(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122975
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】スロットル装置
(51)【国際特許分類】
F02D 9/02 20060101AFI20230829BHJP
【FI】
F02D9/02 351M
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026763
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】菊 雄太
【テーマコード(参考)】
3G065
【Fターム(参考)】
3G065AA04
3G065BA01
3G065CA00
3G065DA05
3G065KA03
(57)【要約】
【課題】スロットルシャフトとの固定部の強度を確保しつつ、複雑な構造のギヤを容易に製造可能にし、製造コストを抑えることができるスロットル装置を提供する。
【解決手段】スロットルバルブが固定されたスロットルシャフトと、モータと、モータの駆動軸の回転をスロットルシャフトに減速して伝達する減速機構と、を備えたスロットル装置において、減速機構はスロットルシャフトに固定されたスロットルギヤ29を有し、スロットルギヤ29は、スロットルシャフトが着脱可能に挿入される筒状のリング50と、歯車部41を有するギヤ本体部40と、を有し、ギヤ本体部40は、リング50を含むインサート加工によって樹脂により形成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スロットルバルブが固定されたスロットルシャフトと、
モータと、
前記スロットルシャフトに固定されたギヤを有し、前記モータの駆動軸の回転を前記スロットルシャフトに減速して伝達する減速機と、
を備えたスロットル装置であって、
前記ギヤは、前記スロットルシャフトが着脱可能に挿入される筒状のリング部材と、歯車を有するギヤ本体部と、を有し、
前記ギヤ本体部は、前記リング部材を含むインサート加工によって形成されていることを特徴とするスロットル装置。
【請求項2】
前記リング部材は、円筒状の外周面のうちギヤ本体部に接する部位に面取り部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスロットル装置。
【請求項3】
前記リング部材は、周方向に延びる溝を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載のスロットル装置。
【請求項4】
前記スロットル装置は、さらに
前記スロットルシャフトを回転付勢する付勢部と、
前記付勢部の一端を支持する支持部材と、を備え、
前記ギヤは、前記支持部材と前記リング部材とを含むインサート加工によって一体的に形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のスロットル装置。
【請求項5】
前記リング部材は金属で形成され、前記ギヤは樹脂によって形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のスロットル装置。
【請求項6】
前記リング部材及び前記支持部材は金属で形成され、前記ギヤは樹脂によって形成されていることを特徴とする請求項4に記載のスロットル装置。
【請求項7】
前記スロットル装置は、自動二輪車のエンジンに備えられ、当該エンジンの吸気量を制御することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のスロットル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの吸気を制御するスロットル装置において、スロットルシャフトと駆動用ギヤとの固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車等に搭載されたエンジンには、吸気量を制御するためのスロットル装置が備えられている。スロットル装置は、エンジンの吸気通路に設けられたスロットルバルブを例えばモータによって駆動する構成になっている。
【0003】
例えば、特許文献1には、4個のスロットルバルブを備えたスロットル装置が開示されている。特許文献1のスロットル装置は、直列4気筒のエンジンに使用され、4個のスロットルバルブが並んで固定されたスロットルシャフトと、スロットルシャフトを回転駆動するモータを備えている。モータの回転駆動軸と、スロットルシャフトとの間には、2対の歯車から構成される減速機が介装されている。
【0004】
