(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123087
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】試験装置および試験方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/34 20200101AFI20230829BHJP
【FI】
G01R31/34 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026961
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100176371
【弁理士】
【氏名又は名称】笹田 健
(72)【発明者】
【氏名】飯島 匡史
【テーマコード(参考)】
2G116
【Fターム(参考)】
2G116BA00
2G116BB01
2G116BC02
2G116BD06
2G116BD08
(57)【要約】
【課題】磁気飽和が発生した場合であっても試験対象の巻線の特性の変化を解析できるようにする。
【解決手段】試験装置1は、一端が外部端子T2に接続されたインパルス電圧印加用キャパシタCsと、インパルス電圧印加用キャパシタCsの他端と外部端子T1との間に直列に接続されたスイッチSWおよび電流制限抵抗Rsと、外部端子T1と外部端子T2との間の電圧Vcdとインパルス電圧印加用キャパシタの両端の電圧Vcsとを測定する測定部4と、パラメータ算出部5とを有する。パラメータ算出部5は、巻線11を等価的に表した等価インダクタLd、等価キャパシタCdおよび等価抵抗Rdの少なくとも一つの値の時間的な変化を、測定部4によって測定した電圧Vcdおよび電圧Vcsの測定値に基づいて、算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験対象の巻線の一方の端子が接続される第1外部端子と、前記巻線の他方の端子が接続される第2外部端子と、
一端が前記第2外部端子に接続されたインパルス電圧印加用キャパシタと、
前記インパルス電圧印加用キャパシタの他端と前記第1外部端子との間に接続されたスイッチと、
前記インパルス電圧印加用キャパシタの他端と前記第1外部端子との間に前記スイッチと直列に接続された電流制限抵抗と、
試験開始の指示に応じて前記スイッチをオンする指示入力部と、
前記第1外部端子と前記第2外部端子との間の第1電圧と、前記インパルス電圧印加用キャパシタの両端の第2電圧とを測定する測定部と、
前記第1外部端子と前記第2外部端子との間に接続された等価インダクタ、前記第1外部端子と前記第2外部端子との間に接続された等価キャパシタ、および前記第1外部端子と前記第2外部端子との間に前記等価インダクタと直列に接続された等価抵抗によって前記巻線を等価的に表したときの、前記等価インダクタおよび前記等価抵抗の少なくとも一つの値の時間的な変化を、前記測定部によって測定した前記第1電圧の測定値および前記第2電圧の測定値に基づいて算出するパラメータ算出部と、
前記測定部によって測定された、前記第1電圧の測定値および前記第2電圧の測定値を含む測定値情報と前記等価キャパシタの値とを記憶する記憶部と、を有し、
前記パラメータ算出部は、
前記記憶部に記憶されている、前記スイッチがオンしてから前記巻線の前記等価インダクタ、前記等価キャパシタ、および前記等価抵抗に基づく共振が開始されるまでの間の所定の期間における単位時間毎の前記第1電圧の測定値および前記第2電圧の測定値と、前記記憶部に記憶されている前記等価キャパシタの値とを用いて、前記所定の期間における、前記巻線の前記等価インダクタ、前記等価キャパシタ、および前記等価抵抗と、前記インパルス電圧印加用キャパシタと、前記電流制限抵抗とによって構成される等価回路における前記第1電圧の過渡応答の方程式および前記第2電圧の過渡応答の方程式に基づく回帰分析を行うことにより、前記等価インダクタおよび前記等価抵抗の少なくとも一つの前記単位時間毎の値を算出する
試験装置。
【請求項2】
請求項1に記載の試験装置において、
前記等価インダクタの値をLd、前記等価キャパシタの値をCd、前記等価抵抗の値をRd、前記インパルス電圧印加用キャパシタの値をCs、前記電流制限抵抗の値をRs、前記第1電圧をVcd、前記第2電圧をVcs、時間をtとしたとき、前記第1電圧の過渡応答の方程式は、下記式(1)で表され、前記第2電圧の過渡応答の方程式は、下記式(2)で表される
試験装置。
【数1】
【数2】
【請求項3】
請求項1または2の何れか一項に記載の試験装置において、
前記パラメータ算出部は、
前記スイッチがオンした直後の前記第1電圧が上昇している期間のうち前記等価インダクタに流れる電流がゼロであるとみなせる第1期間における、前記第1電圧の測定値と前記第2電圧の測定値とに基づいて、前記等価キャパシタの値を算出し、前記記憶部に記憶する
試験装置。
【請求項4】
請求項3に記載の試験装置において、
前記パラメータ算出部は、前記単位時間における前記第1電圧の測定値と前記第2電圧の測定値とによって表される、前記単位時間における前記等価キャパシタの電荷の変化量と前記単位時間における前記第1電圧の変化量との関係式に基づいて、前記等価キャパシタの値を算出する
試験装置。
【請求項5】
請求項4に記載の試験装置において、
前記第1期間における時刻aにおける前記第2電圧の測定値をVcs|t=a、前記時刻aにおける前記第1電圧の測定値をVcd|t=a、前記時刻aよりも前記単位時間hだけ進んだ時刻a+hにおける前記第2電圧の測定値をVcs|t=a+h、前記時刻a+hにおける前記第1電圧の測定値をVcd|t=a+h、前記電流制限抵抗の値をRs、前記等価キャパシタの値をCdとしたとき、
前記パラメータ算出部は、下記式(3)に基づいて単位時間毎の前記等価キャパシタの値を算出する
試験装置。
【数3】
【請求項6】
請求項3乃至5の何れか一項に記載の試験装置において、
前記測定部は、前記単位時間毎に前記第1電圧と前記第2電圧とをサンプリングし、
前記パラメータ算出部は、前記測定部によってサンプリングされた前記第1電圧の測定値と前記第2電圧の測定値とを含むサンプリングデータを取得し、互いに隣り合う2つのサンプリングポイントの前記サンプリングデータを一組とするデータ対毎に、前記等価キャパシタの値を算出する
試験装置。
【請求項7】
請求項3乃至6の何れか一項に記載の試験装置において、
前記第1期間は、前記第1電圧が上昇している期間のうち、前記スイッチをオンした直後の所定の期間と、前記第1電圧が前記第1電圧の最大値に到達する直前の所定の期間とを除いた期間である
試験装置。
【請求項8】
請求項7に記載の試験装置において、
前記第1期間は、前記第1電圧の測定値が前記第1電圧の最大値のα(0≦α<100)%となる時刻から、前記第1電圧の測定値が前記第1電圧の最大値のβ(α<β≦100)%となる時刻までの期間である
試験装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一項に記載の試験装置において、
前記パラメータ算出部によって算出された前記等価キャパシタ、前記等価インダクタ、および前記等価抵抗の少なくとも1つの値の時間的な変化を示す波形データを生成する波形生成部と、前記波形データに基づく波形を表示する表示部と、を更に有する
試験装置。
【請求項10】
請求項9に記載の試験装置において、
前記表示部は、前記等価インダクタの値の逆数の時間的な変化を示す波形を表示する
試験装置。
【請求項11】
請求項9または10に記載の試験装置において、
前記表示部は、前記等価抵抗の値を前記等価インダクタの値で除算した値の時間的な変化を示す波形を表示する
試験装置。
【請求項12】
試験対象の巻線の一方の端子が接続される第1外部端子と、前記巻線の他方の端子が接続される第2外部端子と、一端が前記第2外部端子に接続されたインパルス電圧印加用キャパシタと、前記インパルス電圧印加用キャパシタの他端と前記第1外部端子との間に接続されたスイッチと、前記インパルス電圧印加用キャパシタの他端と前記第1外部端子との間に前記スイッチと直列に接続された電流制限抵抗とを備えた試験装置を用いた試験方法であって、
前記スイッチをオンする第1ステップと、
前記第1外部端子と前記第2外部端子との間の第1電圧と前記インパルス電圧印加用キャパシタの両端の第2電圧とを測定する第2ステップと、
前記第1外部端子と前記第2外部端子との間に接続された等価インダクタ、前記第1外部端子と前記第2外部端子との間に接続された等価キャパシタ、および前記第1外部端子と前記第2外部端子との間に前記等価インダクタと直列に接続された等価抵抗によって前記巻線を等価的に表したときの、前記等価インダクタ、および前記等価抵抗の少なくとも一つの値の時間的な変化を、前記第2ステップにおいて測定した前記第1電圧の測定値および前記第2電圧の測定値に基づいて算出する第3ステップと、を含み、
前記第3ステップは、
前記スイッチがオンしてから前記巻線の前記等価インダクタ、前記等価キャパシタ、および前記等価抵抗に基づく共振が開始されるまでの間の所定の期間における単位時間毎の前記第1電圧の測定値および前記第2電圧の測定値と、前記試験装置に記憶されている前記等価キャパシタの値とを用いて、前記所定の期間における、前記巻線の前記等価インダクタ、前記等価キャパシタ、および前記等価抵抗と、前記インパルス電圧印加用キャパシタと、前記電流制限抵抗とによって構成される等価回路における前記第1電圧の過渡応答の方程式および前記第2電圧の過渡応答の方程式に基づく回帰分析を行うことにより、前記等価インダクタおよび前記等価抵抗の少なくとも一つの前記単位時間毎の値を算出する
