(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123025
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】表示灯
(51)【国際特許分類】
F21V 14/02 20060101AFI20230829BHJP
G08B 5/00 20060101ALI20230829BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20230829BHJP
【FI】
F21V14/02
G08B5/00 L
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026843
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002169
【氏名又は名称】彩雲弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】堀越 哲也
(72)【発明者】
【氏名】金子 貴洋
【テーマコード(参考)】
5C083
【Fターム(参考)】
5C083AA02
5C083CC20
5C083DD02
5C083DD05
5C083JJ24
(57)【要約】 (修正有)
【課題】左右側方への配光の調整が可能な表示灯を提供する。
【解決手段】発光表示部2aが発光素子6を光源として発光し、防災機器の位置を表示する表示灯1であって、発光素子6の光軸6Xの、発光表示部2aの正面方向2Fに対する左側又は右側への傾斜角度を調整可能にする傾斜角度調整手段9が設けられると共に、発光素子6の光度を調整可能にする光度調整手段が設けられることを特徴とする。傾斜角度調整手段9は、発光素子6が実装される発光素子基板7の傾斜角度を調整可能にするものとすることができ、光度調整手段は、発光素子6と電気的に接続される抵抗とすることができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光表示部が発光素子を光源として発光し、防災機器の位置を表示する表示灯であって、
前記発光素子の光軸の、前記発光表示部の正面方向に対する左側又は右側への傾斜角度を調整可能にする傾斜角度調整手段が設けられると共に、前記発光素子の光度を調整可能にする光度調整手段が設けられることを特徴とする表示灯。
【請求項2】
前記傾斜角度調整手段は、前記発光素子が実装される発光素子基板の傾斜角度を調整可能にするものであることを特徴とする請求項1に記載の表示灯。
【請求項3】
前記傾斜角度調整手段は、前記発光素子基板を、その傾斜角度を調整可能に固定する固定手段か、又は、前記発光素子基板の固定部分に挿脱されて、前記発光素子基板の傾斜角度を調整可能にする調整部材であることを特徴とする請求項2に記載の表示灯。
【請求項4】
前記光度調整手段は、前記発光素子と電気的に接続される抵抗であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の表示灯。
【請求項5】
前記光度調整手段は、工具挿通口を介して挿通される工具によって操作可能であることを特徴とする請求項4に記載の表示灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、防災機器の位置を表示する表示灯に関する。
【背景技術】
【0002】
消火栓設備の表示灯、非常警報設備の表示灯、自動火災報知設備の表示灯等の各種防災設備には、防災機器の位置表示用の表示灯が設けられる。表示灯は、発光素子を光源として発光表示部が発光し、防災機器の位置を表示する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
表示灯は、トンネル(道路トンネル等)用の防災設備にも設けられる。具体的には、車道脇(監査路上等)等に設置される消火栓装置や消火器箱等の防災機器の筐体等に設けられる。
【0005】
トンネル用の防災設備は、車道を走行する車両に乗る人から表示灯を視認できる必要があり、左右側方からの視認性が求められる。トンネルは車両の走行方向にカーブしていることがあるが、表示灯の左右側方への配光がカーブに合っていないと、左右側方からの視認性が悪くなる。しかしながら、従来、表示灯の左右側方への配光は、可変ではなく、トンネルのカーブ等の設置条件に対応して調整することができなかった。
