(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122996
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】化粧板用裏面防湿紙
(51)【国際特許分類】
B32B 27/10 20060101AFI20230829BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
B32B27/10
B32B9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026793
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】古沢 伸夫
(72)【発明者】
【氏名】由良 武志
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA20E
4F100AB10C
4F100AK01B
4F100AK01D
4F100AK01E
4F100AK70B
4F100AK70D
4F100AK70E
4F100BA05
4F100DG10A
4F100EH66C
4F100EH66E
4F100EJ65E
4F100GB08
4F100JD04
4F100JL11E
(57)【要約】
【課題】高い防湿性能を備えることで、両側の温湿度環境に大きな差がある場所で用いても、化粧板の反りを防止することができ、且つ、プラスチック使用量を削減することで、環境に配慮された化粧板用裏面防湿紙を提供することを目的とする。
【解決手段】本実施形態に係る防湿紙10は、紙基材1と、第1の樹脂層2と、第1の蒸着層3と、第2の樹脂層4と、第2の蒸着層5と、第3の樹脂層6と、をこの順で備えた防湿紙である。また、第1の樹脂層2、第2の樹脂層4及び第3の樹脂層6の少なくともいずれか一方は、カルボキシル基、カルボキシル基の塩、カルボン酸無水物基及びカルボン酸エステルより選ばれる少なくとも1種を有するポリオレフィンを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材と、第1の樹脂層と、第1の蒸着層と、第2の樹脂層と、第2の蒸着層と、第3の樹脂層と、をこの順で備える、化粧板用裏面防湿紙。
【請求項2】
前記第1の樹脂層、前記第2の樹脂層及び前記第3の樹脂層の少なくともいずれか一方が、カルボキシル基、カルボキシル基の塩、カルボン酸無水物基及びカルボン酸エステルより選ばれる少なくとも1種を有するポリオレフィンを含む層である、請求項1に記載の化粧板用裏面防湿紙。
【請求項3】
前記第1の蒸着層及び前記第2の蒸着層の少なくともいずれか一方が、アルミニウム蒸着膜であり、且つ厚みが30nm以上100nm以下の範囲内である、請求項1又は2に記載の化粧板用裏面防湿紙。
【請求項4】
前記第1の蒸着層及び前記第2の蒸着層の少なくともいずれか一方が、酸化ケイ素蒸着膜又は酸化アルミニウム蒸着膜である、請求項1又は2に記載の化粧板用裏面防湿紙。
【請求項5】
前記紙基材の質量が、防湿紙全体の質量を基準として、50質量%以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の化粧板用裏面防湿紙。
【請求項6】
前記第1の樹脂層と、前記第1の蒸着層と、前記第2の樹脂層と、前記第2の蒸着層と、前記第3の樹脂層と、を備える防湿層の表出面に接着用プライマー層を設けた、請求項1~5のいずれか一項に記載の化粧板用裏面防湿紙。
【請求項7】
前記紙基材が紙間強化紙である、請求項1~6のいずれか一項に記載の化粧板用裏面防湿紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内のドアパネルなどに用いる化粧板に、室内での温度や湿度の変化による吸湿・放湿などが原因で発生する反りを防止するために、化粧板の裏面に貼り合わせて用いる化粧板用裏面防湿紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、室内のドアパネルなどの用途に用いる化粧板としては、合板、中密度繊維板(MDF)、ベニア板、ボード材、その他の多層構造の木質系基材の表面に、隠蔽性を与えるためのベタ印刷層や意匠性を向上させるための絵柄模様層を印刷した化粧シートを貼り合わせたものが一般的に知られている。
