(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123099
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】無線装置にアナログ信号を送信する処理装置
(51)【国際特許分類】
H04B 10/2575 20130101AFI20230829BHJP
H04B 1/04 20060101ALI20230829BHJP
H04B 10/077 20130101ALI20230829BHJP
【FI】
H04B10/2575 120
H04B1/04 M
H04B10/077 150
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026974
(22)【出願日】2022-02-24
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人情報通信研究機構、「Beyond 5Gに向けたモバイル収容大容量光アクセスインフラの研究開発」副題「Radio-over-Fiber型伝送技術をベースとするBeyond 5Gモバイルフロントホールの研究開発」委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 公佐
(72)【発明者】
【氏名】神谷 尚保
(72)【発明者】
【氏名】猪原 涼
【テーマコード(参考)】
5K060
5K102
【Fターム(参考)】
5K060BB04
5K060CC02
5K060CC04
5K060DD03
5K060DD04
5K060HH01
5K060HH11
5K102AA51
5K102AB13
5K102AD07
5K102AH30
5K102AM03
5K102AM10
5K102LA06
5K102LA11
5K102LA22
5K102LA32
5K102LA52
5K102RD14
5K102RD15
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で無線装置に制御情報を送信する技術を提供する。
【解決手段】アナログ信号に基づき無線信号を生成して送信する無線装置に、前記アナログ信号を送信する処理装置は、前記無線装置への制御情報を搬送するパルス信号を生成する制御手段と、前記パルス信号の最大周波数を制限するローパスフィルタを備え、前記ローパスフィルタを通過した前記パルス信号と前記アナログ信号とを合波して合波信号を出力する合波手段と、前記合波信号で搬送光を変調することで変調光を生成し、前記変調光を前記無線装置に送信する変調手段と、を備えている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログ信号に基づき無線信号を生成して送信する無線装置に、前記アナログ信号を送信する処理装置であって、
前記無線装置への制御情報を搬送するパルス信号を生成する制御手段と、
前記パルス信号の最大周波数を制限するローパスフィルタを備え、前記ローパスフィルタを通過した前記パルス信号と前記アナログ信号とを合波して合波信号を出力する合波手段と、
前記合波信号で搬送光を変調することで変調光を生成し、前記変調光を前記無線装置に送信する変調手段と、
を備えている、処理装置。
【請求項2】
前記合波信号と前記パルス信号が入力され、前記合波信号と前記パルス信号のいずれかを前記変調手段に出力する選択手段を備え、
前記制御手段は、前記パルス信号の送信に必要な最大周波数が前記ローパスフィルタの通過帯域内である場合、前記合波信号が前記変調手段に出力される様に前記選択手段を制御し、前記パルス信号の送信に必要な最大周波数が前記ローパスフィルタの通過帯域外である場合、前記パルス信号が前記変調手段に出力される様に前記選択手段を制御する、請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
複数の前記合波手段と、
複数の前記合波手段からの複数の前記合波信号の内の1つの合波信号を前記変調手段に出力する選択手段と、
を備え、
複数の前記合波手段それぞれの前記ローパスフィルタの通過帯域は異なり、
前記制御手段は、前記パルス信号の送信に必要な最大周波数に応じて前記選択手段が前記変調手段に出力する前記1つの合波信号を選択する、請求項1に記載の処理装置。
【請求項4】
前記制御手段は、複数の前記合波手段の内の、前記パルス信号の送信に必要な最大周波数を通過帯域内とする前記ローパスフィルタを備える1つ以上の第1合波手段から1つの合波手段を選択することで前記1つの合波信号を選択する、請求項3に記載の処理装置。
【請求項5】
