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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122893
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】送電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/60 20160101AFI20230829BHJP
   H02J 50/20 20160101ALI20230829BHJP
   H02J 50/15 20160101ALI20230829BHJP
   H02J 50/30 20160101ALI20230829BHJP
   H02J 50/80 20160101ALI20230829BHJP
【FI】
H02J50/60
H02J50/20
H02J50/15
H02J50/30
H02J50/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026667
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】徳山 雄生
(72)【発明者】
【氏名】婦木 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】阿部 哲平
(72)【発明者】
【氏名】酒井 智和
(57)【要約】
【課題】送電装置による受電装置への給電効率を高くすること。
【解決手段】非接触給電システムは、受電装置と、送電装置と、を備える。送電装置と受電装置との相対位置は固定である。送電装置は、送電変換部と、送電アンテナと、送電制御装置と、を備える。送電制御装置は、送電モードの切り替えを行う。送電モードは、通常出力モードと、制限モードと、を含む。制限モードは、通常出力モードよりも送電電力を制限した送電モードである。送電制御装置は、記憶部を備える。記憶部は、送電装置と受電装置との周辺環境が予め想定した定常状態の場合の適正給電情報を記憶している。送電制御装置は、送電を行う際の周辺環境での給電情報を取得する。送電制御装置は、給電情報と適正給電情報とが異なるか否かを判定する。送電制御装置は、給電情報と適正給電情報とが異なると判定した場合、送電モードを制限モードにする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受電装置との相対位置が固定された放射型の送電装置であって、
前記送電装置は、
前記受電装置に非接触給電によって電力を送電する送電部と、
前記送電装置と前記受電装置との周辺環境が予め想定した定常状態の場合の適正給電情報を記憶する記憶部と、
前記送電部の送電モードを切り替える送電制御装置と、を備え、
前記送電モードは、通常出力モードと、前記通常出力モードよりも送電電力を制限した制限モードと、を含み、
前記送電制御装置は、
前記送電を行う際の前記周辺環境での給電情報を取得し、
前記給電情報と前記適正給電情報とが異なるか否かを判定し、
前記給電情報と前記適正給電情報とが異なると判定した場合、前記送電モードを前記制限モードにし、
前記給電情報と前記適正給電情報とが異ならないと判定した場合、前記送電モードを前記通常出力モードにする、送電装置。
【請求項2】
前記送電装置は、前記受電装置と同一空間に設けられている、請求項1に記載の送電装置。
【請求項3】
前記送電制御装置は、
前記給電情報と前記適正給電情報とが異なると連続して判定した回数が規定回数に到達した場合、前記適正給電情報の更新を行う、請求項1又は請求項2に記載の送電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、送電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示の非接触給電システムは、送電装置と、受電装置と、を備える。送電装置は、非接触給電によって電力を送電する。受電装置は、送電装置から送電された電力を受電する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5738416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では送電装置が、送電装置と受電装置との間などに障害物が存在するかによって、複数の給電経路の内、最適な給電経路を選択することが可能である。しかし、障害物の位置や障害物の種類によっては最適な給電経路を選択できない場合がある。この場合、選択された給電経路によっては給電の効率が低下するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する送電装置は、受電装置との相対位置が固定された放射型の送電装置であって、前記送電装置は、前記受電装置に非接触給電によって電力を送電する送電部と、前記送電装置と前記受電装置との周辺環境が予め想定した定常状態の場合の適正給電情報を記憶する記憶部と、前記送電部の送電モードを切り替える送電制御装置と、を備え、前記送電モードは、通常出力モードと、前記通常出力モードよりも送電電力を制限した制限モードと、を含み、前記送電制御装置は、前記送電を行う際の前記周辺環境での給電情報を取得し、前記給電情報と前記適正給電情報とが異なるか否かを判定し、前記給電情報と前記適正給電情報とが異なると判定した場合、前記送電モードを前記制限モードにし、前記給電情報と前記適正給電情報とが異ならないと判定した場合、前記送電モードを前記通常出力モードにする。
