(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123012
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】頭皮毛髪化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/36 20060101AFI20230829BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20230829BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20230829BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20230829BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
A61K8/36
A61Q5/00
A61K8/44
A61K8/41
A61Q5/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026822
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000108672
【氏名又は名称】タカラベルモント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】戸田 和成
(72)【発明者】
【氏名】本村 友希
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC072
4C083AC122
4C083AC182
4C083AC271
4C083AC272
4C083AC302
4C083AC581
4C083AC582
4C083AC642
4C083AC692
4C083AD201
4C083BB06
4C083DD06
4C083EE28
4C083EE29
(57)【要約】
【課題】ダメージを受けた毛髪に対して優れた仕上がりを付与できる頭皮毛髪化粧料を提供する。
【解決手段】成分(A)~(C)を含有し、pHが3.5以上6.5以下である、頭皮毛髪化粧料とする。成分(A)は、酢である。成分(B)は、カチオン性界面活性剤である。成分(C)は、アミノ酸およびアミノ酸誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)~(C)を含有し、pHが3.5以上6.5以下である、頭皮毛髪化粧料。
(A)酢
(B)カチオン性界面活性剤
(C)アミノ酸およびアミノ酸誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種
【請求項2】
前記成分(C)は、塩基性アミノ酸および塩基性アミノ酸誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の頭皮毛髪化粧料。
【請求項3】
前記頭皮毛髪化粧料は、ポリオキシアルキレンアルキルグルコシドをさらに含有している、請求項1または2に記載の頭皮毛髪化粧料。
【請求項4】
前記頭皮毛髪化粧料は、シリコーンを実質的に含有しない、請求項1~3のいずれか1項に記載の頭皮毛髪化粧料。
【請求項5】
洗浄後かつ第1トリートメント剤で処理した後の毛髪に使用するための第2トリートメント剤である、請求項1~4のいずれか1項に記載の頭皮毛髪化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭皮毛髪化粧料に関する。より具体的に本発明は、ダメージを受けた毛髪に対して優れた触感その他の仕上がりを付与できる頭皮毛髪化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
日常生活における紫外線照射、ヘアカラーおよびパーマ施術等の化学処理、並びに、ヘアアイロンおよびドライヤー等の熱を利用した物理処理によって、毛髪は、日常的に損傷を受けている。毛髪が損傷を受けることによって、毛髪が絡まりやすくなる。加えて、毛髪が損傷を受けることによって、毛髪の柔らかさ、まとまり感、指通り等の毛髪の仕上がりが悪化する。毛髪の損傷の例は、毛髪の表面のキューティクルの剥離、毛髪の内部のタンパク質の変性、および毛髪の内部の空洞化である。毛髪の内部の空洞化は、例えば毛髪の内部の脂質が流出することによって進行する。そこで、ダメージを受けた毛髪に対して、様々なヘアケア製品が開発されている。例えば、ヘアシャンプー、ヘアリンス、ヘアコンティショナー、洗い流すタイプのヘアトリートメント、および洗い流さないタイプのトリートメント等のヘアケア製品が提供されている。