前記1つの合波手段は、前記1つ以上の第1合波手段の内、最も通過帯域の低い前記ローパスフィルタを備える第1合波手段である、請求項4に記載の処理装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記パルス信号の送信に必要な最大周波数に応じて前記アナログ信号の帯域幅を制御する、請求項1から5のいずれか1項に記載の処理装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記処理装置から前記無線装置への光伝送路での伝送品質を測定するために所定のデータを前記パルス信号で送信する、請求項1から6のいずれか1項に記載の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線信号を送受信する無線装置に、当該無線信号を生成するためのアナログ信号を光ファイバで送信する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、移動通信ネットワークの基地局装置の機能を、処理装置1と無線装置2に分割し、無線装置2を、アンテナが設置されたアンテナサイト200に配置し、処理装置1を、アンテナサイトとは地理的に異なる収容サイト100に配置した構成を示している。無線装置2は、アンテナを介して、移動通信ネットワークの無線デバイス(WD)又はユーザ装置(UE)と無線信号を送受信する機能と、当該無線信号を処理する機能と、を有する。一方、処理装置1は、無線装置2が送受信する無線信号のベースバンド信号を処理する機能を有する。処理装置1と無線装置2とは光ファイバを含む光伝送路3により接続される。
【0003】
非特許文献1は、処理装置1と無線装置2との間の通信インタフェースであるCPRIを開示している。具体的には、処理装置1は、ベースバンド信号の信号波形をサンプリングし、サンプリング値をデジタル値として無線装置2に送信する。なお、CPRIにおいて、処理装置1が無線装置2に送信する制御情報は、サンプリング値を示すデジタル値と時分割多重される。現在、WDへの伝送容量の増大によりCPRIでの伝送は非効率となっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】CPRI Specificatin V7.0,2015年10月9日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
WDへの伝送容量の増大に対応するため、処理装置1においてベースバンド信号から中間周波数(IF)帯のIF信号、又は、無線周波数(RF)帯のRF信号を生成し、IF信号又はRF信号で搬送光を変調することで生成した変調光を無線装置2に送信する構成が考えられる。無線装置2は、変調光を復調することで、処理装置1が送信したIF信号又はRF信号を復元・生成し、これら信号を無線周波数帯の所定の周波数の無線信号に変換した後に、増幅等の必要な処理を行ってアンテナから出力する。なお、RF信号の周波数が当該所定の周波数に一致している場合、周波数変換は省略できる。
【0006】
図2は、その様な構成において、処理装置1が生成する例示的な変調光の周波数成分を示している。
図2によると、変調光は、周波数多重された4つのIF信号81~84を搬送している。ここで、処理装置1と無線装置2との間で制御情報を送受信するために別の光伝送路3を使用すると構成が複雑になり、かつ、コスト高となる。
【0007】
本発明は、簡易な構成で無線装置に制御情報を送信する技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によると、アナログ信号に基づき無線信号を生成して送信する無線装置に、前記アナログ信号を送信する処理装置は、前記無線装置への制御情報を搬送するパルス信号を生成する制御手段と、前記パルス信号の最大周波数を制限するローパスフィルタを備え、前記ローパスフィルタを通過した前記パルス信号と前記アナログ信号とを合波して合波信号を出力する合波手段と、前記合波信号で搬送光を変調することで変調光を生成し、前記変調光を前記無線装置に送信する変調手段と、を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、簡易な構成で無線装置に制御情報を送信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】地理的に異なる場所に配置された2つの装置で構成された基地局システムを示す図。
【
図2】
図1のシステムの変調光の周波数成分を示す図。
【
図3】一実施形態による処理装置及び無線装置を含む基地局システムの構成図。
【
図4】
図3のシステムの変調光の周波数成分を示す図。
【
図5】一実施形態による処理装置及び無線装置を含む基地局システムの構成図。
【
