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特開2023-122909動トルク測定装置及び動トルク測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122909
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】動トルク測定装置及び動トルク測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 3/14 20060101AFI20230829BHJP
   G01M 13/04 20190101ALI20230829BHJP
【FI】
G01L3/14 Z
G01M13/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026686
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡部 将充
(72)【発明者】
【氏名】若林 達男
【テーマコード(参考)】
2G024
【Fターム(参考)】
2G024AC05
2G024BA11
2G024CA11
2G024CA12
2G024DA02
2G024DA03
2G024DA09
2G024EA01
(57)【要約】
【課題】回転側部材の回転速度が刻々と変化するような状態であっても、固定側部材に発生する連れ回りによる動トルクを精度良く測定可能であり、かつ一回の測定で互いに回転方向が異なる一対の被測定物の合計動トルクを測定可能な動トルク測定装置及び動トルク測定方法を提供する。
【解決手段】動トルク測定装置10は、一対の被測定物11A、11Bの第1部材12A、12Bを保持する回転ハウジング22A、22Bと支持軸23A、23Bを有する一対の支持機構20A、20Bと、一対の第1部材12A、12Bを回転駆動する駆動機構25と、一対の第2部材13A、13Bと共に連れ回る連れ回り部31と、連れ回り部31を回転自在に支持すると共に、ラジアル荷重が負荷される静圧パッド32と、一対の被測定物11A、11Bにアキシャル荷重を負荷する一対の負荷棒33A、33Bと、を備える。一対の被測定物11A、11Bに作用する合計動トルクは、連れ回り部31に発生する接線力を測定することで与えられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定側部材と、前記固定側部材に対して相対回転可能な回転側部材をそれぞれ有する一対の被測定物の動トルクを測定する動トルク測定装置であって、
前記一対の被測定物における前記固定側部材及び前記回転側部材の一方である第1部材を保持する回転ハウジングと、該回転ハウジングを転がり軸受を介して支持する支持軸と、をそれぞれ有する一対の支持機構と、
前記各回転ハウジングを介して前記一対の第1部材を回転駆動する駆動機構と、
前記一対の支持機構の間に配置され、前記一対の被測定物における前記固定側部材及び前記回転側部材の他方である第2部材を保持し、前記一対の第1部材の回転によって、前記一対の第2部材とともに連れ回る連れ回り部と、
前記連れ回り部を回転自在に支持し、ラジアル荷重が負荷される静圧パッドと、
前記一対の支持機構のそれぞれに対して前記連れ回り部と反対側で、前記支持軸と連結され、前記一対の支持機構を介して前記一対の第1部材にアキシャル荷重を負荷する一対の負荷棒と、
を備え、
前記一対の被測定物に作用する合計動トルクは、前記連れ回り部に発生する接線力を測定することで与えられる、
動トルク測定装置。
【請求項2】
前記固定側部材は、ハブユニット軸受のフランジ付き外輪であり、前記回転側部材は、前記ハブユニット軸受のハブ輪であり、前記ハブユニット軸受には、車両の車輪に作用する路面反力に相当する荷重が負荷される、請求項1に記載の動トルク測定装置。
【請求項3】
前記一対の被測定物を収容する恒温槽をさらに備える、請求項1又は2に記載の動トルク測定装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の動トルク測定装置を用いた動トルク測定方法であって、
