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特開2023-123029分析装置、分析方法、及び分析プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123029
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】分析装置、分析方法、及び分析プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0537 20210101AFI20230829BHJP
【FI】
A61B5/0537
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026849
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000133179
【氏名又は名称】株式会社タニタ
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 真司
(74)【代理人】
【識別番号】100169199
【弁理士】
【氏名又は名称】石本 貴幸
(72)【発明者】
【氏名】山田 有紀
(72)【発明者】
【氏名】児玉 美幸
(72)【発明者】
【氏名】酒井 良雄
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA06
4C127GG15
4C127JJ03
4C127LL13
(57)【要約】
【課題】 被測定者が摂取した成分をより正確に特定できる、分析装置、分析方法、及び分析プログラムを提供する。
【解決手段】 分析装置10は、被測定者の身体に装着可能とされ、一例としてリストバンド状である。分析装置10は、被測定者に接触する複数の電極部20を用いた測定結果に基づいて、被測定者のBIを算出し、人の摂取成分に応じたBIの時間変化を示す参照情報と算出したBIの時間変化とに基づいて、被測定者による摂取成分を判定する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者に接触する複数の電極部を用いた測定結果に基づいて、前記被測定者の電気抵抗を算出する算出手段と、
人が摂取した成分に応じた前記電気抵抗の時間変化を示す参照情報と前記算出手段によって算出された前記電気抵抗の時間変化とに基づいて、前記被測定者が摂取した成分を判定する判定手段と、
を備える分析装置。
【請求項2】
被測定者に接触する複数の電極部を用いた測定結果に基づいて、前記被測定者の電気抵抗を算出する算出手段と、
人が摂取した成分に応じた前記電気抵抗の時間変化を示す参照情報と前記算出手段によって算出された前記電気抵抗の時間変化とに基づいて、特定の成分を前記被測定者が摂取したか否かを判定する判定手段と、
を備える分析装置。
【請求項3】
前記参照情報は、前記成分であるタンパク質、脂質、糖質を人が摂取した場合における前記成分毎の前記電気抵抗の時間変化を示す第1参照情報であり、
前記判定手段は、前記算出手段によって算出された前記電気抵抗の時間変化と前記第1参照情報が示す前記成分毎の時間変化とに基づいて、前記被測定者が摂取した前記成分を判定する、請求項1又は請求項2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記第1参照情報は、前記成分であるタンパク質、脂質、糖質の摂取量と前記電気抵抗が前記成分の摂取前に戻るまでの時間との関係を含み、
前記判定手段は、前記算出手段によって算出された前記電気抵抗が前記成分の摂取前に戻るまでの時間と前記第1参照情報とに基づいて、前記被測定者が摂取した前記成分の量を判定する、請求項3に記載の分析装置。
【請求項5】
1日以上における前記被測定者の体組成の変化に基づいて、前記判定手段によって判定された前記成分の量を補正する補正手段を備える、請求項4に記載の分析装置。
【請求項6】
前記第1参照情報は、前記被測定者がタンパク質、脂質、又は糖質を摂取してから所定時間内における前記電気抵抗の時間変化を取得することで生成された情報である、請求項3から請求項5の何れか1項に記載の分析装置。
【請求項7】
前記被測定者の体温を取得する体温取得手段を備え、
前記第1参照情報は、タンパク質、脂質、糖質を人が摂取した場合における前記成分毎の前記体温の時間変化を含み、
前記判定手段は、前記体温取得手段によって取得された前記体温と前記算出手段によって算出された前記電気抵抗との組み合わせと前記第1参照情報とに基づいて、前記被測定者が摂取した前記成分を判定する、請求項3から請求項6の何れか1項に記載の分析装置。
【請求項8】
前記被測定者の体温を取得する体温取得手段を備え、
前記判定手段は、前記体温取得手段によって取得された前記体温の時間変化と前記算出手段によって算出された前記電気抵抗の時間変化との関連性と前記参照情報とに基づいて、前記被測定者の身体状態を判定する、請求項1又は請求項2に記載の分析装置。
【請求項9】
前記参照情報は、前記電気抵抗の上昇よりも前に前記体温が上昇し、水分の摂取によって前記電気抵抗と共に前記体温が下降することを示す第2参照情報である、請求項8に記載の分析装置。
【請求項10】
前記参照情報は、前記体温の時間変化が一定である一方で、前記電気抵抗が上昇した後に下降することを示す第3参照情報である、請求項8に記載の分析装置。
【請求項11】
前記判定手段による判定結果に応じて、前記被測定者に対して健康を維持するためのアドバイスを導出するアドバイス導出手段を備える、請求項1から請求項10の何れか1項に記載の分析装置。
【請求項12】
前記複数の電極部は、前記被測定者の身体に装着可能とされる、請求項1から請求項11の何れか1項に記載の分析装置。
【請求項13】
被測定者に接触する複数の電極部を用いた測定結果に基づいて、前記被測定者の電気抵抗を算出する第1工程と、
人が摂取した成分に応じた前記電気抵抗の時間変化を示す参照情報と前記第1工程によって算出した前記電気抵抗の時間変化とに基づいて、前記被測定者が摂取した成分を判定する第2工程と、
を有する分析方法。
【請求項14】
コンピュータを、
被測定者に接触する複数の電極部を用いた測定結果に基づいて、前記被測定者の電気抵抗を算出する算出手段と、