【0003】
ダメージを受けた毛髪に対処するために、特定の化合物を含む毛髪化粧料が提案されている。例えば、特許文献1には、ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合を含む非水系毛髪化粧料が開示されている。特許文献2には、特定の架橋型シリコーンを含む毛髪化粧料が開示されている。特許文献3には、特定のアミノ変性シリコーンを含む毛髪化粧料が開示されている。特許文献4には、特定の両末端長鎖アルキル・側鎖アミノ変性オルガノポリシロキサンを含む毛髪化粧料が開示されている。
【0004】
特許文献5には、特定のカチオン性界面活性剤、高級アルコール、特定のモノエステル、および特定の多価アルコールを含む水中油型毛髪化粧料が開示されている。特許文献6には、揮発性炭化水素、特定のエステル、乳化剤、およびポリオールを含む乳化型毛髪化粧料が開示されている。
【0005】
特許文献7には、アスコルビン酸およびアスコルビン酸塩を含む毛髪用化粧料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5086763号
【特許文献2】特許第5127397号
【特許文献3】特許第5698528号
【特許文献4】特許第5732313号
【特許文献5】特開2018-58796号公報
【特許文献6】特許第6220154号
【特許文献7】特開2014-152168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1~4に開示された毛髪化粧料には、毛髪の触感を向上させるために、シリコーンが含まれている。しかし、毛髪表面へのシリコーンの付着によって、毛髪が硬くなったり、仕上がり後の手触り感が不自然になったりする。特許文献5~7に開示された毛髪化粧料では、毛髪および頭皮に対して自然な仕上がり感を付与することが試みられている。しかし、本発明者らの検討によると、絡まりやすい、指通りが悪い等のダメージを受けた毛髪に対する触感の向上は、十分とは言い難い。
【0008】
本発明者らは、毛髪化粧料が酢を含んでいることによって、毛髪にサラサラ感を付与できることを見出した。しかし、酢が含まれている毛髪化粧料による、ダメージを受けた毛髪に対するトリートメント効果は十分とは言い難い。本発明の目的は、ダメージを受けた毛髪に対しても優れた仕上がりを付与できる新たな頭皮毛髪化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
下記成分(A)~(C)を含有し、pHが3.5以上6.5以下である、頭皮毛髪化粧料、を提供する。
(A)酢
(B)カチオン性界面活性剤
(C)アミノ酸およびアミノ酸誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ダメージを受けた毛髪に対して優れた仕上がりを付与できる頭皮毛髪化粧料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を説明する。ただし、以下の説明は、本発明を特定の形態に限定するものではない。
【0012】
・成分(A)
成分(A)は、酢である。頭皮毛髪化粧料が成分(A)を含むことで、毛髪にサラサラ感を付与できる。
【0013】
酢は、例えば、酢酸を含む。酢酸は、発酵によって生成したものであってもよい。成分(A)は、酢酸を主成分として含んでいてもよい。「主成分」は、質量基準で最も多く含まれる成分を意味する。
【0014】
成分(A)は、例えば、穀物を原料として、糖化工程、アルコール発酵工程、および酢酸発酵工程を経て得られた酢酸を含む。糖化工程は、穀物に含まれるでんぷんを糖化して糖分を得る工程である。得られる糖分の例は、グルコール、フルクトース、およびショ糖である。アルコール発酵工程は、糖化工程で得られた糖分を、酵母等を用いたアルコール発酵によってアルコールに変換する工程である。酢酸発酵工程は、アルコール発酵工程で得られたアルコールを、酢酸菌等を用いた酢酸発酵によって酢酸を得る工程である。
【0015】
原料に使用される穀物の例は、米および大麦である。
【0016】
