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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123038
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】分注システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/10 20060101AFI20230829BHJP
   B25J 13/08 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
G01N35/10 C
B25J13/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026867
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【弁理士】
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 友希男
【テーマコード(参考)】
2G058
3C707
【Fターム(参考)】
2G058CB16
2G058CC02
2G058CD23
2G058EA02
2G058ED02
2G058ED35
2G058GB10
3C707AS09
3C707BS10
3C707KS31
3C707KV08
3C707KX07
(57)【要約】
【課題】チップによって検体容器内の検体を吸引する際に、検体容器内の異物の飛び散り起因して、検体が跳ね出ることを抑制することが可能な分注システムを提供する。
【解決手段】
検査システム200は、検体容器210内の検体を吸引および吐出するチップ230が取り付けられるロボットアーム41と、ロボットアーム41を制御する制御部140と、を備える。制御部140は、検体の吸引のためにチップ230を検体容器210内に侵入させ、チップ230が検体容器210内の異物に接触した場合、チップ230の侵入方向と交差する方向にチップ230を移動させ、チップ230を再び侵入させてチップ230により検体容器210内の検体を吸引させるようにロボットアーム41を制御する。
【選択図】図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体容器内の検体を吸引および吐出するチップが取り付けられる分注部と、
前記分注部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記検体の吸引のために前記チップを前記検体容器内に侵入させ、
前記チップが前記検体容器内の異物に接触した場合、前記チップの侵入方向と交差する方向に前記チップを移動させ、
前記チップを再び侵入させて前記チップにより前記検体容器内の前記検体を吸引させるように、前記分注部を制御する、分注システム。
【請求項2】
前記制御部は、
前記検体の吸引のために前記チップを前記検体容器内に下降させ、
前記チップが前記検体容器内の異物に接触した場合、前記チップを上昇させるとともに、異物を避けるように、水平方向に移動させ、
前記チップを再び下降させて前記検体容器内の前記検体を吸引させるように、前記分注部を制御する、請求項1に記載の分注システム。
【請求項3】
前記検体容器は、円筒形状を有し、
前記制御部は、前記チップが前記検体容器内の異物に接触した場合、前記チップを上昇させるとともに、異物を避けるように、前記円筒形状の検体容器の半径よりも小さい距離分、水平方向に移動させるように、前記分注部を制御する、請求項2に記載の分注システム。
【請求項4】
前記チップが前記検体容器内の異物に接触したことを検知する検知部をさらに備え、
前記制御部は、
前記検知部の検知結果に基づいて、前記チップの侵入方向と交差する方向に前記チップを移動させるように、前記分注部を制御する、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の分注システム。
【請求項5】
前記分注部は、
ロボットアームと、
前記ロボットアームに取り付けられるとともに、前記チップが取り付けられる分注ハンドと、を含み、
前記制御部は、
前記分注ハンドに取り付けられた前記チップを前記検体容器内に侵入させるように、前記ロボットアームを制御し、
前記チップが前記検体容器内の異物に接触した場合、前記チップの侵入方向と交差する方向に前記チップが取り付けられた前記分注ハンドを移動させるように、前記ロボットアームを制御し、
前記チップを再び侵入させて前記チップにより前記検体容器内の前記検体を吸引させるように前記ロボットアームおよび前記分注ハンドを制御する、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の分注システム。
【請求項6】
前記分注ハンドには、複数の前記チップが取り付けられ、
前記制御部は、
前記複数のチップのうちの少なくとも1つが前記検体容器内の異物に接触した場合、前記複数のチップが取り付けられた前記分注ハンドの位置を変更するように前記ロボットアームを制御する、請求項5に記載の分注システム。
【請求項7】
前記分注ハンドは、
前記チップが取り付けられるチップ取付部と、
