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特開2023-123069通信システム、通信装置、及び通信方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123069
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】通信システム、通信装置、及び通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/00 20060101AFI20230829BHJP
【FI】
H04L27/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026925
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】井奈波 拓也
(72)【発明者】
【氏名】岡田 行史
(57)【要約】
【課題】通信の安全性を向上させる。
【解決手段】実施形態に係る通信システムは第1及び第2の通信装置を備える。第1の通信装置は、2のべき乗によらない変調方式を含む複数の変調方式の中からデータ送信に使用する第1の変調方式を選択することと、第1の変調方式による変調に使用するオフセットを設定することと、を含む第1の変調方式制御を繰り返し行い、送信データを送信するために、第1の変調方式及びオフセットに基づいた変調を行う。第2の通信装置は、複数の変調方式の中からデータ受信に使用する第2の変調方式を選択することと、第2の変調方式による復調に使用する閾値を設定することと、を含む第2の変調方式制御を繰り返し行い、受信データを得るために、第1の通信装置からの信号に対して第2の変調方式及び閾値に基づいた復調を行う。第2の変調方式制御は第1の変調方式制御と同期して行われる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の通信装置及び第2の通信装置を備える通信システムであって、
前記第1の通信装置は、
2のべき乗によらない変調方式を含む複数の変調方式の中からデータ送信に使用する第1の変調方式を選択することと、前記第1の変調方式による変調に使用するオフセットを設定することと、を含む第1の変調方式制御を繰り返し行う第1の変調方式制御部と、
送信データに基づくビット列に対して、前記第1の変調方式及び前記オフセットに基づいた変調を行う変調部と、
前記変調により得られる信号を送信する送信部と、
を備え、
前記第2の通信装置は、
前記複数の変調方式の中からデータ受信に使用する第2の変調方式を選択することと、前記第2の変調方式による復調に使用する閾値を設定することと、を含む第2の変調方式制御を繰り返し行う第2の変調方式制御部と、
前記第1の通信装置からの前記信号を受信する受信部と、
前記信号に対して前記第2の変調方式及び前記閾値に基づいた復調を行う復調部と、
を備え、
前記第2の変調方式制御部は、前記第1の変調方式制御部における前記第1の変調方式制御と同期して前記第2の変調方式制御を行う、
通信システム。
【請求項2】
前記第1の変調方式制御部は、複数の第1擬似乱数符号を生成し、
前記第1の変調方式制御において、前記第1の変調方式制御部は、前記複数の第1擬似乱数符号の中から第1擬似乱数符号を選択し、前記第1擬似乱数符号の第1部分に基づいて前記複数の変調方式の中から前記第1の変調方式を選択し、前記第1擬似乱数符号の第2部分に基づいて前記オフセットを算出し、
前記第2の変調方式制御部は、前記複数の第1擬似乱数符号と同じ複数の第2擬似乱数符号を生成し、
前記第2の変調方式制御において、前記第2の変調方式制御部は、前記複数の第2擬似乱数符号の中から第2擬似乱数符号を選択し、前記第1擬似乱数符号の第1部分に基づいて前記複数の変調方式の中から前記第2の変調方式を選択し、前記第2擬似乱数符号の第2部分に基づいて前記閾値を設定する、
請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記2のべき乗によらない変調方式は3相位相変調(TPSK)である、
請求項1又は2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記オフセットは、IQ平面の原点をずらす量を示すオフセットであり、
前記変調部は、前記ビット列に対して、前記第1の変調方式に対応する信号点が配置されるIQ平面の原点を前記オフセットだけシフトさせることで得られるIQ平面へのマッピングを含む前記変調を行い、
前記送信部は、前記信号を前記第2の通信装置に無線送信する、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項5】
前記第1の変調方式制御は、複数の信号点パターンの中から前記データ送信に使用する信号点パターンを選択することをさらに含み、
前記変調部は、前記ビット列に対して、前記第1の変調方式に対応する前記信号点が前記信号点パターンで配置されるIQ平面の原点を前記オフセットだけシフトさせることで得られるIQ平面へのマッピングを含む前記変調を行う、
請求項4に記載の通信システム。
【請求項6】
前記変調部は、前記変調により第1の電気信号及び第2の電気信号を得て、
前記送信部は、前記第1の電気信号に電気光変換を施して第1の周波数を有する第1の光信号を得て、前記第2の電気信号に電気光変換を施して前記第1の周波数とは異なる第2の周波数を有する第2の光信号を得て、前記第1の光信号及び前記第2の光信号を結合して第3の光信号を生成し、前記第3の光信号を前記第2の通信装置に送信する、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項7】
2のべき乗によらない変調方式を含む複数の変調方式の中からデータ送信に使用する変調方式を選択することと、前記変調方式による変調に使用するオフセットを算出することと、を含む変調方式制御を繰り返し行う変調方式制御部と、
送信データに基づくビット列に対して、前記変調方式及び前記オフセットに基づいた変調を行う変調部と、
前記変調により得られる信号を他の通信装置に送信する送信部と、
を備える通信装置。
【請求項8】
複数の変調方式の中からデータ受信に使用する変調方式を選択することと、前記変調方式による復調に使用する閾値を設定することと、を含む変調方式制御を繰り返し行う変調方式制御部と、