前記連れ回り部及び前記一対の負荷棒に前記ラジアル荷重及びアキシャル荷重を負荷した状態で、前記第1部材を回転駆動させ、前記連れ回り部に発生する接線力を測定することで、前記一対の被測定物に作用する合計動トルクを測定する、動トルク測定方法。
【請求項5】
前記連れ回り部及び前記負荷棒に負荷される前記ラジアル荷重及びアキシャル荷重は、車両の車輪に作用する路面反力に相当し、
前記一対の被測定物に作用する合計動トルクは、前記第1部材の回転速度を変化させた状態で測定される、請求項4に記載の動トルク測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動トルク測定装置及び動トルク測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両における省燃費の要求が高まり、より実車走行に近いJC08モードやWLTCモードなどの燃費測定モードでの動トルク測定が採用されている。このため、車輪支持軸受として車両に組込まれるハブユニット軸受においても、これらの燃費測定モードでの動トルク測定が要求される。
【0003】
これらの燃費測定モードによるハブユニット軸受の動トルク測定では、直進荷重(軸重の半分+キャンバスラスト)を被測定物であるハブユニット軸受へ入力し、さらに回転側部材の回転速度(車速)も刻々と変化させる必要がある。被測定物への荷重入力は、作用・反作用の関係から、軸受を介して被測定物の一方側(固定側部材)、または他方側(回転側部材)へ入力することが可能である。連れ回りによる動トルクは、被測定物の摩擦抵抗により消費されるトルクであり、この動トルクの値が低いほど省燃費に貢献する。
【0004】
特許文献1、2には、測定しようとする摩擦トルクに対して十分に摩擦抵抗が低い軸受(静圧軸受や自重負荷程度の荷重が負荷された転がり軸受)で被測定物の一方を支承し、被測定物の他方を回転駆動して、被測定物の一方の連れ回りトルクを接線力として測定する動トルク検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-64134号公報
【特許文献2】特開2014-224546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、固定側部材と共に連れ回る連れ回り部の慣性モーメントは、一定回転速度での動トルク測定の場合は過渡期を過ぎれば問題ないが、燃費測定モードでの動トルク測定の場合、回転側部材の回転速度が刻々と変化するので、即ち、過渡期がずっと継続するので、固定側部材の慣性モーメントによって発生する慣性トルクが動トルク測定の誤差の原因となる。このため、燃費測定モードによる動トルク測定においては、連れ回り部の慣性モーメントを極力小さくして、回転側部材の回転速度の変化に固定側部材が遅れなく追従することが要求される。
【0007】
特許文献1、2に記載のトルク検出装置は、いずれも、被測定物の他方を所定の速度及び所定の方向に回転させたとき、被測定物の一方に発生する引き摺りトルク、或いは接線力(回転トルク)を測定するものであるが、被測定物の一方と共に連れ回るトルク測定用部材や外ハウジングの慣性モーメントについては、考慮されていない。即ち、特許文献1では、被測定物の一方と共に連れ回るトルク測定用部材には、径方向外方に延びる一対のアームとプリロード調整手段とが設けられている。また、特許文献2では、被測定物の一方と共に連れ回る外ハウジングが、被測定物の他方を回転させる回転軸に対して径方向に2つ配置されたサポート軸受を介して回転可能に支持されているため、外ハウジングの直径が大きくなる。したがって、いずれにおいても、被測定物の一方と共に連れ回るトルク測定用部材や外ハウジングの慣性モーメントは大きく、車速が刻々と変化する燃費測定モードでの動トルク測定への適用にはさらなる改良が求められる。また、特許文献1、2はいずれも、被測定物にどのように外部荷重を負荷するかについて何ら記載されていない。
【0008】