あるいは、成分(A)は、果実を原料として、アルコール発酵工程および酢酸発酵工程を経て得られた酢酸を含んでいてもよい。
【0017】
原料に使用される果実の例は、リンゴおよびブドウである。
【0018】
成分(A)は、食酢であってもよい。食酢の例は、醸造酢および合成酢である。醸造酢の例は、穀物酢および果実酢である。穀物酢の例は、米酢、黒酢、米黒酢、および大麦黒酢である。果実酢の例は、リンゴ酢およびブドウ酢である。
【0019】
成分(A)として、これらの化合物から選ばれる1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
頭皮毛髪化粧料の総質量に対する成分(A)の含有量は、例えば、0.05質量%~10質量%である。含有量は、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.3質量%以上、0.5質量%以上、さらには0.8質量%以上であってもよく、8.0質量%以下、5.0質量%以下、2.0質量%以下、さらには1.5質量%以下であってもよい。
【0021】
・成分(B)
成分(B)は、カチオン性界面活性剤である。成分(B)は、毛髪の柔らかさおよび毛先の広がりのおさまり感に寄与し得る。
【0022】
カチオン性界面活性剤の分子量は、例えば、10000未満である。カチオン性界面活性剤の分子量は、1000以下、800以下、700以下、さらには500以下であってもよく、100以上、200以上、さらには300以上であってもよい。
【0023】
カチオン性界面活性剤の例は、アルキル四級アンモニウム塩、ジアルキル四級アンモニウム塩、エーテル型四級アンモニウム塩、アルキルアミン塩、および脂肪酸アミドアミン塩である。
【0024】
アルキル四級アンモニウム塩は、例えば、下記式(1)で表される。
【0025】
R1-N+(R2)3・X- (1)
【0026】
式(1)中、R1は、直鎖または分岐鎖を有する炭素数12~24のアルキル基を表す。R2は、炭素数1~3のアルキル基を表す。X-は、ハロゲン原子または炭素数1~3のアルキル硫酸基を表す。X-は、好ましくはハロゲン原子であり、より好ましくはCl-である。
【0027】
アルキル四級アンモニウム塩の例は、ラウリルトリモニウムクロリド、セトリモニウムクロリド、セテアルトリモニウムクロリド、ステアルトリモニウムクロリド、ベヘントリモニウムクロリド、ラウリルトリモニウムブロミド、セトリモニウムブロミド、セテアルトリモニウムブロミド、ステアルトリモニウムブロミド、ベヘントリモニウムブロミド、ラウリルトリモニウムメトサルフェート、セトリモニウムメトサルフェート、セテアルトリモニウムメトサルフェート、ステアルトリモニウムメトサルフェート、ベヘントリモニウムメトサルフェート、ラウリルトリモニウムエトサルフェート、セトリモニウムエトサルフェート、セテアルトリモニウムエトサルフェート、ステアルトリモニウムエトサルフェート、およびベヘントリモニウムエトサルフェートである。
【0028】
ジアルキル四級アンモニウム塩は、例えば、下記式(2)で表される。
【0029】
(R3)2-N+(R4)2・X- (2)
【0030】
式(2)中、R3は、直鎖または分岐鎖を有する炭素数12~24のアルキル基を表す。R4は、炭素数1~3のアルキル基を表す。X-は、ハロゲン原子または炭素数1~3のアルキル硫酸基を表す。X-は、好ましくはハロゲン原子であり、より好ましくはCl-である。
【0031】
ジアルキル四級アンモニウム塩の例は、ジラウリルジモニウムクロリド、ジセチルジモニウムクロリド、ジセチルジモニウムクロリド、ジステアリルジモニウムクロリド、およびジココイルジモニウムクロリドである。
【0032】
エーテル型四級アンモニウム塩は、例えば、下記式(3)で表される。
【0033】
R5-O-A-N+(R6)2・X- (3)
【0034】
式(3)中、R5は、直鎖または分岐鎖を有する炭素数12~24のアルキル基を表す。R6は、炭素数1~3のアルキル基を表す。Aは、炭素数1~3のアルキレン基またはヒドロキシアルキレン基を表す。X-は、ハロゲン原子または炭素数1~3のアルキル硫酸基を表す。X-は、好ましくはハロゲン原子であり、より好ましくはCl-である。
【0035】
