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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123071
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】消音装置及び低騒音掃除機
(51)【国際特許分類】
   A47L 9/00 20060101AFI20230829BHJP
【FI】
A47L9/00 103
A47L9/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026930
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100157808
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 耕平
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 仁
(72)【発明者】
【氏名】井上 幹允
(72)【発明者】
【氏名】古賀 理基
(72)【発明者】
【氏名】松本 千寿代
【テーマコード(参考)】
3B006
【Fターム(参考)】
3B006BA06
3B006LA13
(57)【要約】
【課題】掃除機の吸引能力の低下を抑制しつつ、排気口から漏れ出る騒音を低下させる消音装置及び低騒音掃除機を提供する。
【解決手段】消音装置10は、吸引力を発生するファン装置111からの排気が放出される排気口119が形成された筐体112を有する掃除機100に用いられ、排気口119を覆うように筐体112に取り付けられて、筐体112の外周面との間において排気口119から排気された空気を流す流通空間30を形成するケース20と、流通空間30に面するようにケース20に支持される吸音部40と、を備える。ケース20には、流通空間30を流れた空気を外部に放出する放出口31が形成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引力を発生するファン装置からの排気が放出される排気口が形成された筐体を有する掃除機に用いられる消音装置あって、
前記排気口を覆うように前記筐体に取り付けられて、前記筐体の外周面との間において前記排気口から排気された空気を流す流通空間を形成するケースと、
前記流通空間に面するように前記ケースに支持される吸音部と、を備え、
前記ケースには、前記流通空間を流れた空気を外部に放出する放出口が形成されている、消音装置。
【請求項2】
前記放出口は、前記排気口の開口面積よりも大きい開口面積を有する、請求項1に記載の消音装置。
【請求項3】
前記ケースは、前記筐体に着脱可能に構成されている、請求項1または請求項2に記載の消音装置。
【請求項4】
前記ケースが前記筐体に取り付けられた状態で、前記放出口が前記排気口から離れた位置になるように、前記放出口の位置が設定されている、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の消音装置。
【請求項5】
前記ケースが前記筐体に取り付けられた状態で、前記放出口が前記排気口に対して前記筐体の反対側の位置になるように、前記放出口の位置が設定されている請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の消音装置。
【請求項6】
前記吸音部は、前記流通空間に開口する複数の貫通孔が形成された多孔板と、前記多孔板に重なるように配置され、前記複数の貫通孔を通過した空気を通過させる吸音部材と、を備える、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の消音装置。
【請求項7】
前記放出口を覆うように前記ケースに取り付けられた第2吸音部をさらに備える、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の消音装置。
【請求項8】
前記ケースは、前記流通空間を形成可能な一対のケース部材と、前記一対のケース部材同士を連結する連結部を有しており、
前記消音装置は、前記ケースが前記筐体に着脱可能な開状態と、前記流通空間を形成する閉状態との間で、状態が切り替わる、請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の消音装置。
