電極用離脱装置60から噴射されるエアの吹き付け対象部位として機能する。負電極10電極の負極側塗工部13がエアの噴射圧によって変形することを防止できる。
【0040】
正電極用離脱装置65は、移送装置50によって吸着されて保持された移送対象正電極28の下面に移送対象ではない移送非対象正電極29が密着したときに、移送非対象正電極29を、エアの噴射圧によって移送対象正電極28から離脱させて、正電極貯積部40へ落下させる。正電極用離脱装置65は、エアの噴射圧によって移送非対象正電極29を移送対象正電極28から離脱させるようになっている。正電極20の正極側未塗工部24が、正電極用離脱装置65から噴射されるエアの吹き付け対象部位として機能する。正電極20電極の正極側塗工部23がエアの噴射圧によって変形することを防止できる。
【0041】
負電極貯積部30は、移送対象負電極18から離脱した移送非対象負電極19を、平面視において一定の位置を保ちつつ、負電極貯積部30の所定位置へ落下するように案内する複数本の負電極用ガイド部材32を備えている。負電極用ガイド部材32によって、落下する移送非対象負電極19を、損傷させることなく、負電極貯積部30における一定の位置へ戻すことができる。
【0042】
負電極用ガイド部材32は負極側未塗工部14に摺接するように配置されている。負極側未塗工部14は、損傷しても発電機能や起電機能に影響がないので、負電極用ガイド部材32によって負電極10の性能に支障を来すことがない。
【0043】
負極側未塗工部14には複数の負極側ガイド孔16が形成されている。複数の負電極用ガイド部材32は複数の負極側ガイド孔16に個別に挿通されている。この構成によれば、負電極10が負電極用ガイド部材32から外れる虞がない。負電極10を、平面視において、負電極貯積部30に対して確実に位置決めすることができる。
【0044】
正電極貯積部40は、移送対象正電極28から離脱した移送非対象正電極29を、平面視において一定の位置を保ちつつ、正電極貯積部40の所定位置へ落下するように案内する複数本の正電極用ガイド部材42を備えている。正電極用ガイド部材42によって、落下する移送非対象正電極29を、損傷させることなく、正電極貯積部40における一定の位置へ戻すことができる。
【0045】
正電極用ガイド部材42は正極側未塗工部24に摺接するように配置されている。正極側未塗工部24は、損傷しても発電機能や起電機能に影響がないので、正電極用ガイド部材42によって正電極20の性能に支障を来すことがない。
【0046】
正極側未塗工部24には複数の正極側ガイド孔26が形成されている。複数の正電極用ガイド部材42は複数の正極側ガイド孔26に個別に挿通されている。この構成によれば、正電極20が正電極用ガイド部材42から外れる虞がない。正電極20を、平面視において、正電極貯積部40に対して確実に位置決めすることができる。
【0047】
2種類の負電極10は、2種類の負電極10が重なったときに上側の負電極10に隠れずに平面視において露出する負極側露出部17を有している。移送対象負電極18の下面に移送非対象負電極19が密着したときに、負電極用離脱装置60は、移送非対象負電極19の負極側露出部17のみに向けてエアを噴射する。この構成によれば、移送装置50に吸着された移送対象負電極18にはエアの噴射圧が作用しない。したがって、エアを噴射して移送非対象負電極19を移送対象負電極18から離脱させるときに、移送対象負電極18が移送装置50に対して位置ずれすることを防止できる。
【0048】
2種類の正電極20は、2種類の正電極20が重なったときに上側の正電極20に隠れずに平面視において露出する正極側露出部27を有している。移送対象正電極28の下面に移送非対象正電極29が密着したときに、正電極用離脱装置65は、移送非対象正電極29の正極側露出部27のみに向けてエアを噴射する。この構成によれば、移送装置50に吸着された移送対象正電極28にはエアの噴射圧が作用しない。したがって、エアを噴射して移送非対象正電極29を移送対象正電極28から離脱させるときに、移送対象正電極28が移送装置50に対して位置ずれすることを防止できる。
【0049】
