(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123056
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】吹き返し防止部材
(51)【国際特許分類】
F02M 35/024 20060101AFI20230829BHJP
【FI】
F02M35/024 521D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026903
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000141174
【氏名又は名称】株式会社丸山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140682
【弁理士】
【氏名又は名称】妙摩 貞茂
(72)【発明者】
【氏名】後藤 正義
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 望
(57)【要約】
【課題】燃料を捕集する能力を向上させることができる吹き返し防止部材を提供する。
【解決手段】吹き返し防止部材100は、開口25から離間して開口25に対向する壁体101と、壁体101から端壁21aに向かって突出し、エンジン1のクランク軸15が水平方向に沿っている状態で、開口25よりも下側に配置される第1の燃料受け部105と、壁体101から端壁21aに向かって突出し、エンジン1のクランク軸15が鉛直方向に沿っている状態で、開口25よりも下側に配置される第2の燃料受け部115と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(1)に設けられた気化器(30)に連通する空気吸入路の入口側の開口(25)に設けられる吹き返し防止部材であって、
前記開口(25)から離間して前記開口(25)に対向する壁体(101)と、
前記壁体(101)から前記開口(25)が設けられた壁面(21a)に向かって突出し、前記エンジン(1)のクランク軸(15)が水平方向に沿っている状態で、前記開口(25)よりも下側に配置される第1の燃料受け部(105)と、
前記壁体(101)から前記開口(25)が設けられた前記壁面(21a)に向かって突出し、前記エンジン(1)の前記クランク軸(15)が鉛直方向に沿っている状態で、前記開口(25)よりも下側に配置される第2の燃料受け部(115)と、を備える、吹き返し防止部材。
【請求項2】
前記第1の燃料受け部(105)及び前記第2の燃料受け部(115)は、前記開口(25)に向かって見たときに、互いの端部同士を接続部(110)として接続されている、請求項1に記載の吹き返し防止部材。
【請求項3】
前記第1の燃料受け部(105)は、前記エンジン(1)の前記クランク軸(15)が水平方向に沿っている状態で、前記接続部(110)から前記接続部(110)と逆側の第1端部(105a)に向かって上側に傾斜しており、
前記第2の燃料受け部(115)は、前記エンジン(1)の前記クランク軸(15)が鉛直方向に沿っている状態で、前記接続部(110)から前記接続部(110)と逆側の第2端部(115a)に向かって上側に傾斜している、請求項2に記載の吹き返し防止部材。
【請求項4】
前記第1の燃料受け部(105)の前記第1端部(105a)は、前記エンジン(1)の前記クランク軸(15)が水平方向に沿っている状態で、上側に迫り上がる第1縁部(106)を形成しており、
前記第2の燃料受け部(115)の前記第2端部(115a)は、前記エンジン(1)の前記クランク軸(15)が鉛直方向に沿っている状態で、上側に迫り上がる第2縁部(116)を形成している、請求項3に記載の吹き返し防止部材。
【請求項5】
前記第1の燃料受け部(105)の一部及び前記第2の燃料受け部(115)の一部は、前記開口(25)に向かって見たときに、前記開口(25)の縁部の一部に沿って形成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の吹き返し防止部材。
【請求項6】