試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験装置および試験方法に関し、例えば、電動機および発電機等の回転機や変圧器等の、巻線(コイル)により構成される製品および部品の巻線の特性を測定するための試験装置および試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動機および発電機等の回転機の巻線の特性を測定するための試験装置として、試験対象の巻線にインパルス電圧を印加したときの電圧の変化に基づいて、当該巻線と試験装置の内部回路とから構成される等価回路におけるインダクタンスLとキャパシタンスCの乗算値LC(LC値)とレジスタンス(抵抗値)RおよびキャパシタンスCの乗算値RC(RC値)を算出するインパルス巻線試験装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に代表される従来のインパルス巻線試験装置は、試験対象の巻線に関する各パラメータ(インダクタンスL、キャパシタンスC、および抵抗値R)の乗算値であるLC値およびRC値を算出できるが、各パラメータを個別に算出することはできない。
【0005】
また、一般に、試験対象の巻線に磁気飽和が発生した場合、巻線のインダクタンス等のパラメータが変化する。しかしながら、従来のインパルス巻線試験装置は、磁気飽和が発生した場合に、巻線に関するパラメータを正確に算出できない。
【0006】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、磁気飽和が発生した場合であっても試験対象の巻線の特性の変化を解析できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の代表的な実施の形態に係る試験装置は、試験対象の巻線の一方の端子が接続される第1外部端子と、前記巻線の他方の端子が接続される第2外部端子と、一端が前記第2外部端子に接続されたインパルス電圧印加用キャパシタと、前記インパルス電圧印加用キャパシタの他端と前記第1外部端子との間に接続されたスイッチと、前記インパルス電圧印加用キャパシタの他端と前記第1外部端子との間に前記スイッチと直列に接続された電流制限抵抗と、試験開始の指示に応じて前記スイッチをオンする指示入力部と、前記第1外部端子と前記第2外部端子との間の第1電圧と、前記インパルス電圧印加用キャパシタの両端の第2電圧とを測定する測定部と、前記第1外部端子と前記第2外部端子との間に接続されたインダクタ、前記第1外部端子と前記第2外部端子との間に接続されたキャパシタ、および前記第1外部端子と前記第2外部端子との間に前記等価インダクタと直列に接続された抵抗によって前記巻線を等価的に表したときの、前記等価インダクタ、前記等価キャパシタ、および前記等価抵抗の少なくとも一つの値の時間的な変化を、前記測定部によって測定した前記第1電圧および前記第2電圧の測定値に基づいて算出するパラメータ算出部と、前記測定部よって測定された、前記第1電圧の測定値および前記第2電圧の測定値を含む測定値情報と前記等価キャパシタの値を記憶する記憶部と、を有し、前記パラメータ算出部は、前記記憶部に記憶されている、前記スイッチがオンしてから前記巻線の前記等価インダクタ、前記等価キャパシタ、および前記等価抵抗に基づく共振が開始されるまでの間の所定の期間における単位時間毎の前記第1電圧の測定値および前記第2電圧の測定値と、前記記憶部に記憶されている前記等価キャパシタの値とを用いて、前記所定の期間における、前記巻線の前記等価インダクタ、前記等価キャパシタ、および前記等価抵抗と、前記インパルス電圧印加用キャパシタと、前記電流制限抵抗とによって構成される等価回路における前記第1電圧の過渡応答の方程式および前記第2電圧の過渡応答の方程式に基づく回帰分析を行うことにより、前記等価インダクタおよび前記等価抵抗の少なくとも一つの前記単位時間毎の値を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る試験装置によれば、磁気飽和が発生した場合であっても試験対象の巻線の特性の変化を解析することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態に係る試験装置の構成を示す図である。
【
図2】試験装置に試験対象の巻線を接続したときの等価回路を示す図である。
【
図3】試験装置に巻線が接続された状態において外部端子間にインパルス電圧を印加したときの巻線の両端の電圧Vcdの特性の一例を示す図である。
【
図4】巻線の等価キャパシタCdの算出方法を説明するための図である。
【
図5】試験装置による巻線の等価キャパシタCdの解析結果の一例を示す図である。
【
図6】試験装置による巻線の等価キャパシタCdの解析結果の一例を示す図である。
【
図7】試験装置による巻線の等価キャパシタCdの解析結果の一例を示す図である。
【
図8】巻線に磁気飽和が発生していない場合における、試験装置による巻線の等価インダクタLdおよび等価抵抗Rdの解析結果の一例を示す図である。
【
図9】巻線に磁気飽和が発生していない場合における、試験装置による巻線の等価インダクタLdおよび等価抵抗Rdの解析結果の一例を示す図である。
【
図10】巻線に磁気飽和が発生していない場合における、試験装置による巻線の等価インダクタLdおよび等価抵抗Rdの解析結果の一例を示す図である。
【
図11】巻線に磁気飽和が発生した場合における、試験装置による巻線の等価インダクタLdおよび等価抵抗Rdの解析結果の一例を示す図である。
【
図12】巻線に磁気飽和が発生した場合における、試験装置による巻線の等価インダクタLdおよび等価抵抗Rdの解析結果の一例を示す図である。
【
図13】巻線に磁気飽和が発生した場合における、試験装置による巻線の等価インダクタLdおよび等価抵抗Rdの解析結果の一例を示す図である。
【
図14】試験装置によって算出された巻線の等価インダクタLdおよび等価抵抗Rdの値を別形式で表した波形の一例を示す図である。
【
図15】試験装置によって算出された巻線の等価インダクタLdおよび等価抵抗Rdの値を別形式で表した波形の一例を示す図である。
【
図16】試験装置の表示画面の一例を示す図である。
【
図17】試験装置を用いた巻線の解析方法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0011】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態に係る試験装置(1)は、試験対象の巻線(11)の一方の端子が接続される第1外部端子(T1)と、前記巻線の他方の端子が接続される第2外部端子(T2)と、一端が前記第2外部端子に接続されたインパルス電圧印加用キャパシタ(Cs)と、前記インパルス電圧印加用キャパシタの他端と前記第1外部端子との間に接続されたスイッチ(SW)と、前記インパルス電圧印加用キャパシタの他端と前記第1外部端子との間に前記スイッチと直列に接続された電流制限抵抗(Rs)と、試験開始の指示に応じて前記スイッチをオンする指示入力部(3)と、前記第1外部端子と前記第2外部端子との間の第1電圧(Vcd)と、前記インパルス電圧印加用キャパシタの両端の第2電圧(Vcs)とを測定する測定部(4)と、前記第1外部端子と前記第2外部端子との間に接続された等価インダクタ(Ld)、前記第1外部端子と前記第2外部端子との間に接続された等価キャパシタ(Cd)、および前記第1外部端子と前記第2外部端子との間に前記等価インダクタと直列に接続された等価抵抗(Rd)によって前記巻線を等価的に表したときの、前記等価インダクタ、前記等価キャパシタ、および前記等価抵抗の少なくとも一つの値の時間的な変化を、前記測定部によって測定した前記第1電圧および前記第2電圧の測定値に基づいて算出するパラメータ算出部(5)と、前記測定部によって測定された、前記第1電圧の測定値および前記第2電圧の測定値を含む測定値情報と前記等価キャパシタの値とを記憶する記憶部と、を有し、前記パラメータ算出部は、前記記憶部に記憶されている、前記スイッチがオンしてから前記巻線の前記等価インダクタ、前記等価キャパシタ、および前記等価抵抗に基づく共振が開始されるまでの間の所定の期間(Ta)における単位時間毎の前記第1電圧(Vcd)の測定値および前記第2電圧(Vcs)の測定値と、前記記憶部に記憶されている前記等価キャパシタの値とを用いて、前記所定の期間における、前記巻線の前記等価インダクタ、前記等価キャパシタ、および前記等価抵抗と前記インパルス電圧印加用キャパシタおよび前記電流制限抵抗とによって構成される等価回路における前記第1電圧の過渡応答の方程式および前記第2電圧の過渡応答の方程式に基づく回帰分析を行うことにより、前記等価インダクタおよび前記等価抵抗の少なくとも一つの前記単位時間毎の値を算出することを特徴とする。
【0012】