【請求項9】
掃除機と、
前記掃除機に取り付けられる請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の消音装置と、を備えた低騒音掃除機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消音装置及び低騒音掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、図9に示すように、吸引源307が収容された収容ケース313と、収容ケース313に隣接する集塵容器310と、集塵容器310につながる吸込管311と、吸込管311の先端に接続された図略の吸込ノズルと、を備えた掃除機300が開示されている。この掃除機300は、吸引源307の吸引力により吸込ノズルと吸込管311を通じて床面上の塵埃を集塵容器310に吸い込んで集塵する。このとき、吸引源307の吸引力により吸込ノズルから吸い込まれた空気が、集塵容器310及び収容ケース313を通過して、収容ケース313の側面に形成された排気口330を通じて掃除機300の外部に排気される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016ー131768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の掃除機300は、排気口330を覆うように吸音材333が設けられている。この構成では、吸音材333から漏れ出る騒音を低減できるが、吸音材333が空気の流動抵抗になるため、掃除機300の吸引能力を低下させるという課題がある。
【0005】
本発明の目的は、上記課題を鑑みてなされたものであり、掃除機の吸引能力の低下を抑制しつつ、排気口から漏れ出る騒音を低下させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示における消音装置は、吸引力を発生するファン装置からの排気が放出される排気口が形成された筐体を有する掃除機に用いられる消音装置あって、前記排気口を覆うように前記筐体に取り付けられて、前記筐体の外周面との間において前記排気口から排気された空気を流す流通空間を形成するケースと、前記流通空間に面するように前記ケースに支持される吸音部と、を備える。前記ケースには、前記流通空間を流れた空気を外部に放出する放出口が形成されている。
【0007】
上述の構成によれば、ファン装置による吸引力により、排気口を通して筐体から排出された空気は、ケースと筐体との間の流通空間を流れる。このため、空気が排気口から排出されるときに生じる騒音が外部に漏れ難くなる。また、この騒音は、空気が放出口を通じて外部に放出されるときには、すでに吸音部により減衰されているため、放出口からの騒音も低く抑えられる。よって、排気口を覆うように吸音材が配置される構成に比べて、掃除機の吸引性能の低下を抑制でき、しかも騒音の低減を図ることができる。
【0008】
前記消音装置は、前記放出口が、前記排気口の開口面積よりも大きい開口面積を有していてもよい。
【0009】
この態様では、放出口の開口面積が排気口の開口面積よりも大きいため、放出口を通過する空気の流速が、排気口を通過する空気の流速よりも小さくなる。これにより、放出口を通過する空気により発生する風切音の大きさを抑制できる。
【0010】
前記消音装置は、前記ケースが、前記筐体に着脱可能に構成されていてもよい。
【0011】
この態様では、消音装置が掃除機に着脱自在に構成されていることから、騒音を抑制したい場合に、必要に応じて消音装置を掃除機に装着して騒音を抑制することができる。
【0012】
前記消音装置は、前記ケースが前記筐体に取り付けられた状態で、前記放出口が前記排気口から離れた位置になるように、前記放出口の位置が設定されていてもよい。
【0013】
この態様では、排気口を放出口から離して流通空間を長くすることにより、吸音部をより長くすることができる。これにより、流通空間において騒音を効果的に低減できる。
【0014】
前記消音装置は、前記ケースが前記筐体に取り付けられた状態で、前記放出口が前記排気口に対して前記筐体の反対側の位置になるように、前記放出口の位置が設定されていてもよい。
