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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122969
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】メタツインおよびメタサーフェス板
(51)【国際特許分類】
   H01Q 15/02 20060101AFI20230829BHJP
【FI】
H01Q15/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026756
(22)【出願日】2022-02-24
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ▲1▼掲載年月日 2021年12月23日 ▲2▼掲載アドレス https://ieeexplore.ieee.org/document/9661382
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ▲1▼掲載年月日 2021年12月23日 ▲2▼掲載アドレス https://ieeexplore.ieee.org/document/9661382
(71)【出願人】
【識別番号】502340996
【氏名又は名称】学校法人法政大学
(74)【代理人】
【識別番号】100102635
【弁理士】
【氏名又は名称】浅見 保男
(74)【代理人】
【識別番号】110002767
【氏名又は名称】弁理士法人ひのき国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 久松
(72)【発明者】
【氏名】阿部 智希
【テーマコード(参考)】
5J020
【Fターム(参考)】
5J020AA02
5J020BB03
5J020BD03
5J020CA04
5J020DA04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】透過位相の大きな位相変化量を得ることができるメタツイン及び全体の体積と製造コストを増加させることなく小さな偏向角から60度以上の大きな偏向角までを実現できるメタサーフェス板を提供する。
【解決手段】メタツインM1は、誘電体基板10の中心点Oに対して点対称に、基本導体パターンを半截した同形状の第1導体パターン11と第2導体パターン12とを、誘電体基板10の上面と下面に形成して構成されている。また、メタサーフェス板は、メタツインM1を誘電体基板のx方向及びy方向に周期配列して多数形成される。第1導体パターン11は、誘電体基板の上面に周期配列されて形成される。第2導体パターン12は、誘電体基板の下面に周期配列されて第1導体パターン11に対応するよう形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定幅の線状で構成された形状の基本導体パターンを半截してなる第1導体パターンと第2導体パターンとを有し、
該第1導体パターンと該第2導体パターンとは、互いの面の平行を維持しつつ当該面に垂直な方向に所定間隔だけ離隔して配置されていることを特徴とするメタツイン。
【請求項2】
前記第1導体パターンと前記第2導体パターンとは、誘電体基板の一方の面上と他方の面上とにそれぞれ形成可能とされると共に、前記誘電体基板の中心点に対して点対称に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のメタツイン。
【請求項3】
前記第1導体パターンと前記第2導体パターンとにおいて、前記誘電体基板を介して先端が対向するパートの長さが設定可能とされていることを特徴とする請求項2に記載のメタツイン。
【請求項4】
前記基本導体パターンは、所定幅の外側ループと内側ループとからなる2重ループの形状とされていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のメタツイン。
【請求項5】
前記第1導体パターンと前記第2導体パターンとにおいて、前記外側ループの中央部と前記内側ループの中央部との間を接続する所定幅の接続片がそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項4に記載のメタツイン。
【請求項6】
前記外側ループおよび前記内側ループと前記接続片とが、該接続片の連結方向の中心線に対して線対称に分離配置されていることを特徴とする請求項5に記載のメタツイン。
【請求項7】
前記外側ループと前記内側ループとは、同心で配置された矩形ループとされていることを特徴とする請求項4ないし6のいずれかに記載のメタツイン。
【請求項8】
前記外側ループは、矩形ループとされ、
前記内側ループは、同心で配置されると共に約45度回転した形状の矩形ループとされていることを特徴とする請求項4または5に記載のメタツイン。
【請求項9】
前記第1導体パターンおよび前記第2導体パターンは、T字状の形状とされていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のメタツイン。
【請求項10】
第2誘電体基板と、
該第2誘電体基板のx方向およびy方向に周期配列して多数形成されている請求項1ないし9のいずれかに記載のメタツインとを備え、
前記メタツインにおける前記第1導体パターンは、前記第2誘電体基板の上面に周期配列されて形成され、
前記メタツインにおける前記第2導体パターンは、前記第2誘電体基板の下面に周期配列されて前記第1導体パターンに対応するよう形成されていることを特徴とするメタサーフェス板。
【請求項11】
前記第2誘電体基板のx方向およびy方向に周期配列して多数形成された前記メタツインにおいて、前記各メタツインの透過位相が所定の透過位相とされて、所定の透過位相の分布が形成されていることを特徴とする請求項10に記載のメタサーフェス板。
【請求項12】
前記各メタツインにおける透過位相が所定の方向に向かって次第に遅れていく透過位相の分布とされて、前記第2誘電体基板の一面から入射された入射波が、所定の方向に偏向された透過波として放射されることを特徴とする請求項11に記載のメタサーフェス板。
【請求項13】
局所的な波源から放射されて前記第2誘電体基板の一面からの入射波の位相が、前記波源と前記第2誘電体基板の入射位置との間隔に応じた位相とされており、前記メタツインの各々における透過位相が前記間隔に応じて設定されていることを特徴とする請求項11に記載のメタサーフェス板。
【請求項14】
前記第2誘電体基板の面上に、前記各メタツインにおける透過位相を調整する電子素子が装着されて、該電子素子により透過波の偏向角やパターンが調節されることを特徴とする請求項10ないし13のいずれかに記載のメタサーフェス板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、透過位相の大きな位相変化量を得られるメタツイン、および、放射源の前方に配置して所望の方向に透過波を偏向できるメタサーフェス板に関する。
【背景技術】
【0002】
メタサーフェスの特性を利用した新しい機能を有する電磁波通信機器が国内外で開発されつつある。メタサーフェスは、自然界には存在しない反射特性をもつ人工表面(超表面)のことであり、入射された電磁波の位相を制御できる特徴を有している。動作波長に比べて小さな金属素子を平面板上に周期的にならべると、通常とは異なる電磁界現象が現れる。このような平面板は、通常、金属板からなる接地板によって裏打ちされている。この接地板のついた人工表面板は反射型のメタサーフェス板とよばれる。
これに対し、接地板をもたない人工表面薄板は透過型のメタサーフェス板とよばれる。従来の透過型のメタサーフェス板をアンテナの前方に配置すると、透過波の放射パターンをフォーミング可能なことが明らかになっている。
【0003】
従来の透過型のメタサーフェス板110を使用する構成を図28に示す。図28に示すように、メタサーフェス板110をパッチアンテナ130の前方(z方向)に配置することで、パッチアンテナ130からの入射波はメタサーフェス板110を透過して、所定の放射パターンの透過波となる。パッチアンテナ130は矩形状の導体とされ、厚みの薄い直方体状の誘電体板からなるアンテナ基板131の上面に形成されている。アンテナ基板131は矩形状のグランド板140の上面に配置されており、グランド板140は、パッチアンテナ130のグランドプレーンとして機能する。なお、パッチアンテナ130とメタサーフェス板110との間隔は使用周波数fの自由空間波長をλとすると、約1/2λとされている。
【0004】
図29にメタサーフェス板110の詳細構成が示されている。メタサーフェス板110は、金属製のループ素子112が、誘電体基板120の一表面のx方向及びy方向に周期的に複数形成されて構成されている。1つのループ素子112が誘電体基板120に形成されている領域が単位素子111を構成している。単位素子111を構成するループ素子112の形状は正方形の形状とされ、ループ素子112の一辺の長さがStとされ、線幅がWtとされている。誘電体基板120の一表面に形成された複数のループ素子112の全ては一辺の長さStと線幅Wtとが同じ寸法とされて、同形状とされている。
【0005】
ここで、一辺Stの長さが固定され、線幅Wtのみが異なるループ素子112を周期配列したメタサーフェス板110を解析すると、ループ素子112の線幅Wtを狭くするにつれて、ループ素子112を備える単位素子111の透過位相が遅れていくことが分かった。この事実を元に、メタサーフェス板110の透過波を1方向または2方向や4方向へ向けた放射パターンとすることができる。
透過波を所望の1方向に向ける放射パターンとすることができる従来のメタサーフェス板110-1の構成を図30に示す。図30に示すメタサーフェス板110-1は、誘電体基板120の一表面に金属製のループ素子112aが、x方向及びy方向に周期的に複数形成されて構成されている。そして、正方形の形状のループ素子112aの一辺の長さStの長さは固定されて、線幅Waをx方向へ向かって次第に太くなるよう形成されている。y方向においては、隣接するループ素子112aの一辺の長さStの長さおよび線幅Waの線幅は固定されて形成されている。この場合、1つのループ素子112aが誘電体基板120に形成されている領域が単位素子111aを構成している。
【0006】
図28において、メタサーフェス板110に替えて図30に示すメタサーフェス板110-1とした際に、メタサーフェス板110-1における透過波の放射パターンを図31に示す。この場合、パッチアンテナ130とメタサーフェス板110-1との間隔は使用周波数の自由空間波長をλとすると、約1/2λとされている。そして、ループ素子112aの線幅Waが細くなるほど、ループ素子112aを備える単位素子111aの透過移相が遅れることから、メタサーフェス板110-1の透過波の透過移相は-x方向に行くにつれて遅れていくようになる。すなわち、メタサーフェス板110-1における透過波は-x方向に偏向される。図31に示す放射パターンを参照すると、メタサーフェス板110-1における透過波は-x方向に約-30°偏向された放射パターンとされ、約30°の偏向角θが得られている。この場合、透過波の振幅はほぼ減衰することなく、メタサーフェス板110-1を透過する。
【0007】
ここで、図28に破線で示すように、従来のメタサーフェス板110を電磁波の進行方向に所定間隔でz方向に2枚あるいは3枚重ねて配置することができる。2枚目と3枚目のメタサーフェス板110b、110cの構成はメタサーフェス板110と同じ構成とされている。例えば、図28に示す3枚積層したメタサーフェス板110,110b,110cを図30に示す構成のメタサーフェス板110-1とした際の透過波の放射パターンを図32に示す。この場合、使用周波数の自由空間波長をλとすると、パッチアンテナ130と1段目のメタサーフェス板110との間隔は約1/2λとされ、3枚のメタサーフェス板110-1の相互の間隔は約1/4λとされている。この場合、3枚積層したメタサーフェス板110-1における透過波は-x方向にさらに偏向される。図32に示す放射パターンを参照すると、3枚積層したメタサーフェス板110-1における透過波は-x方向に約-60°偏向された放射パターンとされ、約60°の偏向角θが得られるようになる。また、透過波の振幅はほぼ減衰することなく、3枚積層したメタサーフェス板110-1を透過する。
なお、メタサーフェス板110,110bの2枚を積層した場合は、図示しないが約50°の偏向角θが得られるようになる。
【0008】
次に、従来のメタサーフェス板110において、透過波を2方向に向けた放射パターンとすることができる他の構成を図33に示す。図33に示す他の構成のメタサーフェス板110-2は、誘電体基板120の一表面に金属製のループ素子112bからなる単位素子111bが、x方向及びy方向に周期的に複数形成されて構成されている。そして、正方形の形状のループ素子112bの一辺の長さStの長さは固定されて、線幅Wbをx方向の中央から±x方向へ向かって次第に細くなるよう形成されている。y方向においては、隣接するループ素子112bの一辺の長さStの長さおよび線幅Wbの線幅は固定されて形成されている。この場合、1つのループ素子112bが誘電体基板120に形成されている領域が単位素子111bを構成している。
【0009】
図28に示すメタサーフェス板110を図33に示す他の構成のメタサーフェス板110-2とした際に、メタサーフェス板110-2における透過波の放射パターンを図34に示す。この場合、使用周波数の自由空間波長をλとすると、パッチアンテナ130とメタサーフェス板110-2との間隔は約1/2λとされる。そして、ループ素子112bの線幅Wbが細くなるほど、ループ素子112bを備える単位素子111bの透過移相が遅れることから、メタサーフェス板110-2の透過波の透過移相は+x方向及び-x方向に行くにつれて遅れていくようになる。すなわち、メタサーフェス板110-2における透過波は+x方向および-x方向に偏向されて2方向に向けた放射パターンが得られる。図34に示す放射パターンを参照すると、メタサーフェス板110-2における透過波は±x方向に約±45度偏向された2方向に向けた放射パターンとされ、約45度の偏向角θが得られている。
なお、図28に示す3枚積層したメタサーフェス板110,110b,110cを図33に示す他の構成のメタサーフェス板110-2とすることができる。2枚あるいは3枚積層したメタサーフェス板110-2における透過波の2方向に向けた放射パターンは、偏向角θが大きくなる。
【0010】
次に、従来のメタサーフェス板110において、透過波を4方向に向けた放射パターンとすることができるさらに他の構成を図35に示す。図35に示すさらに他のメタサーフェス板110-3は、誘電体基板120の一表面に金属製のループ素子112cからなる単位素子111cが、x方向及びy方向に周期的に複数形成されて構成されている。そして、正方形の形状のループ素子112cの一辺の長さStの長さは固定されて、線幅Wcが誘電体基板120の中心から±x方向へ向かって次第に細くなると共に、線幅Wcを誘電体基板120の中心から±y方向へ向かって次第に細くなるよう形成されている。この場合、1つのループ素子112cが誘電体基板120に形成されている領域が単位素子111cを構成している。
【0011】
図28に示すメタサーフェス板110を図35に示すさらに他の構成のメタサーフェス板110-3とする。この場合、使用周波数の自由空間波長をλとすると、パッチアンテナ130とメタサーフェス板110-3との間隔は約1/2λとされる。そして、ループ素子112cの線幅Wcが細くなるほど、ループ素子112cを備える単位素子111cの透過移相が遅れることから、メタサーフェス板110-3の透過波の透過移相は中心から±x方向及び±y方向に行くにつれて遅れていくようになる。すなわち、メタサーフェス板110-2における透過波は±x方向および±y方向に偏向されて4方向に向けた放射パターンが得られる。
なお、図28に示す3枚積層したメタサーフェス板110,110b,110cを図35に示すさらに他の構成のメタサーフェス板110-3とすることができる。2枚あるいは3枚積層したメタサーフェス板110-3における透過波の4方向に向けた放射パターンは、偏向角θが大きくなる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】科学研究費助成事業 研究成果報告書 機関番号:32675 課題番号:15K06087 研究課題名:透過型メタサーフェス板を前置した低姿勢アンテナ構造体による多偏向ビーム形成 研究代表者:中野 久松[online], [令和3年 12月14日検索],インターネット<https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-15K06087/15K06087seika.pdf>
【非特許文献2】H. Nakano, S. Mitsui, and J. Yamauchi, “Tilted-beam high gain antenna system composed of a patch antenna and periodically arrayed loops,” IEEE Transactions on Antennas and Propagation, vol. 54, no. 1, pp. 2917-2925, June 2014.