また、ハブユニット軸受は、加工筋目などの製造上不可避の要因から、回転方向で動トルクが若干異なる。ハブユニット軸受は左右輪で回転方向が異なるため、測定動トルクを正確に燃費に反映させるには、時計方向回転及び反時計方向回転での動トルクを求める必要があり、1つのハブユニット軸受に対して回転方向を変えて2回測定しなければならず、作業効率の観点から改善の余地があった。
【0009】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、回転側部材の回転速度が刻々と変化するような状態であっても、固定側部材に発生する連れ回りによる動トルクを精度良く測定可能であり、かつ一回の測定で互いに回転方向が異なる一対の被測定物の合計動トルクを測定可能な動トルク測定装置及び動トルク測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
[1] 固定側部材と、前記固定側部材に対して相対回転可能な回転側部材をそれぞれ有する一対の被測定物の動トルクを測定する動トルク測定装置であって、
前記一対の被測定物における前記固定側部材及び前記回転側部材の一方である第1部材を保持する回転ハウジングと、該回転ハウジングを転がり軸受を介して支持する支持軸と、をそれぞれ有する一対の支持機構と、
前記各回転ハウジングを介して前記一対の第1部材を回転駆動する駆動機構と、
前記一対の支持機構の間に配置され、前記一対の被測定物における前記固定側部材及び前記回転側部材の他方である第2部材を保持し、前記一対の第1部材の回転によって、前記一対の第2部材とともに連れ回る連れ回り部と、
前記連れ回り部を回転自在に支持し、ラジアル荷重が負荷される静圧パッドと、
前記一対の支持機構のそれぞれに対して前記連れ回り部と反対側で、前記支持軸と連結され、前記一対の支持機構を介して前記一対の第1部材にアキシャル荷重を負荷する一対の負荷棒と、
を備え、
前記一対の被測定物に作用する合計動トルクは、前記連れ回り部に発生する接線力を測定することで与えられる、
動トルク測定装置。
【0011】
[2] [1]に記載の動トルク測定装置を用いた動トルク測定方法であって、
前記連れ回り部及び前記一対の負荷棒に前記荷重を負荷した状態で、前記第1部材を回転駆動させ、前記連れ回り部に発生する接線力を測定することで、前記一対の被測定物に作用する合計動トルクを測定する、動トルク測定方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の動トルク測定装置及び動トルク測定方法によれば、回転側部材の回転速度が刻々と変化するような状態であっても、固定側部材に発生する連れ回りによる動トルクを精度良く測定可能であり、かつ一回の測定で回転方向が異なる一対の被測定物の合計動トルクを測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る動トルク測定装置の構成を示す模式図である。
図2図2は、第1実施形態の変形例に係る動トルク測定装置の構成を示す模式図である。
図3図3は、本発明の第2実施形態に係る動トルク測定装置の構成を示す模式図である。
図4図4は、第2実施形態の変形例に係る動トルク測定装置の構成を示す模式図である。
図5図5は、本発明の第3実施形態に係る動トルク測定装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る動トルク測定装置の各実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態では、被測定物として一対のハブユニット軸受11A、11Bが用いられる。即ち、被測定物の回転側部材は、車両のホイールが取り付けられる、ハブユニット軸受11A、11Bのハブ輪12A、12Bであり、被測定物の固定側部材は、車両の懸架装置に取り付けられる、ハブユニット軸受11A、11Bのフランジ付き外輪13A、13Bである。そして、本実施形態の動トルク測定装置10は、一対のハブユニット軸受11A、11Bにおいて、一対のハブ輪12A、12Bを回転させたとき、一対のフランジ付き外輪13A、13Bに発生する連れ回りによる動トルクの合計値を、1回の計測で測定する。
