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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123117
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】燃料電池スタック
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0267 20160101AFI20230829BHJP
   H01M 8/0247 20160101ALI20230829BHJP
   H01M 8/0258 20160101ALI20230829BHJP
   H01M 8/2465 20160101ALI20230829BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20230829BHJP
【FI】
H01M8/0267
H01M8/0247
H01M8/0258
H01M8/2465
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022027000
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】青野 晴之
(72)【発明者】
【氏名】河邉 聡
(72)【発明者】
【氏名】松原 直大
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA11
5H126AA23
5H126BB06
5H126DD05
5H126EE03
5H126EE06
5H126EE11
(57)【要約】
【課題】冷却媒体の脇流れを抑制できる燃料電池スタックを提供する。
【解決手段】燃料電池スタックは、MEAと、第1セパレータ30及び第2セパレータ40とを備える単セル90を複数積層して形成されている。第1セパレータ30は、当該単セル90と隣接する他の単セル90の第2セパレータ40に当接する第1凸部50を有している。第1凸部50は、外側溝流路の外側に設けられ、第2方向Yにおいて複数並んで設けられている。第2セパレータ40は、第1凸部50と当接する複数の第2凸部60を有している。第1凸部50の先端部51の中央部には、第3方向に延在する窪み部52が設けられている。第2凸部60の先端部61は、窪み部52内に位置し、窪み部52の底面52aに向かって突出する突出部62を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電部と、前記発電部を挟持する第1セパレータ及び第2セパレータと、を備える単セルを第1方向において複数積層して形成され、前記第1セパレータ及び前記第2セパレータの各々において前記発電部と対向する面とは反対側の面には、第2方向において延在するとともに冷却媒体が流れる複数の溝流路が並んで設けられている燃料電池スタックであって、
前記第1セパレータは、前記第1方向において当該単セルと隣接する他の前記単セルの前記第2セパレータに向かって突出するとともに、前記第2セパレータに当接する第1凸部を有しており、
前記第1凸部は、前記第1方向及び前記第2方向の双方と交差する第3方向において最も外側に位置する前記溝流路の外側に設けられ、前記第2方向において複数並んで設けられており、
前記第2セパレータは、前記第1方向において前記第1凸部に向かってそれぞれ突出するとともに、前記第1凸部と当接する複数の第2凸部を有しており、
前記第1凸部の先端部の前記第2方向における中央部には、前記第3方向に延在する窪み部が設けられており、
前記第2凸部の先端部は、前記窪み部内に位置し、前記窪み部の底面に向かって突出する突出部を有する、
燃料電池スタック。
【請求項2】
前記窪み部は、前記第2方向に延びる仮想直線に対して湾曲しており、
前記突出部は、前記窪み部に沿って湾曲するとともに前記窪み部に当接している、
請求項1に記載の燃料電池スタック。
【請求項3】
複数の前記第1凸部及び複数の前記第2凸部は、前記第2方向において前記溝流路が形成されている範囲の全体にわたって設けられている、
請求項1または請求項2に記載の燃料電池スタック。
【請求項4】
前記第1セパレータ及び前記第2セパレータは、金属板製である、
