(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123083
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】風向調整装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/34 20060101AFI20230829BHJP
F24F 13/15 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
B60H1/34 611B
F24F13/15 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026951
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187193
【弁理士】
【氏名又は名称】林 司
(74)【代理人】
【識別番号】100181766
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 均
(72)【発明者】
【氏名】阿部 翔太
【テーマコード(参考)】
3L081
3L211
【Fターム(参考)】
3L081AA03
3L081AB02
3L081FA04
3L211BA52
3L211DA14
(57)【要約】
【課題】空気の流路を複数のガイドルーバーで閉鎖したときに、空気が吹出口から吹き出すことを抑制可能な風向調整装置を提供する。
【解決手段】本発明の風向調整装置(1,2)は、ケース体(10)と、ケース体(10)内に回転可能に配されるガイドルーバー(20)とを有し、ガイドルーバー(20)は、ケース体(10)の流路を開閉し、ガイドルーバー(20)は、流路の閉鎖時に、少なくともガイドルーバー(20)の下流側端部がケース体(10)の内壁面に接触又は近接するシャット位置に保持され、ケース体(10)は、空気を流路から流出させる排気開口部(13)を有し、排気開口部(13)は、シャット位置に保持されたガイドルーバー(20)の位置よりも下流側で、且つ、吹出口(11)よりも上流側に配されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を流通させる流路を内部に備えるケース体と、前記ケース体内に回転可能に配される少なくとも1つのガイドルーバーとを有し、前記ガイドルーバーは、前記ケース体の吹出口より上流側に配されるとともに前記流路を開閉する風向調整装置であって、
前記ガイドルーバーは、前記流路の閉鎖時に、少なくとも前記ガイドルーバーの下流側端部が前記ケース体の内壁面に接触又は近接するシャット位置に保持され、
前記ケース体は、前記空気を前記流路から流出させる排気開口部を有し、
前記排気開口部は、前記シャット位置に保持された前記ガイドルーバーの位置よりも下流側で、且つ、前記吹出口よりも上流側に配されている
ことを特徴とする風向調整装置。
【請求項2】
前記ケース体内に複数の前記ガイドルーバーが配され、
複数の前記ガイドルーバーは、前記シャット位置に保持されたとき、隣接する前記ガイドルーバーの少なくとも一部が互いに重なり合い、且つ、最も上流側に重ねられる前記ガイドルーバーの前記下流側端部が前記ケース体の前記内壁面に接触又は近接することにより、前記流路を閉鎖する構造で形成されている
請求項1記載の風向調整装置。
【請求項3】
前記ケース体は、前記ガイドルーバーの回転軸に直交する方向において、前記シャット位置に保持された前記ガイドルーバーの前記下流側端部が接触又は近接する第1壁部と、前記第1壁部の反対側に配される第2壁部とを有し、
前記排気開口部は、前記ケース体の前記第1壁部に設けられている
請求項1又は2記載の風向調整装置。
【請求項4】
前記排気開口部を開閉する蓋体が設けられ、
前記蓋体は、前記ガイドルーバーが前記シャット位置に移動する回転動作に連動して、前記排気開口部を閉じる閉鎖位置から前記排気開口部を開く開口位置に移動する