〔2〕上記〔1〕に記載の試験装置において、前記等価インダクタの値をLd、前記等価キャパシタの値をCd、前記等価抵抗の値をRd、前記インパルス電圧印加用キャパシタの値をCs、前記電流制限抵抗の値をRs、前記第1電圧をVcd、前記第2電圧をVcs、時間をtとしたとき、前記第1電圧の過渡応答の方程式は、後述する式(9)で表され、前記第2電圧の過渡応答の方程式は、後述する式(10)で表されてもよい。
【0013】
〔3〕上記〔1〕または〔2〕に記載の試験装置において、前記パラメータ算出部は、前記スイッチがオンした直後の前記第1電圧が上昇している期間のうち前記等価インダクタに流れる電流がゼロであるとみなせる第1期間(Tb)における、前記第1電圧の測定値と前記第2電圧の測定値とに基づいて、前記等価キャパシタの値を算出し、前記記憶部に記憶してもよい。
【0014】
〔4〕上記〔3〕に記載の試験装置において、前記パラメータ算出部は、単位時間(h)における前記第1電圧の測定値と前記第2電圧の測定値とによって表される、前記単位時間における前記等価キャパシタの電荷の変化量(Qd)と前記単位時間における前記第1電圧の変化量(Vd)との関係式に基づいて、前記等価キャパシタの値を算出してもよい。
【0015】
〔5〕上記〔4〕に記載の試験装置において、前記第1期間における時刻aにおける前記第2電圧の測定値をVcs|t=a、前記時刻aにおける前記第1電圧の測定値をVcd|t=a、前記時刻aよりも前記単位時間hだけ進んだ時刻a+hにおける前記第2電圧の測定値をVcs|t=a+h、前記時刻a+hにおける前記第1電圧の測定値をVcd|t=a+h、前記電流制限抵抗の値をRs、前記等価キャパシタの値をCdとしたとき、前記パラメータ算出部は、下記式(8)に基づいて前記単位時間毎の前記等価キャパシタの値を算出してもよい。
【0016】
〔6〕上記〔3〕乃至〔5〕の何れかに記載の試験装置において、前記測定部は、前記単位時間(h)毎に前記第1電圧と前記第2電圧とをサンプリングし、前記パラメータ算出部は、前記測定部によってサンプリングされた前記第1電圧の測定値と前記第2電圧の測定値とを含むサンプリングデータを取得し、互いに隣り合う2つのサンプリングポイントの前記サンプリングデータを一組とするデータ対毎に、前記等価キャパシタの値を算出してもよい。
【0017】
〔7〕上記〔3〕乃至〔6〕の何れかに記載の試験装置において、前記第1期間(Tb)は、前記第1電圧が上昇している期間のうち、前記スイッチをオンした直後の所定の期間(Tx1)と、前記第1電圧が前記第1電圧の最大値に到達する直前の所定の期間(Tx2)とを除いた期間であってもよい。
【0018】
〔8〕上記〔7〕に記載の試験装置において、前記第1期間(Tb)は、前記第1電圧の測定値が前記第1電圧の最大値のα(0≦α<100)%となる時刻から、前記第1電圧の測定値が前記第1電圧の最大値のβ(α<β≦100)%となる時刻までの期間であってもよい。
【0019】
〔9〕上記〔1〕乃至〔8〕の何れかに記載の試験装置において、前記パラメータ算出部によって算出された前記等価キャパシタ、前記等価インダクタ、および前記等価抵抗の少なくとも1つの値の時間的な変化を示す波形データを生成する波形生成部(6)と、前記波形データに基づく波形を表示する表示部(7)と、を更に有していてもよい。
【0020】
〔10〕上記〔9〕に記載の試験装置において、前記表示部は、前記等価インダクタの値の逆数(1/Ld)の時間的な変化を示す波形を表示してもよい。
【0021】
〔11〕上記〔9〕または〔10〕に記載の試験装置において、前記表示部は、前記等価抵抗の値を前記等価インダクタの値で除算した値(Rd/Ld)の時間的な変化を示す波形を表示してもよい。
【0022】
〔12〕本発明の代表的な実施の形態に係る方法は、試験対象の巻線(11)の一方の端子が接続される第1外部端子(T1)と、前記巻線の他方の端子が接続される第2外部端子(T2)と、一端が前記第2外部端子に接続されたインパルス電圧印加用キャパシタ(Cs)と、前記インパルス電圧印加用キャパシタの他端と前記第1外部端子との間に接続されたスイッチ(SW)と、前記インパルス電圧印加用キャパシタの他端と前記第1外部端子との間に前記スイッチと直列に接続された電流制限抵抗(Rs)とを備えた試験装置(1)を用いた試験方法である。当該試験方法は、前記スイッチをオンする第1ステップ(S4)と、前記第1外部端子と前記第2外部端子との間の第1電圧(Vcd)および前記インパルス電圧印加用キャパシタの両端の第2電圧(Vcs)を測定する第2ステップ(S5)と、前記第1外部端子と前記第2外部端子との間に接続された等価インダクタ(Ld)、前記第1外部端子と前記第2外部端子との間に接続された等価キャパシタ(Cd)、および前記第1外部端子と前記第2外部端子との間に前記等価インダクタと直列に接続された等価抵抗(Rd)によって前記巻線を等価的に表したときの、前記等価インダクタ、前記等価キャパシタ、および前記等価抵抗の少なくとも一つの値の時間的な変化を、前記第2ステップにおいて測定した前記第1電圧の測定値と前記第2電圧の測定値とに基づいて算出する第3ステップ(S7,S8)と、を含み、前記第3ステップは、前記スイッチがオンしてから前記巻線の前記等価インダクタ、前記等価キャパシタ、および前記等価抵抗に基づく共振が開始されるまでの間の所定の期間における単位時間毎の前記第1電圧の測定値および前記第2電圧の測定値と、前記試験装置に記憶されている前記等価キャパシタの値とを用いて、前記所定の期間における、前記巻線の前記等価インダクタ、前記等価キャパシタ、および前記等価抵抗と、前記インパルス電圧印加用キャパシタと、前記電流制限抵抗とによって構成される等価回路における前記第1電圧の過渡応答の方程式および前記第2電圧の過渡応答の方程式に基づく回帰分析を行うことにより、前記等価インダクタおよび前記等価抵抗の少なくとも一つの前記単位時間毎の値を算出することを特徴とする。
【0023】
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施の形態に係る試験装置1の構成を示す図である。
図1に示す試験装置1は、例えば、電動機および発電機等の回転機や変圧器等の電気機器を構成する巻線(コイル)の特性を測定する装置である。例えば、試験装置1は、試験対象の巻線にインパルス電圧を印加したときの電圧の変化に基づいて、試験対象の巻線に関するパラメータであるインダクタ、キャパシタ、および抵抗の夫々の値を算出するインパルス巻線試験装置である。
【0025】
図1に示すように、試験装置1は、外部端子T1,T2、インパルス電圧発生回路2、指示入力部3、測定部4、パラメータ算出部5、波形生成部6、表示部7、および記憶部8を有する。
【0026】
外部端子T1,T2は、試験対象物(DUT:Device Under Test)としての巻線11を接続するための端子である。例えば、外部端子T1には、巻線11の一方の端子が接続され、外部端子T2には、巻線11の他方の端子が接続される。
【0027】
インパルス電圧発生回路2は、外部端子T1,T2間に接続された試験対象の巻線11に対して所望のインパルス電圧を印加するための回路である。インパルス電圧発生回路2は、例えば、インパルス電圧印加用キャパシタCs、スイッチSW、電流制限抵抗Rs、および整流素子Dを有する。
【0028】
インパルス電圧印加用キャパシタCsは、インパルス電圧Eを発生させるための電荷を充電するキャパシタである。インパルス電圧印加用キャパシタCsの一端は、外部端子T2に接続されている。
【0029】
スイッチSWは、インパルス電圧Eの出力の可否を切り替えるための素子である。スイッチSWは、例えば、パワートランジスタやサイリスタ等の半導体素子によって実現されている。スイッチSWは、インパルス電圧印加用キャパシタCsの他端と外部端子T1との間に接続されている。
【0030】
電流制限抵抗Rsは、インパルス電圧印加用キャパシタCsを放電したときに、外部端子T1から試験対象の巻線11に流れる電流を制限するための素子である。電流制限抵抗Rsは、インパルス電圧印加用キャパシタCsの他端と外部端子T1との間にスイッチSWと直列に接続されている。
【0031】
整流素子Dは、インパルス電圧印加用キャパシタCs側から外部端子T1側への電流を通過させ、外部端子T1側からインパルス電圧印加用キャパシタCs側への電流を遮断する素子である。整流素子Dは、例えば、ダイオードである。なお、以下の説明において、整流素子Dを「逆流防止ダイオードD」とも表記する。
【0032】
逆流防止ダイオードDは、インパルス電圧印加用キャパシタCsの他端と外部端子T1との間にスイッチSWおよび電流制限抵抗Rsと直列に接続されている。例えば、逆流防止ダイオードDのアノード電極が電流制限抵抗Rsの一端に接続され、逆流防止ダイオードDのカソード電極が外部端子T1に接続されている。
【0033】
インパルス電圧発生回路2は、指示入力部3からの指示に応じて、インパルス電圧Eを、スイッチSWを介して電流制限抵抗Rsの一端と外部端子T2との間に出力する。
例えば、先ず、インパルス電圧発生回路2は、インパルス電圧印加用キャパシタCsの電圧がインパルス電圧Eとなるように、図示されていない直流電源によってインパルス電圧印加用キャパシタCsを充電する。次に、インパルス電圧発生回路2は、指示入力部3からの指示に応じて、スイッチSWをオンさせる。これにより、インパルス電圧印加用キャパシタCsに充電されていた電荷が電流制限抵抗Rsおよび逆流防止ダイオードDを通って放電され、外部端子T1,T2間に電圧Vcdが発生する。