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の燃料電池スタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池スタックに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、燃料電池スタックが開示されている。この燃料電池スタックは、積層された複数の単セルを備えている。単セルは、2つのセパレータを備えている。2つのセパレータ同士の間には、膜電極接合体と、膜電極接合体を単セルの積層方向において挟む2つのガス拡散層とが設けられている。
【0003】
各セパレータにおいてガス拡散層と対向する対向面には、反応媒体を導くための溝状の流路が設けられている。各セパレータにおいて対向面とは反対側の面には、互いに隣り合う単セルのセパレータ同士の間において冷却媒体を導くための空洞を形成する溝状の流路が設けられている。
【0004】
また、各セパレータの対向面には、凸状のビードと、ビードと流路との間に形成された凹部とが設けられている。
ビードは、流路の周辺において全周にわたって設けられている。
【0005】
各セパレータに形成された凹部の底壁同士は、互いに接触している(特許文献1の図6A参照)。
こうしたセパレータを備える燃料電池スタックでは、上記空洞を流れる冷却媒体がビードに向かって流れること、所謂脇流れが、互いに接触している凹部同士によって抑制される。
【0006】
また、特許文献2には、金属板材から燃料電池用のセパレータを成形する成形方法が開示されている。この成形方法では、固定側のダイの窪み部及び突出部と、可動側のパンチの突出部及び窪み部との間において、金属板材に連続する張出し部、すなわちセパレータの流路が成形される。ダイ及びパンチの窪み部は、中央部が凸状に湾曲した底部を有している。そのため、成形された張出し部の中央部は、凹状に湾曲する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2020-522089号公報
【特許文献2】特開2018-89679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1に記載の燃料電池用のセパレータを成形すべく例えば特許文献2に記載の成形方法を適用する場合、以下のような問題が生じる。すなわち、上記凹部の底壁同士の対向面の中央部が凹状に湾曲する。そのため、各セパレータの凹部の底壁同士の間に、隙間が形成される。その結果、上記空洞から脇流れした冷却媒体が上記隙間を介して漏れ出すようになるため、凹部による脇流れの抑制効果が低減する。したがって、冷却媒体による冷却効率の低下、ひいては燃料電池の発電効率の低下を招くおそれがある。
【0009】
なお、こうした問題は、特許文献2に記載の成形方法を適用する場合に限定されない。例えば、成形収縮などにより凹部の底壁に窪み部を有するものであれば、同様に生じ得る。
【0010】
本発明の目的は、冷却媒体の脇流れを抑制できる燃料電池スタックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための燃料電池スタックは、発電部と、前記発電部を挟持する第1セパレータ及び第2セパレータと、を備える単セルを第1方向において複数積層して形成され、前記第1セパレータ及び前記第2セパレータの各々において前記発電部と対向する面とは反対側の面には、第2方向において延在するとともに冷却媒体が流れる複数の溝流路が並んで設けられている燃料電池スタックであって、前記第1セパレータは、前記第1方向において当該単セルと隣接する他の前記単セルの前記第2セパレータに向かって突出するとともに、前記第2セパレータに当接する第1凸部を有しており、前記第1凸部は、前記第1方向及び前記第2方向の双方と交差する第3方向において最も外側に位置する前記溝流路の外側に設けられ、前記第2方向において複数並んで設けられており、前記第2セパレータは、前記第1方向において前記第1凸部に向かってそれぞれ突出するとともに、前記第1凸部と当接する複数の第2凸部を有しており、前記第1凸部の先端部の前記第2方向における中央部には、前記第3方向に延在する窪み部が設けられており、前記第2凸部の先端部は、前記窪み部内に位置し、前記窪み部の底面に向かって突出する突出部を有する。
【0012】
同構成によれば、第1凸部の窪み部内に第2凸部の先端部が位置した状態で、第1凸部と第2凸部とが当接する。ここで、第2凸部の先端部の突出部が、窪み部の底面に向かって突出している。そのため、第2凸部の先端部に窪み部が設けられている場合や、第2凸部の先端部が平坦な場合に比べて、第1凸部の窪み部と第2凸部との間に隙間が形成されにくくなる。これにより、冷却媒体が隙間を介して第1凸部及び第2凸部の外側に流れにくくなる。したがって、冷却媒体の脇流れを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、燃料電池スタックの一実施形態について、同燃料電池スタックの単セルを示す分解斜視図である。