【0006】
受電装置と送電装置との相対位置が固定されている場合、周辺環境が定常状態での適正給電情報を予め把握することができる。障害物などの影響によって周辺環境が定常状態ではなくなると、給電情報と適正給電情報とが異なることになる。すると、送電制御装置は、送電モードを制限モードにするため、送電モードが通常出力モードの場合に比べて送電電力が制限されることになる。即ち、効率的に送電を行えない場合には、送電電力が制限されることになる。これにより、送電装置による受電装置への給電効率を高くできる。
【0007】
上記送電装置について、前記送電装置は、前記受電装置と同一空間に設けられていてもよい。
送電装置と受電装置とが同一空間に設けられている場合、送電装置と受電装置との間に、障害物が位置しにくい。これにより、送電装置による受電装置への給電効率の低下を抑制できる。
【0008】
上記送電装置について、前記送電制御装置は、前記給電情報と前記適正給電情報とが異なると連続して判定した回数が規定回数に到達した場合、前記適正給電情報の更新を行ってもよい。
【0009】
受電装置及び送電装置の周辺環境の変化によって、定常状態が変化する場合がある。給電情報と適正給電情報とが異なると連続して判定した回数が規定回数に到達した場合、定常状態が変化したとみなして、送電制御装置は、適正給電情報の更新を行う。これにより、定常状態が変化した場合であっても送電装置から受電装置への送電を行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、送電装置による受電装置への給電効率を高くできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】車両の模式図である。
図2】非接触給電システムの概略構成図である。
図3】受電装置側制御を示すフローチャートである。
図4】送電制御側制御を示すフローチャートである。
図5】作用を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
送電装置の一実施形態について説明する。
<車両>
図1に示すように、車両10は、車室A1を備える。車室A1は、人が出入り可能な空間である。車両10は、第1シート13と、第2シート15と、を備える。第1シート13は、最前列のシートである。第1シート13は、背もたれ14を備える。背もたれ14は、車両10の前後方向に傾動可能である。第2シート15は、第1シート13よりも後方に設けられたシートである。第2シート15は、背もたれ16を備える。背もたれ16は、車両10の前後方向に傾動可能である。第1シート13及び第2シート15は、リクライニングシートである。車両10には、非接触給電システム20が設けられている。
【0013】
<非接触給電システム>
非接触給電システム20は、受電装置21と、送電装置31と、を備える。受電装置21は、単数であっても複数であってもよい。送電装置31は、単数であっても複数であってもよい。送電装置31は、放射型である。放射型の送電装置31としては、例えば、マイクロ波式、レーザー式、及び超音波式を用いることができる。本実施形態では、マイクロ波式の送電装置31を例に挙げて説明を行う。非接触給電システム20は、送電装置31が、受電装置21に対して電力伝送信号W1を用いた非接触給電を行うシステムである。電力伝送信号W1は、マイクロ波である。
【0014】
<受電装置>
図2に示すように、受電装置21は、受電アンテナ22と、受電変換部23と、受電蓄電部24と、受電制御装置25と、受電通信部28と、を備える。受電装置21は、例えば、車両10の電装品である。受電装置21としては、例えば、照明装置及び音響機器を挙げることができる。受電装置21は、車室A1内に設けられている。図1に示す例では、受電装置21は、第1シート13と第2シート15との間であって車両10の底部12に設けられている。受電装置21は、第1シート13のヘッドレスト、第2シート15のヘッドレスト、センターコンソール、ラゲッジスペース又はトランクルームに設けられていてもよい。
【0015】
<受電アンテナ>