エーテル型四級アンモニウム塩の例は、ラウロキシプロピルトリモニウムクロリド、セトキシプロピルトリモニウムクロリド、セテアロキシプロピルトリモニウムクロリド、ステアロキシプロピルトリモニウムクロリド、ベヘノキシプロピルトリモニウムクロリド、オレオキシプロピルトリモニウムクロリド、ラウリルPGトリモニウムクロリド、セチルPGトリモニウムクロリド、セテアルPGトリモニウムクロリド、ステアリルPGトリモニウムクロリド、ベヘニルPGトリモニウムクロリド、オレイルPGトリモニウムクロリド、およびココイルPGトリモニウムクロリドである。
【0036】
脂肪酸アミドアミンは、例えば、下記式(4)で表される。
【0037】
R7-CONH-A-N-(R8)2 (4)
【0038】
式(4)中、R7は、直鎖または分岐鎖を有する炭素数11~23のアルキル基を表す。R8は、炭素数1~3のアルキル基を表す。Aは、炭素数1~3のアルキレン基またはヒドロキシアルキレン基を表す。
【0039】
脂肪酸アミドアミンの例は、ミリスチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、パルミチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド(ステアラミドプロピルジメチルアミン)、ベヘン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ミリスチン酸ジエチルアミノエチルアミド、パルミチン酸ジエチルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ベヘン酸ジエチルアミノエチルアミド、ミリスチン酸ジエチルアミノプロピルアミド、パルミチン酸ジエチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジエチルアミノプロピルアミド、およびベヘン酸ジエチルアミノプロピルアミドである。
【0040】
成分(B)として、これらの化合物から選ばれる1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
頭皮毛髪化粧料の総質量に対する成分(B)の含有量は、例えば、0.1質量%~10質量%である。含有量は、0.2質量%以上、0.5質量%以上、0.7質量%以上、1.0質量%以上、さらには1.5質量%以上であってもよく、8.0質量%以下、5.0質量%以下、さらには3.0質量%以下であってもよい。
【0042】
・成分(C)
成分(C)は、アミノ酸およびアミノ酸誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種である。成分(C)は、毛先の広がりのおさまり感に寄与する。
【0043】
アミノ酸は、塩基性官能基としてアミノ基を有し、かつ酸性官能基としてカルボキシ基を有する。アミノ酸は、1つの分子内に複数のアミノ基を有していてもよく、1つの分子内に複数のカルボキシ基を有していてもよい。アミノ酸は、好ましくは、α-アミノ酸である。アミノ酸は、D体であってもよく、L体であってもよく、これらの混合物(例えば、ラセミ体)であってもよい。アミノ酸は、好ましくは、L体である。
【0044】
アミノ酸は、アミノ酸の塩であってもよい。アミノ酸の塩の例は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン塩、または無機酸塩である。アルカリ金属塩の例は、ナトリウム塩、カリウム塩、およびリチウム塩である。アルカリ土類金属塩の例は、マグネシウム塩およびカルシウム塩である。無機酸塩の例は、塩酸塩である。
【0045】
アミノ酸は、特定の種類に限定されず、塩基性アミノ酸、酸性アミノ酸、中性アミノ酸、およびそれらの塩を用いることができる。
【0046】
塩基性アミノ酸は、1つの分子内において、アミノ基の数がカルボキシ基の数より多いアミノ酸を意味する。塩基性アミノ酸の例は、アルギニン、リシン、およびヒスチジンである。
【0047】
酸性アミノ酸は、1つの分子内において、複数のカルボキシ基を有するアミノ酸を意味する。詳細には、酸性アミノ酸とは、1つの分子内において、カルボキシ基の数がアミノ基の数より多いアミノ酸を意味する。酸性アミノ酸の例は、アスパラギン酸およびグルタミン酸である。
【0048】
中性アミノ酸とは、1つの分子内において、アミノ基の数がカルボキシ基の数と同じであるアミノ酸を意味する。中性アミノ酸の例は、脂肪族アミノ酸、オキシアミノ酸、含硫アミノ酸、芳香族アミノ酸、イミノ酸、および酢酸アミノ酸アミドである。脂肪族アミノ酸の例は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンである。オキシアミノ酸の例は、トレオニンおよびセリンである。含硫アミノ酸の例は、システイン、シスチン、およびメチオニンである。芳香族アミノ酸の例は、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンである。イミノ酸の例は、プロリンおよびヒドロキシプロリンである。酢酸アミノ酸アミドの例は、アスパラギンおよびグルタミンである。
