(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122890
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】ロボット、制御方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
B25J 5/00 20060101AFI20230829BHJP
【FI】
B25J5/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026662
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】315014671
【氏名又は名称】東京ロボティクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098899
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 信市
(74)【代理人】
【識別番号】100163865
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 健
(72)【発明者】
【氏名】河田 武之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 健太
(72)【発明者】
【氏名】松尾 雄希
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS02
3C707BS10
3C707CS08
3C707ES03
3C707ET08
3C707HT20
3C707KS33
3C707KW03
3C707KX10
3C707LU06
3C707WA16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】効率的に密に物体を載置する。
【解決手段】移動体と、前記移動体に連結された、多関節アーム部と、前記多関節アーム部に備えられ、開閉する複数の爪を用いて物体を把持する、把持機構部と、前記把持機構部により把持された前記物体の載置目標位置を算出する、載置目標位置算出部と、前記物体を、前記載置目標位置から左右いずれかの障害物の無い方向に所定距離だけオフセットしたオフセット位置に載置する、オフセット載置処理部と、前記複数の爪のうち前記物体と前記障害物の間にある前記爪を、前記開閉動作方向に平行な軸回りに回動させて退避させる、爪退避処理部と、退避を行わなかった前記爪を用いて前記物体の側面を押すことにより、前記物体を前記障害物へと当接するまで移動させる、当接処理部と、を備えた、ロボットが提供される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体と、
前記移動体に連結された、多関節アーム部と、
前記多関節アーム部に備えられ、開閉する複数の爪を用いて物体を把持する、把持機構部と、
前記把持機構部により把持された前記物体の載置目標位置を算出する、載置目標位置算出部と、
前記物体を、前記載置目標位置から左右いずれかの障害物の無い方向に所定距離だけオフセットしたオフセット位置に載置する、オフセット載置処理部と、
前記複数の爪のうち前記物体と前記障害物の間にある前記爪を、前記開閉動作方向に平行な軸回りに回動させて退避させる、爪退避処理部と、
退避を行わなかった前記爪を用いて前記物体の側面を押すことにより、前記物体を前記障害物へと当接するまで移動させる、当接処理部と、
を備えた、ロボット。
【請求項2】
前記オフセット載置処理部は、
前記物体を、前記オフセット位置から鉛直上方向に所定距離だけオフセットした高さにおいて、前記載置目標位置より奥に配置された第2障害物に当接するまで移動させる、第2当接処理部と、
前記第2障害物に当接した前記物体を、前記載置目標位置の直下の第3障害物に当接するまで、鉛直下方向に移動させることにより載置する、第3当接処理部と、
を備える、請求項1に記載のロボット。
【請求項3】
前記複数の爪は、左右一対の爪であり、
爪退避処理部は、前記一対の爪のうち前記物体と前記障害物の間にある一方の前記爪を、前記開閉動作方向に平行な軸回りに回動させて退避させ、
前記当接処理部は、他方の前記爪を用いて前記物体の側面を押すことにより、前記物体を前記障害物へと当接させる、請求項1又は2のいずれか1項に記載のロボット。
【請求項4】
前記左右一対の爪は、直動機構により左右に開閉する、請求項3に記載のロボット。
【請求項5】
各前記爪は、互いに独立に開閉動作可能に構成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のロボット。
【請求項6】
前記当接処理部における前記物体の前記障害物への当接は、前記爪のみを駆動制御することにより行われる、請求項5に記載のロボット。
【請求項7】
前記オフセット載置処理部におけるオフセット量は、各前記爪の厚みより大きい、請求項1~6のいずれか1項に記載のロボット。
【請求項8】
前記ロボットは、力制御され、
前記当接処理部における前記物体の前記障害物への当接は、前記物体に働く外力が所定の閾値以上となるか否かにより判定される、請求項1~7のいずれか1項に記載のロボット。
【請求項9】
前記当接処理部における前記物体の前記障害物への当接は、前記物体に働く外力の時間変化量が所定の閾値以上となるか否かにより判定される、請求項1~7のいずれか1項に記載のロボット。
【請求項10】
前記当接処理部における前記物体の前記障害物への当接は、複数の異なる手法により当接判定した結果の論理積をとることにより判定される、請求項1~7のいずれか1項に記載のロボット。
【請求項11】
前記物体に働く外力は、前記多関節アーム部及び/又は前記把持機構部に備えられた力センサ又はトルクセンサの検出値、若しくは、前記ロボットにおいて構成される外乱オブザーバに基づいて前記多関節アーム部及び/又は前記把持機構部の関節角度から検出される、請求項8又は9のいずれか1項に記載のロボット。