人が摂取した成分に応じた前記電気抵抗の時間変化を示す参照情報と前記算出手段によって算出された前記電気抵抗の時間変化とに基づいて、前記被測定者が摂取した成分を判定する判定手段と、
をして機能させる分析プログラム。
【請求項15】
被測定者に接触する複数の電極部を用いた測定結果に基づいて、前記被測定者の電気抵抗を算出する第1工程と、
人が摂取した成分に応じた前記電気抵抗の時間変化を示す参照情報と前記第1工程によって算出された前記電気抵抗の時間変化とに基づいて、特定の成分を前記被測定者が摂取したか否かを判定する第2工程と、
を有する分析方法。
【請求項16】
コンピュータを、
被測定者に接触する複数の電極部を用いた測定結果に基づいて、前記被測定者の電気抵抗を算出する算出手段と、
人が摂取した成分に応じた前記電気抵抗の時間変化を示す参照情報と前記算出手段によって算出された前記電気抵抗の時間変化とに基づいて、特定の成分を前記被測定者が摂取したか否かを判定する判定手段と、
をして機能させる分析プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析装置、分析方法、及び分析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
食事及び水分補給等で人が摂取した栄養素、ミネラル、又は水分を把握しようとする場合、食事記録や食事の画像記録から摂取物に含まれる成分を判定し、栄養計算する方法がある。
【0003】
上記従来の方法では、食事記録又は画像記録の作成に手間がかかり、摂取したものを実測していないので実際と合っていない場合もある。食事内容を詳細に正しく記録したとしても、記録内容はその食事に実際に含まれる栄養素ではない可能性もある。また、食事に含まれる栄養素が実際に人体に吸収されたか否かはわからない。
【0004】
ここで、例えば特許文献1には、被測定者の身体のインピーダンス計測値を、被測定者の血行状態を示す血行状態指標に変換する健康管理指針アドバイス装置が記載されている。特許文献1に記載の装置は、インピーダンスの日動変化パターンに基づいてインピーダンス値を血行状態指標に変換する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-23936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のように、被測定者のインピーダンスを用いることでより直接的に被測定者の身体状態を特定できる。しかしながら、特許文献1では被測定者の血行状態を判定するものあり、被測定者が摂取した成分を判定するものではない。
【0007】
そこで、本発明は、被測定者が摂取した成分をより正確に特定できる、分析装置、分析方法、及び分析プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の分析装置は、被測定者に接触する複数の電極部を用いた測定結果に基づいて、前記被測定者の電気抵抗を算出する算出手段と、人が摂取した成分に応じた前記電気抵抗の時間変化を示す参照情報と前記算出手段によって算出された前記電気抵抗の時間変化とに基づいて、前記被測定者が摂取した成分を判定する判定手段と、を備える。
【0009】
本構成によれば、被測定者が摂取した成分に応じて被測定者の電気抵抗が変化する現象を利用して、被測定者が摂取した成分を判定する。これにより、本構成は、被測定者が食事内容の記録を行わなくても摂取した成分をより正確に特定できる。
【0010】
本発明の一態様の分析装置は、被測定者に接触する複数の電極部を用いた測定結果に基づいて、前記被測定者の電気抵抗を算出する算出手段と、人が摂取した成分に応じた前記電気抵抗の時間変化を示す参照情報と前記算出手段によって算出された前記電気抵抗の時間変化とに基づいて、特定の成分を前記被測定者が摂取したか否かを判定する判定手段と、を備える。本構成によれば、被測定者は任意の成分を摂取したか否かを認識できる。
【0011】
上記の分析装置において、前記参照情報は、前記成分であるタンパク質、脂質、糖質を人が摂取した場合における前記成分毎の前記電気抵抗の時間変化を示す第1参照情報であり、前記判定手段は、前記算出手段によって算出された前記電気抵抗の時間変化と前記第1参照情報が示す前記成分毎の時間変化とに基づいて、前記被測定者が摂取した前記成分を判定してもよい。本構成によれば、被測定者が栄養素としてタンパク質、脂質、及び糖質の何れを摂取したのかを特定できる。
【0012】
上記の分析装置において、前記第1参照情報は、前記成分であるタンパク質、脂質、糖質の摂取量と前記電気抵抗が前記成分の摂取前に戻るまでの時間との関係を含み、前記判定手段は、前記算出手段によって算出された前記電気抵抗が前記成分の摂取前に戻るまでの時間と前記第1参照情報とに基づいて、前記被測定者が摂取した前記成分の量を判定してもよい。本構成によれば、被測定者の摂取した栄養素の量を定性的に特定できる。
【0013】
上記の分析装置において、1日以上における前記被測定者の体組成の変化に基づいて、前記判定手段によって判定された前記成分の量を補正する補正手段を備えてもよい。本構成によれば、被測定者の摂取した成分をより正確に特定できる。
【0014】
上記の分析装置において、前記第1参照情報は、前記被測定者がタンパク質、脂質、又は糖質を摂取してから所定時間内における前記電気抵抗の時間変化を取得することで生成された情報でもよい。本構成によれば、被測定者に応じた第1参照情報を生成することで、被測定者が摂取した成分をより正確に特定できる。
【0015】
上記の分析装置において、前記被測定者の体温を取得する体温取得手段を備え、前記第1参照情報は、タンパク質、脂質、糖質を人が摂取した場合における前記成分毎の前記体温の時間変化を含み、前記判定手段は、前記体温取得手段によって取得された前記体温と前記算出手段によって算出された前記電気抵抗との組み合わせと前記第1参照情報とに基づいて、前記被測定者が摂取した前記成分を判定してもよい。本構成によれば、被測定者が摂取した成分をより正確に特定できる。
【0016】