【0049】
アミノ酸誘導体の例は、N-ヒドロキシアルキルアミノ酸、N-アシルアミノ酸、およびN-アシルアミノ酸エステルである。アミノ酸誘導体は、毛先の広がりのおさまり感をより向上させ得る。
【0050】
N-ヒドロキシアルキルアミノ酸は、アミノ酸に含まれるアミノ基と、アルコールとの縮合物である。アルコールは、ポリオールであってもよい。アルコールの例は、グリセリンおよびプロピレングリコールである。すなわち、N-ヒドロキシアルキルアミノ酸は、アミノ酸に含まれるアミノ基の少なくとも1つが、ヒドロキシアルキル基で修飾されたアミノ酸である。ヒドロキシアルキル基は、例えば炭素数1~10のアルキル基を有する。ヒドロキシアルキル基は、好ましくは炭素数1~6、より好ましくは炭素数1~4、さらに好ましくは炭素数1~3のアルキル基を有する。ヒドロキシアルキル基に含まれるアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
【0051】
N-ヒドロキシアルキルアミノ酸におけるアミノ酸の例は、アルギニンである。N-ヒドロキシアルキルアミノ酸は、N-ヒドロキシアルキルアミノ酸の塩であってもよい。N-ヒドロキシアルキルアミノ酸の塩の例は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン塩、または無機酸塩である。アルカリ金属塩の例は、ナトリウム塩、カリウム塩、およびリチウム塩である。アルカリ土類金属塩の例は、マグネシウム塩およびカルシウム塩である。無機酸塩の例は、塩酸塩である。
【0052】
N-ヒドロキシアルキルアミノ酸およびその塩の具体例は、ジヒドロキシプロピルアルギニンHClおよびPPG-2アルギニンである。
【0053】
N-アシルアミノ酸は、アミノ酸に含まれるアミノ基の少なくとも1つが、アシル基によりアシル化されたアミノ酸である。アシル基は、R9-CO-により表される。ここで、R9は、直鎖、分岐鎖、または環状構造を有する炭素数1~30のアルキル基またはアルケニル基を表す。R9の炭素数は、好ましくは7~19であり、より好ましくは11~17である。R9は、好ましくは炭素数11~17の直鎖アルキル基である。アシル基の例は、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、イソステアロイル基、およびオレオイル基である。N-アシルアミノ酸におけるアミノ酸の例は、アルギニン、グルタミン、グルタミン酸、アスパラギン酸、アラニン、サルコシン、およびグリシンである。
【0054】
N-アシルアミノ酸の具体例は、N-アセチルアルギニン、N-プロピオニルアルギニン、N-オクタノイルアルギニン、N-デカノイルアルギニン、N-ラウロイルアルギニン、N-ミリストイルアルギニン、N-パルミトイルアルギニン、N-ステアロイルアルギニン、N-ベヘノイルアルギニン、N-ヤシ油脂肪酸アシルアルギニン、N-パーム核油脂肪酸アシルアルギニン、およびN-牛脂脂肪酸アシルアルギニンである。
【0055】
N-アシルアミノ酸エステルは、N-アシルアミノ酸と、ステロール類および/または高級アルコールとのエステルである。ステロール類の例は、コレステロールおよびフィトステロールである。高級アルコールの例は、ベヘニルアルコールおよびオクチルドデカノールである。
【0056】
N-アシルアミノ酸エステルの具体例は、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステリル・2-オクチルドデシル)、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステリル・ベヘニル・2-オクチルドデシル)、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(コレステリル・オクチルドデシル)、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(2-オクチルドデシル)、N-ラウロイルサルコシンイソプロピル、およびN-ラウロイル-L-グルタミン酸ジオクチルドデシルである。