受電アンテナ22は、電力伝送信号W1を受信可能に構成されている。受電アンテナ22としては、例えば、モノポールアンテナ、ダイポールアンテナ、ヘリカルアンテナ、パラボラアンテナ、複数のアンテナを含むアンテナアレイを用いることができる。受電アンテナ22は、電力伝送信号W1を交流電力に変換する。受電アンテナ22は、データ信号W2を送受信可能に構成されている。受電アンテナ22は、ビーコン信号W3を送信可能に構成されている。電力伝送信号W1を受信する受電アンテナ22と、データ信号W2を送受信するアンテナと、ビーコン信号W3を送信するアンテナとは、別々に設けられていてもよい。
【0016】
<受電変換部>
受電変換部23は、受電アンテナ22から出力される交流電力を受電電力に変換する。受電電力は、受電装置21が電力伝送信号W1から得られる電力である。受電電力は、直流電力である。受電変換部23の具体的態様は任意であるが、例えば整流回路や平滑回路を含む。
【0017】
<受電蓄電部>
受電蓄電部24は、受電装置21の電力源である。受電蓄電部24としては、例えば、リチウムイオン蓄電池等の二次電池、又はキャパシタを用いることができる。受電蓄電部24は、受電変換部23によって変換された受電電力の一部又は全部を貯蔵する。このように電力伝送信号W1による受電装置21への受電が行われる。
【0018】
<受電制御装置>
受電制御装置25は、プロセッサ26と、記憶部27と、を備える。記憶部27は、RAM(Random Access Memory)、及びROM(Read Only Memory)を含む。記憶部27は、処理をプロセッサ26に実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。記憶部27、即ち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。受電制御装置25は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェア回路によって構成されていてもよい。処理回路である受電制御装置25は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASICやFPGA等の1つ以上のハードウェア回路、或いは、それらの組み合わせを含み得る。
【0019】
<受電通信部>
受電通信部28は、データ信号W2の送受信によって送電装置31と通信する。受電通信部28は、受電アンテナ22が受信したデータ信号W2を復調し、受電制御装置25に向けて出力する。また、受電通信部28は、受電制御装置25が出力するデータに基づき変調を行ったデータ信号W2を受電アンテナ22から送信する。データ信号W2を用いた通信態様は任意であり、例えばBluetooth(登録商標)、Wi-Fi、ZigBee(登録商標)等の任意の通信規格に従うものが挙げられる。
【0020】
<送電装置>
送電装置31は、電力伝送信号W1を用いた受電装置21への非接触給電を行う。送電装置31は、送電変換部32と、送電アンテナ33と、送電通信部34と、送電制御装置35と、を備える。送電装置31は、車室A1内に設けられている。送電装置31と受電装置21とは、同一空間に設けられているといえる。送電装置31は、車両10の天井11に設けられている。送電装置31は、受電装置21との相対位置が固定である。
【0021】
<送電変換部>
送電変換部32は、電力源40から供給される電力を電力伝送信号W1に対応する電気信号に変換し、出力する。電気信号は、電圧、電流、電力など任意の形式を採用可能である。送電変換部32の具体的構成は任意であるが、例えばチョッパ回路等のスイッチング素子を含む回路を備える。送電変換部32のスイッチング素子の制御を介して、送電変換部32は、電力源40から供給される直流電力を、交流電力の電気信号として出力する。すなわち送電変換部32は、DC/ACインバータとしての機能を有する。
【0022】
<電力源>
電力源40は、車両10に搭載されている。電力源40としては、例えば、電装品に電力を供給する補機用バッテリを挙げることができる。車両10が電気自動車であれば、走行用モータに電力を供給する走行用バッテリを電力源40として用いてもよい。また、電力源40としては、送電装置31用に設けられた電力源を用いることもできる。車両10が備える発電機を電力源40として用いることもできる。電力源40としては、上記した電力源の組み合わせであってもよい。
【0023】
<送電アンテナ>
送電アンテナ33は、受電装置21に対して電力伝送信号W1を送信可能に構成されている。送電アンテナ33は、送電変換部32から出力される電気信号を電力伝送信号W1に変換して送信する。送電アンテナ33としては、例えば、モノポールアンテナ、ダイポールアンテナ、ヘリカルアンテナ、パラボラアンテナ、複数のアンテナを含むアンテナアレイを用いることができる。本実施形態の送電アンテナ33は、複数のアンテナを備えるフェーズドアレイアンテナである。送電アンテナ33は、送電変換部32から出力される電力を電力伝送信号W1に変換して、無線として送信する。これにより、送電装置31は、受電装置21に対して送電電力を供給する。送電電力は、電力伝送信号W1として送電される電力である。また、送電アンテナ33は、データ信号W2を送受信可能に構成されている。送電アンテナ33は、ビーコン信号W3を受信可能に構成されている。電力伝送信号W1を送信する送電アンテナ33と、データ信号W2を送受信するアンテナと、ビーコン信号W3を受信するアンテナとは、別々に設けられていてもよい。