他の通信装置からの信号を受信する受信部と、
前記信号に対して前記変調方式及び前記閾値に基づいた復調を行う復調部と、
を備える通信装置。
【請求項9】
第1の通信装置が、2のべき乗によらない変調方式を含む複数の変調方式の中からデータ送信に使用する第1の変調方式を選択することと、前記第1の変調方式による変調に使用するオフセットを設定することと、を含む第1の変調方式制御を繰り返し行うことと、
前記第1の通信装置が、送信データに基づくビット列に対して、前記第1の変調方式及び前記オフセットに基づいた変調を行うことと、
前記第1の通信装置が、前記変調により得られる信号を送信することと、
第2の通信装置が、前記複数の変調方式の中からデータ受信に使用する第2の変調方式を選択することと、前記第2の変調方式による復調に使用する閾値を設定することと、を含む第2の変調方式制御を繰り返し行うことと、
前記第2の通信装置が、前記第1の通信装置からの前記信号を受信することと、
前記第2の通信装置が、前記信号に対して前記第2の変調方式及び前記閾値に基づいた復調を行うことと、
を備え、
前記第2の通信装置は、前記第1の通信装置における前記第1の変調方式制御と同期して前記第2の変調方式制御を行う、
通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、通信システム、通信装置、及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電磁波領域においては安全性の高い通信が望まれている。データ通信においては、ソフトウェア的な手法で安全性を担保してきたが、演算装置の計算能力の著しい発展により、安全性が相対的に低下してきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-209493号公報
【特許文献2】特開2014-39092号公報
【特許文献3】国際公開第2018/012117号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、通信の安全性を向上させることができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態に係る通信システムは、第1の通信装置及び第2の通信装置を備える。第1の通信装置は、2のべき乗によらない変調方式を含む複数の変調方式の中からデータ送信に使用する第1の変調方式を選択することと、前記第1の変調方式による変調に使用するオフセットを設定することと、を含む第1の変調方式制御を繰り返し行う第1の変調方式制御部と、送信データに基づくビット列に対して、前記第1の変調方式及び前記オフセットに基づいた変調を行う変調部と、前記変調により得られる信号を送信する送信部と、を備える。第2の通信装置は、前記複数の変調方式の中からデータ受信に使用する第2の変調方式を選択することと、前記第2の変調方式による復調に使用する閾値を設定することと、を含む第2の変調方式制御を繰り返し行う第2の変調方式制御部と、前記第1の通信装置からの前記信号を受信する受信部と、前記信号に対して前記第2の変調方式及び前記閾値に基づいた復調を行う復調部と、を備える。前記第2の変調方式制御部は、前記第1の変調方式制御部における前記第1の変調方式制御と同期して前記第2の変調方式制御を行う。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1の実施形態に係る無線通信システムを示すブロック図。
図2図1の実施形態に係る変調方式制御を説明する図。
図3図1に示した無線通信装置により実行されるデータ送信方法を示すフローチャート。
図4図1に示した無線通信装置により実行されるデータ受信方法を示すフローチャート。
図5】第1の実施形態の変形例に係る無線通信システムを示すブロック図。
図6】第1の実施形態の変形例に係る変調方式制御を説明する図。
図7】第2の実施形態に係る光通信システムを示すブロック図。
図8】第2の実施形態に係る変調を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら実施形態を説明する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る無線通信システム100を概略的に示している。図1に示すように、無線通信システム100は無線通信装置110及び無線通信装置120を備える。無線通信装置110は無線通信装置120と無線通信する。ここでは、無線通信装置110がデータ送信側であり、無線通信装置120がデータ受信側であるとし、図1では、データ送信に関連する構成要素が無線通信装置110に示され、データ受信に関連する構成要素が無線通信装置120に示されている。無線通信装置110、120の各々はデータ送信に関連する構成要素とデータ受信に関連する構成要素の両方を備えてよい。データ送信は、ユニキャスト、マルチキャスト、ブロードキャストのいずれにより行われてもよい。
【0009】
無線通信装置110は、ハードウェア構成要素として、プロセッサとしてのCPU(Central Processing Unit)10、メモリ(図示せず)、及び通信モジュール11を備える。無線通信装置110は移動可能とされてよい。例えば、無線通信装置110は、人により携帯される端末装置(例えばスマートフォン)であってもよく、移動機構を備える移動体(例えばドローン)であってもよい。
【0010】
無線通信装置110は、誤り訂正符号付与部111、変調方式制御部112、符号変換部113、インタリーブ部114、変調部115、ミキサ116、搬送波発振器117、送信部118、及びアンテナ119を備える。本実施形態では、これらは通信モジュール11に実装される。他の実施形態では、これらの一部において行われる処理はCPU10により実現されてもよい。例えば、CPU10は、メモリに記憶されているプログラムを実行すると、誤り訂正符号付与部111などとして機能する。
【0011】
誤り訂正符号付与部111は、CPU10において発生した送信データに誤り訂正符号を付与し、誤り訂正符号を含む送信データを符号変換部113に送出する。例えば、誤り訂正符号付与部111は、送信データに基づいて誤り訂正符号を生成し、生成した誤り訂正符号を送信データに付加する。誤り訂正符号としては、例えば、巡回冗長検査(CRC;Cyclic Redundancy Checking)符号、前方誤り訂正(FEC;Forward Error Correction)符号などを使用することができる。