【0015】
この態様では、放出口が排気口に対して筐体の反対側の位置になるように設定されており、排気口から放出口までの流通空間をより長くすることにより、吸音部をより長くすることができる。これにより、流通空間において騒音をより効果的に低減できる。
【0016】
前記吸音部は、前記流通空間に開口する複数の貫通孔が形成された多孔板と、前記多孔板に重なるように配置され、前記複数の貫通孔を通過した空気を通過させる吸音部材と、を備えていてもよい。
【0017】
この態様では、多孔板の貫通孔の配置や開口面積を調整することにより吸音部の吸音特性を調整できるとともに、吸音部材の吸音性を高くすることにより吸音部の吸音性を高くすることができる。
【0018】
前記消音装置は、前記放出口を覆うように前記ケースに取り付けられた第2吸音部をさらに備えていてもよい。
【0019】
この態様では、放出口を覆うように設けられた第2吸音部により、排気口において生じた騒音をさらに低減できる。なお、排気口において生じた騒音は流通空間において既に減衰されているので、第2吸音部の密度を過度に高くしなくてもよい。このため、掃除機の吸引力が低下することを抑制できる。
【0020】
前記ケースは、前記流通空間を形成可能な一対のケース部材と、前記一対のケース部材同士を連結する連結部を有していてもよく、前記消音装置は、前記ケースが前記筐体に着脱可能な開状態と、前記流通空間を形成する閉状態との間で、状態が切り替わるように構成されていてもよい。
【0021】
この態様では、回動可能に接続された一対のケース部材により本体ケースの状態を開状態と閉状態との間で切り替えることができるため、掃除機の外周面に取り付けられている閉状態の本体ケースを、開状態に切り替えて掃除機の外周面から取り外すことができる。したがって、消音装置の掃除機への着脱がより容易に行える。
【0022】
本開示の低騒音掃除機は、掃除機と、前記掃除機に取り付けられる前記消音装置と、を備えている。
【発明の効果】
【0023】
本開示における消音装置及び低騒音掃除機によれば、掃除機の吸引能力の低下を抑制しつつ、排気口から漏れ出る騒音を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施形態に係る消音装置及び掃除機を示す側面図
図2】実施形態に係る消音装置が装着された掃除機の右側面を示す斜視図
図3】実施形態に係る消音装置が装着された掃除機の左側面を示す斜視図
図4】実施形態に係る消音装置を示す斜視図
図5】実施形態に係る消音装置が装着された掃除機の周方向の断面を示す断面図
図6】実施形態に係る消音装置の一部を示す斜視図
図7】実施形態に係る消音装置の周方向の断面を示す断面図
図8】実施形態に係る消音装置の周方向の断面を示す断面図
図9】特許文献1の掃除機を説明するための概略的な構成図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、実施形態を詳細に説明するが、当業者の理解を容易にするために、例えば、既によく知られた事項の詳細説明、又は、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0026】
(全体の構成)
低騒音掃除機200について、図1を参照しつつ説明する。低騒音掃除機200は、掃除機100と消音装置10とを備える。低騒音掃除機200は、消音装置10を、掃除機100に設けられた後述する排気口119を覆うようにして掃除機100に取り付けることにより、排気口119において生じる騒音を低減するように構成されている。低騒音掃除機200を構成する掃除機100及び消音装置10について、以下具体的に説明する。
【0027】
(掃除機の構成)
掃除機100は、スティック型の掃除機であり、掃除機本体110と、掃除機本体110に接続された塵埃管路120と、塵埃管路120の先端に取り付けられた吸込ノズル130と、を備えている。
【0028】
掃除機本体110は、掃除機本体110の周壁を形成する略円筒状の筐体112と、筐体112の内部空間に収容されており塵埃を吸引する吸引力を発生するファン装置111と、筐体112の周壁の下部から下方に延出した中空の連結管部113と、を有している。筐体112の周壁の上部には、使用者によって握持可能な太さを有しているハンドル状の把持部115が接続されており、把持部115は、筐体112の周壁の上部から湾曲しながら下方に延設されて、連結管部113の上端に接続されている。把持部115には、使用者によって操作される操作部116が設けられており、操作部116の操作に応じて、ファン装置111が作動したり、停止したりする。なお、ファン装置111は、たとえば、吸引ファンにより構成され得る。