【0024】
<送電通信部>
送電通信部34は、データ信号W2の送受信によって受電装置21と通信する。送電通信部34は、送電アンテナ33が受信したデータ信号W2を復調し、送電制御装置35に向けて出力する。送電通信部34は、送電制御装置35が出力するデータに基づき変調を行ったデータ信号W2を送電アンテナ33から送信する。これにより、送電装置31と受電装置21とは、データ信号W2を介して互いに通信可能に構成されている。
【0025】
<送電制御装置>
送電制御装置35は、プロセッサ36と、記憶部37と、を備える。送電制御装置35のハードウェア構成は、例えば、受電制御装置25と同様である。
【0026】
<適正給電情報>
記憶部37には、適正給電情報D1が記憶されている。送電装置31が補助記憶装置を備える場合、適正給電情報D1は補助記憶装置に記憶されていてもよい。補助記憶装置としては、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、及びフラッシュメモリを挙げることができる。この場合、補助記憶装置が適正給電情報D1を記憶する記憶部である。
【0027】
適正給電情報D1とは、送電装置31と受電装置21との周辺環境が予め想定した定常状態の場合の給電情報である。定常状態とは、送電装置31と受電装置21との周辺環境に、一時的に存在する障害物が含まれていないことをいう。本実施形態の障害物とは、非接触給電の障害となり得る物体である。障害物には、人を含む。例えば、人が車室A1内に乗り込むことによって人が送電装置31と受電装置21との間に存在するようになる場合、当該人が一時的に非接触給電の障害となり得る。このように、人により送電装置31から受電装置21への給電が阻害されるような状態は、定常状態とは異なる。定常状態としては、例えば、送電装置31と受電装置21との間に障害物が存在しない理想状態を挙げることができる。送電装置31及び受電装置21の配置状の制約によっては送電装置31と受電装置21との間に障害物が常に存在する場合がある。このように、送電装置31と受電装置21との周辺環境に、常に存在する障害物が含まれる状態は定常状態である。定常状態とは、給電経路が安定的に定まる状態ともいえる。
【0028】
適正給電情報D1は、適正給電経路情報と、適正受電電力情報と、を含む。
適正給電経路情報は、定常状態での給電経路である適正給電経路を示す情報である。適正給電経路情報は、送電装置31と受電装置21との相対位置を定めた後に、送電制御装置35が給電経路を算出することで得ることができる。例えば、送電装置31と受電装置21との相対位置を定めた後に、定常状態で受電装置21に送電要求信号を送信させる。送電要求信号を送電アンテナ33で受信すると、送電制御装置35は給電経路を算出する。給電経路は、送電要求信号の到来角、送電要求信号の位相、及び送電要求信号の受信強度から算出できる。送電アンテナ33としてフェーズドアレイアンテナを用いている場合、複数のアンテナで送電要求信号を受信すると、アンテナ毎に送電要求信号の位相が異なる。この位相から送電要求信号の到来角を算出することができる。そして、送電制御装置35は、定常状態で算出された給電経路である適正給電経路を示す情報を適正給電経路情報として記憶部37に記憶する。
【0029】
適正受電電力情報は、適正受電電力を示す情報である。適正受電電力は、送電装置31が適正給電経路で電力伝送信号W1の送信を行った際に、受電装置21で得られる受電電力の電力値である。適正受電電力情報は、送電装置31が適正給電経路で電力伝送信号W1の送信を行った際の受電電力の電力値を受電装置21から取得することで得ることができる。例えば、送電装置31と受電装置21との相対位置を定めた後に、送電装置31に電力伝送信号W1を送信させる。受電装置21は、電力伝送信号W1により得られた受電電力の電力値を測定する。受電装置21は、電力値を含むデータ信号W2を送電装置31に送信する。送電制御装置35は、このデータ信号W2から取得した電力値を示す情報を適正受電電力情報として記憶部37に記憶する。
【0030】
<送電制御装置が行う制御>
送電制御装置35は、送電電力を調整可能である。送電制御装置35は、例えば、送電アンテナ33を制御することで送電電力を制御可能である。送電アンテナ33としてフェーズドアレイアンテナを用いる場合、複数のアンテナのうち送電を行うアンテナの数を調整することによって送電電力を調整可能である。送電電力の調整は、送電変換部32を制御することによって送電アンテナ33に入力される電力を調整することで行われてもよい。送電制御装置35は、送電変換部32及び送電アンテナ33の少なくとも一方を制御することによって送電電力を調整可能といえる。送電変換部32及び送電アンテナ33は、送電部である。