【請求項12】
前記当接処理部は、退避を行わなかった前記爪を用いて、前記物体側面の高さ方向の中心平面から鉛直下向きに所定距離離れた位置を押すことにより、前記物体を前記障害物へと当接するまで移動させる、請求項1~11のいずれか1項に記載のロボット。
【請求項13】
前記物体は立方体形状又は直方体形状である、請求項1~12のいずれか1項に記載のロボット。
【請求項14】
前記物体は、上下方向に積み上げたときに互いに係合する構造を備え、
前記オフセット載置処理部は、
前記物体を、前記オフセット位置から鉛直上方向に所定距離だけオフセットした高さにおいて、前記載置目標位置より奥に配置された第2障害物に当接するまで移動させる、第2当接処理部と、
前記第2障害物に当接した前記物体を、前記載置目標位置の直下の第3障害物に当接するまで、鉛直下方向に移動させることにより載置する、第3当接処理部と、
前記物体を奥行方向に前後させて奥行方向の反力を検出することにより前記物体が上下の物体と係合しているかを確認する、係合確認処理部と、
を備えた、請求項1に記載のロボット。
【請求項15】
前記移動体は全方位移動台車である、請求項1~14のいずれか1項に記載のロボット。
【請求項16】
移動体と、
前記移動体に連結された、多関節アーム部と、
前記多関節アーム部に備えられ、開閉する複数の爪を用いて物体を把持する、把持機構部と、を備えたロボットの制御方法であって、
前記把持機構部により把持された前記物体の載置目標位置を算出する、載置目標位置算出ステップと、
前記物体を、前記載置目標位置から左右いずれかの障害物の無い方向に所定距離だけオフセットしたオフセット位置に載置する、オフセット載置処理ステップと、
前記複数の爪のうち前記物体と前記障害物の間にある前記爪を、前記開閉動作方向に平行な軸回りに回動させて退避させる、爪退避処理ステップと、
退避を行わなかった前記爪を用いて前記物体の側面を押すことにより、前記物体を前記障害物へと当接するまで移動させる、当接処理ステップと、
を備えた、制御方法。
【請求項17】
移動体と、
前記移動体に連結された、多関節アーム部と、
前記多関節アーム部に備えられ、開閉する複数の爪を用いて物体を把持する、把持機構部と、
前記把持機構部により把持された前記物体の載置目標位置を算出する、載置目標位置算出部と、を備えたロボットを含むシステムであって、
前記物体を、前記載置目標位置から左右いずれかの障害物の無い方向に所定距離だけオフセットしたオフセット位置に載置する、オフセット載置処理部と、
前記複数の爪のうち前記物体と前記障害物の間にある前記爪を、前記開閉動作方向に平行な軸回りに回動させて退避させる、爪退避処理部と、
退避を行わなかった前記爪を用いて前記物体の側面を押すことにより、前記物体を前記障害物へと当接するまで移動させる、当接処理部と、
を備えた、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ロボット、特に、モバイルマニピュレータ等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物流現場等においてロボットの導入が試みられている。そのような現場において、ロボットには、ワーク等の物体を把持して移動し、再び、載置するといった作業(例えば、パレタイジング作業等)を実行することが求められる。例えば、特許文献1には、パレタイズ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種のロボットにおいては、把持した物体をパレット上に密に載置することが要求される。
【0005】
例えば、特許文献1には、固定側プレートと、固定側プレートより相対的に長い可動側プレートを備えたハンド部を用いてワークを整列させる構成が開示されている。同構成においては、ハンド部を上方に移動させることにより固定側プレートを退避させ、可動側プレートの下端を用いてワークを移動させ密に整列させていた。
【0006】
しかしながら、このような構成によれば、固定側プレートを退避させるためにハンド部全体を移動させる大がかりな制御が必要であった。そのため、十分な作業効率が得られなかった。
【0007】
本発明は上述の技術的背景に鑑みてなされたものであり、その目的は、効率的に密に物体を載置することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の技術的課題は、以下の構成を有するロボット、制御方法、システム等により解決することができる。
【0009】
すなわち、本発明に係るロボットは、移動体と、前記移動体に連結された、多関節アーム部と、前記多関節アーム部に備えられ、開閉する複数の爪を用いて物体を把持する、把持機構部と、前記把持機構部により把持された前記物体の載置目標位置を算出する、載置目標位置算出部と、前記物体を、前記載置目標位置から左右いずれかの障害物の無い方向に所定距離だけオフセットしたオフセット位置に載置する、オフセット載置処理部と、前記複数の爪のうち前記物体と前記障害物の間にある前記爪を、前記開閉動作方向に平行な軸回りに回動させて退避させる、爪退避処理部と、退避を行わなかった前記爪を用いて前記物体の側面を押すことにより、前記物体を前記障害物へと当接するまで移動させる、当接処理部と、を備えている。
【0010】
このような構成によれば、爪を開閉動作方向に平行な軸回りに回動させて退避させるので、効率的に密に物体を載置することができる。さらに、物体を障害物に当接させるまで移動させるので精緻な位置制御が不要となり、制御をより簡略化することができる。なお、障害物には例えば、隣り合うワーク、壁等が含まれる。
【0011】
前記オフセット載置処理部は、前記物体を、前記オフセット位置から鉛直上方向に所定距離だけオフセットした高さにおいて、前記載置目標位置より奥に配置された第2障害物に当接するまで移動させる、第2当接処理部と、前記第2障害物に当接した前記物体を、前記載置目標位置の直下の第3障害物に当接するまで、鉛直下方向に移動させることにより載置する、第3当接処理部と、を備えてもよい。
【0012】