前記チップから検体が吐出されるディープウェルプレートを把持する把持部と、を含む、請求項5または請求項6に記載の分注システム。
【請求項8】
前記制御部は、
前記分注ハンドの前記把持部により前記ディープウェルプレートを把持させ、
前記把持部により把持された前記ディープウェルプレートを、検体が処理される処理部まで搬送させ、
前記処理部に配置された前記ディープウェルプレートに、前記検体容器内の前記検体を吸引した前記チップから、検体を吐出させるように、前記分注部を制御する、請求項7に記載の分注システム。
【請求項9】
前記異物は、被検者から検体を採取するためのスワブを含む、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の分注システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、分注システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、分注システムが知られている。たとえば、特許文献1には、先端にピペットチップが取り付けられる分注装置が開示されている。特許文献1では、分注装置は、昇降装置によって昇降される。特許文献1では、液体が収容された容器の真上に分注装置が配置された後、分注装置が下降され、ピペットチップの先端が液面から所定の深さまで到達される。そして、ピペットチップにより液体が吸引される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3549263号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載される分注装置によって容器に収容される検体などの液体を吸引する場合に、容器内に異物が混入している場合がある。しかしながら、特許文献1に記載される分注装置では、容器内を下降するピペットチップの先端が異物に接触しても、ピペットチップはさらに下降される。このため、異物がピペットチップにより押し込まれることに起因して、異物が飛び散る場合がある。そして、異物の飛び散りに起因して、容器内の液体が跳ね出るという問題点がある。
【0005】
本開示は、チップによって検体容器内の検体を吸引する際に、検体容器内の異物の飛び散り起因して、検体が跳ね出ることを抑制することが可能な分注システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一の局面による分注システムは、検体容器内の検体を吸引および吐出するチップが取り付けられる分注部と、分注部を制御する制御部と、を備え、制御部は、検体の吸引のためにチップを検体容器内に侵入させ、チップが検体容器内の異物に接触した場合、チップの侵入方向と交差する方向にチップを移動させ、チップを再び侵入させてチップにより検体容器内の検体を吸引させるように、分注部を制御する。
【0007】
この開示の一の局面による分注システムは、上記のように、制御部は、検体の吸引のためにチップを検体容器内に侵入させ、チップが検体容器内の異物に接触した場合、チップの侵入方向と交差する方向にチップを移動させ、チップを再び侵入させてチップにより検体容器内の検体を吸引させるように、分注部を制御する。これにより、チップが検体容器内の異物に接触した場合でも、チップの侵入方向と交差する方向にチップが移動されるので、チップが異物に接触した状態で、さらにチップによって異物が押し込まれることが抑制される。その結果、チップによって検体容器内の検体を吸引する際に、検体容器内の異物の飛び散り起因して、検体が跳ね出ることを抑制できる。
【0008】
本開示の技術によれば、チップによって検体容器内の検体を吸引する際に、検体容器内の異物の飛び散り起因して、検体が跳ね出ることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態による検査システムの構成を示す平面図である。
図2】一実施形態による開栓分注ユニットの構成を示す平面図である。
図3】一実施形態による検体供給部の構成を示す斜視図である。
図4図3の400-400線に沿った断面図である。
図5】一実施形態による第1ハンドの構成を示す斜視図である。
図6】一実施形態による第1ハンドおよびセンサの構成を示す概念図である。
図7】一実施形態による第2ハンドの構成を示す斜視図である。
図8】一実施形態による検査システムの分注本体部を示す図である。
図9】一実施形態による試薬供給部の構成を示す斜視図である。
図10】検体容器内でスワブとチップとが接触し、スワブが折れた状態を示す図である。
図11】スワブを示す図である。
図12】一実施形態による検査システムの検査手順の前半を示すフロー図である。
図13】一実施形態による検査システムの検査手順の後半を示すフロー図である。
図14】一実施形態による検査システムの検体の吸引および分注の手順を示すフロー図である。
図15】チップが検体容器内に侵入する状態を示す図である。
図16】チップがスワブに接触した状態を示す図である。
図17】チップがスワブに接触した後に水平移動した状態を示す図である。