負極側露出部17は、負電極10のうち負極側未塗工部14のみに形成されている。負極側未塗工部14は、損傷しても発電機能や起電機能に影響がないので、負極側未塗工部14にエアの噴射圧が作用しても、負電極10の性能に支障を来すことがない。正極側露出部27は、正電極20のうち正極側未塗工部24のみに形成されている。正極側未塗工部24は、損傷しても発電機能や起電機能に影響がないので、正極側未塗工部24にエアの噴射圧が作用しても、正電極20の性能に支障を来すことがない。
【0050】
負電極貯積部30に積層されている2種類の負電極10のうち一方の負電極10を上下反転させたときに、双方の負電極10の負極側未塗工部14の平面視形状は、同一である。したがって、用意する負電極10は1種類だけで済んでいる。正電極貯積部40に積層されている2種類の正電極20のうち一方の正電極20を上下反転させたときに、双方の正電極20の正極側未塗工部24の平面視形状は、同一である。したがって、用意する正電極20は1種類だけで済んでいる。
【0051】
負極側未塗工部14には、2種類の負電極10が重なったときに、下側の負電極10の負極側未塗工部14の負極側露出部17を露出させる負極側切欠部15が形成されている。この構成によれば、負極側露出部17を、負極側未塗工部14の外周縁から部分的に突出した形状にする必要がないので、負極側露出部17が異物の干渉によって変形することを防止できる。負極側切欠部15は、負極側未塗工部14の外周縁のうち直線状縁部(後縁部10Rと側縁部10S)の一部を凹ませた形状である。この構成によれば、開口縁が全周に亘って繋がった孔状の切欠部に比べると、平面視における負極側切欠部15の位置や負電極10の向きを目視で確認し易い。
【0052】
正極側未塗工部24には、2種類の正電極20が重なったときに、下側の正電極20の正極側未塗工部24の正極側露出部27を露出させる正極側切欠部25が形成されている。この構成によれば、正極側露出部27を、正極側未塗工部24の外周縁から部分的に突出した形状にする必要がないので、正極側露出部27が異物の干渉によって変形することを防止できる。正極側切欠部25は、正極側未塗工部24の外周縁のうち直線状縁部(前縁部20Fと側縁部20S)の一部を凹ませた形状である。この構成によれば、開口縁が全周に亘って繋がった孔状の切欠部に比べると、平面視における正極側切欠部25の位置や正電極20の向きを目視で確認し易い。
【0053】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
移送装置のエアの噴射圧が作用する露出部は、塗工部に設定してもよい。
2種類の電極は、未塗工部の平面視形状が同一で、塗工部の平面視形状が異なる組合せであってもよい。
2種類の電極は、一方の電極を上下反転させた状態においても双方の電極の未塗工部の平面視形状が異なるような組合せ(未塗工部の平面視形状が左右非対称な組合せ)であってもよい。
露出部は、未塗工部の外周縁から部分的に突出した形状のものでもよい。
切欠部は、開口縁が全周に亘って繋がった孔状のものでもよい。
【符号の説明】
【0054】
10…負電極(電極)
10R…負電極の後縁部(直線状縁部)
10S…負電極の側縁部(直線状縁部)
11…負極用基材(基材)
12…負極用スラリー(スラリー)
13…負極側塗工部(塗工部)
14…負極側未塗工部(未塗工部)
15…負極側切欠部(切欠部)
16…負極側ガイド孔(ガイド孔)
17…負極側露出部(露出部)
18…移送対象負電極(移送対象電極)
19…移送非対象負電極(移送非対象電極)
20…正電極(電極)
20F…正電極の前縁部(直線状縁部)
20S…正電極の側縁部(直線状縁部)
21…正極用基材(基材)
22…正極用スラリー(スラリー)
23…正極側塗工部(塗工部)
24…正極側未塗工部(未塗工部)
25…正極側切欠部(切欠部)
26…正極側ガイド孔(ガイド孔)
27…正極側露出部(露出部)
28…移送対象正電極(移送対象電極)
29…移送非対象正電極(移送非対象電極)
30…負電極貯積部(電極貯積部)
32…負電極用ガイド部材(ガイド部材)
40…正電極貯積部(電極貯積部)
42…正電極用ガイド部材(ガイド部材)
50…移送装置
55…セパレータ
56…積層台
60…負電極用離脱装置(離脱装置)
65…正電極用離脱装置(離脱装置)