【0057】
成分(C)として、これらの化合物から選ばれる1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
毛先の広がりのおさまり感をより向上させる観点から、成分(C)は、塩基性アミノ酸または塩基性アミノ酸誘導体であってもよい。すなわち、成分(C)は、塩基性アミノ酸および塩基性アミノ酸誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。成分(C)は、より好ましくはアルギニン、リシン、およびヒスチジン並びにこれらの誘導体であり、さらに好ましくはアルギニンおよびアルギニン誘導体である。
【0059】
頭皮毛髪化粧料の総質量に対する成分(C)の含有量は、例えば、0.01質量%~10質量%である。含有量は、0.05質量%以上、0.10質量%以上、0.15質量%以上、さらには0.25質量%以上であってもよく、8.0質量%以下、5.0質量%以下、3.0質量%以下、1.0質量%以下、さらには0.5質量%以下であってもよい。
【0060】
・pH
頭皮毛髪化粧料のpHは、3.5以上6.5以下である。頭皮毛髪化粧料のpHが3.5以上であることによって、毛髪のサラサラ感が向上し、その結果、毛髪が柔らかく感じることができる。頭皮毛髪化粧料のpHが6.5以下であることによって、毛髪のツヤ感が向上したり、毛先が広がりにくくなったりする。毛髪の仕上がりを向上させる観点から、頭皮毛髪化粧料のpHは、4.0以上6.0以下であってもよい。なお、pHは、厳密には、25℃における測定値を採用する。
【0061】
頭皮毛髪化粧料は、ポリオキシアルキレンアルキルグルコシドをさらに含有していてもよい。ポリオキシアルキレンアルキルグルコシドが含まれていることによって、毛髪の柔らかさ、毛先の広がりのおさまり感、およびすすぎ時のうるおい感をより向上させることができる。
【0062】
ポリオキシアルキレンアルキルグルコシドは、例えば、アルキルグルコシドに、ポリオキシアルキレンを付加したものである。アルキルグルコシドにおけるアルキル基の炭素数は、例えば、1以上4以下である。アルキルグルコシドにおけるアルキル基は、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、およびイソプロピル基であり、より好ましくはメチル基である。アルキレンオキサイドは、好ましくはエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドであり、より好ましくはエチレンオキサイドである。アルキレンオキサイドの平均付加モル数は、例えば、1~50である。アルキレンオキサイドの平均付加モル数は、5以上、7以上、さらには10以上であってもよく、30以下、25以下、さらには20以下であってもよい。
【0063】
ポリオキシアルキレンアルキルグルコシドの例は、ポリオキシエチレン(10~20)メチルグルコシドおよびポリオキシプロピレン(10~20)メチルグルコシドである。なお、括弧内の数値は、エチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドの平均付加モル数を示す。
【0064】
ポリオキシアルキレンアルキルグルコシドの具体例は、ポリオキシエチレン(10)メチルグルコシド(メチルグルセス-10)、ポリオキシエチレン(20)メチルグルコシド(メチルグルセス-20)、ポリオキシプロピレン(10)メチルグルコシド(PPG-10メチルグルコース)、およびポリオキシプロピレン(20)メチルグルコシド(PPG-20メチルグルコース)である。ポリオキシアルキレンアルキルグルコシドは、好ましくは、ポリオキシエチレン(10~20)メチルグルコシドであり、より好ましくは、メチルグルセス-10である。
【0065】
頭皮毛髪化粧料の総質量に対するポリオキシアルキレンアルキルグルコシドの含有量は、例えば、0.1質量%~10質量%である。含有量は、0.2質量%以上、0.5質量%以上、さらには0.7質量%以上であってもよく、8質量%以下、5質量%以下、2質量%以下、さらには1.5質量%以下であってもよい。
【0066】
頭皮毛髪化粧料には、高級アルコールがさらに含まれていてもよい。高級アルコールが含まれていることによって、頭皮毛髪化粧料は、適切な粘度を有することができる。これにより、頭皮毛髪化粧料を毛髪へ均一に塗布しやすくなるので、より毛髪に優れた仕上がりを付与できる。加えて、高級アルコールが含まれることで、製造時の安定性と長期間の安定性とに優れる乳化物が得られやすい。