【0029】
ファン装置111が収容された筐体112の下端には、集塵容器117が取り付けられている。集塵容器117は、有底円筒状の容器であり、集塵容器117の上端には、筐体112内に開口する吸気口118が設けられている。集塵容器117の上端の吸気口118により、集塵容器117の内部空間は、筐体112においてファン装置111が配置されている内部空間に連通している。連結管部113の内部空間は、集塵容器117の周壁に設けられた開口を通じて、集塵容器117の内部空間に連通している。
【0030】
筐体112の側面には、筐体112の内部空間から外部に空気を排出するための排気口119が設けられている。排気口119は筐体112の内面と外面とを貫通する複数の貫通孔により構成されている。集塵容器117には、空気を通過させる一方で通過する空気に含まれる塵埃を捕捉するための図略のフィルタ部が設けられている。フィルタ部には、たとえば、多孔質のメッシュフィルタが用いられる。
【0031】
塵埃管路120は、ファン装置111により吸い込まれる塵埃の流路を構成しており、塵埃管路120は、掃除機本体110の連結管部113に着脱可能に形成された基端管121と、基端管121から延びる延長管122と、を有している。延長管122の先端には吸込ノズル130が接続されている。
【0032】
集塵容器117が掃除機本体110に固定された状態で使用者が操作部116に対して清掃開始の操作を行うことにより、ファン装置111が作動を開始する。ファン装置111の作動により、吸込ノズル130内に吸引力が作用して、床面上の塵埃は、吸込ノズル130内に吸い上げられて、集塵容器117の内部空間に向かう空気の流れに乗って、集塵容器117の内部空間に吸い込まれる。
【0033】
ファン装置111の吸引力により、集塵容器117の内部空間の空気が、フィルタ部及び吸気口118を通じて筐体112の内部空間に吸い込まれる一方で、この空気に含まれる塵埃がフィルタ部により捕捉されて集塵容器117内に貯留される。筐体112の内部空間に吸い込まれた空気は、排気口119を通じて筐体112の外部に排出される。このとき、排気口119から流れ出る空気によって風切音が発生し、騒音として使用者に不快感を与えることがある。排気口119から流れ出る空気の風速が大きいほど、大きな風切音が発生する。掃除機100の騒音を低減するために、掃除機100の筐体112の排気口119を覆うようにして、筐体112の外周面の周壁に消音装置10が取り付けられる(図2及び図3参照)。
【0034】
(消音装置の構成)
消音装置10は、図4に示すように、筐体112の外周面に着脱可能に構成されたケース20を備えている。ケース20は、周方向の一部が途切れた形状の円筒状であり、円筒面状の周壁部34と、周壁部34の筒軸方向の一端部(下側端部)から径方向内側に張り出した下壁部14と、周壁部34の筒軸方向の他端部(上側端部)から径方向内側に張り出した上壁部15と、を有している。下壁部14と上壁部15とは形成されている。
【0035】
周壁部34は、周方向の一部が切り取られており、周方向における一対の端部を有している。ケース20は、周壁部34の周方向における一対の端部のうちの一端部(左側の端部)から筒軸側に延設された左壁部28と、一対の端部のうちの他端部(右側の端部)から筒軸側に延設されており左壁部28に対向する右壁部29と、を有している。周壁部34は、筐体112の外周面と同軸であり、筐体112の外周面の曲率半径よりも大きい曲率半径を有している。左壁部28及び右壁部29の筒軸方向の一端部(下側の端部)は下壁部14における内壁に接続されており、左壁部28及び右壁部29の筒軸方向の他端部(上側の端部)は上壁部15における内壁に接続されている。
【0036】
ケース20は、周方向の一部が途切れていることにより、左壁部28と右壁部29との間に、離間空間27が形成されている。離間空間27は、図2に示すように、消音装置10が掃除機100に取り付けられたときに、筐体112と把持部115との間の空間を塞がないように設けられている。これにより、消音装置10を取り付けた場合でも、使用者が把持部115を握り難くならない。