【非特許文献3】H. Nakano, M. Toida, S. Okabe, and J. Yamauchi, “Tilted beam formation using parasitic loop-based plates,” IEEE Antennas and Wireless Propagation Letters, vol. 66, pp. 1475-1478, 2016.
【非特許文献4】H. Nakano, Y. Kameta, and J. Yamauchi, “Increased beam tilt angle from a patch antenna with three inhomogeneous loop-based plates,” IET Electronics Letters, vol. 53, no. 24, pp. 1562-1564, Nov. 2017.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ビル妨害等による通信劣化を避けるために電磁波の放射ビームを特定方向に偏向して放射する必要が生じている。非特許文献1-4に開示された従来のメタサーフェス板は、透過波を特定方向に偏向することができる。非特許文献1,2を参照すると、1枚のメタサーフェス板では、約30度までの偏向角とすることができる。さらに、偏向角を大きくするためには、もう1枚あるいは2枚のメタサーフェス板を1枚目のメタサーフェス板の上に追加することが、非特許文献1,3,4に示されている。2枚積層されたメタサーフェス板とすると約50度の偏向角を得ることができ、3枚積層されたメタサーフェス板を用いると偏向角を約60度にすることが可能である。
このように、従来のメタサーフェス板は、30度以上の偏向角を実現するために、2枚以上のメタサーフェス板を用いていた。このことは、大きな偏向角が必要となる場合は、使用するメタサーフェス板の枚数を増加させる必要があることから、メタサーフェス板の全体の体積の増加および製造コストの増加を招いてしまうという問題点があった。
【0014】
そこで、本発明は、透過位相の大きな位相変化量を得ることができるメタツインを提供することを目的としている。また、本発明は、全体の体積および製造コストを増加させることなく小さな偏向角から60度以上の大きな偏向角までを実現できるメタサーフェス板を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明のメタツインは、所定の形状の基本導体パターンを半截して第1導体パターンと第2導体パターンとを形成し、該第1導体パターンの面と該第2導体パターンの面とを平行を維持して当該面に垂直な方向に所定間隔だけ離隔することで、前記第1導体パターンと前記第2導体パターンとが所定間隔離隔して配置されていることを最も主要な特徴としている。
【0016】
また、本発明のメタツインにおいて、前記基本導体パターンは、所定幅の線状で構成された形状とされて、前記第1導体パターンと前記第2導体パターンとは所定幅の線状からなる形状とされていてもよい。
さらに、本発明のメタツインにおいて、前記第1導体パターンは、誘電体基板の一面上に形成可能とされ、前記第2導体パターンは、前記誘電体基板の前記一面に対面する他面上に形成可能とされ、前記第1導体パターンと前記第2導体パターンとは、前記誘電体基板の中心点に対して点対称に配置されている。
さらにまた、本発明のメタツインにおいて、前記第1導体パターンと前記第2導体パターンとは、x-y平面に配置された前記基本導体パターンを半截して形成され、同形状とされている前記第1導体パターンと前記第2導体パターンとは、x方向のx方向部位とy方向のy方向部位とから構成されている。
さらにまた、本発明のメタツインにおいて、前記第1導体パターンと前記第2導体パターンとにおいて、少なくとも1つの前記x方向の同じパートの長さが設定可能とされ、同形状とされている前記第1導体パターンと前記第2導体パターンとにおける前記同じパートの先端同士が前記所定間隔を隔てて重なるまたは重ならない構成とされている。
さらにまた、本発明のメタツインにおいて、前記同じパートの長さに応じた透過位相とされている。
さらにまた、本発明のメタツインにおいて、前記基本導体パターンが所定幅の外側ループと内側ループとからなる2重ループの形状とされていてもよい。
さらにまた、本発明のメタツインにおいて、前記第1導体パターンと前記第2導体パターンとにおいて、前記外側ループの中央部と前記内側ループの中央部との間を接続する所定幅の接続片がそれぞれ形成されている。
さらにまた、本発明のメタツインにおいて、前記接続片で接続された前記外側ループおよび前記内側ループと前記接続片とのx方向の中央が切り欠かれていてもよい。
さらにまた、本発明のメタツインにおいて、前記外側ループと前記内側ループとが、同心で配置された矩形ループとされていてもよい。
さらにまた、本発明のメタツインにおいて、前記外側ループが矩形ループとされ、前記内側ループが同心で配置されると共に約45度回転した形状の矩形ループとされていてもよい。
さらにまた、本発明のメタツインにおいて、前記第1導体パターンおよび前記第2導体パターンがT字状の形状とされていてもよい。
【0017】
上記目的を達成するために、本発明のメタサーフェス板は、第2誘電体基板と、前記第2誘電体基板のx方向およびy方向に周期配列して多数形成されている請求項1ないし12のいずれかに記載のメタツインとを備え、前記メタツインにおける前記第1導体パターンが、前記第2誘電体基板の上面に周期配列されて形成され、前記メタツインにおける前記第2導体パターンが、前記第2誘電体基板の下面に周期配列されて前記第1導体パターンに対応するよう形成されていることを最も主要な特徴としている。
本発明のメタサーフェス板において、前記第2誘電体基板のx方向およびy方向に周期配列して多数形成された前記メタツインにおいて、前記各メタツインの透過位相が所定の透過位相とされて、所定の透過位相の分布が形成されている。
また、本発明のメタサーフェス板において、前記各メタツインにおける透過位相が所定の方向に向かって次第に遅れていく透過位相の分布とされて、前記第2誘電体基板の一面から入射された入射波が、所定の方向に偏向された透過波として放射されている。
さらに、本発明のメタサーフェス板において、局所的な波源から放射されて前記第2誘電体基板の一面からの入射波の位相が、前記波源と前記第2誘電体基板の入射位置との間隔に応じた位相とされており、前記メタツインの各々における透過位相が前記間隔に応じて設定されている。
さらにまた、本発明のメタサーフェス板において、前記第2誘電体基板の面上に、前記各メタツインにおける透過位相を調整する電子素子が装着されて、前記電子素子により透過波の偏向角やパターンを調節するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のメタツインは、所定の形状の基本導体パターンを半截して形成した第1導体パターンと第2導体パターンとを、離隔して配置するように構成している。この本発明のメタツインは、透過位相の大きな位相変化量を得ることができる。また、本発明のメタサーフェス板は、本発明にかかるメタツインを用いることにより、透過波を放射する偏向の角度を小さな角度から60度以上の大きな角度まで1枚で実現することができるようになる。そして、本発明のメタサーフェス板は1枚で必要な角度の偏向を行えることから、全体の体積を減少できると共に、製造コストを低廉とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施例のメタツインを備える第1実施例の単位素子の構成を示す斜視図、上面図、側面図である。
図2】本発明の第1実施例のメタツインの構成を説明する斜視図である。
図3】本発明の第1実施例のメタツインにおいて、長さLinに対する透過波の振幅特性を示す図である。
図4】本発明の第1実施例のメタツインにおいて、長さLinを調整した際の形状を示す図である。
図5】本発明の第1実施例のメタツインにおいて、長さLinに対する透過位相特性を示す図である。
図6】本発明の第1実施例のメタサーフェス板の構成を示すと共に、一部を拡大して示す平面図である。
図7】本発明の第1実施例のメタサーフェス板における平面波の屈折の様子を示す図である。
図8】本発明の第1実施例のメタサーフェス板における平面波の屈折の様子を電界分布で示す図である。
図9】本発明の第1実施例のメタサーフェス板における変形例の構成を示すと共に、一部を拡大して示す平面図である。
図10】本発明の第1実施例の変形例のメタサーフェス板における波源がパッチアンテナの場合の屈折の様子を示す図である。
図11】本発明の第1実施例の変形例のメタサーフェス板における波源がパッチアンテナの場合の屈折の様子を電界分布で示す図である。
図12】本発明の第1実施例の変形例のメタサーフェス板において所定の使用周波数波とされた場合の放射パターンを示す図である。
図13】本発明の第1実施例の変形例のメタサーフェス板において他の使用周波数波とされた場合の放射パターンを示す図である。
図14】本発明の第1実施例の変形例のメタサーフェス板においてさらに他の使用周波数波とされた場合の放射パターンを示す図である。
図15】本発明の第1実施例の変形例のメタサーフェス板の最大放射方向における利得の周波数特性を示す図である。
図16】本発明の第2実施例のメタツインを備える第2実施例の単位素子の構成を示す斜視図、上面図、側面図である。
図17】本発明の第2実施例のメタツインの構成を説明する斜視図である。
図18】本発明の第2実施例のメタツインにおいて、長さLinに対する透過波の振幅特性を示す図である。
図19】本発明の第2実施例のメタツインにおいて、長さLinに対する透過位相特性を示す図である。
図20】本発明の第3実施例のメタツインを備える第3実施例の単位素子の構成を示す斜視図、上面図、側面図である。
図21】本発明の第3実施例のメタツインの構成を説明する斜視図である。
図22】本発明の第3実施例のメタツインにおいて、長さLinに対する透過波の振幅特性を示す図である。
図23】本発明の第3実施例のメタツインにおいて、長さLinに対する透過位相特性を示す図である。
図24】本発明の第4実施例のメタツインを備える第4実施例の単位素子の構成を示す斜視図、上面図、側面図である。
図25】本発明の第4実施例のメタツインの構成を説明する斜視図である。
図26】本発明の第4実施例のメタツインにおいて、長さLinに対する透過波の振幅特性を示す図である。
図27】本発明の第4実施例のメタツインにおいて、長さLinに対する透過位相特性を示す図である。
図28】従来のメタサーフェス板を使用する構成を示す斜視図である。
図29】従来のメタサーフェス板の構成を示すと共に、一部を拡大して示す平面図である。
図30】従来のメタサーフェス板の構成の一例を示す平面図である。
図31】従来のメタサーフェス板を一例の構成とした場合の放射パターンを示す図である。
図32】従来のメタサーフェス板を複数枚重ねた場合の放射パターンを示す図である。
図33】従来のメタサーフェス板の他の構成を示す平面図である。
図34】従来のメタサーフェス板を他の構成とした場合の放射パターンを示す図である。
図35】従来のメタサーフェス板のさらに他の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1実施例のメタツインを備える第1実施例の単位素子>
本発明の第1実施例のメタツインM1を備える第1実施例の単位素子1の構成を図1(a)(b)(c)に示す。図1(a)は第1実施例の単位素子1の構成を示す斜視図、図1(b)は第1実施例の単位素子1の構成を示す上面図、図1(c)は第1実施例の単位素子1の構成を示す側面図である。また、本発明の第1実施例のメタツインM1の構成を説明する図を図2(a)(b)(c)(d)に斜視図で示す。
図1(a)(b)(c)に示すように、第1実施例の単位素子1は、誘電体基板10と、誘電体基板10の上面および下面に形成された第1実施例のメタツインM1とから構成されている。第1実施例のメタツインM1は、誘電体基板10の上面に形成された第1導体パターン11および誘電体基板10の下面に形成された第2導体パターン12とから構成されている。
【0021】