【0006】
この発明は、前記の事情に鑑み、左右側方への配光の調整が可能な表示灯を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、発光表示部が発光素子を光源として発光し、防災機器の位置を表示する表示灯であって、前記発光素子の光軸の、前記発光表示部の正面方向に対する左側又は右側への傾斜角度を調整可能にする傾斜角度調整手段が設けられると共に、前記発光素子の光度を調整可能にする光度調整手段が設けられることを特徴とする表示灯、である。
【0008】
この発明において、前記傾斜角度調整手段は、前記発光素子が実装される発光素子基板の傾斜角度を調整可能にするものとすることができる。前記傾斜角度調整手段は、前記発光素子基板を、その傾斜角度を調整可能に固定する固定手段か、又は、前記発光素子基板の固定部分に挿脱されて、前記発光素子基板の傾斜角度を調整可能にする調整部材とすることができる。前記発光素子基板は、前記発光表示部の背面側に、前記発光表示部の中心軸を間に離間して左右に位置すると共に、前記発光素子の実装面側が前記発光表示部の中心軸側に向かいつつ、前記発光表示部の背面側に向かう向きで、前記発光表示部の正面方向に対して左側又は右側に傾斜する配置で設けられるものとすることができる。前記光度調整手段は、前記発光素子と電気的に接続される抵抗とすることができる。前記光度調整手段は、工具挿通口を介して挿通される工具によって操作可能とすることができる。
【発明の効果】
【0009】
この発明においては、発光素子の光軸の、発光表示部の正面方向に対する左側又は右側への傾斜角度を調整可能にする傾斜角度調整手段と、発光素子の光度を調整可能にする光度調整手段によって、発光素子の光の左右側方への角度や光度を調整することができ、左右側方への配光を調整することができる。
【0010】
したがって、この発明によれば、左右側方への配光の調整が可能な表示灯を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】この発明の表示灯の実施形態の一例を示したものであり、表示灯全体の正面図(前面側)である。
【
図4】同上の、表示灯全体の拡大断面図(
図1のA-A線部)である。
【
図5】同上の、本体背面側に取り付けられる背面カバーを外した状態の背面図である。
【
図7】同上の表示灯が設けられる防災機器の一例を示したものであり、トンネル用の消火栓装置の、表示灯が設けられる筐体前面側の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の表示灯の実施形態について、
図1乃至7を参照しつつ、表示灯1として説明する。なお、この発明の表示灯は、消火栓設備の表示灯、非常警報設備の表示灯、自動火災報知設備の表示灯等、各種防災機器の位置表示用の表示灯として用いることができるものである。
【0013】
ここで、この発明の表示灯を説明するのに用いている「前」「後(背)」「左」「右」等の位置や方向等を示す語は、表示灯の設置状態における位置や方向に従って用いているものである。
【0014】
[全体構成]
表示灯1は、カバー2と、カバー2が前部に取り付けられる本体3を備え(
図1乃至6参照)、各種防災機器に設けられて、カバー2が有する発光表示部2a(詳細は後記で説明)が本体3内に設けられるLED素子6(詳細は後記で説明)の光を光源として発光し、各種防災機器の位置を表示する。
【0015】
なお、表示灯1は、カバー2と共に本体3の前部に取り付けられる前面パネル4と、本体3の背面側に取り付けられる背面カバー5をさらに備えている(
図1乃至6参照)。
【0016】
[発光表示部]
カバー2は、前面パネル4の開口4aから外部に露出する、正面視円形状の発光表示部2aを有する(
図1、4及び6参照)。発光表示部2aは、透光性を有しており、前記の通り、本体4内に設けられるLED素子6の光を光源として発光する。
【0017】
表示灯1は、より詳細には、発光表示部2aの前面側が外部に露出する状態で、各種防災機器の、例えば筐体前面等に設けられる。
【0018】
なお、発光表示部2aは、図示の例の場合、前面がフラットな面をなすものとしているが(
図4参照)、前面が凸の曲面をなして前方に突出するものや、反対に、凹の曲面をなして後方へ凹むような形状としてもよい。
【0019】
[発光素子、発光素子基板]