【0015】
動トルク測定装置10は、ハブ輪12A、12Bとフランジ付き外輪13A、13Bを備えるハブユニット軸受11A、11Bにおいて、ハブ輪12A、12Bを支持する一対の支持機構20A、20Bを備える。
【0016】
一対の支持機構20A、20Bは、それぞれ第1の部材であるハブ輪12A、12Bの回転フランジ14A,14Bに連結された一対の回転ハウジング22A、22Bと、回転ハウジング22A、22Bを背面組合せされた複数のアンギュラ玉軸受21A、21Bを介して回転自在に支持する一対の支持軸23A、23Bを備える。
【0017】
また、動トルク測定装置10は、駆動モータ26と、該駆動モータ26の回転軸26aに固定された一対のプーリ27A,27Bと、回転ハウジング22A、22Bに固定された一対のプーリ28A,28Bに巻き掛けられたベルト29A,29Bを有する駆動機構25を備える。駆動モータ26により回転ハウジング22A、22Bを回転駆動することで、一対のハブ輪12A、12Bが同一速度で回転駆動される。
【0018】
一対の支持機構20A、20Bの間には、軸方向両側に、それぞれ第2部材であるフランジ付き外輪13A、13Bの外輪フランジ15A,15Bが固定された連れ回り部31が配設されている。連れ回り部31は、静圧パッド32により、非接触で回転抵抗がない状態で回転可能に支持されている。連れ回り部31は、2つのフランジ付き外輪13A、13Bを支持し、また、例えば、アルミニウム製等の軽金属材料とする、或いは、軽量化のために円筒形状に形成することで、連れ回り部31の慣性モーメントが小さくなっている。
【0019】
なお、本明細書において、回転抵抗がない状態とは、必ずしも回転抵抗が0である必要はなく、ハブユニット軸受11A、11Bのハブ輪12A、12B及びフランジ付き外輪13A、13B間の回転抵抗の大きさに対して、回転抵抗が十分に小さく(例えば1/100以下)、ハブユニット軸受11A、11Bの動トルク測定に影響しない程度に低い抵抗を意味する。
【0020】
連れ回り部31及び一対のフランジ付き外輪13A、13Bには、静圧パッド32を介してラジアル荷重P1が油圧シリンダ38により負荷される。ラジアル荷重P1は、車両の直進走行時に車輪に作用する路面反力に相当する荷重であり、軸重に相当する荷重である。
【0021】
ラジアル荷重P1は、油圧シリンダ38に供給する作動油の油圧を制御することで、車両が実際に走行する際の負荷が再現可能である。なお、油圧シリンダ38により負荷されるラジアル荷重P1は、一対の支持機構20A、20B及び後述する一対の負荷棒33A、33Bの質量が補正されたラジアル荷重である。
【0022】
一対の支持機構20A、20Bの支持軸23A、23Bには、支持機構20A、20Bに対して連れ回り部31と反対側に、それぞれ負荷棒33A、33Bが連結されている。一対の負荷棒33A、33Bは、それぞれローラ36A、36Bを備えており、一対の負荷棒33A、33Bを、動トルク測定装置10の基台40上で傾けたり、また、傾きにともなう若干の軸方向移動を可能に支持している。また、一対の負荷棒33A、33Bは、基台40上に設けられた回り止め具34A、34Bにより回り止めされると共に、一対の負荷棒33A、33Bの軸方向外側に配置されたストッパ35A、35Bにより軸方向の移動量が制限されている。なお、上述した一対の負荷棒33A、33Bの支持機構は、模式図で示している。
【0023】
一対の負荷棒33A、33Bは、一対の油圧シリンダ39A、39Bにより軸方向に連結されている。一対の油圧シリンダ39A、39Bは、それぞれアキシャル荷重P2,P3を一対の負荷棒33A,33Bに作用させている。一対の油圧シリンダ39A,39Bは、油圧シリンダ38との合力により、任意の位置における仮想路面とその位置(タイヤ半径とハブユニット軸受との軸方向位置)での路面反力を作り出している。したがって、例えば、直進走行時、キャンバスラスト荷重の入力時、旋回加速度の作用時において車輪に作用する仮想路面からの路面反力を再現している。
【0024】