【0067】
高級アルコールの炭素数は、特定の値に限定されず、8以上30以下であってもよく、14以上22以下であってもよい。高級アルコールの炭素鎖は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。高級アルコールは、飽和アルコールであってもよく、不飽和アルコールであってもよい。高級アルコールの例は、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セタノール(セチルアルコール)、ステアリルアルコール、セテアリルアルコール(セトステアリルアルコール)、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、および硬化ナタネ油アルコール(水添ナタネ油アルコール)である。
【0068】
高級アルコールとして、これらの高級アルコールから選ばれる1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0069】
頭皮毛髪化粧料の総質量に対する高級アルコールの含有量は、例えば、0.1質量%~20質量%である。含有量は、0.5質量%以上、1.0質量%以上、2.0質量%以上、さらには2.5質量%以上であってもよく、18質量%以下、15質量%以下、12質量%以下、10質量%以下、8.0質量%以下、さらには5.0質量%以下であってもよい。
【0070】
頭皮毛髪化粧料は、シリコーンを実質的に含んでいなくてもよい。「実質的に含んでいない」とは、微量の混入を許容する趣旨であり、頭皮毛髪化粧料の総質量に対して、2.0質量%未満、さらには1.0質量%未満であり、特に0.5質量%未満であることを意味する。一般的に、シリコーンは、その高い吸着性のため、毛髪の状態や髪質によっては、毛髪表面に過剰に付着しうる。その結果、毛髪に、すべり性やコート感は付与できるものの、自然な手触り感を損ねたり、頭皮がべたついたりする。頭皮毛髪化粧料がシリコーンを実質的に含んでいなくても、自然な手触り感を得ることができ、かつ、頭皮がべたつきにくい。加えて、頭皮毛髪化粧料がシリコーンを実質的に含んでいなくても、ダメージを受けた毛髪に優れた触感その他の仕上がりを付与できる。
【0071】
頭皮毛髪化粧料の剤型は、特定の剤型に限定されず、公知の剤型を採用できる。好ましい剤型は、ゲル状、溶液状、クリーム状、または乳化物(ミルク性状)である。
【0072】
次に、頭皮毛髪化粧料による、頭皮および毛髪の処理方法について説明する。
【0073】
頭皮毛髪化粧料は、例えば、洗髪後かつトリートメント剤(第1トリートメント剤)で処理した後の毛髪に使用する、トリートメント剤(第2トリートメント剤)として有用である。より詳細には、本発明の一形態に係る頭皮毛髪処理方法は、本発明による頭皮毛髪化粧料を、第2トリートメント剤として、洗髪後かつ第1トリートメント剤で処理した後の毛髪に接触させること、を含む。この接触は、毛髪から第1トリートメント剤を除去してから実施してもよいが、第1トリートメント剤を除去することなく、具体的には洗い流すことなく、実施すると十分な効果が得られやすい。また、本形態の頭皮毛髪処理方法は、第2トリートメント剤を第1トリートメント剤と共に毛髪から、例えば水洗により除去すること、をさらに含んでいてもよい。
【0074】
本発明による頭皮毛髪処理方法に使用できる頭皮毛髪化粧料に含まれる成分、特性等は上記したとおりである。
【0075】
頭皮毛髪化粧料は、洗髪後かつ第1トリートメント剤で処理した後の毛髪に使用される。第1トリートメント剤は、リンス、コンディショナー等の公知のヘアトリートメント剤であればよく、特定の種類に限定されない。第1トリートメント剤は、例えば、カチオン性界面活性剤を含んでいてもよく、さらに高級アルコールおよび油分を含んでいてもよい。第1トリートメント剤は、酢を含んでいなくてもよい。第1トリートメント剤は、洗い流すタイプのトリートメント剤であってもよく、洗い流さないタイプのトリートメント剤であってもよい。
【0076】
頭皮毛髪化粧料を毛髪および/または頭皮に接触させる方法は、特定の方法に限定されず、頭皮毛髪化粧料を手で直接毛髪に塗布してもよく、コーム、ブラシ、刷毛、スプレー等の塗布器具を用いて毛髪および/または頭皮に塗布してもよい。頭皮毛髪化粧料は、洗髪後かつトリートメント剤で処理した後の毛髪に塗布すればよく、乾燥した毛髪に対して塗布してもよく、濡れた毛髪に対して塗布してもよい。