このような構成によれば、左右方向に加えて奥行方向においても密な載置を行うことができる。また、物体を障害物に当接させるまで移動させるので精緻な位置制御が不要となり、制御を簡略化することができる。
【0013】
前記複数の爪は、左右一対の爪であり、爪退避処理部は、前記一対の爪のうち前記物体と前記障害物の間にある一方の前記爪を、前記開閉動作方向に平行な軸回りに回動させて退避させ、前記当接処理部は、他方の前記爪を用いて前記物体の側面を押すことにより、前記物体を前記障害物へと当接させる、ものであってもよい。
【0014】
このような構成によれば、左右一対の爪を用いて把持物体を密に載置することができる。
【0015】
前記左右一対の爪は、直動機構により左右に開閉する、ものであってもよい。
【0016】
このような構成によれば、直線的な開閉動作という簡潔な構成により、把持動作や載置動作を実現することができる。
【0017】
各前記爪は、互いに独立に開閉動作可能に構成されている、ものであってもよい。
【0018】
このような構成によれば、把持位置や載置位置を自在に変更することができる。
【0019】
前記当接処理部における前記物体の前記障害物への当接は、前記爪のみを駆動制御することにより行われる、ものであってもよい。
【0020】
このような構成によれば、移動体や多関節アーム部を駆動する必要がないため、簡潔な制御により迅速に載置作業を実現することができる。
【0021】
前記オフセット載置処理部におけるオフセット量は、各前記爪の厚みより大きい、ものであってもよい。
【0022】
このような構成によれば、障害物と物体との間に安全に爪を配置することができる。
【0023】
前記ロボットは、力制御され、前記当接処理部における前記物体の前記障害物への当接は、前記物体に働く外力が所定の閾値以上となるか否かにより判定される、ものであってもよい。
【0024】
このような構成によれば、物体に働く反力を検出することにより、当接を検出することができる。
【0025】
前記当接処理部における前記物体の前記障害物への当接は、前記物体に働く外力の時間変化量が所定の閾値以上となるか否かにより判定される、ものであってもよい。
【0026】
このような構成によれば、物体に働く反力の時間変化量を検出することにより、当接を検出することができる。
【0027】
前記当接処理部における前記物体の前記障害物への当接は、複数の異なる手法により当接判定した結果の論理積をとることにより判定される、ものであってもよい。
【0028】
このような構成によれば、より正確に当接判定を行うことができる。
【0029】
前記物体に働く外力は、前記多関節アーム部及び/又は前記把持機構部に備えられた力センサ又はトルクセンサの検出値、若しくは、前記ロボットにおいて構成される外乱オブザーバに基づいて前記多関節アーム部及び/又は前記把持機構部の関節角度から検出される、ものであってもよい。
【0030】
このような構成によれば、ロボットに備えられたセンサ等に基づいて、物体に働く外力を検出することができる。
【0031】
前記当接処理部は、退避を行わなかった前記爪を用いて、前記物体側面の高さ方向の中心平面から鉛直下向きに所定距離離れた位置を押すことにより、前記物体を前記障害物へと当接するまで移動させる、ものであってもよい。
【0032】
このような構成によれば、物体を押す際に物体が転倒したり傾くことを防止することができる。
【0033】
前記物体は立方体形状又は直方体形状である、ものであってもよい。
【0034】
このような構成によれば、ロボットにより箱型の物体を操作することができる。
【0035】
前記物体は、上下方向に積み上げたときに互いに係合する構造を備え、前記オフセット載置処理部は、前記物体を、前記オフセット位置から鉛直上方向に所定距離だけオフセットした高さにおいて、前記載置目標位置より奥に配置された第2障害物に当接するまで移動させる、第2当接処理部と、前記第2障害物に当接した前記物体を、前記載置目標位置の直下の第3障害物に当接するまで、鉛直下方向に移動させることにより載置する、第3当接処理部と、前記物体を奥行方向に前後させて奥行方向の反力を検出することにより前記物体が上下の物体と係合しているかを確認する、係合確認処理部と、を備えていてもよい。
【0036】
このような構成によれば、上下に係合する構造を有する物体を精度良く左右及び奥行方向に密に載置することができる。
【0037】
前記移動体は全方位移動台車であってもよい。
【0038】
このような構成によれば、床面上を自在に移動することができる。
【0039】
別の側面から見た本発明は、移動体と、前記移動体に連結された、多関節アーム部と、前記多関節アーム部に備えられ、開閉する複数の爪を用いて物体を把持する、把持機構部と、を備えたロボットの制御方法であって、前記把持機構部により把持された前記物体の載置目標位置を算出する、載置目標位置算出ステップと、前記物体を、前記載置目標位置から左右いずれかの障害物の無い方向に所定距離だけオフセットしたオフセット位置に載置する、オフセット載置処理ステップと、前記複数の爪のうち前記物体と前記障害物の間にある前記爪を、前記開閉動作方向に平行な軸回りに回動させて退避させる、爪退避処理ステップと、退避を行わなかった前記爪を用いて前記物体の側面を押すことにより、前記物体を前記障害物へと当接するまで移動させる、当接処理ステップと、を備えている。
【0040】
別の側面から見た本発明は、システムであって、移動体と、前記移動体に連結された、多関節アーム部と、前記多関節アーム部に備えられ、開閉する複数の爪を用いて物体を把持する、把持機構部と、前記把持機構部により把持された前記物体の載置目標位置を算出する、載置目標位置算出部と、を備えたロボットを含み、前記物体を、前記載置目標位置から左右いずれかの障害物の無い方向に所定距離だけオフセットしたオフセット位置に載置する、オフセット載置処理部と、前記複数の爪のうち前記物体と前記障害物の間にある前記爪を、前記開閉動作方向に平行な軸回りに回動させて退避させる、爪退避処理部と、退避を行わなかった前記爪を用いて前記物体の側面を押すことにより、前記物体を前記障害物へと当接するまで移動させる、当接処理部と、を備えている。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、効率的に密に物体を載置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図3】