図2図2は、同実施形態の燃料電池スタックを示す断面図である。
図3図3は、図2の3-3線に沿った断面図である。
図4図4は、燃料電池スタックの変形例を示す図であって、図3に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1図3を参照して、燃料電池スタックの一実施形態について説明する。なお、各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張または簡略化して示しているため、各構成の寸法比率が実際とは異なる場合がある。また、以降の説明における「直交」は厳密に直交の場合のみでなく、各実施形態における作用効果を奏する範囲内で概ね垂直に交差する場合も含まれる。
【0015】
<燃料電池スタックの単セル90>
図1及び図2に示すように、燃料電池スタックは、全体として長方形板状の単セル90を複数積層して形成されたものである。
【0016】
なお、以降では、単セル90の積層方向を第1方向Xとして説明する。また、第1方向Xと直交する方向のうち、単セル90の長手方向を第2方向Yとして説明する。また、第1方向X及び第2方向Yの双方に直交する方向を第3方向Zとして説明する。
【0017】
単セル90は、反応ガスまたは冷却媒体を単セル90内に導入するための入口側マニホールド91,93,95と、単セル90内の反応ガス及び冷却媒体を外部へ導出するための出口側マニホールド92,94,96とを有している。なお、本実施形態では、入口側マニホールド91及び出口側マニホールド92は、燃料ガスが流通するマニホールドである。燃料ガスは、例えば水素ガスである。また、入口側マニホールド93及び出口側マニホールド94は、冷却媒体が流通するマニホールドである。冷却媒体は、例えば冷却水である。また、入口側マニホールド95及び出口側マニホールド96は、酸化剤ガスが流通するマニホールドである。酸化剤ガスは、例えば空気である。
【0018】
入口側マニホールド91,93,95及び出口側マニホールド92,94,96は、平面視矩形状であり、単セル90を第1方向Xに貫通している。
入口側マニホールド91及び出口側マニホールド94,96は、第2方向Yにおける単セル90の一側(図1の左右方向における左側)の端部に設けられている。入口側マニホールド91及び出口側マニホールド94,96は、第3方向Zの一側(図1の紙面奥側)から他側(図1の紙面手前側)に向かって順に並んでいる。
【0019】
出口側マニホールド92及び入口側マニホールド93,95は、第2方向Yにおける単セル90の他側(図1の右側)の端部に設けられている。出口側マニホールド92及び入口側マニホールド93,95は、第3方向Zの他側(図1の紙面手前側)から一側(図1の紙面奥側)に向かって順に並んでいる。
【0020】
単セル90は、膜電極接合体(以下、MEA10)と、MEA10を保持する枠部材20と、MEA10及び枠部材20を挟持する第1セパレータ30及び第2セパレータ40とを有している。
【0021】
以下、各構成について詳細に説明する。
<MEA10>
図1に示すように、MEA10は、図示しない固体高分子電解質膜(以下、電解質膜)と、電解質膜の両面に設けられた電極11,12とを有している。なお、本実施形態では、第1方向Xにおける電解質膜の一側(図1の上下方向における上側)の面に接合された電極が、カソード電極11である。また、第1方向Xにおける電解質膜の他側(図1の下側)の面に接合された電極が、アノード電極12である。
【0022】
各電極11,12は、電解質膜に接合された触媒層と、触媒層に接合されたガス拡散層(いずれも図示略)とを有している。
なお、MEA10が、本発明に係る燃料電池の発電部に相当する。
【0023】
<枠部材20>
図1及び図2に示すように、枠部材20は、第2方向Yに長い長方形枠状であり、例えば合成樹脂材料により形成されている。
【0024】
枠部材20は、マニホールド91,92,93,94,95,96の各々を構成する貫通孔21,22,23,24,25,26を有している。
枠部材20は、中央に開口部27を有している。開口部27の周縁には、第1方向Xの一側(図1の上側)からMEA10が接合されている。