そこで、第1実施例のメタツインM1について図2(a)(b)(c)(d)を参照して説明する。図2(a)(b)(c)にはメタツインM1を構成する過程が示されている。メタツインM1の基本導体パターンは図2(a)に示す二重ループ素子Lp1とされている。二重ループ素子Lp1は、所定幅の線状の正方形状とされた外側ループLPoutと、同心に配置された所定幅の線状の正方形状とされた内側ループLPinとから構成され、外側ループoutと内側ループLPinとのx方向で対向する2辺における中央部同士が接続されている。基本導体パターンとされる二重ループ素子Lp1を、図2(b)に示すようにy方向の中心線CLyで半截して、線対称の同形状の第1導体パターンM11と第2導体パターンM12とに分離する。そして、第1導体パターンM11を上に配置すると共に第2導体パターンM12を下に配置して両者の面を平行を維持して面に垂直な方向に所定間隔だけ離隔する。この場合、第1導体パターンM11と第2導体パターンM12とをz方向において所定間隔Wbだけ離隔して配置する。これにより、離隔して配置された第1導体パターンM11と第2導体パターンM12とで形成される空間の中心に対して第1導体パターンM11と第2導体パターンM12とが点対称の形状とされたメタツインM1’が形成される。ここで、図2(c)に示すように第1導体パターンM11の半截された先端を-x方向に延伸して第1導体パターン11を形成すると共に、第2導体パターンM12の半截された先端をx方向に同じ長さだけ延伸して第2導体パターン12を形成する。これにより、同形状とされていると共に、z方向から透視して先端同士が重なった第1導体パターン11と第2導体パターン12とからなるメタツインM1が形成される。そして、図2(d)に示すように厚さがWbとされた誘電体基板10を用意すると、メタツインM1を容易に作成することができる。すなわち、誘電体基板10の中心に対して第1導体パターン11と第2導体パターン12とが点対称の形状となるように、誘電体基板10の上面に第1導体パターン11を形成し、下面に破線で示す第2導体パターン12を形成する。これにより、誘電体基板10の上面および下面に第1実施例のメタツインM1が形成された図1(a)(b)(c)に示す第1実施例の単位素子1を得ることができる。
【0022】
図1(a)(b)(c)に戻り誘電体基板10の上面および下面に形成されたメタツインM1を構成する第1導体パターン11と破線で示す第2導体パターン12とは、二重のコ字状とされ誘電体基板10の中心Oに対して点対称の形状とされ、z方向から透視すると基本導体パターンとされる正方形状の二重ループ素子LP1が形成されている。第1導体パターン11は、x方向の5つのパートとy方向の2つのパートとから構成されている。x方向の5つのパートは、図1(b)に示すように外側ループを構成するパート11-x-1およびパート11-x-3と、内側ループを構成するパート11-x-2およびパート11-x-4と、外側ループと内側ループとの中央部同士を接続するパート11-x-5で構成され、y方向の2つのパートは、図1(a)に示すようにパート11-y-1およびパート11-y-2とで構成される。また、破線で示す第2導体パターン12も、x方向の5つのパートとy方向の2つのパートから構成されている。x方向の5つのパートは、図1(b)に示すように外側ループを構成するパート12-x-1およびパート12-x-3と、内側ループを構成するパート12-x-2およびパート12-x-4と、外側ループと内側ループとを接続するパート12-x-5で構成され、y方向の2つのパートは、図1(a)に示すようにパート12-y-1およびパート12-y-2とで構成される。
【0023】
第1実施例のメタツインM1の寸法が図1(b)に示されている。第1導体パターン11の横幅は長さLsとされ、外側ループを構成するパート11-x-1およびパート11-x-3の先端からパート11-y-1の中央までは長さLoutとされ、内側ループを構成するパート11-x-2およびパート11-x-4の先端からパート11-y-2の中央までは長さLinとされ、パート11-x-1とパート11-y-1とパート11-x-3とで構成されるコ字状の外側ループと、パート11-x-2とパート11-y-2とパート11-x-4とで構成されるコ字状の内側ループとは間隔gで配置され、第1導体パターン11における外側ループと内側ループとは幅Wの線状の導体パターンとされている。第2導体パターン12の各部の寸法は、第1導体パターン11と第2導体パターン12とが同形状であることから、同じ寸法とされている。すなわち、パート12-x-1およびパート12-x-3の先端からパート12-y-1の中央までは長さLoutとされ、パート12-x-2およびパート12-x-4の先端からパート12-y-2の中央までは長さLinとされ、パート12-x-1とパート12-y-1とパート12-x-3とで構成されるコ字状の外側ループと、パート12-x-2とパート12-y-2とパート12-x-4とで構成されるコ字状の内側ループとは間隔gで配置され、第2導体パターン12における外側ループと内側ループとは幅Wの線状の導体パターンとされている。
また、第1実施例の単位素子1を構成する誘電体基板10の厚さは図1(c)に示すように厚さWbで比誘電率εsとされ、第1導体パターン11と第2導体パターン12とは厚さWbで離隔されていると共に、誘電体基板10の中心点Oに対して点対称に配置されて、z方向から透視すると正方形状の二重ループ素子LP1を形成している。
【0024】
ここで、寸法の具体的な一例を挙げると、第1導体パターン11および第2導体パターン12において、長さLsの物理長は約8mm、長さLoutの物理長は約9.4mm、とされ、間隔gの物理長は約0.4mm、幅Wの物理長は約0.4mmとされ、長さLinは後述する設定された長さとされる。誘電体基板10の厚さWbの物理長は約3.2mmとされ、比誘電率εsは約2.6とされる。比誘電率εsが約2.6の誘電体基板10は、例えばテフロン(登録商標)製とされ、比誘電率εsが約2.6の場合は波長短縮率が約0.62となる。上記した各部の物理長の寸法を使用周波数が11.5GHzの自由空間波長をλ(≒26.087mm)とした電気長で表すと、第1導体パターン11および第2導体パターン12において、長さLsの電気長は約0.307λ、誘電体基板10の厚さWbの電気長は約0.123λ、長さLoutの電気長は約0.360λとされ、間隔gの電気長は約0.015λ、幅Wの電気長は約0.015λとされる。
【0025】
第1導体パターン11および第2導体パターン12は、誘電体基板10の面上に金属インクを塗布したり、金属を蒸着して所定の厚さになるよう成膜し、所望の形状になるようエッチング加工することにより形成されている。ただし、第1導体パターン11および第2導体パターン12の形成方法は、上記形成方法に限定されるものではなく、他の形成方法を採用してもよい。第1導体パターン11および第2導体パターン12を形成する金属材料としては、金、銀、銅、アルミニウム等の良好な導電率を示す金属が用いられる。また、誘電体基板10は、マイクロ波帯での吸収がない素材を用いるのが好適であり、その素材としては、例えばテフロン(登録商標)が用いられる。ただし、テフロン(登録商標)に限るものではなく、マイクロ波帯での吸収がない他の素材を用いてもよい。
【0026】
上記説明した第1実施例のメタツインM1においては、例えば長さLoutの長さを固定にして長さLinを所定の長さに設定できるようにしている。長さLinを所定の長さに設定した第1実施例のメタツインM1においては、長さLinの設定された長さが長い場合の透過位相が、長さLinの設定された長さが短い場合の透過位相より遅れることが分かった。
ここで、本発明の第1実施例のメタツインM1において、各部の寸法を上記一例で上げた寸法として使用周波数fを11.5GHzとした際の設定された長さLinに対する透過波の振幅特性を図3に示す。図3においては、長さLinに設定される長さとして0.0mmから9.6mmが横軸に示され、縦軸にはSパラメータのS21の絶対値[dB]で表された透過波の振幅が示されている。図3を参照すると、長さLinが0.0mmに設定された時の透過波の振幅は約-1dBとなり、長さLinが0.0mmから約1.6mmまで長く設定されるに従い透過波の振幅は上昇していき、長さLinが約1.6mmに設定された時の振幅はほぼ-0.1dBとなる。長さLinが1.6mmに設定された場合の第1実施例のメタツインM1の形状を図4(a)に示す。長さLinが1.6mmを超えて設定されると、透過波の振幅は下降していき約2.2mmに設定された時の振幅は約-2dBとなり、長さLinが約2.2mmを超えるに従い透過波の振幅は上昇していき長さLinが約2.6mmに設定された時の振幅はほぼ-0.1dBとなる。長さLinが約2.6mmを超えて設定されていくと徐々に透過波の振幅が下降していくが、長さLinが約5.8mmに設定された時の振幅が約-1.4dBの谷となり、その後は長さLinが長くなるに従い徐々に透過波の振幅は上昇していく。長さLinが4.8mmに設定された場合の第1実施例のメタツインM1の形状を図4(b)に示し、長さLinが8.0mmに設定された場合の第1実施例のメタツインM1の形状を図4(c)に示す。透過波の振幅は長さLinが約8.8mmに設定された時にほぼ0.0dBとなり、長さLinの設定された長さが9.6mmになるに従い振幅が減少して長さLinが9.6mmに設定された時の振幅は約-3.1dBとなる。このように、第1実施例のメタツインM1では、長さLinが0.0mmから9.6mmまでの長さに設定されても入射された電力をほとんど透過させることができるようになる。なお、図4(a)(b)(c)は、第1実施例のメタツインM1をz方向から透視した図とされている。
【0027】
次に、本発明の第1実施例のメタツインM1において、各部の寸法を上記一例で上げた寸法として使用周波数fを11.5GHzとした際の設定された長さLinに対する透過位相特性を図5に示す。図5においては、長さLinに設定される長さとして0.0mmから9.6mmが横軸に示され、縦軸にはSパラメータのS21の位相[deg(=度)]で表された透過位相が示されている。長さLinに1.6mm、4.8mm、8.0mmが設定された場合の第1実施例のメタツインM1の形状が図4(a)(b)(c)に示されている。図5を参照すると、長さLinが0.0mmに設定された時の透過位相は約-45度であり、長さLinに設定された長さが1.6mmまで長くなるに従い透過位相は遅れていき、長さLinが1.6mmに設定された時の透過位相は約-100度となる。長さLinに設定された長さが1.6mmを超えていくに従い、透過位相は急激に遅れるようになって、長さLinが約3mmに設定された時に約-330度の透過位相となる。長さLinに設定された長さが3mmを超えていくと透過位相は徐々にさらに遅れて行くようになり、長さLinが約8mmに設定された時に約-400度の透過位相となる。長さLinに設定された長さが8mmを超えて9.6mmまで長くなるに従い透過位相はさらに遅れていき、長さLinが9.6mmに設定された時に約-475度の透過位相となる。このように、第1実施例のメタツインM1では、長さLinに設定された長さが0.0mmで約-45度、9.6mmで約-475度の透過位相となるから、長さLinに設定された長さを0.0mmから9.6mmまで長くしていくと360度を超える約430度(=-45度-(-475度)=430度)の透過位相の位相変化量を得ることができる。そして、この場合において上記したように入射された電力をほとんど透過させることができるようになる。
【0028】
<第1実施例のメタサーフェス板>
本発明の第1実施例のメタサーフェス板1-1の構成を示す平面図を図6に示す。図6では、一部の構成を拡大して示している。
本発明の第1実施例のメタサーフェス板1-1は透過型のメタサーフェス板とされており、図6に示すように、高さ方向の断面が正方形状とされた誘電体基板10-1と、誘電体基板10-1の上面および下面に周期配列して形成された多数の第1実施例のメタツインM1とから構成されている。第1実施例のメタツインM1は、x方向とy方向に同数ずつ配列されている。ただし、図6には誘電体基板10-1の上面に周期配列して形成された多数の第1実施例のメタツインM1における第1導体パターン11しか示されていないが、一部拡大図に示すように誘電体基板10-1の上面に形成された第1導体パターン11および誘電体基板10-1の下面に形成された第2導体パターン12とから第1実施例のメタツインM1が構成されている。一部拡大図では、誘電体基板10-1と、誘電体基板10-1の上面および下面に形成された第1導体パターン11および前記第2導体パターン12からなる第1実施例のメタツインM1とを備える単位素子1が示されている。すなわち、第1実施例のメタサーフェス板1-1は、一部拡大図に示す単位素子1をx方向およびy方向に周期的に配列した構成となり、単位素子1は第1実施例のメタサーフェス板1-1を構成する構成単位とされている。
【0029】