図18】検体を採取するためにチップが下降する状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1から図18までを参照して、本実施形態による検査システム200の構成について説明する。なお、本願明細書において、上下方向をZ方向とする。上方側をZ1側とし、下方側をZ2側とする。Z方向に直交する方向をX方向とする。X方向の一方側をX1側とし、他方側をX2側とする。Z方向およびX方向に直交する方向をY方向とする。Y方向の一方側をY1側とし、他方側をY2側とする。検査システム200は、分注システムの一例である。
【0011】
図1に示すように、検査システム200は、開栓分注ユニット1と、核酸抽出ユニット2と、試薬調整ユニット3と、PCR測定ユニット4と、全体制御盤5と、を備えている。開栓分注ユニット1では、検体に対して測定を行うための前処理が行われる。核酸抽出ユニット2では、検体の前処理として、検体から核酸の抽出が行われる。試薬調整ユニット3では、試薬の調整が行われる。PCR測定ユニット4では、RT-PCR検査により検体中に感染性ウイルスが含まれているかを測定する処理が行われる。全体制御盤5には、制御盤や配電盤が配置されている。
【0012】
(開栓分注ユニット)
開栓分注ユニット1の具体的な構成について説明する。図2に示すように、開栓分注ユニット1は、検体供給部10、DWP供給部20、および、チップ供給部30を備える。DWPとは、ディープウェルプレートを意味する。また、開栓分注ユニット1は、ロボット40、第1ハンド50、センサ51、第2ハンド60、および、検知部64を備えている。また、開栓分注ユニット1は、検体キャッパー部70、バーコードリーダ71、分注作業台80、試薬供給部90、チップ置台100、PC/NC置台110、および、チップ廃棄部120を備える。PCおよびNCは、それぞれ、ポジティブコントロ―ル、および、ネガティブコントロールを意味する。また、開栓分注ユニット1は、受渡台130を備えている。また、開栓分注ユニット1は、制御部140を備えている。第2ハンド60は、分注ハンドおよび分注部の一例である。分注作業台80は、処理部の一例である。
【0013】
図3に示すように、検体供給部10は、トレイ11と、搬送部15とを含む。トレイ11には、ユーザにより検体容器210が配置される。トレイ11は、ユーザにより、搬送部15に載置される。トレイ11は、搬送部15に着脱可能である。トレイ11および搬送部15は、たとえば、2つずつ配置されている。
【0014】
図4に示すように、トレイ11は、第1板部12と、第2板部13とを含む。第1板部12は、複数の検体容器210の各々が挿入される複数の第1孔部12aが配置されている。第2板部13は、第1板部12と上下方向に離間した状態で配置されている。第2板部13は、複数の検体容器210の各々が挿入される複数の第2孔部13aが配置されている。検体容器210は、第1孔部12aと第2孔部13aとに挿入される。第1孔部12aは、Z方向から見て、円形状を有する。第1孔部12aは、千鳥格子状に配置されている。第1孔部12aは、貫通孔である。第2孔部13aは、Z方向から見て、円形状を有する。第2孔部13aは、千鳥格子状に配置されている。第2孔部13aは、凹形状を有する。第2孔部13aの直上に第1孔部12aが配置される。第1板部12と第2板部13とは、柱部14により接続されている。
【0015】
第1孔部12aの上部の開口の縁部12bおよび第2孔部13aの上部の開口の縁部13bは、面取りされている。すなわち、第1孔部12aおよび第2孔部13aの半径は、Z1方向側に向かって徐々に大きくなる。
【0016】
図3に示すように、トレイ11は、把持部12cを含む。把持部12cは、ユーザによって把持される。把持部12cは、第1板部12のX方向の両端部に配置されている。把持部12cは、長孔状の貫通孔である。
【0017】
図2に示すように、搬送部15は、複数の検体容器210が配置されたトレイ11をユーザが搬送部15に配置する位置P1と、ロボット40との間において、トレイ11を往復移動させる。位置P1は、開栓分注ユニット1のX2方向側の端部に位置している。図3に示すように、搬送部15は、トレイ11を直線移動させる直動アクチュエータ15aと、センサ15bとを含む。直動アクチュエータ15aには、トレイ11が載置される。直動アクチュエータ15aは、トレイ11を、位置P1とロボット40との間において直線移動させる。搬送部15は、直動アクチュエータ15a上におけるトレイ11の位置を検出する。センサ15bは、トレイ11の有無を検知する。トレイ11および搬送部15は、たとえば、2つずつ配置されている。
【0018】
図2に示すように、DWP供給部20は、搬送部21を含む。搬送部21は、ユーザがDWP220を搬送部21に配置する位置P2と、ロボット40との間において、DWP220を往復移動させる。位置P2は、開栓分注ユニット1のX2方向側の端部に位置している。搬送部21は、直動アクチュエータ22と、センサ23とを含む。直動アクチュエータ22は、トレイ24に載置されたDWP220を直線移動させる。搬送部21は、搬送部21上におけるDWP220の位置を検出する。センサ23は、DWP220の有無およびDWP220の高さを検知する。トレイ24および搬送部21は、たとえば、2つずつ配置されている。
【0019】