図3は、箱型のワークの例に係る説明図である。
【
図4】
図4は、ロボットの動作に関するゼネラルフローチャートである。
【
図5】
図5は、載置目標位置の算出処理に関する説明図である。
【
図6】
図6は、奥のワークに当接させる処理に関する説明図である。
【
図7】
図7は、下のワークに当接させる処理に関する説明図である。
【
図8】
図8は、ワークを載置した状態に関する説明図である。
【
図9】
図9は、爪の退避処理に関する説明図である。
【
図10】
図10は、右側の爪でワークの右側面を押す処理に関する説明図である。
【
図11】
図11は、本実施形態に係るコンテナ型のワークの説明図である。
【
図12】
図12は、ロボットの動作に関するゼネラルフローチャートである。
【
図13】
図13は、ワークを下に押し当てる処理を開始した直後の状態を示す説明図である。
【
図14】
図14は、上下のワークが係合した状態を示した説明図である。
【
図16】
図16は、グリッパの一方の爪をワーク止めとして利用する例に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の好適な実施の形態について添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0044】
(1.第1の実施形態)
第1の実施形態として、本発明をグリッパ150を備えた移動式のロボット100、すなわち、モバイルマニピュレータに対して適用した例について説明する。
【0045】
なお、本実施形態においては、物体を挟持する装置をグリッパと称するものの、エンドエフェクタ、ハンド等、他の名称により称呼してもよい。また、本発明の適用対象は、モバイルマニピュレータに限定されない。従って、移動機能を備えないロボット、又は、他の機能を有するロボットに適用してもよい。
【0046】
(1.1 ロボットの構成)
図1は、本実施形態に係るロボット100の外観斜視図である。なお、同図においては、カメラが省略して記載されている点に留意されたい。
【0047】
図1から明らかな通り、本実施形態に係るロボット100は、床面上を移動するための移動機構である台車部11と、台車部11の天面を基端とする多関節アーム部(21、31、41、42)と、多関節アーム部の先端に取り付けられたグリッパ150と、から構成されている。
【0048】
なお、以下では、説明の便宜上、
図1における鉛直上方向を上、鉛直下方向を下、グリッパ150が設けられている面を正面、その反対側を背面と称することがある。また、背面を背にして右側を右、左側を左、左右をまとめて側面と称することがある。
【0049】
また、本実施形態においてはエンドエフェクタの例示としてグリッパ150を採用するものの、他のエンドエフェクタを採用してもよい。
【0050】
台車部11は、上方向にやや窄まった略円柱状の筐体を有し、筐体天面には平面が設けられている。台車部11の筐体内部の底面側には、4つのオムニホイール12が設けられている。オムニホイール12とは、車輪の回転と円周上の樽の回転の組み合わせにより、全方位への移動を可能とする車輪である。このオムニホイール12により、台車部11は全方位に自在に移動することができる。
【0051】
なお、本実施形態においては、全方位への移動機構としてオムニホイールを採用するものの、本発明はこのような構成に限定されない。従って、メカナムホイール等、全方位移動を可能とする他の車輪を採用してもよい。また、移動機構は、全方位移動機構に限定されない。従って、移動方位が限定された他の移動機構を採用してもよい。さらに、移動機構は、多関節アーム部とグリッパ150とを移動させることができるものであればよい。従って、例えば、床面上を移動するものに限定されず、天井から吊り下げられる移動機構、又は飛行する移動機構等であってもよい。
【0052】
台車部11の天面には、第1関節部(J1)を介して、第1リンク21が連結されている。第1関節部(J1)は、第1リンク21を、鉛直方向に延びる第1の軸回りに、前記台車部11に対して回動させる。なお、第1関節部(J1)は不図示のアクチュエータにより駆動される駆動関節である。
【0053】
第1リンク21の上部は、第2関節部(J2)を介して、第2リンク31と連結されている。第2関節部(J2)は、第2リンク31を、第1の軸と直交する水平軸である第2の軸回りに、前記第1リンク21に対して回動させる。なお、第2関節部(J2)は、不図示のアクチュエータにより駆動される駆動関節である。
【0054】
第2リンク31は、J字形状を有しており、その直線部にはリニアガイド部が設けられている。第3リンク41は、このリニアガイド部(第3の軸)上を摺動して、第3関節部(J3)を構成する。同図の姿勢においては、第3の軸は、鉛直方向軸である。
【0055】
なお、第3リンク41は、底面に開口を有する中空の略直方体形状を有している。また、第3関節部(J3)は、不図示のアクチュエータにより駆動される駆動関節である。
【0056】
第3リンク41の上部かつ正面側には、第4リンク42が固定されている。グリッパ150は、第4関節部(J4)を介して、第4リンク42の正面側先端部に連結されている。第4関節部(J4)は、グリッパ150を、第2の軸と平行な水平軸である第4の軸回りに、前記第4リンク42に対して回動させる。なお、第4関節部(J4)は、不図示のアクチュエータにより駆動される駆動関節である。
【0057】
グリッパ150は、基端部において第4の関節部(J4)を介して第4リンク42へと回動可能に連結されるグリッパ本体部51と、グリッパ本体部51から左右に延びて直動する出力リンク52L、52Rと、各出力リンク52L、52Rの先端部に取り付けられる爪連結部53L、53Rと、爪連結部53L、53Rの内側に連結される爪54L、54Rと、から構成されている。なお、符号のLはグリッパ150の左側の構成を表し、Rは右側の構成を表している。