請求項1~3の何れかに記載の風向調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケース体内にガイドルーバーが回転可能に配される風向調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のインストルメントパネル等には、風向調整装置が設置されている。風向調整装置は、例えば自動車に設けられた空調装置等から温度調節された空気が供給されて、その空気を車室内に吹き出すことができる。更に、風向調整装置に設けられた空気の流れを案内するガイドルーバー(フィンと呼ばれることもある)の向きを変えることによって、風向調整装置から吹き出す空気の向きを調整することが可能である。
【0003】
また、風向調整装置には、空気を流通させる流路を閉鎖することによって、車室内への空気の吹き出しを停止させることが可能なシャット機能を備えるものもある。このようなシャット機能の機構(以下、シャット機構と言う)としては、以下のような2つの機構が多く使用されている。
【0004】
シャット機構の1つは、ガイドルーバーの上流側に設けられるバルブ部品を回転させることによって空気の流路を開閉する機構であり、シャットバルブ機構と呼ばれることもある。もう1つのシャット機構は、風向調整装置に設けられた複数のガイドルーバー(フィン)を部分的に重ねるようにガイドルーバーの向きを変えることによって、複数のガイドルーバーで空気の流路を閉鎖する機構であり、ルーバーシャット機構と呼ばれることもある。また、複数のガイドルーバーで空気の流路を閉鎖するルーバーシャット機構を備えた風向調整装置の一例が、例えば特開2020-131963号公報(特許文献1)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ルーバーシャット機構を備えた従来の風向調整装置の一例を
図7に示す。
図7に示した従来の風向調整装置80において、ケース体81内の空気の流路を閉鎖する場合、複数のガイドルーバー82を空気の流れを遮る向きに回転させることによって、互いに隣接するガイドルーバー82を部分的に重ね合わせ、また、左右両端部に配されるガイドルーバー82を、ケース体81の内面に接触させる。これによって、ケース体81内の空気の流路を複数のガイドルーバー82で閉鎖して、空気の吹き出しを停止させることが可能となる。
【0007】
しかしこの場合、複数のガイドルーバー82によって空気の流路を閉鎖しても、空調装置等から供給された空気が、ガイドルーバー82同士が重ねられている合わせ部分や、ガイドルーバー82がケース体81の内面に接触している部分から漏れることがある。更に、複数のガイドルーバー82が流路を閉鎖している状態では、
図7に示したように、各ガイドルーバー82が互いに同じ方向に向くため、上述した各部分から漏れた空気は、それぞれガイドルーバー82の向きに沿うように流れて下流側で合わせられ、それによって、空気の流速が大きくなり易くなる。
【0008】
このため、例えばユーザーが、ルーバーシャット機構の風向調整装置80を操作してケース体81の流路を複数のガイドルーバー82で閉鎖した場合でも、
図7に示したように、風向調整装置80の吹出口の一部(例えば、ケース体81の内周面に近い部分)から、僅かな空気が強い勢いで吹き出すことがある。その結果、ユーザーに対して、隙間風のような空気の漏れを感じさせることがある。また、場合によっては、ユーザーに不快感を生じさせることも考えられる。
【0009】
なお、このような空気漏れの問題に対し、例えばガイドルーバーの寸法精度を向上させることや、ガイドルーバーの材質を変更すること等により、複数のガイドルーバーで流路を閉鎖したときの密閉度を高めて対応することが考えられるが、この場合、製造コストの大幅な増大を招くという問題があった。