木質系基材は、その含水率が外気条件において、木質系基材の平衡含水率より小さい場合は、化粧板の化粧シートを貼り合せていない面から吸湿して面が膨張し、木質系基材の平衡含水率より大きい場合には、放湿して収縮が起こるのに対して、化粧シートを貼り合せた面は、吸放湿がほとんどないため、化粧板に変形(反り、寸法変化)が生じる。
【0003】
この変形を防止するための方法として、表面に化粧シートを貼り合せた化粧板の裏面に塗料を塗布する方法や、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂シートを貼り合せる方法や、或いは、紙/ポリエチレン/紙からなる防湿シートを貼り合せる方法等が知られている。
【0004】
また、更に高い防湿性が求められる場合は、化粧板の変形を防止するための方法として、合成樹脂基材に蒸着層を設けた防湿シートを貼り合せる方法等が知られている。
高い防湿性能を得るためには、平滑な面に蒸着層を設ける必要があることから、一般的に合成樹脂基材が選択されており、紙基材を用いて高い防湿性能を得ることは、技術的に困難とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3206408号公報
【特許文献2】特許第4998084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の防湿裏面シートでは、防湿性が不十分な場合があり、両面の温湿度環境に大きな差があるドア、引き戸、間仕切り等に長期間使用された場合には、両面の伸縮の度合いが異なり、化粧板に反りが発生する場合がある。
更に、いずれもプラスチック材料が主材料となっており、環境負荷において、その使用量の削減が求められている。
本発明はこの課題を解決するためになされたものであり、高い防湿性能を備えることで、両側の温湿度環境に大きな差がある場所で用いても、化粧板の反りを防止することができ、且つ、プラスチック使用量を削減することで、環境に配慮された化粧板用裏面防湿紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る化粧板用裏面防湿紙は、紙基材と、第1の樹脂層と、第1の蒸着層と、第2の樹脂層と、第2の蒸着層と、第3の樹脂層と、をこの順で備えた防湿紙である。
また、本発明の一態様に係る化粧板用裏面防湿紙は、紙基材の一面に防湿層を積層してなる化粧板用裏面防湿紙であって、前記防湿層は、第1の樹脂層と、第1の蒸着層と、第2の樹脂層と、第2の蒸着層と、第3の樹脂層と、をこの順で備えたものであってもよい。
【0008】
また、本発明の一態様に係る化粧板用裏面防湿紙は、前記第1の樹脂層、前記第2の樹脂層及び前記第3の樹脂層の少なくともいずれか一方が、カルボキシル基、カルボキシル基の塩、カルボン酸無水物基及びカルボン酸エステルより選ばれる少なくとも1種を有するポリオレフィンを含む層であれば好ましい。
【0009】
また、本発明の一態様に係る化粧板用裏面防湿紙は、前記第1の蒸着層及び前記第2の蒸着層の少なくともいずれか一方が、アルミニウム蒸着膜であり、且つ厚みが30nm以上100nm以下の範囲内であれば好ましい。
【0010】
また、本発明の一態様に係る化粧板用裏面防湿紙は、前記第1の蒸着層及び前記第2の蒸着層の少なくともいずれか一方が、酸化ケイ素蒸着膜又は酸化アルミニウム蒸着膜であれば好ましい。
【0011】
また、本発明の一態様に係る化粧板用裏面防湿紙は、前記紙基材の質量が、防湿紙全体の質量を基準として、50質量%以上であれば好ましい。
【0012】
また、本発明の一態様に係る化粧板用裏面防湿紙は、前記第1の樹脂層と、前記第1の蒸着層と、前記第2の樹脂層と、前記第2の蒸着層と、前記第3の樹脂層と、を備える防湿層の外面(表出面)に接着用プライマー層を設けていれば好ましい。
【0013】
また、本発明の一態様に係る化粧板用裏面防湿紙は、前記紙基材が紙間強化紙であれば好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様に係る化粧板用裏面防湿紙によれば、従来術に係る防湿シートと比較して透湿度が格段に低減でき、両側の温湿度環境に大きな差がある場所で用いても、例えば化粧板の反りを防止できる。
さらに、本発明の一態様に係る化粧板用裏面防湿紙によれば、プラスチック材料の使用量削減に寄与する化粧板用裏面防湿紙を提供できる。