図6】一実施形態による処理装置及び無線装置を含む基地局システムの構成図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうちの二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
<第一実施形態>
図3は、本実施形態による処理装置1及び無線装置2を含む基地局システムの構成図である。制御部10は、処理装置1を制御すると共に、無線装置2に送信する制御信号を生成する。制御信号は制御情報を搬送する信号であり、本実施形態において、制御信号は、デジタル信号、つまり、パルス信号である。例えば、制御信号は、ローカルエリアネットワーク(LAN)において使用される規格に従う信号であり得る。パルス信号は、Non-Return-to-Zero(NRZ)信号又はReturn-to-Zero(RZ)信号であり得る。なお、同じ伝送速度において、NRZ信号は、RZ信号より帯域幅が狭くなるためNRZ信号の方が好ましい。制御部10は、制御信号を合波部13のローパスフィルタ(LPF)11に出力する。LPF11は、閾値周波数f1未満の通過帯域を有し、制御信号の周波数帯域を制限する。合波部13のハイパスフィルタ(HPF)12には、WDに送信する情報を搬送するIF信号若しくはRF信号、又は、それらを周波数多重した周波数多重信号が入力される。IF信号若しくはRF信号又は、それらを周波数多重した周波数多重信号はアナログ信号であり、以下の説明では、HPF12に入力される、IF信号若しくはRF信号、又は、それらの周波数多重信号を総称して"アナログ信号"と表記する。なお、アナログ信号の最も低い周波数は、閾値周波数f1より大きくなる様に設定される。HPF12は、閾値周波数f1未満の不要な周波数成分を抑圧する。
【0013】
合波部13は、フィルタ後の制御信号及びアナログ信号を合波した合波信号を変調部14に出力する。変調部14は、合波信号で搬送光を変調することで変調光を生成し、変調光を無線装置2に送信する。
図4は、変調光の周波数成分を示している。
図4の参照符号81~84の全体がアナログ信号であり、参照符号81~84は、それぞれ、4つのIF信号に対応する。
図4の参照符号80は、制御信号に対応する。
【0014】
復調部24は、処理装置1から受信する変調光を復調し、合波信号を分離部23に出力する。分離部23は、合波信号を分離した後、LPF21を介して制御信号を出力し、HPF22を介してアナログ信号を出力する。LPF21及びHPF22の通過帯域は、それぞれ、LPF11及びHPF12と同様である。制御部20は、LPF21からの制御信号を受信し、当該制御信号に基づき無線装置2を制御する。HPF22が出力するアナログ信号は、図示しない回路により無線信号に変換されWDに向けて送信される。
【0015】
以上、本実施形態では、無線装置20を制御するためのパルス信号である制御信号と、WDに送信する情報を搬送するアナログ信号とを合波し、合波された信号で搬送光を変調して無線装置20に送信する。この構成により、制御信号及びアナログ信号を同じ光ファイバで送信することができる。また、制御情報に基づき正弦波キャリアの電気信号を変調(例えば、ASK、PSK、QAM等)することなく、制御情報をベースバンド信号(例えば、NRZパルス信号)のまま送信するため、制御情報を送信するための構成を簡略化することができる。なお、無線装置2から処理装置1への方向の構成も同様であり、制御部20から制御部10への制御信号は、例えば、制御部20が制御部10から受信した制御信号の応答等に使用され得る。
【0016】
<第二実施形態>
続いて、第二実施形態について第一実施形態との相違点を中心に説明する。例えば、無線装置2の設置時等、無線装置2に送信する制御情報のデータ量が大きくなると、閾値周波数f1未満の帯域幅では制御信号を無線装置2に送信するための時間が長くなる。このため、本実施形態では、閾値周波数を、送信すべき制御情報の量、つまり、制御信号に必要な伝送速度に応じて可変にする。
【0017】
図5は、本実施形態による処理装置1及び無線装置2の構成図である。なお、第一実施形態の
図3と同様の構成要素については同じ参照符号を付与し、以下では、相違点を中心に説明する。制御部10は、制御信号を合波部17のLPF15にも出力する。LPF15は、閾値周波数f2未満の通過帯域を有し、不要な高周波成分を抑圧する。なお、閾値周波数f2は、閾値周波数f1より大きい。また、アナログ信号は、合波部17のHPF16にも入力される。HPF16は、閾値周波数f2未満の不要な周波数成分を抑圧する。
合波部17は、フィルタ後の制御信号及びアナログ信号を合波し、合波信号を生成する。
【0018】