上記の分析装置において、前記被測定者の体温を取得する体温取得手段を備え、前記判定手段は、前記体温取得手段によって取得された前記体温の時間変化と前記算出手段によって算出された前記電気抵抗の時間変化との関連性と前記参照情報とに基づいて、前記被測定者の身体状態を判定してもよい。本構成によれば、被測定者の身体状態の変化を容易に特定できる。
【0017】
上記の分析装置において、前記参照情報は、前記電気抵抗の上昇よりも前に前記体温が上昇し、水分の摂取によって前記電気抵抗と共に前記体温が下降することを示す第2参照情報でもよい。本構成によれば、被測定者が脱水状態であることを特定できる。
【0018】
上記の分析装置において、前記参照情報は、前記体温の時間変化が一定である一方で、前記電気抵抗が上昇した後に下降することを示す第3参照情報でもよい。本構成によれば、被測定者が塩分の取り過ぎによって浮腫が生じていることを特定できる。
【0019】
上記の分析装置において、前記判定手段による判定結果に応じて、前記被測定者に対して健康を維持するためのアドバイスを導出するアドバイス導出手段を備えてもよい。本構成によれば、被測定者が摂取した成分に応じた適切なアドバイスを提示できる。
【0020】
上記の分析装置において、前記複数の電極部は、前記被測定者の身体に装着可能とされてもよい。本構成によれば、被測定者による食事場所にかかわらず、被測定者の摂取した成分を特定できる。
【0021】
本発明の一態様の分析方法は、被測定者に接触する複数の電極部を用いた測定結果に基づいて、前記被測定者の電気抵抗を算出する第1工程と、人が摂取した成分に応じた前記電気抵抗の時間変化を示す参照情報と前記第1工程によって算出した前記電気抵抗の時間変化とに基づいて、前記被測定者が摂取した成分を判定する第2工程と、を有する。
【0022】
本発明の一態様の分析プログラムは、コンピュータを、被測定者に接触する複数の電極部を用いた測定結果に基づいて、前記被測定者の電気抵抗を算出する算出手段と、人が摂取した成分に応じた前記電気抵抗の時間変化を示す参照情報と前記算出手段によって算出された前記電気抵抗の時間変化とに基づいて、前記被測定者が摂取した成分を判定する判定手段と、をして機能させる。
【0023】
本発明の一態様の分析方法は、被測定者に接触する複数の電極部を用いた測定結果に基づいて、前記被測定者の電気抵抗を算出する第1工程と、人が摂取した成分に応じた前記電気抵抗の時間変化を示す参照情報と前記第1工程によって算出された前記電気抵抗の時間変化とに基づいて、特定の成分を前記被測定者が摂取したか否かを判定する第2工程と、を有する。
【0024】
本発明の一態様の分析プログラムは、コンピュータを、被測定者に接触する複数の電極部を用いた測定結果に基づいて、前記被測定者の電気抵抗を算出する算出手段と、人が摂取した成分に応じた前記電気抵抗の時間変化を示す参照情報と前記算出手段によって算出された前記電気抵抗の時間変化とに基づいて、特定の成分を前記被測定者が摂取したか否かを判定する判定手段と、をして機能させる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、被測定者が摂取した成分をより正確に特定できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、第1実施形態の分析装置の概略構成図である。
図2図2は、第1実施形態の分析装置の機能ブロック図である。
図3図3は、BIと体温との関係を示した図である。
図4図4は、人が摂取した栄養素に対するBIの時間変化を示す図であり、(A)は脂質、(B)は糖質、(C)はタンパク質である。
図5図5は、人の身体状態に応じたBIと体温の時間変化を示した図であり、(A)は人が脱水状態の場合であり、(B)は人が塩分過多の場合である。
図6図6は、第1実施形態の分析処理の流れを示すフローチャートである。
図7図7は、第2実施形態の分析システムの概略構成図である。
図8図8は、第2実施形態の分析機能に関する機能ブロック図である。
図9図9は、第2実施形態の摂取成分補正機能に関する模式図である。
図10図10は、第3実施形態の分析機能に関する機能ブロック図である。
図11図11は、他の実施形態の分析装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施する場合の一例を示すものであって、本発明を以下に説明する具体的構成に限定するものではない。本発明の実施にあたっては、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてよい。
【0028】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態の分析装置10の概略構成図である。
【0029】
本実施形態の分析装置10は、被測定者の身体に装着可能とされ、一例としてバンド状である。分析装置10は、一例として、手首に装着されるリストバンドであるが、これに限らず、足首に装着されてもよい。また、分析装置10は、バンド状ではなく、例えば平面状とされ、粘着性物質によって胸部や腹部等に貼り付けられてもよい。
【0030】
分析装置10は、2つ以上の電極部20及び体温測定部22が被測定者の腕に接触するように内側に備えられ、外側にモニタ24及び電源スイッチ26が備えられる。なお、分析装置10は、体温測定部22を備えなくてもよい。この形態の場合、後述する体温取得部32が他の装置から被測定者の体温を取得する。
【0031】
電極部20は電流電極20A及び電圧電極20Bによって構成される。分析装置10は、電流電極20Aに電流を流し、被測定者に接触している電極部20間の電流経路に生じる電位差を電圧電極20Bによって測定する。分析装置10は、この電位差に基づいて被測定者の電気抵抗を生体インピーダンス(以下「BI」という。)として算出し、BIに基づいて被測定者が摂取した成分である摂取成分を判定する。
【0032】
なお、図1の例では、電流電極20A及び電圧電極20Bは、縦長の形状であるが、これに限らず、分析装置10の周方向に長い横長の形状であってもよい。
【0033】
モニタ24は、一例として、タッチパネルディスプレイであり、被測定者によって分析装置10に対する入力操作が行われたり、摂取成分の判定結果が出力される。電源スイッチ26は、分析装置10の電源のオン操作及びオフ操作を受け付ける。
【0034】