【0012】
変調方式制御部112は、データ送信(無線通信装置120との通信)に使用する変調方式を制御する。具体的には、変調方式制御部112は、データ送信に使用する変調方式を決定する処理を含む変調方式制御を繰り返し行う。変調方式制御部112は、例えば所定の時間間隔で、変調方式制御を行う。変調方式制御部112は、初期値生成部1121、擬似乱数生成部1122、変調方式選択部1123、及びオフセット算出部1124を備える。
【0013】
初期値生成部1121は、M系列擬似乱数を生成するために使用する初期値(シード値)を生成する。初期値は無線通信装置110、120間で同期される。すなわち、無線通信装置110、120で同じ初期値が生成される。非限定的な例として、無線通信装置110、120間の通信における初期段階において、初期値生成部1121は、無線通信装置110、120間で同期をとるための同期データを無線通信装置120に送信する。同期データは、初期値の生成に使用するデータ及び変調方式制御を行うタイミングを示すデータを含んでよい。同期データは、誤り訂正符号付与部111、符号変換部113、インタリーブ部114、変調部115、ミキサ116、送信部118、及びアンテナ119を介して送信される。初期値生成部1121は同期データから初期値を生成し、無線通信装置120は無線通信装置110から受信した同期データから初期値を生成する。
【0014】
擬似乱数生成部1122は、初期値生成部1121により生成された初期値と予め定められたM系列擬似乱数生成アルゴリズムとに基づいて、所定のビット長を有する複数のM系列擬似乱数符号を生成する。例えば、擬似乱数生成部1122は、予め定められたM系列擬似乱数生成アルゴリズムに従って初期値からM系列擬似乱数を算出し、算出したM系列擬似乱数から所定のビット長を有する複数のM系列擬似乱数符号を抽出する。M系列擬似乱数符号のビット長を14とする例において、擬似乱数生成部1122は、M系列擬似乱数の第1ビットから第14ビットを第1のM系列擬似乱数符号として抽出し、M系列擬似乱数の第15ビットから第28ビットを第2のM系列擬似乱数符号として抽出し、・・、M系列擬似乱数の第(14(N-1)+1)ビットから第(14N)ビットを第NのM系列擬似乱数符号として抽出し、それにより、N個のM系列擬似乱数符号を得る。M系列擬似乱数生成アルゴリズムが予め定められているとは、通信相手である無線通信装置120において使用されるものと同じM系列擬似乱数生成アルゴリズムが無線通信装置110に実装されていることを意味し得る。例えば、無線通信装置110と無線通信装置120とで同じ漸化式が使用される。
【0015】
各M系列擬似乱数符号は、その第1部分が変調方式選択部1123で使用され、その第2部分がオフセット算出部1124で使用される。例えば、図2に示すように、M系列擬似乱数符号の上位2ビットが変調方式選択部1123で使用され、M系列擬似乱数符号の下位12ビットがオフセット算出部1124で使用される。
【0016】
再び図1を参照すると、変調方式選択部1123は、擬似乱数生成部1122により生成されたM系列擬似乱数符号の第1部分に基づいて、予め定められた複数の変調方式の中からデータ送信に使用する変調方式を選択する。具体的には、変調方式選択部1123は、予め定められた複数の変調方式の中から、M系列擬似乱数符号の第1部分に対応する変調方式をデータ送信に使用する変調方式として選択する。例えば、2相位相変調(BPSK;Binary Phase Shift Keying)、3相位相変調(TPSK;Ternary Phase Shift Keying)、4相位相変調(QPSK;Quadrature Phase Shift Keying)、16値直交振幅変調(16QAM;16-position Quadrature Amplitude Modulation)という4つのデジタル変調方式が使用可能とされる。BPSK、QPSK、16QAMは2のべき乗による位相変調方式の例であり、TPSKは2のべき乗によらない位相変調方式の例である。2のべき乗によらない変調方式は、情報ビットを2のべき乗に等しくない数のシンボル(信号点)に割り当てる変調方式である。例えば、変調方式選択部1123は、M系列擬似乱数符号の上位2ビットが“00”である場合にはBPSKを選択し、M系列擬似乱数符号の上位2ビットが“01”である場合にはTPSKを選択し、M系列擬似乱数符号の上位2ビットが“10”である場合にはQPSKを選択し、M系列擬似乱数符号の上位2ビットが“11”である場合には16QAMを選択する。変調方式を選択するだけでなく、変調方式そのものにM系列擬似乱数符号を適用してもよい。例えばDPQSK(Differential Quadrature Phase Shift Keying)のような位相差を用いた差動符号伝送のときは、M系列擬似乱数符号の一部に基づいて位相差のオフセットを決定して位相差を変更(加減)するようにしてもよい。
【0017】
なお、変調方式の数は、4個に限らず、2個、3個、又は5個以上であってもよい。例えば、BPSK、TPSK、QPSKという3つの変調方式が使用可能とされる場合、変調方式選択部1123は、M系列擬似乱数符号の上位2ビットが“00”である場合にはBPSKを選択し、M系列擬似乱数符号の上位2ビットが“01”である場合にはTPSKを選択し、M系列擬似乱数符号の上位2ビットが“10”又は“11”である場合にはQPSKを選択してよい。
【0018】
オフセット算出部1124は、擬似乱数生成部1122により生成されたM系列擬似乱数符号の第2部分に基づいて、一次変調(具体的にはマッピング)に使用するオフセットを算出する。オフセットは、複素平面であるIQ平面の原点をずらす量を示し、I(In-phase)軸のオフセット及びQ(Quadrature phase)軸のオフセットを含む。例えば、オフセット算出部1124は、M系列擬似乱数符号の中間6ビット(第3ビットから第8ビット)に基づいてI軸オフセットを算出し、M系列擬似乱数符号の下位6ビット(第9ビットから第14ビット)に基づいてQ軸オフセットを算出する。一例として、オフセット算出部1124は、ビット長が6であるビット列とオフセットの値とを関連付けた変換テーブルを保持し、変換テーブルを使用してM系列擬似乱数符号の中間6ビットをオフセット値に変換することによりI軸オフセットを得て、変換テーブルを使用してM系列擬似乱数符号の下位6ビットをオフセット値に変換することによりQ軸オフセットを得る。