【0031】
<送電モード>
送電制御装置35は、送電部の送電モードを切り替え可能である。送電モードは、通常出力モードと、制限モードと、を含む。通常出力モードとは、送電電力を制限しないモードである。通常出力モードの場合、例えば、予め定められた送電電力が出力される。送電電力の大きさは、電力源40から入力される電力に応じて変化してもよい。制限モードとは、通常出力モードよりも送電電力を制限したモードである。送電電力の制限とは、送電電力を送電しない態様を含む。本実施形態の制限モードは、送電を行わない停止モードである。停止モード中には、送電は行われないが、送電制御装置35の動作は一部継続される。停止モード中にも継続される送電制御装置35の動作としては、例えば、データ信号W2の送受信、電力伝送信号W1を送信する送電方向に関する演算、及び通信や演算結果に関する履歴の記憶部37への記憶を挙げることができる。そして、送電制御装置35は、送電モードに応じて送電電力を調整する。以下、送電モードの切り替えのために非接触給電システム20で行われる切替制御について説明する。切替制御は、受電装置21で行われる受電装置側制御と、送電装置31で行われる送電装置側制御と、を含む。
【0032】
<受電装置側制御>
受電装置21で行われる受電装置側制御について説明する。受電装置側制御は、所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0033】
図3に示すように、ステップS1において、受電制御装置25は、送電要求信号を送信する。この送電要求信号は、ビーコン信号W3として送信される。送電要求信号は、送電装置31に対して送電を要求する信号である。
【0034】
次に、ステップS2において受電制御装置25は、受電電力を得られたか否かを判定する。送電要求信号に応じて送電装置31から電力伝送信号W1が送信されると、電力伝送信号W1から受電電力を得ることができる。ステップS2の判定は、送電装置31が電力伝送信号W1を送信したか否かの判定ともいえる。ステップS2の判定結果が否定の場合、受電制御装置25は、ステップS1の処理に戻る。ステップS2の判定結果が肯定の場合、受電制御装置25は、ステップS3の処理を行う。
【0035】
ステップS3において、受電制御装置25は、受電電力を測定する。これにより、受電制御装置25は、受電電力の電力値を得ることができる。受電電力は、例えば、受電変換部23に電流センサや電圧センサを設けることによって測定できる。
【0036】
次に、ステップS4において、受電制御装置25は、データ信号W2を送信する。このデータ信号W2には、ステップS3で測定した受電電力の電力値を示す情報が含まれる。ステップS4の処理を終えると、受電制御装置25は、受電装置側制御を終える。
【0037】
<送電装置側制御>
送電装置31で行われる送電装置側制御について説明する。送電装置側制御は、所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0038】
図4に示すように、ステップS11において、送電制御装置35は、送電要求信号を受信したか否かを判定する。ステップS11の判定結果が否定の場合、送電制御装置35は、ステップS11の判定を再度行う。ステップS11の判定結果が肯定の場合、送電制御装置35は、ステップS12の処理を行う。
【0039】
ステップS12において、送電制御装置35は、ステップS11で受信した送電要求信号から給電経路を算出する。給電経路の算出は、適正給電経路の算出と同様の手法によって行われる。即ち、ステップS11で受信した送電要求信号の到来角、位相、及び受電電力から給電経路を算出することができる。ステップS12で算出される給電経路は、送電を行う際の周辺環境での給電経路である。
【0040】
次に、ステップS13において、送電制御装置35は、記憶部37から適正給電情報D1を読み出す。
次に、ステップS14において、送電制御装置35は、ステップS12で算出された給電経路と適正給電経路とが異なるか否かを判定する。詳細にいえば、送電制御装置35は、ステップS12で算出された給電経路と適正給電経路との差が許容範囲内か否かを判定する。許容範囲としては、測定誤差などによる僅かな誤差を許容できるように設定されている。例えば、適正給電経路に対して上限の閾値と下限の閾値とを設定する。そして、上限の閾値と下限の閾値との間の範囲を許容範囲とする。上限の閾値としては、例えば、適正給電経路+所定値である。下限の閾値としては、例えば、適正給電経路-所定値である。上限の閾値及び下限の閾値の設定に用いられる所定値は、上記したように測定誤差などによる誤差を許容できるような値に設定される。また、送電要求信号の到来角、位相、及び受電電力の平均的な揺らぎを考慮して所定値は設定されていてもよい。所定値は、例えば、適正給電経路の1%~20%の範囲で任意に設定することができる。送電制御装置35は、給電経路と適正給電経路との差が許容範囲内の場合、給電経路と適正給電経路とは異なっていないと判定する。送電制御装置35は、給電経路と適正給電経路との差が許容範囲内ではない場合、給電経路と適正給電経路とは異なると判定する。ステップS14の判定結果が否定の場合、送電制御装置35は、ステップS15の処理を行う。ステップS14の判定結果が肯定の場合、送電制御装置35は、ステップS17の処理を行う。