【0034】
指示入力部3は、試験装置1に対する指示を受け付ける機能部である。指示入力部3は、例えば、ユーザによる試験装置1への操作を受け付ける操作ボタン、タッチパネル等の入力インターフェース装置と、CPUによるプログラム処理とによって実現されている。指示入力部3は、ユーザによってインパルス電圧Eの値や後述する測定部4のサンプリング周波数等の試験条件が入力された場合に、それらの入力値を記憶部8に記憶することにより、試験装置1に試験条件を設定する。また、指示入力部3は、ユーザによる試験開始の指示の入力に応じて、インパルス電圧発生回路2のスイッチSWをオンする。
【0035】
測定部4は、外部端子T1と外部端子T2との間に接続された巻線11に電圧を印加したときの電圧等の物理量を測定する機能部である。具体的に、測定部4は、外部端子T1と外部端子T2との間の電圧Vcd(第1電圧)と、インパルス電圧印加用キャパシタCsの両端の電圧Vcs(第2電圧)とを測定する。例えば、測定部4は、スイッチSWと電流制限抵抗Rsとが接続されるノードと外部端子T2との間の電圧を、電圧Vcsとして測定する。
【0036】
例えば、測定部4は、公知の電圧検出回路および電流検出回路と、電圧検出回路および電流検出回路によって検出された電圧および電流を所定のサンプリング周期でサンプリングし、デジタル信号に変換するA/D変換回路とを含む。
【0037】
測定部4は、電圧Vcdの測定値および電圧Vcsの測定値を含む測定値情報81を記憶部8に記憶する。例えば、測定部4は、電圧Vcdおよび電圧Vcsを所定のサンプリング周期でサンプリングすることにより、電圧Vcdおよび電圧Vcsの測定値(サンプリングデータ)の時系列データを取得し、測定値情報81として記憶部8に記憶する。
【0038】
なお、測定部4による電圧Vcsの測定方法は、スイッチSWと電流制限抵抗Rsが接続されるノードと外部端子T2との間の電圧を電圧検出回路によって直接測定する方法に限定されない。例えば、測定部4は、外部端子T1に流れる電流、すなわち電流制限抵抗Rsに流れる電流Irsを電流検出回路によって検出し、電流Irsの測定値と電圧Vcdの測定値に基づいて、電圧Vcsの測定値を算出してもよい(Vcs=Vcd+Rs×Irs)。あるいは、測定部4は、電流制限抵抗Rsの両端の電圧Vrsを電圧検出回路によって測定し、電圧Vrsの測定値と電圧Vcdの測定値とに基づいて、電圧Vcsの測定値を算出してもよい(Vcs=Vcd+Vrs)。
【0039】
パラメータ算出部5は、試験対象の巻線11に関するパラメータとしての等価キャパシタCd、等価インダクタLd、および等価抵抗Rdの夫々の値を算出する機能部である。波形生成部6は、試験対象の巻線11に関する電圧および電流等の特性を示す各種波形のデータを生成するための機能部である。なお、パラメータ算出部5および波形生成部6の詳細な機能については後述する。
【0040】
記憶部8は、試験装置1がインパルス巻線試験装置として機能するためのプログラムや各種パラメータ、試験対象の巻線11の試験結果等を記憶するための機能部である。
【0041】
ここで、パラメータ算出部5、波形生成部6、および記憶部8は、例えば、プログラム処理装置によって実現されている。プログラム処理装置は、例えば、CPU等のプロセッサと、RAM、ROM等の各種記憶装置と、カウンタ(タイマ)、A/D変換回路、D/A変換回路、クロック発生回路、および入出力I/F回路等の周辺回路とがバスや専用線を介して互いに接続された構成を有するマイクロコントローラである。例えば、プログラム処理装置において、CPUがメモリに記憶されているプログラムに従って各種演算処理を実行し、その演算結果をRAM等の記憶装置に記憶するとともに、カウンタや入出力インターフェース回路等の周辺回路を制御することによって、上述したパラメータ算出部5、波形生成部6、および記憶部8が実現される。
【0042】
表示部7は、試験条件を設定するための情報や試験結果の情報等を表示する機能部である。表示部7は、例えば、液晶ディスプレイ等の表示装置によって実現されている。
【0043】
上述したように、試験装置1は、試験対象の巻線11の特性の解析として、巻線11に関するパラメータを算出する。具体的には、試験装置1は、外部端子T1,T2に間に接続された巻線11にインパルス電圧Eを印加したときの外部端子T1,T2間の電圧Vcdおよびインパルス電圧印加用キャパシタCsの両端の電圧Vcsの過渡応答特性に基づいて、巻線11に関するパラメータである等価インダクタLd、等価キャパシタCd、および等価抵抗Rdの夫々の値を算出する。
【0044】
図2は、試験装置1に試験対象の巻線11を接続したときの等価回路を示す図である。
図3は、試験装置1に巻線11が接続された状態において外部端子T1,T2間にインパルス電圧を印加したときの巻線11の両端の電圧Vcdの特性の一例を示す図である。
【0045】
図3において、横軸は時間〔μs〕を表し、縦軸は電圧〔V〕を表している。参照符号110に示す波形は、インパルス電圧Eが1000Vになるようにインパルス電圧印加用キャパシタCsを充電し、スイッチSWをオンした後の電圧Vcdの時間的な変化を示している。
【0046】
図2に示すように、巻線11は、等価インダクタLd、等価キャパシタCd、および等価抵抗Rdによって等価的に表される。具体的には、外部端子T1,T2から巻線11側を見たときの回路は、外部端子T1と外部端子T2との間に接続された等価インダクタLdと、外部端子T1と外部端子T2との間に接続された等価キャパシタCdと、外部端子T1と外部端子T2との間に等価インダクタLdと直列に接続された等価抵抗Rdとによって等価的に表される。
【0047】
図3に示すように、インパルス電圧発生回路2のスイッチSWがオンしたとき、インパルス電圧印加用キャパシタCsの電荷が電流制限抵抗Rsおよび逆流防止ダイオードDを通って移動し、巻線11の等価キャパシタCdが充電される。
【0048】
時刻t=0sにおいてスイッチSWをオンした場合、スイッチSWがオンした直後においては、等価インダクタLdの性質から、電流は巻線11の等価インダクタLdに流れず、等価キャパシタCdに流れ込む。そのため、外部端子T1,T2間の電圧Vcdは、インパルス電圧印加用キャパシタCsの充電電圧(インパルス電圧E)である1000V程度まで上昇する。ただし、電圧Vcdの上昇する程度は、巻線11の特性により変化する。
【0049】
その後、等価抵抗Rdを経由して等価インダクタLdに電流が流れ始め、電圧Vcdが低下する。電圧Vcdが-1000V程度まで低下したとき、逆流防止ダイオードDによりインパルス電圧発生回路2と巻線11側の回路とが電気的に分離する。これにより、
図3の時刻t=10μs付近において、巻線11の等価インダクタLd,等価キャパシタCd、および等価抵抗Rdの共振が始まり、電圧Vcdが減衰振動する。その後、電圧Vcdは、最終的に0Vになる。ただし、電圧Vcdの低下する程度とその時刻は、巻線11の特性により大幅に変化する。
【0050】
本実施の形態1に係る試験装置1は、
図3に示すように、スイッチSWがオンしてから巻線側の等価インダクタLd,等価キャパシタCd、および等価抵抗Rdによる共振が開始されるまでの所定の期間Taを解析期間とし、解析期間Taにおける電圧Vcdおよび電圧Vcsの測定値と、解析期間Taにおける等価回路に基づく電圧VcdおよびVcsの過渡応答の方程式とに基づいて、等価インダクタLd,等価キャパシタCd、および等価抵抗Rdの少なくとも一つの値の時間的な変化を算出する。
【0051】
従来のインパルス巻線試験機(測定装置)は、巻線11の等価インダクタLd、等価キャパシタCd、および等価抵抗Rdによる共振時の電圧Vcdの方程式および測定値を用いるので、LC値およびRC値等の各パラメータの乗算値しか算出することができない。これに対し、本実施の形態に係る試験装置1は、共振が始まる前の等価回路における電圧Vcd,Vcsの過渡応答の方程式に基づいた演算を行う。これにより、後述するように、等価インダクタLd、等価キャパシタCd、および等価抵抗Rdのそれぞれの値の時間的な変化を個別に算出することができる上に、より短時間に解析を完了することが可能となる。
以下、試験装置1による巻線11に関する各パラメータの具体的な算出方法について説明する。
【0052】
(1)等価キャパシタCdの算出方法
先ず、巻線11の等価キャパシタCdの算出方法について説明する。
本実施の形態に係る試験装置1は、スイッチSWをオンした直後の電圧Vcdが上昇している期間のうち、等価インダクタLdに流れる電流が無視できる期間の電圧Vcdの測定値に基づいて、単位時間毎の等価キャパシタCdの値を算出し、解析結果情報83として記憶部8に記憶する。
【0053】
図4は、巻線11の等価キャパシタCdの算出方法を説明するための図である。
図4において、参照符号110Aが付された波形は、
図3に示した電圧Vcdの波形110の範囲Aの部分を拡大したものである。
【0054】
上述したように、インパルス電圧印加用キャパシタCsを充電した状態でスイッチSWをオンした場合、スイッチSWがオンした直後においては、電圧Vcdは、
図4の参照符号110Aのように0Vから最大値Vmax(例えば、980V)まで上昇する。
【0055】