また、連れ回り部31には、測定棒41が固定されている。ハブユニット軸受11A、11Bの動トルクは、ハブ輪12A、12Bが回転したとき、フランジ付き外輪13A、13Bに発生する接線力の合計値を、測定棒41を介してロードセル42により測定する。
【0025】
測定棒41は連れ回り部31の回転中心(中心軸L)の鉛直方向上方または下方に設けられると共に(図示の例では上方)、なるべく軽量化することが好ましい。
もし測定棒41を水平方向に設ける必要がある場合には、測定棒41を連れ回り部31の軸方向両側に設け、バランスをとるようにしてもよい。
【0026】
また、本実施形態では、一対の支持機構20A、20Bの支持軸23A、23B、一対のハブユニット軸受11A、11B、及び連れ回り部31は、同心に配置されている。
【0027】
このような構成を有する動トルク測定装置10による燃費測定モードでの動トルク測定は、ハブユニット軸受11A、11Bに荷重P1、P2、P3を負荷した状態で、駆動モータ26により一対の回転ハウジング22A、22Bを回転駆動し、一対のハブ輪12A、12BをJC08モードやWLTCモードで規定された回転速度で回転し、連れ回りによってフランジ付き外輪13A、13Bに発生する合計接線力(合計動トルク)をロードセル42により測定することで可能となる。即ち、1回の動トルク測定により、車両の左右輪に相当する一対のハブユニット軸受11A、11Bの連れ回りによる合計トルクを精度よく測定できる。
【0028】
ハブ輪12A、12Bが回転したとき、特に、燃費測定モードなどでハブ輪12A、12Bの回転速度が時々刻々と変化する状態においては、フランジ付き外輪13A、13Bで測定される連れ回り力(動トルク)は、フランジ付き外輪13A、13B及び連れ回り部31の慣性モーメントが測定誤差に大きく影響する。即ち、フランジ付き外輪13A、13B及び連れ回り部31の慣性モーメントを小さく設定することで、ハブ輪12A、12Bの回転変動に伴う動トルクを遅れなく感度よく測定することができる。
【0029】
したがって、本実施形態の動トルク測定装置10によれば、連れ回り部31が一対の被測定物に対して共用でき、また、連れ回り部31は、軽金属で形成された、単純な円筒形状を有するので、バランスがとりやすく、連れ回り部31の慣性モーメントを小さくすることができる。これにより、ハブ輪12A、12Bの回転速度が刻々と変化するような状態であっても、フランジ付き外輪13A、13Bに発生する連れ回りによる動トルクを精度良く測定可能であり、かつ一回の測定で互いに回転方向が異なる一対の被測定物の合計動トルクを測定できる。
さらに、連れ回り部31は、被測定物のサイズの影響を受けないので、連れ回り部31を小型化することができる点においても、連れ回り部31の慣性モーメントを小さくすることができる。
【0030】
(第1実施形態の変形例)
次に、第1実施形態の変形例の動トルク測定装置について、図2を参照して説明する。
本変形例の動トルク測定装置10の構成は、第1実施形態の動トルク測定装置10と同じ構成であり、一対のハブユニット軸受11A、11Bの取付け方向のみが第1実施形態と異なる。
【0031】
即ち、一対のハブ輪12A、12Bが連れ回り部31に連結され、一対のフランジ付き外輪13A、13Bが、一対の支持機構20A、20Bの回転ハウジング22A、22Bに連結されている。そして、一対のフランジ付き外輪13A、13Bを回転させて、一対のハブ輪12A、12Bに発生する連れ回りによる合計動トルクをロードセル42により測定する。
【0032】
本変形例の動トルク測定装置10は、フランジ付き外輪13A、13Bのアンバランス量が大きく、第1実施形態のように一対のフランジ付き外輪13A、13Bを連れ回り部31に組み付けたとき、一対のフランジ付き外輪13A、13Bと連れ回り部31との組立体のアンバランスを調整しきれない場合に有効である。即ち、一対の回転ハウジング22A、22Bは、それぞれ高い剛性を有する背面組合せのアンギュラ玉軸受21A、21B(円錐ころ軸受であってもよい)を介して一対の負荷棒33A、33Bに支承されているので、アンバランス量が大きいフランジ付き外輪13A、13Bを回転ハウジング22A、22Bに取付けても問題なく回転させることができ、動トルク測定が可能となる。