【0041】
ステップS15において、送電制御装置35は、送電モードを通常出力モードにする。これにより、送電装置31から電力伝送信号W1が送信される。
次に、ステップS16において、送電制御装置35は、受電電力が適正受電電力と異なるか否かを判定する。ステップS15で電力伝送信号W1の送信が行われると、受電装置21からは受電電力の電力値を示す情報を含んだデータ信号W2が送信される。送電制御装置35は、このデータ信号W2から得られた受電電力の電力値と適正受電電力とが異なるか否かを判定する。詳細にいえば、送電制御装置35は、データ信号W2から取得した受電電力の電力値と適正受電電力との差が許容範囲内か否かを判定する。許容範囲としては、測定誤差などによる僅かな誤差を許容できるように設定されている。送電制御装置35は、受電電力の電力値と適正受電電力との差が許容範囲内の場合、受電電力と適正受電電力とは異なっていないと判定する。送電制御装置35は、受電電力の電力値と適正受電電力との差が許容範囲内ではない場合、受電電力と適正受電電力とは異なると判定する。ステップS16の判定結果が肯定の場合、送電制御装置35は、ステップS18の処理を行う。ステップS16の判定結果が否定の場合、送電制御装置35は、送電装置側制御を終了する。
【0042】
ステップS17において、送電制御装置35は、ステップS12で算出された給電経路が適正給電経路とは異なると連続して判定された回数が規定回数に到達したか否かを判定する。送電制御装置35は、ステップS14の判定結果が肯定になる度に、肯定回数をカウントする。送電制御装置35は、ステップS14の判定結果が否定になると、肯定回数をリセットする。送電制御装置35は、肯定回数が規定回数に到達した場合、ステップS12で算出された給電経路が適正給電経路とは異なると連続して判定された回数が規定回数に到達したと判定する。規定回数としては、任意の値を設定することができる。規定回数としては、例えば、送電装置31と受電装置21との周辺環境に障害物が存在している場合に、当該障害物が常に存在しているとみなせるような時間が経過したと判定できる回数に設定される。ステップS17の判定結果が否定の場合、送電制御装置35は、ステップS18の処理を行う。ステップS17の判定結果が肯定の場合、送電制御装置35は、ステップS19の処理を行う。
【0043】
ステップS18において、送電制御装置35は、送電モードを停止モードにする。これにより、送電装置31から電力伝送信号W1が送信されなくなる。
ステップS19において、送電制御装置35は、適正給電情報D1を更新する。例えば、送電制御装置35は、ステップS12で算出された給電経路を適正給電経路とする。そして、送電制御装置35は、当該適正給電経路で電力伝送信号W1を送信することによって受電装置21で得られた受電電力の電力値を適正充電電力とする。
【0044】
<作用>
本実施形態の作用について説明する。
受電装置21と送電装置31との相対位置が固定されている場合、周辺環境が定常状態での適正給電情報D1を予め把握することができる。障害物などの影響によって受電装置21と送電装置31との周辺環境が定常状態ではなくなると、給電情報と適正給電情報D1とが異なることになる。例えば、図5に示すように、第1シート13の背もたれ14が後傾されると、送電装置31と受電装置21との間に背もたれ14が位置する。これにより、給電経路が変化することによって給電経路と適正給電経路との差が大きくなる。また、受電電力の電力値と適正受電電力との差も大きくなる。同様に、第2シート15に人M1が着座すると、送電装置31と受電装置21との間に人M1が位置する。この場合であっても同様のことがいえる。このように、給電情報と適正給電情報D1とが異なるようになると、送電制御装置35は、送電モードを停止モードにする。
【0045】
<効果>
本実施形態の効果について説明する。
(1)送電制御装置35は、給電情報と適正給電情報D1とが異なると判定すると、送電モードを停止モードにする。送電モードが通常出力モードの場合に比べて送電電力が制限されることになる。効率的に送電を行えない場合には、送電電力が制限されることになる。これにより、送電装置31による受電装置21への給電効率を高くできる。なお、給電効率とは、送電電力に対する受電電力の割合である。
【0046】