ここで、インパルス電圧発生回路2の電流制限抵抗Rsを通って外部端子T1に流れる電流をIrs、巻線11の等価キャパシタCdに流れる電流をIcd、巻線11の等価抵抗Rdを通って等価インダクタLdに流れる電流をIldとしたとき、Irs=Icd+Ildとなる。
【0056】
上述したように、スイッチSWをオンした直後においては、巻線11の等価インダクタLd側に電流が流れないので、Ild=0とみなすことができる。Ild=0とみなした場合、等価キャパシタCdに流れる電流Icdが電流制限抵抗Rsから外部端子T1に流れる電流Irsと等しいと考えることができ、
図2に示した等価回路において等価インダクタLdおよび等価抵抗Rdを無視することができる。
【0057】
そこで、パラメータ算出部5は、スイッチSWがオンした直後の電圧Vcdが上昇している期間のうち等価インダクタLdに流れる電流Ildがゼロであるとみなせる解析期間Tbにおける、電圧Vcdの測定値と電圧Vcsの測定値とに基づいて、等価キャパシタCdの値を算出する。
【0058】
ここで、等価キャパシタCdのための解析期間Tbは、
図4に示すように、電圧Vcdが上昇している期間のうち、スイッチSWをオンした直後の所定の期間Tx1と、電圧Vcdが電圧Vcdの最大値Vmaxに到達する直前の所定の期間Tx2とを除いた期間とすることが好ましい。
【0059】
例えば、解析期間Tbは、電圧Vcdの測定値が電圧Vcdの最大値Vmaxのα(0≦α<100)%となる時刻tαから、電圧Vcdの測定値が電圧の最大値Vmaxのβ(α<β≦100)%となる時刻tβまでの期間である。ここで、例えば、α=25%であり、β=75%である。
【0060】
期間Tx1は、スイッチSWがオンしたか否かが明確でない期間が含まれている上に、スイッチSWをオンした直後に、寄生容量や寄生インダクタンスに起因するリンギングや図示されない制御回路の影響に起因する波形の歪が発生する可能性の高い期間である。また、期間Tx2は、巻線11の等価インダクタLdに電流が徐々に流れ始めることにより、Ild=0とした前提条件を満たさなくなる上に、期間Tx1と同様に寄生容量や寄生インダクタンスに起因するリンギングが発生する可能性が高い期間である。
【0061】
したがって、このような期間Tx1,Tx2を除外した期間Tbを等価キャパシタCdの解析期間とすることにより、上述したリンギング等が等価キャパシタCdの解析結果に与える影響を低減できる。
【0062】
以下、等価キャパシタCdの算出方法について詳述する。
解析期間Tbの時刻t=aにおける電圧VcsをVcs|t=a,時刻t=aにおける電圧VcdをVcd|t=aとした場合、Irs=Icdより、時刻t=aにおける電流Icdは、下記式(1)によって表される。
【0063】
【0064】
解析期間Tbの時刻t=a+h(hは単位時間)での電圧VcsをVcs|t=a+h,時刻t=a+hにおける電圧VcdをVcd|t=a+hとした場合、Irs=Icdより、時刻t=a+hにおける電流Icdは、下記式(2)によって表される。
【0065】
ここで、単位時間hは、例えば、上述した測定部4を構成するA/D変換回路のサンプリング周期に相当する時間である。
【0066】
【0067】
ここで、時刻t=aから時刻t=a+hまでの期間における電流Icdの平均値Iaveは、下記式(3)によって表される。
【0068】
【0069】
時刻t=aから時刻t=a+hまでの期間に巻線11の等価キャパシタCdに流れ込んだ電流による電荷の変化量Qdは、電流Icdの平均値Iaveを用いて下記式(4)によって表される。
【0070】
【0071】
また、時刻t=aから時刻t=a+hまでの期間における等価キャパシタCdの両端の電圧の変化量Vdは、下記式(5)によって表される。
【0072】
【0073】
また、等価キャパシタCdにおける電圧の変化量Vdと電荷量の変化量Qdとの関係は、下記式(6)によって表される。
【0074】
【0075】
ここで、上記式(6)に式(4),(5)を代入すると、下記式(7)が得られる。
【0076】
【0077】
上記式(6),式(7)から理解されるように、等価キャパシタCdの値は、単位時間hにおける等価キャパシタCdの電荷の変化量と等価キャパシタCdの電圧Vcdの変化量とによって表される。
【0078】
ここで、上記式(7)に上記式(1)乃至(3)を代入してCdについて解くと、等価キャパシタCdは、下記式(8)によって表すことができる。
【0079】
【0080】
上記式(8)から理解されるように、等価キャパシタCdは、解析期間Tbにおける2つのサンプリングポイント(時刻)の電圧Vcd,Vcsと電流制限抵抗Rsとによって表すことができる。
【0081】
そこで、パラメータ算出部5は、単位時間hにおける電圧Vcdの測定値と電圧Vcsの測定値とによって表される、単位時間hにおける等価キャパシタCdの電荷の変化量Qdと電圧Vcdの変化量Vdとの関係式(上記式(8))に基づいて、単位時間毎の等価キャパシタCdの値を算出する。
【0082】
具体的には、パラメータ算出部5は、解析期間Tbの時刻t=aにおける電圧Vcsの測定値Vcs|t=aおよびVcdの測定値Vcd|t=aと、解析期間Tbの時刻t=a+hでの電圧Vcsの測定値Vcs|t=a+hおよびVcdの測定値Vcd|t=a+hと、既知である電流制限抵抗Rsの値とを上記式(8)に代入することにより、等価キャパシタCdの値を算出する。
【0083】
パラメータ算出部5は、解析期間Tbにおける電圧Vcd,Vcsの複数のサンプリングデータを用いて、等価キャパシタCdの値を複数算出する。具体的には、パラメータ算出部5は、測定部4によってサンプリングされた電圧Vcdの測定値および電圧Vcsの測定値を含むサンプリングデータを取得し、互いに隣り合う2つのサンプリングポイントのサンプリングデータを一組とするデータ対毎に、等価キャパシタCdの値を算出する。
【0084】
例えば、
図4に示した時刻tαから時刻tβまでの解析期間Tbにおいて、測定部4が単位時間h毎に電圧Vcs,Vcdをサンプリングし、21組のサンプリングデータを取得したとする。この場合、パラメータ算出部5は、互いに隣り合う2つのサンプリングポイントのサンプリングデータを一組とした合計20組のデータ対を上記式(8)にそれぞれ代入することにより、20組の等価キャパシタCdの値を算出する。
これによれば、解析期間Tbにおける等価キャパシタCdの時間的な変化を知ることができる。
【0085】
パラメータ算出部5は、上述したデータ対毎に算出した複数(上記例の場合20個)の等価キャパシタCdの値の平均値または中央値を算出することにより、一つの等価キャパシタCdの値(固定値)を算出してもよい。ここで、等価キャパシタCdの平均値の算出方法は、特に限定されず、例えば、算術平均やトリム平均等の種々の手法を採用することができる。
【0086】
パラメータ算出部5は、上述の手法により算出した等価キャパシタCdの時系列データおよび等価キャパシタCdの平均値等を解析結果情報83として記憶部8に記憶する。
【0087】
図5乃至
図7は、試験装置1による巻線11の等価キャパシタCdの解析結果の一例を示す図である。
【0088】
図5乃至
図7には、インパルス電圧印加用キャパシタCsが100Vになるように充電した後にスイッチSWをオンして試験対象の巻線11に電圧を印加したときの、電圧Vcdの波形120、電流Icdの波形121、および等価キャパシタCdの値の波形122がそれぞれ示されている。
【0089】
時刻t=0においてスイッチSWをオンした後の、巻線11の等価インダクタLdに流れる電流Ild=0とみなすことができる解析期間Tbにおいて、
図5に示すように、等価キャパシタCdの電圧Vcdは直線的に上昇する一方で、
図6に示すように、等価キャパシタCdに流れる電流Icdは振動しながら減少していく。このとき、
図7に示すように、解析期間Tbにおける等価キャパシタCdの値は、変動しつつも他の期間に比べて安定した値となる。
【0090】
(2)等価インダクタLdおよび等価抵抗Rdの算出方法
次に、巻線11の等価インダクタLdおよび等価抵抗Rdの算出方法について説明する。
【0091】
パラメータ算出部5は、記憶部8に記憶されている、スイッチSWがオンしてから巻線11の等価インダクタLd、等価キャパシタCd、および等価抵抗Rdに基づく共振が開始されるまでの間の所定の期間における単位時間毎の電圧Vcd,Vcsの測定値(測定値情報81)と、記憶部8に記憶されている等価キャパシタCdの値(解析結果情報83)とを用いて、上記所定の期間における、巻線11の等価インダクタLd、等価キャパシタCd、および等価抵抗Rdと、インパルス電圧印加用キャパシタCsと、電流制限抵抗Rsとによって構成される等価回路に基づく電圧Vcdの過渡応答の方程式および電圧Vcsの過渡応答の方程式に基づく回帰分析を行うことにより、等価インダクタLdおよび等価抵抗Rdの少なくとも一つの単位時間毎の値を算出する。
【0092】
パラメータ算出部5は、上記所定の期間、すなわち等価インダクタLdおよび等価抵抗Rdの解析期間として、スイッチSWがオンしてから巻線11の等価インダクタLd、等価キャパシタCd、および等価抵抗Rdに基づく共振が開始されるまでの期間Taを解析期間とする(
図3参照)。
【0093】