選択部18には、合波部13からの合波信号と、合波部17からの合波信号が入力される。制御部10は、最大周波数を閾値周波数f1未満に制限可能な第1制御信号を送信している間、選択部18を制御して、合波部13からの合波信号を変調部14に出力させる。一方、制御部10は、最大周波数が閾値周波数f1より大きいことが必要であるが、閾値周波数f2未満に制限可能な第2制御信号を送信している間、選択部18を制御して、合波部17からの合波信号を変調部14に出力させる。例えば、第1制御信号は100MbEであり、第2制御信号は1GbEであり得る。
【0019】
また、制御部10は、第1制御信号から第2制御信号に切り替える前の所定タイミングにおいて、第1制御信号から第2制御信号に切り替える第1切替タイミングを、第1制御信号により無線装置2に通知する。同様に、制御部10は、第2制御信号から第1制御信号に切り替える前の所定タイミングにおいて、第2制御信号から第1制御信号に切り替える第2切替タイミングを、第2制御信号により無線装置2に通知する。無線装置2の制御部20は、第1切替タイミングになると、選択部28を制御して、復調部24が出力する合波信号を分離部27に出力させる。また、制御部20は、第2切替タイミングになると、選択部28を制御して、復調部24が出力する合波信号を分離部23に出力させる。分離部27は、LPF25を介して第2制御信号を制御部20に出力し、HPF26を介してアナログ信号を出力する。LPF25及びHPF26の通過帯域は、それぞれ、LPF15及びHPF16と同様である。
【0020】
なお、第2制御信号を使用している間、アナログ信号に使用可能な帯域幅は小さくなる。このため、制御部10は、第2制御信号を使用している期間、WDに送信する情報量を制限し、アナログ信号の帯域幅を小さくする。また、本実施形態ではLPF及びHPFを含む合波部を2つ使用していたが3つ以上とすることもできる。なお、3つ以上の合波部それぞれのLPF及びHPFの通過帯域は異なり、制御部10は、送信する制御信号の速度に応じて変調部14に合波信号を出力する合波部を選択する。なお、選択する合波部は、制御信号の送信に必要な最大周波数を通過帯域内とするLPFを有する合波部から選択する。例えば、選択する合波部は、制御信号の送信に必要な最大周波数を通過帯域内とするLPFを有する合波部の内の通過帯域の最も低いLPFを有する合波部とすることができる。
【0021】
以上、本実施形態によると、送信すべき情報量が多くなると、制御信号の速度を増加させることができる。
【0022】
<第三実施形態>
続いて、第三実施形態について、第二実施形態との相違点を中心に説明する。第二実施形態では制御信号の速度を増加させることができる様にLPF及びHPFを含む合波部を2つ以上使用するものであった。本実施形態では、使用する合波部の数を1つとする。
【0023】
図6は、本実施形態による処理装置1及び無線装置2の構成図である。制御部10は、制御信号を選択部18にも出力する。制御部10は、最大周波数を閾値周波数f1未満に制限可能な第1制御信号を送信している間、選択部18を制御して、合波部13からの合波信号を変調部14に出力させる。一方、制御部10は、最大周波数を閾値周波数f1未満に制限できない第3制御信号を送信している間、選択部18を制御して、制御部10からの制御信号を変調部14に出力させる。
【0024】
また、制御部10は、第二実施形態と同様に、第1制御信号と第3制御信号との切替タイミングを制御部20に通知する。したがって、第1制御信号は、選択部28から分離部23を介して制御部20に入力され、第3制御信号は、選択部28から直接、制御部20に入力される。
【0025】
なお、第二実施形態と異なり、第3制御信号を使用している間、制御部10は、WDへの送信を一時的に停止し、アナログ信号の送信を行わない。多くの場合、制御信号の情報量が増大するのは、無線信号の送受を開始する前(リブート時などを含む)の処理装置と無線装置の間でリンクを確立する期間であり、その期間に限定して上述の機能を働かせることで、第二実施形態より簡素な構成で所望の効果を得ることが可能となる。
【0026】
<第四実施形態>
本実施形態では、制御信号を使用することで処理装置1から無線装置2に至る光伝送路3の品質を測定し、当該光伝送路3で搬送されているアナログ信号の品質を判定する。具体的には、制御部10は、制御信号により既知パターンのデータを制御部20に送信し、制御部20は、この既知パターンのデータに基づきエラーが生じているか否かを判定する。搬送光のレベルを変化させながら既知パターンの測定を行うことで処理装置1から無線装置2に至る光伝送路3の信号対雑音比(SN比)を判定することができる。
【0027】
以上の構成により、簡易な構成で無線装置に制御信号を送信することができる。したがって、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【符号の説明】
【0028】
13:合波部、14:変調部