【0025】
<第1セパレータ30>
図1及び図2に示すように、第1セパレータ30は、例えばチタンやステンレス鋼からなる平面視長方形状の金属板材をプレス成形することにより形成されている。
【0026】
第1セパレータ30は、マニホールド91,92,93,94,95,96の各々を構成する貫通孔31,32,33,34,35,36を有している。
第1セパレータ30は、第1方向XにおいてMEA10のアノード電極12と対向する対向面30aを有する第1面30Aと、対向面30aとは反対側の面30bを有する第2面30Bとを有している。
【0027】
第1面30Aには、燃料ガスが流れる複数の溝流路37A及び一対の接続部37Bが設けられている。なお、図1では、溝流路37A及び接続部37Bを簡略化して図示している。
【0028】
複数の溝流路37Aは、対向面30aに設けられている。複数の溝流路37Aの各々は、第2方向Yにおいて直線状に延在している(図1参照)。複数の溝流路37Aの各々は、第3方向Zにおいて互いに間隔をあけて並んでいる(図2参照)。
【0029】
図1に示すように、一対の接続部37Bは、第2方向Yにおいて複数の溝流路37Aの両側から貫通孔31,32の各々に向かって延びている。燃料ガスは、入口側マニホールド91から一方の接続部37Bを介して複数の溝流路37Aへ導入される。また、複数の溝流路37Aを流れる燃料ガスは、他方の接続部37Bを介して出口側マニホールド92へ排出される。
【0030】
図1及び図2に示すように、第2面30Bには、冷却媒体が流れる複数の溝流路38A及び一対の接続部38Bと、第1凸部50とが設けられている。なお、図1では、溝流路38A及び接続部38Bを簡略化して図示している。
【0031】
複数の溝流路38Aは、面30bに設けられている。複数の溝流路38Aの各々は、第2方向Yにおいて直線状に延在している(図1参照)。複数の溝流路38Aの各々は、第3方向Zにおいて互いに間隔をあけて並んでいる(図2参照)。
【0032】
図2に示すように、第3方向Zにおいて隣り合う溝流路38A同士の間に位置する凸部の裏側によって、溝流路37Aが構成されている。また、第3方向Zにおいて隣り合う溝流路37A同士の間に位置する凸部の裏側によって、溝流路38Aが構成されている。
【0033】
図1にて破線で示す一対の接続部38Bは、第2方向Yにおいて複数の溝流路38Aの両側から貫通孔33,34の各々に向かって延びている。冷却媒体は、入口側マニホールド93から一方の接続部38Bを介して複数の溝流路38Aへ導入される。また、複数の溝流路38Aを流れる冷却媒体は、他方の接続部38Bを介して出口側マニホールド94へ排出される。
【0034】
<第1凸部50>
図1及び図2に示すように、第1凸部50は、複数の溝流路38Aのうち第3方向Zにおいて最も外側に位置する一対の外側溝流路38aの外側に設けられている。本実施形態では、第1凸部50は、一対の外側溝流路38aの双方の外側に設けられている(図1参照)。ここで、第3方向Zにおける「外側」とは、第3方向Zにおいて単セル90の中央から離れる側のことである。なお、図2には、一対の外側溝流路38aのうち第3方向Zの一側(図1の紙面奥側)に位置する外側溝流路38aと、当該外側溝流路38aの外側に位置する第1凸部50とを図示している。
【0035】
第1凸部50は、第1方向Xにおいて単セル90と隣接する他の単セル90の第2セパレータ40に向かって突出している(図2参照)。
第1凸部50は、第3方向Zに延びている。
【0036】
図1に示すように、第1凸部50は、第2方向Yにおいて互いに間隔をあけて複数並んでいる。複数の第1凸部50は、第2方向Yにおいて外側溝流路38aが形成されている範囲の全体にわたって設けられている。
【0037】
図3に示すように、各第1凸部50の先端部51には、窪み部52が設けられている。
窪み部52は、第2方向Yにおける先端部51の中央部に位置している。
図2に示すように、窪み部52は、第3方向Zに延びている。
【0038】
図3に示すように、窪み部52は、断面視において第2方向Yに延びる仮想直線(図示略)に対して湾曲している。
第1方向Xにおける第1凸部50の高さH1は、本実施形態では0.2mm以上、0.8mm以下の範囲内に設定されている。
【0039】
第2方向Yにおける先端部51の幅Wは、本実施形態では0.5mm以上、2mm以下の範囲内に設定されている。
第1方向Xにおける窪み部52の深さDは、本実施形態では10μm以上、50μm以下の範囲内に設定されている。
【0040】
<第2セパレータ40>