【0019】
符号変換部113は、誤り訂正符号付与部111から誤り訂正符号を含む送信データを受け取り、送信データに対して符号変換を行って符号化データを得る。符号変換は、例えば、ビットレート制限及び畳み込み符号化を含む。
【0020】
インタリーブ部114は、符号変換部113から符号化データを受け取り、符号化データに対してインタリーブを行う。
【0021】
変調部115は、変調方式選択部1123により選択された変調方式及びオフセット算出部1124により算出されたオフセットに基づいて、インタリーブ部114から出力されるビット列を変調して複素信号を生成する。複素信号は、I信号及びQ信号とも称される2チャンネルの電気信号を含む。具体的には、変調部115は、変調方式選択部1123により選択された変調方式に対応する信号点が配置されるIQ平面の原点をオフセット算出部1124により算出されたオフセットだけシフトさせることで得られるIQ平面へのマッピングを含む一次変調をビット列に対して行う。IQ平面の原点をオフセットだけシフトさせることは、IQ平面上で各信号点をオフセットの反数だけシフトさせることに対応する。I軸オフセットをO、Q軸オフセットをOとすると、QPSKでは、例えば、情報“11”が信号点(1-O,1-O)にマッピングされ、情報“01”が信号点(-1-O,1-O)にマッピングされ、情報“10”が信号点(1-O,-1-O)にマッピングされ、情報“00”が信号点(-1-O,-1-O)にマッピングされることとなる。この場合、I信号は、1-OI、-1-Oに対応する2値で変化する信号となり、Q信号は、1-O、-1-Oに対応する2値で変化する信号となる。
【0022】
ミキサ116は、搬送波発振器117により生成される搬送波を使用して複素信号から変調信号を生成する。例えば、ミキサ116は、第1の乗算器、第2の乗算器、及び合波器を備え、第1の乗算器においてI信号に搬送波を乗じ、第2の乗算器においてQ信号に位相を90度ずらした搬送波を乗じ、合波器において第1の乗算器の出力と第2の乗算器の出力を合成する。
【0023】
送信部118は、ミキサ116により生成された変調信号を無線送信する。例えば、送信部118は、変調信号に対して逆高速フーリエ変換(IFFT;Inverse Fast Fourier Transform)などを含む二次変調を行って無線信号を生成し、アンテナ119を介して無線信号を送信する。
【0024】
無線通信装置120は、無線通信装置110により送信される無線信号を受信する。無線通信装置120は、無線通信装置110により実行される処理に相補的な処理を行う。無線通信装置120は、ハードウェア構成要素として、CPU20、メモリ(図示せず)、及び通信モジュール21を備える。無線通信装置120は移動可能とされてよい。
【0025】
無線通信装置120は、誤り訂正部121、変調方式制御部122、符号逆変換部123、デインタリーブ部124、復調部125、ミキサ126、搬送波発振器127、受信部128、及びアンテナ129を備える。本実施形態では、これらは通信モジュール21に実装される。他の実施形態では、これらの一部において行われる処理はCPU20により実現されてもよい。例えば、CPU20は、メモリに記憶されているプログラムを実行すると、誤り訂正部121などとして機能する。
【0026】
受信部128は、アンテナ129を介して無線通信装置110からの無線信号を受信する。受信部128は、無線信号に対して高速フーリエ変換(FFT;Fast Fourier Transform)などを含む二次復調を行って復調信号を生成する。
【0027】
ミキサ126は、搬送波発振器127により生成される搬送波を使用して受信部128により生成された復調信号から複素信号を生成する。例えば、ミキサ126は、分波器、第1の乗算器、及び第2の乗算器を備える。ミキサ126は、分波器において復調信号を二分岐し、第1の乗算器において一方の復調信号に搬送波を乗じてI信号を生成し、第2の乗算器において他方の復調信号に位相を90度ずらした搬送波を乗じてQ信号を生成する。
【0028】
変調方式制御部122は、データ受信(無線通信装置110との通信)に使用する変調方式を制御する。例えば、変調方式制御部122は、データ受信に使用する変調方式を決定する処理を含む変調方式制御を繰り返し行う。変調方式制御部122は、初期値生成部1221、擬似乱数生成部1222、変調方式選択部1223、及び閾値設定部1224を備える。初期値生成部1221、擬似乱数生成部1222、及び変調方式選択部1223はそれぞれ、無線通信装置110の初期値生成部1121、擬似乱数生成部1122、及び変調方式選択部1123と同様の処理を行う。このため、初期値生成部1221、擬似乱数生成部1222、及び変調方式選択部1223についての詳細な説明は省略する。
【0029】
初期値生成部1221は、M系列擬似乱数を生成するために使用する初期値(シード値)を生成する。例えば、初期値生成部1221は、無線通信装置110により送信される同期データから初期値を生成する。初期値生成部1221は、アンテナ129、受信部128、ミキサ126、復調部125、デインタリーブ部124、符号逆変換部123、及び誤り訂正部121を介して無線通信装置110からの同期データを得る。
【0030】
擬似乱数生成部1222は、初期値生成部1221により生成された初期値と予め定められたM系列擬似乱数生成アルゴリズムとに基づいて、所定のビット長を有する複数のM系列擬似乱数符号を生成する。擬似乱数生成部1222は、無線通信装置110の擬似乱数生成部1122が使用するものと同じ初期値及びM系列擬似乱数生成アルゴリズムを使用し、それにより、擬似乱数生成部1122により生成されるものと同じM系列擬似乱数符号を得る。
【0031】
変調方式選択部1223は、擬似乱数生成部1222により生成されたM系列擬似乱数符号の第1部分(例えば上位2ビット)に基づいて、予め定められた複数の変調方式の中からデータ受信に使用する変調方式を選択する。変調方式選択部1223は、無線通信装置110の変調方式選択部1123と同じ選択規則に従って変調方式選択を行う。
【0032】