また、スロットルシャフトには、モータの停止時にスロットルバルブの開度を規定するためのリターンスプリング(回動バネ)が備えられている。リターンスプリングは、減速機のケースとスロットルシャフトに設けられた駆動用ギヤ(従動ギヤ)との間に設けられたコイルバネであり、ケースに対して駆動用ギヤを回転するように付勢する。また、スロットルシャフトの駆動用ギヤとケースには、駆動用ギヤの所定以上の回転角度範囲を規制するストッパが備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようなスロットル装置において、駆動用ギヤは軽量化を図るために樹脂等によって形成される一方、スロットルシャフトは金属等で形成されている場合が多い。また、中心部にスロットルシャフトが挿入される穴を有し、強度を確保するために金属等で円盤状に形成した部材(レバー)の外形部にリターンスプリングの支持部とストッパを備えることが考えられる。
【0007】
このように、樹脂製のギヤと、リターンスプリングの支持部及びストッパを有するレバーと、スロットルシャフトと、を固定する固定部においては、更にスロットルシャフトが挿入される筒状のリング(ブッシュ)を用意し、円板状のレバーを含んで駆動用ギヤをインサート成形して、レバーを含む駆動用ギヤに対してリングを例えばカシメ加工によって固定する構造が考えられる。
【0008】
しかしながら、リングをカシメ加工すると、スロットルシャフトの挿入用穴が潰れて挿入不能となる可能性があるため、カシメ加工後のリングをリーマー等でスロットルシャフトが挿入できるように加工する必要があり、製造コストが増加するといった問題点があった。
【0009】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、スロットルシャフトとの固定部の強度を確保しつつ、複雑な構造のギヤを容易に製造可能にし、製造コストを抑えることができるスロットル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明のスロットル装置は、スロットルバルブが固定されたスロットルシャフトと、モータと、前記スロットルシャフトに固定されたギヤを有し、前記モータの駆動軸の回転を前記スロットルシャフトに減速して伝達する減速機と、を備えたスロットル装置であって、前記ギヤは、前記スロットルシャフトが着脱可能に挿入される筒状のリング部材と、歯車を有するギヤ本体部と、を有し、前記ギヤ本体部は、前記リング部材を含むインサート加工によって形成されていることを特徴とすることを特徴とする。
【0011】
好ましくは、前記リング部材は、円筒状の外周面のうちギヤ本体部に接する部位に面取り部が形成されているとよい。
【0012】
好ましくは、前記リング部材は、円筒状の外周面に面取りを施して形成されているとよい。
【0013】
好ましくは、前記リング部材は、周方向に延びる溝を備えるとよい。
【0014】
好ましくは、前記スロットル装置は、さらに前記スロットルシャフトを回転付勢する付勢部と、前記付勢部の一端を支持する支持部材と、を備え、前記ギヤは、前記支持部材と前記リング部材とを含むインサート加工によって一体的に形成されているとよい。
【0015】
好ましくは、前記リング部材は金属で形成され、前記ギヤは樹脂によって形成されているとよい。
【0016】
好ましくは、前記リング部材及び前記支持部材は金属で形成され、前記ギヤは樹脂によって形成されているとよい。
【0017】
好ましくは、前記スロットル装置は、自動二輪車のエンジンに備えられ、当該エンジンの吸気量を制御するとよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のスロットル装置によれば、スロットルシャフトに固定されるギヤが、筒状のリング部材と、インサート加工によって形成されるギヤ本体部と、を有するので、リング部材とギヤ本体部とを異なる材質にすることができる。したがって、リング部材を比較的強度の高いものとして、スロットルシャフトとギヤとの固定部の強度を確保することができる。ギヤ本体部はインサート加工によって形成されるので、複雑な形状の歯車を容易に形成することができるとともに、軽い材料で形成することでギヤ全体の軽量化を図ることができる。
【0019】
更に、リング部材とギヤ本体部とはインサート加工によって固定されるので、リング部材の変形が抑制され、インサート加工後の後加工が不要となる。これにより、ギヤの製造コストを抑制することができ、安価なスロットル装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態のスロットル装置の外観図である。
【
図2】スロットル装置の駆動部の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づき本発明の一実施形態について説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態のスロットル装置10の外観図である。
図2は、スロットル装置10の駆動部の概略構成図である。
図3は、減速機構20(減速機)の内部構造図である。なお、