図1及び図2に示すように、第2セパレータ40は、例えばチタンやステンレス鋼からなる平面視長方形状の金属板材をプレス成形することにより形成されている。
【0041】
第2セパレータ40は、マニホールド91,92,93,94,95,96の各々を構成する貫通孔41,42,43,44,45,46を有している。
第2セパレータ40は、第1方向XにおいてMEA10のカソード電極11と対向する対向面40aを有する第1面40Aと、対向面40aとは反対側の面40bを有する第2面40Bとを有している。
【0042】
第1面40Aには、酸化剤ガスが流れる複数の溝流路47A及び一対の接続部47Bが設けられている。なお、図1では、溝流路47A及び接続部47Bを簡略化して図示している。
【0043】
複数の溝流路47Aは、対向面40aに設けられている。複数の溝流路47Aの各々は、第2方向Yにおいて直線状に延在している(図1参照)。複数の溝流路47Aの各々は、第3方向Zにおいて互いに間隔をあけて並んでいる(図2参照)。
【0044】
図1にて破線で示す一対の接続部47Bは、第2方向Yにおいて複数の溝流路47Aの両側から貫通孔45,46の各々に向かって延びている。酸化剤ガスは、入口側マニホールド95から一方の接続部47Bを介して複数の溝流路47Aへ導入される。また、複数の溝流路47Aを流れる酸化剤ガスは、他方の接続部47Bを介して出口側マニホールド96へ排出される。
【0045】
図1及び図2に示すように、第2面40Bには、冷却媒体が流れる複数の溝流路48A及び一対の接続部48Bと、第2凸部60とが設けられている。なお、図1では、溝流路48A及び接続部48Bを簡略化して図示している。
【0046】
複数の溝流路48Aは、面40bに設けられている。複数の溝流路48Aの各々は、第2方向Yにおいて直線状に延在している(図1参照)。複数の溝流路48Aの各々は、第3方向Zにおいて互いに間隔をあけて並んでいる(図2参照)。
【0047】
図2に示すように、第3方向Zにおいて隣り合う溝流路48A同士の間に位置する凸部の裏側によって、溝流路47Aが構成されている。また、第3方向Zにおいて隣り合う溝流路47A同士の間に位置する凸部の裏側によって、溝流路48Aが構成されている。
【0048】
図1に示すように、一対の接続部48Bは、第2方向Yにおいて複数の溝流路48Aの両側から貫通孔43,44の各々に向かって延びている。冷却媒体は、入口側マニホールド93から一方の接続部48Bを介して複数の溝流路48Aへ導入される。また、複数の溝流路48Aを流れる冷却媒体は、他方の接続部48Bを介して出口側マニホールド94へ排出される。
【0049】
<第2凸部60>
図1及び図2に示すように、第2凸部60は、複数の溝流路48Aのうち第3方向Zにおいて最も外側に位置する一対の外側溝流路48aの外側に設けられている。本実施形態では、第2凸部60は、一対の外側溝流路48aの双方の外側に設けられている(図1参照)。なお、図2には、一対の外側溝流路48aのうち第3方向Zの一側に位置する外側溝流路48aと、当該外側溝流路48aの外側に位置する第2凸部60とを図示している。
【0050】
第2凸部60は、第1方向Xにおいて第1凸部50に向かって突出している(図2参照)。
第2凸部60は、第3方向Zに延びている。
【0051】
図1に示すように、第2凸部60は、第2方向Yにおいて互いに間隔をあけて複数並んでいる。複数の第2凸部60は、第2方向Yにおいて外側溝流路48aが形成されている範囲の全体にわたって設けられている。本実施形態では、複数の第1凸部50の各々と第1方向Xにおいて対応する位置に、1つずつ第2凸部60が設けられている。
【0052】
図3に示すように、第2凸部60の先端部61は、断面視において窪み部52に沿って湾曲している。
先端部61は、窪み部52の底面52aに向かって突出する突出部62を有している。本実施形態では、先端部61のうち、窪み部52内に位置するとともに、当該窪み部52に当接している部分が、突出部62である。すなわち、突出部62は、断面視において窪み部52に沿って湾曲している。突出部62は、窪み部52に隙間なく嵌合している。
【0053】
図2に示すように、突出部62は、第3方向Zに延びている。
図3に示すように、第1方向Xにおける第2凸部60の高さH2は、本実施形態では0.2mm以上、0.8mm以下の範囲内に設定されている。
【0054】