図6に示す第1実施例のメタサーフェス板1-1では、一例として誘電体基板10-1に周期配列して形成されている第1実施例のメタツインM1における長さLoutの長さは固定され、長さLinがx方向に行くに従い短くなるように設定されており、y方向における長さLinの長さは固定の長さとされている。図6に示されている第1導体パターン11の形状に見られるように図6における最上段の列の第1実施例のメタツインM1における長さLinが最も長くされ、x方向である下段の列に向かうに従って長さLinが短くされている。これにより、最上段の列の第1実施例のメタツインM1における透過位相は最も遅れ、最下段の列の第1実施例のメタツインM1における透過位相は最も進み、最下段の列から最上段の列に向かって第1実施例のメタツインM1における透過位相は徐々に遅れていく透過位相分布とされている。この透過位相分布の作用により、第1実施例のメタサーフェス板1-1における透過波は-x方向に偏向されるようになる。なお、誘電体基板10-1のx方向の物理的な縦寸法とy方向の物理的な横寸法とは同じ長さL1aとされ、その一例を挙げると長さL1aの物理的寸法は約110mmとされる。
【0030】
本発明の第1実施例のメタサーフェス板1-1における平面波の屈折の様子を図7に示す。図7において、平面波は第1実施例のメタサーフェス板1-1の一面から入射する。入射した平面波は、第1実施例のメタサーフェス板1-1に形成されている各メタツインM1を透過していくが、透過波は各メタツインM1の作用を受けた透過位相とされる。第1実施例の各メタツインM1では透過位相の程度は上述したように、最下段の列から最上段の列に向かって透過位相は徐々に遅れていくようにされている。この透過位相分布に基づいて、第1実施例のメタサーフェス板1-1から放射される透過波は-x方向に角度θ2だけ屈折されて偏向して放射されるようになる。角度θ2は、誘電体基板10-1の上面および下面に周期配列して形成された第1実施例の各メタツインM1における長さLinをそれぞれ所定の長さに設定することにより、偏向させる所望の角度θ2が得られるようになる。所望の角度θ2は、一般的には30度ないし60度とされるが、60度を超えて偏向させる角度に設定することができる。このように、第1実施例のメタサーフェス板1-1では60度を超える偏向を行うことができる。
【0031】
本発明の第1実施例のメタサーフェス板1-1における平面波の屈折の様子を電界分布で図8に示す。使用周波数fは11.5GHzとされている。図8を参照すると、平面波は第1実施例のメタサーフェス板1-1に0度の角度θ1で入射する。そして、メタサーフェス板1-1から放射される透過波は屈折して放射されており、その角度θ2は約65度となっている。
このように、本発明の第1実施例のメタサーフェス板1-1では、1枚のメタサーフェス板1-1を用いるだけで60度を超える偏向の角度を得ることができるようになり、全体の体積を減少できると共に、製造コストを低廉とすることができる。なお、平面波は第1実施例のメタサーフェス板1-1の下面から入射されても上面から入射されても、同様に偏向された透過波が放射されるようになる。すなわち、第1実施例のメタサーフェス板1-1は可逆性があることから、送信する際に所望の方向に放射できると共に、所望の方向からの受信を行うことができるメタサーフェス板として用いることができる。
【0032】
<第1実施例のメタサーフェス板の変形例>
次に、本発明の第1実施例のメタサーフェス板1-1の変形例とされる第1実施例の変形例のメタサーフェス板1-2の構成を、一部を拡大して示す平面図を図9に示す。
本発明の第1実施例の変形例のメタサーフェス板1-2は透過型のメタサーフェス板とされており、図9に示すように、第1実施例の変形例のメタサーフェス板1-2は、第1実施例のメタサーフェス板1-1とほぼ同様の構成とされている。第1実施例の変形例のメタサーフェス板1-2は、高さ方向の断面が正方形状とされた誘電体基板10-2と、誘電体基板10-2の上面および下面に周期配列して形成された多数の第1実施例のメタツインM1とから構成されている。ただし、多数の第1実施例のメタツインM1の各メタツインM1における長さLinの長さの設定の分布が、第1実施例のメタサーフェス板1-1とは異なっている。第1実施例の変形例のメタサーフェス板1-2は、入射波を放射する波源が局所的な波源とされている場合に、透過波を所定の方向に偏向することができるようにされている。このことを、図10を参照して説明する。図10では第1実施例の変形例のメタサーフェス板1-2と金属製のグランド板Gとが間隔dで離隔されて平行に中心軸をほぼ合わせて配置されている。グランド板Gの上面の中央にはアンテナ基板BP上に形成されたパッチアンテナANが中央に配置されている。すると、パッチアンテナANと第1実施例の変形例のメタサーフェス板1-2の下面との距離は、当該メタサーフェス板1-2の中央において最も短くなり、中央から周辺に向かうに従って長くなることが分かる。そして、パッチアンテナANから放射されて、第1実施例の変形例のメタサーフェス板1-2の下面から入射する入射波の位相は、当該メタサーフェス板1-2とパッチアンテナANとの距離に応じた位相となる。すなわち、当該メタサーフェス板1-2の中央に入射する入射波の位相に対して、当該メタサーフェス板1-2の周辺に入射する入射波の位相は、中央から周辺に向かうに従って遅れていくようになる。このように、第1実施例の変形例のメタサーフェス板1-2の下面に入射する入射波の位相が平面波と異なるように分布されても、当該メタサーフェス板1-2の透過波が所定の方向に偏向されるように、当該メタサーフェス板1-2における第1実施例のメタツインM1の各々における透過位相がパッチアンテナANとの距離に応じた位相に応じて設定されている。ここでは、パッチアンテナANのように局所的な放射源からなる波源を局所的な波源ということにする。なお、誘電体基板10-2のx方向の物理的な縦寸法とy方向の物理的な横寸法とは同じ長さL1aとされ、その一例を挙げると物理的な長さL1aは約110mmとされる。そして、グランド板Gの寸法は誘電体基板10-2の寸法と同様の寸法とされ、使用周波数fの自由空間波長をλとすると、間隔dは、約0.25λ、約0.5λ、約0.75λと、約0.25λの整数倍とすることができる。ただし、間隔dはこれらの間隔に限られることはなく、他の間隔としてもよい。
【0033】
上述した図10は、本発明の第1実施例の変形例のメタサーフェス板1-2における波源が局所的な波源であるパッチアンテナANの場合の屈折の様子を示す図である。重複する説明は省くが図10に示すように、パッチアンテナANからの放射波は第1実施例の変形例のメタサーフェス板1-2の一面から入射する。パッチアンテナANからの放射波は、第1実施例の変形例のメタサーフェス板1-2に形成されている各メタツインM1を透過していくが、透過波は各メタツインM1の作用を受けた透過位相とされる。この場合、第1実施例の変形例のメタサーフェス板1-2の下面に入射する放射波の位相が平面波と異なるように分布されていても、当該メタサーフェス板1-2の透過波が所定の方向に偏向される透過位相分布になるように、各メタツインM1の透過位相が設定されている。これにより、第1実施例の変形例のメタサーフェス板1-2から放射される透過波はx方向に所定の角度だけ屈折されて偏向されるようになる。角度は、誘電体基板10-2の上面および下面に周期配列して形成された多数の第1実施例のメタツインM1における長さLinを所定の長さに設定することにより、所望の角度が得られるようになる。所望の角度は、一般的には30度ないし60度とされるが、60度を超える角度に設定することができる。このように、第1実施例の変形例のメタサーフェス板1-2においても60度を超える偏向を行うことができる。
【0034】
次に、本発明の第1実施例の変形例のメタサーフェス板1-2における波源がパッチアンテナANとされた場合の屈折の様子を電界分布で図11に示す。使用周波数fは11.5GHzとされている。図11を参照すると、パッチアンテナANから放射状に放射される入射波が第1実施例の変形例のメタサーフェス板1-2の一面に入射する。そして、変形例のメタサーフェス板1-2から放射される透過波は屈折して放射されており、偏向された角度θ2は約65度となっている。
このように、本発明の第1実施例の変形例のメタサーフェス板1-2においても、1枚の変形例のメタサーフェス板1-2を用いるだけで60度を超える偏向の角度を得ることができるようになり、全体の体積を減少できると共に、製造コストを低廉とすることができる。なお、放射状の入射波は第1実施例の変形例のメタサーフェス板1-2の下面から入射されても上面から入射されても、同様に偏向された透過波が放射されるようになる。すなわち、第1実施例の変形例のメタサーフェス板1-2も可逆性があることから、送信する際に所望の方向に放射できると共に、所望の方向からの受信を行うことができるメタサーフェス板として用いることができる。
【0035】
次に、本発明の第1実施例の変形例のメタサーフェス板1-2を1枚だけ用いた場合に使用周波数fを11.1GHzとした際の放射パターンを図12に示す。図12に示すように、変形例のメタサーフェス板1-2の透過波は約65度に偏向された角度に集束されたビームとして放射されている。この場合の透過波の振幅は約-2dBのわずかな減衰を受けた振幅となる。また、-10dB以下に減衰された振幅のビームが約30度から-90度の方向に放射されている。
また、本発明の第1実施例の変形例のメタサーフェス板1-2を1枚だけ用いた場合に使用周波数fを11.5GHzとした際の放射パターンを図13に示す。図13に示すように、変形例のメタサーフェス板1-2の透過波は約65度に偏向された角度に集束されたビームとして放射されている。この場合の透過波の振幅はほぼ0dBの減衰を受けない振幅とされる。また、-15dB以下に減衰された振幅のビームが約5度の方向および約-60°の方向に放射されている。
さらに、本発明の第1実施例の変形例のメタサーフェス板1-2を1枚だけ用いた場合に使用周波数fを11.9GHzとした際の放射パターンを図14に示す。図14に示すように、変形例のメタサーフェス板1-2の透過波は約65度に偏向された角度に集束されたビームとして放射されている。この場合の透過波の振幅は約-2dBのわずかな減衰を受けた振幅となる。また、-10dB以下に減衰された振幅のビームが約-10度から-45度の方向に放射されている。
図12ないし図14に示す放射パターンは設計周波数Fを11.5GHzとして、各メタツインM1における長さLinの長さを設定しているため、使用周波数fを11.5GHzとした際の放射パターンが最も良好となる。ただし、使用周波数fを11.1GHz~11.9GHzとしても十分に実用的な放射パターンを得ることができる。
【0036】
次に、本発明の第1実施例の変形例のメタサーフェス板1-2を用いた時と、メタサーフェス板を用いない時を対比して最大放射方向における利得の周波数特性を図15に示す。図15において、横軸は10.5GHz~12.5GHzの周波数を示し、縦軸は最大放射方向における利得(Gain(θ=θmax)[dBi])を示している。図15では第1実施例の変形例のメタサーフェス板1-2を用いた時の最大放射方向における利得をGainAで表し、メタサーフェス板を用いない時の最大放射方向における利得をGainBで表している。図15を参照すると、変形例のメタサーフェス板1-2を用いたGainAでは、10.5GHz~12.5GHzの周波数範囲において、約9dBi以上の最大放射方向における利得が得られ、11.3GHz~11.8GHzの周波数範囲において、約16dBiの最大放射方向における大きな利得が得られている。これに対して、メタサーフェス板を用いない時のGainBでは、10.5GHz~12.5GHzの周波数範囲における最大放射方向における最大の利得でも約6.5dBiの利得しか得られていない。このように、本発明の第1実施例の変形例のメタサーフェス板1-2を用いると、最大放射方向において大きな利得を得ることができる。
【0037】
<第2実施例のメタツインを備える第2実施例の単位素子>
本発明の第2実施例のメタツインM2を備える第2実施例の単位素子2の構成を図16(a)(b)(c)に示す。図16(a)は第2実施例の単位素子2の構成を示す斜視図、図16(b)は第2実施例の単位素子2の構成を示す上面図、図16(c)は第2実施例の単位素子2の構成を示す側面図である。また、本発明の第2実施例のメタツインM2の構成を説明する図を図17に斜視図で示す。
図16(a)(b)(c)に示すように、第2実施例の単位素子2は、誘電体基板20と、誘電体基板20の上面および下面に形成された第2実施例のメタツインM2とから構成されている。第2実施例のメタツインM2は、誘電体基板20の上面に形成された第1導体パターン21および誘電体基板20の下面に形成された第2導体パターン22とから構成されている。第1導体パターン21と第2導体パターン22とは同形状とされると共に、図16(c)に示す誘電体基板20の中心Oに対して点対称の形状とされている。また、第1導体パターン21は線対称の形状の第1導体パターン21aと第1導体パターン21bとの2つの導体パターンから構成され、第2導体パターン22は線対称の形状の第2導体パターン22aと第2導体パターン22bとの2つの導体パターンから構成されている。
【0038】