図3は、
図1中に記載したA-A部の断面図である。
【0023】
本発明のスロットル装置10は、多気筒のエンジンに装着され、吸気量を制御する多連式のスロットル装置である。本実施形態のスロットル装置10は、自動二輪車等の車両に搭載された直列4気筒のエンジン1に採用されている。エンジン1は、車両に、♯1から♯4までの4つの気筒(2a、2b、2c、2d)が車幅方向(左右方向)に順番に並ぶように配置されている。
【0024】
図1に示すように、スロットル装置10は、♯1気筒2aの吸気通路13a、♯2気筒2bの吸気通路13bが形成された第1のセグメントボディ14aと、♯3気筒2cの吸気通路13c、♯4気筒2dの吸気通路13dが形成された第2のセグメントボディ14bが備えられている。
【0025】
第1のセグメントボディ14aと第2のセグメントボディ14bとの間、即ち♯2気筒2bの吸気通路13bと♯3気筒2cの吸気通路13cとの間には、減速機構20が備えられている。また、減速機構20には、モータ17が接続されている。
【0026】
図1、2に示すように、スロットル装置10は、更に、スロットルシャフト15と、スロットルバルブ16b~16dと、減速機構20と、リターンスプリング21(付勢部)と、スロットルポジションセンサ22と、を備えている。なお、
図2は、スロットル装置10の内部に備えられた駆動部の構造を示しており、吸気通路13aにスロットルバルブ16aが、吸気通路13bにスロットルバルブ16bが、吸気通路13cにスロットルバルブ16cが、吸気通路13dにスロットルバルブ16dが設けられている。
【0027】
第1のセグメントボディ14aと第2のセグメントボディ14bは、対応する気筒2a~2dに合わせて左右方向(車幅方向)に並んで配置されてユニットボディ23(スロットルボディ)を形成している。
【0028】
吸気通路13a~13dは、車幅方向(左右方向)に対して垂直(
図1、2において前後方向)に延びるように形成されている。スロットルシャフト15は、ユニットボディ23を貫通して車幅方向に延び、4つの吸気通路(13a、13b、13c及び13d)内を通過して、ユニットボディ23に回転可能に支持されている。
【0029】
スロットルバルブ16a~16dは、吸気通路13a~13dの内径と略同一径の円板状の部材であり、スロットルシャフト15に固定され、吸気通路13a~13d内に配置されている。スロットルバルブ16a~16dは、スロットルシャフト15の回転とともに吸気通路13a~13d内で回転し、吸気通路13a~13dを閉止する閉止位置と、吸気通路13a~13dを開放する開放位置との間で任意の角度に回転移動可能になっている。
【0030】
モータ17は、電気モータである。モータ17は、第2のセグメントボディ14bに固定され、出力軸である回転駆動軸24がスロットルシャフト15と平行になるように配置されている。
【0031】
減速機構20は、第1のセグメントボディ14aと第2のセグメントボディ14bとの間に配置されている。
図2、3に示すように、減速機構20は、第1の中間軸25と、第2の中間軸30と、モータ17の回転駆動軸24に固定された第1のギヤ26と、第1の中間軸25に固定され第1のギヤ26とかみ合う第2のギヤ27と、第1の中間軸25に固定された第3のギヤ28と、第2の中間軸30に固定され第3のギヤ28とかみ合う第4のギヤ31と、スロットルシャフト15に固定され第4のギヤ31と噛み合うスロットルギヤ29と、を有している。第1の中間軸25及び第2の中間軸30は、回転駆動軸24及びスロットルシャフト15と平行に配置され、ユニットボディ23に回転可能に支持されている。
【0032】
減速機構20は、モータ17の回転駆動軸24の回転を第1のギヤ26、第2のギヤ27、第1の中間軸25、第3のギヤ28、第4のギヤ31、スロットルギヤ29の順番に伝達して減速し、スロットルシャフト15を回転駆動する。
【0033】
リターンスプリング21は、スロットルシャフト15の周囲を数回巻き回すように配置され、一端部がユニットボディ23に支持され、他端部がスロットルシャフト15に固定されたスロットルギヤ29に支持された円筒状のねじりばねである。リターンスプリング21は、スロットルバルブ16c、16dが閉状態または全開状態になるようにスロットルシャフト15を付勢する。
【0034】
スロットルポジションセンサ22は、スロットルシャフト15の一端部に備えられ、スロットルシャフト15の回転角を検出する機能を有する。スロットルポジションセンサ22は、例えば第2のセグメントボディ14bに配置されている。
【0035】
次に、
図4~7を用いて、スロットルシャフト15とスロットルギヤ29との固定部の構造について説明する。
【0036】
図4は、スロットルギヤ29の外形図である。
図5は、スロットルギヤ29の縦断面図である。
図6は、リング50の外形を示す斜視図である。