【0037】
ケース20は、図5に示すように、それぞれ別体として構成された2つの半割円筒状の左ケース部材22及び右ケース部材23と、左ケース部材22と右ケース部材23とを連結する連結部24と、を備えている。左ケース部材22は、筐体112の周方向における一方の外周面(左側の外周面)に当接する。右ケース部材23は他方の外周面(右側の外周面)に当接する。
【0038】
周壁部34は、図4に示すように、左ケース部材22に設けられた左周壁部32と、右ケース部材23に設けられた右周壁部33とを有する。下壁部14は、左ケース部材22に設けられた左下壁部16と、右ケース部材23に設けられた右前壁部18とを有する。上壁部15は、左ケース部材22に設けられた左上壁部17と、右ケース部材23に設けられた右上壁部19とを有する。
【0039】
消音装置10が掃除機100に取り付けられた状態では、図5に示すように、ケース20と筐体112の外周面との間に、略C字型の断面を有するとともに筐体112の筒軸方向に長い流通空間30が形成される。すなわち、筐体112の外周面が、流通空間30における径方向内側の周壁を区画し、ケース20の周壁部34が、流通空間30における径方向外側の周壁を区画する。さらに、下壁部14及び上壁部15(図4参照)が、流通空間30の筒軸方向の両端部の外壁を区画し、左壁部28及び右壁部29が、流通空間30における周壁部34が途切れた部位を塞ぐような外壁を区画する。
【0040】
ケース20における筐体112と当接する部位(たとえば、左壁部28や右壁部29の筐体112側の端部)には、流通空間30の気密を保持するためのシーリング材(図示省略)が取り付けられている。
【0041】
消音装置10は、図2に示すように、掃除機100に取り付けられた状態において、ケース20の右ケース部材23が筐体112の排気口119を覆うように設定されている。排気口119は、ケース20と筐体112との間の流通空間30における右ケース部材23側の空間に開口し、排気口119により筐体112の内部空間と流通空間30とが連通する。
【0042】
ケース20の左ケース部材22の左周壁部32には、図3に示すように、流通空間30と消音装置10の外部とを連通する放出口31が形成されている。放出口31は、左周壁部32を内面から外面に向けて貫通するような複数の貫通孔により構成されている。したがって、流通空間30の空気は、図5に矢印Fで示すように、放出口31を通じて外部に放出される。
【0043】
消音装置10は、図5に示すように、放出口31の位置が、掃除機100の排気口119に対して、反対側になるように設定されている。すなわち、放出口31は、排気口119とは反対側を向くように筐体112の周方向に離れている。したがって、排気口119から排出された空気は、放出口31に向けて、図5に破線矢印で示すように、筐体112の周方向に流通空間30内を流れる。放出口31は、放出口31を通過する空気の流速を小さくするために、排気口119の開口面積よりも大きい開口面積を有している。
【0044】
消音装置10は、図4及び図5に示すように、流通空間30を流れる空気の音を吸収するための吸音部40を備えている。吸音部40は、ケース20と筐体112との間において、流通空間30に面するようにケース20に支持されている。吸音部40は、左ケース部材22によって支持された左側吸音部42と、右ケース部材23によって支持された右側吸音部43とを有しており、左側吸音部42と右側吸音部43とは左右対称に形成されている。ここでは、左側吸音部42についてのみ説明する。
【0045】
左側吸音部42は、多孔板45と、多孔板45に重なるように配置された吸音部材50と、を含んでいる。多孔板45は、左周壁部32と筐体112の外周面との間において筐体112と同軸の円筒面状に形成されている。多孔板45の内面は、流通空間30に面している。吸音部材50は、多孔板45と左周壁部32との間の空間に配置されている。
【0046】
多孔板45には、図6に示すように、多孔板45のほぼ全域において、多孔板45の内面から外面に貫通する複数の貫通孔46が形成されている。なお、図6では、吸音部材50と第2吸音部60とを便宜上省略している。複数の貫通孔46の開口面積は、排気口119の開口面積よりも大きい。これにより、消音装置10では、複数の貫通孔46を通過する空気の流速が大きくなることが抑制される。