より好ましくは、パラメータ算出部5は、スイッチSWをオンしてから電圧Vcdが最大値Vmaxとなった後の所定の時刻から、電圧Vcdが最小値となる前の所定の時刻までの期間を解析期間とする。例えば、
図3に示すように、電圧Vcdが正のピーク値の90%となる時刻t1から、電圧Vcdが負のピーク値の90%となる時刻t2までの期間Tcを、等価インダクタLdおよび等価抵抗Rdの解析のための期間とする。
【0094】
時刻t1までの期間を解析期間から除外することにより、スイッチSWをオンした直後の電圧Vcdが立ち上がる期間が除外されるので、寄生容量や寄生インダクタンスによる電圧Vcdのリンギング等が等価インダクタLdおよび等価抵抗Rdの解析結果に与える影響を低減できる。また、時刻t2から整流素子Dが電流を遮断する時点までの期間を解析期間から除外することによっても同様に、等価インダクタLdおよび等価抵抗Rdの解析結果に与える影響を低減できる。
【0095】
パラメータ算出部5は、解析期間Tcにおける電圧Vcd,Vcsの測定値を用いて、電圧Vcd,Vcsの過渡応答の方程式に基づく回帰分析を行うことにより、等価インダクタLdおよび等価抵抗Rdの値の時間的な変化を算出する。以下、等価インダクタLdおよび等価抵抗Rdの算出方法について詳述する。
【0096】
図2の等価回路においてスイッチSWをオンしてからの経過時間をtとしたとき、解析期間Tcにおける電圧Vcdの過渡応答の方程式は、下記式(9)によって表される。また、解析期間Tcにおける電圧Vcsの過渡応答の方程式は、下記式(10)によって表される。
【0097】
【0098】
【0099】
上記式(9)および上記式(10)から、下記式(11)および下記式(12)を導出することができる。下記式(11)は、上記式(9)を、Ldを含む項と、Rdを含む項と、それ以外の項とにまとめた式である。また、下記式(12)は、上記式(10)から上記式(9)を減算した式を、Ldを含む項と、Rdを含む項と、それ以外の項とにまとめた式である。
【0100】
【0101】
【0102】
ここで、下記式(13)乃至(18)に示すように、上記式(11)および上記式(12)の各項の一部をa,b,c,d,e,fにそれぞれ置き換えた場合、上記式(11)および上記式(12)は、下記式(19)および式(20)によってそれぞれ表すことができる。
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
ここで、上記式(19)および上記式(20)をLdおよびRdについてそれぞれ解くと、等価インダクタLdおよび等価抵抗Rdは、下記式(21)および下記式(22)によってそれぞれ表すことができる。
【0112】
【0113】
【0114】
上記式(21),(22)から理解されるように、上記a~fの値は電圧Vcd,Vcsの波形の任意の時刻(サンプリングポイント)において求めることができるので、電圧Vcd,Vcsの波形の任意の時刻(サンプリングポイント)における等価インダクタLdおよび等価抵抗Rdの値をそれぞれ算出することが可能となる。具体的には、パラメータ算出部5は、以下の手法により等価インダクタLdおよび等価抵抗Rdの値を算出する。
【0115】
パラメータ算出部5は、電圧Vcd,Vcsの測定値と上記式(13)乃至(18)とに基づいてa~fを算出し、算出したa~fと式(21),(22)に基づいて、等価インダクタLdおよび等価抵抗Rdの値を算出する。
例えば、先ず、パラメータ算出部5は、解析期間Tcを決定する。例えば、
図3に示すように、パラメータ算出部5は、電圧Vcdが正のピーク値(最大値Vmax)の90%となるサンプリングポイント(時刻)t1と、電圧Vcdが負のピーク値(最小値Vmin)の90%となるサンプリングポイント(時刻)t2とをそれぞれ検出する。パラメータ算出部5は、サンプリングポイントt1とサンプリングポイントt2との間の期間を解析期間Tcとするともに、スイッチSWをオンした時刻をt=0とする。
【0116】
次に、パラメータ算出部5は、例えば、解析期間Tcにおける電圧Vcdの測定値の時系列データと電圧Vcsの測定値の時系列データに対して公知の平滑化処理を行う。例えば、パラメータ算出部5は、解析期間Tcにおける電圧Vcd,Vcsの測定値の時系列データの移動平均をそれぞれ算出することにより、平滑化した電圧Vcd,Vcsの測定値を得る。
【0117】
次に、パラメータ算出部5は、平滑化した電圧Vcd,Vcsの測定値を用いて、
を夫々算出する。例えば、パラメータ算出部5は、隣り合う2つのサンプリングポイントのVcd,Vcsの測定値を用いて、Vcsを時間tによって一階微分した値、Vcsを時間tによって二階微分した値、Vcsを時間tによって三階微分した値、Vcdを時間tによって一階微分した値、Vcdを時間tによって二階微分した値、およびVcdを時間tによって三階微分した値をそれぞれ算出する。
【0118】
ここで、インパルス電圧印加用キャパシタCsおよび電流制限抵抗Rsの値はそれぞれ既知である。また、巻線11の等価キャパシタCdの値は、上述した手法により推定され、記憶部8に記憶されている。
【0119】
パラメータ算出部5は、記憶部8に記憶されている、インパルス電圧印加用キャパシタCs、電流制限抵抗Rsの値、および等価キャパシタCdの値と、算出した
とを、上記式(13)乃至(18)に代入することにより、任意の時刻(サンプリングポイント)におけるa,b,c,d,e,fをそれぞれ算出する。
【0120】
次に、パラメータ算出部5は、上記式(21),(22)に、算出したa,b,c,d,e,fの値を代入することにより、等価インダクタLdおよび等価抵抗Rdの値をそれぞれ算出する。
【0121】
パラメータ算出部5は、上述の計算を、解析期間Tcにおけるサンプリングポイント(単位時間)毎に行うことにより、等価インダクタLdおよび等価抵抗Rdの値を単位五時間(サンプリングポイント)毎に算出する。パラメータ算出部5は、算出した単位時間毎の等価インダクタLdおよび等価抵抗Rdの値を解析結果情報83として記憶部8に記憶する。
これにより、解析期間Tcにおける等価インダクタLdおよび等価抵抗Rdの時間的な変化を算出することができる。
【0122】
ここで、等価キャパシタCd、等価インダクタLd、および等価抵抗Rdを算出するために必要な情報は、予め記憶部8に記憶しておけばよい。例えば、上記式(8)、上記式(13)乃至(18)、上記式(21)、および上記式(22)の情報と、電流制限抵抗Rsの値と、インパルス電圧印加用キャパシタCsの値とを数式情報82として予め記憶部8に記憶しておけばよい。また、試験開始時にユーザによって設定されたインパルス電圧Eの値も数式情報82として記憶部8に合わせて記憶しておく。
【0123】
パラメータ算出部5は、記憶部8に記憶されている数式情報82および測定値情報81を読み出して上述の計算を行うことにより、巻線11の等価キャパシタCd、等価インダクタLd、および等価抵抗Rdの夫々の値を算出することができる。
【0124】
図8乃至
図10は、巻線11に磁気飽和が発生していない場合における、試験装置1による巻線11の等価インダクタLdおよび等価抵抗Rdの解析結果の一例を示す図である。
図11乃至
図13は、巻線11に磁気飽和が発生した場合における、試験装置1による巻線11の等価インダクタLdおよび等価抵抗Rdの解析結果の一例を示す図である。
【0125】
図8乃至
図10には、インパルス電圧印加用キャパシタCsが100Vになるように充電した後に、時刻t=0においてスイッチSWをオンして試験対象の巻線11に電圧を印加することにより、巻線11に磁気飽和が発生しなかった場合の電圧Vcdの波形210、等価インダクタLdの波形211、および等価抵抗Rdの波形212がそれぞれ示されている。
【0126】
また、
図11乃至
図13には、インパルス電圧印加用キャパシタCsが300Vになるように充電した後に、時刻t=0においてスイッチSWをオンして試験対象の巻線11に電圧を印加することにより、巻線11に磁気飽和が発生した場合の電圧Vcdの波形220、等価インダクタLdの波形221、および等価抵抗Rdの波形222がそれぞれ示されている。
【0127】
図8乃至
図13において、横軸は、測定部4による単位時間h毎のサンプリング数(サンプリングポイント)、すなわち経過時間を表している。
図8および
図11において、縦軸は電圧〔V〕を表している。
図9および
図12において、縦軸はインダクタンス〔H〕を表している。
図10および
図13において、縦軸はレジスタンス〔Ω〕を表している。
【0128】
巻線11に磁気飽和が発生していない場合、
図9に示すように、等価インダクタLdの値は、約1mHとなり、安定している。また、
図10に示すように、等価抵抗Rdの値は、ばらついているが、平均すると約43Ωとなる。なお、等価抵抗Rdのばらつきを更に抑えるために、上述したように電圧Vcd,Vcsの測定値の時系列データに対して移動平均処理を行うのではなく、他の既知の平滑化処理を行ってもよい。
【0129】
巻線11に磁気飽和が発生した場合、
図12および
図13に示すように、等価インダクタLdおよび等価抵抗Rdの値は、磁気飽和が発生していない場合に比べて大きく変動し、一部のサンプリングポイントにおいて発散する。巻線11に磁気飽和が発生した場合の等価インダクタLdの平均値は、磁気飽和が発生していない場合に比べて約十分の一となり、等価抵抗Rdの平均値は20~30Ωとなる。