【0033】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態の動トルク測定装置について、図3を参照して説明する。
本実施形態の動トルク測定装置10の構成は、第1実施形態の動トルク測定装置10と同じ構成であり、一対のフランジ付き外輪13A、13Bが、それぞれナックル45A、45Bを介して連れ回り部31に取付けられている点において第1実施形態の動トルク測定装置10と異なる。
【0034】
本実施形態の動トルク測定装置10は、フランジ付き外輪13A、13Bのアンバランス量が大きく、一対のフランジ付き外輪13A、13Bを連れ回り部31に組み付けたとき、一対のフランジ付き外輪13A、13Bと連れ回り部31との組立体のアンバランスを調整しきれない場合に有効である。
【0035】
一般的に、フランジ付き外輪13A、13Bは、ナックル45、45Bに取り付けられると若干の変形を生じ、軌道面の真円度が低下する。軌道面の真円度悪化は、ハブユニット軸受11A、11Bの軸受部の内部荷重を発生させ、予圧が大きくなった場合と同じように、動トルクに影響を与える可能性がある。
【0036】
したがって、本実施形態の動トルク測定装置10によれば、一対のフランジ付き外輪13A、13Bが、それぞれナックル45A、45Bを介して連れ回り部31に取付けられることで、より実車に近い状態での動トルクを測定することが可能となる。
【0037】
(第2実施形態の変形例)
次に、本発明の第2実施形態の変形例の動トルク測定装置について、図4を参照して説明する。
本変形例の動トルク測定装置10の構成は、図2に示す第1実施形態の変形例の動トルク測定装置10と同じ構成であり、一対のフランジ付き外輪13A、13Bは、それぞれナックル45A、45Bを介して回転ハウジング22A、22Bに取付けられている点において第1実施形態の変形例の動トルク測定装置10と異なる。
【0038】
本変形例の動トルク測定装置10は、一対の回転ハウジング22A、22Bが、高い剛性を有する背面組合せのアンギュラ玉軸受21A、21B(円錐ころ軸受であってもよい)で一対の負荷棒33A、33Bに支承されているので、フランジ付き外輪13A、13Bとナックル45A、45Bの組立体のアンバランス量が大きい場合に有効である。
【0039】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態の動トルク測定装置について、図5を参照して説明する。
本実施形態の動トルク測定装置10の構成は、図1に示す第1実施形態の動トルク測定装置10と同じ構成であり、一対のハブユニット軸受11A、11B、及び連れ回り部31を収容するように、温度を一定に管理可能な恒温槽50が設けられている点で第1実施形態の動トルク測定装置10と異なる。
【0040】
一対のハブユニット軸受11A、11Bの動トルクは、ハブユニット軸受11A、11Bの潤滑剤の粘度に影響され、潤滑剤の粘度は温度依存性が高い。このため、ハブユニット軸受11A、11Bの動トルク測定時には、恒温槽50の温度を所定の温度に管理することで、温度による動トルクへの影響を抑制する。これにより、より精度の高い動トルク測定が可能となる。さらに、恒温槽50を設けることで、低温や高温の任意の温度での動トルク測定も可能となる。なお、ロードセル42への温度の影響を避けるために、動トルクは、恒温槽50外に配設されたロードセル42により測定することが好ましい。
【0041】
また、静圧パッド32を油圧式静圧パッドで構成する場合、油圧が解放されて熱に変わる油圧パッドを恒温槽50外に配置して、恒温槽50の温度制御を容易にすることが好ましい。なお、一対のハブユニット軸受11A、11B、及び連れ回り部31を恒温槽50内に収容する構成の動トルク測定装置は、第1実施形態に示す動トルク測定装置10に限定されず、第1実施形態の変形例(図2参照)、第2実施形態(図3参照)、及び第2実施形態の変形例(図4参照)のいずれの動トルク測定装置10にも適用できる。