図7は、レバー55の外形を示す斜視図である。なお、
図4は、スロットルギヤ29の側面を示し、
図5は、
図4中に記載したB-B図の断面図である。
【0037】
図4、5に示すように、スロットルギヤ29は、ギヤ本体部40と、リング50(リング部材)と、レバー55(支持部材)と、を備えている。
【0038】
ギヤ本体部40は、樹脂等によって形成された円板状のギヤであって、外周部の一部に例えば平歯車のような歯車部41が形成されている。中心部には、リング50が挿入される略円形のリング挿入用穴42が設けられている。なお、リング挿入用穴42は、後述するリング50の面取り部52の形状に合わせて、軸心を挟んで平行に面取りされた形状になっている。
【0039】
図6に示すように、リング50は、ステンレス等の金属によって形成された円筒状の部材であって、軸心にスロットルシャフト15が貫通するシャフト穴51が設けられている。また、リング50には、外周面に軸心を挟んで平行に面取りされた一対の面取り部52が形成されている。更に、リング50の外周面の軸方向中間部には、断面がV字状の溝53が面取り部52を除き全周に亘って設けられている。また、リング50には、面取り部52と平行に貫通し、軸心を通過する固定用穴54が形成されている。
【0040】
一方、
図7に示すように、レバー55は、半円環形状でギヤ本体部40内に没入して配置される没入部56と、没入部56の周方向中央部から径方向外方に突出するスプリング支持部57とにより構成されている。
【0041】
スプリング支持部57は、没入部56の外周端から径方向外方に延びてギヤ本体部40よりも径方向外方に突出し、その突出部端部が垂直に折り曲げられて1cm程度突出している。スプリング支持部57には、図示しないリング状の支持部材を介してリターンスプリング21の一端部が係止される。リターンスプリング21の他端部は、リング状の支持部材65を介してユニットボディ23に係止される。リターンスプリング21は、円筒状のねじりばねであって、スロットルバルブ16a~16dが閉状態または全開状態になるようにスロットルシャフト15を付勢する。そして、モータ17を作動させることで、減速機構20を介してスロットルギヤ29が、リターンスプリング21による付勢に抗して回転する。
【0042】
なお、ユニットボディ23には、図示しないストッパボルトが備えられており、その先端がスプリング支持部57に当接することで、スロットルギヤ29の回転が規制される。即ち、レバー55のスプリング支持部57は、リターンスプリング21によって付勢される必要以上のスロットルシャフト15の回転を規制するストッパの機能をも有する。
【0043】
また、レバー55の没入部56には、周方向に並んで円形の位置合わせ穴58が設けられている。
【0044】
ギヤ本体部40には、リング挿入用穴42にリング50が挿入されて固定された状態で、リング50の固定用穴54が露出するようにU字状の溝43が設けられている。
【0045】
なお、スロットルシャフト15には、スロットルギヤ29の取り付け位置に、軸心を通過し径方向に延びるリング50の固定用穴54と同径の穴が設けられている。
【0046】
スロットルギヤ29のリング50のシャフト穴51にスロットルシャフト15が挿入され、スロットルギヤ29をスロットルシャフト15の所定の軸方向位置及び回転位置に合わせた状態で、リング50の固定用穴54に図示しないピンを挿入することで、スロットルギヤ29とスロットルシャフト15とが着脱可能に固定される。
【0047】
次に、スロットルギヤ29の製造方法について説明する。
【0048】
あらかじめ、金属製のリング50とレバー55とを用意する。リング50は、例えば切削加工や鋳造加工で製造し、レバー55は、金属板を板金加工で製造すればよい。次に、金型内にリング50とレバー55とをセットし、リング50及びレバー55の周りに樹脂等の材料を充填して、ギヤ本体部40を形成する。なお、金型内には、スロットルシャフト15と同径のピンと、レバー55の位置合わせ穴58に挿入されるピンが設けられており、これらのピンによっててリング50とレバー55との位置合わせが行うことができる。このように、スロットルギヤ29は、インサート加工によって製造される。
【0049】
なお、上記の実施形態では、レバー55のスプリング支持部57が、リターンスプリング21の一端部を支持する機能を有するとともに、スロットルギヤ29の回転角度範囲を規制するストッパの機能を有しているが、スプリング支持部57とは別にストッパを設けてもよい。例えば、没入部56からスプリング支持部57とは周方向の異なる位置より径方向外方に突出するスプリング支持部57と同様な形状のストッパを備えればよい。
【0050】
あるいはレバー55と類似の形状の没入部56を有し、