つまり、本発明の一態様に係る化粧板用裏面防湿紙によれば、高い防湿性能を備えることで、両側の温湿度環境に大きな差がある場所で用いても、化粧板の反りを防止することができ、且つ、プラスチック使用量を削減することで、環境に配慮された化粧板用裏面防湿紙を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る化粧板用裏面防湿紙の構成を示す概略断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る化粧板用裏面防湿紙に接着用プライマー層を設けた構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について、
図1、
図2を参照しながら説明を加える。
ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内であって、種々の変更を加えることができる。
【0017】
[化粧板用裏面防湿紙10]
図1は、本実施形態に係る化粧板用裏面防湿紙10の構成を示す模式断面図である。
本実施形態に係る化粧板用裏面防湿紙10は、図示しないが、例えば室内のドアパネルなどに用いる化粧板の裏面に貼り合わせて用いられる防湿紙である。本実施形態において、この化粧板用裏面防湿紙10を、以下、単に「防湿紙10」ともいう。
防湿紙10は、室内での温度や湿度の変化による吸湿・放湿などが原因で、化粧板に発生する反りを防止するために使用される。
防湿紙10は、
図1に示すように、大別すると、紙基材1と、紙基材1の一面(例えば、表面)に積層された防湿層20との2層で構成されている。
防湿層20は、例えば、第1の樹脂層2と、第1の蒸着層3と、第2の樹脂層4と、第2の蒸着層5と、第3の樹脂層6と、をこの順で積層した積層体である。より詳しくは、防湿層20は、紙基材1側から順に、第1の樹脂層2と、第1の蒸着層3と、第2の樹脂層4と、第2の蒸着層5と、第3の樹脂層6と、を備えた積層体である。
【0018】
[防湿紙10の透湿度]
防湿紙10の透湿度は、2g/m2・24hr以下であれば好ましく、1.5g/m2・24h以下であればさらに好ましい。透湿度が上述した数値以下であれば、一般に優れた防湿性能を備えていると評価される。なお、防湿紙10の透湿度の下限は、0g/m2・24hrであるが、上述した防湿紙10の透湿度の上限以下であれば、例えば、0.1g/m2・24hr以上の透湿度であってもよく、0.3g/m2・24hr以上の透湿度であってもよく、0.5g/m2・24hr以上の透湿度であってもよい。
【0019】
[紙基材1]
紙基材1としては、特に限定されるものではなく、適用される防湿紙10の用途に応じて適宜選択すればよい。
紙基材1の具体例として、薄葉紙、上質紙、アート紙、キャストコート紙、クラフト紙、チタン紙、リンター紙、板紙、石膏ボード紙、上質紙、コート紙、硫酸紙、グラシン紙、パーチメント紙、パラフィン紙、和紙等が挙げられる。
好ましくは、紙成分(例えば、セルロース繊維)に合成樹脂を混抄させて、紙間強度を強化した薄葉紙(いわゆる紙間強化紙)や紙にラテックスや合成樹脂を含浸したものが、好ましく使用される。
紙基材1の坪量としては特に限定されないが、20g/m2以下の場合は柔軟すぎるため、加工時に皺の発生が起こりやすく、200g/m2以上の場合は紙層からの剥がれ(所謂、紙間剥離)が発生しやすいため、20g/m2以上200g/m2以下の範囲内が好ましく、20g/m2以上100g/m2以下の範囲内がより好ましく、20g/m2以上50g/m2以下の範囲内がさらに好ましい。
また、これらの紙基材1については、その表面に、必要に応じてコロナ処理やプラズマ処理、フレーム処理等の表面処理を行つてもよい。
【0020】
[コート層]
紙基材1には、少なくとも後述する第1の樹脂層2と接する側にコート層(図示せず)を設けてあってもよい。コート層を設けることで、紙基材1に第1の樹脂層2が染み込むことを防ぐことができるほか、紙基材1の凹凸を埋める目止めの役割を果たすこともできる。そのため、表面にコート層を備えた紙基材1であれば、第1の樹脂層2を、塗工ムラ等の欠陥なく均一に製膜することができる。
コート層には、バインダー樹脂として、例えば、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系などの各種共重合体、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、パラフィン(WAX)等が含まれていてもよく、また、填料として、例えばクレー、カオリン、炭酸カルシウム、タルク、マイカ等が含まれていてもよい。
【0021】