【0010】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、ケース体内の空気の流路を複数のガイドルーバーで閉鎖したときに、空気が吹出口から吹き出すことを抑制して、ユーザーに空気の漏れを感じさせ難くすることが可能な風向調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明により提供される風向調整装置は、空気を流通させる流路を内部に備えるケース体と、前記ケース体内に回転可能に配される少なくとも1つのガイドルーバーとを有し、前記ガイドルーバーは、前記ケース体の吹出口より上流側に配されるとともに前記流路を開閉する風向調整装置であって、前記ガイドルーバーは、前記流路の閉鎖時に、少なくとも前記ガイドルーバーの下流側端部が前記ケース体の内壁面に接触又は近接するシャット位置に保持され、前記ケース体は、前記空気を前記流路から(前記ケース体の外側に)流出させる排気開口部を有し、前記排気開口部は、前記シャット位置に保持された前記ガイドルーバーの位置よりも下流側で、且つ、前記吹出口よりも上流側に配されていることを特徴とする風向調整装置である。
【0012】
本発明の風向調整装置において、前記ケース体内に複数の前記ガイドルーバーが配され、複数の前記ガイドルーバーは、前記シャット位置に保持されたとき、隣接する前記ガイドルーバーの少なくとも一部が互いに重なり合い、且つ、最も上流側に重ねられる前記ガイドルーバーの前記下流側端部が前記ケース体の前記内壁面に接触又は近接することにより、前記流路を閉鎖する構造で形成されていることが好ましい。
【0013】
また、前記ケース体は、前記ガイドルーバーの回転軸に直交する方向において、前記シャット位置に保持された前記ガイドルーバーの前記下流側端部が接触又は近接する第1壁部と、前記第1壁部の反対側に配される第2壁部とを有し、前記排気開口部は、前記ケース体の前記第1壁部に設けられていることが好ましい。
【0014】
本発明の風向調整装置には、前記排気開口部を開閉する蓋体が設けられ、前記蓋体は、前記ガイドルーバーが前記シャット位置に移動する回転動作に連動して、前記排気開口部を閉じる閉鎖位置から前記排気開口部を開く開口位置に移動することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の風向調整装置によれば、ケース体内の空気の流路を複数のガイドルーバーで閉鎖したときに、空気が吹出口から吹き出すことを抑制して、ユーザーに空気の漏れを感じさせ難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施例に係る風向調整装置を空気吹出口側から模式的に示す斜視図である。
【
図2】上下方向について
図1に示したII-II線の位置における風向調整装置の要部の断面を模式的に示す断面図である。
【
図3】複数のガイドルーバーでケース体内の空気の流路を閉鎖した状態を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図2に示した状態の複数のガイドルーバーを連結するリンク部材と蓋体との関係を模式的に示す断面図である。
【
図5】複数のガイドルーバーでケース体内の空気の流路を閉鎖したときのリンク部材と蓋体との関係を模式的に示す断面図である。
【
図6】本発明の変形例に係る風向調整装置の断面を模式的に示す断面図である。
【
図7】ルーバーシャット機構を備える従来の風向調整装置において、複数のガイドルーバーでケース体内の空気の流路を閉鎖した状態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施の形態について、実施例を挙げて図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施例に係る風向調整装置を空気吹出口側から模式的に示す斜視図である。
図2は、上下方向について
図1に示したII-II線の位置における風向調整装置の断面を模式的に示す断面図であり、
図3は、複数のガイドルーバーでケース体内の空気の流路を閉鎖した状態を模式的に示す断面図である。
図4は、風向調整装置に設けたリンク部材と蓋体との関係を模式的に示す断面図である。なお、本願において、風向調整装置の要部の断面を示す
図2、
図3、
図6、及び
図7では、風向調整装置の構造を見易くするために、断面に入れるハッチングが省略されている。
【0018】
図1に示した本実施例の風向調整装置1は、自動車の車室内に配されるインストルメントパネル3やセンターコンソール等の内装部材に設置される。また、風向調整装置1は、自動車に備えられた図示しない空調装置に接続されることによって、その空調装置から供給される空気を、風向調整装置1の吹出口11を介して車室内に吹き出すことが可能である。