図3において2点鎖線で示したようにスプリング支持部57と同様に突出したストッパ60を形成したストッパレバーを用意して、上記のレバー55及びリング50ととともにインサート加工してスロットルギヤ29を製造してもよい。なお、この場合、ユニットボディ23にストッパ60が当接する突出部61を設け、スロットルギヤ29の回転角度範囲を規制するようにすればよい。
【0051】
以上のように、本実施形態に係るスロットル装置10は、モータ17から減速機構20を介してスロットルシャフト15を回転駆動するが、スロットルシャフト15には減速機構20のスロットルギヤ29が固定されている。
【0052】
スロットルギヤ29のギヤ本体部40は、樹脂によって形成されているので、軽量化を図ることができる。また、スロットルシャフト15は、スロットルギヤ29に備えられた金属のリング50に固定されている。金属製のリング50を使用することで、スロットルシャフト15とスロットルギヤ29との固定部の強度を確保することができる。
【0053】
更に、スロットルギヤ29のギヤ本体部40は、樹脂によって形成されているので、歯車部41のような複雑な形状を容易に形成することができる。また、スロットルギヤ29は、リング50を含むインサート加工によって容易に形成することができる。
【0054】
ここで、例えばリング50とギヤ本体部40とを別々に製造してから、ギヤ本体部40のリング挿入用穴42にリング50を挿入し、カシメ加工によってリング50とギヤ本体部40とを固定した場合、カシメ加工によってリング50が変形する可能性がある。したがって、カシメ加工後にリーマー等によってスロットルシャフト15が挿入可能となるようにリング50のシャフト穴51を追加工する必要があった。
【0055】
これに対し、本実施形態では、インサート加工によってリング50とギヤ本体部40とが固定されているので、リング50の変形が抑制される。これにより、リーマー加工等の後加工が不要となり、製造コストを抑制することができ、安価なスロットル装置10を提供することが可能になる。
【0056】
また、リング50は円筒状であるが、外周面に軸線を挟んで平行に2個の面取り部52が形成されているので、この面取り部52の形状に合わせて形成されたギヤ本体部40のリング挿入用穴42に係止されていることで、リング50とギヤ本体部40との間で回転を確実に伝達させることができる。
【0057】
また、リング50の外周面には、周方向に全周に亘って延びる溝53が設けられているので、インサート加工によってこの溝53に樹脂が入り込んで固定されることで、リング50とギヤ本体部40とのスラスト方向の移動を規制することができる。
【0058】
このように、円筒状のリング50に対して、面取り部52と溝53とによって、ギヤ本体部40の回転位置及び軸方向位置が規定されるとともに、リング50とギヤ本体部40との固定が強固になる。
【0059】
また、スロットルギヤ29には、リターンスプリング21の一端部を支持するスプリング支持部57を有するレバー55が備えられている。レバー55は、インサート加工によってギヤ本体部40を形成する際に、リング50とともに金型内に設置されて固定される。したがって、レバー55を含むスロットルギヤ29を容易に形成することができる。また、レバー55がスロットルギヤ29に含まれるように構成されているので、リターンスプリング21の支持部付近を簡単な構造にすることができる。
【0060】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、スロットルギヤ29を製造する際に、リング50とレバー55とを含んだインサート加工を行っているが、リング50のみインサート加工を行ってスロットルギヤ29を製造してもよい。この場合、レバー55はスロットルギヤ29にねじ等で固定すればよい。
【0061】
また、本実施形態では、4気筒のエンジン1のスロットル装置10に本発明を適用しているが、4気筒以外の複数の気筒のエンジンのスロットル装置に適用してもよい。
【0062】
また、本実施形態のスロットル装置10は、1個のモータ17でスロットルバルブ16a~16dを駆動するが、モータを複数備え、1個のモータが駆動するスロットルバルブの個数が4個以外であってもよい。また、モータ17によってスロットルバルブ16を駆動するスロットルユニットを複数備えて、スロットル装置を形成し、これらのスロットルユニットにおけるスロットルシャフトとスロットルギヤとの固定部に本発明を適用してもよい。
【0063】
また、本発明は、自動二輪車以外に使用されるエンジンのスロットル装置に対しても採用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 エンジン
10 スロットル装置
15 スロットルシャフト
16a、16b、16c、16d スロットルバルブ
17 モータ
20 減速機構(減速機)
21 リターンスプリング(付勢部)
29 スロットルギヤ(ギヤ)
40 ギヤ本体部
50 リング(リング部材)
52 面取り部
53 溝
55 レバー(支持部材)