・LED素子、LED素子基板
表示灯1は、発光表示部2aの発光の光源となるLED素子6(発光素子の一例)を複数備える(
図4及び6参照)。LED素子6は、LED素子基板7(発光素子基板の一例)に実装された状態で本体3内に設けられ、発光表示部2aの背面側後方の位置から光を放射して発光表示部2aを発光させる。
【0020】
・傾斜配置、左右配置
LED素子6は、光軸6Xが発光表示部2aの中心軸2Xに平行な正面方向2Fに対して左側又は右側に傾斜して進行する配置で設けられる(
図4参照)。LED素子基板7は、実装されるLED素子6の光軸6Xがそのように傾斜して進行することになる配置で設けられる。
【0021】
LED素子基板7の配置としては、例えば、図示の例のように、発光表示部2aの背面側後方に、本体3内部に収められるようにして2枚のLED素子基板7が発光表示部2aの中心軸2Xを間に離間して左右に位置すると共に、LED素子6の実装面が発光表示部2aの中心軸2X側に向かいつつ、発光表示部2aの背面側に向かう向きで、基板自体が発光表示部2aの正面方向2Fに対して左側又は右側に傾斜する配置で設けられるものとすることができる(
図4参照)。
【0022】
なお、LED素子基板7の配置としては、図示は省略するが、2枚のLED素子基板7を発光表示部2aの中心軸を間に左右に背面合わせにして、LED素子6の実装面側が左右側方に向かいつつ、発光表示部2aの背面側に向かう向きで、基板自体が発光表示部2aの正面方向2Fに対して左側又は右側に傾斜するものとしてもよい。
【0023】
[傾斜角度調整手段]
表示灯1は、LED素子6の光軸6Xの発光表示部2aの正面方向2Fに対する左側又は右側への傾斜角度を調整する傾斜角度調整手段(例えば、後記で説明するLED素子基板7の固定部8に設けられるシム調整部9)を備える。
【0024】
表示灯1は、そのような傾斜角度調整手段を備えることにより、設置環境に対応して適宜、LED素子6の光の左右側方への角度を調整することができ、左右側方への配光を調整することができる。
【0025】
LED素子6の光軸6Xの傾斜角度調整手段としては、LED素子基板7自体の、発光表示部2aの正面方向2Fに対する左側又は右側への傾斜角度の調整手段とすることができる。
【0026】
例えば、図示の例の場合、LED素子基板7は固定部8により本体3内の底壁3a上に前記のような傾斜した姿勢で固定されるが、その固定部8にLED素子基板7の傾斜角度の調整手段として、シム(スペーサ)板9aの挿脱によりLED素子基板7の、発光表示部2aの正面方向2Fに対する左側又は右側への傾斜角度を調整可能なシム調整部9が設けられるものとしている(
図4及び6参照)。図示の例では、シム調整部9は、基板を支える傾斜面を有する断面三角形状であって、本体3の底壁3aにそれぞれ左右に2つ設けられる。
【0027】
なお、シム調整部9に代わる傾斜角度調整手段としては、例えば、固定部8自体をLED素子基板7の、発光表示部2aの正面方向2Fに対する左側又は右側への傾斜角度を調整可能なブラケット(トルクヒンジ等)等とすることができる。
【0028】
LED素子基板7の好ましい傾斜角度について、表示灯1は、表示灯1の前面に位置する車道を走行する車両の運転手の位置から最も視認されやすい。具体的には、正面方向2Fを基準に、光軸6Xが60~85度の方向を向く範囲の位置が、最も表示灯1が視認される位置であり、その範囲の角度に向かってLED素子6の光が出光されることで、視認者である運転手は表示灯1を見つけやすくなり、側方からの視認性が向上するといえる。つまり、光軸6Xが、正面方向2Fを基準に60~85度傾斜するように、LED素子基板7を傾斜させて配置するのが好ましい。また、傾斜角度の調整手段としてシム(スペーサ)板9aを用いる場合は、2~3枚設けることが好ましい。
【0029】
[光度調整手段]
また、表示灯1は、前記の傾斜角度調整手段に加えて、LED素子6の光度を調整する光度調整手段(例えば、後記で説明する可変抵抗器10)を備える。
【0030】
表示灯1は、そのような光度調整手段を備えることにより、例えば設置されるトンネルの照度等、設置環境に対応して適宜、LED素子6の光度を、全灯消灯しない範囲で調整することができ、左右側方への配光を調整することができる。
【0031】