【0130】
上述したように、磁気飽和が発生した場合には、等価インダクタLdおよび等価抵抗Rdの値が一部のサンプリングポイントにおいて発散する場合がある。そこで、等価インダクタLdおよび等価抵抗Rdの波形を別の形式で表してもよい。
【0131】
図14および
図15は、試験装置1によって測定された巻線11の等価インダクタLdおよび等価抵抗Rdの値を別形式で表した波形の一例を示す図である。
【0132】
図14には、等価インダクタLdの値の逆数である“1/Ld”の時間的な変化を示す波形230が示されている。
図15には、等価抵抗Rdの値を等価インダクタLdの値で除算した値“Rd/Ld”の時間的な変化を示す波形231が示されている。
図14において、横軸は、測定部4による単位時間h毎のサンプリングポイント(経過時間)を表し、縦軸は1/Ld〔1/H〕を表している。
図15において、横軸は、測定部4による単位時間h毎のサンプリングポイント(経過時間)を表し、縦軸はRd/Ld〔Ω/H〕を表している。
【0133】
図14および
図15に示すように、等価インダクタLdおよび等価抵抗Rdを別形式の波形によって表すことにより、磁気飽和が発生した場合であっても波形が発散しないので、ユーザによる巻線11の特性の解析が容易となる。
【0134】
試験装置1は、上述した検査対象の巻線11に関する等価インダクタLd、等価キャパシタCd、および等価抵抗Rdの値を個別に算出する機能に加えて、算出した等価インダクタLd、等価キャパシタCd、および等価抵抗Rdの時間的な変化を示す波形を表示する波形表示機能を有している。以下、波形表示機能について詳細に説明する。
【0135】
図1に示す試験装置1において、波形生成部6は、パラメータ算出部5によって算出された等価キャパシタCd、等価インダクタLd、および等価抵抗Rdの少なくとも1つの値の時間的な変化を示す波形データ84を生成する。例えば、波形生成部6は、記憶部8に記憶されている解析結果情報83および測定値情報81に基づいて、例えば、Vcd,Icd,Cd,Ld,およびRdの時間的な変化を示す波形データ84を生成し、記憶部8に記憶する。
【0136】
表示部7は、波形生成部6によって生成された波形データ84に基づく波形を画面に表示する。
【0137】
図16は、試験装置1の表示画面の一例を示す図である。
図16に示すように、試験装置1は、表示部7としての機能を実現するための一手段としてディスプレイ70を備えている。試験装置1は、ディスプレイ70の画面上に、試験条件を設定するための情報や試験結果の情報等を表示する。例えば、ディスプレイ70は、タッチパネルを搭載しており、ディスプレイ70によって指示入力部3の一部の機能が実現されている。例えば、ユーザは、ディスプレイ70の画面に触れることにより、試験条件等を設定することが可能となっている。
【0138】
また、試験装置1は、指示入力部3の一部の機能を実現するための手段として、各種の物理ボタンを有していてもよい。例えば、
図16に示すように、試験装置1は、試験装置1を起動させるための電源ボタン30、試験を開始するための開始ボタン31、試験を停止するための停止ボタン32等を有していてもよい。
【0139】
例えば、ユーザが指示入力部3を操作することによって特定の物理量の波形の表示を指示した場合、表示部7は、ユーザによって指定された物理量の波形データ84を記憶部8から読み出して、ディスプレイ70に表示する。例えば、前述の
図5乃至
図15に示した波形120~122、210~212、220~222、230、および231の少なくとも一つをディスプレイ70に表示する。なお、
図16には、電圧Vcdの波形300がディスプレイ70に表示された場合が示されている。
【0140】
表示部7は、複数の波形を同時に表示してもよい。例えば、等価キャパシタCd、等価インダクタLd、および等価抵抗Rdの波形を、ディスプレイ70の画面の上下方向または左右方向に並べて表示してもよい。
【0141】
また、表示部7は、上述したように、ユーザによる指示入力部3の操作に応じて測定波形をディスプレイ70に表示してもよいし、試験対象の巻線11のパラメータ(Ld,Cd,Rd)の算出後、ユーザからの指示の有無に関わらず、測定波形をディスプレイ70に表示してもよい。
【0142】
次に、試験装置1を用いた試験対象の巻線11の解析方法の流れを説明する。
【0143】
図17は、本実施の形態に係る試験装置1を用いた巻線11の解析方法の流れを示すフローチャートである。
【0144】
例えば、ユーザが電源ボタン30を操作して試験装置1を起動した後、ユーザが指示入力部3としてのディスプレイ70をタッチ操作することにより、試験条件等を試験装置1に設定する(ステップS1)。例えば、ユーザが、インパルス電圧Eの値や、電圧Vcd,Vcsを測定するためのサンプリング周期(サンプリング周波数)等を試験装置1に設定する。
【0145】
なお、試験装置1の起動後の初期状態において、インパルス電圧発生回路2のスイッチSWはオフ状態である。
【0146】
次に、ユーザが、試験対象の巻線11を試験装置1の外部端子T1,T2間に接続する(ステップS2)。なお、巻線11の試験装置1への接続は、ステップS1の前に行われていてもよい。
【0147】
次に、試験装置1が、ユーザによって試験の実行指示が入力されたか否かを判定する(ステップS3)。例えば、ユーザによって開始ボタン31が操作されていない場合には(ステップS3:NO)、試験装置1は、開始ボタン31が操作されるまで待機する。
【0148】
開始ボタン31が操作された場合には(ステップS3:YES)、試験装置1は、インパルス電圧Eを、スイッチSWを介して電流制限抵抗Rsの一端と外部端子T2との間に出力する(ステップS4)。具体的には、指示入力部3からの指示に応じて、インパルス電圧発生回路2が、インパルス電圧印加用キャパシタの電圧がステップS1で設定されたインパルス電圧Eとなるように、インパルス電圧印加用キャパシタCsを図示されない直流電源によって充電する。次に、インパルス電圧発生回路2がスイッチSWをオンする。これにより、外部端子T1,T2間に電圧が印加される。
【0149】
また、試験装置1は、例えばステップS4と同時に、外部端子T1,T2間の電圧Vcdおよびインパルス電圧印加用キャパシタCsの電圧Vcsの測定を開始する(ステップS5)。具体的には、上述したように、測定部4が、外部端子T1,T2間の電圧Vcdおよびインパルス電圧印加用キャパシタCsの両端の電圧VcsをステップS1で設定されたサンプリング周期に基づいて測定し、電圧Vcd,Vcsの測定値の時系列データを記憶部8に測定値情報81として記憶する。
【0150】
なお、上述したように、測定部4は、インパルス電圧印加用キャパシタCsの電圧Vcsを測定することに代えて、電流制限抵抗Rsに流れる電流Irsまたは電流制限抵抗Rsの電圧Vrsを測定し、その測定値に基づいて電圧Vcsの測定値を算出してもよい。
【0151】
次に、パラメータ算出部5が、上述した手法により、巻線11の等価キャパシタCdを解析するための解析期間Tbと、等価インダクタLdおよび等価抵抗Rdの値を解析するための解析期間Tcをそれぞれ決定する(ステップS6)。
【0152】
次に、パラメータ算出部5が、ステップS6において設定した解析期間Tbにおける電圧Vcd,Vcsの測定値と記憶部8に記憶されている数式情報82とを用いて、上述した手法により、巻線11に関する等価キャパシタCdの値を算出する(ステップS7)。
【0153】
次に、パラメータ算出部5が、ステップS6において設定した解析期間Tcにおける電圧Vcd,Vcsの測定値と記憶部8に記憶されている数式情報82とを用いて、上述した手法により、巻線11に関する等価インダクタLdの値および等価抵抗Rdの値をそれぞれ算出する(ステップS8)。
【0154】
次に、波形生成部6が、上述した手法により、ステップS5において取得された電圧Vcd,Vcsの測定値およびステップS7,S8において算出された巻線11に関する等価インダクタLd,等価キャパシタCd,および等価抵抗Rdの値に基づいて、波形データ84を生成する(ステップS9)。
【0155】
次に、表示部7が、ステップS9において生成された波形データ84に基づいて、試験装置1のディスプレイ70の画面に波形を表示させる(ステップS10)。
【0156】
なお、上述した波形データの生成処理(ステップS9)と波形の表示処理(ステップS10)は、例えば、ユーザが試験装置1を操作し、指示入力部3がユーザからの波形表示の指示を受け付けた場合にのみ、実行されるようにしてもよい。
【0157】
以上、本実施の形態に係る試験装置1は、外部端子T1と外部端子T2との間に接続された検査対象の巻線11を、外部端子T1と外部端子T2との間に接続された等価インダクタLdと、外部端子T1と外部端子T2との間に接続された等価キャパシタCdと、外部端子T1と外部端子T2との間に等価インダクタLdと直列に接続された等価抵抗Rdとによって等価的に表したときの、等価インダクタLdの値、等価キャパシタCdの値、および等価抵抗Rdの少なくとも一つの値の時間的な変化を、測定部4によって測定した外部端子T1,T2間の電圧Vcdおよびインパルス電圧印加用キャパシタCsの両端の電圧Vcsの測定値に基づいて算出するパラメータ算出部5を有している。
【0158】