図2は、本実施形態の分析装置10の機能ブロック図である。分析装置10は、BI算出部30、体温取得部32、判定部34、モニタ制御部36、記憶部38、及び通信部40を備える。図2に示されるBI算出部30、体温取得部32、及び判定部34によって実行される各機能は、一例としてプログラムが起動することによって分析装置10が備える演算部で実行されてもよいし、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の個別のハードウェアによって実現されてもよい。
【0035】
BI算出部30は、被測定者に接触する複数の電極部20を用いた測定結果に基づいて、被測定者のBI(以下「実測BI」という。)を算出する。
【0036】
体温取得部32は、体温測定部22から被測定者の体温を実測体温として取得する。
【0037】
判定部34は、BI算出部30によって算出された実測BIの日内時系列の変化から被測定者の摂取成分を判定する。具体的には、判定部34は、実測BIの時間変化と参照変化情報とに基づいて、被測定者が摂取した成分である摂取成分を判定する。すなわち、判定部34は、詳細を後述するように、被測定者が摂取した成分に応じて被測定者のBIが変化する現象を利用して、被測定者の摂取成分を判定する。
【0038】
参照変化情報は、人が摂取した成分に応じたBIの時間変化を示す情報であり、予め記憶部42に記憶されている。本実施形態の参照変化情報には、詳細を後述するように、参照PFC情報、参照脱水情報、及び参照塩分過多情報が含まれる。
【0039】
モニタ制御部36は、判定部34による判定結果を表示するようにモニタ24を制御する。
【0040】
記憶部38は、例えば、不揮発性メモリであり、各種データ及び分析処理に用いられるプログラム等を保存する。なお、各種データには、参照変化情報、摂取成分の判定結果等が含まれる。
【0041】
通信部40は、被測定者が所有するスマートフォン等の携帯端末装置やサーバ等の他の情報処理装置との間でデータの送受信を行なう。
【0042】
判定部34は、PFC判定部50及び身体状態判定部52を備える。
【0043】
PFC判定部50は、参照変化情報として参照PFC情報を用いる。参照PFC情報は、摂取成分であるタンパク質(Protein)、脂質(Fat)、糖質(Carbohydrate)を人が摂取した場合における摂取成分毎のBIの時間変化を示す情報である。以下の説明では、タンパク質、脂質、及び糖質を総称して栄養素ともいう。
【0044】
ここで、食事前後の体温変化を検出することで、食事摂取と消化吸収による熱生産性の度合いを判定する食事誘発性熱産生(DIT : Diet Induced Thermogenesis)が知られている。具体的には、タンパク質の多い食事ほど食後の体温上昇が高く、糖質及び脂質が多い食事ほど食後の体温上昇は低い。
【0045】
このような食後の体温変化とBIの短時間変化(数十分から数時間の時間変化)とには相関関係があり、図3が示すように、体温が上昇するとBIは下降する。なお、図3の破線は、近似線である。そこで、PFC判定部50は、実測BIの時間変化から被測定者の摂取成分を特定する。
【0046】
そこで、PFC判定部50は、実測BIの時間変化と参照PFC情報が示す栄養素毎の時間変化とに基づいて、被測定者の摂取成分がタンパク質、脂質、又は糖質であることを判定する。これにより、被測定者が栄養素としてタンパク質、脂質、及び糖質の何れを摂取したのかを特定できる。
【0047】
図4は、人が摂取した栄養素に対するBIの時間変化を示す図である。図4の縦軸は、BIである生体インピーダンスZの逆数(1/Z)であり、横軸は時間である。図4(A)は脂質を摂取した場合のBIの時間変化を示し、一点鎖線f1、破線f2、実線f3の順に摂取した脂質の量が多い。図4(B)は糖質を摂取した場合のBIの時間変化を示し、一点鎖線c1、破線c2、実線c3の順に摂取した脂質の量が多い。図4(C)はタンパク質を摂取した場合のBIの時間変化を示し、一点鎖線p1、破線p2、実線p3の順に摂取した脂質の量が多い。
【0048】
図4に示されるように、脂質、糖質、タンパク質を人が摂取した場合、1/Zのピークの高さは脂質が最も小さく、次いで糖質、タンパク質の順で1/Zのピークが高い。また、脂質、糖質、及びタンパク質の全てにおいて、摂取量が多いほど、1/Zが摂取前に戻るまでの時間が長くなる。以下の説明では、1/Zが栄養素の摂取前に戻るまでの時間を時間変化幅という。
【0049】
参照PFC情報は、図4に示されるように、タンパク質、脂質、糖質を人が摂取した場合における栄養素毎のBIの最大変化量(1/Zの最大値)が含まれる情報である。本実施形態のPFC判定部50は、実測BIの最大変化量と参照PFC情報が示すタンパク質、脂質、又は糖質の最大変化量を比較することで、被測定者が摂取した栄養素がタンパク質、脂質、又は糖質であることを判定する。
【0050】
なお、本実施形態のPFC判定部50は、上述のように、栄養素毎のBIの最大変化量を1/Zの最大値とし、この1/Zに基づいて被測定者が摂取した栄養素を判定するが、これに限らず、PFC判定部50は、栄養素毎のZの最小値に基づいて被測定者が摂取した栄養素を判定してもよい。
【0051】
また、図4(A)~(C)が示すように、脂質、糖質、タンパク質を摂取してから1/Zが最大になるまでの傾きが異なる。そこで、PFC判定部50は、1/Z又はZの時間変化の傾きに基づいて、被測定者が摂取した栄養素を判定してもよい。
【0052】
さらに、参照PFC情報は、栄養素であるタンパク質、脂質、糖質の摂取量とBIが栄養素の摂取前に戻るまでの時間(以下「時間変化幅」という。)との関係を含む。この時間変化幅は、図4に示されるように、各栄養素の摂取量に応じて異なる値となる。すなわち、栄養素の摂取量が多いほど、時間変化幅は大きくなる。
【0053】
そこで、PFC判定部50は、実測BIが栄養素の摂取前に戻るまでの時間変化幅と第1参照情報とに基づいて、被測定者が摂取した栄養素の量を判定する。具体的には、本実施形態のPFC判定部50は、実測BIが変化を開始してから元に戻るまでの時間変化幅を求める。そして、PFC判定部50は、被測定者が摂取した栄養素を特定した後に、参照PFC情報が示す栄養素の摂取量毎の時間変化幅と実測BIの時間変化幅とを比較することで、栄養素の摂取量を判定する。なお、参照PFC情報に含まれる栄養素の摂取量毎の時間変化幅及び実測BIの時間変化幅は、一例として半値幅である。