【0019】
ここで、風向調整装置1に関して、前後方向とは、後述するガイドルーバー20がニュートラルの中央位置に保持されているときに風向調整装置1から吹き出される空気の吹き出し方向に沿った方向を言う。この場合、空気が流れる下流側の方向を前方とし、上流側の方向を後方とする。また、ガイドルーバー20におけるニュートラルの中央位置とは、ガイドルーバー20の第1主面及び第2主面(左右の側面)が、風向調整装置1に供給された空気の流れ(前後方向)に沿うようにガイドルーバー20を保持する位置を言う。
【0020】
上下方向及び左右方向は、風向調整装置1を吹出口11側から見たときにおける垂直方向(高さ方向)及び水平方向(幅方向)である。この場合、垂直方向及び水平方向は、前後方向に対してそれぞれ直交している。また、垂直方向と水平方向とは、互いに直交している。
【0021】
本実施例の風向調整装置1は、空気を流通させる流路を内部に備えるケース体10と、ケース体10の内部に左右に回転可能に配される複数のガイドルーバー(縦ルーバー)20と、複数のガイドルーバー20を連結するリンク部材30とを有する。また、風向調整装置1は、ケース体10に設けられた後述する排気開口部13を開閉する蓋体40と、ガイドルーバー20を操作する操作ノブ50と、操作ノブ50を摺動可能に支持する支持バー60とを有する。
【0022】
ケース体10は、インストルメントパネル3の裏面側に設置されるとともに、空調装置で温度調節された空気を供給する図示しないダクトに接続されている。ケース体10は、略角筒状の形状を有しており、ケース体10の内部に、空気を流通させる流路(空気流路)が前後方向に沿って形成されている。また、ケース体10の前端(下流側端縁)には、空気を車室内に吹き出す吹出口11が設けられている。
【0023】
略角筒状のケース体10は、上壁部と、下壁部と、左側壁部10aと、右側壁部10bとを有する。本実施例において、ガイドルーバー20は、後述するように上下方向に延びる回転軸を中心にして左右方向に回転するようにケース体10に取り付けられている。この場合、ケース体10の左側壁部10aは、ガイドルーバー20の回転軸に直交する左右方向において、ガイドルーバー20の下流側端部(前端部)を内壁面に接触させる第1壁部として設けられている。右側壁部10bは、左右方向における左側壁部(第1壁部)10aの反対側に配されるとともに、ガイドルーバー20の上流側端部(後端部)を内壁面に接触させる第2壁部として設けられている。
【0024】
ケース体10の左側壁部(第1壁部)10aには、ガイドルーバー20がシャット位置に移動したときに、最も左側に配されるガイドルーバー20(後述する第1ガイドルーバー20a)の下流側端部を当接させる左側ルーバー当接部12と、空気をケース体10の内部から外側に流出させる排気開口部13とが設けられている(
図3及び
図5を参照)。
【0025】
左側ルーバー当接部12は、風向調整装置1又はケース体10の上下方向に直交する断面視(
図2及び
図3を参照)において、前方側(下流側)に向くとともに、シャット位置に保持されるガイドルーバー20の向きに対応して、左右方向に対し、左側が下流側に下がるように傾斜して配されている。
【0026】
排気開口部13は、前後方向(空気の流通方向)に関し、ガイドルーバー20が、
図3に示すようにケース体10の流路を閉鎖するシャット位置に保持されている状態において、ケース体10の左側壁部10aに接触するガイドルーバー20の位置よりも前方側(下流側)で、且つ、ケース体10の吹出口11の位置よりも後方側(上流側)の位置に設けられている。また、排気開口部13は、シャット位置に保持されている2つのガイドルーバー20間や、ガイドルーバー20とケース体10の間から漏れる空気を円滑に流出させるように、前後方向に関し、左側ルーバー当接部12の下流側に近接する位置から、前方に向けて連続して設けられていることが好ましい。
【0027】