図2に示すように、第3方向Zにおいて第1凸部50及び第2凸部60よりも外側には、単セル90のセパレータ30と、当該単セル90と第1方向Xにおいて隣接する他の単セル90の第2セパレータ40との間をシールするガスケット70が設けられている。複数の第1凸部50と、複数の第2凸部60とは、第3方向Zにおいてガスケット70と外側溝流路38a,48aとの間に形成される空間Sを部分的に埋めるように構成されている。
【0055】
次に、本実施形態の作用について説明する。
第1凸部50の窪み部52内に第2凸部60の先端部61が位置した状態で、第1凸部50と第2凸部60とが当接する。ここで、第2凸部60の先端部61の突出部62が、窪み部52の底面52aに向かって突出している。そのため、第2凸部60の先端部61に窪み部が設けられている場合や、第2凸部60の先端部61が平坦な場合に比べて、第1凸部50の窪み部52と第2凸部60との間に隙間が形成されにくくなる。これにより、冷却媒体が隙間を介して第1凸部50及び第2凸部60の外側に流れにくくなる。
【0056】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)第1セパレータ30は、第1方向Xにおいて単セル90と隣接する他の単セル90の第2セパレータ40に向かって突出するとともに、第2セパレータ40に当接する第1凸部50を有している。第1凸部50は、第3方向Zにおいて最も外側に位置する外側溝流路38aの外側に設けられている。第1凸部50は、第2方向Yにおいて複数並んで設けられている。第2セパレータ40は、第1方向Xにおいて第1凸部50に向かってそれぞれ突出するとともに、第1凸部50と当接する複数の第2凸部60を有している。第1凸部50の先端部51の第2方向Yにおける中央部には、第3方向Zに延在する窪み部52が設けられている。第2凸部60の先端部61は、窪み部52内に位置し、窪み部52の底面52aに向かって突出する突出部62を有する。
【0057】
こうした構成によれば、上述した作用を奏する。したがって、冷却媒体の脇流れを抑制できる。
(2)窪み部52は、第2方向Yに延びる仮想直線に対して湾曲している。突出部62は、窪み部52に沿って湾曲するとともに窪み部52に当接している。
【0058】
こうした構成によれば、第1凸部50の窪み部52と第2凸部60との間に隙間がほとんど形成されない。したがって、冷却媒体の脇流れを一層抑制できる。
(3)複数の第1凸部50は、第2方向Yにおいて外側溝流路38aが形成されている範囲の全体にわたって設けられている。複数の第2凸部60は、第2方向Yにおいて外側溝流路48aが形成されている範囲の全体にわたって設けられている。
【0059】
こうした構成によれば、第2方向Yにおいて外側溝流路38a,48aが形成されている範囲の全体にわたって、上記効果が発揮される。したがって、冷却媒体の脇流れをより一層抑制できる。
【0060】
(4)第1セパレータ30及び第2セパレータ40は、金属板製である。
金属板製のセパレータ30は、成形時において第1凸部50の先端部51に窪み部52が形成されやすい。また、金属板製のセパレータ40は、成形時において第2凸部60の先端部61に窪み部が形成されやすい。
【0061】
この点、上記構成によれば、上記窪み部に起因した冷却媒体の脇流れを抑制できる。
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0062】
・入口側マニホールド91,93,95及び出口側マニホールド92,94,96の形状は、本実施形態で例示したような平面視矩形状に限定されず、例えば、平面視長円形状としてもよい。
【0063】
・マニホールド91,92,93,94,95,96における反応ガス及び冷却媒体の流れは、本実施形態で例示したものに限定されない。例えば、マニホールド96を酸化剤ガスの入口側マニホールドとし、マニホールド95を酸化剤ガスの出口側マニホールドとしてもよい。また、これに伴ってマニホールド94を冷却媒体の入口側マニホールドとし、マニホールド93を冷却媒体の出口側マニホールドとしてもよい。すなわち、溝流路47Aを流れる酸化剤ガスと、溝流路38A,48Aを流れる冷却媒体とが、溝流路37Aを流れる燃料ガスと同方向に流れるようにしてもよい。
【0064】
・溝流路37A(38A)は、本実施形態で例示したように、第2方向Yにおいて直線状に延在するものに限定されない。例えば、溝流路37A(38A)は、対向面30a(面30b)の面方向において波状に延在するものであってもよい。
【0065】
・溝流路47A(48A)は、本実施形態で例示したように、第2方向Yにおいて直線状に延在するものに限定されない。例えば、溝流路47A(48A)は、対向面40a(面40b)の面方向において波状に延在するものであってもよい。