コート層の厚みは、特に制限されるものではないが、例えば、1μm以上10μm以下の範囲内であれば好ましく、3μm以上8μm以下の範囲内であればさらに好ましい。
【0022】
紙基材1の質量は、防湿紙10全体の質量を基準として、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。紙基材1の質量が防湿紙10全体を基準として、50質量%以上であれば、プラスチック材料の使用量を十分に削減することができ、防湿紙10全体として紙製であるということができるとともに、リサイクル性に優れる。
【0023】
[第1の樹脂層]
第1の樹脂層2は、紙基材1の表面上に設けられ、紙基材1と後述する第1の蒸着層3との間の密着性向上や、第1の蒸着層3の面の平滑化のために設けられるものである。
第1の樹脂層2を構成する材料としては、例えば、ポリオレフィン系エマルジョン、シランカップリング剤、有機チタネート、ポリアクリル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリウレア、ポリアミド、ポリイミド、メラミン、フェノール、ポリビニルアルコール系樹脂等が挙げられる。上述した材料の中でも、水蒸気バリア性、及び第1の蒸着層3との密着性の点で、ポリオレフィン系エマルジョンが好ましい。つまり、第1の樹脂層2は、ポリオレフィン系エマルジョンを含んだ塗工液を塗工して形成した樹脂層であれば好ましい。
【0024】
ポリオレフィン系エマルジョンは、第1の蒸着層3との密着性の観点から、例えば、カルボキシル、カルボキシル基の塩、カルボン酸無水物基及びカルボン酸エステルより選ばれる少なくとも1種を有するポリオレフィンのエマルジョンであることが好ましい。このようなポリオレフィンを含むことで、カルボキシル基の水素結合やアイオノマーの金属イオンによる凝集、あるいはポリオレフィンの結晶性に起因して、第1の樹脂層2は緻密な膜となり、バリア性に優れるものとなる。また、このような第1の樹脂層2は、柔軟性に優れ、第1の蒸着層3の割れを抑制することができる。
ポリオレフィン系エマルジョンの平均粒径(D50)は小さいほどよく、具体的には、1μm以下であれば好ましく、0.7μm以下であればより好ましく、0.5μm以下であればさらに好ましい。ポリオレフィン系エマルジョンの平均粒径(D50)の下限値は、特に限定されるものではないが、例えば1nm以上であってよい。これにより、乾燥後の塗面が平滑になるため、蒸着面が均一になり、初期バリア性が担保される。
こうして形成された塗面の表面粗さ、即ち第1の樹脂層2の表面における表面粗さは、その下限値がより小さければ好ましく、例えば、カットオフ値を0.8mmとしたときの、JIS B0601:2001の算術平均粗さ(Ra0.8)が0.30μm≦Ra0.8≦0.60μmの範囲内であれば好ましく、0.30μm≦Ra0.8≦0.40μmの範囲内であればより好ましい。
【0025】
第1の樹脂層2の膜厚は、例えば1μm以上20μm以下の範囲内であってもよい。第1の樹脂層2の膜厚が1μm以上であると、紙基材1表面の凹凸が埋まり、蒸着層(第1の蒸着層3)を均一に積層させることができる。また、第1の樹脂層2の膜厚が20μm以下であると、製造コストを抑えることができる。
【0026】
第1の樹脂層2を設ける方法としては、紙基材1上に上述したポリオレフィン等の第1の樹脂層2を構成する材料と、溶媒とを含む塗液を塗布し、乾燥させることで得ることができる。塗液に含まれる溶媒としては、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、n-ペンチルアルコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチルが挙げられる。これらの溶媒は一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、特性の観点から、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、水が好ましい。また環境の観点から、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、水が好ましい。また前記塗液には、界面活性剤や防腐剤、保存安定剤、シランカップリング剤、有機チタネート、消泡剤等の添加剤を含んでいても構わない。
【0027】
[第1の蒸着層]