また、ケース体10の左側壁部10aには、蓋体40が排気開口部13を閉鎖する閉鎖位置に保持されるときに、蓋体40に当接して蓋体40を係止することによって、蓋体40が閉鎖位置よりも左側に開くことを防ぐ係止突出部14が設けられている。この係止突出部14は、左側壁部10aの排気開口部13を囲む開口周縁部の少なくとも一部に、好ましくは、開口周縁部における上流側の少なくとも一部に設けられている。
【0028】
なお本発明において、排気開口部13が、シャット位置に保持されたガイドルーバー20の位置よりも下流側に配されるとは、排気開口部13が、左側壁部10aの左側ルーバー当接部12とガイドルーバー20とが互いに当接する接触部分よりも下流側に配されることを意味する。また、本発明の排気開口部13は、シャット位置に保持されているガイドルーバー20から漏れる空気を排出可能なように当該ガイドルーバー20の下流側に設けられていれば、排気開口部13の設置位置、大きさ、及び設置数等は特に限定されない。
【0029】
ケース体10の右側壁部(第2壁部)10bには、ガイドルーバー20がシャット位置に移動したときに、最も右側に配されるガイドルーバー20(後述する第7ガイドルーバー20g)の上流側端部を当接させる右側ルーバー当接部15が設けられている。この場合、右側ルーバー当接部15は、ケース体10の上下方向に直交する断面視(
図2及び
図3を参照)において、後方側(上流側)に向くとともに、シャット位置に保持されるガイドルーバー20の向きに対応して、左右方向に対し、左側が下流側に下がるように傾斜して配されている。
【0030】
本実施例のケース体10には、ケース体10内を流れる空気を案内する7つのガイドルーバー20が、それぞれ、左右方向に回転可能に保持されている。各ガイドルーバー20は、上下方向に平行に配されており、且つ、シャット位置以外の向きに保持されているときは、空気を流通可能な間隙が、左右に隣接するガイドルーバー20間に設けられる。これら7つのガイドルーバー20の向きを左右方向に変更することによって、風向調整装置1から吹き出す空気の流れを左右に調整できる。
【0031】
本実施例において、風向調整装置1を吹出口11側から見たときに、最も左側に配されているガイドルーバー20を、第1ガイドルーバー20aと規定し、その第1ガイドルーバー20aの右側に隣接するガイドルーバー20から最も右側に配されているガイドルーバー20までを、順番に、第2ガイドルーバー20b~第7ガイドルーバー20gと規定する。
【0032】
本実施例のガイドルーバー20は、風向調整装置1の上下方向に直交する断面視(
図3を参照)において、ガイドルーバー20を左側に回転させて、第1ガイドルーバー20aをケース体10の左側ルーバー当接部12に当接させ、且つ、第7ガイドルーバー20gを右側ルーバー当接部15に当接させるとともに、左右方向に隣接するガイドルーバー20同士を一部分で重ね合わせることにより、空気を流通させる間隙を塞いで、ケース体10内の空気の流路を閉じることができる。なお、ガイドルーバー20を左側(又は右側)に回転させるとは、風向調整装置1を前方側(吹出口11側)から見たときに、ガイドルーバー20の下流側端部が回転して移動する方向を言う。また本発明では、このように空気の流路を閉鎖するように回転させたガイドルーバー20の位置(回転位置)を、シャット位置と規定する。また、ガイドルーバー20をシャット位置に保持した場合、7つのガイドルーバー20のうち、第1ガイドルーバー20aが、最も上流側の位置で重ねられ、第7ガイドルーバー20gが、最も下流側の位置で重ねられる。
【0033】
なお本発明では、ガイドルーバー20をシャット位置に保持したときに、第1ガイドルーバー20a及び第7ガイドルーバー20gが、ケース体10の左側ルーバー当接部12及び右側ルーバー当接部15に対し、接触することなく、僅かな隙間が形成される程度に近接する位置に保持されてもよい。また、左右方向に隣接するガイドルーバー20が、接触することなく、僅かな隙間が形成される程度に互いに近接する位置で重なり合うように保持されてもよい。このような僅かな隙間が、シャット位置に保持されたガイドルーバー20に形成される場合でも、当該隙間を通過した空気を、ケース体10の左側壁部10aに設けた排気開口部13から流出させることが可能であり、それによって、ユーザーに対して空気の漏れを感じさせることを抑制できる。