【0054】
このように、PFC判定部50は、実測BIのピークの高さから被測定者が摂取した栄養素を特定でき、実測BIの時間変化幅から被測定者の摂取した栄養素の量を定量的に特定できる。
【0055】
なお、PFC判定部50は、特定した栄養素が所定量以上である場合には、当該栄養素の過剰摂取であることを、モニタ24等を介して被測定者に提示してもよい。ここでいう所定量とは、例えば、予め定められた基準値でもよいし、過去数日間の平均値に対して所定倍数を乗算した値でもよい。
【0056】
なお、参照PFC情報は、タンパク質、脂質、及び糖質が所定割合ずつ混合された場合におけるBIの最大変化量、及び摂取量毎の時間変化幅が含まれてもよい。例えば、タンパク質50%と脂質50%とを混合して摂取した場合、タンパク質50%と脂質25%と糖質25%とを混合して摂取した場合等におけるBIの最大変化量及び摂取量毎の時間変化幅が参照PFC情報に含まれてもよい。これにより、複数の栄養素を同時に摂取した場合でも、被測定者の摂取した栄養素を特定できる。
【0057】
また、上述した参照PFC情報は、例えば、複数の成人が栄養素を摂取した場合の実測値から生成されるが、これに限らず、被測定者自身の実測値から生成されてもよい。すなわち、参照PFC情報は、被測定者がタンパク質、脂質、又は糖質を摂取してから所定時間内におけるBIの時間変化を取得することで生成されてもよい。被測定者に応じた参照PFC情報を予め生成することで、被測定者が摂取した成分をより正確に特定できる。
【0058】
被測定者に応じた参照PFC情報を生成する場合、被測定者にタンパク質規定食(規定サプリメント)を摂取させる。そして、摂取してから所定時間におけるBIの時間変化を記録し、被測定者のタンパク質100%の基準変化を取得する。同様に、被測定者に糖質規定食及び脂質規定食を摂取させて、被測定者の糖質質100%の基準変化及び脂質100%の基準変化を取得し、これらを被測定者に対応した参照PFC情報とする。なお、規定食として、タンパク質50%と脂質50%とを混合したバランス混合食を被測定者に摂取させてBIの時間変化を取得してもよい。
【0059】
また、参照PFC情報は、タンパク質、脂質、糖質を人が摂取した場合における摂取成分毎の体温の時間変化を含んでもよい。この形態の参照PFC情報では、一例として、参照PFC情報はタンパク質、脂質、糖質を摂取した場合の体温上昇の最大変化量及び時間変化幅を含む。なお、体温上昇の最大変化量は、糖質、脂質、タンパク質の順で高い。
【0060】
そして、PFC判定部50は、実測体温と実測BIとの組み合わせと参照PFC情報とに基づいて、被測定者が摂取した栄養素がタンパク質、脂質、糖質の何れかであることを判定する。例えば、PFC判定部50は、実測体温の変化率と実測BI(1/Z)の変化率との平均値と、参照PFC情報に含まれる栄養素毎の体温変化率とBI(1/Z)の変化率との平均値を比較し、被測定者が摂取した栄養素を特定する。これにより、被測定者の摂取した成分をより正確に特定できる。また、実測体温の時間変化幅と実測BIの時間変化幅との平均値を用いて、被測定者による栄養素の摂取量を特定してもよい。
【0061】
なお、PFC判定部50が、体温の時間変化を加味した判定を行うことで、被測定者の脱水状態と、栄養素の摂取とを切り分けて判定できる。仮に被測定者が脱水状態であれば、後述するように、先に体温が上昇してBIが上昇するものの、水分を摂取することでBIの低下と共に体温が低下する。一方で、体温の低下とBIの上昇が同じ場合には、脱水状態ではなく、被測定者が栄養素を摂取している状態であると判定できる。これにより、被測定者による成分の摂取判定の精度を上げることができる。
【0062】
身体状態判定部52は、体温取得部32によって取得された実測体温の時間変化と電気抵抗の時間変化との関連性と参照変化情報とに基づいて、被測定者の身体状態を判定する。なお、身体状態判定部52で用いる参照変化情報は、参照脱水情報と参照塩分過多情報である。
【0063】
図5は、人の身体状態に応じたBIと体温の時間変化を示した図である。図5(A)は人が脱水状態の場合であり、図5(B)は人が塩分過多の場合である。
【0064】
参照脱水情報は、図5(A)に示されるように、BIの上昇よりも前に体温が上昇し、水分の摂取によってBIと共に体温が下降することを示す情報である。身体状態判定部52は、実測BIと実測体温との組み合わせと参照脱水情報とを比較し、一致していれば、身体状態判定部52は、被測定者が脱水状態であることを特定できる。すなわち、実測BIの上昇よりも前に実測体温が上昇し、その後、実測BIと共に実測体温が下降した場合に、被測定者が脱水状態であると判定される。
【0065】
参照塩分過多情報は、図5(B)に示されるように、体温の時間変化が一定である一方で、BIが上昇した後に下降することを示す情報である。なお、人が塩分を過剰に摂取すると、塩分(Na)の吸収によって先にBIが上昇し、その後浸透圧変化で水分が引き込まれるためにBIが下降するという現象が起きる。このため、塩分を摂取しすぎると図5(B)のようなBIの時間変化が生じる。一方で、塩分過多は体温に影響しないため、体温は一定のままである。そして、身体状態判定部52は、実測BIと実測体温との組み合わせと参照塩分過多情報とを比較し、一致していれば、被測定者が塩分の取り過ぎによって浮腫が生じていることを特定できる。すなわち、実測体温の時間変化が一定である一方で、実測BIが上昇した後に下降した場合には、被測定者が塩分の取り過ぎであると判定される。
【0066】
図6は、分析装置10によって実行される分析処理の流れを示すフローチャートである。分析処理は、分析装置10が被測定者に装着された後に、電源スイッチ26がオンとされた場合に開始される。
【0067】
まず、ステップS100では、被測定者の実測BIの算出及び実測体温の取得を開始する。
【0068】
次のステップS102では、判定部34が実測BIに所定値以上の変動があるか否かを判定し、肯定判定の場合はステップS104へ移行する。所定値以上の変動とは、計測誤差以上の有意な変動のことであり、所定値は予め定められている。一方、否定判定の場合は被測定者の実測BIの算出及び実測体温の取得を繰り返し継続する。