第1の蒸着層3は、水蒸気バリア性の付与と、後述する第2の蒸着層5が割れた際の水蒸気バリア性を補完する役割を有し、金属又は無機酸化物を蒸着して形成した層である。第1の蒸着層3としては、アルミニウムを蒸着して得られたもの(アルミニウム蒸着膜)であってもよく、また、酸化アルミニウム(AlOx)、酸化ケイ素(SiOx)等を蒸着して得られたもの(酸化アルミニウム蒸着膜、酸化ケイ素蒸着膜)であってもよい。
【0028】
第1の蒸着層3の厚みは、使用する物や用途によって適宜設定すればよいが、10nm以上であれば使用する上で問題ないが、30nm以上であれば好ましく、50nm以上であればより好ましい。また、第1の蒸着層3の厚みは、500nm以下であれば使用する上で問題ないが、100nm以下であれば好ましく、80nm以下であればより好ましい。第1の蒸着層3の厚みを10nm以上とすることで第1の蒸着層3の連続性を十分なものとしやすく、500nm以下とすることでカールやクラックの発生を十分に抑制でき、十分なガスバリア性能及び可撓性を達成しやすい。また、第1の蒸着層3の厚みを30nm以上100nm以下の範囲内にすることで、ガスバリア性能及び可撓性がさらに向上する。
【0029】
第1の蒸着層3は、真空成膜手段によって成膜することが、酸素ガスバリア性能や膜均一性の観点から好ましい。成膜手段には、真空蒸着法、スパッタリング法、化学的気相成長法(CVD法)などの公知の方法があるが、成膜速度が速く生産性が高いことから真空蒸着法が好ましい。また真空蒸着法の中でも、特に電子ビーム加熱による成膜手段は、成膜速度を照射面積や電子ビーム電流などで抑制しやすいことや蒸着材料への昇温降温が短時間で行えることから有効である。
【0030】
[第2の樹脂層]
第2の樹脂層4は、第1の蒸着層3と後述する第2の蒸着層5との密着性の向上と、第1の蒸着層3と第2の蒸着層5の割れ防止、或いは防湿層20全体のバリア性の向上のために設けられる。
【0031】
第2の樹脂層4を構成する材料としては、上述した第1の樹脂層2と同様の材料を用いることができる。つまり、第2の樹脂層4を構成する材料としては、例えば、ポリオレフィン系エマルジョン、シランカップリング剤、有機チタネート、ポリアクリル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリウレア、ポリアミド、ポリイミド、メラミン、フェノール、ポリビニルアルコール系樹脂等が挙げられる。上述した材料の中でも、水蒸気バリア性、及び第2の蒸着層5との密着性の点で、ポリオレフィン系エマルジョンが好ましい。つまり、第2の樹脂層4は、ポリオレフィン系エマルジョンを含んだ塗工液を塗工して形成した樹脂層であれば好ましい。
【0032】
第2の樹脂層4を設ける方法としては、第1の蒸着層3上に上述したポリオレフィン等の第2の樹脂層4を構成する材料と、溶媒とを含む塗液を塗布し、乾燥させることで得ることができる。塗液に含まれる溶媒としては、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、n-ペンチルアルコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等が挙げられ、特に水と、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコールとの混合溶媒が好ましい。また前記塗液には、界面活性剤や防腐剤、保存安定剤、シランカップリング剤、有機チタネート、消泡剤等の添加剤を含んでいても構わない。
こうして形成された塗面の表面粗さ、即ち第2の樹脂層4の表面における表面粗さは、その下限値がより小さければ好ましく、例えば、カットオフ値を0.8mmとしたときの、JIS B0601:2001の算術平均粗さ(Ra0.8)が0.30μm≦Ra0.8≦0.60μmの範囲内であれば好ましく、0.30μm≦Ra0.8≦0.40μmの範囲内であればより好ましい。
【0033】
第2の樹脂層4の膜厚は、例えば、0.05μm以上10μm以下の範囲内であってもよい。第2の樹脂層4の膜厚が0.05μm以上であると、バリア性向上効果が十分に得られやすく、第2の樹脂層4の膜厚が10μm以下であると、製造コストを抑えることができるとともに、本実施形態に係る防湿紙10の紙成分の存在比率を高めることができる。
【0034】
[第2の蒸着層]
第2の蒸着層5は、水蒸気バリア性の付与と、第1の蒸着層3が割れた際の水蒸気バリア性を補完する役割を有し、金属又は無機酸化物を蒸着して形成した層である。第2の蒸着層5としては、アルミニウムを蒸着して得られたものであってもよく、また、酸化アルミニウム(AlOx)、酸化ケイ素(SiOx)等を蒸着して得られたものであってもよい。