【0058】
グリッパ本体部51は、第4の関節部(J4)を介して第4リンク42へと回動可能に連結されると共に、その筐体は、出力リンク52L、52Rを駆動する直動機構とそのアクチュエータ等を内部に保持する。
【0059】
本実施形態において、直動機構は、ボールねじとリニアガイドとから構成されている。直動機構により直動する出力リンク52L、52Rは、グリッパ本体部51の正面側の左右の側面に上下に設けられた開口部から、互いに平行に突出している。
【0060】
右側から延びる出力リンク52Rは直動するよう駆動され、第5の関節部(J5)を構成する。同様に、左側から延びる出力リンク52Lも直動するよう駆動され、第6の関節部(J6)を構成する。これらの出力リンク52L、52Rを駆動することにより爪54L、54Rを平行に維持した状態での開閉動作が実現される。
【0061】
なお、直動機構は上述のものに限定されず、他の機構を採用してもよい。例えば、ボールねじに代えてすべりねじ等他の部品を採用してもよい。
【0062】
出力リンク52L、52Rの先端には、出力リンク52L、52Rに直交し正面方向へと延びる爪連結部53L、53Rが取り付けられている。爪連結部53L、53Rの内部には、その内面側に取り付けられる爪54L、54Rを回動させる不図示のアクチュエータが配置されている。
【0063】
爪54L、54Rは、略長円形状を有する。ただし、後述するように、爪54L、54Rは、爪連結部53L、53Rとの連結部近傍において緩やかに屈曲した形状を有している。
【0064】
左側の爪54Lの基端は、爪連結部53Lの内面側に回動自在に連結されて駆動され、第7の関節部(J7)を構成する。同様に、右側の爪54Rの基端は、爪連結部53Rの内面側に回動自在に連結されて駆動され、第8の関節部(J8)を構成する。以下では、便宜上、第7の関節部及び第8の関節部を、それぞれ爪屈曲関節部(J7、J8)と呼ぶことがある。
【0065】
なお、爪54L、54Rの回動動作を揺動と表現してもよい。また、爪の語は、グリッパ150において対象物を挟んで把持する部品を意味する。従って、挟持体、挟持片、把持体又は把持片等の他の用語により表現してもよい。また、大きさや形状について限定はなく、小片に限定されない。
【0066】
本実施形態においては、第1~第8の各関節部(J1~J8)及び台車部11の車輪には、それぞれ、各種の検出手段が備えられている。より詳細には、各関節部(J1、J2、J4、J7、J8)及び台車部11の車輪には、不図示の角度センサ、直動する関節部(J3、J5、J6)には位置センサが備えられている。また、第1~第4の各関節部(J1~J4)には、さらに力センサが備えられている。これらのセンサからの検出値に基づいて、後述の制御部115は、ロボット100の姿勢や、ロボット100の各所に加えられる力やモーメントを算出又は推定することができる。
【0067】
例えば、各種検出値に基づいて、爪54L、54Rの先端部の3軸方向に加わる力を算出することができる。なお、z方向は、開閉動作方向、把持動作方向又は押し込み方向を表し、x、y軸方向は、環境との接触方向を示している。
【0068】
なお、本実施形態においては、第1~第4の各関節部(J1~J4)に力センサを設ける構成について説明したが、本発明はそのような構成に限定されない。従って、各前記爪54L、54Rの付け根に力又はモーメントの検出手段となるセンサ(トルクセンサ等)を設けてもよい。また、力センサを設けることなく外力を推定してもよい。例えば、ロボット100の制御系において外乱オブザーバを構成し、当該外乱オブザーバを用いて第1~第8の各関節部(J1~J8)に設けられた角度センサの検出値からロボット100やその把持物体へと加えられる外力を推定してもよい。
【0069】
図2は、ロボット100の機能ブロック図である。同図から明らかな通り、ロボット100はその内部にマイコン110を備えており、マイコン110は、各関節部(J1~J8)及び移動台車部210に設けられたアクチュエータ及びセンサと接続されている。また、マイコン110は、不図示の認識用のカメラと接続されている。
【0070】
なお、同図において、第1~第8の各関節部(J1~J8)及び移動台車部210は、各関節部又は台車部11に備えられた各種のアクチュエータ及びセンサを表している。
【0071】
マイコン110は、記憶部111、通信部112、I/O部113、制御部115を備えている。記憶部111は、ROM、RAM、ハードディスク、フラッシュメモリ等の記憶装置であり、後述の各種のデータやプログラム等を記憶している。通信部112は、外部との送受信を行う通信ユニットであり、外部装置やシステムとの間の通信を行う。I/O部113は、外部装置との入出力を行う。
【0072】
制御部115は、CPU等の制御装置であり、記憶部111に記憶された各種のプログラム等を読み込んで実行する処理を行う。例えば、各関節部又は移動台車部に設けられたアクチュエータに対して動作指令を行ったり、各関節又は移動台車部に設けられたセンサからの検出情報に基づき姿勢等の算出処理を行う。
【0073】
なお、同図において、バッテリ等の電源装置については記載が省略されている。
【0074】
また、ロボット100の機能ブロックは、本実施形態に係る構成に限定されない。従って、機能の一部を外部情報処理装置等において実行する等してシステムとして構成してもよい。
【0075】
図3は、本実施形態において、ロボット100により把持、搬送又は載置される箱型のワーク71~73の例に係る説明図である。同図から明らかな通り、ワーク71~73は、直方体形状を有しており、互いに積み上げることができる。例えば、ワーク71~73は、段ボール箱等である。なお、本実施形態においては、グリッパ150による把持対象物をワークと称するものの、このような称呼に限定されない。従って、単に物体、箱等と称してもよい。
【0076】
(1.2 ロボットの動作)