【0047】
吸音部材50は、図5に示すように、多孔板45の複数の貫通孔46を覆っており、左周壁部32の放出口31に対向する部位を含んでいる。吸音部材50は、空気を通過させるとともに伝播する音を吸収して騒音を減衰させる。たとえば、吸音部材50の素材として、グラスウールやウレタンフォーム等の吸音性の高い素材が採用される。
【0048】
消音装置10は、図4及び図5に示すように、排気口119において発生した風切音をさらに低減するための第2吸音部60を備えている。第2吸音部60は、周壁部34の外面のほぼ全面を覆っており、放出口31に対向する部位を含んでいる(図3参照)。排気口119において生じた風切音は、流通空間30において吸音部40により既に減衰されているので、第2吸音部60は密度を過度に高くしなくてもよい。また、周壁部34の外面のほぼ全面が第2吸音部60によって覆われることにより、放出口31を通過する空気中を伝播する騒音だけでなく、周壁部34を介して外部に伝播する騒音も低減できる。第2吸音部60の素材には、たとえば、ポリエステルメッシュ材やスポンジ材などのような比較的通気性の高い吸音材が採用される。
【0049】
左ケース部材22と右ケース部材23とは、図7及び図8に示すように、ねじりコイルばねを備えたヒンジにより構成された連結部24により、回動可能に連結されている。左壁部28と右壁部29とが離れるようにして左ケース部材22と右ケース部材23とが互いに開くように回動することにより、消音装置10は、離間空間27の大きさが筐体112の横幅(左右方向の長さ)よりも大きくなる開状態となる(図8に示す状態)。開状態では、筐体112が離間空間27を通過できるため、消音装置10を筐体112の外周面に着脱できる。
【0050】
一方で、左壁部28と右壁部29とが近づくようにして左ケース部材22と右ケース部材23とが互いに閉じるように回動することにより、消音装置10は、離間空間27の大きさが最小となる閉状態となる(図7に示す状態)。閉状態では、ケース20が筐体112の外周面に当接して、ケース20と筐体112の外周面との間に気密的な流通空間30が形成される。
【0051】
連結部24のねじりコイルばねは、左ケース部材22と右ケース部材23とを閉方向(消音装置10が閉状態になるような方向)に回動させるように付勢している。このため、左ケース部材22と右ケース部材23に外力が加えられていない状態では、消音装置は閉状態になる。そして、使用者が左ケース部材22と右ケース部材23に開方向(閉方向と逆向きの方向)に回動させるような外力を加えることにより、消音装置10は開状態となり、消音装置10を掃除機100に着脱可能になる。
【0052】
(動作の説明)
低騒音掃除機200の動作について以下に説明する。
【0053】
使用者が清掃時の騒音を低減したい場合に、図1に示すように、消音装置10を掃除機100に取り付ける。すなわち、消音装置10を開状態にして筐体112に取り付けて、消音装置10を閉状態にする。これにより、低騒音掃除機200による清掃が可能となる。低騒音掃除機200では、掃除機100の排気口119が、消音装置10のケース20により覆われており、排気口119が流通空間30に連通した状態となる。
【0054】
使用者が操作部116に対して清掃開始の操作を行うと、ファン装置111が作動して、床面上の塵埃が、吸込ノズル130及び塵埃管路120を通じて集塵容器117内に吸い込まれる。このとき、筐体112の内部空間の空気が排気口119から排出されるとともに、排気口119を通過する空気により風切音が発生する。
【0055】
低騒音掃除機200において、排気口119から排出された空気は流通空間30を通過し、さらに多数の貫通孔46から吸音部材50を通過し、放出口31から第2吸音部60を通過して外部に放出される。排気口119において生じた風切音は、排気口119から放出口31に向けて流通空間30内を流れる空気中を伝播する。このとき、吸音部材50が風切音を吸収することにより、風切音が減衰される。さらに、第2吸音部60が風切音を吸収することにより、吸音部40により既に減衰された風切音がさらに減衰される。これにより、排気口119において生じた風切音は、吸音部40及び第2吸音部60により減衰された低騒音として外部に伝播する。放出口31では、放出口31を通過する空気の風速が小さくなっているため風切音が抑制される。