【0035】
第2の蒸着層5の厚みは、使用する物や用途によって適宜設定すればよいが、10nm以上であれば使用する上で問題ないが、30nm以上であれば好ましく、50nm以上であればより好ましい。また、第2の蒸着層5の厚みは、500nm以下であれば使用する上で問題ないが、100nm以下であれば好ましく、80nm以下であればより好ましい。第2の蒸着層5の厚みを10nm以上とすることで第2の蒸着層5の連続性を十分なものとしやすく、500nm以下とすることでカールやクラックの発生を十分に抑制でき、十分なガスバリア性能及び可撓性を達成しやすい。また、第2の蒸着層5の厚みを30nm以上100nm以下の範囲内にすることで、ガスバリア性能及び可撓性がさらに向上する。
【0036】
第2の蒸着層5は、真空成膜手段によって成膜することが、酸素ガスバリア性能や膜均一性の観点から好ましい。成膜手段には、真空蒸着法、スパッタリング法、化学的気相成長法(CVD法)などの公知の方法があるが、成膜速度が速く生産性が高いことから真空蒸着法が好ましい。また真空蒸着法の中でも、特に電子ビーム加熱による成膜手段は、成膜速度を照射面積や電子ビーム電流などで抑制しやすいことや蒸着材料への昇温降温が短時間で行えることから有効である。
【0037】
[第3の樹脂層]
第3の樹脂層6は、第2の蒸着層5との密着性向上と、第2の蒸着層5の割れ防止を図ることができる。
【0038】
第3の樹脂層6を構成する材料としては、カルボキシル基、カルボキシル基の塩、カルボン酸無水物基及びカルボン酸エステルより選ばれる少なくとも1種を有するポリオレフィンを含む層であってよい。第3の樹脂層6は、水系エマルジョンであることが好ましく、カルボキシル基、カルボキシル基の塩、カルボン酸無水物基及びカルボン酸エステルより選ばれる少なくとも1種を有するポリオレフィンのエマルジョンを含むことが好ましい。ポリオレフィンは柔軟性に優れ、蒸着の割れを抑制することができるとともに、ポリオレフィンの結晶性により水蒸気バリア性に優れるものとなる。このように、第3の樹脂層6を構成する材料には、上述した第1の樹脂層2を構成する材料や、第2の樹脂層4を構成する材料と同じ材料を用いることができる。
【0039】
第3の樹脂層6を設ける方法としては、第2の蒸着層5上に上述したポリオレフィン等の第3の樹脂層6を構成する材料と、溶媒とを含む塗液を塗布し、乾燥させることで得ることができる。塗液に含まれる溶媒としては、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、n-ペンチルアルコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチルが挙げられる。これらの溶媒は一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、特性の観点から、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、水が好ましい。また環境の観点から、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、水が好ましい。また前記塗液には、界面活性剤や防腐剤、保存安定剤、シランカップリング剤、有機チタネート、消泡剤、ブロッキング防止剤等の添加剤を含んでいても構わない。
【0040】
第3の樹脂層6の膜厚は、0.05μm以上20μm以下の範囲内であれば好ましく、0.5μm以上10μm以下の範囲内であればより好ましく、1μm以上5μm以下の範囲内であればさらに好ましい。
第3の樹脂層6の膜厚が0.05μm以上であると、バリア性向上効果が十分に得られやすく、第3の樹脂層6の膜厚が20μm以下であると、製造コストを抑えることができるとともに、本実施形態に係る防湿紙10の紙成分の存在比率を高めることができる。
【0041】
[接着用プライマー層7]
接着用プライマー層7は、各種の被貼着基材の表面に積層貼着する際に使用されるものであり、例えばイソシアネート硬化型ウレタン樹脂系や変性酢酸ビニル樹脂エマルジョン系等の各種のラミネート用接着剤との接着性を十分に確保する目的で設けられるものである。
その材質としては、例えばエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール系樹脂、ニトロセルロース系樹脂等の各種のプライマー剤が知られており、これらの中からラミネート用接着剤の種類に合せたものを選んで使用する。