前記接続部(110)は、前記開口(25)に向かって見たときに、前記開口(25)の縁部の一部に沿って形成されている、請求項3又は4に記載の吹き返し防止部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、吹き返し防止部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、吹き返し防止部材を開示している。この吹き返し防止部材は、エアクリーナのフィルタの下流側で気化器の上流側の空間に配置されている。吹き返し防止部材は、気化器の側から吹き返す燃料が当たる当て板と、当て板の下部に設けられ、当て板に付着した燃料を受ける受け板と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構造では、当て板の下部に設けられた受け板によって、当て板の面上を垂れる燃料を捕集し得る構成となっている。しかしながら、例えば、クランク軸が下向きに突出するようにエンジンが配置された場合には、受け板による燃料の捕集能力が低下すると考えられる。
【0005】
本開示は、燃料を捕集する能力を向上させることができる吹き返し防止部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一例の吹き返し防止部材は、エンジン(1)に設けられた気化器(30)に連通する空気吸入路の入口側の開口(25)に設けられる吹き返し防止部材であって、開口(25)から離間して開口(25)に対向する壁体(101)と、壁体(101)から開口(25)が設けられた壁面(21a)に向かって突出し、エンジン(1)のクランク軸(15)が水平方向に沿っている状態で、開口(25)よりも下側に配置される第1の燃料受け部(105)と、壁体(101)から開口(25)が設けられた壁面(21a)に向かって突出し、エンジン(1)のクランク軸(15)が鉛直方向に沿っている状態で、開口(25)よりも下側に配置される第2の燃料受け部(115)と、を備える。
【0007】
この吹き返し防止部材では、気化器(30)に連通した開口(30)から吹き返した燃料が開口(25)に対向する壁体(101)に付着する。そして、クランク軸(15)が水平方向に沿っている状態となるようにエンジン(1)が配置される場合には、第1の燃料受け部(105)によって壁体(101)を垂れる燃料が捕集され、クランク軸(15)が鉛直方向に沿っている状態となるようにエンジン(1)が配置される場合には、第2の燃料受け部(115)によって燃料が捕集される。このように、エンジン(1)の配置が変更された場合であっても、壁体(101)に付着した燃料を捕集しやすい。したがって、燃料を捕集する能力を向上させることができる。
【0008】
第1の燃料受け部(105)及び第2の燃料受け部(115)は、開口(25)に向かって見たときに、互いの端部同士を接続部(110)として接続されていてもよい。この構成では、第1の燃料受け部(105)と第2の燃料受け部(115)との間から燃料がこぼれることが抑制される。
【0009】
第1の燃料受け部(105)は、エンジン(1)のクランク軸(15)が水平方向に沿っている状態で、接続部(110)から接続部(110)と逆側の第1端部(105a)に向かって上側に傾斜しており、第2の燃料受け部(115)は、エンジン(1)のクランク軸(15)が鉛直方向に沿っている状態で、接続部(110)から接続部(110)と逆側の第2端部(115a)に向かって上側に傾斜していてもよい。この構成では、第1の燃料受け部(105)及び第2の燃料受け部(115)に捕集された燃料は、接続部(110)に集まりやすくなっている。
【0010】
第1の燃料受け部(105)の第1端部(105a)は、エンジン(1)のクランク軸(15)が水平方向に沿っている状態で、上側に迫り上がる第1縁部(106)を形成しており、第2の燃料受け部(115)の第2端部(115a)は、エンジン(1)のクランク軸(15)が鉛直方向に沿っている状態で、上側に迫り上がる第2縁部(116)を形成してもよい。この構成では、第1縁部(106)及び第2縁部(116)から燃料がこぼれることが抑制される。
【0011】