第2実施例のメタツインM2について図17を参照して説明する。図17には第2実施例のメタツインM2の構成が示されており、第1導体パターン21a,21bからなる導体パターン21が上に配置され、第1導体パターン21と点対称かつ同形状の第2導体パターン22a,22bからなる導体パターン22が下に配置されて両者は所定間隔Wb2だけz方向に離隔されて配置されている。これにより、離隔して配置された第1導体パターン21と第2導体パターン22とで形成される空間の中心に対して第1導体パターン21と第2導体パターン22とが点対称の形状とされたメタツインM2が形成されている。第1導体パターン21と第2導体パターン22とをz方向から透視すると、所定幅の線状の正方形状とされた外側ループと、同心に配置された所定幅の線状の正方形状とされた内側ループとから構成された基本導体パターンとされる二重ループ素子が形成されている。第2実施例のメタツインM2を構成する過程は、前述した第1実施例のメタツインM1を構成する過程と同様とされている。メタツインM2を構成する二重ループ素子においては、外側ループと内側ループとのx方向で対向する2辺における中央部同士を接続する接続片の中央に溝が設けられて切断されている。基本導体パターンとされた二重ループ素子を、y方向の中心線で半截して、線対称かつ同形状の第1導体パターン21と第2導体パターン22とに分離する。これにより、第1導体パターン21は線対称の形状の第1導体パターン21aと第1導体パターン21bとから構成され、第2導体パターン22は線対称の形状の第2導体パターン22aと第2導体パターン22bとから構成される。
【0039】
そして、第1導体パターン21を上に配置すると共に第2導体パターン22を下に配置して両者の面を平行を維持して面に垂直な方向であるz方向に所定間隔Wb2だけ離隔して配置する。これにより、離隔して配置された第1導体パターン21と第2導体パターン22とで形成される空間の中心に対して第1導体パターン21と第2導体パターン22とが点対称の形状とされた第2実施例のメタツインM2が形成される。ここで、第1導体パターン21の半截された先端を-x方向に延伸して第1導体パターン21を形成することができると共に、第2導体パターン22の半截された先端をx方向に同じ長さだけ延伸して第2導体パターン22を形成することができる。このように延伸すると、同形状とされていると共に、z方向から透視して先端同士が重なった第1導体パターン21と第2導体パターン22とからなる第2実施例のメタツインM2が形成される。
上記説明した第2実施例のメタツインM2を誘電体基板20の上面および下面に形成することにより、第2実施例の単位素子2が構成されている。すなわち、厚さがWb2とされた誘電体基板20を用意して、誘電体基板20の中心Oに対して第1導体パターン21aと第1導体パターン21bとからなる第1導体パターン21と、第2導体パターン22aと第2導体パターン22bとからなる第2導体パターン22とが点対称の形状となるように、誘電体基板20の上面に第1導体パターン21を形成し、下面に第2導体パターン22を形成する。これにより、誘電体基板20の上面および下面に第2実施例のメタツインM2が形成された図16(a)(b)(c)に示す第2実施例の単位素子2を得ることができる。
【0040】
図16(a)(b)(c)に戻り誘電体基板20の上面および下面に形成されたメタツインM2を構成する第1導体パターン21と破線で示す第2導体パターン22とは、二重のコ字状とされ誘電体基板20の中心Oに対して点対称の形状とされ、z方向から透視すると基本導体パターンとされる正方形状の二重ループ素子を形成している。第1導体パターン21は、線対称の形状の第1導体パターン21aと第1導体パターン21bとから構成され、第1導体パターン21aおよび第1導体パターン21bは、それぞれx方向の3つのパートとy方向の2つのパートとから構成されている。第1導体パターン21aにおけるx方向の3つのパートは、図16(b)に示すように外側ループを構成するパート21a-x-1と、内側ループを構成するパート21a-x-2と、外側ループと内側ループとを接続するパート21a-x-5で構成され、y方向の2つのパートは、図16(a)に示すようにパート21a-y-1およびパート21a-y-2とで構成される。また、第1導体パターン21bにおけるx方向の3つのパートは、図16(b)に示すように外側ループを構成するパート21b-x-1と、内側ループを構成するパート21b-x-2と、外側ループと内側ループとを接続するパート21b-x-5で構成され、y方向の2つのパートは、図16(a)に示すようにパート21b-y-1およびパート21b-y-2とで構成される。
【0041】
さらに、破線で示す第2導体パターン22は、線対称の形状の第2導体パターン22aと第2導体パターン22bとから構成され、第2導体パターン22aおよび第2導体パターン22bは、それぞれx方向の3つのパートとy方向の2つのパートとから構成されている。第2導体パターン22aにおけるx方向の3つのパートは、図16(b)に示すように外側ループを構成するパート22a-x-1と、内側ループを構成するパート22a-x-2と、外側ループと内側ループとを接続するパート22a-x-5で構成され、y方向の2つのパートは、図16(a)に示すようにパート22a-y-1およびパート22a-y-2とで構成される。さらにまた、第2導体パターン22bにおけるx方向の3つのパートは、図16(b)に示すように外側ループを構成するパート22b-x-1と、内側ループを構成するパート22b-x-2と、外側ループと内側ループとを接続するパート22b-x-5で構成され、y方向の2つのパートは、図16(a)に示すようにパート22b-y-1およびパート22b-y-2とで構成される。
【0042】
第2実施例のメタツインM2の各部の寸法は、第1実施例のメタツインM1と同様とされている。なお、第1導体パターン21および導体パターン22の横幅は長さLs2とされ、第1導体パターン21において、外側ループを構成するパート21a-x-1およびパート21b-x-3の先端から第1導体パターン21の中央までは長さLoutとされ、内側ループを構成するパート21a-x-2およびパート21b-x-4の先端から第1導体パターン21の中央までは長さLinとされている。また、第2導体パターン22において、外側ループを構成するパート22a-x-1およびパート22b-x-3の先端から第2導体パターン22の中央までは長さLoutとされ、内側ループを構成するパート22a-x-2およびパート22b-x-4の先端から第2導体パターン22の中央までは長さLinとされている。
また、第2実施例の単位素子2を構成する誘電体基板20の厚さは図16(c)に示すように厚さWb2で比誘電率εsとされ、第1導体パターン21と第2導体パターン22とは厚さWb2で離隔されていると共に、誘電体基板20の中心点Oに対して点対称に配置されて、z方向から透視すると正方形状の二重ループ素子が形成されている。
【0043】
ここで、第2実施例の単位素子2における各部の寸法の一例を使用周波数を11.5GHzの自由空間波長をλ(≒26.087mm)とした電気長で表すと、第1導体パターン21および第2導体パターン22において、長さLs2の電気長は約0.307λ、長さLoutの電気長は約0.360λとされ、間隔gの電気長は約0.015λ、幅Wの電気長は約0.015λとされる。なお、長さLinは後述する設定された長さとされる。また、誘電体基板20の厚さWb2の電気長は約0.123λとされる。なお、誘電体基板20は、例えばテフロン(登録商標)製とされ、比誘電率εsは約2.6とされている。比誘電率εsに応じて波長が短縮され、比誘電率εsが2.6の場合は、約0.62の波長短縮率となる。
【0044】
第1導体パターン21および第2導体パターン22は、誘電体基板20の面上に金属インクを塗布したり、金属を蒸着して所定の厚さになるよう成膜し、所望の形状になるようエッチング加工することにより形成されている。ただし、第1導体パターン21および第2導体パターン22の形成方法は、上記形成方法に限定されるものではなく、他の形成方法を採用してもよい。第1導体パターン21および第2導体パターン22を形成する金属材料としては、金、銀、銅、アルミニウム等の良好な導電率を示す金属が用いられる。また、誘電体基板20は、マイクロ波帯での吸収がない素材を用いるのが好適であり、その素材としては、例えばテフロン(登録商標)が用いられる。ただし、テフロン(登録商標)に限るものではなく、マイクロ波帯での吸収がない他の素材を用いてもよい。
【0045】
上記説明した第2実施例のメタツインM2においては、例えば長さLoutの長さを固定にして長さLinを所定の長さに設定できるようにしている。長さLinを所定の長さに設定した第2実施例のメタツインM2においても、長さLinの設定された長さが長い場合の透過位相が、長さLinの設定された長さが短い場合の透過位相より遅れることが分かった。
ここで、本発明の第2実施例のメタツインM2において、各部の寸法を上記一例で上げた寸法として使用周波数fを11.5GHzとした際の設定された長さLinに対する透過波の振幅特性を図18に示す。図18においては、長さLinに設定される長さとして0.0mmから9.6mmが横軸に示され、縦軸にはSパラメータのS21の絶対値[dB]で表された透過波の振幅が示されている。図18を参照すると、長さLinが約0.4mmに設定された時の透過波の振幅は約-0.9dBとなり、長さLinが約1.7mmまで長く設定されるに従い透過波の振幅は上昇していき、長さLinが約1.7mmに設定された時の振幅はほぼ-0.1dBとなる。長さLinが1.7mmを超えて設定されると、透過波の振幅は下降していき、長さLinが約2.4mmに設定された時の振幅は約-2.1dBとなり、長さLinが約2.4mmを超えるに従い透過波の振幅は上昇していき長さLinが約3.0mmに設定された時の振幅はほぼ-0.1dBとなる。長さLinが約3.0mmを超えて設定されていくと徐々に透過波の振幅が下降していくが、長さLinが約5.1mmに設定された時の振幅が約-1.2dBの谷となり、その後は設定された長さが長くなるに従い徐々に透過波の振幅は上昇していく。透過波の振幅は長さLinが約8.3mmに設定された時にほぼ0.0dBとなり、長さLinの設定された長さが約9.0mmになるに従い振幅が下降して長さLinが約9.0mmに設定された時の振幅は約-2.8dBとなる。このように、第2実施例のメタツインM2では、長さLinが0.4mmから9.0mmまでの長さに設定されても入射された電力をほとんど透過させることができるようになる。
【0046】
次に、本発明の第2実施例のメタツインM2において、各部の寸法を上記一例で上げた寸法として使用周波数fを11.5GHzとした際の設定された長さLinに対する透過位相特性を図19に示す。図19においては、長さLinに設定される長さとして0.0mmから9.6mmが横軸に示され、縦軸にはSパラメータのS21の位相[deg(=度)]で表された透過位相が示されている。図19を参照すると、長さLinが約0.4mmに設定された時の透過位相は約-50度であり、長さLinに設定された長さが約1.6mmまで長くなるに従い透過位相は遅れていき、長さLinが約1.6mmに設定された時の透過位相はほぼ-90度となる。長さLinに設定された長さが1.6mmを超えていくに従い、透過位相は急激に遅れるようになって、長さLinが約3mmに設定された時に約-310度の透過位相となる。長さLinに設定された長さが3mmを超えていくと透過位相は徐々にさらに遅れて行くようになり、長さLinが約8mmに設定された時に約-405度の透過位相となる。長さLinに設定された長さが8mmを超えて約9.0mmまで長くなるに従い透過位相はさらに遅れていき、長さLinが約9.0mmに設定された時に-465度の透過位相となる。このように、第2実施例のメタツインM2では、長さLinに設定された長さが約0.4mmで約-50度、約9.0mmで約-465度の透過位相となるから、長さLinに設定された長さを約0.4mmから約9.0mmまで長くしていくと360度を超える約415度(=-50度-(-465度)=415度)の透過位相の位相変化量を得ることができる。そして、この場合において上記したように入射された電力をほとんど透過させることができるようになる。
【0047】
<第2実施例のメタサーフェス板>