例えば、ラミネート用接着剤として変性酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤を使用する場合には、ウレタン系接着用プライマー剤で良好な接着が得られる。
【0042】
なお、接着用プライマー層7に、例えばシリカ等の無機質微粉末を添加しておくと、接着用プライマー層7の表面が粗面化することにより、防湿紙10の巻取り保存時のブロッキングが防止できる他、投錨効果によるラミネート用接着剤との接着性の向上を図ることもできる。
また、これらの接着用プライマー層7は、単独ないし混合して接着組成物とし、ロールコート法やグラビア印刷法等の適宜の塗布手段を用いて形成することができる。
【0043】
[実施例]
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0044】
<防湿紙の作製>
(実施例1~12、比較例1~7)
紙基材として坪量50g/m2の紙間強化紙(天間特殊製紙株式会社製)表面上に、下記表1~表3に示す第1の樹脂層、第1の蒸着層、第2の樹脂層、第2の蒸着層、及び第3の樹脂層を順次積層し、実施例1~12のガスバリア積層体(防湿紙)を得た。
また、紙基材として坪量50g/m2の紙間強化紙(天間特殊製紙株式会社製)表面上に、下記表4~表5に示す第1の樹脂層、第1の蒸着層、及び第2の樹脂層を順次積層し、比較例1~7のガスバリア積層体(防湿紙)を得た。
なお、用いた材料は以下のとおりである。
ケミパールS100:カルボキシル基の塩を含む溶液(三井化学製)
ケミパールS500:カルボキシル基の塩を含む溶液(三井化学製)
ケミパールV300:酢酸ビニル系ポリオレフィン樹脂を含む塗液(三井化学製)
【0045】
(比較例8)
従来品の防湿シートとして、片側にコロナ処理を施した30g/m2の紙間強化紙(天間特殊製紙株式会社製)のコロナ処理面同士を、Tダイ押出し機より押出した溶融したポリエチレン樹脂50μmでサンドラミネートを行い、比較例8の防湿シート(紙間強化紙/ポリエチレン/紙間強化紙)を作製した。
【0046】
(比較例9)
従来品の防湿シートとして、厚さ12μmのPETフィルム(東レ株式会社製)を用い、この片面に蒸着層として酸化アルミニウム(ALxOy)を電子線加熱方式の反応蒸着により厚さ20nmで製膜した。
次にこの蒸着面にポリビニルアルコール溶液を乾燥後に0.2g/m2となるようにグラビア印刷方式で塗布し、比較例9の防湿シートを作製した。
【0047】
<評価>
上記で作製した各実施例及び各比較例の防湿紙及び防湿シートについて、JIS Z 0208に準拠して透湿度を算出し、それぞれ透湿度の比較を行った。その結果を表1~表6に示す。
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
なお、各表に示した透湿度の単位は、「g/m2・24hr」である。
また、本実施例では、防湿紙及び防湿シートの透湿度が、1.5g/m2・24hr以下であれば、実際に防湿紙あるいは防湿シートとして使用した際に、室内での温度や湿度の変化による吸湿・放湿などが原因で発生する化粧板の反りを防止することができるため、「合格」とした。
一方、防湿紙及び防湿シートの透湿度が、1.5g/m2・24hr超であれば、実際に防湿紙あるいは防湿シートとして使用した際に、室内での温度や湿度の変化による吸湿・放湿などが原因で化粧板に反りが発生する可能性があるため、「不合格」とした。
【0055】
表1~表6の結果から明らかなように、各実施例の化粧板用裏面防湿紙は、各比較例の防湿シートと比べて、透湿度が低い結果が得られた。本発明の防湿紙は、蒸着層を備えた防湿層を設けたことにより、透湿度の性能向上が認められ、室内での温度や湿度の変化による吸湿・放湿などが原因で発生する化粧板の反りを従来品に比べて少なくする効果及びプラスチック材料の使用量を削減できる効果が期待できる。
【0056】
これにより本発明の課題である、両側の温湿度環境に大きな差がある場所で用いても、化粧板の反りを防止することができ、且つ環境面においても配慮された化粧板用裏面防湿紙を提供することが可能であることを検証することができた。
【符号の説明】
【0057】
1・・・紙基材
2・・・第1の樹脂層
3・・・第1の蒸着層
4・・・第2の樹脂層
5・・・第2の蒸着層
6・・・第3の樹脂層
7・・・接着用プライマー層
10・・化粧板用裏面防湿紙
20・・防湿層