第1の燃料受け部(105)の一部及び第2の燃料受け部(115)の一部は、開口(25)に向かって見たときに、開口(25)の縁部の一部に沿って形成されてもよい。特に、接続部(110)が、開口(25)の縁部の一部に沿って形成されていてもよい。この構成では、第1の燃料受け部(105)及び第2の燃料受け部(115)に捕集された燃料が開口(25)に吸い込まれやすくなっている。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、燃料を捕集する能力を向上させることができる吹き返し防止部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一例の吹き返し防止部材が適用されたエンジンの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施形態の一例について、図面を参照しながら説明する。以下の実施形態では、吹き返し防止部材が2ストロークエンジン(以下、単にエンジンという)に適用される場合について説明する。なお、図面には、X方向、Y方向及びZ方向を有する座標系が示される。以下、Z方向を上下方向(鉛直方向)として説明する場合がある。また、X方向、Y方向及びZ方向の一方側及び他方側を各座標軸の向きに応じて正側及び負側として説明する場合がある。
【0015】
まず、エンジンについて説明する。エンジン1は、例えば農業機械に適用され得る。
図1に示すように、エンジン1は、その外観において、本体を覆うエンジンカバー3と、エンジンカバー3に隣接配置されるエアクリーナ6と、燃料タンク5とを有している。エンジンカバー3のY方向の正側にはリコイルスタータ7が設けられている。
【0016】
図2は、
図1のII-II線に沿ったエンジン1の縦断面図である。
図3は、エンジン1のエアクリーナカバーを取り外した分解斜視図である。
図4は、エアクリーナカバーが取り外されたエンジン1をX方向から見た図である。
図5は、吹き返し防止部材の位置でエアクリーナを切断した断面図である。
図2に示すように、エンジン1は、シリンダ11と、シリンダ11の下部に連結されたクランクケース13と、クランクケース13から突出するクランク軸15と、を備える。シリンダ11がクランクケース13の上側に配置される場合、すなわち、Z方向の正側が上を向くようにエンジン1が配置される場合、クランク軸15はクランクケース13から水平方向に沿って突出する。以下、このような配置を「正立姿勢」と呼ぶ。また、Y方向の正側が上を向くようにエンジン1が配置される場合、クランク軸15はクランクケース13から鉛直方向に沿って下向きに突出し得る。以下、このような配置を「バーチカル姿勢」と呼ぶ。なお、バーチカル姿勢においては、クランクケース13の上側にリコイルスタータ7が配置されることになる。
【0017】
エンジン1は、吸入される空気を浄化するエアクリーナ6と、エアクリーナ6に連結されて、燃料を気化するとともに燃料と空気とを混合して混合気を生成する気化器(キャブレタ)30と、シリンダ11と気化器30とを接続するインシュレータ35とを備える。エンジン1は、吸入空気と燃料との混合気をシリンダ11内で燃焼させ、クランクケース13内のクランク機構により回転駆動力を発生させ、クランク軸15を介してその回転駆動力を伝達(出力)する。
【0018】
エアクリーナ6は、気化器30に接続されている。エアクリーナ6は、有底筒状のエアクリーナボディ21と、エアクリーナボディ21に対向するエアクリーナカバー23とを備えている。エアクリーナ6では、エアクリーナボディ21とエアクリーナカバー23との周縁部同士がネジ止めされることにより、クリーナエレメント24の収容空間を形成している。
【0019】
一例のクリーナエレメント24は、空気の流通方向の上流に設けられた第1エレメント24aと、流通方向の下流に設けられた第2エレメント24bとを有する。一例のエアクリーナ6では、エアクリーナボディ21とエアクリーナカバー23とのZ方向の正側に間隙が形成されており、
図2に矢印で示すように、この間隙を介して外部の空気が取り込まれている。すなわち、外部の空気は、Z方向の正側の間隙からエアクリーナカバー23内に入り、YZ平面に沿った端壁23bに沿って流通する。エアクリーナカバー23の内側には、X方向を軸方向としてクリーナエレメント24を周方向に囲む枠体23aが形成されている。枠体23aは、第1エレメント24aが端壁23bに対面し、第2エレメントがエアクリーナボディ21に対面するように、クリーナエレメント24を保持し得る。