チップ供給部30は、搬送部31を含む。搬送部31は、ユーザがチップ230を搬送部31に配置する位置P3と、ロボット40との間において、チップ230を往復移動させる。位置P3は、開栓分注ユニット1のX1方向側の端部に位置している。搬送部31は、直動アクチュエータ32と、センサ33とを含む。直動アクチュエータ32は、トレイ34に載置された複数のチップ230を直線移動させる。搬送部31は、搬送部31上におけるチップ230の位置を検出する。センサ33は、チップ230の有無を検知する。トレイ34および搬送部31は、たとえば、2つずつ配置されている。
【0020】
図2に示すように、ロボット40は、開栓分注ユニット1内に配置されている。ロボット40は、ロボットアーム41を含む。ロボットアーム41は、たとえば、垂直多関節ロボットアームである。ロボットアーム41は、分注部の一例である。
【0021】
図5に示すように、第1ハンド50は、ロボットアーム41の先端に取り付けられる。図6に示すように、本実施形態では、検体容器210は、円筒形状を有する。検体容器210は、検体が収容される本体部211と蓋部212とを含む。第1ハンド50は、トレイ11に配置されている検体容器210の本体部211を把持する。具体的には、第1ハンド50は、チャック52を含む。チャック52によって、検体容器210の本体部211が把持される。
【0022】
センサ51は、第1ハンド50に配置されている。センサ51は、トレイ11に検体容器210が配置されているか否かを検知する。センサ51は、Z1方向側から検体容器210の有無を検出する。ロボット40は、検体供給部10のトレイ11に検体容器210が配置されていることが検知されたことに基づいて、第1ハンド50によりトレイ11に配置された検体容器210を把持するとともに、把持した検体容器210を検体キャッパー部70に搬送する。また、ロボット40は、分注処理が行われた後の検体容器210を第1ハンド50により把持する。また、センサ51によってトレイ11上の異物の有無が確認される。そして、ロボット40は、センサ51によってトレイ11上に異物が無いことが確認された後、分注処理が行われた後の検体容器210をトレイ11に返却する。
【0023】
図7に示すように、本実施形態では、第2ハンド60は、ロボットアーム41の先端に取り付けられる。第2ハンド60は、検体容器210内の検体を吸引および吐出するチップ230と、チップ230からの検体が吐出されるDWP220とのうちの少なくとも一方を保持する。具体的には、第2ハンド60は、チップ230とDWP220との両方を保持する。第2ハンド60は、チップ230が取り付けられる複数のチップ取付部61を含む。チップ取付部61は、たとえば、4つ配置されている。チップ取付部61にはエアシリンダが配置されており、エアシリンダの吸引力によって、チップ取付部61にチップ230が取り付けられる。また、第2ハンド60は、DWP220を把持するチャック62を含む。チャック62は、把持部の一例である。
【0024】
図8に示すように、第2ハンド60は、分注本体部65と、移動機構部66とを含む。チップ取付部61は、分注本体部65に取り付けられている。移動機構部66は、Z方向に沿って直線移動可能に分注本体部65を保持している。移動機構部66は、たとえば、スライダ、または、エアシリンダである。分注本体部65は、重力によって、移動機構部66の下端に位置している。分注本体部65は、第2ハンド60に複数配置されている。分注本体部65は、たとえば、4つ、第2ハンド60に配置されている。すなわち、1つの第2ハンド60には、4つのチップ230が取り付けられる。
【0025】
本実施形態では、検知部64は、第2ハンド60に配置されている。検知部64は、チップ230が検体容器210内のスワブ213に接触したことを検知する。検知部64は、たとえば、オートスイッチである。オートスイッチは、磁気を検出することにより位置を検出するセンサである。たとえば、分注本体部65に磁石が取り付けられている。ロボットアーム41によって第2ハンド60が下降される。これにより、分注本体部65が下降して、チップ230が検体容器210内に配置されているスワブ213に接触したとする。このため、分注本体部65の下降が停止される一方、移動機構部66は、第2ハンド60とともに下降を続ける。これにより、分注本体部65が移動機構部66に対して相対的にZ1方向側に移動する。そして、分注本体部65の磁石の磁気が検知部64に検知されることにより、検知部64は、チップ230が検体容器210内のスワブ213に接触したことを検知する。スワブ213は、異物の一例である。
【0026】
第1ハンド50および第2ハンド60は、ロボットアーム41に対して着脱可能である。図5に示すように、第1ハンド50には、自動工具交換装置53が配置されている。図7に示すように、第2ハンド60には、自動工具交換装置63が配置されている。自動工具交換装置53によって、第1ハンド50がロボットアーム41に自動的に取り付けられる。自動工具交換装置63によって、第2ハンド60がロボットアーム41に自動的に取り付けられる。ロボットアーム41は、第1ハンド50および第2ハンド60に対して共通に配置されている。
【0027】