【0056】
なお、上述の実施形態に係る消音装置10に対して、様々な変更又は改良がなされてもよい。たとえば、消音装置10は、放出口31の位置が、排気口119に対して筐体112の周方向において反対側になるように設定されているが、これに限らない。つまり、消音装置10は、放出口31の位置が、排気口119に対して筐体112の周方向または軸方向に離れた位置になるように設定されていればよい。この場合、筐体112の外周面における排気口119から放出口31までの距離に応じて、流通空間30が形成される。
【0057】
また、放出口31の開口面積は、排気口119の開口面積よりも大きくなくてもよい。たとえば、放出口31の開口面積は、排気口119の開口面積と同じ大きさであってもよい。
【0058】
また、左ケース部材22と右ケース部材23とは、ねじりコイルばねを備えたヒンジにより構成された連結部24により回動可能に連結されているが、これに限らない。たとえば、左ケース部材22と右ケース部材23とがネジ止めにより着脱可能に連結されてもよい。この場合、左ケース部材22と右ケース部材23とはそれぞれ、ネジ孔が形成されたネジ止め部を有している。左ケース部材22と右ケース部材23とは、左ケース部材22のネジ止め部が、右ケース部材23のネジ止め部と重ね合わされた状態で、連結部24であるネジによりネジ止めされる。ネジを外すことにより、左ケース部材22と右ケース部材23とが分離して、消音装置10を掃除機100に着脱できる。
【0059】
また、連結部24は、取付バンド及びバックル部材により構成されていてもよい。この場合、右ケース部材23に配置されたバックル部材に、左ケース部材22から延びる取付バンドを止着することにより、左ケース部材22と右ケース部材23とが連結される。
【0060】
また、連結部24は、磁性板と磁性板を磁気的に吸着可能な磁石材料とにより構成されていてもよい。この場合、左ケース部材22に取り付けられた磁石材料が右ケース部材23に取り付けられた磁性板を引き付けることにより、左ケース部材22と右ケース部材23とが着脱可能に連結される。
【0061】
また、連結部24は、左ケース部材22と右ケース部材23とを着脱可能に連結するような粘着部材により構成されていてもよい。
【0062】
また、ケース20の左壁部28と右壁部29との間には離間空間27が形成されているが、離間空間27が形成されなくてもよい。つまり、ケース20は周方向に途切れていない筒状に形成されてもよい。この場合、把持部115と筐体112との間には比較的大きな空間が形成され、離間空間27を形成しなくても使用者が把持部115を容易に握ることができる。
【0063】
また、第2吸音部60は、周壁部34の外面のほぼ全面を覆うように形成されているが、これに限らない。たとえば、第2吸音部60は、放出口31だけを覆うようにして形成されていてもよいし、第2吸音部60が省略されてもよい。
【0064】
また、低騒音掃除機200において、消音装置10が掃除機100から取り外すことができなくてもよい。この場合、ケース20は筐体112に常時固定されることになる。
【0065】
また、低騒音掃除機200は、掃除機100がスティック型の掃除機であるが、これに限らない。たとえば、掃除機100はハンディ型の掃除機やキャニスター型の掃除機であってもよい。この場合、消音装置10は、それぞれの掃除機において、吸引源が内蔵された筐体の外周面に、筐体に形成された排気口を覆うように取り付けられる。
【0066】
(効果等)
上述の実施形態に係る消音装置は、以下の特徴を有しているとともに、以下の効果を奏する。
【0067】
消音装置は、吸引力を発生するファン装置からの排気が放出される排気口が形成された筐体を有する掃除機に用いられる消音装置ある。前記消音装置、前記排気口を覆うように前記筐体に取り付けられて、前記筐体の外周面との間において前記排気口から排気された空気を流す流通空間を形成するケースと、前記流通空間に面するように前記ケースに支持される吸音部と、を備える。前記ケースには、前記流通空間を流れた空気を外部に放出する放出口が形成されている。
【0068】