【0034】
各ガイドルーバー20は、薄板状のルーバー本体部21と、ルーバー本体部21の上端部及び下端部から上下方向に沿って突出する上下一対の回転軸部(不図示)と、後述するリンク部材30に接続される接続ピン22とをそれぞれ有する。また、7つのガイドルーバー20のうちの中央に配される第4ガイドルーバー20dには、操作ノブ50が係合する円柱状の係合柱部23が上下方向に沿って設けられている。
【0035】
7つのガイドルーバー20は、
図4及び
図5に示すリンク部材30によって互いに連結されている。リンク部材30は、厚さの薄い板状に形成されている。また、リンク部材30は、直線状に延在するリンク本体部31と、リンク本体部31に設けられる7つのピン保持部32と、リンク本体部31から延びるリンクアーム部33と、リンクアーム部33の先端部に設けられるハンド部34とを有する。
【0036】
リンク部材30のピン保持部32は、リンク本体部31に沿って一定の間隔で設けられているとともに、対応する各ガイドルーバー20の接続ピン22を回動可能に保持する。このリンク部材30によって、7つのガイドルーバー20は、互いに平行な位置関係が保持されるように、且つ、それぞれの回転動作が互いに連動するように連結されている。
【0037】
リンク部材30のリンクアーム部33は、リンク部材30を上側から見た平面視(
図4及び
図5)において、リンク本体部31の左側端部から直線状に延びる第1リンクアーム部33aと、第1リンクアーム部33aから円弧状に湾曲しながら延びる第2リンクアーム部33bとを有する。ハンド部34は、リンク部材30の平面視において、略C字状を呈する形状を有しており、蓋体40の後述する把手部42を掴んで回転可能に保持すること、また、掴んでいる把手部42を離すことが可能に形成されている。
【0038】
このような本実施例のリンク部材30は、ガイドルーバー20の回転に伴って左右方向に移動し、また、ガイドルーバー20がシャット位置に移動するときにリンク部材30のハンド部34が蓋体40の把手部42を掴んで、更に、その把手部42を押して左側に移動させることができる。これにより、蓋体40を、ガイドルーバー20がシャット位置へ回転する動作に連動させて、排気開口部13を閉じる閉鎖位置(
図4を参照)から、蓋体40及びケース体10間に隙間を設けて排気開口部13を開く開口位置(
図5を参照)に移動させることができる。
【0039】
蓋体40は、ケース体10に回転可能に取り付けられている。この蓋体40は、ケース体10の排気開口部13を開閉する蓋本体部41と、リンク部材30のハンド部34に掴まれる把手部42と、蓋本体部41及び把手部42間を接続する接続部43とを有する。
【0040】
蓋本体部41は、排気開口部13に対応する形状及び大きさを有する。具体的に、蓋本体部41は、排気開口部13を閉鎖する閉鎖位置に保持されたときに、空気がケース体10内から排気開口部13を介して外側に流出することを防止できる形状及び大きさを有する。蓋体40の把手部42は、円柱の形状を有し、接続部43から上方に突出して形成されている。
【0041】
本実施例の蓋体40は、図示しない弾性部材(例えば、ねじりコイルばね)によって、蓋本体部41が開口位置から閉鎖位置に移動する方向に向けて付勢されている。なお本発明において、蓋体40は、弾性部材によって付勢されずにケース体10に取り付けられていてもよい。この場合、リンク部材30は、蓋体40を閉鎖位置から開口位置に移動させることが可能で、且つ、開口位置から閉鎖位置に移動させることが可能な構造で形成されていることが好ましい。
【0042】
操作ノブ50は、ノブ本体部51と、ノブ本体部51に一体に形成される図示しないルーバー係合部とを有する。ノブ本体部51には、支持バー60を挿通させる挿通孔が、ノブ本体部51の右側面部から左側面部まで、ノブ本体部51内を左右方向に貫通して設けられている。操作ノブ50は、ノブ本体部51の挿通孔に支持バー60が挿通されることにより、支持バー60に取り付けられて支持されるとともに、支持バー60の長さ方向(本実施例では、左右方向)に沿ってスライド可能に配される。