図2に示すように、検体キャッパー部70は、ロボット40により搬送された検体容器210の蓋部212の開栓および閉栓を行う。バーコードリーダ71は、ロボット40により搬送された検体容器210に貼付されたバーコードを読み取る。検体キャッパー部70には、検体容器210の有無を検知するセンサ70aが配置されている。
【0028】
分注作業台80は、DWP220に対する分注量を測定する。分注作業台80には、DWP220に貼付されたバーコードを読み取るバーコードリーダ81が配置されている。分注作業台80には、DWP220の有無を検知するセンサ82が配置されている。
【0029】
図9に示すように、試薬供給部90は、可溶化液供給部91、磁性粒子供給部92、および、ProK供給部93を含む。ユーザは、可溶化液供給部91に可溶化液が収容されたリザーバを供給する。ユーザは、磁性粒子供給部92に磁性粒子入りのDWP220を供給する。ユーザは、ProK供給部93にProK入りのDWP220を供給する。可溶化液供給部91には、リザーバの有無を検出するためのセンサ91aが配置されている。磁性粒子供給部92には、磁性粒子入りのDWP220の有無を検出するためのセンサ92aが配置されている。ProK供給部93には、ProK入りのDWP220の有無を検出するためのセンサ93aが配置されている。
【0030】
図9に示すように、チップ置台100には、チップ供給部30によって搬送されたチップ230が、ロボット40により載置される。なお、チップ230は、アダプタに複数のチップ230が載置された状態で搬送される。チップ置台100には、チップ230の有無を検知するセンサ101が配置されている。
【0031】
図9に示すように、PC/NC置台110には、検査精度確認用のポジティブコントロ―ルおよびネガティブコントロールが各々収容される複数の容器112が配置されている。PC/NC置台110には、容器112の有無を検知するセンサ111が配置されている。
【0032】
図2に示すように、チップ廃棄部120には、使用済みのチップ230が廃棄される。チップ廃棄部120には、使用済みのチップ230が満杯になっているか否かを検知するセンサ121が配置されている。
【0033】
制御部140は、開栓分注ユニット1に配置されている機器を制御する。
【0034】
図10に示すように、検体容器210内には、被検者から検体を採取するためのスワブ213が収容されている。スワブ213は、唾液などの検体がしみ込まされている綿棒である。図11に示すように、スワブ213には、切断しやすいように予め形成されたブレイクポイント213aが配置されている。作業者は、ブレイクポイント213aでスワブ213を切断した状態で、検体容器210内に挿入する。しかしながら、図10に示すように、作業者がブレイクポイント213a以外の箇所でスワブ213を切断した際、ブレイクポイント213aが残った状態のスワブ213が検体容器210に挿入される場合がある。この場合、検体容器210内に侵入するチップ230の先端とスワブ213とが接触した後、チップ230の位置を変更せず検体容器210内へのチップ230の侵入が継続されると、スワブ213の切断点においてスワブ213が折れて、折れたスワブ213が飛び散る場合がある。このため、検体容器210内の検体が跳ね出てしまう。
【0035】
(検査システムの検査手順)
検査システム200の検査手順について説明する。検査システム200では、ロボット40は、採取された検体に対して測定を行う前の処理である前処理を行う。なお、以下のステップS1は、ユーザによって行われる手順である。その他のステップは、制御部140によって制御されている。
【0036】
図12に示すように、ステップS1において、ユーザは、検体容器210を検体供給部10に配置する。ユーザは、DWP220をDWP供給部20に配置する。ユーザは、チップ230をチップ供給部30に配置する。ユーザは、試薬供給部90に、可溶化液、磁性粒子およびProKを供給する。
【0037】
ステップS2において、ロボット40は、第2ハンド60を装着する。
【0038】
ステップS3において、検体供給部10は、検体容器210をロボット40の近傍まで搬送する。DWP供給部20は、DWP220をロボット40の近傍まで搬送する。チップ供給部30は、チップ230をロボット40の近傍まで搬送する。
【0039】
ステップS4において、本実施形態では、ロボット40は、第2ハンド60によりDWP220を把持するとともに、把持したDWP220を分注作業台80に搬送する。センサ82は、DWP220の有無を検知する。バーコードリーダ81は、DWP220に貼付されたバーコードを読み取る。
【0040】
ステップS5において、ロボット40は、チップ置台100に配置されたチップ230を第2ハンド60に取り付ける。ロボット40は、チップ230により可溶化液供給部91に配置された可溶化液を吸引し、吸引した可溶化液を分注作業台80に載置されたDWP220に分注する。分注後、ロボット40は、チップ廃棄部120にチップ230を廃棄する。
【0041】
ステップS6において、ロボット40は、チップ置台100に配置されたチップ230を第2ハンド60に取り付ける。ロボット40は、チップ230により磁性粒子供給部92に配置された磁性粒子を吸引し、吸引した磁性粒子を分注作業台80に載置されたDWP220に分注する。分注後、ロボット40は、チップ廃棄部120にチップ230を廃棄する。