【0066】
・第1凸部50の形状は、本実施形態で例示した形状に限定されない。例えば、第1凸部50の高さH1は、0.2mmよりも小さくてもよいし、0.8mmよりも大きくてもよい。この場合、第2凸部60の高さH2も0.2mm以上、0.8mm以下の範囲内に限定されず、第1凸部50の高さH1に合わせて適宜変更すればよい。また、第1凸部50の幅Wは、0.5mm以上、2mm以下の範囲内に限定されず、本発明の効果を奏する範囲内であれば、0.5mmより小さくてもよいし、2mmより大きくてもよい。
【0067】
・第1セパレータ30及び第2セパレータ40は、本実施形態で例示したように、第1凸部50の窪み部52と第2凸部60の突出部62とが隙間なく嵌合するものに限定されない。例えば、図4に示すように、セパレータ30及びセパレータ40は、互いの間に隙間Gを形成する窪み部152及び突出部162を有する第1凸部150及び第2凸部160を有するものであってもよい。この場合、突出部162は、窪み部152内に位置するとともに、窪み部152に当接するものであればよい。
【0068】
・第2凸部60は、本実施形態で例示したように、先端部61が断面視において窪み部52に沿って湾曲するものに限定されない。例えば、第2凸部60の先端部61は、第2面40Bの面方向に延びる平坦部と、当該平坦部から窪み部52の底面52aに向けて突出する突出部とを有するものであってもよい。
【0069】
・窪み部52は、本実施形態で例示したように、断面視において第2方向Yに延びる仮想直線に対して湾曲するものに限定されない。例えば、窪み部52は、第2面30Bの面方向に延びる平坦な底面を有するものであってもよい。
【0070】
・第1凸部50は、本実施形態で例示したように、一対の外側溝流路38aの双方の外側に設けられるものに限定されない。第1凸部50は、一対の外側溝流路38aのうちいずれか一方のみの外側に設けるようにしてもよい。この場合、第2凸部60は、一対の外側溝流路48aの双方の外側に設けられるものに限定されず、その配置を第1凸部50に合わせて適宜変更すればよい。
【0071】
・燃料電池スタックは、本実施形態で例示したように、複数の第1凸部50の各々と第1方向Xにおいて対応する位置に、1つずつ第2凸部60が設けられるものに限定されず、第2凸部60の一部を省略してもよい。この場合、セパレータ30は、第1方向Xにおいて第2凸部60と対向しない第1凸部50を含むこととなる。なお、第2凸部60と対向しない第1凸部50は、セパレータ40の第2面40Bと当接するものであればよい。
【0072】
・セパレータ30,40は、金属板材をプレス成形することにより形成されるものに限定されず、例えば切削加工やエッチング加工により成形することもできる。
・セパレータ30,40の材料としては、チタンやステンレス鋼に限定されず、アルミニウムやカーボンを用いることもできる。
【0073】
・本発明に係る第1セパレータは、本実施形態で例示したようにアノード側のセパレータに限定されず、カソード側のセパレータに適用することもできる。この場合、本発明に係る第2セパレータをアノード側のセパレータに適用すればよい。
【符号の説明】
【0074】
D…深さ
G…隙間
H1,H2…高さ
S…空間
W…幅
X…第1方向
Y…第2方向
Z…第3方向
10…MEA
11…アノード電極
12…カソード電極
20…枠部材
21…貫通孔
22…貫通孔
23…貫通孔
24…貫通孔
25…貫通孔
26…貫通孔
27…開口部
30…第1セパレータ
30A…第1面
30a…対向面
30B…第2面
30b…面
31…貫通孔
32…貫通孔
33…貫通孔
34…貫通孔
35…貫通孔
36…貫通孔
37A…溝流路
37B…接続部
38A…溝流路
38a…外側溝流路
38B…接続部
40…第2セパレータ
40A…第1面
40a…対向面
40B…第2面
40b…面
41…貫通孔
42…貫通孔
43…貫通孔
44…貫通孔
45…貫通孔
46…貫通孔
47A…溝流路
47B…接続部
48A…溝流路
48a…外側溝流路
48B…接続部
50,150…第1凸部
51…先端部
52,152…窪み部
52a…底面
60,160…第2凸部
61…先端部
62,162…突出部
70…ガスケット
90…単セル
91…入口側マニホールド
92…出口側マニホールド
93…入口側マニホールド
94…出口側マニホールド
95…入口側マニホールド
96…出口側マニホールド
図1
図2
図3
図4