【0020】
第1エレメント24aは、取り込まれる空気中の大きなゴミ等を捕捉する機能を有しており、例えば、スポンジ等によって形成されている。第2エレメント24bは、第1エレメント24aを通過した空気中の細かい埃等を捕捉する機能を有しており、例えば、蛇腹状に折り曲げられた濾紙等によって形成されている。
【0021】
エアクリーナボディ21は、気化器30に対向する略矩形板状の端壁21a(壁面)と、端壁21aの外周部に連結された略矩形筒状の周壁21bとを備える。端壁21aの中央部には、気化器30内の流路に連通する円筒状の開口25が設けられている。
【0022】
開口25は、エアクリーナ6内に向けて開放されている。エアクリーナ6には、開口25から気化器30に流通する空気の量を調整するためのチョークバルブ26が設けられている。チョークバルブ26は、たとえば樹脂製である。チョークバルブ26は、使用者に操作されてエアクリーナ6内で変位し、開口25の入口側を開閉する。たとえばエンジンの始動時にチョークバルブ26が開口25を閉鎖することで、吸入空気量が減少する。これにより、混合気中の燃料比率が高められる。
【0023】
一例のチョークバルブ26は、ネジ等の締結部材26aによって端壁21aに取り付けられている。チョークバルブ26は、締結部材26aの位置を回動中心として回動する板状部26bを有する。板状部26bの先端側には弁体26cが設けられている。弁体26cは、開口25を被覆できるように、開口25より大きな円形状をなしている。例えば、不図示のレバーが操作されることにより、チョークバルブ26の板状部26bは円弧状の軌跡を描いて揺動する。チョークバルブ26の移動範囲は、開口25が完全に開放される開放位置と、開口25が完全に閉鎖される閉鎖位置との間の範囲であってよい。
【0024】
吹き返し防止部材100は、エアクリーナ6内において、エンジン1に設けられた気化器30に連通する空気吸入路の入口側の開口25に設けられる。これにより、吹き返し防止部材100は、エンジン動作中に、気化器30から吹き返す燃料がクリーナエレメント24に付着することを抑制する。
【0025】
図4、
図5に示すように、吹き返し防止部材100は、壁体101と、第1の燃料受け部105と、第2の燃料受け部115と、を備える。壁体101は、開口25から離間して開口25に対向する。すなわち、X方向から見たときに壁体101は開口25を覆っており、Y方向及びZ方向から見たときに壁体101と開口25との間には間隙が形成されている。例えば、壁体101は、所定の中心角を有する略扇形状の板体である。図示例の壁体101は、中心角が90度未満の略扇形をなしている。壁体101とエアクリーナボディ21の端壁21aとは互いに平行になるように配置されている。壁体101の中心角に相当する部分は、開口25の周縁に沿った円弧状をなしており、X方向から見て開口25の周縁に沿うように配置されている。
【0026】
第1の燃料受け部105は、開口25が設けられた端壁21a(壁面)に向かって壁体101から突出している。例えば、第1の燃料受け部105は、板状に形成されており、壁体101に対して直交するように形成されている。図示例では、第1の燃料受け部105は、略扇形状をなす壁体101の半径に相当する部分に沿って形成されている。第1の燃料受け部105は、エンジン1が正立姿勢の場合に、開口25よりも下側に配置される。すなわち、第1の燃料受け部105は、Z方向において開口25よりも負側に位置している。例えば、第1の燃料受け部105は、開口25のZ方向負側の下端と略同じ位置に形成されてもよい。すなわち、第1の燃料受け部105の一部は、X方向から見たときに、開口25の縁部の一部に沿って形成されていてよい。
【0027】
第2の燃料受け部115は、壁体101から開口25が設けられた端壁21a(壁面)に向かって突出している。例えば、第2の燃料受け部115は、板状に形成されており、壁体101に対して直交するように形成されている。図示例では、第2の燃料受け部115は、略扇形状をなす壁体101の半径に相当する部分に沿って形成されている。第2の燃料受け部115は、エンジン1がバーチカル姿勢の場合に、開口25よりも下側に配置される。すなわち、第2の燃料受け部115は、Y方向において開口25よりも負側に位置している。例えば、第2の燃料受け部115は、開口25のY方向負側の下端と略同じ位置に形成されてもよい。すなわち、第2の燃料受け部115の一部は、X方向から見たときに、開口25の縁部の一部に沿って形成されていてよい。