【0042】
ステップS7において、ロボット40は、チップ置台100に配置されたチップ230を第2ハンド60に取り付ける。ロボット40は、チップ230によりProK供給部93に配置されたProKを吸引し、吸引したProKを分注作業台80に載置されたDWP220に分注する。分注後、ロボット40は、チップ廃棄部120にチップ230を廃棄する。
【0043】
ステップS8において、ロボット40は、第2ハンド60を取り外した後、第1ハンド50を装着する。
【0044】
ステップS9において、第1ハンド50に配置されているセンサ51は、検体供給部10のトレイ11に検体容器210が配置されているか否かを検知する。
【0045】
センサ51によって検体容器210が検知された場合、ステップS10において、ロボット40は、第1ハンド50によって検体容器210を把持するとともに、検体容器210を検体キャッパー部70に搬送する。検体キャッパー部70のバーコードリーダ71は、検体容器210に貼付されたバーコードを読み取る。検体キャッパー部70は、検体容器210の蓋部212を開栓する。
【0046】
ステップS11において、ロボット40は、第1ハンド50を取り外した後、第2ハンド60を装着する。
【0047】
ステップS12aにおいて、ロボット40は、チップ置台100に配置されたチップ230を第2ハンド60に取り付ける。
【0048】
次に、ステップS12bにおいて、本実施形態では、ロボット40は、チップ230により検体容器210に収容された検体を吸引し、吸引した検体を分注作業台80に載置されたDWP220に分注する。具体的には、図14のステップS21において、本実施形態では、図15に示すように、制御部140は、検体の吸引のためにチップ230を検体容器210内に侵入させるようにロボットアーム41を制御する。制御部140は、第2ハンド60に取り付けられたチップ230を検体容器210内に侵入させるようにロボットアーム41を制御する。
【0049】
また、本実施形態では、制御部140は、検体の吸引のためにチップ230を検体容器210内に下降させるようにロボットアーム41を制御する。具体的には、制御部140は、第2ハンド60を下降させるように、ロボットアーム41を制御する。制御部140は、Z1方向から見て、円筒形状の検体容器210の本体部211の中心にチップ230が下降されるように、ロボットアーム41を制御する。
【0050】
ステップS22において、制御部140は、チップ230が検体容器210内のスワブ213に接触したか否かを判定する。制御部140は、検知部64の検知結果に基づいて、チップ230が検体容器210内のスワブ213に接触したか否かを判定する。
【0051】
本実施形態では、図16に示すように、チップ230が検体容器210内のスワブ213に接触した場合、ステップS23に進む。ステップS23において、図17に示すように、制御部140は、チップ230の侵入方向と交差する方向にチップ230を移動させるようにロボットアーム41を制御する。具体的には、制御部140は、チップ230が検体容器210内のスワブ213に接触した場合、チップ230を上昇させるとともに、スワブ213を避けるように、水平方向に移動させるようにロボットアーム41を制御する。チップ230は、検体容器210の外まで上昇されてもよいし、検体容器210から出ないように上昇されてもよい。制御部140は、チップ230が検体容器210内のスワブ213に接触した場合、チップ230を上昇させるとともに、スワブ213を避けるように、円筒形状の検体容器210の半径rよりも小さい距離分、水平方向に移動させる。検体容器210の半径rとは、円筒形状の検体容器210の内径である。制御部140は、複数のチップ230のうちの少なくとも1つが検体容器210内のスワブ213に接触した場合、第2ハンド60の位置を変更するようにロボットアーム41を制御する。そして、ステップS24に進む。
【0052】
そして、ステップS24において、本実施形態では、図18に示すように、制御部140は、チップ230を再び侵入させてチップ230により検体容器210内の検体を吸引させるようにロボットアーム41および第2ハンド60を制御する。具体的には、制御部140は、チップ230を再び下降させて検体容器210内の検体を吸引させるようにロボットアーム41および第2ハンド60を制御する。
【0053】
なお、ステップS24において、チップ230が再び下降された場合において、再び、チップ230が検体容器210内のスワブ213に接触した際には、チップ230がスワブ213に接触しなくなるまで、ステップS22およびS23の動作が繰り返される。
【0054】
図9に示すように、ステップS12cにおいて、分注後、検体キャッパー部70は、検体容器210の蓋部212を閉栓する。そして、分注後、ロボット40は、チップ廃棄部120にチップ230を廃棄する。
【0055】
図13に示すように、ステップS13において、ロボット40は、第2ハンド60を取り外した後、第1ハンド50を装着する。
【0056】
ステップS14において、第1ハンド50に配置されているセンサ51は、検体キャッパー部70に検体容器210が配置されているか否かを検知する。また、センサ51によってトレイ11上の異物の有無が確認される。