また、視認者の眩しさを低減する効果もある。例えば、前述の視認性の良い方向に向かって、LED素子6が発光した場合、運転手は表示灯1を見つけやすくなる一方で、光軸6Xの延長線上から視認した場合は眩しさを感じる可能性がある。そこで、光度調整手段によって、表示灯1が全灯消灯しない範囲で、LED素子6の光度を調整することができる。
【0032】
光度調整手段としては、例えば、図示の例のように、本体3内部に設けられる、LED素子6と電気的に接続される可変抵抗器10(抵抗の一例)を用いることができる(
図6参照)。可変抵抗器10は、その操作部10a(
図5参照)を操作して抵抗値を変えることにより、LED素子6の光度を調整することができる。
【0033】
本体3には、可変抵抗器10の操作部10aをドライバ等の工具を使用して外部から操作可能にする工具挿通口3bが設けられる(
図5及び6参照)。工具挿通口3bは、図示の例の場合、本体3の底壁3a上に取り付けられる可変抵抗器10の操作部10aの位置に対応し、本体3の底壁3aを貫通して設けられる(
図5及び6参照)。背面カバー5は、そのような工具挿通口3bが設けられる本体3の後部を覆うように背面側に取り付けられて、その防水カバー等として機能する(
図2乃至4及び6参照)。
【0034】
なお、可変抵抗器10は、図示の例の場合、左右のLED素子基板7に対し、1つが共用されるものとしているが、別々に設けられるものとして、左右のLED素子基板7にそれぞれ実装されるLED素子6の光度を別々に調整可能にするようにしてもよい。
【0035】
可変抵抗器10に代わる光度調整手段としては、例えば、ディップスイッチやロータリースイッチを用いて固定抵抗を切替える方法が考えられる。電流値を規定する固定抵抗を切替えることで、光度を調整することが可能である。これらのスイッチは固定抵抗の付近等に設置され、光度を複数段階にわたって変更することができる。また、前述のスイッチを用いて、ダイオード又はツェナーダイオードの接続数を切替えることで、LED6への印加電圧を落とす方法も考えられる。さらに、マイコン、スイッチ等を搭載した基板を追加し、スイッチに応じてLEDの発光電流をマイコン側で切替える方法も考えられる。
【0036】
[表示灯設置の具体例]
図7は、トンネル用の消火栓設備の消火栓装置11を示したものである。表示灯1は、そのような消火栓装置11の表示灯として用いることができるものである。
【0037】
消火栓装置11の筐体は、消火用ホース等を内蔵し、前面側が車道側に面する向きで車道脇(監査路上等)に設置される。表示灯1は、消火栓装置11の筐体前面に発光表示部2aが前方に正対しつつ、外部に露出する状態で取り付けられて設けられる。
【0038】
トンネルは、車両の走行方向にカーブしていることがある。表示灯1の左右側方への配光がカーブに合っていないと、左右側方からの視認性が悪くなってしまう。しかしながら、表示灯1は、前記の通り、傾斜角度調整手段(例えばシム調整部9)及び/又は光度調整手段(例えば可変抵抗器10)によって、LED素子6の光の側方への角度を調整することができ、左右側方への配光を調整することができる。
【0039】
したがって、表示灯1によれば、設置対象のトンネルがカーブしていたとしても、そのカーブに対応して適宜、左右側方への配光を調整することができ、左右側方からの視認性が悪くなるのを防ぐことができる。
【0040】
[構成の変更例]
以上、この発明の実施形態について、
図1乃至7を参照しつつ説明したが、具体的な構成は、上記の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれるものである。
【0041】
例えば、本体3に設けられる固定部8について、基板挿入のためのガイド壁(図示なし)を複数設けることにより、LED素子基板7を任意の位置で挿入するようにしてもよい。また、LED素子基板7をフレキシブル基板とすることで、湾曲させて基板を配置したり、より細かく角度調整をして配置したりすることで、発光表示部2aの視認性をよりよくする配置としてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1:表示灯 2:カバー 2a:発光表示部 2X:中心軸
2F:正面方向 3:本体 3a:底壁 3b:工具挿通口
4:前面パネル 4a:開口 5:背面カバー
6:LED素子 6X:光軸 7:LED素子基板 8:固定部
9:シム調整部 10:可変抵抗器 11:消火栓装置(トンネル用)