閾値設定部1224は、擬似乱数生成部1222により生成されたM系列擬似乱数符号の第2部分に基づいて、変調方式選択部1223により選択された変調方式に基づく一次復調(具体的にはデマッピング)に使用する複数の閾値(基底値)を設定する。閾値設定部1224は、無線通信装置110のオフセット算出部1124と同じ計算規則に従ってオフセット算出を行ってオフセットを得て、変調方式選択部1223により選択された変調方式に対応するIQ平面上の閾値からオフセットを減じる。閾値はI軸の閾値及びQ軸の閾値を含み、閾値設定部1224は、I軸の閾値の各々からI軸オフセットを減じ、Q軸の閾値の各々からQ軸オフセットを減じる。
【0033】
無線通信装置120の変調方式制御部122は、無線通信装置110の変調方式制御部112と同期して変調方式制御を行う。例えば、変調方式制御部122は、変調方式制御部112が変調方式制御を行う周期と同じ周期で、変調方式制御部112と同じ方法に従って変調方式制御を行う。これにより、無線通信装置120は、無線通信装置110が使用する変調方式と同じ変調方式、及び無線通信装置110が使用するオフセットに適合する閾値を一次復調に使用することとなる。
【0034】
復調部125は、変調方式選択部1223により選択された変調方式及び閾値設定部1224により設定された閾値に基づいて、ミキサ126から出力される複素信号を復調してビット列を生成する。例えば、復調部125は、変調方式選択部1223により選択された変調方式及び閾値設定部1224により設定された閾値を用いたデマッピングを含む一次復調を複素信号に対して行う。後段の符号逆変換部123において軟判定復号が行われる場合には、復調部125から出力されるビット列は軟判定値を含む。
【0035】
デインタリーブ部124は、復調部125から出力されるビット列に対してデインタリーブを行う。
【0036】
符号逆変換部123は、デインタリーブ部124から出力されるビット列に対して符号逆変換を行ってデータを生成する。符号逆変換は、例えば、ビットレート制限及びビタビ復号を含む。例えば、符号逆変換部123は、変調方式選択部1223により選択された変調方式に従って軟判定ビタビ復号を行う。
【0037】
誤り訂正部121は、符号逆変換部123により生成されたデータに誤り訂正を行って受信データを得る。
【0038】
次に、無線通信システム100の動作について説明する。
【0039】
図3は、無線通信装置110により実行されるデータ送信方法を概略的に示している。
【0040】
図3のステップS31において、変調方式制御部112は、所定のビット長を有するN個のM系列擬似乱数符号を生成する。例えば、初期値生成部1121が初期値を生成し、擬似乱数生成部1122は、生成された初期値を使用してM系列擬似乱数を生成し、生成したM系列擬似乱数を切り分けてN個のM系列擬似乱数符号を得る。擬似乱数生成部1122は、N個のM系列擬似乱数符号に識別子(1~N)を割り当てる。
【0041】
ステップS32において、変調方式制御部112は変数iを初期化する。例えば、変調方式制御部112は変数iを1にする。
【0042】
ステップS33において、変調方式制御部112は、N個のM系列擬似乱数符号の中から、識別子がiであるM系列擬似乱数符号を選択する。
【0043】
ステップS34において、変調方式制御部112は、ステップS33で選択されたM系列擬似乱数符号に基づいてデータ送信に使用する変調方式及びオフセットを決定する。例えば、変調方式選択部1123は、BPSK、TPSK、QPSK、16QAMの中から、M系列擬似乱数符号の上位2ビットに対応する変調方式を選択する。さらに、例えば、オフセット算出部1124は、M系列擬似乱数符号の中間6ビットに基づいてI軸オフセットを算出し、M系列擬似乱数符号の下位6ビットに基づいてQ軸オフセットを算出する。
【0044】
ステップS35において、無線通信装置110は、ステップS34で決定された変調方式及びオフセットを使用してデータ送信を行う。例えば、符号変換部113が送信データに符号変換を行って符号化データとしてのビット列を得て、インタリーブ部114が符号変換部113から出力されるビット列に対してインタリーブを行い、変調部115がインタリーブ部114から出力されるビット列に対してステップS34で決定された変調方式及びオフセットに基づく一次変調を行い、ミキサ116が搬送波発振器117から出力される搬送波を使用して変調部115から出力される複素信号から変調波を生成し、送信部118が変調波を無線信号に変換してアンテナ119を介して送信する。例えば、変調部115は、ステップS34で決定された変調方式に対応する信号点を有するIQ平面の原点をステップS34で決定されたオフセットだけシフトさせることで得られるIQ平面へのマッピングを含む変調をビット列に対して行う。
【0045】
ステップS36において、変調方式制御部112は、ステップS43の処理が実行されてから所定の時間が経過したか否かを判定する。所定の時間が経過してない場合(ステップS36;No)、無線通信装置110はデータ送信を継続する。所定の時間が経過すると(ステップS36;Yes)、フローはステップS37に進む。
【0046】
ステップS37において、変調方式制御部112は、変数iがNに等しいか否かを判定する。変数iがNより小さい場合(ステップS37;No)、フローはステップS38に進み、無線通信装置110は、変数iを1だけインクリメントする。その後、フローはステップS33に戻り、ステップS33以降の処理が繰り返される。
【0047】
変数iがNに等しい場合(ステップS37;Yes)、フローは終了となる。例えば、図3に示すフローが再度実行される。
【0048】
このようにして、無線通信装置110は、変調方式を時々刻々と切り替えながらデータ送信を行う。
【0049】
図4は、無線通信装置120により実行されるデータ受信方法を概略的に示している。
【0050】
図4のステップS41において、擬似乱数生成部1222は、所定のビット長を有するN個のM系列擬似乱数符号を生成し、N個のM系列擬似乱数符号に識別子(1~N)を割り当てる。
【0051】
ステップS42において、変調方式制御部122は変数iを1にする。
【0052】
ステップS43において、変調方式制御部122は、N個のM系列擬似乱数符号の中から、識別子がiであるM系列擬似乱数符号を選択する。
【0053】