【0057】
センサ51によって検体容器210が検知され、かつ、トレイ11上に異物が無いことが確認された場合、ステップS15において、ロボット40は、第1ハンド50によって検体容器210を把持するとともに、検体供給部10のトレイ11に検体容器210を搬送する。ステップS9からS15までの動作が、複数の検体容器210の分、行われる。
【0058】
ステップS16において、ロボット40は、第1ハンド50を取り外した後、第2ハンド60を装着する。
【0059】
ステップS17において、ロボット40は、第2ハンド60によって検体が分注されたDWP220を核酸抽出ユニット2に受け渡すための受渡台130に搬送する。
【0060】
[本実施形態の効果]
制御部140は、検体の吸引のためにチップ230を検体容器210内に侵入させ、チップ230が検体容器210内のスワブ213に接触した場合、チップ230の侵入方向と交差する方向にチップ230を移動させ、チップ230を再び侵入させてチップ230により検体容器210内の検体を吸引させるように、ロボットアーム41および第2ハンド60を制御する。これにより、チップ230が検体容器210内のスワブ213に接触した場合でも、チップ230の侵入方向と交差する方向にチップ230が移動されるので、チップ230がスワブ213に接触した状態で、さらにチップ230によってスワブ213が押し込まれることが抑制される。その結果、チップ230によって検体容器210内の検体を吸引する際に、検体容器210内のスワブ213の飛び散り起因して、検体が跳ね出ることを抑制できる。
【0061】
制御部140は、検体の吸引のためにチップ230を検体容器210内に下降させ、チップ230が検体容器210内のスワブ213に接触した場合、チップ230を上昇させるとともに、スワブ213を避けるように、水平方向に移動させ、チップ230を再び下降させて検体容器210内の検体を吸引させるように、ロボットアーム41および第2ハンド60を制御する。これにより、チップ230を検体容器210内に下降させる際に、チップ230が検体容器210内のスワブ213に接触した場合、チップ230が上昇され、かつ、水平方向に移動される。そのため、チップ230が検体容器210内のスワブ213に接触した後、さらにチップ230が下降されてチップ230によってスワブ213が押し込まれることを抑制できる。その結果、チップ230によってスワブ213が押し込まれることに起因して、スワブ213が飛び散ることを抑制できる。
【0062】
制御部140は、チップ230が検体容器210内のスワブ213に接触した場合、チップ230を上昇させるとともに、スワブ213を避けるように、円筒形状の検体容器210の半径rよりも小さい距離分、水平方向に移動させるように、ロボットアーム41を制御する。これにより、チップ230が比較的大きく水平方向に移動されることに起因して、検体容器210の開口部よりも外にチップ230が移動されることを抑制できる。
【0063】
制御部140は、検知部64の検知結果に基づいて、チップ230の侵入方向と交差する方向にチップ230を移動させるように、ロボットアーム41を制御する。これにより、検知部64により、容易に、チップ230と、検体容器210内のスワブ213との接触を検知してチップ230を移動させることができる。
【0064】
制御部140は、第2ハンド60に取り付けられたチップ230を検体容器210内に侵入させるようにロボットアーム41を制御し、チップ230が検体容器210内のスワブ213に接触した場合、チップ230の侵入方向と交差する方向にチップ230が取り付けられた第2ハンド60を移動させるようにロボットアーム41を制御し、チップ230を再び侵入させてチップ230により検体容器210内の検体を吸引させるように、ロボットアーム41および第2ハンド60を制御する。これにより、チップ230が検体容器210内のスワブ213に接触した場合、ロボットアーム41によりチップ230の侵入方向と交差する方向に第2ハンド60が移動されるので、チップ230とスワブ213とが接触している状態を容易に解除することができる。
【0065】
制御部140は、複数のチップ230のうちの少なくとも1つが検体容器210内のスワブ213に接触した場合、複数のチップ230が取り付けられた第2ハンド60の位置を変更するようにロボットアーム41を制御する。これにより、複数のチップ230のうちのいずれかがスワブ213に接触した状態で、チップ230の検体容器210の移動が継続されることを抑制できる。そのため、複数のチップ230が取り付けられる場合でも、検体容器210内においてスワブ213が飛び散ることを抑制できる。
【0066】
第2ハンド60は、チップ230が取り付けられるチップ取付部61と、チップ230から検体が吐出されるDWP220を把持するチャック62と、を含む。これにより、チップ230が取り付けられるハンドと、DWP220を把持するハンドとを別個に配置する場合と異なり、検査システム200の構成を簡略化できる。
【0067】