図4は、把持しているワーク70を既に積まれたワーク71~76上へと密に載置する場合のロボット100の動作に関するゼネラルフローチャートである。
【0077】
同図から明らかな通り、処理が開始すると、把持ワーク70の載置目標位置の算出処理が行われる(S11)。
【0078】
図5は、載置目標位置の算出処理に関する説明図である。同図(A)は、ロボット100の右側面を表した動作説明図(その1)であり、ワーク70を爪54L、54Rにより把持した初期状態を示している。なお、同図において、ロボットの構成は簡略化して記載されている。また、載置されたワークの下にはパレット79が配置されている。
【0079】
同図(B)は、載置目標位置に関する説明図である。同図においては、既に載置されているワークが示されており、具体的には、ワーク72、73、75、77(77は不図示)が下段に密に4つ配置されると共に、それらのワークの上(上段)には、右手前を除き、3つのワーク71、74、76が載置されている。
【0080】
なお、以下では、ワーク71~73を手前のワーク、ワーク74~77を奥のワークと称することがある。また、ワーク72、73、75、77を下段のワーク、ワーク71、74、76を上段ワークと称することがある。さらに、把持ワーク70を基準として、ワーク71を左隣りのワーク、ワーク72を下のワーク、ワーク74を奥(又は前方)のワークと称することがある。
【0081】
同図(B)から明らかな通り、本実施形態においては、密にワーク同士を載置するため、右手前の空間(ワーク72の上の空間)の中心が載置目標位置(P1)として設定される。なお、載置目標位置は、ロボット100に備えられたカメラを用いてワークの認識処理を行うことにより設定されてもよい。
【0082】
図4に戻り、載置目標位置の算出処理が完了すると、載置目標位置(P1)に基づき、オフセット載置位置の設定処理が行われる(S12)。
【0083】
図5(B)から明らかな通り、オフセット載置位置(P2)は、載置目標位置(P1)と同じ高さであって、隣にワークが存在しない解放側(同図右側)に所定距離離れた(オフセットした)位置に設定される。なお、このとき、オフセット量は、各前記爪54L、54Rの厚みより大きく設定されている。
【0084】
このような構成によれば、爪が左隣りのワーク71へと接触することを防止することができる。
【0085】
図4に戻り、オフセット載置位置の設定処理が完了すると、把持しているワーク70を奥のワーク74へと当接するまで搬送して移動させる処理が行われる(S13)。
【0086】
図6は、奥のワークに当接させる処理に関する説明図である。同図(A)は、ロボット100の右側面を表した動作説明図(その2)であり、把持したワーク70を奥のワーク74へと当接させた状態を示している。
【0087】
同図(B)は、ワーク搬送位置(P3)に関する説明図である。同図から明らかな通り、ロボット100は、グリッパ150を用いて、オフセット位置(P2)の鉛直上方であって、把持ワーク70の背面が奥のワーク73へと当接する程度の適当な高さ(P3)へとワーク70を搬送して移動させる。
【0088】
ロボット100は、ワーク70において奥のワーク74からの反力が検出されるまでワーク70を搬送する。より詳細には、ロボット100は、力制御されており、各関節に備えられた力センサの検出値から推定されるワーク70における外力が閾値以上となるか否かにより当接を判定する。把持ワーク70が奥のワーク74から反力を受けたと判定された場合、ロボットは搬送動作を停止させる。
【0089】
このような構成によれば、奥行方向において密な載置を行うことができる。また、物体を障害物(奥のワーク74)に当接させるまで移動させるので精緻な位置制御が不要となり、制御を簡略化することができる。
【0090】
図4に戻り、奥のワークへの当接処理が完了すると、次に下のワーク72へ当接するまでワーク70を搬送して移動させる処理が行われる(S15)。
【0091】
図7は、下のワーク72に当接させる処理に関する説明図である。同図(A)は、ロボット100の右側面を表した動作説明図(その3)であり、把持したワーク70を下のワーク72へと当接させた状態を示している。
【0092】
ロボット100は、奥のワーク74に当接した位置から、ワーク70において下のワーク72からの反力が検出されるまで鉛直下方へとワーク70を搬送する。より詳細には、ロボット100は、力制御されており、各関節に備えられた力センサの検出値から推定されるワーク70における外力が閾値以上となるか否かにより当接を判定する。把持ワーク70が下のワーク72から反力を受けたと判定された場合、ロボットは搬送動作を停止させる。
【0093】
同図(B)は、ワーク70が下のワーク72へと当接したときの状態を示す平面図である。同図から明らかな通り、当接した状態において、把持ワーク70の中心は、前述のオフセット位置とおよそ一致している。
【0094】
図4に戻り、下のワーク72への当接処理が完了すると、ロボット100の爪54L、54Rを把持ワーク70を解放する程度に左右に開いて、下のワーク72上に載置する処理が実行される(S16)。
【0095】
図8は、ワーク70を載置した状態に関する説明図である。同図(A)は、ロボット100の右側面を表した動作説明図(その4)であり、把持したワーク70を下のワーク72上に載置した状態を示している。
【0096】
同図(B)は、把持ワーク70を載置する直前の状態を示す平面図である。同図から明らかな通り、ロボット100は、左右の爪54L、54Rを同図中の矢印の方向に同時に開く動作を行い、把持ワーク70を解放して下のワーク72上に載置する。
【0097】
図4に戻り、ワーク70の載置処理が完了すると、左隣りのワーク71と載置したワーク70との間にある爪54Lの退避処理が行われる(S17)。
【0098】
図9は、爪54Lの退避処理に関する説明図である。同図(A)は、ロボット100の右側面を表した動作説明図(その5)であり、左隣りのワーク71と載置したワーク70との間にある爪54Lを退避させる前後の状態を示している。同図中の2点鎖線で示したリンクは、退避後の爪54Lを表す。