【0077】
頭皮毛髪化粧料と頭皮および毛髪との接触時間は、特定の時間に限定されず、例えば、1分~10分である。あるいは、頭皮毛髪化粧料を頭皮および毛髪に塗布した後、すぐに頭皮毛髪化粧料を毛髪から除去してもよい。
【0078】
頭皮毛髪化粧料の除去は、例えば、水洗により実施できる。
【実施例0079】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0080】
(頭皮毛髪化粧料の調製)
表1~4の組成に従って、実施例および比較例に係る頭皮毛髪化粧料を調製した。表中の「成分」の欄における(A)~(C)の表記は、それぞれ、成分(A)、成分(B)、および成分(C)に対応する。表中の単位は、全て質量%である。各表の「成分」の欄における「-」の表記は、当該成分を含有していないことを意味する。各表の「成分」の欄における「PQ-10」は、ポリクオタニウム-10を意味する。各表の「成分」の欄における「BG」は、1,3-ブチレングリコールを意味する。
【0081】
実施例および比較例において、酢は、天然由来の酵母を用いたアルコール発酵および酢酸菌を用いた酢酸発酵によって得られたものを使用した。この酢には、リンゴ酢が含まれていた。
【0082】
(ダメージ処理毛束の作製)
株式会社ユーカリジャパン製人毛黒髪(YK-1B#10’’)を、ブリーチ剤(タカラベルモント社製「エドル ブリーチ」)を用いてブリーチ処理を行い、水洗した。その後、この人毛黒髪を、濃度10質量%のラウレス硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、その後乾燥させる工程を3回繰り返して、ダメージ処理毛束を作製した。
【0083】
(毛束における触感等の評価)
十分にお湯で予洗いしたダメージ処理毛束を、シャンプーを用いて洗浄した。その後、この毛束に、市販のヘアトリートメントを塗布した。ヘアトリートメントを塗布した毛束を洗浄することなく、実施例および比較例に係る頭皮毛髪化粧料を塗布した後、毛束を水洗した。その後、毛束をドライヤーで乾燥させた。乾燥後の毛束について、サラサラ感、ツヤ感、柔らかさ、および毛先の広がりのおさまり感を、それぞれ「サラサラ感」、「ツヤ感」、「柔らかさ」、および「おさまり感」として官能評価した。これらの官能評価は、専門評価者10名によって行われた。各評価項目について、「大変良い」場合を5、「良い」場合を4、「ふつう」の場合を3、「あまりよくない」場合を2、「悪い」場合を1と評価した。各評価項目について、専門評価者10名の平均点が、4.0以上であった場合を「◎」、3.0以上4.0未満であった場合を「○」、2.0以上3.0未満であった場合を「△」、2.0未満であった場合を「×」と評価した。結果を表1~4に示す。
【0084】
(人の毛髪における触感等の評価)
専門評価者が、人の毛髪をシャンプーで洗浄した。その後、この人の毛髪に、ヘアトリートメントを塗布した。ヘアトリートメントを塗布した人の毛髪を洗浄することなく、実施例および比較例に係る頭皮毛髪化粧料を頭皮および毛髪に塗布した後、頭皮および毛髪を水洗した。このとき、すすぎ時の毛髪が指に引っかかることなく潤いを感じる心地よい滑りの感触を「すすぎ時の滑らかな潤い感」として官能評価した。頭皮および毛髪を水洗した後、ドライヤーで毛髪を乾燥させた。乾燥後の頭皮のべたつきのなさおよび毛髪の根元の立ち上がりの良さを、それぞれ「仕上がり時の頭皮のべたつきのなさ」および「仕上がり時の根元の立ち上がり」として官能評価した。これらの官能評価は、専門評価者10名によって行われた。各評価項目について、「大変良い」場合を5、「良い」場合を4、「ふつう」の場合を3、「あまりよくない」場合を2、「悪い」場合を1と評価した。各評価項目について、専門評価者10名の平均点が、4.0以上であった場合を「◎」、3.0以上4.0未満であった場合を「○」、2.0以上3.0未満であった場合を「△」、2.0未満であった場合を「×」と評価した。結果を表1~4に示す。
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
各実施例では、頭皮毛髪化粧料が成分(A)を含んでいるので、毛髪にサラサラ感を付与できた。また、各実施例では、サラサラ感に加えて、優れた仕上がりを毛髪に付与できる頭皮毛髪化粧料を得ることができた。