【0069】
次のステップS104では、実測BI及び実測体温に基づいて、PFC判定部50が被測定者によって摂取された栄養素を特定するPFC判定処理を行い、身体状態判定部52が被測定者の身体状態を判定する身体状態判定処理を行う。
【0070】
なお、判定結果としては、PFC判定処理によって被測定者が摂取した栄養素の特定、被測定者が脱水状態であることの特定、被測定者が塩分過多であることの特定の何れかが得られる。すなわち、例えば被測定者が摂取した栄養素を特定すると共に被測定者が脱水状態である、とのような判定結果とはならない。
【0071】
また、上述のように、被測定者がタンパク質、脂質、糖質といった栄養素を摂取した場合には、実測体温と実測BIとの時間変化が略一致する。一方で、被測定者が脱水状態にある場合、又は塩分の取り過ぎである場合には、実測体温と実測BIとの時間変化の一致度は低い。そこで、被測定者の実測体温と実測BIとの時間変化が一致する場合には、PFC判定部50がPFC判定処理を行い、被測定者の実測体温と実測BIとの時間変化が一致しない場合には、身体状態判定部52が身体状態判定処理を行ってもよい。
【0072】
次のステップS106では、記憶部38がPFC判定処理又は身体状態判定処理の判定結果を記憶する。
【0073】
次のステップS108では、モニタ制御部36が判定結果をモニタ24に出力(表示)させる。判定結果は、通信部40を介して他の情報処理装置へ出力(送信)されてもよい。
【0074】
なお、ステップS104からステップS108の処理を実行している間も、実測BIの算出及び実測体温の取得は継続して行われ、分析装置10の電源がオフとされるまで分析処理は継続して行われる。
【0075】
(第2実施形態)
以下、本実施形態の第2実施形態について説明する。本実施形態の分析装置10は、1日以上における被測定者の体組成の変化に基づいて、日内時系列のBI変化から判定された栄養素の摂取量を補正する。
【0076】
図7は、本実施形態の分析システム70の概略構成図である。分析システム70は、分析装置10及び体組成計80を備える。図7に示される体組成計80は、電極が設けられたハンドグリップ82R,82L、足裏電極84R,84L及び体重計を備える。そして、体組成計80は、ハンドグリップ82R,82L、足裏電極84R,84Lの電流経路に生じる電位差を測定することで、被計測者の全身及び各身体部位の生体インピーダンス(BI)を算出し、被測定者のBI及び体重に基づいて体組成値を算出する。なお、体組成計80で算出される体組成値は、脂肪率、脂肪量、除脂肪量、筋肉量、内臓脂肪量、内臓脂肪レベル、内臓脂肪面積、皮下脂肪量、基礎代謝量、骨量、体水分率、BMI、細胞内液量、細胞外液量等である。
【0077】
本実施形態の被測定者は、1日に1度以上の頻度で体組成計80を用いて自身の体組成値を取得する。体組成計80によって取得された体組成値は、通信機能によって分析装置10へ送信される。
【0078】
なお、体組成計80は、ハンドグリップ82R,82Lを備えず、足裏電極84R,84L及び体重計を備える形態でもよい。また、体組成計80は、被測定者が装着している分析装置10が備える電極部20及び体組成計80が備える電極の電流経路に生じる電位差に基づいて体組成値を算出してもよい。また、分析装置10と体組成計80とが通信によって情報の送受信ができない場合等には、体組成計80によって取得された体組成値を被測定者が分析装置10に入力してもよい。
【0079】
また、分析システム70として、2つ以上の分析装置10を被測定者が装着し、2つ以上の分析装置10が備える電極部20間の電流経路に生じる電位差及び別途測定された被測定者の体重に基づいて体組成値が算出されてもよい。
【0080】
図8は、本実施形態の分析装置10が有する分析機能に関する機能ブロック図である。なお、図8における図2と同一の構成部分については図2と同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0081】
本実施形態の判定部34は、摂取量補正部54を備える。摂取量補正部54は、1日以上における被測定者の体組成の変化に基づいて、PFC判定部50によって判定された摂取成分(栄養素)の量を補正する(以下「摂取成分補正機能」という。)。
【0082】
摂取量補正部54による摂取成分補正機能について図9の模式図を参照して説明する。図9における常時接触BIとは、分析装置10によるBIの日内時系列のBI変化から判定された被測定者による脂質の摂取量である。体組成BIとは、体組成計80によるBIから算出された被測定者の脂質の量である。すなわち、体組成BIは被測定者の日間の脂質の量である。
【0083】
摂取量補正部54は、例えば下記(1)式を用いて、被測定者の日間の脂質の変化量に基づいて、被測定者による日々の脂質の摂取量を補正する。なお、図9及び(1)式では、被測定者の日間の脂質の変化量ΔFATkgとして4日間の場合を示しているが、これは一例であり、1日以上の脂質の変化量ΔFATkgに基づいて、被測定者による脂質の摂取量が補正されればよい。
【0084】
ΔFATkg(FATkg(4)-FATkg(0))=a*(fat(1)+fat(2)+fat(3)+fat(4)) ・・・(1)
【0085】
(1)式が示すように、被測定者の脂質の変化量ΔFATkgは、対応する日数で摂取した脂質の量fat(n)の総量と相関関係がある。そこで、摂取量補正部54は、脂質の変化量ΔFATkgと脂質の摂取量fat(n)の総量とが一致するように、脂質の摂取量fat(n)を補正する。なお、補正の方法としては、例えば、脂質の変化量ΔFATkgと脂質の摂取量fat(n)の総量とが一致するように、日々の脂質の摂取量fat(n)の各々を均等に増減させる。
【0086】
また、被測定者が摂取した脂質は、全てが被測定者に蓄積され続けるものではない。摂取した脂質は、被測定者の日々の活動によって消費される。このため、(1)式の右辺に被測定者の日々の活動量を示す項を追加してもよい。これにより、被測定者による脂質の摂取量に対して活動による消費量が加味されるので、より精度の高い補正が可能となる。なお、活動量は、一例として、被測定者が装着する活動量計が算出した値が用いられる。