(2)送電装置31と受電装置21とは、同一空間に設けられている。送電装置31と受電装置21とが異なる空間に設けられている場合、電力伝送信号W1を減衰させる障害物が送電装置31と受電装置21との間に位置しやすい。例えば、送電装置31と受電装置21とが異なる空間に設けられている場合、それぞれの空間を画定する壁や車両10の一部が障害物として送電装置31と受電装置21との間に位置する。これに対し、送電装置31と受電装置21とが同一空間に設けられている場合、送電装置31と受電装置21との間に、障害物が位置しにくい。これにより、送電装置31による受電装置21への給電効率の低下を抑制できる。
【0047】
(3)送電装置31と受電装置21とは、同一空間に設けられている。送電装置31が設けられている空間に電力伝送信号W1の送信が行われるため、送電装置31が設けられている空間外への電力伝送信号W1の漏洩を抑制できる。実施形態であれば、車室A1の外への電力伝送信号W1の漏洩を抑制できる。これにより、送電装置31が設けられている空間外への電力伝送信号W1の漏洩による人体暴露を抑制することができる。
【0048】
(4)送電制御装置35は、給電経路と適正給電経路とが異なると連続して判定した回数が規定回数に到達した場合、適正給電情報D1の更新を行う。受電装置21及び送電装置31の周辺環境の変化によって定常状態が変化する場合がある。例えば、受電装置21と送電装置31との間に常に障害物が存在するようになると、当該障害物が存在することが定常状態になる。給電経路と適正給電経路とが異なると連続して判定した回数が規定回数に到達した場合、定常状態が変化したとみなすことができる。そして、送電制御装置35は、適正給電情報D1の更新を行う。これにより、定常状態が変化した場合であっても送電装置31から受電装置21への送電を行うことができる。
【0049】
(5)送電制御装置35は、送電要求信号から給電経路を算出している。送電制御装置35は、データ信号W2から受電電力の電力値を把握している。そして、送電制御装置35は、給電経路及び受電電力の電力値に応じて送電モードを停止モードにしている。送電制御装置35は、センサを用いることなく送電モードを停止モードにすることができる。
【0050】
(6)送電装置31と受電装置21との間に人M1が存在する場合、送電モードが停止モードにされる。送電モードを通常出力モードとする場合に比べて、電力伝送信号W1による人体暴露を抑制することができる。
【0051】
(7)送電装置31によって受電装置21に給電を行うことができるため、受電装置21と電力源40とを配線によって接続する必要がない。このため、受電装置21と電力源40とを接続するために配線の取り回しを行わなくてもよい。
【0052】
(8)送電装置31は、天井11に設けられている。送電装置31を天井11に設けることによって電力伝送信号W1が窓から車室A1外に漏れることを抑制できる。
(変更例)
実施形態は、以下のように変更して実施することができる。実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0053】
・適正給電経路は、送電要求信号の位相、送電要求信号の到来角のいずれかであってもよい。この場合、送電制御装置35が送電要求信号から算出する給電経路も適正給電経路に合わせて変化させる。
【0054】
・適正給電情報D1の更新を行うか否かをユーザによって決定可能であってもよい。例えば、ユーザの視認可能な表示部に適正給電情報D1の更新を行うか否かの選択を提示してもよい。ユーザは、入力装置によって適正給電情報D1の更新を行うか否かを選択する。表示部は、車両10が備えていてもよいし、ユーザが所持する携帯通信端末が備えていてもよい。入力装置は、例えば、タッチパネルであってもよいし、物理ボタンであってもよい。
【0055】
・受電装置21は、新たに追加されてもよい。例えば、受電装置21を備えるチャイルドシートが新たに追加されてもよい。この場合、送電制御装置35は、新たに追加された受電装置21の適正給電情報D1を取得する。そして、送電制御装置35は、取得した適正給電情報D1を記憶部37に記憶する。この場合、送電制御装置35は、チャイルドシートに人がいる場合に送電モードを停止モードにすることができる。
【0056】
・送電制御装置35は、受電電力と適正受電電力とが異なると連続して判定した回数が規定回数に到達した場合、適正給電情報D1の更新を行ってもよい。
・送電装置31と受電装置21とは、異なる空間に設けられていてもよい。
【0057】
・送電制御装置35は、適正給電情報D1の更新を行わなくてもよい。即ち、送電制御装置35は、ステップS17及びステップS19の処理を行わなくてもよい。この場合、ステップS14の判定結果が肯定の場合、送電制御装置35は、ステップS18の処理を行う。
【0058】