具体的には、パラメータ算出部5は、スイッチSWがオンしてから巻線11の等価インダクタLd、等価キャパシタCd、および等価抵抗Rdに基づく共振が開始されるまでの期間(解析期間Tc)における電圧Vcdおよび電圧Vcsの測定値を用いて、解析期間Tcにおける巻線11に関する等価インダクタLd、等価キャパシタCd、および等価抵抗Rdとインパルス電圧印加用キャパシタCsおよび電流制限抵抗Rsとによって構成される等価回路における電圧Vcdおよび電圧Vcsの過渡応答の方程式に基づく回帰分析を行うことにより、巻線11に関する等価インダクタLdの値および等価抵抗Rdの値の少なくとも一つの単位時間毎の値を算出する。
【0159】
このような構成を有する試験装置1によれば、従来の試験装置のように、電圧Vcdの過渡応答だけでなく、インパルス電圧印加用キャパシタCsの両端の電圧Vcsの過渡応答も測定して等価インダクタLdおよび等価抵抗Rdの値を算出するので、測定部4による測定のサンプリングポイント(単位時間)毎に等価インダクタLdおよび等価抵抗Rdの値を算出することができる。すなわち、試験装置1によれば、等価インダクタLdおよび等価抵抗Rdの値の時間的な変化を算出することができる。これにより、ユーザは、試験対象の巻線11に磁気飽和が発生した場合における巻線11の特性の変化を解析することが可能となる。
【0160】
また、試験装置1において、第1電圧としての電圧Vcdの過渡応答の方程式は、上記式(9)で表され、第2電圧としての電圧Vcsの過渡応答の方程式は、上記式(10)で表される。
これによれば、単位時間毎の等価インダクタLdおよび等価抵抗Rdの値を、より正確、且つ容易に算出することができる。
【0161】
また、パラメータ算出部5は、スイッチSWがオンしてから電圧Vcdが上昇している期間のうち等価インダクタLdに流れる電流がゼロであるとみなせる第1期間(解析期間Tb)における、電圧Vcdおよび電圧Vcsの測定値に基づいて、等価キャパシタCdの値を算出する。
これによれば、等価インダクタLdおよび等価抵抗Rdを無視した等価回路に基づく簡単な方程式を用いて、等価キャパシタCdの値を容易に算出することができる。
【0162】
また、パラメータ算出部5は、単位時間hにおける電圧Vcdの測定値と電圧Vcsの測定値とによって表される、単位時間hにおける等価キャパシタCdの電荷の変化量と単位時間hにおける電圧Vcdの変化量との関係式に基づいて、等価キャパシタCdの値を算出する。より具体的には、パラメータ算出部5は、上記式(8)に基づいて、等価キャパシタCdの値を算出する。
これによれば、より簡単な方程式を用いて、等価キャパシタCdの値を正確に算出することができる。
【0163】
また、パラメータ算出部5は、測定部4によって単位時間h毎にサンプリングされた電圧Vcdの測定値と電圧Vcsの測定値とを含むサンプリングデータを取得し、互いに隣り合う2つのサンプリングポイントのサンプリングデータを一組とするデータ対毎に、等価キャパシタCdの値を算出する。
これによれば、単位時間h毎の等価キャパシタCdの値が得られるので、等価キャパシタCdの値の時間的な変化を算出することができる。また、単位時間h毎の等価キャパシタCdの値の平均値または中央値を算出することにより、巻線11の等価キャパシタCdの値(固定値)を推定することができる。
【0164】
このように、本実施の形態に係る試験装置1によれば、磁気飽和が発生した場合であっても試験対象の巻線に関するパラメータを正確に算出することが可能となる。
【0165】
また、等価キャパシタCdのための解析期間Tbは、スイッチSWをオンした直後の期間である。これによれば、等価インダクタLdおよび等価抵抗Rdを算出する前に等価キャパシタCdの値を得ることができるので、その後の等価インダクタLdおよび等価抵抗Rdのための解析処理を速やかに行うことができる。
【0166】
また、パラメータ算出部5は、等価キャパシタCdのための解析期間Tbを、
図4に示したように、電圧Vcdが上昇している期間のうち、スイッチSWをオンした直後の所定の期間Tx1と、電圧Vcdが電圧Vcdの最大値Vmaxに到達する直前の所定の期間Tx2とを除いた期間とする。
【0167】
これによれば、上述したように、寄生容量や寄生インダクタンスに起因するリンギングや図示されない制御回路の影響に起因する波形の歪等の影響を抑えることができるので、巻線11に関連する各パラメータを、より高精度に算出することができる。
【0168】
また、解析期間Tbを、
図4に示したように、電圧Vcdの測定値が電圧Vcdの最大値Vmaxのα(0≦α<100)%となる時刻tαから、電圧Vcdの測定値が電圧Vcdの最大値Vmaxのβ(α<β≦100)%となる時刻tβまでの期間とすることにより、パラメータ算出部5は、解析期間Tbを容易に決定することができる。
【0169】
また、本実施の形態に係る試験装置1において、表示部7は、パラメータ算出部5によって算出された試験対象の巻線11に関する等価キャパシタCd、等価インダクタLd、および等価抵抗Rdの少なくとも1つの値の時間的な変化を示す波形を表示する。
【0170】
これによれば、ユーザが、磁気飽和の発生の有無を判断し、磁気飽和に起因する等価キャパシタCd、等価インダクタLd、および等価抵抗Rdの変化を解析することが容易となる。
【0171】
また、表示部7は、算出した各パラメータに関する波形を表示する場合に、等価インダクタLdおよび等価抵抗Rdの値の時間的な変化を示す波形だけでなく、等価インダクタLdおよび等価抵抗Rdの値を時間的な変化を別の形式の波形として表示することが可能となっている。例えば、上述したように、等価インダクタLdの値の逆数(1/Ld)の時間的な変化を示す波形や、等価抵抗Rdの値を等価インダクタLdの値で除算した値(Rd/Ld)の時間的な変化を示す波形を表示することが可能となっている。
これによれば、磁気飽和の発生に起因して等価インダクタLdおよび等価抵抗Rdの値が発散する期間が存在する場合であっても、
図14および
図15に示したように、数値が発散しない波形に変更して表示することができるので、ユーザによる巻線11の特性の解析が更に容易となる。
【0172】
≪実施の形態の拡張≫
以上、本願発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0173】
例えば、上記実施の形態では、等価キャパシタCdの値を上述の手法により算出して記憶部8に記憶し、記憶部8に記憶されている等価キャパシタCの値を用いて等価インダクタLdおよび等価抵抗Rdの値を算出する場合を例示したが、これに限られない。
例えば、試験対象の巻線11の等価キャパシタCdの値がインパルス電圧印加用キャパシタCsの値よりも十分に小さいことがわかっている場合には、Cd=Cs/100のように等価キャパシタCdの値を仮定し、その仮定した値を予め記憶部8に記憶しておく。例えば、ユーザが指示入力部3を操作して等価キャパシタCdの値を入力し、パラメータ算出部5が、ユーザによって入力された値を記憶部8に記憶する。そして、パラメータ算出部5が、記憶部8に記憶されている等価キャパシタの値を用いて、上述した手法により等価インダクタLdおよび等価抵抗Rdの値をそれぞれ算出してもよい。これによれば、試験装置1が等価キャパシタCdの解析を行う必要がないので、より短時間に巻線11の解析を完了することができる。
【0174】
また、上記実施の形態では、単位時間hが測定部4による1サンプリング周期に相当する時間であるとして説明したが、これに限られない。例えば、単位時間hが2サンプリング周期や3サンプリング周期など、サンプリング周期に基づく時間であればよい。
【0175】
また、上記実施の形態において、時刻t=aから時刻t=a+hまでの期間における電流Icdの平均値Iaveを、2つのサンプリングポイントの電流Icdの平均値とする場合(式(3)参照)を例示したが、これに限られない。例えば、平均値Iaveを、3つ以上のサンプリングポイントの電流Icdの平均値としてもよい。
【0176】
また、上記実施の形態では、試験装置1が逆流防止ダイオードDを備える場合を例示したが、試験装置1は、逆流防止ダイオードDを備えていなくてもよい。また、試験装置1に波形表示機能が求められていない場合には、試験装置1は、波形生成部6および表示部7を有していなくてもよい。
【0177】
また、上述のフローチャートは、動作を説明するための一例を示すものであって、これに限定されない。すなわち、フローチャートの各図に示したステップは具体例であって、このフローに限定されるものではない。例えば、一部の処理の順番が変更されてもよいし、各処理間に他の処理が挿入されてもよいし、一部の処理が並列に行われてもよい。
【符号の説明】
【0178】
1…試験装置、2…インパルス電圧発生回路、3…指示入力部、4…測定部、5…パラメータ算出部、6…波形生成部、7…表示部、8…記憶部、81…測定値情報、82…数式情報、83…解析結果情報、84…波形データ、Cs…インパルス電圧印加用キャパシタ、Cd…巻線11の等価キャパシタ、Ld…巻線11の等価インダクタ、Rd…巻線11の等価抵抗、Rs…電流制限抵抗、D…整流素子(逆流防止用ダイオード)、E…インパルス電圧、Ta,Tb,Tc…解析期間、Vmax…電圧Vcdの最大値、Vmin…電圧Vcdの最小値、T1…外部端子(第1外部端子)、T2…外部端子(第2外部端子)、70…ディスプレイ。