【0087】
また、図9及び(1)式は、栄養素として脂質に対応するものであるが、摂取量補正部54は、タンパク質又は糖質の摂取量と相関関係のある体組成値を用いて、被測定者が摂取したタンパク質又は糖質の量を補正してもよい。
【0088】
(第3実施形態)
以下、本実施形態の第3実施形態について説明する。本実施形態の分析装置10は、判定部34による判定結果に応じて、被測定者に対して健康を維持するためのアドバイスを導出する。
【0089】
図10は、本実施形態の分析装置10が有する分析機能に関する機能ブロック図である。本実施形態の分析装置10は、アドバイス導出部60を備える。
【0090】
アドバイス導出部60は、判定部34による判定結果に応じて、被測定者に対して健康を維持するためのアドバイスを導出する。なお、導出するアドバイスは、一例として、判定結果に応じてパターン化されており、当該パターンは記憶部38に記憶されている。また、導出したアドバイスは、例えば、モニタ24に表示されたり、スピーカ(不図示)から音声として出力されることで、被測定者に提示される。
【0091】
次に、導出するアドバイスの具体例を説明する。
【0092】
例えば、身体状態判定部52によって塩分過多との判定がなされた場合、アドバイス導出部60は、アドバイスとして被測定者にカリウム(K)の摂取を提示する。これは、塩分過多によって血圧が上昇する前に被測定者からナトリウム(Na)の排出を促すためである。なお、カリウムを多く含む具体的な食品名が提示されてもよい。この食品は、例えば、野菜であればほうれん草、レタス等であり、果物であればバナナ、リンゴ等である、その他の食品としてアボカド、ワカメ等である。また、食品として所定のサプリメント、イオン飲料等が提示されてもよい。
【0093】
また、塩分過多の判定後、所定時間以上経過してもBIの低下が大きく、被測定者にむくみの傾向が続く場合がある。このような場合、アドバイス導出部60は、アドバイスとして利尿作用のある飲料の摂取を提示してもよい。利尿作用のある飲料は、例えば、コーヒー、ウーロン茶等である。なお、これに限らず、運動又は入浴により、汗と一緒にナトリウムを排出することを促すアドバイスが提示されてもよい。このアドバイスを提示する場合、水分補給を行うことも提示する。
【0094】
また、例えば、PFC判定部50の結果から糖質摂取過多と判定された場合、アドバイス導出部60は、アドバイスとして被測定者に糖質の吸収を抑えるため食物繊維を多く含む食品や飲料を摂取することを提示する。食物繊維を多く含む食品は、例えば、野菜、果物、海藻、豆等である。また、食物繊維を多く含む飲料は、例えば、難消化性デキストリンを含む機能性がプラスされたお茶等である。
【0095】
さらに、アドバイス導出部60は、糖質の摂取から所定時間(例えば数分から60分以内)に、被測定者に対して軽い運動を行うことを提示してもよい。この理由は、吸収された糖質による血糖値上昇又はインスリンの分泌の前に、骨格筋に糖を取り込ませて血糖値の急上昇によるインスリンの過剰分泌を防ぐためである。なお、軽い運動として、手足を回す、その場でステップを踏む、ストレッチを行う等の具体例が提示されてもよい。
【0096】
また、アドバイス導出部60は、数日間のBIの変化、体重の変化、及び体組成変化等に基づいてアドバイスを導出してもよい。アドバイス導出部60は、例えば、被測定者の体格又は体組成に応じて摂取すべき栄養素を選択し、提示する。摂取すべき栄養素は、例えば、被測定者の筋肉量に応じたたんぱく質、被測定者の体脂肪率にあわせた脂肪燃焼成分である。また、アドバイス導出部60は、例えば、被測定者の体格又は体組成に応じた運動メニューを提示してもよい。運動メニューは、例えば、被測定者の体脂肪率又は内臓脂肪に応じた有酸素運動のメニュー、被測定者の筋肉スコア又はSMI(骨格筋指数)の判定に応じた筋力トレーニングのメニューである。
【0097】
(第4実施形態)
以下、本実施形態の第4実施形態について説明する。上記実施形態では、被測定者が摂取した成分(栄養素、塩分等)を判定したが、本実施形態の分析装置10は、予め定めた特定の成分(以下「特定成分」という。)を被測定者が摂取したか否かを判定する。
【0098】
本実施形態の分析装置10は、判定対象となる特定成分が被測定者等によって設定される。設定される特定成分は、例えば、判定可能なタンパク質、脂質、糖質、及び塩分のうちの何れかである。そして、判定部34は、設定した特定成分を被測定者が摂取したか否かを判定する。
【0099】
また、本実施形態の判定部34は、設定された特定成分の摂取状況(例えば、前日との比較)を判定してもよい。また、摂取状況に応じて、当該特定の成分を被測定者が過剰に摂取したか否かを判定してもよい。過剰に摂取したか否かの判定は、摂取した特定成分が所定量以上であるか否かの判定によって行われる。ここでいう所定量とは、例えば、予め定められた基準値でもよいし、過去数日間の平均値に対して所定倍数を乗算した値でもよい。
【0100】
以上、本発明を、上記実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、該変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0101】
上記実施形態では、電源スイッチ26がオンとされた後に被測定者のBIを分析装置10が継続して算出する形態について説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、分析装置10に食事開始ボタンを設けてもよい。この形態の場合、分析装置10を装着した被測定者は、食事を開始する場合に食事開始ボタンを押す。これにより、分析装置10は、食事開始ボタンを押されてから所定時間(例えば1時間)の間における被測定者のBIを測定し、摂取した栄養素を判定する。
【0102】
上記実施形態では、分析装置10が被測定者の摂取成分を判定する形態について説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、図11に示されるように、被測定者が有するスマートフォン等の情報処理装置100がBI算出部30、体温取得部32、判定部34、モニタ制御部36、記憶部38、及び通信部40等を有してもよい。この形態の場合、情報処理装置100が、分析装置10から実測体温及び電圧電極20Bで検知した電圧を受信し、被測定者の摂取成分を判定する。なお、この形態の場合、分析装置10は、モニタ24を備えなくてもよい。