【0028】
第1の燃料受け部105と第2の燃料受け部115とは、X方向から見たときに、互いの端部同士を接続部110として互いに接続されている。図示例では、第1の燃料受け部105におけるY方向負側の端部と第2の燃料受け部115におけるZ方向負側の端部とが互いに接続されている。接続部110は、開口25の周縁に沿って円弧状に湾曲している。
【0029】
第1の燃料受け部105は、エンジン1が正立姿勢の場合に、接続部110から接続部110と逆側の第1端部105aに向かって上側に傾斜している。すなわち、第1の燃料受け部105は、Y方向の正側になるにつれてZ方向の正側に向かって傾斜している。同様に、第2の燃料受け部115は、エンジン1がバーチカル姿勢の場合に、接続部110から接続部110と逆側の第2端部115aに向かって上側に傾斜している。すなわち、第2の燃料受け部115は、Z方向の正側になるにつれてY方向の正側に向かって傾斜している。なお、第1の燃料受け部105及び第2の燃料受け部115は、図面では判別し難いが、例えば1~5度程度の角度をもって傾斜していてよい。
【0030】
第1の燃料受け部105の第1端部105aは、エンジン1が正立姿勢の場合に、上側に迫り上がる第1縁部106を形成している。第1縁部106は、X方向から見て、Z方向の正側に向かって湾曲した部分である。同様に、第2の燃料受け部115の第2端部115aは、エンジン1がバーチカル姿勢の場合に、上側に迫り上がる第2縁部116を形成している。第2縁部116は、X方向から見て、Y方向の正側に向かって湾曲した部分である。
【0031】
一例の吹き返し防止部材100は、ボルト等の締結部材によってエアクリーナボディ21に固定されている。例えば、エアクリーナボディ21の端壁21aには、補強用のリブ27が形成されている。リブ27は、端壁21aからX方向の正側に向かって突出している。一例のリブ27は、開口25を中心とする複数の円弧状リブ27aと、開口25を略中心とする複数の放射状リブ27bと、Z方向に沿って形成される複数の縦リブ27cとを含む。端壁21aには、突出片28が形成されている。突出片28は、リブ27よりも更にX方向正側に突出している。この突出片28は、X方向から見たときに、吹き返し防止部材100の第1の燃料受け部105、第2の燃料受け部115及び接続部110の外側の側面に当接するように形成されている。なお、外側の側面とは、開口25に向いた内側の側面とは逆側の側面である。第1の燃料受け部105、第2の燃料受け部115及び接続部110のX方向負側の端部は、突出片28に当接することで位置決めされ得る。また、第1の燃料受け部105、第2の燃料受け部115及び接続部110は、壁体101から端壁21aまでの間において連続して形成されることになる。
【0032】
図示例では、第1の燃料受け部105のうちの開口25を向く内側の側面にボルトを保持する保持部107が形成されている。また、第2の燃料受け部115のうちの開口25とは逆側を向く側面にボルトを保持する保持部117が形成されている。保持部107,117は、第1の燃料受け部105及び第2の燃料受け部115から突出するように形成されている。そのため、突出片28は、X方向から見たときに、吹き返し防止部材100の外側の側面と共に保持部117にも当接している。なお、吹き返し防止部材100は、保持部107,117に保持されるボルトが端壁21aを貫通して、気化器30に締結されることにより、端壁21aに固定される。また、これにより、エアクリーナボディ21も気化器30に対して固定される。
【0033】
以上説明したとおり、一例の吹き返し防止部材100は、エンジン1に設けられた気化器30に連通する空気吸入路の入口側の開口25に設けられる吹き返し防止部材であって、開口25から離間して開口25に対向する壁体101と、壁体101から開口25が設けられた端壁21aに向かって突出し、エンジン1のクランク軸15が水平方向に沿っている状態で、開口25よりも下側に配置される第1の燃料受け部105と、壁体101から開口25が設けられた端壁21aに向かって突出し、エンジン1のクランク軸15が鉛直方向に沿っている状態で、開口25よりも下側に配置される第2の燃料受け部115と、を備える。