【0043】
操作ノブ50の図示しないルーバー係合部は、ノブ本体部51の後端部に一体的に形成されているとともに、ノブ本体部51から後方に向けて延びる左右一対の係合突出部を有する。この場合、左右の係合突出部は、互いに離間して配されており、左右の係合突出部間には、第4ガイドルーバー20dに設けた係合柱部23を挿入する空間部が設けられている。このルーバー係合部の左右の係合突出部間に第4ガイドルーバー20dの係合柱部23が挿入されることにより、操作ノブ50を係合柱部23と係合させることができる。また、係合柱部23に係合する操作ノブ50を、支持バー60に沿って左右方向にスライドさせることによって、7つのガイドルーバー20を左右方向に回転させて、ガイドルーバー20の向きを変えることができ、また、ガイドルーバー20をシャット位置に移動させることができる。
【0044】
なお本実施例において、ノブ本体部51内には、摩擦部材が収容されて保持されていてもよい。この場合、摩擦部材は、エラストマー等の弾性を備える軟質の合成樹脂により形成されていることが好ましい。この摩擦部材が、支持バー60に接触して押し当てられる状態でノブ本体部51内に保持されることによって、摩擦部材と支持バー60との間にて、操作ノブ50が停止しているときや操作されるときの摩擦力を発生させることが可能である。
【0045】
支持バー60は、左右方向に細長い棒状に形成されている。支持バー60の左右方向に直交する断面(横断面)は、支持バー60の長さ方向(左右方向)の全体に亘って一定の形状を有する。支持バー60の左右両端部は、支持バー60がケース体10に対して動かないように、ケース体10に固定されている。
【0046】
以上のような本実施例の風向調整装置1によれば、ガイドルーバー20が、シャット位置以外の向きで保持されている場合、ケース体10の排気開口部13は、蓋体40の蓋本体部41によって閉鎖されている。このため、図示しない空調装置から供給される空気を、排気開口部13から流出させることはなく、風向調整装置1の吹出口11から、ガイドルーバー20で案内される方向に向けて車室内に吹き出すことができる。
【0047】
また、本実施例の風向調整装置1では、ガイドルーバー20をシャット位置に移動させて保持することによって、
図3に示すように、風向調整装置1からの空気の吹き出しを停止させることができる。このとき、ケース体10の排気開口部13は、ケース体10の左側壁部10aに設けられており、また、蓋体40の蓋本体部41がガイドルーバー20の回転動作に連動して閉鎖位置から開口位置に移動することによって、排気開口部13を開くことができる。
【0048】
これにより、左右方向に互いに隣接するガイドルーバー20が重ね合わされている部分や、ガイドルーバー20がケース体10の内面に接触している部分から、空気が下流側に漏れたとしても、その漏れた空気は、
図3に仮想線の矢印で示すように、ガイドルーバー20に沿って、また、ケース体10の左側壁部10aに沿って流れて合わせられるとともに、ケース体10の排気開口部13に向かうため、その漏れた空気を、ケース体10の排気開口部13から風向調整装置1の外部に円滑に流出させることができる。
【0049】
従って、ユーザーが、空気の吹き出しを停止させるように操作ノブ50を操作してガイドルーバー20をシャット位置に回転させたときに、ガイドルーバー20から漏れた空気が、風向調整装置1の吹出口11から吹き出すことを効果的に抑制でき、それによって、風向調整装置1から空気が漏れていることをユーザーに感じさせ難くすることができる。このため、風向調整装置1の品質を向上させることができ、また、空気の漏れに起因してユーザーに与える不快感を低減できる。
【0050】
またこの場合、蓋体40の閉鎖位置から開口位置への移動は、ガイドルーバー20がシャット位置に回転するときの回転動作に連動させて行われるため、ガイドルーバー20がシャット位置に移動するタイミングに合わせて、ケース体10の排気開口部13を開くことができる。また、ガイドルーバー20をシャット位置から右方向に回転させるときには、ガイドルーバー20の回転が開始するタイミングに合わせて、蓋体40を、図示しない弾性部材の付勢力によって開口位置から閉鎖位置に移動させることができ、それによって、ケース体10の排気開口部13を蓋体40で閉じることができる。