ステップS44において、変調方式制御部122は、ステップS43で選択されたM系列擬似乱数符号に基づいてデータ受信に使用する変調方式及び閾値を決定する。例えば、変調方式選択部1223は、BPSK、TPSK、QPSK、16QAMの中から、M系列擬似乱数符号の上位2ビットに対応する変調方式を選択する。さらに、例えば、閾値設定部1224は、M系列擬似乱数符号の中間6ビットに基づいてI軸オフセットを算出し、変調方式選択部1223により選択された変調方式に対応するI軸の閾値をI軸オフセットの反数だけシフトし、M系列擬似乱数符号の下位6ビットに基づいてQ軸のオフセットを算出し、変調方式選択部1223により選択された変調方式に対応するQ軸の閾値をQ軸オフセットの反数だけシフトする。
【0054】
ステップS45において、無線通信装置120は、ステップS44で決定された変調方式及びオフセットを使用してデータ受信を行う。例えば、受信部128がアンテナ129を介して受信した無線信号を復調して復調波を得て、ミキサ126が搬送波発振器127から出力される搬送波を使用して復調波から複素信号を生成し、復調部125がステップS44で決定された変調方式及び閾値に基づく復調を複素信号に対して行い、デインタリーブ部124が復調部125から出力されるビット列に対してデインタリーブを行い、符号逆変換部123がデインタリーブ部124から出力されるビット列に対して符号逆変換を行ってデータを得る。例えば、復調部125は、ステップS44で決定された閾値を使用したデマッピングを含む復調を複素信号に対して行う。
【0055】
ステップS46において、変調方式制御部122は、ステップS43の処理が実行されてから所定の時間が経過したか否かを判定する。所定の時間が経過してない場合(ステップS46;No)、無線通信装置120はデータ受信を継続する。所定の時間が経過すると(ステップS46;Yes)、フローはステップS47に進む。
【0056】
ステップS47において、変調方式制御部122は、変数iがNに等しいか否かを判定する。変数iがNより小さい場合(ステップS47;No)、フローはステップS48に進み、変調方式制御部122は、変数iを1だけインクリメントする。その後、フローはステップS43に戻り、ステップS43以降の処理が繰り返される。
【0057】
変数iがNに等しい場合(ステップS47;Yes)、フローは終了となる。例えば、図4に示すフローが再度実行される。
【0058】
このようにして、無線通信装置120は、変調方式を時々刻々と切り替えながらデータ受信を行う。図3に示すデータ送信方法及び図4に示すデータ受信方法は、互いに同期して実行される。このため、無線通信装置120は、無線通信装置110により送信される無線信号を正常に復調することができる。
【0059】
以上のように、無線通信装置110は、変調方式を時々刻々と切り替えながらデータ送信を行い、無線通信装置120は、無線通信装置110が使用する変調方式と同じ変調方式を使用してデータ受信を行う。それにより、正規の受信者である無線通信装置120が無線通信装置110により送信される無線信号を正常に復調することができる一方で、不正な受信者である盗聴者による復調が困難になる。その結果、無線通信の安全性(セキュリティ)を向上させることができる。
【0060】
一般的に、位相変調を使用する変調方式として、BPSKやQPSKなどの2のべき乗による変調方式が使用されることが極めて多い。そのため、2のべき乗によらない変調方式(例えばTPSK)を織り交ぜてデータ送信を行うと、復調パターンが飛躍的に増加するので、盗聴者による復調がより困難になる。本実施形態では、2のべき乗によらない変調方式を含む複数の変調方式間で変調方式を切り替える。それにより、無線通信の安全性をより向上させることができる。
【0061】
さらに、無線通信装置110は、オフセットを時々刻々と変更しながらデータ送信を行い、無線通信装置120は、無線通信装置110が使用するオフセットと同じ値のオフセットで閾値を変更してデータ受信を行う。よって、無線通信装置120が無線通信装置110により送信される無線信号を正常に復調することができる。一方で、盗聴者においては、閾値の変化を把握できないまま無線信号を受信することになり、IQの受信値が理想的な同心円状とならず受信エラーになる可能性が高くなる。このように、正規の受信者のみが正常なコンスタレーションに戻しやすくなる。その結果、無線通信の安全性をより向上させることができる。
【0062】
第1の実施形態の変形例について説明する。
【0063】
図5は、第1の実施形態の変形例に係る無線通信システム500を概略的に示している。図5において、図1に示した構成要素と同様の構成要素に同様の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。図5に示すように、無線通信システム500は無線通信装置510及び無線通信装置520を備える。ここでは、無線通信装置510がデータ送信側であり、無線通信装置520がデータ受信側であるとする。
【0064】
無線通信装置510は、図1に示した無線通信装置110に信号点パターン選択部1125を追加したものに相当する。信号点パターン選択部1125は無線通信装置510の変調方式制御部112に含まれる。信号点パターン選択部1125の追加に伴って、いくつかの構成要素における処理が変更される。
【0065】
擬似乱数生成部1122は、初期値生成部1121により生成された初期値と予め定められたM系列擬似乱数生成アルゴリズムとに基づいて、所定のビット長を有する複数のM系列擬似乱数符号を生成する。例えば、M系列擬似乱数符号のビット長は16であるとする。各M系列擬似乱数符号は、その第1部分が変調方式選択部1123で使用され、その第2部分がオフセット算出部1124で使用され、その第3部分が信号点パターン選択部1125で使用されてよい。例えば、M系列擬似乱数符号の上位2ビットが変調方式選択部1123で使用され、M系列擬似乱数符号の中間12ビットがオフセット算出部1124で使用され、M系列擬似乱数符号の下位2ビットが信号点パターン選択部1125で使用される。
【0066】
信号点パターン選択部1125は、予め用意される複数の信号点パターンの中から、擬似乱数生成部1122により生成されたM系列擬似乱数符号の第3部分に対応する信号点パターンを選択する。信号点パターンは、IQ平面上での信号点の配置(コンスタレーション)に関するパターンを示す。予め用意される複数の信号点パターンは、変調方式ごとに複数の信号点パターンを含む。変調方式選択部1123がQPSKを選択した場合において、信号点パターン選択部1125は、QPSKに関する複数の信号点パターンの中からM系列擬似乱数符号の第3部分に対応する信号点パターンを選択する。