【0034】
この吹き返し防止部材100では、気化器30に連通する開口25から吹き返した燃料が開口25に対向する壁体101の壁面に付着する。そして、クランク軸15が水平方向に沿っている状態となるようにエンジン1が配置される場合には、壁体101を垂れる燃料が第1の燃料受け部105によって捕集され、クランク軸15が鉛直方向に沿っている状態となるようにエンジン1が配置される場合には、第2の燃料受け部115によって燃料が捕集される。捕集された燃料は、開口25に吸い込まれ得る。
【0035】
このように、一例の吹き返し防止部材によれば、エンジン1の配置姿勢が変更された場合であっても、壁体101を垂れる燃料を捕集できる。したがって、燃料を捕集する能力を向上させることができる。また、いずれの姿勢であっても壁体101を垂れる燃料を捕集できるので、壁体101に付着した燃料が飛散してクリーナエレメント24(特に第2エレメント24b)に付着することが抑制される。
【0036】
第1の燃料受け部105及び第2の燃料受け部115は、開口25に向かって見たときに、互いの端部同士を接続部110として接続されていてもよい。この構成では、第1の燃料受け部105と第2の燃料受け部115との間から燃料がこぼれることが抑制される。
【0037】
第1の燃料受け部105は、エンジン1のクランク軸15が鉛直方向に沿っている状態で、接続部110から接続部110と逆側の第1端部105aに向かって上側に傾斜しており、第2の燃料受け部115は、エンジン1のクランク軸15が水平方向に沿っている状態で、接続部110から接続部110と逆側の第2端部115aに向かって上側に傾斜していてもよい。この構成では、第1の燃料受け部105及び第2の燃料受け部115に捕集された燃料は、接続部110に集まりやすくなっている。
【0038】
第1の燃料受け部105の第1端部105aは、エンジン1のクランク軸15が鉛直方向に沿っている状態で、上側に迫り上がる第1縁部106を形成しており、第2の燃料受け部115の第2端部115aは、エンジン1のクランク軸15が水平方向に沿っている状態で、上側に迫り上がる第2縁部116を形成してもよい。この構成では、第1縁部106及び第2縁部116から燃料がこぼれることが抑制される。
【0039】
第1の燃料受け部105の一部及び第2の燃料受け部115の一部は、開口25に向かって見たときに、開口25の縁部の一部に沿って形成されてもよい。この構成では、第1の燃料受け部105及び第2の燃料受け部115に捕集された燃料が開口25に吸い込まれやすくなっている。なお、一形態においては、接続部110が開口25の縁部の一部に沿って形成されている。この場合、正立姿勢及びバーチカル姿勢のいずれであっても燃料受け部を流下する燃料が開口25近傍に溜まりやすい。
【0040】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限られない。たとえば、吹き返し防止部材100の壁体101の形状は、略扇形状に限られない。壁体101は、矩形板状等の他の形状であってもよい。また、壁体101は、エアクリーナボディ21の端壁21aに平行でなくてもよい。例えば、壁体101は端壁21aに対して所定の角度をもって傾斜していてもよい。
【0041】
エンジン1は、2ストロークエンジンに限られず、4ストロークエンジンであってもよい。エンジンの排気量も特に限定されない。本開示は、吹き返しが生じ得るあらゆる内燃機関に適用可能である。
【0042】
第1縁部106及び第2縁部116は、X方向から見て、湾曲していなくてもよい。例えば、第1縁部106は、X方向から見て、Z方向の正側に向かって直線状に傾斜していてもよい。第2縁部116は、X方向から見て、Y方向の正側に向かって直線状に傾斜していてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1…エンジン、15…クランク軸、21a…端壁(壁面)、25…開口、30…気化器、100…吹き返し防止部材、101…壁体、105…第1の燃料受け部、115…第2の燃料受け部。