【0051】
これにより、ガイドルーバー20が、シャット位置以外の向きに保持されて空気の流れを案内しているときには、ケース体10の排気開口部13が閉鎖された状態を安定して維持できるため、風向調整装置1における空気を吹き出す性能、及び風向を調整する性能が、排気開口部13の設置によって低下することを防止又は抑制できる。
【0052】
更に本実施例の風向調整装置1では、複数のガイドルーバー20を連結している1つのリンク部材30によって、蓋体40の動きをガイドルーバー20の回転動作に連動させている。このため、風向調整装置1を形成する部品点数の増加を最小限に抑えて、製造コストの増大や、組立作業性の低下が生じることを抑制できる。
【0053】
なお、本発明は、上述した実施例に何ら限定されるものではなく、本発明と実質的に同一な構成を有し、かつ、同様な作用効果を奏しさえすれば、多様な変更が可能である。例えば、風向調整装置1の全体形状、デザイン、大きさ等は特に限定されず、装置の設置位置、設置される車の種類やデザイン等に応じて変更することが可能である。
【0054】
また上記実施例において、ケース体10の左側壁部10aには、上述した排気開口部13が設けられるとともに、その排気開口部13を開閉する蓋体40がケース体10に取り付けられている。しかし本発明では、例えば変形例に係る風向調整装置の断面図を
図6に示すように、ケース体10の排気開口部13を開閉する蓋体40を設けずに、風向調整装置2が形成されていてもよい。また、この変形例に係る風向調整装置2では、排気開口部13が、上述した実施例の排気開口部13よりも大きさを小さくして形成されている。
【0055】
このような変形例に係る風向調整装置2でも、ガイドルーバー20をシャット位置に回転させたときに、ガイドルーバー20から漏れた空気を、ケース体10の排気開口部13から流出させることができるため、漏れた空気が風向調整装置2の吹出口11から吹き出すことを効果的に抑制して、ユーザーに空気の漏れを感じさせ難くすることができる。更に、変形例に係る風向調整装置2では、蓋体40の設置が省略されているため、例えば実施例の風向調整装置1に比べて、製造コストの削減や、組立作業性の向上を図ることができる。
【0056】
また本発明において、風向調整装置に設けるガイドルーバーの設置位置及び設置数は特に限定されない。更に、上述した実施例の風向調整装置1では、ガイドルーバー20が左右方向に回転可能に形成されているが、本発明において、ガイドルーバーの回転方向は限定されず、例えばガイドルーバーは、上下方向などの左右方向以外の方向に回転可能なように風向調整装置が設置されていてもよい。
【0057】
更にまた、上述した実施例の風向調整装置1では、操作ノブ50が支持バー60にスライド可能に取り付けられている。しかし本発明では、実施例の支持バー60の代わりに、上下方向に回転可能な複数の第2ガイドルーバー(横ルーバー)を設けて、その第2ガイドルーバーの一つに操作ノブをスライド可能に取り付けることによって、風向調整装置が形成されていてもよい。このような風向調整装置であれば、空気の流れを左右方向と上下方向とにそれぞれ調整できるとともに、上述した実施例の場合と同様に、漏れた空気が風向調整装置の吹出口から吹き出すことも効果的に抑制できる。
【符号の説明】
【0058】
1,2 風向調整装置
3 インストルメントパネル
10 ケース体
10a 左側壁部(第1壁部)
10b 右側壁部(第2壁部)
11 吹出口
12 左側ルーバー当接部
13 排気開口部
14 係止突出部
15 右側ルーバー当接部
20 ガイドルーバー(縦ルーバー)
20a~20g 第1ガイドルーバー~第7ガイドルーバー
21 ルーバー本体部
22 接続ピン
23 係合柱部
30 リンク部材
31 リンク本体部
32 ピン保持部
33 リンクアーム部
33a 第1リンクアーム部
33b 第2リンクアーム部
34 ハンド部
40 蓋体
41 蓋本体部
42 把手部
43 接続部
50 操作ノブ
51 ノブ本体部
60 支持バー