本発明の第2実施例のメタツインM2を、第1実施例のメタツインM1と同様にメタサーフェス板に適用することができる。第2実施例のメタツインM2を適用したメタサーフェス板を第2実施例のメタサーフェス板という。本発明の第2実施例のメタサーフェス板は透過型のメタサーフェス板とされている。本発明の第2実施例のメタツインM2を、高さ方向の断面が正方形状とされた誘電体基板10と同様の誘電体基板の上面および下面に周期配列して形成すると、図示しない第2実施例のメタサーフェス板を構成することができる。このように構成された第2実施例のメタサーフェス板は、第1実施例のメタサーフェス板1-1における第1実施例のメタツインM1を第2実施例のメタツインM2に置き換えた構成とされる。すなわち、第2実施例のメタサーフェス板は、誘電体基板と、誘電体基板の上面および下面に周期配列して形成された多数の第2実施例のメタツインM2とから構成されている。この場合、第2実施例のメタツインM2は、第1実施例のメタサーフェス板1-1と同様に誘電体基板のx方向とy方向に同数ずつ配列されて誘電体基板に形成されている。なお、第2実施例のメタサーフェス板は、図16(a)(b)(c)に示す第2実施例の単位素子2をx方向およびy方向に周期的に配列した構成となり、単位素子2は第2実施例のメタサーフェス板を構成する構成単位とされている。
また、第2実施例のメタサーフェス板における誘電体基板は正方形状とされ、一辺の長さの一例を挙げると約110mmの物理的な寸法とされる。
【0048】
第2実施例のメタサーフェス板においては、多数の第2実施例のメタツインM2の各メタツインM2における長さLinの長さが所定の長さに設定されている。長さLinの長さが、平面波の入射波に対応するよう所定の長さに設定されている場合は、透過位相は徐々に遅れていく透過位相分布とされて、図7および図8に示されている第1実施例のメタサーフェス板1-1における平面波の屈折の様子と同様に、透過波を所定の方向に、例えば65度偏向することができるようになる。また、長さLinの長さが、局所的な波源からの入射波に対応するよう所定の長さに設定されている場合は、透過波が所定の方向に偏向される透過位相分布とされて、図10および図11に示されている第1実施例のメタサーフェス板1-1における局所的な波源の場合の屈折の様子と同様に、透過波を所定の方向に、例えば65度偏向することができるようになる。この際に第2実施例のメタサーフェス板を1枚だけ用いた場合の放射パターンは、図12図13および図14に示す第1実施例の変形例のメタサーフェス板1-2における放射パターンとほぼ同様となる。このように、第2実施例のメタサーフェス板では、1枚の第2実施例のメタサーフェス板を用いるだけで30度ないし60度を超える所望の偏向の角度を得ることができるようになり、全体の体積を減少できると共に、製造コストを低廉とすることができる。
また、本発明の第2実施例のメタサーフェス板2を用いた時と、メタサーフェス板を用いない時を対比して最大放射方向における利得の周波数特性は、図15に示す第1実施例の変形例のメタサーフェス板1-2における最大放射方向における利得の周波数特性とほぼ同様となり、本発明の第2実施例のメタサーフェス板を用いると、最大放射方向において大きな利得を得ることができる。
【0049】
<第3実施例のメタツインを備える第3実施例の単位素子>
本発明の第3実施例のメタツインM3を備える第3実施例の単位素子3の構成を図20(a)(b)(c)に示す。図20(a)は第3実施例の単位素子3の構成を示す斜視図、図20(b)は第3実施例の単位素子3の構成を示す上面図、図20(c)は第3実施例の単位素子3の構成を示す側面図である。また、本発明の第3実施例のメタツインM3の構成を説明する図を図21に斜視図で示す。
図20(a)(b)(c)に示すように、第3実施例の単位素子3は、誘電体基板30と、誘電体基板30の上面および下面に形成された第3実施例のメタツインM3とから構成されている。第3実施例のメタツインM3は、誘電体基板30の上面に形成された第1導体パターン31および誘電体基板30の下面に形成された第2導体パターン32とから構成されている。第1導体パターン31と第2導体パターン32とは同形状とされると共に、図20(c)に示す誘電体基板30の中心Oに対して点対称の形状とされている。
【0050】
第3実施例のメタツインM3について図21を参照して説明する。図21には第3実施例のメタツインM3の構成が示されており、第1導体パターン31が上に配置され、第1導体パターン31と点対称かつ同形状の第2導体パターン32が下に配置されて両者は所定間隔Wb3だけz方向に離隔されて配置されている。これにより、離隔して配置された第1導体パターン31と第2導体パターン32とで形成される空間の中心に対して第1導体パターン31と第2導体パターン32とが点対称の形状とされたメタツインM3が形成されている。第1導体パターン31と第2導体パターン32とは所定幅の線状のT字状の形状とされている。
上記した第3実施例のメタツインM3を誘電体基板30の上面および下面に形成することにより、第3実施例の単位素子3が構成されている。すなわち、厚さがWb3とされた誘電体基板30を用意して、誘電体基板30の中心に対して第1導体パターン31と、第2導体パターン32とが点対称の形状となるように、誘電体基板30の上面に第1導体パターン31を形成し、下面に第2導体パターン32を形成する。これにより、誘電体基板30の上面および下面に第3実施例のメタツインM3が形成された図20(a)(b)(c)に示す第3実施例の単位素子3を得ることができる。
【0051】
図20(a)(b)(c)に戻り誘電体基板30の上面および下面に形成されたメタツインM3を構成する第1導体パターン31と破線で示す第2導体パターン32とは、T字状とされ誘電体基板30の中心Oに対して点対称の形状とされている。第1導体パターン31は、x方向の3つのパートとy方向の1つのパートとから構成されている。第1導体パターン31におけるx方向の3つのパートは、図20(b)に示すように両外側に位置するパート31-x-1およびパート31-x-3と、中央に位置するパート31-x-2とで構成され、y方向の1つのパートは、図20(a)に示すようにパート31-y-1で構成される。また、破線で示す第2導体パターン32は、x方向の3つのパートとy方向の1つのパートとから構成されている。第2導体パターン32におけるx方向の3つのパートは、図20(b)に示すように両外側に位置するパート32-x-1およびパート32-x-3と、中央に位置するパート32-x-2とで構成され、y方向の1つのパートは、図20(a)に示すようにパート32-y-1で構成される。
【0052】
なお、第3実施例の単位素子3において、z方向から誘電体基板30を透視すると第1導体パターン31のパート31-x-2と第2導体パターン32のパート32-x-2との先端同士が重なっている。また、z方向から誘電体基板30を透視すると第1導体パターン31のパート31-x-1およびパート31-x-3とパート31-y-1、第2導体パターン32のパート32-x-1およびパート32-x-3とパート32-y-1とが、所定幅の線状の正方形状とされたループ素子上に位置するようになる。すなわち、第1導体パターン31と第2導体パターン32とにおけるy方向の長さLs3と、第1導体パターン31のパート31-y-1の外縁から第2導体パターン32のパート32-y-1外縁までの長さは長さLs3と等しくなる。
ここで、補足説明すると、上述したようにz方向から透視した際に誘電体基板30に形成されている透視した導体パターンが基本導体パターンとされて、基本導体パターンを、y方向の中心線で半截して、線対称かつ同形状の第1導体パターン31と第2導体パターン32とに分離する。第1導体パターン31を上に配置すると共に第2導体パターン32を下に配置して両者の面を平行を維持して面に垂直な方向であるz方向に所定間隔Wb3だけ離隔して配置する。これにより、第3実施例のメタツインM3が構成されるということができる。なお、メタツインM3においては、第1導体パターン31のパート31-x-2の先端と第2導体パターン32のパート32-x-2の先端とがx方向に延伸されている。
【0053】
第3実施例のメタツインM3の各部の寸法が図20(b)に示されている。第1導体パターン31の横幅は長さLs3とされ、パート31-x-1およびパート31-x-3の先端からパート31-y-1の中央までは長さLinとされ、パート31-x-2の先端からパート31-y-1の中央までは長さLoutとされ、第1導体パターン31における各パートは幅Wの線状の導体パターンとされている。第2導体パターン32の各部の寸法は、第1導体パターン31と第2導体パターン32とが同形状であることから、同じ寸法とされている。すなわち、パート32-x-1およびパート32-x-3の先端からパート32-y-1の中央までは長さLinとされ、パート32-x-2の先端からパート32-y-1の中央までは長さLoutとされ、第2導体パターン32における各パートは幅Wの線状の導体パターンとされている。
また、第3実施例の単位素子3を構成する誘電体基板30の厚さは図20(c)に示すように厚さWb3で比誘電率εsとされ、第1導体パターン31と第2導体パターン32とは厚さWb3で離隔されていると共に、誘電体基板30の中心点Oに対して点対称に配置されている。
【0054】
ここで、第3実施例の単位素子3における各部の寸法の一例を使用周波数を11.5GHzの自由空間波長をλ(≒26.087mm)とした電気長で表すと、第1導体パターン31および第2導体パターン32において、長さLs3の電気長は約0.307λ、長さLoutの電気長は約0.215λとされ、幅Wの電気長は約0.015λとされる。なお、長さLinは設定された長さとされる。また、誘電体基板30の厚さWb3の電気長は約0.123λとされる。なお、誘電体基板30は、例えばテフロン(登録商標)製とされ、比誘電率εsは約2.6とされ、比誘電率εsが2.6の場合は、約0.62の波長短縮率となる。
【0055】
第1導体パターン31および第2導体パターン32は、誘電体基板30の面上に金属インクを塗布したり、金属を蒸着して所定の厚さになるよう成膜し、所望の形状になるようエッチング加工することにより形成されている。ただし、第1導体パターン31および第2導体パターン32の形成方法は、上記形成方法に限定されるものではなく、他の形成方法を採用してもよい。第1導体パターン31および第2導体パターン32を形成する金属材料としては、金、銀、銅、アルミニウム等の良好な導電率を示す金属が用いられる。また、誘電体基板30は、マイクロ波帯での吸収がない素材を用いるのが好適であり、その素材としては、例えばテフロン(登録商標)が用いられる。ただし、テフロン(登録商標)に限るものではなく、マイクロ波帯での吸収がない他の素材を用いてもよい。
【0056】
上記説明した第3実施例のメタツインM3においては、例えば長さLoutの長さを固定にして長さLinを所定の長さに設定できるようにしている。長さLinを所定の長さに設定した第3実施例のメタツインM3においては、長さLinの設定された長さが長い場合の透過位相が、長さLinの設定された長さが短い場合の透過位相より遅れることが分かった。
ここで、本発明の第3実施例のメタツインM3において、各部の寸法を上記一例で上げた寸法として使用周波数fを11.5GHzとした際の設定された長さLinに対する透過波の振幅特性を図22に示す。図22においては、長さLinに設定される長さとして0mmから12mmが横軸に示され、縦軸にはSパラメータのS21の絶対値[dB]で表された透過波の振幅が示されている。図22を参照すると、長さLinが約0.4mmに設定された時の透過波の振幅は約-1.1dBとなり、長さLinが約2.3mmまで長く設定されるに従い透過波の振幅は下降していき、長さLinが約2.3mmに設定された時の振幅は約-1.5dBとなる。長さLinが約2.3mmを超えて設定されると、透過波の振幅は上昇していき、長さLinが約4.2mmに設定された時の振幅は約-0.2dBとなり、長さLinが約4.2mmを超えるに従い透過波の振幅は下降していき長さLinが約5.0mmに設定された時の振幅はほぼ-1.0dBとなる。長さLinが約5.0mmを超えて設定されていくと透過波の振幅は上昇していき、長さLinが約5.6mmに設定された時の振幅は約-0.1dBとなる。さらに、長さLinが約7.6mmまで長く設定されるに従い透過波の振幅は下降していき、長さLinが約7.6mmに設定された時の振幅は約-1.4dBとなり、長さLinが約7.6mmを超えるに従い透過波の振幅は上昇していき長さLinが約10.8mmに設定された時の振幅はほぼ-0.0dBとなる。その後は設定された長さLinが長くなるに従い透過波の振幅は下降していき、長さLinが約11.6mmに設定された時に透過波の振幅は約-1.9dBとなる。このように、第3実施例のメタツインM3では、長さLinが約0.4mmから約11.6mmまでの長さに設定されても入射された電力をほとんど透過させることができるようになる。
【0057】