【0099】
同図から明らかな通り、爪54Lの退避は、第8関節部(J8)における爪54Lの回動(又は揺動)、すなわち、開閉動作方向に平行な軸回りの爪54Lの回動により実現される。
【0100】
このような構成によれば、台車部11、多関節アーム部又はグリッパ150等を制御することなしに、簡易な制御により、効率的に載置したワーク70と隣り合うワーク71との間の爪54Lを退避させることができる。
【0101】
同図(B)は、爪54Lを退避させた状態を示す平面図である。同図から明らかな通り、爪54Lの退避により、左隣りのワーク71と載置したワーク70との間の空間は、何もない状態となっている。
【0102】
図4に戻り、爪54Lの退避処理の後、左隣りのワーク71に載置したワーク70が当接するまで、右側の爪54Rでワーク70の右側面を押す処理が行われる(S18)。この処理の後、一連の載置処理は終了する。
【0103】
図10は、右側の爪54Rでワーク70の右側面を押す処理に関する説明図である。同図(A)は、ロボット100の右側面を表した動作説明図(その5)であり、載置したワーク70を右側の爪54Rを用いて右側面から押す様子を表している。
【0104】
同図(B)は、ワーク70が左隣りのワーク71へと当接した状態を示す平面図である。同図から明らかな通り、ロボット100は、右側の爪54Rを用いてワーク70の右側面を押すことで、ワーク70を下のワーク72上で滑らせ、左隣りのワーク71の右側面へと当接させる。
【0105】
ロボット100は、ワーク70において左隣りのワーク71からの反力が検出されるまでワーク70を押す。より詳細には、ロボット100は、力制御されており、各関節に備えられた力センサの検出値から推定されるワーク70における外力が閾値以上となるか否かによりワーク71への当接を判定する。把持ワーク70が左隣りのワーク71から反力を受けたと判定された場合、ロボットは押し込み動作を停止させる。
【0106】
このような構成によれば、ワーク70が隣り合うワーク71に当接するまで移動されるので精緻な位置制御が不要となり、制御をより簡略化することができる。
【0107】
(2.第2の実施形態)
第1の実施形態においては、把持、搬送又は載置の対象となるワークは、段ボール等の箱型のワークであった。しかしながら、本発明の適用範囲はこのような範囲に限定されない。従って、本発明を開口部を有するコンテナ型のワークに対して適用することもできる。
【0108】
(2.1 構成)
本実施形態に用いられるロボット100は、第1の実施形態と同一であるので詳細な説明は省略する。
【0109】
図11は、本実施形態に係るコンテナ型のワークの説明図である。同図左側には、天地逆転の状態でコンテナ81が1段配置され、右側には2つのコンテナ82、83が上下2段に互いに係合した状態で配置されている。
【0110】
同図から明らかな通り、各コンテナの底面には凸部81aが設けられ、また、各コンテナの開口部上端82bは凸部81aと嵌まり合う形状となっている。これにより、コンテナ同士を上下に配することにより互いに係合させることができるので、コンテナ同士の水平方向のずれを防止することができる。
【0111】
(2.2 動作)
図12は、把持ワークを既に載置されたワークへと密に載置する場合のロボット100の動作に関するゼネラルフローチャートである。
【0112】
載置目標位置の算出処理から下のワークに当接する処理までの処理(S31~S35)は、第1の実施形態(S11~S15)と略同一であるので詳細な説明は省略する。
【0113】
下のワークに当接させる処理を行った後、ロボット100は、把持しているワークが奥行方向に嵌まっているかを確認する処理を行う(S36)。
【0114】
より詳細には、把持ワークが下のワークと奥行方向に嵌まっているかを確認する処理は、把持ワークを奥行き方向に前後に移動させ、そのときの把持ワークにおける奥行方向の外力を検出して、外力が所定の閾値以上となるかを判定することにより行う。
【0115】
すなわち、奥行方向に嵌まっている場合には、把持ワークを所定量移動させると、把持ワークがコンテナの内面に当接して比較的に大きな反力が観測される。一方、把持ワークが下のワークに嵌まっていない場合には、把持ワークにおいて反力は観測されないか又は小さい。
【0116】
上下のワークが嵌まっていると判定された場合には(S37YES)、処理は、第1の実施形態と同様に、爪54L、54Rを開いてワークを載置する処理へと進む(S38)。一方、上下のワークが嵌まっていないと判定された場合(S37NO)。把持ワークにおいて所定の反力が検出されるまで、把持ワークを鉛直下方向に押し当てたまま、後退する処理を行う(S38)。
【0117】
図13は、ワークを下に押し当てる処理(S38)を開始した直後の状態を示す説明図である。同図においては、第1の実施形態と同様に、下段に4つ、上段に3つのコンテナであるワークが配置されている。また、上下のワークは凸部81aと開口部上端82bとを介して係合しているものの図では、説明の分かりやすさのため、やや離れて描かれている。さらに、載置されたワークの下にはパレット89が配置されている。
【0118】
同図(A)は、ロボット100の右側面を表した動作説明図(その7)であり、把持ワーク80を鉛直下方、すなわち、下のワーク87へと押し付けつつ、ロボット100が後退を開始した直後の様子を表している。
【0119】
同図(B)は、ロボット100が後退する直前の状態を示す平面図である。同図から明らかな通り、把持ワーク80と下のワーク87とは、奥行き方向において位置が整合せず、互いに係合していない。従って、この状態では把持ワーク80が奥行方向に嵌まっていることは確認できない。そこで、把持ワーク80を鉛直下方向に押し当てたまま台車部11を後退させる処理が実行される(S38)。
【0120】