・適正給電情報D1と給電情報との比較は、センサによって行われてもよい。センサとしては、例えば、カメラを用いることができる。カメラとしては、例えば、単眼カメラ、ステレオカメラ、及びToF(Time of Flight)カメラを用いることができる。カメラは、送電装置31と受電装置21との周辺環境を撮像可能に配置される。この場合の適正給電情報D1としては、例えば、定常状態でカメラから得られる画像データを挙げることができる。送電制御装置35は、送電を行う際に、カメラから給電情報である画像データを取得する。送電制御装置35は、当該画像データと、定常状態でカメラから得られる画像データとを比較してもよい。画像データ同士の比較は、例えば、輝度情報に基づく特徴点同士を比較することで行われる。送電装置31と受電装置21との間に障害物が存在する場合には、適正給電情報D1となる画像データから変化が生じる。このため、送電制御装置35は、画像データ同士の比較によって適正給電情報D1と給電情報との差を算出できる。適正給電情報D1としては、定常状態での周辺物体の座標データであってもよい。定常状態での周辺物体の座標データは、定常状態でカメラから取得した画像データを用いて算出することができる。送電制御装置35は、送電を行う際に、カメラから画像データを取得する。送電制御装置35は、画像データから座標データを算出する。送電装置31と受電装置21との間に障害物が存在する場合には、障害物による座標データが生じる。このため、送電制御装置35は、座標データ同士の比較によって適正給電情報D1と給電情報との差を算出できる。
【0059】
センサとしては、生体検知センサ、超音波センサなどを用いてもよい。この場合、送電装置31と受電装置21との間に生体や障害物が存在する場合、送電制御装置35は、送電モードを停止モードにしてもよい。
【0060】
・受電装置21は、送電要求信号を送信しなくてもよい。送電制御装置35の記憶部37には、適正給電経路が記憶されている。このため、送電要求信号から給電経路を算出しなくても、送電装置31は適正給電経路を用いて電力伝送信号W1の送信を行うことができる。
【0061】
・送電装置31は、受電装置21に起動要求信号を送信してもよい。起動要求信号は、受電装置21がスリープ状態の場合に、受電装置21に起動を要求する信号である。受電装置21のスリープ状態とは、受電装置21の機能の一部が制限されている状態である。受電装置21がスリープ状態の場合であっても、受電装置21はデータ信号W2の送信を行う。送電制御装置35は、起動要求信号に応答するデータ信号W2、又は送電要求信号を送電装置31が受信しない場合には送電モードを停止モードにする。
【0062】
・送電装置31は、受電装置21に送電試行信号を送信してもよい。送電試行信号は、受電装置21が停止状態の場合に、受電装置21に起動を要求する信号である。受電装置21の停止状態とは、スリープ状態よりも受電装置21の機能が制限されている状態である。受電装置21が停止状態の場合、受電装置21はデータ信号W2の送信を行わない。送電制御装置35は、送電試行信号に応答するデータ信号W2を送電装置31が受信しない場合には送電モードを停止モードにする。
【0063】
・受電装置21から送信されるデータ信号W2、及び送電要求信号には識別情報が含まれていてもよい。識別情報とは、受電装置21に設定された固有のIDコードである。この場合、送電装置31は、予め認証した識別情報の受電装置21にのみ送電を行うようにしてもよい。また、非接触給電システム20が複数の受電装置21を備えている場合、識別情報に対応付けて受電装置21毎に適正給電情報D1を記憶部37に記憶することができる。そして、送電制御装置35は、受電装置21毎に適正給電情報D1と給電情報との比較を行うことができる。
【0064】
・適正給電情報D1は、適正給電経路情報及び適正受電電力情報のいずれかであってもよい。適正給電情報D1を適正給電経路情報のみとする場合、ステップS16の判定は行わなくてもよい。適正給電情報D1を適正受電電力情報のみとする場合、ステップS14の判定は行わなくてもよい。
【0065】
・非接触給電システム20は、工場、家庭、商業施設、公共施設などの建屋で用いられてもよい。この場合の電力源40としては、例えば、系統電源、及び太陽光発電装置などの発電装置を挙げることができる。
【0066】
・制限モードは低出力モードであってもよい。低出力モードは、通常出力モードよりも小さい送電電力を送電する送電モードである。低出力モードは、送電電力の電力値を通常出力モードよりも低くするモードであってもよい。低出力モードは、電力伝送信号W1の送信頻度を通常出力モードよりも低くするモードであってもよい。
【0067】
・送電装置31と受電装置21が設けられる空間は、第三者の進入が規制された空間であってもよい。送電装置31と受電装置21とを、同一空間に設けることで、送電装置31が設けられている空間外への電力伝送信号W1の漏洩を抑制できる。ユーザの意図しない受電装置21が空間外に設置された場合であっても、当該受電装置21の受電を抑制できる。
【符号の説明】
【0068】
D1…適正給電情報
A1…空間である車室
21…受電装置
31…送電装置
35…送電制御装置
37…記憶部
図1
図2
図3
図4
図5