次に、本発明の第3実施例のメタツインM3において、各部の寸法を上記一例で上げた寸法として使用周波数fを11.5GHzとした際の設定された長さLinに対する透過位相特性を図23に示す。図23においては、長さLinに設定される長さとして0mmから12mmが横軸に示され、縦軸にはSパラメータのS21の位相[deg(=度)]で表された透過位相が示されている。図23を参照すると、長さLinが約0.4mmに設定された時の透過位相は約0度となり、長さLinに設定された長さが約3.5mmまで長くなるに従い透過位相は遅れていき、長さLinが約3.5mmに設定された時の透過位相は約-60度となる。長さLinに設定された長さが3.5mmを超えていくに従い、透過位相は急激に遅れるようになって、長さLinが約5.8mmに設定された時に約-300度の透過位相となる。長さLinに設定された長さが約5.8mmを超えていくと透過位相は徐々にさらに遅れて行くようになり、長さLinが約9.5mmに設定された時に約-390度の透過位相となる。長さLinに設定された長さが9.5mmを超えて約11.6mmまで長くなるに従い透過位相はさらに遅れていき、長さLinが約11.6mmに設定された時に-460度の透過位相となる。このように、第3実施例のメタツインM3では、長さLinに設定された長さが約0.4mmで約0度、約11.6mmで約-460度の透過位相となるから、長さLinに設定された長さを約0.4mmから約11.6mmまで長くしていくと360度を超える約460度(=0度-(-460度)=460度)の透過位相の位相変化量を得ることができる。そして、この場合において上記したように入射された電力をほとんど透過させることができるようになる。
【0058】
<第3実施例のメタサーフェス板>
本発明の第3実施例のメタツインM3を、第1実施例のメタツインM1と同様にメタサーフェス板に適用することができる。第3実施例のメタツインM3を適用したメタサーフェス板を第3実施例のメタサーフェス板という。本発明の第3実施例のメタサーフェス板は透過型のメタサーフェス板とされている。本発明の第3実施例のメタツインM3を、高さ方向の断面が正方形状とされた誘電体基板10と同様の誘電体基板の上面および下面に周期配列して形成すると、図示しない第3実施例のメタサーフェス板を構成することができる。このように構成された第3実施例のメタサーフェス板は、第1実施例のメタサーフェス板1-1における第1実施例のメタツインM1を第3実施例のメタツインM3に置き換えた構成とされる。すなわち、第3実施例のメタサーフェス板は、誘電体基板と、誘電体基板の上面および下面に周期配列して形成された多数の第3実施例のメタツインM3とから構成されている。この場合、第3実施例のメタツインM3は、第1実施例のメタサーフェス板1-1と同様に誘電体基板のx方向とy方向に同数ずつ配列されて誘電体基板に形成されている。なお、第3実施例のメタサーフェス板は、図20(a)(b)(c)に示す第3実施例の単位素子3をx方向およびy方向に周期的に配列した構成となり、単位素子3は第3実施例のメタサーフェス板を構成する構成単位とされている。
また、第3実施例のメタサーフェス板における誘電体基板は正方形状とされ、一辺の長さの一例を挙げると約110mmの物理的な寸法とされる。
【0059】
第3実施例のメタサーフェス板においては、多数の第3実施例のメタツインM3の各メタツインM3における長さLinの長さが所定の長さに設定されている。長さLinの長さが、平面波の入射波に対応するよう所定の長さに設定されている場合は、透過位相は徐々に遅れていく透過位相分布とされて、図7および図8に示されている第1実施例のメタサーフェス板1-1における平面波の屈折の様子と同様に、透過波を所定の方向に、例えば65度偏向することができるようになる。また、長さLinの長さが、局所的な波源からの入射波に対応するよう所定の長さに設定されている場合は、透過波が所定の方向に偏向される透過位相分布とされて、図10および図11に示されている第1実施例のメタサーフェス板1-1における局所的な波源の場合の屈折の様子と同様に、透過波を所定の方向に、例えば65度偏向することができるようになる。この際に第3実施例のメタサーフェス板を1枚だけ用いた場合の放射パターンは、図12図13および図14に示す第1実施例の変形例のメタサーフェス板1-2における放射パターンとほぼ同様となる。このように、第3実施例のメタサーフェス板では、1枚の第3実施例のメタサーフェス板を用いるだけで0度ないし60度を超える所望の偏向の角度を得ることができるようになり、全体の体積を減少できると共に、製造コストを低廉とすることができる。
また、本発明の第3実施例のメタサーフェス板を用いた時と、メタサーフェス板を用いない時を対比して最大放射方向における利得の周波数特性は、図15に示す第1実施例の変形例のメタサーフェス板1-2における最大放射方向における利得の周波数特性とほぼ同様となり、本発明の第3実施例のメタサーフェス板を用いると、最大放射方向において大きな利得を得ることができる。
【0060】
<第4実施例のメタツインを備える第4実施例の単位素子>
本発明の第4実施例のメタツインM4を備える第4実施例の単位素子4の構成を図24(a)(b)(c)に示す。図24(a)は第4実施例の単位素子4の構成を示す斜視図、図24(b)は第4実施例の単位素子4の構成を示す上面図、図24(c)は第4実施例の単位素子4の構成を示す側面図である。また、本発明の第4実施例のメタツインM4の構成を説明する図を図25に斜視図で示す。
図24(a)(b)(c)に示すように、第4実施例の単位素子4は、誘電体基板40と、誘電体基板40の上面および下面に形成された第4実施例のメタツインM4とから構成されている。第4実施例のメタツインM4は、誘電体基板40の上面に形成された第1導体パターン41および誘電体基板40の下面に形成された第2導体パターン42とから構成されている。第1導体パターン41と第2導体パターン42とは同形状とされると共に、図24(c)に示す誘電体基板40の中心Oに対して点対称の形状とされている。
【0061】
第4実施例のメタツインM4について図25を参照して説明する。図25には第4実施例のメタツインM4の構成が示されており、第1導体パターン41が上に配置され、第1導体パターン41と点対称かつ同形状の第2導体パターン42が下に配置されて両者は所定間隔Wb4だけz方向に離隔されて配置されている。これにより、離隔して配置された第1導体パターン41と第2導体パターン42とで形成される空間の中心に対して第1導体パターン41と第2導体パターン42とが点対称の形状とされたメタツインM4が形成されている。
【0062】
第4実施例のメタツインM4をz方向から透視すると、第1導体パターン41と第2導体パターン42とにより、図24(b)に示すように所定幅の線状の正方形状とされた外側ループと所定幅の線状の約45度回転された正方形状とされた内側ループとが同心とされて構成された二重ループ素子が形成されている。この二重ループ素子が基本導体パターンとされる。メタツインM4の基本導体パターンを構成する二重ループ素子においては、内側ループのx方向の対角と外側ループの中央部とがそれぞれ接続片で接続されている。基本導体パターンとされる二重ループ素子を、y方向の中心線で半截して、線対称かつ同形状の第1導体パターン41と第2導体パターン42とに分離して、第1導体パターン41を上に配置すると共に第2導体パターン42を下に配置して両者の面を平行を維持して面に垂直な方向であるz方向に所定間隔Wb4だけ離隔して配置する。これにより、第4実施例のメタツインM4が構成される。
上記のように構成された第4実施例のメタツインM4を誘電体基板40の上面および下面に形成することにより、第4実施例の単位素子4が構成されている。すなわち、厚さがWb4とされた誘電体基板40を用意して、誘電体基板40の中心に対して第1導体パターン41と、第2導体パターン42とが点対称の形状となるように、誘電体基板40の上面に第1導体パターン41を形成し、下面に第2導体パターン42を形成する。これにより、誘電体基板40の上面および下面に第4実施例のメタツインM4が形成された図24(a)(b)(c)に示す第4実施例の単位素子4を得ることができる。
【0063】
図24(a)(b)(c)に戻り誘電体基板40の上面および下面に形成されたメタツインM4を構成する第1導体パターン41と破線で示す第2導体パターン42とは、コ字状の導体パターンの内側にY字状の導体パターンが配置された同形状とされ誘電体基板40の中心Oに対して点対称に配置されている。第1導体パターン41は、x方向の3つのパートとy方向および傾斜したy方向の3つのパートとから構成されている。第1導体パターン41におけるx方向の3つのパートは、図24(b)に示すように両外側に位置するパート41-x-1およびパート41-x-3と、中央に位置してY字状の導体パターンと接続するパート41-x-2とで構成され、y方向および傾斜したy方向の3つのパートは、図24(a)に示すようにパート41-y-1とY字状導体パターンを形成するパート41-y-2およびパート41-y-3とで構成される。また、破線で示す第2導体パターン42は、x方向の3つのパートとy方向および傾斜したy方向の3つのパートとから構成されている。第2導体パターン42におけるx方向の3つのパートは、図24(b)に示すように両外側に位置するパート42-x-1およびパート42-x-3と、中央に位置してY字状の導体パターンと接続するパート42-x-2とで構成され、y方向および傾斜したy方向の3つのパートは、図24(a)に示すようにパート42-y-1とY字状導体パターンを形成するパート42-y-2およびパート42-y-3とで構成される。
【0064】
なお、第4実施例の単位素子4において、z方向から誘電体基板40を透視すると図24(b)に示すように第1導体パターン41のパート41-x-1およびパート41-x-3と第2導体パターン42のパート42-x-1およびパート42-x-3との先端同士と、第1導体パターン41のパート41-y-2およびパート41-y-3と第2導体パターン42のパート42-y-2およびパート42-y-3との先端同士が重なっている。また、z方向から誘電体基板40を透視すると図24(b)に示すように第1導体パターン41のパート41-x-1およびパート41-x-3とパート41-y-1と、第2導体パターン42のパート42-x-1およびパート42-x-3とパート42-y-1とで、所定幅の線状の正方形状とされた外側ループを形成するようになる。これにより、第1導体パターン41と第2導体パターン42とにおけるy方向の長さLs4と、第1導体パターン41のパート41-y-1の外縁から第2導体パターン42のパート42-y-1外縁までの長さは長さLs4と等しくなる。さらに、z方向から誘電体基板40を透視すると図24(b)に示すように第1導体パターン41のパート41-y-2およびパート41-y-3と、第2導体パターン42のパート42-y-2およびパート42-y-3とパート42-y-1とで、所定幅の線状の約45度回転された正方形状とされた内側ループを形成するようになる。
【0065】
第4実施例のメタツインM4の各部の寸法が図24(b)に示されている。第1導体パターン41の横幅は長さLs4とされ、パート41-x-1およびパート41-x-3の先端からパート41-y-1の中央までは長さLoutとされ、パート41-y-2およびパート41-y-3の先端からパート41-y-1の中央までは長さLinとされ、第1導体パターン41における各パートは幅Wの線状の導体パターンとされている。第2導体パターン42の各部の寸法は、第1導体パターン41と第2導体パターン42とが同形状であることから、同じ寸法とされている。すなわち、パート42-x-1およびパート42-x-3の先端からパート42-y-1の中央までは長さLoutとされ、パート42-y-2およびパート42-y-3の先端からパート42-y-1の中央までは長さLinとされ、第2導体パターン42における各パートは幅Wの線状の導体パターンとされている。
また、第4実施例の単位素子4を構成する誘電体基板40の厚さは図24(c)に示すように厚さWb4で比誘電率εsとされ、第1導体パターン41と第2導体パターン42とは厚さWb4で離隔されていると共に、誘電体基板40の中心点Oに対して点対称に配置されている。
【0066】
ここで、第4実施例の単位素子4における各部の寸法の一例を使用周波数を11.5GHzの自由空間波長をλ(≒26.087mm)とした電気長で表すと、第1導体パターン41および第2導体パターン42において、長さLs4の電気長は約0.307λ、長さLoutの電気長は約0.360λとされ、幅Wの電気長は約0.015λとされる。なお、長さLinは設定された長さとされる。また、誘電体基板40の厚さWb4の電気長は約0.123λとされる。なお、誘電体基板40は、例えばテフロン(登録商標)製とされ、比誘電率εsは約2.6とされ、比誘電率εsが2.6の場合は、約0.62の波長短縮率となる。
【0067】