【0067】
QPSKに関する複数の信号点パターンは4つの複数の信号点パターンを含み得る。一例として、QPSKに関する第1の信号点パターンでは、情報“11”が信号点(1,1)に関連付けられ、情報“01”が信号点(-1,1)に関連付けられ、情報“10”が信号点(1,-1)に関連付けられ、情報“00”が信号点(-1,-1)に関連付けられる。QPSKに関する第2の信号点パターンでは、情報“11”が信号点(-1,1)に関連付けられ、情報“01”が信号点(1,1)に関連付けられ、情報“10”が信号点(-1,-1)に関連付けられ、情報“00”が信号点(-1,1)に関連付けられる。QPSKに関する第3の信号点パターンでは、情報“11”が信号点(1,-1)に関連付けられ、情報“01”が信号点(-1,-1)に関連付けられ、情報“10”が信号点(1,1)に関連付けられ、情報“00”が信号点(1,-1)に関連付けられる。QPSKに関する第4の信号点パターンでは、情報“11”が信号点(-1,-1)に関連付けられ、情報“01”が信号点(1,-1)に関連付けられ、情報“10”が信号点(-1,1)に関連付けられ、情報“00”が信号点(1,1)に関連付けられる。
【0068】
変調部115は、変調方式選択部1123により選択された変調方式、オフセット算出部1124により算出されたオフセット、及び信号点パターン選択部1125により選択された信号点パターンに基づいて、インタリーブ部114から出力されるビット列を変調して複素信号を生成する。具体的には、変調部115は、変調方式選択部1123により選択された変調方式に対応する信号点が信号点パターン選択部1125により選択された信号点パターンで配置されるIQ平面の原点をオフセット算出部1124により算出されたオフセットだけシフトさせることで得られるIQ平面へのマッピングを含む一次変調をビット列に対して行う。
【0069】
無線通信装置520は、無線通信装置510により送信される無線信号を受信する。無線通信装置520は、無線通信装置510により実行される処理に相補的な処理を行う。無線通信装置520は、図1に示した無線通信装置120において閾値設定部1224を閾値設定部1225に変更したものに相当する。閾値設定部1225は無線通信装置520の変調方式制御部122に含まれる。閾値設定部1225の追加に伴って、いくつかの構成要素における処理が変更される。
【0070】
閾値設定部1225は、擬似乱数生成部1122により生成されたM系列擬似乱数符号の第2部分及び第3部分に基づいて、変調方式選択部1223により選択された変調方式に基づく一次復調に使用する閾値を設定する。例えば、閾値設定部1225は、無線通信装置510のオフセット算出部1124と同じ計算規則に従ってオフセットを算出し、予め用意される複数の閾値パターンの中から、M系列擬似乱数符号の第3部分に対応する閾値パターンを選択する。複数の閾値パターンは、無線通信装置510に保持される複数の信号点パターンに応じて用意される。具体的には、各閾値パターンは、対応する信号点パターンを使用して変調された信号を復調するために使用される複数の閾値(例えば軟判定閾値)を含み得る。閾値パターンを変更することは、図6に示すように、閾値を入れ替える操作に相当する。図6においては、I軸の閾値が示され、Q軸の閾値は省略されている。閾値設定部1225は、変調方式選択部1223により選択された変調方式に関する複数の閾値パターンの中から、M系列擬似乱数符号の第3部分に対応する閾値パターンを選択し、選択した閾値パターンに含まれる閾値を算出したオフセットに従って変更する。
【0071】
図5を再び参照すると、復調部125は、変調方式選択部1223により選択された変調方式及び閾値設定部1225により設定された閾値に基づく一次復調をミキサ126から出力される複素信号に対して行い、ビット列を生成する。
【0072】
第1の実施形態の変形例では、無線通信装置510は、信号点パターンを時々刻々と変更しながらデータ送信を行い、無線通信装置520は、無線通信装置110が使用する信号点パターンに適合する閾値を使用してデータ受信を行う。よって、無線通信装置520が無線通信装置510により送信される無線信号を正常に復調することができる一方で、盗聴者においては、受信エラーになる可能性がさらに高くなる。その結果、無線通信の安全性をより向上させることができる。
【0073】
(第2の実施形態)
上述した通信方法は光通信システムにも適用可能である。
【0074】
図7は、第2の実施形態に係る光通信システム700を概略的に示している。図7に示すように、光通信システム700は光通信装置710及び光通信装置720を備える。光通信装置710は、光ファイバなどの光伝送路730を介して光通信装置720に接続される。ここでは、光通信装置710がデータ送信側であり、光通信装置720がデータ受信側であるとし、図7では、データ送信に関連する構成要素が光通信装置710に示され、データ受信に関連する構成要素が光通信装置720に示されている。光通信装置710、720の各々はデータ送信に関連する構成要素とデータ受信に関連する構成要素の両方を備えてよい。
【0075】
光通信装置710は、符号変換部711、変調方式制御部712、変調部713、電気増幅回路714、E/O(Electrical/Optical)変換器715、電気増幅回路716、E/O変換器717、及び結合器718を備える。
【0076】
変調方式制御部712は、図1に示した変調方式制御部112と同様の処理を行う。例えば、変調方式制御部712は、M系列擬似乱数を生成するために使用する初期値を生成する。初期値は光通信装置710、720間で同期される。例えば、光通信装置710、720間の通信における初期段階において、変調方式制御部712は、同期をとるための同期データを光通信装置720に送信するとともに、同期データから初期値を生成する。
【0077】
変調方式制御部712は、生成した初期値と予め定められたM系列擬似乱数生成アルゴリズムとに基づいて、所定のビット長を有する複数のM系列擬似乱数符号を生成する。例えば、M系列擬似乱数符号のビット長は14であるとする。各M系列擬似乱数符号は、その第1部分が変調方式の選択に使用され、その第2部分がオフセット算出に使用される。
【0078】
変調方式制御部712は、予め定められた複数の変調方式の中からM系列擬似乱数符号の第1部分に対応する変調方式をデータ送信に使用する変調方式として選択する。