【0103】
また、情報処理装置100は、サーバでもよく、この形態の場合、サーバによる被測定者の摂取成分の判定結果はサーバに記憶される。そして、被測定者はサーバに記憶されている判定結果をスマートフォン等に表示させることで、判定結果を確認する。
【0104】
また、分析装置10は、図11に示されるように、3つ以上の電極部20を備えてもよい(図11の例では、分析装置10は、4つの電極部20を備える。)。この形態の場合、例えば、身体状態判定部52による被測定者の塩分及び水分の変化を判定する場合には、最も短い距離となる電極部20間の電位差から算出されたBIを用いる。この理由は、人体の表面側を流れるリンパ液や毛細血管ほど塩分変化の影響が大きいためである。
【0105】
一方で、PFC判定部50による被測定者が摂取した栄養分を判定する場合には、身体状態判定部52で用いた電極部20間よりも離れた位置の電極部20間の電位差から算出されたBIを用いる。この理由は、人体の深部の方が栄養素の摂取による温度変化が現れやすいためである。
【符号の説明】
【0106】
10 分析装置
30 BI算出部(算出手段)
32 体温取得部(体温取得手段)
34 判定部(判定手段)
54 摂取量補正部(補正手段)
60 アドバイス導出部(アドバイス導出手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2022-05-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者に接触する複数の電極部を用いた測定結果に基づいて、前記被測定者の電気抵抗を算出する算出手段と、
人が摂取した成分に応じた前記電気抵抗の時間変化を示す参照情報と前記算出手段によって算出された前記電気抵抗の時間変化とに基づいて、前記被測定者が摂取した成分を判定する判定手段と、
を備える分析装置。
【請求項2】
被測定者に接触する複数の電極部を用いた測定結果に基づいて、前記被測定者の電気抵抗を算出する算出手段と、
人が摂取した成分に応じた前記電気抵抗の時間変化を示す参照情報と前記算出手段によって算出された前記電気抵抗の時間変化とに基づいて、特定の成分を前記被測定者が摂取したか否かを判定する判定手段と、
を備える分析装置。
【請求項3】
記参照情報は、前記成分の摂取量と前記電気抵抗が前記成分の摂取前に戻るまでの時間との関係を含み、
前記判定手段は、前記算出手段によって算出された前記電気抵抗が前記成分の摂取前に戻るまでの時間と前記参照情報とに基づいて、前記被測定者が摂取した前記成分の量を判定する、請求項1又は請求項2に記載の分析装置。
【請求項4】
1日以上における前記被測定者の体組成の変化に基づいて、前記判定手段によって判定された前記成分の量を補正する補正手段を備える、請求項1から請求項3の何れか1項に記載の分析装置。
【請求項5】
記参照情報は、前記被測定者が前記成分を摂取してから所定時間内における前記電気抵抗の時間変化を取得することで生成された情報である、請求項から請求項の何れか1項に記載の分析装置。
【請求項6】
前記被測定者の体温を取得する体温取得手段を備え、
記参照情報は、前記成分を人が摂取した場合における前記成分毎の前記体温の時間変化を含み、
前記判定手段は、前記体温取得手段によって取得された前記体温と前記算出手段によって算出された前記電気抵抗との組み合わせと前記参照情報とに基づいて、前記被測定者が摂取した前記成分を判定する、請求項から請求項の何れか1項に記載の分析装置。
【請求項7】
前記参照情報は、前記電気抵抗の上昇よりも前に前記体温が上昇し、水分の摂取によって前記電気抵抗と共に前記体温が下降することを示す、請求項に記載の分析装置。
【請求項8】
前記参照情報は、前記体温の時間変化が一定である一方で、前記電気抵抗が上昇した後に下降することを示す、請求項に記載の分析装置。
【請求項9】
前記参照情報は、前記成分であるタンパク質、脂質、糖質、塩分、又は脱水状態で水分を人が摂取した場合における前記成分毎の前記電気抵抗の時間変化を示す、請求項1から請求項8の何れか1項に記載の分析装置。
【請求項10】
前記判定手段による判定結果に応じて、前記被測定者に対して健康を維持するためのアドバイスを導出するアドバイス導出手段を備える、請求項1から請求項の何れか1項に記載の分析装置。
【請求項11】
前記複数の電極部は、前記被測定者の身体に装着可能とされる、請求項1から請求項10の何れか1項に記載の分析装置。
【請求項12】
被測定者に接触する複数の電極部を用いた測定結果に基づいて、前記被測定者の電気抵抗を算出する第1工程と、
人が摂取した成分に応じた前記電気抵抗の時間変化を示す参照情報と前記第1工程によって算出した前記電気抵抗の時間変化とに基づいて、前記被測定者が摂取した成分を判定する第2工程と、
を有する分析方法。
【請求項13】
コンピュータを、
被測定者に接触する複数の電極部を用いた測定結果に基づいて、前記被測定者の電気抵抗を算出する算出手段と、
人が摂取した成分に応じた前記電気抵抗の時間変化を示す参照情報と前記算出手段によって算出された前記電気抵抗の時間変化とに基づいて、前記被測定者が摂取した成分を判定する判定手段と、
をして機能させる分析プログラム。
【請求項14】
被測定者に接触する複数の電極部を用いた測定結果に基づいて、前記被測定者の電気抵抗を算出する第1工程と、
人が摂取した成分に応じた前記電気抵抗の時間変化を示す参照情報と前記第1工程によって算出された前記電気抵抗の時間変化とに基づいて、特定の成分を前記被測定者が摂取したか否かを判定する第2工程と、
を有する分析方法。
【請求項15】
コンピュータを、
被測定者に接触する複数の電極部を用いた測定結果に基づいて、前記被測定者の電気抵抗を算出する算出手段と、
人が摂取した成分に応じた前記電気抵抗の時間変化を示す参照情報と前記算出手段によって算出された前記電気抵抗の時間変化とに基づいて、特定の成分を前記被測定者が摂取したか否かを判定する判定手段と、
をして機能させる分析プログラム。