第1導体パターン41および第2導体パターン42は、誘電体基板40の面上に金属インクを塗布したり、金属を蒸着して所定の厚さになるよう成膜し、所望の形状になるようエッチング加工することにより形成されている。ただし、第1導体パターン41および第2導体パターン42の形成方法は、上記形成方法に限定されるものではなく、他の形成方法を採用してもよい。第1導体パターン41および第2導体パターン42を形成する金属材料としては、金、銀、銅、アルミニウム等の良好な導電率を示す金属が用いられる。また、誘電体基板40は、マイクロ波帯での吸収がない素材を用いるのが好適であり、その素材としては、例えばテフロン(登録商標)が用いられる。ただし、テフロン(登録商標)に限るものではなく、マイクロ波帯での吸収がない他の素材を用いてもよい。
【0068】
上記説明した第4実施例のメタツインM4においては、例えば長さLoutの長さを固定にして長さLinを所定の長さに設定できるようにしている。長さLinを所定の長さに設定した第4実施例のメタツインM4においては、長さLinの設定された長さが長い場合の透過位相が、長さLinの設定された長さが短い場合の透過位相より遅れることが分かった。
ここで、本発明の第4実施例のメタツインM4において、各部の寸法を上記一例で上げた寸法として使用周波数fを11.5GHzとした際の設定された長さLinに対する透過波の振幅特性を図26に示す。図26においては、長さLinに設定される長さとして0mmから9mmが横軸に示され、縦軸にはSパラメータのS21の絶対値[dB]で表された透過波の振幅が示されている。図26を参照すると、長さLinが約0.0mmに設定された時の透過波の振幅は約-1.1dBとなり、長さLinが約1.3mmまで長く設定されるに従い透過波の振幅は上昇していき、長さLinが約1.3mmに設定された時の振幅は約-0.1dBとなる。長さLinが約1.3mmを超えて設定されると、透過波の振幅は下降していき、長さLinが約1.6mmに設定された時の振幅は約-0.7dBとなり、長さLinが約1.6mmを超えるに従い透過波の振幅は上昇していき長さLinが約1.9mmに設定された時の振幅は約-0.1dBとなる。長さLinが約1.9mmを超えて設定されていくと透過波の振幅は下降していき、長さLinが約3.0mmないし約4.4mmまでに設定された時の振幅は約-1.3dBとなる。さらに、長さLinが約7.9mmまで長く設定されるに従い透過波の振幅は上昇していき、長さLinが約7.9mmに設定された時の振幅はほぼ0.0dBとなり、長さLinが約7.9mmを超えるに従い透過波の振幅は下降していき長さLinが約8.5mmに設定された時の振幅は約-1.0dBとなる。このように、第4実施例のメタツインM4では、長さLinが約0.0mmから約8.5mmまでの長さに設定されても入射された電力をほとんど透過させることができるようになる。
【0069】
次に、本発明の第4実施例のメタツインM4において、各部の寸法を上記一例で上げた寸法として使用周波数fを11.5GHzとした際の設定された長さLinに対する透過位相特性を図27に示す。図27においては、長さLinに設定される長さとして0mmから9mmが横軸に示され、縦軸にはSパラメータのS21の位相[deg(=度)]で表された透過位相が示されている。図27を参照すると、長さLinが約0.0mmに設定された時の透過位相は約175度となり、長さLinに設定された長さが約1.0mmまで長くなるに従い透過位相は遅れていき、長さLinが約1.0mmに設定された時の透過位相は約150度となる。長さLinに設定された長さが1.0mmを超えていくに従い、透過位相は急激に遅れるようになって、長さLinが約2.2mmに設定された時に約-105度の透過位相となる。長さLinに設定された長さが約2.2mmを超えていくと透過位相は徐々にさらに遅れて行くようになり、長さLinが約6.5mmに設定された時に約-170度の透過位相となる。長さLinに設定された長さが6.5mmを超えて約8.5mmまで長くなるに従い透過位相はさらに遅れていき、長さLinが約8.5mmに設定された時に-225度の透過位相となる。このように、第4実施例のメタツインM4では、長さLinに設定された長さが約0.0mmで約175度、約8.5mmで約-225度の透過位相となるから、長さLinに設定された長さを約0.0mmから約8.5mmまで長くしていくと360度を超える約400度(=175度-(-225度)=400度)の透過位相の位相変化量を得ることができる。そして、この場合において上記したように入射された電力をほとんど透過させることができるようになる。
【0070】
<第4実施例のメタサーフェス板>
本発明の第4実施例のメタツインM4を、第1実施例のメタツインM1と同様にメタサーフェス板に適用することができる。第4実施例のメタツインM4を適用したメタサーフェス板を第4実施例のメタサーフェス板という。本発明の第4実施例のメタサーフェス板は透過型のメタサーフェス板とされている。本発明の第4実施例のメタツインM4を、高さ方向の断面が正方形状とされた誘電体基板10と同様の誘電体基板の上面および下面に周期配列して形成すると、図示しない第4実施例のメタサーフェス板を構成することができる。このように構成された第4実施例のメタサーフェス板は、第1実施例のメタサーフェス板1-1における第1実施例のメタツインM1を第4実施例のメタツインM4に置き換えた構成とされる。すなわち、第4実施例のメタサーフェス板は、誘電体基板と、誘電体基板の上面および下面に周期配列して形成された多数の第4実施例のメタツインM4とから構成されている。この場合、第4実施例のメタツインM4は、第1実施例のメタサーフェス板1-1と同様に誘電体基板のx方向とy方向に同数ずつ配列されて誘電体基板に形成されている。なお、第4実施例のメタサーフェス板は、図24(a)(b)(c)に示す第4実施例の単位素子4をx方向およびy方向に周期的に配列した構成となり、単位素子4は第4実施例のメタサーフェス板を構成する構成単位とされている。
また、第4実施例のメタサーフェス板における誘電体基板は正方形状とされ、一辺の長さの一例を挙げると約110mmの物理的な寸法とされる。
【0071】
第4実施例のメタサーフェス板においては、多数の第4実施例のメタツインM4の各メタツインM4における長さLinの長さが所定の長さに設定されている。長さLinの長さが、平面波の入射波に対応するよう所定の長さに設定されている場合は、透過位相は徐々に遅れていく透過位相分布とされて、図7および図8に示されている第1実施例のメタサーフェス板1-1における平面波の屈折の様子と同様に、透過波を所定の方向に、例えば65度偏向することができるようになる。また、長さLinの長さが、局所的な波源からの入射波に対応するよう所定の長さに設定されている場合は、透過波が所定の方向に偏向される透過位相分布とされて、図10および図11に示されている第1実施例のメタサーフェス板1-1における局所的な波源の場合の屈折の様子と同様に、透過波を所定の方向に、例えば65度偏向することができるようになる。この際に第4実施例のメタサーフェス板を1枚だけ用いた場合の放射パターンは、図12図13および図14に示す第1実施例の変形例のメタサーフェス板1-2における放射パターンとほぼ同様となる。このように、第4実施例のメタサーフェス板では、1枚の第4実施例のメタサーフェス板を用いるだけで0度ないし60度を超える所望の偏向の角度を得ることができるようになり、全体の体積を減少できると共に、製造コストを低廉とすることができる。
また、本発明の第4実施例のメタサーフェス板を用いた時と、メタサーフェス板を用いない時を対比して最大放射方向における利得の周波数特性は、図15に示す第1実施例の変形例のメタサーフェス板1-2における最大放射方向における利得の周波数特性とほぼ同様となり、本発明の第4実施例のメタサーフェス板を用いると、最大放射方向において大きな利得を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上説明した本発明の実施例のメタツインにおいては、寸法の一例を挙げたが実施例のメタツインにおける各部の寸法は上記した一例に限るものではなく、一例に挙げた寸法の1/2倍ないし2倍の寸法とされても、前述した作用効果と同様の作用効果を得ることができる。また、本発明の実施例のメタツインにおいては、長さLoutを固定の長さにして長さLinを設定した長さとしたが、これに限ることはなく、長さLoutを設定した長さとしてもよい。この場合、本発明の実施例のメタツインにおいて、長さLoutを設定した長さとすると、実施例のメタツインの透過位相を長さLoutの長さに応じた透過位相となる。そこで、本発明の実施例のメタツインにおいて、長さLoutを設定した長さとして、長さLinを固定の長さとする変形例、長さLoutおよび長さLinを設定した長さとする変形例としてもよい。この変形例においても、前述した本発明の実施例のメタツインが奏することのできる作用効果と同様の透過位相の大きな位相変化量を得ることができる。なお、長さLinまたは長さLoutの設定された長さによっては、第1導体パターンと第2導体パターンとの少なくとも1つの先端同士が重なるメタツインとされたり、先端同士が重ならないメタツインとされる。
また、以上説明した本発明の実施例のメタツインにおいては、ループの形状を正方形状としたが、これに限ることはなく長方形、多角形、円形、楕円形等の形状としてもよい。
【0073】
以上説明した本発明の実施例のメタサーフェス板における縦寸法および横寸法は、一例を挙げたが上記した一例の寸法に限るものではなく、放射波のパターンとして所望のパターンが得られれば、どのような寸法であってもよい。また、本発明の実施例のメタサーフェス板においては、誘電体基板の形状を正方形状としたが、これに限ることはなく長方形、多角形、円形、楕円形等の形状としてもよい。
また、以上説明した本発明の実施例のメタサーフェス板において、メタサーフェス板に形成された本発明の実施例の各メタツインにおける透過位相を調整する電子素子、例えばバリキャップなどをメタサーフェス板の面上に装着するようにしてもよい。このように、各メタツインの透過位相を調整する電子素子を本発明の実施例のメタサーフェス板に装着すると、透過波の偏向角やパターンを調節することができるようになる。
さらに、以上説明した本発明の実施例のメタサーフェス板をパッチアンテナのような局所的な波源が設けられたグランド板上に載置する場合において、グランド板と実施例のメタサーフェス板との間隔dを、使用周波数fの自由空間波長をλとすると約0.25λの整数倍の間隔とすることができる。ただし、間隔dはこれらの間隔に限られることはなく、他の間隔としてもよい。
さらにまた、以上説明した本発明の実施例のメタサーフェス板では、透過波を所定の1方向に偏向して放射するようにしたが、透過波を2方向あるいは4方向に偏向して放射することもできる。透過波を2方向、例えばx方向と-x方向とに偏向して放射する場合は、図33に示す場合と同様にy方向の中心線からx方向、および、y方向の中心線から-x方向に向かって各メタツインの透過位相が次第に遅れる透過位相分布とすることにより、図34に示す場合と同様の透過波がx方向と-x方向との2方向に放射される放射パターンを得ることができる。また、透過波を4方向、例えば±x方向と±y方向とに偏向して放射する場合は、図35に示す場合と同様に中心から±x方向、および、中心から±y方向にそれぞれ向かって各メタツインの透過位相が次第に遅れる透過位相分布とすることにより、透過波が±x方向と±y方向との4方向に放射される放射パターンを得ることができる。
さらにまた、本発明の実施例のメタサーフェス板においては、入射波は実施例のメタサーフェス板の下面から入射されても上面から入射されても、同様に偏向された透過波が放射されるようになる。すなわち、本発明の実施例のメタサーフェス板は可逆性があることから、送信する際に所望の方向に放射できると共に、所望の方向からの受信を行うことができるメタサーフェス板として用いることができる。
【符号の説明】
【0074】
1,2,3,4 単位素子、1-1,1-2 メタサーフェス板、10 誘電体基板、11 第1導体パターン、12 第2導体パターン、20 誘電体基板、21 第1導体パターン、21a,21b 第1導体パターン、22 第2導体パターン、22a,22b 第2導体パターン、30 誘電体基板、31 第1導体パターン、32 第2導体パターン、40 誘電体基板、41 第1導体パターン、42 第2導体パターン、110,110b,110c メタサーフェス板、111,111a,111b,111c 単位素子、112,112a,112b,112c ループ素子、120 誘電体基板、130 パッチアンテナ、131 アンテナ基板、140 グランド板、AN パッチアンテナ、BP アンテナ基板、G グランド板、LP1 二重ループ素子、LPin 内側ループ、LPout 外側ループ、M1,M2,M3,M4 メタツイン、M11 第1導体パターン、M12 第2導体パターン
図1
図2
図3
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図5
図6
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