【0079】
変調方式制御部712は、M系列擬似乱数符号の第2部分に基づいて、変調に使用するオフセットを算出する。オフセットは、変調部713から出力される2チャンネルの電気信号の信号レベルをずらす量を示し、2チャンネルのそれぞれについてのオフセットを含む。2チャンネルのオフセットをそれぞれI軸オフセット及びQ軸オフセットと称する。Q軸オフセットはE/O変換器715から出力される光信号の強度をずらす量に相当し、I軸オフセットはE/O変換器717から出力される光信号の強度をずらす量に相当する。例えば、変調方式制御部712は、M系列擬似乱数符号の中間6ビット(第3ビットから第8ビット)に基づいてI軸オフセットを算出し、M系列擬似乱数符号の下位6ビット(第9ビットから第14ビット)に基づいてQ軸オフセットを算出する。
【0080】
符号変換部711は、送信データに対して符号変換を行う。符号変換は、例えば、畳み込み符号化を含む。
【0081】
変調部713は、変調方式制御部712により選択された変調方式及び変調方式制御部712により算出されたオフセットに基づいて、符号変換部711から出力されるビット列を変調して、I信号及びQ信号とも称される2チャンネルの電気信号を生成する。
【0082】
電気増幅回路714はQ信号を増幅し、E/O変換器715はQ信号を第1の周波数を有する光信号に変換する。電気増幅回路716はI信号を増幅し、E/O変換器717はI信号を第1の周波数とは異なる第2の周波数を有する光信号に変換する。
【0083】
結合器718は、E/O変換器715から出力される光信号とE/O変換器717から出力される光信号を結合する。結合器718から出力される光信号は光伝送路730に送出される。
【0084】
図8は、第2の実施形態に係る変調処理を概略的に示している。ここでは、説明を簡単にするために、オフセットは省略している。図8に示すように、変調部713は信号点のQ軸座標値に対応する信号レベルを有する電気信号をQ信号として出力し、E/O変換器715から出力される光信号はQ信号の信号レベルに応じた強度を有する。変調部713は信号点のI軸座標値に対応する信号レベルを有する電気信号をI信号として出力し、E/O変換器717から出力される光信号はI信号の信号レベルに応じた強度を有する。
【0085】
再び図7を参照すると、光通信装置720は、符号逆変換部721、変調方式制御部722、復調部723、O/E(Optical/Electrical)変換器724、波長フィルタ725、O/E変換器726、波長フィルタ727、及び分配器728を備える。
【0086】
変調方式制御部722は、図1に示した変調方式制御部122と同様の処理を行う。例えば、変調方式制御部722は、光通信装置720の変調方式制御部712において生成されるものと同じM系列擬似乱数符号を生成する。変調方式制御部712は、予め定められた複数の変調方式の中からM系列擬似乱数符号の第1部分に対応する変調方式をデータ受信に使用する変調方式として選択する。変調方式制御部722は、M系列擬似乱数符号の第2部分に基づいてオフセットを算出し、算出されたオフセットに基づいて、選択された変調方式に基づく復調に使用する閾値を設定する。
【0087】
分配器728は、光伝送路730を介して光通信装置710から光信号を受信し、光信号を二分岐する。波長フィルタ725は分配器728から出力される光信号から第1の周波数を有する光信号を抽出し、O/E変換器724は波長フィルタ725により抽出された光信号を電気信号に変換してQ信号を得る。波長フィルタ727は分配器728から出力される光信号から第2の周波数を有する光信号を抽出し、O/E変換器726は波長フィルタ727により抽出された光信号を電気信号に変換してI信号を得る。
【0088】
復調部723は、図1に示した復調部125と同様の処理を行う。復調部723は、変調方式制御部122により選択された変調方式及び変調方式制御部122により設定された閾値に基づいて、O/E変換器724から出力されるQ信号とO/E変換器726から出力されるI信号の組みに対して復調を行う。後段の符号逆変換部721において軟判定復号が行われる場合には、復調部723から出力されるビット列は軟判定値を含む。
【0089】
符号逆変換部721は、復調部723から出力されるビット列に対して符号逆変換を行って受信データを生成する。符号逆変換は、例えば、ビタビ復号を含む。例えば、符号逆変換部721は、変調方式制御部122により選択された変調方式に従って軟判定ビタビ復号を行う。
【0090】
第2の実施形態に係る光通信システム700によれば、第1の実施形態と同様に、正規の受信者である光通信装置720が光通信装置710により送信される光信号を正常に復調することができる一方で、不正な受信者である盗聴者による復調が困難になる。その結果、光通信の安全性を向上させることができる。
【0091】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0092】
100…無線通信システム、110…無線通信装置、10…CPU、11…通信モジュール、111…誤り訂正符号付与部、112…変調方式制御部、1121…初期値生成部、1122…擬似乱数生成部、1123…変調方式選択部、1124…オフセット算出部、1125…信号点パターン選択部、113…符号変換部、114…インタリーブ部、115…変調部、116…ミキサ、117…搬送波発振器、118…送信部、119…アンテナ、120…無線通信装置、20…CPU、21…通信モジュール、121…誤り訂正部、122…変調方式制御部、1221…初期値生成部、1222…擬似乱数生成部、1223…変調方式選択部、1224、1225…閾値設定部、123…符号逆変換部、124…デインタリーブ部、125…復調部、126…ミキサ、127…搬送波発振器、128…受信部、129…アンテナ、500…無線通信システム、510、520…無線通信装置、700…光通信システム、710…光通信装置、711…符号変換部、712…変調方式制御部、713…変調部、714、716…電気増幅回路、715、717…E/O変換器、718…結合器、720…光通信装置、721…符号逆変換部、722…変調方式制御部、723…復調部、724、726…O/E変換器、725、727…波長フィルタ、728…分配器、730…光伝送路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8