上述の構成によれば、ファン装置による吸引力により、排気口を通して筐体から排出された空気は、ケースと筐体との間の流通空間を流れる。このため、空気が排気口から排出されるときに生じる騒音が外部に漏れ難くなる。また、この騒音は、空気が放出口を通じて外部に放出されるときには、すでに吸音部により減衰されているため、放出口からの騒音も低く抑えられる。よって、排気口を覆うように吸音材が配置される構成に比べて、掃除機の吸引性能の低下を抑制でき、しかも騒音の低減を図ることができる。
【0069】
前記消音装置は、前記放出口が、前記排気口の開口面積よりも大きい開口面積を有している。
【0070】
この態様では、放出口の開口面積が排気口の開口面積よりも大きいため、放出口を通過する空気の流速が、排気口を通過する空気の流速よりも小さくなる。これにより、放出口を通過する空気により発生する風切音の大きさを抑制できる。
【0071】
前記消音装置は、前記ケースが、前記筐体に着脱可能に構成されている。
【0072】
この態様では、消音装置が掃除機に着脱自在に構成されていることから、騒音を抑制したい場合に、必要に応じて消音装置を掃除機に装着して騒音を抑制することができる。
【0073】
前記消音装置は、前記ケースが前記筐体に取り付けられた状態で、前記放出口が前記排気口から離れた位置になるように、前記放出口の位置が設定されている。
【0074】
この態様では、排気口を放出口から離して流通空間を長くすることにより、吸音部をより長くすることができる。これにより、流通空間において騒音を効果的に低減できる。
【0075】
前記消音装置は、前記ケースが前記筐体に取り付けられた状態で、前記放出口が前記排気口に対して前記筐体の反対側の位置になるように、前記放出口の位置が設定されている。
【0076】
この態様では、放出口が排気口に対して筐体の反対側の位置になるように設定されており、排気口から放出口までの流通空間をより長くすることにより、吸音部をより長くすることができる。これにより、流通空間において騒音をより効果的に低減できる。
【0077】
前記吸音部は、前記流通空間に開口する複数の貫通孔が形成された多孔板と、前記多孔板に重なるように配置され、前記複数の貫通孔を通過した空気を通過させる吸音部材と、を備えている。
【0078】
この態様では、多孔板の貫通孔の配置や開口面積を調整することにより吸音部の吸音特性を調整できるとともに、吸音部材の吸音性を高くすることにより吸音部の吸音性を高くすることができる。
【0079】
前記消音装置は、前記放出口を覆うように前記ケースに取り付けられた第2吸音部をさらに備えている。
【0080】
この態様では、放出口を覆うように設けられた第2吸音部により、排気口において生じた騒音をさらに低減できる。なお、排気口において生じた騒音は流通空間において既に減衰されているので、第2吸音部の密度を過度に高くしなくてもよい。このため、掃除機の吸引力が低下することを抑制できる。
【0081】
前記ケースは、前記流通空間を形成可能な一対のケース部材と、前記一対のケース部材同士を連結する連結部を有しており、前記消音装置は、前記ケースが前記筐体に着脱可能な開状態と、前記流通空間を形成する閉状態との間で、状態が切り替わるように構成されている。
【0082】
この態様では、回動可能に接続された一対のケース部材により本体ケースの状態を開状態と閉状態との間で切り替えることができるため、掃除機の外周面に取り付けられている閉状態の本体ケースを、開状態に切り替えて掃除機の外周面から取り外すことができる。したがって、消音装置の掃除機への着脱がより容易に行える。
【0083】
低騒音掃除機は、掃除機と、前記掃除機に取り付けられる前記消音装置と、を備えている。これにより、従来の掃除機に比べて、吸引性能の低下を抑制でき、しかも騒音の低減を図ることができる。
【0084】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0085】
10 消音装置
20 ケース
22 左ケース部材
23 右ケース部材
24 連結部
30 流通空間
31 放出口
40 吸音部
45 多孔板
46 複数の貫通孔
50 吸音部材
60 第2吸音部
100 掃除機
110 掃除機本体
111 ファン装置
112 筐体
119 排気口
200 低騒音掃除機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9