図14は、ワークを鉛直下方向に押し当てたままロボット100が後退したことで、上下のワークが係合し、所定の反力が検出された状態を示した説明図である。同図(A)は、ロボット100の右側面を表した動作説明図(その8)であり、後退(同図破線矢印)により、把持ワーク80が下のワーク87へと嵌まった直後の様子を表している。同図(B)は、把持ワーク80が下のワーク87へと嵌まった直後の様子を表す正面図である。
【0121】
同図から明らかな通り、ワークを鉛直下方向に押し当てたまま後退することで、ワークの底面の凸部81aが下のワーク87の開口部上端82bへと嵌まる。このとき、特に、同図(B)から明らかな通り、把持ワーク80は左右方向についてはオフセット位置にあることから、係合により傾くこととなる。このように把持ワーク80が傾いて下のワーク87の内周面に当接することにより、ワーク80において奥行き方向に反力が検出される。この反力が検出されると、ワーク80の搬送動作は停止する。
【0122】
図12に戻り、把持ワークと下のワークとの間の係合が行われると、第1の実施形態と同様に左右の爪54L、54Rを開いてワークを載置する処理が実行される(S38)。その後の爪の退避処理(S41)、右側面からワークを押す処理(S42)は、第1の実施形態に係る処理(S17、S18)と略同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0123】
このような構成によれば、上下に係合する構造を有するコンテナ等の物体についても精度良く左右に密に載置することができる。
【0124】
(3.変形例)
本発明は、様々に変形して実施することができる。
【0125】
第2の実施形態においては、コンテナ型のワーク80を側面から押す方法に関して特段の限定はないものの、本発明においては、ワーク80を押す方法に関してさらに詳細な設計を行ってもよい。従って、例えば、爪54等を用いてワーク80の側面を押す場合に、ワーク側面のうちワークの高さ方向の中心面より下側を押すような構成としてもよい。
【0126】
図15は、コンテナ型のワーク80を押す場合の押す位置に関する説明図である。同図(A)は、ワークを側面から押す場合の位置に関する説明図である。
【0127】
同図から明らかな通り、ワーク80の側面のうち高さ方向の中心面より上側を押す場合(Aの矢印により表現)、当該力によりワーク80に発生するモーメントは、ワーク80の下のワーク87上での転倒を促進することとなる。ワーク80が力学的に転倒限界に至った場合、同図(B)に示す通り、ワーク80が下のワーク87の内部へと落ち込んでしまう。
【0128】
一方、ワーク80の側面のうち高さ方向の中心面より下側を押す場合(Bの矢印により表現)、上側を押す場合に比べて、ワーク80に働くモーメントの観点から、ワーク80は転倒しにくくなる。
【0129】
このような構成によれば、ワーク、特に、コンテナ型のワークを押す際に物体が転倒したり傾くことを防止することができる。その結果、より確実に載置動作を実現することができる。
【0130】
上述の実施形態においては、載置したワークを隣り合うワークへと当接させる構成を採用したが、本発明においては何らかの障害物であればよく、当接させる対象物はそのような構成に限定されない。従って、例えば、ワークに代えて壁等へと当接させてもよい。
【0131】
また、例えば、隣り合うワークが存在しない場合等にあっては、一方の爪をワーク止めとして活用し、他方の爪で載置したワークを側面から押す構成としてもよい。
【0132】
図16は、グリッパ150の一方の爪54Rをワーク止めとして利用する例に関する説明図である。同図においては、2つの箱型のワーク91、92が上下に積まれた列の上にさらに3段目としてワーク93を載置する例が描かれている。なお、同図においては説明の便宜のため、グリッパ150以外の構成、例えば、多関節アーム部、台車部等の構成は省略されている。
【0133】
同図から明らかな通り、グリッパ150の右側の爪54Rは、ワーク92に沿っており3段目に来るワーク93を2段目のワーク92の端面で止めるワーク止めの機能を有している。このような状態において、左側の爪54Lを閉じてワーク93の側面を押すことにより、ワーク93を2段目のワークに整合させて載置することができる。
【0134】
このような構成によれば、隣り合うワークが存在しない場合にあっても、把持ワークを整列させて載置することができる。
【0135】
上述の実施形態においては、当接の検出のための反力の検出を外力が所定の閾値を超えたか否かにより判定したが、要するに反力が検出できればよいので、本発明はそのような構成に限定されない。
【0136】
従って、例えば、外力の時間変化量が所定の閾値を超えるか否かにより判定するものであってもよいし、既知の他の手法により反力を検出してもよい。
【0137】
また、例えば、複数の異なる手法により当接判定を行い、その結果の論理積をとることにより当接判定を行ってもよい。このような構成によれば、より正確に当接判定を行うことができる。
【0138】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。また、上記の実施形態は、矛盾が生じない範囲で適宜組み合わせ可能である。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明は、ロボット等を製造する産業において利用可能である。
【符号の説明】
【0140】
11 台車部
12 オムニホイール
21 第1リンク
31 第2リンク
41 第3リンク
42 第4リンク
51 グリッパ本体部
52 出力リンク
53 爪連結部
54 爪
100 ロボット
150 グリッパ
70 ワーク(箱型)
71 ワーク(箱型)
72 ワーク(箱型)
73 ワーク(箱型)
74 ワーク(箱型)
75 ワーク(箱型)
76 ワーク(箱型)
77 ワーク(箱型)
79 パレット
80 ワーク(コンテナ型)
81 ワーク(コンテナ型)
82 ワーク(コンテナ型)
83 ワーク(コンテナ型)
84 ワーク(コンテナ型)
85 ワーク(コンテナ型)
86 ワーク(コンテナ型)
87 ワーク(コンテナ型)
88 ワーク(コンテナ型)
89 パレット
91 ワーク(箱型)
92 ワーク(箱型)
93 ワーク(箱型)