制御部140は、第2ハンド60のチャック62によりDWP220を把持させ、チャック62により把持されたDWP220を、検体が処理される分注作業台80まで搬送させ、分注作業台80に配置されたDWP220に、検体容器210内の検体を吸引したチップ230から、検体を吐出させるように、ロボットアーム41および第2ハンド60を制御する。これにより、DWP220を分注作業台80まで搬送する動作と、検体容器210内の検体の吸引および吐出の動作とを、1つの第2ハンド60によって行うことができる。
【0068】
制御部140が、チップ230が検体容器210内のスワブ213に接触した場合、チップ230の位置を変更するようにロボットアーム41を制御することは、折れやすいスワブ213が飛び散ることを抑制する点において特に有効である。
【0069】
[変形例]
今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0070】
上記実施形態では、チップ230が検体容器210内のスワブ213に接触した場合、チップ230が移動される例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、チップ230が検体容器210内のスワブ213以外の異物に接触した場合、チップ230が移動されてもよい。これにより、異物に起因してチップ230により検体が吸引できなくなることを抑制できる。
【0071】
上記実施形態では、チップ230がスワブ213に接触した場合、チップ230が上昇されるとともに、水平方向に移動される例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、チップ230がスワブ213に接触した場合、チップ230が斜め上方に移動されてもよい。
【0072】
上記実施形態では、検体容器210が円筒形状を有する例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、検体容器210が直方体形状を有していてもよい。
【0073】
上記実施形態では、検知部64がオートスイッチである例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、検知部64が光センサや接触センサであってもよい。
【0074】
上記実施形態では、ロボット40は、採取された検体に対して測定を行う前の処理である前処理を行う例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、ロボット40が、前処理以外の処理を行ってもよい。
【0075】
上記実施形態では、第1ハンド50および第2ハンド60が、ロボットアーム41に対して着脱可能である例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、2台のロボットアーム41の各々に、第1ハンド50および第2ハンド60を取り付けてもよい。
【0076】
上記実施形態では、第2ハンド60に複数のチップ230が取り付けられる例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、第2ハンド60に1つのチップ230のみが取り付けられてもよい。
【0077】
上記実施形態では、第2ハンド60は、チップ230とDWP220との両方を保持する例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、チップ230を保持するハンドと、DWP220を保持するハンドとを別個に配置してもよい。
【0078】
本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成またはプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、および/または、それらの組み合わせ、を含む回路または処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路または回路と見なされる。本開示において、回路、ユニット、または手段は、列挙された機能を実行するハードウェアであるか、または、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであってもよいし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラムまたは構成されているその他の既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段、またはユニットはハードウェアとソフトウェアの組み合わせであり、ソフトウェアはハードウェアおよび/またはプロセッサの構成に使用される。
【符号の説明】
【0079】
41 ロボットアーム(分注部)
60 第2ハンド(分注ハンド、分注部)
61 チップ取付部
62 チャック(把持部)
64 検知部
80 分注作業台(処理部)
140 制御部
200 検査システム(分注システム)
210 検体容器
213 スワブ(異物)
220 DWP(ディープウェルプレート)
230 チップ
図1
図2
図3
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図5
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