【0042】
尚、本発明は、前述した各実施形態及び変形例に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
【0043】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 固定側部材と、前記固定側部材に対して相対回転可能な回転側部材をそれぞれ有する一対の被測定物の動トルクを測定する動トルク測定装置であって、
前記一対の被測定物における前記固定側部材及び前記回転側部材の一方である第1部材を保持する回転ハウジングと、該回転ハウジングを転がり軸受を介して支持する支持軸と、をそれぞれ有する一対の支持機構と、
前記各回転ハウジングを介して前記一対の第1部材を回転駆動する駆動機構と、
前記一対の支持機構の間に配置され、前記一対の被測定物における前記固定側部材及び前記回転側部材の他方である第2部材を保持し、前記一対の第1部材の回転によって、前記一対の第2部材とともに連れ回る連れ回り部と、
前記連れ回り部を回転自在に支持し、ラジアル荷重が負荷される静圧パッドと、
前記一対の支持機構のそれぞれに対して前記連れ回り部と反対側で、前記支持軸と連結され、前記一対の支持機構を介して前記一対の第1部材にアキシャル荷重を負荷する一対の負荷棒と、
を備え、
前記一対の被測定物に作用する合計動トルクは、前記連れ回り部に発生する接線力を測定することで与えられる、
動トルク測定装置。
この構成によれば、連れ回り部が一対の被測定物に対して共用できるので、連れ回り部の慣性モーメントを小さくすることができ、第1部材の回転速度が刻々と変化するような状態であっても、第2部材に発生する連れ回りによる動トルクを精度良く測定可能であり、かつ一回の測定で互いに回転方向が異なる一対の被測定物の合計動トルクを測定できる。
【0044】
(2) 前記固定側部材は、ハブユニット軸受のフランジ付き外輪であり、前記回転側部材は、前記ハブユニット軸受のハブ輪であり、前記ハブユニット軸受には、車両の車輪に作用する路面反力に相当する荷重が負荷される、(1)に記載の動トルク測定装置。
この構成によれば、燃費測定モードにおけるハブユニット軸受のフランジ付き外輪に発生する連れ回りによる動トルクを測定できる。
【0045】
(3) 前記一対の被測定物を収容する恒温槽をさらに備える、(1)又は(2)に記載の動トルク測定装置。
この構成によれば、潤滑剤の粘度により動トルクの測定値に与える影響を抑制できる。
【0046】
(4) (1)~(3)のいずれかに記載の動トルク測定装置を用いた動トルク測定方法であって、
前記連れ回り部及び前記一対の負荷棒に前記ラジアル荷重及びアキシャル荷重を負荷した状態で、前記第1部材を回転駆動させ、前記連れ回り部に発生する接線力を測定することで、前記一対の被測定物に作用する合計動トルクを測定する、動トルク測定方法。
この構成によれば、荷重を負荷した状態で第1部材を回転駆動させ、連れ回り部に発生する接線力を測定することで、一対の被測定物に作用する合計動トルクを測定できる。
【0047】
(5) 前記連れ回り部及び前記負荷棒に負荷される前記ラジアル荷重及びアキシャル荷重は、車両の車輪に作用する路面反力に相当し、
前記一対の被測定物に作用する合計動トルクは、前記第1部材の回転速度を変化させた状態で測定される、(4)に記載の動トルク測定方法。
この構成によれば、ハブユニット軸受に、車両の車輪に作用する路面反力を負荷した状態で、一対の被測定物に作用する合計動トルクを測定できる。
【符号の説明】
【0048】
10 動トルク測定装置
11A、11B ハブユニット軸受(被測定物)
12A、12B ハブ輪(回転側部材)
13A、13B フランジ付き外輪(固定側部材)
20A、20B 支持機構
21A、21B アンギュラ玉軸受(転がり軸受)
22A、22B 回転ハウジング
23A、23B 支持軸
25 駆動機構
31 連れ回り部
32 静圧パッド
33A、33B 負荷棒
45A、45B ナックル
50 恒温槽
P1 ラジアル荷重
P2 スラスト荷重(アキシャル荷重)
図1
図2
図3
図4
図5